バスバーおよびバスバーの製造方法
【課題】加工性の確保と生産性の向上とを両立するバスバーを提供する。
【解決手段】バスバー10を、少なくとも一ヵ所以上の屈曲部13を有する本体部11と、本体部11の少なくとも一方の端部14に設けられ、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成され、屈曲部13よりも硬度が大きな板状あるいは棒状の端子部12とにより形成する。
【解決手段】バスバー10を、少なくとも一ヵ所以上の屈曲部13を有する本体部11と、本体部11の少なくとも一方の端部14に設けられ、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成され、屈曲部13よりも硬度が大きな板状あるいは棒状の端子部12とにより形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバスバーおよびバスバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインバータ装置やバッテリなどの端子台間を電気的に接続するバスバーが公知である(例えば特許文献1参照)。このようなバスバーは、折り曲げ加工が施された屈曲部を有する本体部と、本体部の端部に設けられた端子部とを備えている。このため、バスバーの本体部は、屈曲部を形成するための柔軟性を有する比較的軟質な材料で形成されている。一方、バスバーの端子部は、例えばねじ止めなどにより端子台に取り付ける場合、ある程度の硬度が求められる。そのため、バスバーの端子部は、一般的に本体部に別部材で形成した端子部材を溶接や圧着などにより取り付けて形成されている。
【0003】
しかしながら、端子部を別部材で形成すると、本体部への溶接や圧着などの作業が必要となり生産性は悪化する。この場合、生産性や作業性を改善するために本体部にねじ貫通孔などを設けて端子部として利用すると、柔軟性を有する本体部は、端子台などへの取り付け時に変形するおそれがある。一方、端子部に求められる硬度を有する材料で本体部を形成すると、折り曲げ加工を施すことは困難になる。このように、バスバーは、本体部の加工性を高めるためには材料の硬度を低くすることが求められ、端子部の変形を抑制するためには材料の硬度を高くすることが求められている。すなわち、加工性の確保と生産性の向上とを両立することは困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−4520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、加工性の確保と生産性の向上とを両立するバスバーおよびバスバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、バスバーは、少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を有する本体部と、本体部の少なくとも一方の端部に設けられ、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成され、屈曲部よりも硬度が高い板状あるいは棒状の端子部とを備えている。ここで、棒状とは、断面形状が円形状や楕円形のものに限らず、断面形状が矩形状の角柱などの形状をも含むことを意味している。このような構成によれば、本体部は、端子部よりも硬度が低いため、屈曲部の形成が容易である。したがって、本体部は、折り曲げ加工などを施す場合の加工性を確保することができる。一方、端子部は、屈曲部よりも硬度が高いことから取り付け時に変形するおそれが抑制される。また、端子部は、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されている。このため、端子部を形成するために本体部に別部材の端子部を溶接したり圧着したりする必要は無い。したがって、バスバー製造時の作業工数を削減でき、生産性を向上させることができる。すなわち、加工性の確保と生産性の向上とを両立することができる。
【0007】
請求項2の発明では、端子部は、本体部の端部を折り返して積層されている。例えば本体部を平板状に形成した場合、端子部は、加工硬化にともなって本体部よりも厚みが薄くなるおそれがある。その場合、電流が流れる導通断面積が減少し、高電圧および高周波領域において発熱することが懸念される。そこで、本体部の端部を折り返して積層することにより、端子部は、加工硬化後における厚みが補填される。したがって、本体部と端子部との境目における発熱を抑制することができる。平板状以外の形状の本体部を用いる場合も同様である。
【0008】
請求項3の発明では、端子部において折り返されている本体部の端部は、内側に孔を形成する略円環状に折り返され、先端が本体部または前記本体部の端部に積層されている。端子部は、一般的に端子台に取り付けるためのねじ貫通孔などを有している。ここで、略円環状とは、真円で形成された円環ではなく、一部に直線状や楕円形状などを含む真円以外の形状をも含むことを意味している。この場合、ねじ貫通孔などをドリルなどで切削加工またはパンチなどでプレス加工すると、切削部位において材料ロスが発生する。そこで、本体部の端部を略円環状に折り返して孔を形成し、その孔をねじ貫通孔などとして利用する。これにより、端子部の形成後にねじ貫通孔を形成する作業量は軽減される。また、切削加工時の材料ロスは抑制される。したがって、生産性を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
請求項4の発明では、端子部において折り返されている本体部の端部は、他方と対向する面の少なくとも一方に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有する。本体部の端部を折り返して積層する場合、端子部の加工硬化にともなって互いの位置にずれが生じるおそれがある。そこで、折り返し部位において対向する面の少なくとも一方にずれ規制処理部を設けることにより、互いのずれを規制することができる。したがって、加工硬化後の端子部を所望の厚みに形成することができる。
【0010】
請求項5の発明では、端子部は、本体部と同一の材料で形成され、厚さを補填する補填部材が本体部と継ぎ目なく一体に形成されている。これにより、上記した請求項2の発明と同様に、端子部は、加工硬化後における厚みが補填される。したがって、本体部と端子部との境目における発熱を抑制することができる。
請求項6の発明では、補填部材または本体部の少なくともいずれか一方は、他方と対向する面に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有する。これにより、上記した請求項4の発明と同様に、補填部材および本体部の相対的なずれを規制しつつ、端子部を所望の厚みに形成することができる。
【0011】
請求項7の発明では、本体部は、屈曲方向が互いに異なる複数の屈曲部を有する三次元的に形成されている。この場合、本体部は、屈曲方向が異なる複数の屈曲部を形成することから、より柔軟性が求められる。その場合であっても、端子部は、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に、且つ、屈曲部よりも硬度が高く形成される。したがって、加工性の確保および生産性の向上を両立させることができる。
請求項8の発明では、線状の本体部に少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を形成し、本体部の少なくとも一方の端部を加圧して板状あるいは棒状の端子部を形成すると同時に、本体部の加圧によって端子部の硬度を本体部よりも高くする。これにより、端子部は、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に、且つ、本体部よりも硬度が高い板状あるいは棒状に形成される。このように端子部の形成および加工硬化を同時に行うことにより、作業工数は削減される。したがって、上記した請求項1の発明に記載したように、加工性の確保と生産性の向上とを両立するバスバーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態によるバスバーの外形を模式的に示す斜視図
【図2】第1実施形態によるバスバーの製造工程の流れを示す図
【図3】第1実施形態によるバスバーの加圧工程を模式的に示す図
【図4】第1実施形態のバスバーの端子部を示す図
【図5】第1実施形態による加圧値と板幅および板厚の関係を模式的に示す図
【図6】第2実施形態のバスバーの端子部の加圧工程を模式的に示す図
