説明

バスバー

【課題】電力線用として導体の断面積が大きく形成された場合でも、放熱性及び敷設の作業性に優れ、かつ、電気的な接続不良などに起因する過剰な発熱を防止できるバスバーを提供すること。
【解決手段】バスバー1は、第一方向に延びた板状に形成され、一部に第一方向に交差する第二方向に沿う溝を形成するくびれ部20が形成された導体からなる部分である中間部11と、中間部11の第一方向における両側に連なる導体からなり他の部材と連結される部分である端子部12とが形成された部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ性能に優れたバスバーに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車及びハイブリッド自動車などの電動車両においては、バッテリの高出力化に伴い、電力線に流れる電流が増大する傾向にある。そして、電力線が、大きな電流によって過剰に発熱することを防止するため、断面積が大きく、放熱性に優れた電力線の採用が必要となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、並列に配置された複数の丸電線と、それら丸電線の周囲を覆う扁平な筒状のコルゲートチューブとを備えたワイヤハーネスが示されている。複数の電線が並列に配置された場合、複数の電線が縦方向及び横方向に積み重なる状態で束ねられる場合に比べ、電線束全体の輪郭を形成する部分の表面積が大きくなり、電線束全体の放熱性が高まる。
【0004】
一方、車両に搭載される電力線として板状の導電体からなるバスバーが採用されることも多い。バスバーは、扁平な形状であるため、同じ断面積の丸形状の芯線を有する丸電線に比べ、導体部分の表面積が大きく、放熱性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−47033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に示されるように、電力線が、並列に配置された複数の被覆電線からなる電線束により構成される場合、複数の被覆電線各々における芯線の端部を結束しつつ電気的に接続する端子が、電線束の両端に取り付けられる。
【0007】
しかしながら、バラバラに構成された複数本の電線は、それらの端部における芯線相互間において隙間が生じやすい。そのため、電線束の端部の芯線部分に端子が取り付けられた場合、一部の芯線が、端子に対して電気的に十分に接続されず、各電線の芯線と端子との接続不良が生じやすい。各電線の芯線と端子との接続不良は、電線の過剰な発熱の原因となる。
【0008】
一方、1つの電力線が、1本の被覆電線又は1本のバスバーで構成される場合、そのような電力線は、硬いために曲げることが難しく、敷設の作業性に劣るという問題点を有している。特に、1本の被覆電線又は1本のバスバーからなる電力線は、その長さが短いほど、曲げにくさの問題がより顕著となる。
【0009】
本発明は、電力線用として導体の断面積が大きく形成された場合でも、放熱性及び敷設の作業性に優れ、かつ、電気的な接続不良などに起因する過剰な発熱を防止できるバスバーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るバスバーは、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、第一の方向に延びた板状に形成され、一部に第一の方向に交差する第二の方向に沿う溝を形成するくびれ部が形成された導体からなる部分である中間部である。
(2)第2の構成要素は、中間部の第一の方向における両側に連なる導体からなり他の部材と連結される部分である端子部である。
【0011】
また、本発明に係るバスバーにおいて、くびれ部が、板状の中間部の四方の面のうち相対的に幅の広い2つの面に形成されていることが考えられる。
【0012】
また、本発明に係るバスバーにおいて、くびれ部が、板状の中間部の四方の面のうち相対的に幅の狭い2つの面に形成されていることも考えられる。
【発明の効果】
【0013】
バスバーは、扁平に形成されることにより、断面積に対する表面積の比が大きくなり、放熱性が高まる。さらに、本発明に係るバスバーにおいて、バスバーの中間部には、その長手方向に交差する方向に沿う溝を形成するくびれ部が形成されている。このくびれ部は、溝の幅が伸縮するように弾性的に変形しやすいため、バスバーの中間部は、くびれ部において弾性的に曲がりやすい。即ち、本発明に係るバスバーは、比較的短くかつ太く形成された場合であっても、くびれ部において弾性的に曲がる可撓性を有する。
