説明

バスブリッジ回路、情報処理システム、情報処理方法、及びプログラム

【課題】 プロトコルの異なるバスの接続によるスプリット転送をよりコンパクトな回路でバス効率を低下させること無く実現させることの可能なバスブリッジ回路を提供する。
【解決手段】 一のバス102からのデータをかかる一のバスとプロトコルの異なる他のバス104へスプリット応答を使用して転送するバスブリッジ回路100において、スプリット応答により一のバスからのデータの使用効率を転送中断・マスキングにより向上させるバス効率化手段112と、転送中断した際に中断した転送に対して優先順位を設けてデータを管理するデータ管理手段110と、一のバス及び他のバス間で転送させるデータをバッファリングする機能を省略するデータバッファ省略手段114と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置に備わるバスブリッジ回路、かかるバスブリッジ回路を備える情報処理システム、かかる情報処理システムの情報処理方法、及びプログラムに係り、特にAHB(Advanced High-performance Bus)とプロトコルの異なるバスとの接続において使用されるバスブリッジ回路を介して情報を転送する情報処理方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ(Personal Computer;以下、PCと称する。)をはじめ、CPU(Central Processing Unit)を備えた情報処理システムにおいては、CPUに直接に接続されるローカルバスと、様々な周辺装置を相互に接続するシステムバスとに、それぞれ異なる転送方式が用いられる場合が多い。
【0003】
通常は、ローカルバスにインターロック転送方式が用いられ、システムバスには、スプリット転送方式が用いられ、ローカルバスとシステムバスとは、インターフェース手段となるバスブリッジ回路を介して接続されている。
【0004】
近年のデジタル技術の発展に伴い、複数のバスマスタをサポートし、高周波数帯域動作を可能にする高性能システムバスであるAHB(Advanced High-performance Bus)のような汎用バスを使用し、PCの主要な機能を1つのチップに組み込むSOC(System On Chip)が実用化されている。CPUからメモリ及び周辺装置へのデータの転送用である第1のバスと、単一の周辺装置によるローカルメモリまたは他のローカル周辺装置への大量のデータの転送をサポートするための第2のバスとを接続するインターフェースとして、AHB−HTBブリッジによりSOCが実現されているバスブリッジが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。このインターフェース手段は、これらのバス間の通信を可能にするとともに、データの完全性を保証する。
【0005】
また、インタロックバスのローカルバスとスプリットバスのシステムバスとをブリッジ装置により接続したプロセッサシステムにおいて、標準ローカルバスを用いた場合でも、バス調停回路に特別な機能手段を設けることなく、バス競合回避を実現するブリッジ装置が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。このブリッジ装置は、インタロックバスからスプリットバスへのデータ転送中に、スプリットバスからインタロックバスヘのデータ転送要求を受信した場合に、インタロックバスに対しリトライ要求応答を行ない、バッファにインタロックバスから転送中のアドレス情報を保持し、スプリットバスからのデータ転送完了後、インタロックバスから再送されたアドレス情報とバッファの内容とが一致した場合にインタロックバスからのアクセスにバス権を与え、スプリットバスへ新たにオーダ転送を実行せずにアンサ転送の受信待ち状態とする。かかるブリッジ装置の動作により、インタロックバスのローカルバスとスプリットバスのシステムバスとのバス競合回避を実現する
【0006】
さらに、USBとATAPIに対応する第1コマンド変換装置と、USBとATAに対応する第2コマンド変換装置とを備え、切換装置が接続された第2の機器が持つインターフェースを診断し、その診断結果に基づいて、制御回路を介して第1又は第2コマンド変換装置を第2の機器に接続するインターフェース変換装置が開示されている(例えば、特許文献3を参照)。このインターフェース変換装置は、接続された装置を互いに認識させ、接続することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−123482号公報
【特許文献2】特開2001−060181号公報