【図7】第2実施形態のバスバーの端子部の他の構成例を模式的に示す図
【図8】第3実施形態のバスバーの端子部の加圧工程を模式的に示す図その1
【図9】第3実施形態のバスバーの端子部の加圧工程を模式的に示す図その2
【図10】その他の実施形態によるバスバーを模式的に示す斜視図
【図11】その他の実施形態によるバスバーの取り付け状態を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、バスバーの複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する複数の実施形態では実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態によるバスバーおよびバスバーの製造方法を図1から図5を参照して説明する。図1に示すように、バスバー10は、本体部11および端子部12を備えている。本体部11は、断面形状が矩形の平板状に形成されている。本体部11は、断面形状が矩形のものに限らず、断面形状が円形の棒状のもの、あるいは断面形状が楕円形あるいはH字形状などの異形形状であってもよい。また、本体部11は、複数の屈曲部13を有している。本体部11に設けられている屈曲部13のうち、屈曲部131、133、134および136は、平板状の本体部11の板厚方向に屈曲するいわゆるフラットワイズ曲げにより形成されている。また、屈曲部132および135は、本体部11の板幅方向に屈曲するいわゆるエッジワイズ曲げにより形成されている。以下、各屈曲部131〜136について共通の説明をする場合には単に屈曲部13と称する。このように、本体部11は、一ヵ所以上の屈曲部13を有する三次元的に形成されている。換言すると、本体部11は、三次元的な折り曲げを施せる程度に軟質で加工性の高い材料により形成されている。本実施形態では、本体部11は、電気伝導性が高い純銅を焼きなましすることで加工性を高めた無酸素銅(C1020−O)で形成されている。各屈曲部13の位置や屈曲方向は、バスバー10を取り付ける図示しない端子台などの形状に応じて適宜決定される。
【0014】
端子部12は、本体部11の双方の端部14にそれぞれ設けられている。各端子部12は、本体部11よりも外形が大きく厚みが薄い板状に形成されている。この端子部12は、本体部11の端部14を板厚方向に押しつぶした状態に形成されている。すなわち、端子部12は、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されている。また、端子部12は、押しつぶされたときの応力による塑性変形により硬化すなわち加工硬化により、本体部11よりも硬度が高く形成されている。これらの端子部12は、本体部11を図示しない端子台に取り付けるためのねじ貫通孔15が設けられている。
このような構成のバスバー10は、図示しない端子台の端子に取り付けられることにより、端子台間を電気的に接続する。具体的には、バスバー10は、例えばインバータ装置内の配線部材として、あるいは外部電源との接続部材として用いられる。つまり、バスバー10は、一般的な信号経路に比べて比較的大きな電流が流れる電源経路などに採用されることが多い。
【0015】
次に、上記した構成のバスバー10の作用について製造方法とともに説明する。バスバー10の製造工程では、図2に示すように、大きく分けて準備工程、屈曲部形成工程および端子部加工工程が実施される。ステップS1の準備工程では、線状の本体部11が準備される。より厳密には、本体部11を一部とする線状の母材16が準備される。ここで、線状とは、図3(A)に示すように板幅Wに対して長手方向の全長Lが長く形成されている状態を示している。すなわち、特許請求の範囲に記載した線状の本体部とは、上記したように、断面形状が円形の棒状のものに限らず、本実施形態のように矩形のもの、あるいは楕円形あるいはH字形状などの異形形状のものをも含んでいる。この母材16は、押し出し成形により本体部11と同じ平板状に形成されている。母材16は、押し出し成形に代えて、引き出し成型により形成してもよい。このように、本体部11は、準備工程において母材16の端部側に、母材16の一部として線状のものが準備される。
【0016】
準備工程で準備された母材16は、ステップS2の屈曲部形成工程において本体部11に相当する部位に複数の屈曲部13が形成される。この場合、母材16は、図3(B)から(F)の順で屈曲部13が順次形成される。この屈曲部13の形成は、フォーミング加工機あるいはNCベンダー加工機によって一連の流れ作業で形成される。より具体的には、母材16は、本体部11に相当する部位に、まず図3(B)に示すようにエッジワイズ曲げにより板幅方向に概ね90°屈曲する屈曲部132が形成される。続いて、母材16は、図3(C)に示すようにフラットワイズ曲げにより板厚方向に概ね90°屈曲する屈曲部131、133、134が形成される。続いて、図3(D)に示すようにエッジワイズ曲げにより屈曲部135が形成され、図3(E)に示す状態に曲げ加工された後、図3(F)に示すように屈曲部136が形成される。その後、本体部11は、母材16から切り離される。これにより、両端に端部14を有する本体部11が形成される。
【0017】
このように、本体部11は、屈曲部形成工程において少なくとも一ヵ所以上の屈曲部13が形成される。本実施形態の場合、本体部11は、エッジワイズ曲げおよびフラットワイズ曲げにより、屈曲方向が互いに異なるあるいは交差する複数の屈曲部13が形成されている。換言すると、本体部11は、軸方向が互いに交差または異なる二ヵ所以上の屈曲部13が形成された三次元的な立体構造に形成されている。
【0018】
各屈曲部13が形成された本体部11は、ステップS3の端子部加工工程において、それぞれの端部14に端子部12が形成される。具体的には、本体部11の端部14は、図3(G)に示すように、図示しないプレス加工機により加圧加工される。なお、図3(G)では屈曲部13の符号を省略している。この加圧加工により、本体部11の端部14が押しつぶされ、図4に示すように、本体部11よりも外形が大きく厚みの薄い板状の端子部12が形成される。これと同時に、押しつぶされた端子部12は、加工硬化により本体部11および屈曲部13よりも硬度が高くなる。本実施形態の場合、無酸素銅(C1020−O)で形成された本体部11の端部14は、加圧加工後に端子部12が形成された状態において、その硬度(ビッカース硬さ)が冷間加工をおこなって加工硬化させたH材(C1020−H)相当のHV80程度まで高くなる。また、端子部12の厚みは、全面に渡ってほぼ均一に形成される。
【0019】
その後、端子部12には、図3(H)に示すように、ねじ貫通孔15が形成される。各ねじ貫通孔15は、図示しないプレス加工機により同時に形成される。本実施形態の場合、双方の端子部12の向きが一致していることから、端子部12に同時にねじ貫通孔15を形成することが可能なプレス加工機を用いている。
ところで、本体部11は、上記したように三次元的に屈曲部13を形成するために柔軟性が求められている。特に、本実施形態のように平板状の本体部11にエッジワイズ曲げを施す場合、板幅をある程度細くすることが求められている。その場合、本体部11よりもねじ貫通孔15の方が大きくなることが予想される。そのような場合であっても、上記した端子部加工工程において端子部12を本体部11よりも外形が大きく形成することにより、端子部12に例えばM6サイズ用の大きなねじ貫通孔15を設けることが可能になる。
【0020】
このとき、端子部12の外形および厚みは、図5に示すように、本体部11の端部14に加える圧力を示す加圧値に相関する。具体的には、加圧値が大きくなると端子部12の外形すなわち板幅は大きくなる。一方、加圧値が大きくなると端子部12の厚みすなわち板厚は薄くなる。そのため、端子部12は、加圧値を調整することにより、ねじ貫通孔15に必要とされる大きさに形成される。つまり、端子部12の形状は、端子部12に求められる硬度を確保した上で、加圧値を変化させることによって制御される。このような製造工程を経て、複数の屈曲部13により三次元的な広がりを有する本体部11と、本体部11よりも硬度が高い端子部12とを備えたバスバー10が形成される。
【0021】
以上説明したバスバー10によれば、次のような効果を得ることができる。