【0014】
さらに、本発明に係るバスバーは、くびれ部の部分において特に曲がりやすい。そのため、本発明に係るバスバーに対してそれを曲げる方向の力が加わった場合、くびれ部のみが弾性的に曲がり、その他の部位は曲がらない。その結果、本発明に係るバスバーに力が加わった場合に、くびれ部以外の平坦な部位に曲げ跡が残ることが防止される。なお、曲げ跡は、曲がった後に元の形状に戻らない部位を意味する。
【0015】
また、バスバーの両端の端子部は、元々中間部に連なる部分であるため、バスバーの端子部において、電気的な接続不良は生じない。
【0016】
従って、本発明に係るバスバーは、電力線用として導体の断面積が大きく形成された場合でも、放熱性及び敷設の作業性に優れ、かつ、電気的な接続不良などに起因する過剰な発熱を防止できる。
【0017】
また、本発明に係るバスバーにおいて、くびれ部が、板状の中間部の四方の面のうち相対的に幅の広い2つの面に形成されていれば、中間部は、くびれ部が形成された面の方向、即ち、厚み方向において曲がりやすい。そのようなバスバーは、厚み方向において曲げられることが想定される場合に好適である。
【0018】
また、本発明に係るバスバーにおいて、くびれ部が、板状の中間部の四方の面のうち相対的に幅の狭い2つの面、即ち、側面に形成されていれば、中間部は、くびれ部が形成された面の方向、即ち、幅方向において曲がりやすい。そのようなバスバーは、幅方向において曲げられることが想定される場合に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るバスバー1の斜視図である。
【図2】端子台に取り付けられる途中のバスバー1の側面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るバスバー1Aの斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るバスバー1Bの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。本発明の実施形態に係るバスバー1は、例えば、電動車両におけるインバータ回路とモータもしくは発電機とを接続する電力線として、或いはバッテリとインバータ回路とを接続する電力線として用いられる。
【0021】
<第1実施形態>
まず、図1及び図2を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るバスバー1の構成について説明する。バスバー1は、例えば銅などの金属からなる導体の部材であり、図1に示されるように、一の方向に延びて形成されている。以下の説明において、バスバー1の長手方向を第一方向、バスバー1の幅方向及び厚み方向を、それぞれ第二方向及び第三方向と称する。第二方向及び第三方向は、第一方向に直交する方向である。なお、図1から図4において、第一方向は左右の方向である。
【0022】
図1に示されるように、バスバー1は、中間部11及び両端の端子部12から構成されている。バスバー1は、例えば3相モータなどの電動機の各相への電力の伝送経路の一部として敷設される。
【0023】
バスバー1の中間部11は、第一方向に延びた板状に形成され、その一部に第二方向に沿う溝を形成する複数のくびれ部20が形成された導体からなる部分である。バスバー1におけるくびれ部20は、板状の中間部11の四方の面のうち相対的に幅の広い2つの面、即ち、おもて面及びうら面に形成されている。
【0024】
くびれ部20は、例えば、板状の導体に対するプレス加工又は削り加工などにより成形される。また、くびれ部20が形成されたバスバー1が、鋳造により製造されることも考えられる。
【0025】
一方、端子部12は、中間部11の両端に連なる導体からなり、他の部材と連結される部分である。端子部12には、電力の伝送経路の前段及び後段の接続端に対してボルトなどの固定具によって連結されるための端子孔12Aが形成されている。
【0026】
即ち、バスバー1は、1枚の板状の導体における両端の一部の領域を除く中間領域の一部に、その長手方向に交差する方向に沿う溝を形成するくびれ部20が形成された構造を有する。
【0027】