【特許文献3】特開2004−126707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されているバスブリッジ回路は、転送を完了するまでバス権を所有したままであることより、AHB側のバス転送効率を低下させてしまう虞がある。また、かかるバスブリッジ回路の内部に最大転送サイズ分のデータバッファを備えることにより、回路が不必要に肥大化することが問題となっている。
【0009】
特許文献2に開示されているブリッジ装置は、バス競合回避により、インタロックバス からスプリットバスへのデータ転送の効率の向上を実現するが、スプリットバスからのデータ転送であるスプリット転送の効率向上を実現するには至らない。
【0010】
また、特許文献3に開示されているインターフェース変換装置は、上述したような各コマンド変換装置を要するため、インターフェース変換装置及びこのインターフェース変換装置を備える情報処理装置の小型化が困難となる。
【0011】
そこで、本発明は、従来の技術が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、プロトコルの異なるバスの接続によるスプリット転送をよりコンパクトな回路でバス効率を低下させること無く実現させることの可能な、新規かつ改良されたバスブリッジ回路、かかるバスブリッジ回路を備える情報処理システム、かかる情報処理システムでの情報処理方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、一のバスからのデータを一のバスとプロトコルの異なる他のバスへスプリット応答を使用して転送するバスブリッジ回路において、スプリット応答により一のバスからのデータの使用効率を転送中断・マスキングにより向上させるバス効率化手段と、データの転送中断した際に中断した転送に対して優先順位を設けてデータを管理するデータ管理手段と、一のバス及び他のバス間で転送させるデータをバッファリングする機能を省略するデータバッファ省略手段と、を備えることを特徴とする、バスブリッジ回路が提供される。
【0013】
このとき、一のバスは、AHBであることとしてもよく、また、データバッファ省略手段は、一のバス及び他のバス間でのデータ転送フェーズの待ち合わせを実行する回路であることとしてもよい。
【0014】
このような構成とすることにより、プロトコルの異なる二つのバス間でデータ転送をする際に、スプリット応答をしたマスタを現在実行する転送と先延ばしにする転送とを明確に分類する機能を有することで、先延ばしにした転送を実行可能になるまでマスクしておくことが出来るため、スプリット転送を効果的に制御できる。
【0015】
また、スプリット応答を用いた双方のデータ転送フェーズの待ち合わせにより、転送データの準備が可能になったタイミングで再送要求を出し、転送データをそのまま相手のバスに送ることが可能なため、転送データのバッファリングが不要となり、回路効率の向上、及びバスブリッジ回路のコンパクト化が実現される。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、一のバスからのデータを一のバスとプロトコルの異なる他のバスへバスブリッジ回路を介してスプリット応答を使用することにより転送する情報処理システムにおいて、バスブリッジ回路には、スプリット応答により一のバスからのデータの使用効率を転送中断・マスキングにより向上させるバス効率化手段と、転送中断した際に中断した転送に対して優先順位を設けてデータを管理するデータ管理手段と、一のバス及び他のバス間で転送させるデータをバッファリングする機能を省略するデータバッファ省略手段と、を備えることを特徴とする、情報処理システムが提供される。
【0017】
このとき、一のバスは、AHBであることとしてもよく、データバッファ省略手段は、一のバス及び他のバス間でのデータ転送フェーズの待ち合わせを実行する回路であることとしてもよい。
【0018】
更に、上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、一のバスからのデータを一のバスとプロトコルの異なる他のバスへバスブリッジ回路を介してスプリット応答を使用することにより転送する情報処理方法において、スプリット応答により一のバスからのデータの使用効率を転送中断・マスキングにより向上させるバス効率化工程と、バス効率化工程で中断したデータの転送に対して優先順位を設けてデータを管理するデータ管理工程と、一のバス及び他のバス間で転送させるデータをバッファリングする機能を省略するデータバッファ省略工程と、を含むことを特徴とする、情報処理方法が提供される。
【0019】
このとき、一のバスは、AHBであることとしてもよく、また、データバッファ省略工程は、一のバス及び他のバス間でのデータ転送フェーズの待ち合わせにより実行されることとしてもよい。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、上述の情報処理方法を一の情報処理装置に実現させることを特徴とする、プログラムが提供される。