バスバー10は、本体部11を加工性の高い無酸素銅(C1020−O)により形成している。このため、本体部11に屈曲部13を形成することは容易である。したがって、加工性を確保することができる。また、端子部12は、本体部11の端部14を加圧加工することにより形成している。これにより、端子部12の硬度は、加工硬化によってH材(C1020−H)の硬度相当まで高くなる。このため、端子台などへの取り付け時に端子部12が変形するおそれは抑制される。また、端子部12は、本体部11の端部14を加圧加工することにより、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されている。このため、別部材の端子部を本体部11に溶接したり圧着したりする必要は無い。したがって、生産性を向上させることができる。すなわち、バスバー10は、加工性の確保と生産性の向上とを両立することができる。
【0022】
本体部11は、エッジワイズ曲げおよびフラットワイズ曲げが施された屈曲部13を有する三次元的に形成されている。この場合、平板状の本体部11は、特にエッジワイズ曲げを施すことからある程度板幅を細くすることが求められる。このため、本体部11の板幅がねじ貫通孔15を形成するのに必要な大きさよりも小さくなるおそれがある。そのような場合であっても、加圧値を調整することにより、端子部12の外形を所望の大きさに形成することができる。したがって、本体部11を平板状に形成した場合であっても、硬度が高く、且つ、ねじ止めに必要な大きさを有する端子部12を形成することができる。また、プレス加工により端子部12は、厚みが均一に形成される。したがって、バスバー10は、端子台にねじ止めされたときにがたつくことなどがない。
【0023】
本体部11を含む母材16は、押し出し成形あるいは引き出し成型により形成される。これにより、本体部11にばりが発生することがない。したがって、ばり取り作業を行う必要が無く、生産性を向上させることができる。また、ばり取りすなわち材料ロスに伴う製造コストの増加を抑制することができる。また、押し出し成形あるいは引き出し成型により形成する場合、成型機の口金(ダイス)によって本体部11の断面形状つまり導電断面積の公差を少なくすることができる。これにより、本体部11は、導電断面積の変化が少なくなる。したがって、導電断面積の変化に起因する本体部11の発熱を低減することができる。
【0024】
屈曲部13は、フォーミング加工機またはベンダー加工機により形成されている。このため、本体部11を互いに屈曲方向が交差あるいは異なる屈曲部を少なくとも2ヵ所以上有する三次元的に形成することができる。また、本体部11の形状は、いわゆる一筆書き可能な形状であれば展開形状によらず自由に設計可能になる。このため、様々な形状のバスバー10を製造することができる。さらに、屈曲部13における本体部11の断面積の変化が小さいことから、屈曲部13における発熱を低減することができる。その上、フォーミング加工機またはベンダー加工機の場合、いわゆるコイル材を用いる順送プレスとは異なり材料ロスが発生しない。このため、製造コストを削減することができる。
【0025】
各端子部12のねじ貫通孔15は、プレス加工機により同時に形成されている。これにより、ねじ貫通孔15間のピッチは均一になる。したがって、バスバー10の機械的な品質のばらつきを抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0026】
上記したバスバー10の製造方法によれば、相対的に軟質な線状の本体部11に少なくとも一ヵ所以上の屈曲部13を形成する。続いて、本体部11の少なくとも一方の端部14を加圧して、本体部11よりも外形が大きく厚みの薄い板状の端子部12を形成する。このとき、本体部11の端部14は、加圧にともなう加工硬化によって硬度が本体部11よりも高くなる。これにより、端子部12は、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に、且つ、本体部11よりも硬度が高い板状に形成される。このように端子部12の形成と加工硬化とを同時に行うことにより、作業効率は改善される。したがって、上記したような加工性の確保および生産性の向上を両立するバスバー10を製造することができる。
【0027】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態によるバスバーを図6および図7を参照して説明する。第2実施形態におけるバスバーは、端子部の厚みを補填している点において第1実施形態と異なっている。なお、バスバーの本体部および製造方法の大まかな流れは、第1実施形態と共通である。そのため、以下の説明では、主としてバスバーの端子部について説明する。
端子部と本体部との厚みが異なる場合、すなわち、電流が流れる導通断面積が減少した部位がある場合、その部位は、高電圧および高周波領域において抵抗値が増加する。その場合、導通断面積が減少した部位における発熱が懸念される。そこで、本実施形態では、加圧加工後に厚みが薄くなる端子部の厚みを補填している。
【0028】
第2実施形態のバスバーは、図6(A)に示すように、本体部11の端部14に折り返し部20を有している。折り返し部20は、本体部11の図示上方に折り返され、本体部11に積層される。この折り返し部20は、本体部11と対向する側に凸部21を有している。凸部21は、折り返し部20が本体部11に積層されたとき、本体部11に設けられている凹部22と一致する位置に設けられている。つまり、凸部21は、図6(B)に示すように、折り返し部20と本体部11とが積層された状態になると、凹部22に係合する。これら凸部21および凹部22は、加圧加工時に折り返し部20と本体部11との相対的な位置関係にずれが生じることを規制する。つまり、凸部21および凹部22は、特許請求の範囲に記載したずれ規制処理部に相当する。
【0029】
この状態で、折り返し部20および本体部11を含むバスバーの端部14は、第1実施形態と同様に端子部加工工程において加圧加工される。その結果、図6(C)に示すように、ずれのない端子部23が形成される。この場合、折り返し部20および本体部11の接触面は、加圧加工時における発熱によっていわゆる拡散溶接と同様の状態になる。その結果、折り返し部20と本体部11、および、端子部23と本体部11とは、それぞれ一体に継ぎ目無く形成される。また、端子部23の硬度は、第1実施形態と同様に、加工硬化により高くなる。
【0030】
このとき、本体部11の端部14を折り返す向きは、図6(A)に示す向きに限らず、図7(A)に示すように本体部11の図示下方から積層してもよい。また、折り返し部20を設ける代わりに、図7(B)に示すように、本体部11と同一の材料で形成された補填部材25を積層して端子部23を形成してもよい。いずれの場合であっても、加圧加工後の端子部23は、その厚みが補填されて本体部11と概ね一致する厚みに形成される。これにより、本体部11と端子部23との境目のネック部24は、その導電断面積が本体部11とほぼ一致する。その後、端子部23に図示しないねじ貫通孔が形成される。
【0031】
以上説明した第2実施形態によれば、バスバーの端子部23は、加圧加工後の厚みが概ね本体部11に等しくなる。これにより、本体部11と端子部23との間における導通断面積の減少が低減され、ネック部24における発熱を抑制することができる。
【0032】
また、折り返し部20および本体部11は、ずれ規制処理部としての凸部21と凹部22とを有している。これにより、加圧加工時における互いのずれが規制される。したがって、端子部23を所望の厚みに形成することができる。この場合、ずれ規制処理部は、凸部21や凹部22に限らず、互いのずれを規制できるものであればどのようなものであってもよい。このようなずれ規制処理部としては、例えばヘアーライン加工あるいはセレーションなどのローレット加工による表面処理や、スポット溶接などの抵抗溶接、TIG溶接あるいはレーザ溶接などによる仮止め処理、導電性の接着剤の利用などがある。いずれにしろ、互いのずれを規制することができるものであれば、その手法や工法は限定されない。また、ずれ規制処理部は、本体部11と折り返し部20、または、本体部11と補填部材25の互いに対向する面の一方に設けてもよい。
【0033】
第2実施形態のバスバーは、端子部23と本体部11とがほぼ同じ厚みに形成されている。例えばバスバーに振動が加わった場合、本体部11と端子部23との境目であるネック部24に応力が集中することが想定される。その場合であっても、端子部23を本体部11とほぼ同じ厚みに形成したことにより、ネック部24の機械的な強度を大きくすることができ、耐振動性をも向上させることができる。
【0034】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態によるバスバーを図8および図9を参照して説明する。第3実施形態におけるバスバーは、端子部のねじ貫通孔の形成工程が第1実施形態と異なっている。なお、バスバーの本体部およびバスバーの製造方法の大まかな流れは、第1実施形態と共通である。そのため、以下の説明では、主としてバスバーの端子部について説明する。