図2は、電力の伝送経路の前段及び後段の端子台9に取り付けられる途中のバスバー1の側面図である。図2に示される例では、端子台9に設けられたスタッドボルト91が、バスバー1における端子部12の端子孔12Aに通され、さらに、ナット8がスタッドボルト91に装着される。これにより、端子部12は、端子台9に対して固定されるとともに、端子台9に対して電気的に接続される。
【0028】
バスバー1は、断面が扁平な形状に形成されているため、断面積に対する表面積の比が大きく、放熱性が高い。
【0029】
また、バスバー1の中間部11には、その長手方向に交差する第二方向に沿う溝を形成するくびれ部20が形成されている。図2に示されるように、バスバー1のくびれ部20は、そのくびれ部20が形成する溝の幅が伸縮するように弾性的に変形しやすいため、バスバー1の中間部11は、くびれ部20において弾性的に曲がりやすい。即ち、バスバー1は、比較的短くかつ太く形成された場合であっても、くびれ部20において、その厚みの方向に弾性的に曲がる可撓性を有する。
【0030】
従って、図2に示されるように、バスバー1の敷設作業において、中間部11を弾性的に曲げつつ、端子部12を目的の位置に位置決めすることが可能である。その結果、バスバー1は、容易に曲げることができない従来のバスバーに比べ、敷設の作業性に優れている。
【0031】
また、バスバー1は、くびれ部20の部分において特に曲がりやすい。そのため、バスバー1に対してそれを曲げる方向の力が加わった場合、くびれ部20のみが弾性的に曲がり、その他の部位は曲がらない。その結果、バスバー1に力が加わった場合に、くびれ部20以外の平坦な部位に曲げ跡が残ることが防止される。
【0032】
また、バスバー1の両端の端子部12は、中間部11に対して元々連なっている部分である。そのため、複数の芯線の束に端子が取り付けられる場合とは異なり、バスバー1の端子部12において、電気的な接続不良は生じない。
【0033】
ところで、バスバー1において、くびれ部20が形成された部分については、導体の断面積がその前後の部分の導体の断面積よりも小さくなる。しかしながら、実験の結果、くびれ部20が形成する溝の幅がごく狭い幅である場合、くびれ部20が形成された部分におけるインピーダンスの増大は、バスバー1全体としてはほとんど無視できる程度に小さいことがわかっている。そのため、バスバー1において、幅のごく狭いくびれ部20が形成されている場合、流れる電流による過剰な発熱は防止される。
【0034】
以上に示されるように、バスバー1は、電力線用として断面積が大きく形成された場合でも、放熱性及び敷設の作業性に優れ、かつ、電気的な接続不良などに起因する過剰な発熱を防止できる特性を有している。
【0035】
<第2実施形態>
次に、図3を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るバスバー1Aについて説明する。このバスバー1Aは、図1に示されたバスバー1と比較して、中間部11におけるくびれ部が形成された面が異なる。図3において、図1に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、バスバー1Aにおけるバスバー1と異なる点についてのみ説明する。
【0036】
バスバー1Aは、バスバー1と同様に、第一方向に延びて板状に形成され、その一部に複数のくびれ部21が形成された導体からなる中間部11と、中間部11の両端に連なる導体からなり、他の部材と連結される部分である端子部12とが形成された導体からなる部材である。
【0037】
しかしながら、バスバー1Aのくびれ部21は、板状の中間部11の四方の面の全てに形成されている。即ち、バスバー1Aのくびれ部21は、中間部11の全周に亘って、第二方向(幅方向)及び第三方向(厚み方向)の各々に沿う溝を形成する。
【0038】
バスバー1Aのくびれ部21は、そのくびれ部21が形成する溝の幅が伸縮するように弾性的に変形しやすいため、バスバー1Aの中間部11は、くびれ部21において中間部11の幅方向及び厚み方向の両方へ弾性的に曲がる可撓性を有する。このようなバスバー1Aが採用された場合、バスバー1が採用された場合と同様の効果が得られる。
【0039】
<第3実施形態>
次に、図4を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るバスバー1Bについて説明する。このバスバー1Bは、図1に示されたバスバー1と比較して、中間部11におけるくびれ部が形成された面が異なる。図4において、図1に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、バスバー1Bにおけるバスバー1と異なる点についてのみ説明する。