【0021】
このような構成とすることにより、本発明のバスブリッジ回路を情報処理システム、この情報処理システムによる情報処理方法、及びプログラムに取り入れることにより、上述した効果、すなわち、プロトコルの異なるバス間でデータ転送をする際に、入力されたバスのデータを別プロトコルのバスのデータに変換する機能、特に入力されたAHBトランザクションを他のバストランザクション変換する機能を有することにより、プロトコルの異なるバス間でのデータのスプリット転送を効果的に制御でき、かつ転送データのバッファリングの省略により、バスブリッジ回路のコンパクト化、及び回路効率の向上が実現される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、スプリット応答をしたマスタを現在実行する転送と先延ばしにする転送とを明確に分割することで、先延ばしにした転送を実行可能になるまでマスクすることにより、プロトコルの異なるバス間でのデータのスプリット転送を効果的に制御できる。また、スプリット応答を用いた双方のデータ転送フェーズの待ち合わせにより、転送データが準備完了となったタイミングで再送要求を出し、転送データをそのまま相手のバスに送ることにより、転送データのバッファリングを省略でき、バスブリッジ回路のコンパクト化、及び回路効率の向上が実現される。特に、AHBと異なるバスのデータ転送を小さな回路でAHB側のバス効率を低下させることなくデータ転送を実現可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
(第1の実施の形態)
まず、本発明におけるバスブリッジ回路の第1の実施の形態の構成について図面を使用しながら説明する。図1は、本発明のバスブリッジ回路の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【0025】
本実施の形態では、バスブリッジ回路100は、AHBバス102からAHBバス102とプロトコルの異なるバス104へデータをスプリット転送するインターフェースである。かかるバスブリッジ回路100は、図1に示すように、コマンド変換部106、データパス部108、転送制御部110を備える。かかる転送制御部110は、転送フロー制御部112とスプリット応答制御部114から構成される。これら各構成要素のブロックがバス線や制御線を介して接続され、また、データパス部104は、転送制御部110からの信号により制御される。
【0026】
次に、本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わる上述した各構成要素の構成等の詳細について、図面を使用しながら説明する。図2は、本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わるコマンド変換部106、図3は、本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わるデータパス部108、図4は、本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わる転送制御部110に設けられた転送フロー制御部112、図5は、本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わる転送制御部110に設けられたスプリット応答制御部114の詳細を説明するための図である。
【0027】
まず、図2を用いて、コマンド変換部106の詳細について説明する。コマンド変換部106は、AHBのバスプロトコルに即した転送コマンドをAHB以外のバスプロトコルに即した転送コマンドに変換する手段である。かかる転送コマンドの変換方法は、接続されるバス104の種類によって異なり、例えば、バス104のリード/ライト制御信号がリードの時に‘H’となるような信号READENだった場合、READEN@バス104とHWRITE@AHB102は、インバータを介して変換される。
【0028】
次に、図3を用いて、データパス部108の詳細について説明する。データパス部108は、AHB102のデータバスとバス104のデータバス間の転送データ方向を制御する手段である。図3で示される下から上の方向に流れるデータは、AHB102のデータバスからのライトデータであり、図3で示される上から下の方向に流れるデータは、バス104のデータバスからのリードデータである。このデータ転送の流れの際に、逆方向へのパスはマスクされ、各バス上で不要なデータ信号のトグルが行われないようになっている。
【0029】