第3実施形態のバスバーは、端子部加工工程の前に、図8(A)に示すように本体部11の端部14を略円環状に概ね3/4周程度折り返して本体部11に積層している。この状態で、端部14を加圧加工すると、図8(B)に示すように、孔30が設けられた端子部31が形成される。この孔30は、ねじ貫通孔として利用可能になる。このように、本体部11の端部14を略円環状に折り返して積層し、加圧加工を施すことにより、孔30を設けた端子部31が形成される。例えば端子部31にねじ貫通孔をドリルなどで切削加工またはパンチなどでプレス加工すると、切削部位において材料ロスが発生する。これに対して、本実施形態のように本体部11の端部14を略円環状に折り返して孔30を形成することによって切削加工が不要となり、材料ロスは削減される。したがって、製造コストの低減を図ることができる。また、孔30が既に形成されていることから、ねじ貫通孔を設ける作業を簡略化することができ、生産性を向上させることもできる。
【0035】
また、図9(A)に示すように、本体部11の端部14を略円環状に概ね1周折り返して本体部11の端部14に積層してもよい。この場合であっても、図9(B)に示すように、孔32が設けられた端子部33が形成される。そして、この孔32をねじ貫通孔として利用すれば、上記したように製造工数および材料ロスを低減することができる。この場合、第2実施形態と同様に加圧加工後の厚みを補填したり、積層する部位の互いに対向する面にずれ規制処理部を設けたりしてもよいことは勿論である。
【0036】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した各実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。また、複数の屈曲部13を有するバスバーを例示したが、本発明は、一ヵ所の屈曲部13を有するバスバーにも適用できる。
【0037】
各実施形態では平板状に形成した本体部11を例示したが、前述の通り本体部の形状はどのような形状であってもよい。例えば図10に示すように、バスバー40の本体部41は、断面形状が円形状の棒材を用いて形成してもよい。この場合、本体部41は、第1実施形態と同様に押し出し成形や引き出し成型により形成される。また、本体部41を棒状に形成した場合、平板状の本体部11と比較すると、端子部42の向きを互い違いにすることが容易になる。つまり、棒状の本体部41を有するバスバー40は、端子部42の向きの自由が大きくなる。これにより、バスバー10が取り付けられる端子台の向きに応じて、最短且つ最適な経路の本体部41を有するバスバー40を製造することができる。この場合、端子台間を接続するために必要な材料が低減され、製造コストも低減することができる。
【0038】
第1実施形態の図3に示した母材16への屈曲部13の形成順序は一例であり、この順序に限定されない。例えば、本体部11を母材16から切り離した後に屈曲部136を形成するなど順序を適宜変更してもよい。また、本体部11、41を押し出し成形や引き出し成型により形成する例を示したが、例えば圧延した材料をスリット加工したり、プレス加工により裁断したりして形成してもよい。
バスバーの材料として無酸素銅を例示したが、これに限定されない。バスバーは、例えば黄銅、リン青銅やアルミニウムあるいはそれらの合金や、クラッド材、メッキ材あるいはエナメル被覆材など、導電性を有し加工硬化する材料であればよい。
【0039】
第2実施形態では端子部23を本体部11とほぼ同じ厚みに形成したが、厚みを本体部11よりも薄く形成してもよい。すなわち、本体部11の導通断面積と端子部23の導通断面積とをほぼ等しくすれば、厚みそのものは任意に変更してもよい。また、端子部12、23、42をプレス加工機により加圧加工する例を示したが、ロール圧延機により加圧加工してもよい。また、端子部加工工程を屈曲部形成工程と同時に実施してもよい。
端子部12、23、42の外形は加圧加工により形成された形状のままとしたが、取り付ける端子台の形状や近接する部品の有無などに応じてトリミングなどを施して形状を変更してもよい。
第1実施形態では円形のねじ貫通孔15を設け、第3実施形態では略円環状の孔30、32をねじ貫通孔として利用する例を示したが、一部が切断されたC字状や円弧状または長孔状のねじ貫通孔を設けてもよい。また、端子部の向きが互いに異なる場合には、ドリルやパンチなどでそれぞれねじ貫通孔15を形成してもよい。
また、各実施形態では端子部を板状に形成した例を示したが、端子部を棒状に形成してもよい。例えば、第1実施形態の板状の本体部11を板幅方向から加圧加工して棒状に形成したり、図10に示す本体部41を互いに直交する方向から加圧加工して四角柱状に形成することなどが考えられる。この場合、棒状の端子部にねじ貫通孔を形成してもよいし、ねじ貫通孔を設けず、板状あるいは棒状の端子部を端子台に挿入して挟持する利用形態であってもよい。
【0040】
端子部42を加圧加工する方向は任意に設定することができる。例えば、一つの端子台に複数の第1実施形態のバスバー10を共締めする場合、図11に示すように加圧加工の方向すなわち本体部11の端部14を押しつぶす方向を互いに逆にしてもよい。これにより、端子台50からバスバー10の最外面までの距離を短くでき、バスバー10を取り付ける装置の小型化を図ることができる。これに対し、装置の大きさが同じでよい場合には高電圧が印可されるバスバー10と周辺部品51との空間すなわちエアギャップが大きくなる。これにより、絶縁性能を向上させることができる。この場合、屈曲部13の曲げ半径を小さくすることができれば、すなわち、本体部11の加工性が高ければ、装置の小型化をより促進することができる。換言すると、本体部11を軟質な材料で形成し、端子部12を加工硬化したバスバー10は、上記した加工性の確保と生産性の向上とを両立できることに加え、バスバー10を適用する装置の小型化や絶縁性能の向上をも期待できる。
【符号の説明】
【0041】
図面中、10、40はバスバー、11、41は本体部、12、23、31、33、42は端子部、13は屈曲部、14は端部、21は凸部(ずれ規制処理部)、22は凹部(ずれ規制処理部)、25は補填部材、30、32は孔を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はバスバーおよびバスバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばインバータ装置やバッテリなどの端子台間を電気的に接続するバスバーが公知である(例えば特許文献1参照)。このようなバスバーは、折り曲げ加工が施された屈曲部を有する本体部と、本体部の端部に設けられた端子部とを備えている。このため、バスバーの本体部は、屈曲部を形成するための柔軟性を有する比較的軟質な材料で形成されている。一方、バスバーの端子部は、例えばねじ止めなどにより端子台に取り付ける場合、ある程度の硬度が求められる。そのため、バスバーの端子部は、一般的に本体部に別部材で形成した端子部材を溶接や圧着などにより取り付けて形成されている。
【0003】
しかしながら、端子部を別部材で形成すると、本体部への溶接や圧着などの作業が必要となり生産性は悪化する。この場合、生産性や作業性を改善するために本体部にねじ貫通孔などを設けて端子部として利用すると、柔軟性を有する本体部は、端子台などへの取り付け時に変形するおそれがある。一方、端子部に求められる硬度を有する材料で本体部を形成すると、折り曲げ加工を施すことは困難になる。このように、バスバーは、本体部の加工性を高めるためには材料の硬度を低くすることが求められ、端子部の変形を抑制するためには材料の硬度を高くすることが求められている。すなわち、加工性の確保と生産性の向上とを両立することは困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−4520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的は、加工性の確保と生産性の向上とを両立するバスバーおよびバスバーの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明では、バスバーは、少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を有する本体部と、本体部の少なくとも一方の端部に設けられ、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成され、屈曲部よりも硬度が高い板状あるいは棒状の端子部とを備えている。ここで、棒状とは、断面形状が円形状や楕円形のものに限らず、断面形状が矩形状の角柱などの形状をも含むことを意味している。このような構成によれば、本体部は、端子部よりも硬度が低いため、屈曲部の形成が容易である。したがって、本体部は、折り曲げ加工などを施す場合の加工性を確保することができる。一方、端子部は、屈曲部よりも硬度が高いことから取り付け時に変形するおそれが抑制される。また、端子部は、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されている。このため、端子部を形成するために本体部に別部材の端子部を溶接したり圧着したりする必要は無い。したがって、バスバー製造時の作業工数を削減でき、生産性を向上させることができる。すなわち、加工性の確保と生産性の向上とを両立することができる。