【0040】
バスバー1Bは、バスバー1と同様に、第一方向に延びて板状に形成され、その一部に複数のくびれ部22が形成された導体からなる中間部11と、中間部11の両端に連なる導体からなり、他の部材と連結される部分である端子部12とが形成された導体からなる部材である。
【0041】
しかしながら、バスバー1Bのくびれ部21は、板状の中間部11の四方の面のうちの相対的に幅の狭い2つの面、即ち、2つの側面に形成されている。即ち、バスバー1Bのくびれ部22は、中間部11において第一方向に直交する第三方向(厚み方向)に沿う溝を形成する。
【0042】
バスバー1Bのくびれ部22は、そのくびれ部22が形成する溝の幅が伸縮するように弾性的に変形しやすいため、バスバー1Bの中間部11は、くびれ部22において中間部11の幅方向へ弾性的に曲がる可撓性を有する。このようなバスバー1Bが採用された場合、バスバー1が採用された場合と同様の効果が得られる。
【0043】
<その他>
以上に示された実施形態において、バスバー1,1A,1Bは、その中間部11に複数のくびれ部20,21,22を有する。しかしながら、バスバー1,1A,1Bの中間部11に、1つのくびれ部20,21,22のみが形成されることも考えられる。
【0044】
また、バスバー1,1A,1Bは、その中間部11が絶縁部材で覆われた状態で使用されることも考えられる。絶縁部材は、例えば、ゴムもしくはゴム系材料であるエラストマー(elastic polymer)からなる絶縁性の弾性部材で構成されることが考えられる。エラストマーには、天然ゴム及び合成ゴムなどの加硫ゴム、並びにウレタンゴム、シリコーンゴム及びフッ素ゴムなどが含まれる。一般的には、熱硬化性樹脂系エラストマーが、エラストマー製の絶縁部材の材料として用いられる。絶縁部材が、可撓性に優れたエラストマーからなる部材であれば、バスバー1,1A,1Bの中間部11の可撓性が阻害されず好適である。
【0045】
また、バスバー1,1A,1Bの中間部11を覆う絶縁部材が、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ABS樹脂又はポリエチレン(PE)などの樹脂で構成されることも考えられる。また、中間部11を覆う絶縁部材が、熱収縮チューブであることも考えられる。
【0046】
また、バスバー1,1A,1Bは、その中間部11が絶縁部材で覆われ、さらに、その絶縁部材の周囲が編組線などのシールド部材で覆われた状態で使用されることも考えられる。また、バスバー1,1A,1Bは、中間部11を覆う絶縁部材の周囲が編組線などのシールド部材で覆われ、さらにその外側が可撓性を有する樹脂製の保護チューブ又はテープなどの絶縁性の外装部材で覆われた状態で使用されることも考えられる。
【0047】
また、複数のバスバー1,1A,1Bが、一の平面に沿って間隔を空けて並列配置され、それらの中間部11が絶縁部材により覆われるとともに連結された状態で、使用されることも考えられる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B バスバー
8 ナット
9 端子台
11 バスバーの中間部
12 バスバーの端子部
12A 端子孔
20,21,22 くびれ部
91 スタッドボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の方向に延びた板状に形成され、一部に前記第一の方向に交差する第二の方向に沿う溝を形成するくびれ部が形成された導体からなる部分である中間部と、
前記中間部の前記第一の方向における両側に連なる導体からなり他の部材と連結される部分である端子部と、が形成されていることを特徴とするバスバー。
【請求項2】
前記くびれ部は、板状の前記中間部の四方の面のうち相対的に幅の広い2つの面に形成されている、請求項1に記載のバスバー。
【請求項3】
前記くびれ部は、板状の前記中間部の四方の面のうち相対的に幅の狭い2つの面に形成されている、請求項1又は請求項2に記載のバスバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−182051(P2012−182051A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44889(P2011−44889)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】