【0007】
請求項2の発明では、端子部は、本体部の端部を折り返して積層されている。例えば本体部を平板状に形成した場合、端子部は、加工硬化にともなって本体部よりも厚みが薄くなるおそれがある。その場合、電流が流れる導通断面積が減少し、高電圧および高周波領域において発熱することが懸念される。そこで、本体部の端部を折り返して積層することにより、端子部は、加工硬化後における厚みが補填される。したがって、本体部と端子部との境目における発熱を抑制することができる。平板状以外の形状の本体部を用いる場合も同様である。
【0008】
請求項3の発明では、端子部において折り返されている本体部の端部は、内側に孔を形成する略円環状に折り返され、先端が本体部または前記本体部の端部に積層されている。端子部は、一般的に端子台に取り付けるためのねじ貫通孔などを有している。ここで、略円環状とは、真円で形成された円環ではなく、一部に直線状や楕円形状などを含む真円以外の形状をも含むことを意味している。この場合、ねじ貫通孔などをドリルなどで切削加工またはパンチなどでプレス加工すると、切削部位において材料ロスが発生する。そこで、本体部の端部を略円環状に折り返して孔を形成し、その孔をねじ貫通孔などとして利用する。これにより、端子部の形成後にねじ貫通孔を形成する作業量は軽減される。また、切削加工時の材料ロスは抑制される。したがって、生産性を向上させることができるとともに、製造コストの低減を図ることができる。
【0009】
請求項4の発明では、端子部において折り返されている本体部の端部は、他方と対向する面の少なくとも一方に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有する。本体部の端部を折り返して積層する場合、端子部の加工硬化にともなって互いの位置にずれが生じるおそれがある。そこで、折り返し部位において対向する面の少なくとも一方にずれ規制処理部を設けることにより、互いのずれを規制することができる。したがって、加工硬化後の端子部を所望の厚みに形成することができる。
【0010】
請求項5の発明では、端子部は、本体部と同一の材料で形成され、厚さを補填する補填部材が本体部と継ぎ目なく一体に形成されている。これにより、上記した請求項2の発明と同様に、端子部は、加工硬化後における厚みが補填される。したがって、本体部と端子部との境目における発熱を抑制することができる。
請求項6の発明では、補填部材または本体部の少なくともいずれか一方は、他方と対向する面に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有する。これにより、上記した請求項4の発明と同様に、補填部材および本体部の相対的なずれを規制しつつ、端子部を所望の厚みに形成することができる。
【0011】
請求項7の発明では、本体部は、屈曲方向が互いに異なる複数の屈曲部を有する三次元的に形成されている。この場合、本体部は、屈曲方向が異なる複数の屈曲部を形成することから、より柔軟性が求められる。その場合であっても、端子部は、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に、且つ、屈曲部よりも硬度が高く形成される。したがって、加工性の確保および生産性の向上を両立させることができる。
請求項8の発明では、線状の本体部に少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を形成し、本体部の少なくとも一方の端部を加圧して板状あるいは棒状の端子部を形成すると同時に、本体部の加圧によって端子部の硬度を本体部よりも高くする。これにより、端子部は、本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に、且つ、本体部よりも硬度が高い板状あるいは棒状に形成される。このように端子部の形成および加工硬化を同時に行うことにより、作業工数は削減される。したがって、上記した請求項1の発明に記載したように、加工性の確保と生産性の向上とを両立するバスバーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態によるバスバーの外形を模式的に示す斜視図
【図2】第1実施形態によるバスバーの製造工程の流れを示す図
【図3】第1実施形態によるバスバーの加圧工程を模式的に示す図
【図4】第1実施形態のバスバーの端子部を示す図
【図5】第1実施形態による加圧値と板幅および板厚の関係を模式的に示す図
【図6】第2実施形態のバスバーの端子部の加圧工程を模式的に示す図
【図7】第2実施形態のバスバーの端子部の他の構成例を模式的に示す図
【図8】第3実施形態のバスバーの端子部の加圧工程を模式的に示す図その1
【図9】第3実施形態のバスバーの端子部の加圧工程を模式的に示す図その2
【図10】その他の実施形態によるバスバーを模式的に示す斜視図
【図11】その他の実施形態によるバスバーの取り付け状態を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、バスバーの複数の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する複数の実施形態では実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態によるバスバーおよびバスバーの製造方法を図1から図5を参照して説明する。図1に示すように、バスバー10は、本体部11および端子部12を備えている。本体部11は、断面形状が矩形の平板状に形成されている。本体部11は、断面形状が矩形のものに限らず、断面形状が円形の棒状のもの、あるいは断面形状が楕円形あるいはH字形状などの異形形状であってもよい。また、本体部11は、複数の屈曲部13を有している。本体部11に設けられている屈曲部13のうち、屈曲部131、133、134および136は、平板状の本体部11の板厚方向に屈曲するいわゆるフラットワイズ曲げにより形成されている。また、屈曲部132および135は、本体部11の板幅方向に屈曲するいわゆるエッジワイズ曲げにより形成されている。以下、各屈曲部131〜136について共通の説明をする場合には単に屈曲部13と称する。このように、本体部11は、一ヵ所以上の屈曲部13を有する三次元的に形成されている。換言すると、本体部11は、三次元的な折り曲げを施せる程度に軟質で加工性の高い材料により形成されている。本実施形態では、本体部11は、電気伝導性が高い純銅を焼きなましすることで加工性を高めた無酸素銅(C1020−O)で形成されている。各屈曲部13の位置や屈曲方向は、バスバー10を取り付ける図示しない端子台などの形状に応じて適宜決定される。
【0014】
端子部12は、本体部11の双方の端部14にそれぞれ設けられている。各端子部12は、本体部11よりも外形が大きく厚みが薄い板状に形成されている。この端子部12は、本体部11の端部14を板厚方向に押しつぶした状態に形成されている。すなわち、端子部12は、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されている。また、端子部12は、押しつぶされたときの応力による塑性変形により硬化すなわち加工硬化により、本体部11よりも硬度が高く形成されている。これらの端子部12は、本体部11を図示しない端子台に取り付けるためのねじ貫通孔15が設けられている。
このような構成のバスバー10は、図示しない端子台の端子に取り付けられることにより、端子台間を電気的に接続する。具体的には、バスバー10は、例えばインバータ装置内の配線部材として、あるいは外部電源との接続部材として用いられる。つまり、バスバー10は、一般的な信号経路に比べて比較的大きな電流が流れる電源経路などに採用されることが多い。
【0015】
次に、上記した構成のバスバー10の作用について製造方法とともに説明する。バスバー10の製造工程では、図2に示すように、大きく分けて準備工程、屈曲部形成工程および端子部加工工程が実施される。ステップS1の準備工程では、線状の本体部11が準備される。より厳密には、本体部11を一部とする線状の母材16が準備される。ここで、線状とは、図3(A)に示すように板幅Wに対して長手方向の全長Lが長く形成されている状態を示している。すなわち、特許請求の範囲に記載した線状の本体部とは、上記したように、断面形状が円形の棒状のものに限らず、本実施形態のように矩形のもの、あるいは楕円形あるいはH字形状などの異形形状のものをも含んでいる。この母材16は、押し出し成形により本体部11と同じ平板状に形成されている。母材16は、押し出し成形に代えて、引き出し成型により形成してもよい。このように、本体部11は、準備工程において母材16の端部側に、母材16の一部として線状のものが準備される。
【0016】
準備工程で準備された母材16は、ステップS2の屈曲部形成工程において本体部11に相当する部位に複数の屈曲部13が形成される。この場合、母材16は、図3(B)から(F)の順で屈曲部13が順次形成される。この屈曲部13の形成は、フォーミング加工機あるいはNCベンダー加工機によって一連の流れ作業で形成される。より具体的には、母材16は、本体部11に相当する部位に、まず図3(B)に示すようにエッジワイズ曲げにより板幅方向に概ね90°屈曲する屈曲部132が形成される。続いて、母材16は、図3(C)に示すようにフラットワイズ曲げにより板厚方向に概ね90°屈曲する屈曲部131、133、134が形成される。続いて、図3(D)に示すようにエッジワイズ曲げにより屈曲部135が形成され、図3(E)に示す状態に曲げ加工された後、図3(F)に示すように屈曲部136が形成される。その後、本体部11は、母材16から切り離される。これにより、両端に端部14を有する本体部11が形成される。
【0017】
このように、本体部11は、屈曲部形成工程において少なくとも一ヵ所以上の屈曲部13が形成される。本実施形態の場合、本体部11は、エッジワイズ曲げおよびフラットワイズ曲げにより、屈曲方向が互いに異なるあるいは交差する複数の屈曲部13が形成されている。換言すると、本体部11は、軸方向が互いに交差または異なる二ヵ所以上の屈曲部13が形成された三次元的な立体構造に形成されている。
【0018】
各屈曲部13が形成された本体部11は、ステップS3の端子部加工工程において、それぞれの端部14に端子部12が形成される。具体的には、本体部11の端部14は、図3(G)に示すように、図示しないプレス加工機により加圧加工される。なお、図3(G)では屈曲部13の符号を省略している。この加圧加工により、本体部11の端部14が押しつぶされ、図4に示すように、本体部11よりも外形が大きく厚みの薄い板状の端子部12が形成される。これと同時に、押しつぶされた端子部12は、加工硬化により本体部11および屈曲部13よりも硬度が高くなる。本実施形態の場合、無酸素銅(C1020−O)で形成された本体部11の端部14は、加圧加工後に端子部12が形成された状態において、その硬度(ビッカース硬さ)が冷間加工をおこなって加工硬化させたH材(C1020−H)相当のHV80程度まで高くなる。また、端子部12の厚みは、全面に渡ってほぼ均一に形成される。
【0019】
その後、端子部12には、図3(H)に示すように、ねじ貫通孔15が形成される。各ねじ貫通孔15は、図示しないプレス加工機により同時に形成される。本実施形態の場合、双方の端子部12の向きが一致していることから、端子部12に同時にねじ貫通孔15を形成することが可能なプレス加工機を用いている。
ところで、本体部11は、上記したように三次元的に屈曲部13を形成するために柔軟性が求められている。特に、本実施形態のように平板状の本体部11にエッジワイズ曲げを施す場合、板幅をある程度細くすることが求められている。その場合、本体部11よりもねじ貫通孔15の方が大きくなることが予想される。そのような場合であっても、上記した端子部加工工程において端子部12を本体部11よりも外形が大きく形成することにより、端子部12に例えばM6サイズ用の大きなねじ貫通孔15を設けることが可能になる。
【0020】
このとき、端子部12の外形および厚みは、図5に示すように、本体部11の端部14に加える圧力を示す加圧値に相関する。具体的には、加圧値が大きくなると端子部12の外形すなわち板幅は大きくなる。一方、加圧値が大きくなると端子部12の厚みすなわち板厚は薄くなる。そのため、端子部12は、加圧値を調整することにより、ねじ貫通孔15に必要とされる大きさに形成される。つまり、端子部12の形状は、端子部12に求められる硬度を確保した上で、加圧値を変化させることによって制御される。このような製造工程を経て、複数の屈曲部13により三次元的な広がりを有する本体部11と、本体部11よりも硬度が高い端子部12とを備えたバスバー10が形成される。
【0021】
以上説明したバスバー10によれば、次のような効果を得ることができる。
バスバー10は、本体部11を加工性の高い無酸素銅(C1020−O)により形成している。このため、本体部11に屈曲部13を形成することは容易である。したがって、加工性を確保することができる。また、端子部12は、本体部11の端部14を加圧加工することにより形成している。これにより、端子部12の硬度は、加工硬化によってH材(C1020−H)の硬度相当まで高くなる。このため、端子台などへの取り付け時に端子部12が変形するおそれは抑制される。また、端子部12は、本体部11の端部14を加圧加工することにより、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成されている。このため、別部材の端子部を本体部11に溶接したり圧着したりする必要は無い。したがって、生産性を向上させることができる。すなわち、バスバー10は、加工性の確保と生産性の向上とを両立することができる。
【0022】
本体部11は、エッジワイズ曲げおよびフラットワイズ曲げが施された屈曲部13を有する三次元的に形成されている。この場合、平板状の本体部11は、特にエッジワイズ曲げを施すことからある程度板幅を細くすることが求められる。このため、本体部11の板幅がねじ貫通孔15を形成するのに必要な大きさよりも小さくなるおそれがある。そのような場合であっても、加圧値を調整することにより、端子部12の外形を所望の大きさに形成することができる。したがって、本体部11を平板状に形成した場合であっても、硬度が高く、且つ、ねじ止めに必要な大きさを有する端子部12を形成することができる。また、プレス加工により端子部12は、厚みが均一に形成される。したがって、バスバー10は、端子台にねじ止めされたときにがたつくことなどがない。
【0023】
本体部11を含む母材16は、押し出し成形あるいは引き出し成型により形成される。これにより、本体部11にばりが発生することがない。したがって、ばり取り作業を行う必要が無く、生産性を向上させることができる。また、ばり取りすなわち材料ロスに伴う製造コストの増加を抑制することができる。また、押し出し成形あるいは引き出し成型により形成する場合、成型機の口金(ダイス)によって本体部11の断面形状つまり導電断面積の公差を少なくすることができる。これにより、本体部11は、導電断面積の変化が少なくなる。したがって、導電断面積の変化に起因する本体部11の発熱を低減することができる。
【0024】
屈曲部13は、フォーミング加工機またはベンダー加工機により形成されている。このため、本体部11を互いに屈曲方向が交差あるいは異なる屈曲部を少なくとも2ヵ所以上有する三次元的に形成することができる。また、本体部11の形状は、いわゆる一筆書き可能な形状であれば展開形状によらず自由に設計可能になる。このため、様々な形状のバスバー10を製造することができる。さらに、屈曲部13における本体部11の断面積の変化が小さいことから、屈曲部13における発熱を低減することができる。その上、フォーミング加工機またはベンダー加工機の場合、いわゆるコイル材を用いる順送プレスとは異なり材料ロスが発生しない。このため、製造コストを削減することができる。
【0025】
各端子部12のねじ貫通孔15は、プレス加工機により同時に形成されている。これにより、ねじ貫通孔15間のピッチは均一になる。したがって、バスバー10の機械的な品質のばらつきを抑制することができ、歩留まりを向上させることができる。
【0026】
上記したバスバー10の製造方法によれば、相対的に軟質な線状の本体部11に少なくとも一ヵ所以上の屈曲部13を形成する。続いて、本体部11の少なくとも一方の端部14を加圧して、本体部11よりも外形が大きく厚みの薄い板状の端子部12を形成する。このとき、本体部11の端部14は、加圧にともなう加工硬化によって硬度が本体部11よりも高くなる。これにより、端子部12は、本体部11と同一の材料で継ぎ目なく一体に、且つ、本体部11よりも硬度が高い板状に形成される。このように端子部12の形成と加工硬化とを同時に行うことにより、作業効率は改善される。したがって、上記したような加工性の確保および生産性の向上を両立するバスバー10を製造することができる。
【0027】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態によるバスバーを図6および図7を参照して説明する。第2実施形態におけるバスバーは、端子部の厚みを補填している点において第1実施形態と異なっている。なお、バスバーの本体部および製造方法の大まかな流れは、第1実施形態と共通である。そのため、以下の説明では、主としてバスバーの端子部について説明する。
端子部と本体部との厚みが異なる場合、すなわち、電流が流れる導通断面積が減少した部位がある場合、その部位は、高電圧および高周波領域において抵抗値が増加する。その場合、導通断面積が減少した部位における発熱が懸念される。そこで、本実施形態では、加圧加工後に厚みが薄くなる端子部の厚みを補填している。
【0028】
第2実施形態のバスバーは、図6(A)に示すように、本体部11の端部14に折り返し部20を有している。折り返し部20は、本体部11の図示上方に折り返され、本体部11に積層される。この折り返し部20は、本体部11と対向する側に凸部21を有している。凸部21は、折り返し部20が本体部11に積層されたとき、本体部11に設けられている凹部22と一致する位置に設けられている。つまり、凸部21は、図6(B)に示すように、折り返し部20と本体部11とが積層された状態になると、凹部22に係合する。これら凸部21および凹部22は、加圧加工時に折り返し部20と本体部11との相対的な位置関係にずれが生じることを規制する。つまり、凸部21および凹部22は、特許請求の範囲に記載したずれ規制処理部に相当する。
【0029】
この状態で、折り返し部20および本体部11を含むバスバーの端部14は、第1実施形態と同様に端子部加工工程において加圧加工される。その結果、図6(C)に示すように、ずれのない端子部23が形成される。この場合、折り返し部20および本体部11の接触面は、加圧加工時における発熱によっていわゆる拡散溶接と同様の状態になる。その結果、折り返し部20と本体部11、および、端子部23と本体部11とは、それぞれ一体に継ぎ目無く形成される。また、端子部23の硬度は、第1実施形態と同様に、加工硬化により高くなる。
【0030】
このとき、本体部11の端部14を折り返す向きは、図6(A)に示す向きに限らず、図7(A)に示すように本体部11の図示下方から積層してもよい。また、折り返し部20を設ける代わりに、図7(B)に示すように、本体部11と同一の材料で形成された補填部材25を積層して端子部23を形成してもよい。いずれの場合であっても、加圧加工後の端子部23は、その厚みが補填されて本体部11と概ね一致する厚みに形成される。これにより、本体部11と端子部23との境目のネック部24は、その導電断面積が本体部11とほぼ一致する。その後、端子部23に図示しないねじ貫通孔が形成される。
【0031】
以上説明した第2実施形態によれば、バスバーの端子部23は、加圧加工後の厚みが概ね本体部11に等しくなる。これにより、本体部11と端子部23との間における導通断面積の減少が低減され、ネック部24における発熱を抑制することができる。
【0032】
また、折り返し部20および本体部11は、ずれ規制処理部としての凸部21と凹部22とを有している。これにより、加圧加工時における互いのずれが規制される。したがって、端子部23を所望の厚みに形成することができる。この場合、ずれ規制処理部は、凸部21や凹部22に限らず、互いのずれを規制できるものであればどのようなものであってもよい。このようなずれ規制処理部としては、例えばヘアーライン加工あるいはセレーションなどのローレット加工による表面処理や、スポット溶接などの抵抗溶接、TIG溶接あるいはレーザ溶接などによる仮止め処理、導電性の接着剤の利用などがある。いずれにしろ、互いのずれを規制することができるものであれば、その手法や工法は限定されない。また、ずれ規制処理部は、本体部11と折り返し部20、または、本体部11と補填部材25の互いに対向する面の一方に設けてもよい。
【0033】
第2実施形態のバスバーは、端子部23と本体部11とがほぼ同じ厚みに形成されている。例えばバスバーに振動が加わった場合、本体部11と端子部23との境目であるネック部24に応力が集中することが想定される。その場合であっても、端子部23を本体部11とほぼ同じ厚みに形成したことにより、ネック部24の機械的な強度を大きくすることができ、耐振動性をも向上させることができる。
【0034】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態によるバスバーを図8および図9を参照して説明する。第3実施形態におけるバスバーは、端子部のねじ貫通孔の形成工程が第1実施形態と異なっている。なお、バスバーの本体部およびバスバーの製造方法の大まかな流れは、第1実施形態と共通である。そのため、以下の説明では、主としてバスバーの端子部について説明する。
第3実施形態のバスバーは、端子部加工工程の前に、図8(A)に示すように本体部11の端部14を略円環状に概ね3/4周程度折り返して本体部11に積層している。この状態で、端部14を加圧加工すると、図8(B)に示すように、孔30が設けられた端子部31が形成される。この孔30は、ねじ貫通孔として利用可能になる。このように、本体部11の端部14を略円環状に折り返して積層し、加圧加工を施すことにより、孔30を設けた端子部31が形成される。例えば端子部31にねじ貫通孔をドリルなどで切削加工またはパンチなどでプレス加工すると、切削部位において材料ロスが発生する。これに対して、本実施形態のように本体部11の端部14を略円環状に折り返して孔30を形成することによって切削加工が不要となり、材料ロスは削減される。したがって、製造コストの低減を図ることができる。また、孔30が既に形成されていることから、ねじ貫通孔を設ける作業を簡略化することができ、生産性を向上させることもできる。
【0035】
また、図9(A)に示すように、本体部11の端部14を略円環状に概ね1周折り返して本体部11の端部14に積層してもよい。この場合であっても、図9(B)に示すように、孔32が設けられた端子部33が形成される。そして、この孔32をねじ貫通孔として利用すれば、上記したように製造工数および材料ロスを低減することができる。この場合、第2実施形態と同様に加圧加工後の厚みを補填したり、積層する部位の互いに対向する面にずれ規制処理部を設けたりしてもよいことは勿論である。
【0036】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した各実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形または拡張することができる。また、複数の屈曲部13を有するバスバーを例示したが、本発明は、一ヵ所の屈曲部13を有するバスバーにも適用できる。
【0037】
各実施形態では平板状に形成した本体部11を例示したが、前述の通り本体部の形状はどのような形状であってもよい。例えば図10に示すように、バスバー40の本体部41は、断面形状が円形状の棒材を用いて形成してもよい。この場合、本体部41は、第1実施形態と同様に押し出し成形や引き出し成型により形成される。また、本体部41を棒状に形成した場合、平板状の本体部11と比較すると、端子部42の向きを互い違いにすることが容易になる。つまり、棒状の本体部41を有するバスバー40は、端子部42の向きの自由が大きくなる。これにより、バスバー10が取り付けられる端子台の向きに応じて、最短且つ最適な経路の本体部41を有するバスバー40を製造することができる。この場合、端子台間を接続するために必要な材料が低減され、製造コストも低減することができる。
【0038】
第1実施形態の図3に示した母材16への屈曲部13の形成順序は一例であり、この順序に限定されない。例えば、本体部11を母材16から切り離した後に屈曲部136を形成するなど順序を適宜変更してもよい。また、本体部11、41を押し出し成形や引き出し成型により形成する例を示したが、例えば圧延した材料をスリット加工したり、プレス加工により裁断したりして形成してもよい。
バスバーの材料として無酸素銅を例示したが、これに限定されない。バスバーは、例えば黄銅、リン青銅やアルミニウムあるいはそれらの合金や、クラッド材、メッキ材あるいはエナメル被覆材など、導電性を有し加工硬化する材料であればよい。
【0039】
第2実施形態では端子部23を本体部11とほぼ同じ厚みに形成したが、厚みを本体部11よりも薄く形成してもよい。すなわち、本体部11の導通断面積と端子部23の導通断面積とをほぼ等しくすれば、厚みそのものは任意に変更してもよい。また、端子部12、23、42をプレス加工機により加圧加工する例を示したが、ロール圧延機により加圧加工してもよい。また、端子部加工工程を屈曲部形成工程と同時に実施してもよい。
端子部12、23、42の外形は加圧加工により形成された形状のままとしたが、取り付ける端子台の形状や近接する部品の有無などに応じてトリミングなどを施して形状を変更してもよい。
第1実施形態では円形のねじ貫通孔15を設け、第3実施形態では略円環状の孔30、32をねじ貫通孔として利用する例を示したが、一部が切断されたC字状や円弧状または長孔状のねじ貫通孔を設けてもよい。また、端子部の向きが互いに異なる場合には、ドリルやパンチなどでそれぞれねじ貫通孔15を形成してもよい。
また、各実施形態では端子部を板状に形成した例を示したが、端子部を棒状に形成してもよい。例えば、第1実施形態の板状の本体部11を板幅方向から加圧加工して棒状に形成したり、図10に示す本体部41を互いに直交する方向から加圧加工して四角柱状に形成することなどが考えられる。この場合、棒状の端子部にねじ貫通孔を形成してもよいし、ねじ貫通孔を設けず、板状あるいは棒状の端子部を端子台に挿入して挟持する利用形態であってもよい。
【0040】
端子部42を加圧加工する方向は任意に設定することができる。例えば、一つの端子台に複数の第1実施形態のバスバー10を共締めする場合、図11に示すように加圧加工の方向すなわち本体部11の端部14を押しつぶす方向を互いに逆にしてもよい。これにより、端子台50からバスバー10の最外面までの距離を短くでき、バスバー10を取り付ける装置の小型化を図ることができる。これに対し、装置の大きさが同じでよい場合には高電圧が印可されるバスバー10と周辺部品51との空間すなわちエアギャップが大きくなる。これにより、絶縁性能を向上させることができる。この場合、屈曲部13の曲げ半径を小さくすることができれば、すなわち、本体部11の加工性が高ければ、装置の小型化をより促進することができる。換言すると、本体部11を軟質な材料で形成し、端子部12を加工硬化したバスバー10は、上記した加工性の確保と生産性の向上とを両立できることに加え、バスバー10を適用する装置の小型化や絶縁性能の向上をも期待できる。
【符号の説明】
【0041】
図面中、10、40はバスバー、11、41は本体部、12、23、31、33、42は端子部、13は屈曲部、14は端部、21は凸部(ずれ規制処理部)、22は凹部(ずれ規制処理部)、25は補填部材、30、32は孔を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を有する本体部と、
前記本体部の少なくとも一方の端部に設けられ、前記本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成され、前記屈曲部よりも硬度が高い板状あるいは棒状の端子部と、
を備えることを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記端子部は、前記本体部の端部を折り返して積層されていることを特徴とする請求項1記載のバスバー。
【請求項3】
前記端子部において折り返されている前記本体部の端部は、内側に孔を形成する略円環状に折り返され、先端が前記本体部または前記本体部の端部に積層されていることを特徴とする請求項2記載のバスバー。
【請求項4】
前記端子部において折り返されている前記本体部の端部は、他方と対向する面の少なくとも一方に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有することを特徴とする請求項2または3記載のバスバー。
【請求項5】
前記端子部は、前記本体部と同一の材料で形成され、厚さを補填する補填部材が前記本体部と継ぎ目なく一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のバスバー。
【請求項6】
前記補填部材または前記本体部の少なくともいずれか一方は、他方と対向する面に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有することを特徴とする請求項5記載のバスバー。
【請求項7】
前記本体部は、屈曲方向が互いに異なる複数の屈曲部を有する三次元的に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載のバスバー。
【請求項8】
線状の本体部を準備する準備工程と、
前記本体部に少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を形成する屈曲部形成工程と、
前記本体部の少なくとも一方の端部を加圧して前記本体部に板状あるいは棒状の端子部を形成すると同時に、前記本体部の加圧によって前記端子部の硬度を前記本体部よりも高くする端子部加工工程と、
を含むことを特徴とするバスバーの製造方法。
【請求項1】
少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を有する本体部と、
前記本体部の少なくとも一方の端部に設けられ、前記本体部と同一の材料で継ぎ目なく一体に形成され、前記屈曲部よりも硬度が高い板状あるいは棒状の端子部と、
を備えることを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記端子部は、前記本体部の端部を折り返して積層されていることを特徴とする請求項1記載のバスバー。
【請求項3】
前記端子部において折り返されている前記本体部の端部は、内側に孔を形成する略円環状に折り返され、先端が前記本体部または前記本体部の端部に積層されていることを特徴とする請求項2記載のバスバー。
【請求項4】
前記端子部において折り返されている前記本体部の端部は、他方と対向する面の少なくとも一方に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有することを特徴とする請求項2または3記載のバスバー。
【請求項5】
前記端子部は、前記本体部と同一の材料で形成され、厚さを補填する補填部材が前記本体部と継ぎ目なく一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のバスバー。
【請求項6】
前記補填部材または前記本体部の少なくともいずれか一方は、他方と対向する面に互いのずれを規制するずれ規制処理部を有することを特徴とする請求項5記載のバスバー。
【請求項7】
前記本体部は、屈曲方向が互いに異なる複数の屈曲部を有する三次元的に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項記載のバスバー。
【請求項8】
線状の本体部を準備する準備工程と、
前記本体部に少なくとも一ヵ所以上の屈曲部を形成する屈曲部形成工程と、
前記本体部の少なくとも一方の端部を加圧して前記本体部に板状あるいは棒状の端子部を形成すると同時に、前記本体部の加圧によって前記端子部の硬度を前記本体部よりも高くする端子部加工工程と、
を含むことを特徴とするバスバーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−182864(P2012−182864A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42166(P2011−42166)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000151597)株式会社東郷製作所 (78)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000151597)株式会社東郷製作所 (78)
【Fターム(参考)】
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