次に、図4及び5を用いて、転送制御部110を構成する転送フロー制御部112及びスプリット応答制御部114の詳細について説明する。図4は、本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わる転送フロー制御部112によるデータ転送の動作を説明するためのフローチャートであり、図5は、本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わるスプリット応答制御部114の回路構成を説明するための図である。
【0030】
転送フロー制御部112は、コマンド変換部106で変換された情報を元にして、AHBバス102とバス104の転送制御を行う手段である。転送フロー制御部112によるデータ転送の動作は、図4に示すように、データの転送を開始して(S40)、転送要求に対して、データを転送する準備できていない場合、すなわち、データの再送を要求する場合は(S42)、一度転送を中断し(S44)、データの準備が出来てから再送要求を行ってから(S46)、データ転送を行う(S48)。
【0031】
本実施の形態では、転送フロー制御部112を上述する動作をする機能を備えることにより、データ転送のフェーズが双方のバス102、104で一致する為、データパス部108で転送データをバッファに貯める必要が無くなり、バスブリッジ回路100内にバッファを設ける必要性が無くなる。このため、バスブリッジ回路100の省スペース化、コンパクト化が実現される。なお、上述の工程S42でデータの再送の要求がない場合は、即データ転送を実行する(S48)。
【0032】
上述したように、本実施の形態では、スプリット応答を用いた双方のデータ転送フェーズの待ち合わせにより、転送データの準備完了となったタイミングで再送要求を出し、転送データをそのまま転送先のバスに送信可能としたため、転送データのバッファリングが不要となる。
【0033】
また、スプリット応答制御部114は、データの待ち合わせのために中断した転送と、それ以外の転送要求に対する中断を、それぞれ分離して管理し、必要に応じて再送要求を発行する手段である。本実施の形態のバスブリッジ回路100に備わるスプリット応答制御部114は、図5に示すように、データの待ち合わせのために中断した転送のIDを保存する手段を有する一の回路C10と、それ以外の転送IDを保存する他の回路C20を有する。
【0034】
このように、データの待ち合わせのために中断した転送のIDを保存する一の回路C10と、それ以外の転送要求に対する中断した転送のIDを保存する他の回路C20を各々分離して管理し、必要に応じて再送要求を発行することにより、データの待ち合わせが完了し、最初に中断した転送を最優先で実行するまで、他の転送をマスクさせる事が可能となる。マスクされた転送は、優先された転送が始まると同時に再送要求が発行され、その時点でマスクが解除される。
【0035】
すなわち、本実施の形態では、スプリット応答をした転送元となるAHBバス102のマスタを2種類に分類して、現在実行する転送と先延ばしにする転送とを明確に分割することにより、先延ばしにした転送を実行可能になるまでマスクしておくことができる。このため、スプリット転送の効果的な制御が実現される。すなわち、転送元のAHBバス102のデータを他のプロトコルのバス104に転送する際に、分割転送によりバス効率を向上させることが可能となる。
【0036】
次に、本発明におけるバスブリッジ回路の第1の実施の形態におけるバスブリッジ回路の動作について図面を使用しながら説明する。図6は、AHBバス102から転送要求があったときに、転送先のバス104でデータ転送の準備が出来ていない場合の波形変化を示すタイミングチャートであり、図7は、AHBバス102から転送要求があったときに、転送先のバス104でデータ転送の準備が出来ている場合の波形変化を示すタイミングチャートである。また、図8は、図6及び7のタイミングチャートで説明した本発明の本実施の形態での転送制御部110の動作を処理フローに分解して説明するためのフローチャートである。
【0037】
図6及び7では、上側はAHBバス102のH CLK信号、H ADDR(アドレス)信号、H W/R DATE(ライト・リードデータ)信号、H READY(準備)信号、H RESP(応答)信号、及びH SPLIT(スプリット)信号を表し、下側は転送先となる他のプロトコルのバス104のリクエスト信号、アドレス信号、データレディ信号、及びデータ信号を表す。
【0038】
図6及び7のタイミングチャートでは、バス104の架空のバスプロトコルとして、「リード転送のリードデータが準備できた場合、ライトデータを受信する準備が出来ている場合に、データレディ信号をアサートする。」という動作を定義する。各々のタイミングチャートで、チャート上のアドレスaddr0から始まる転送は、AHBバス102からのリード転送を示し、アドレスaddr1から始まる転送は、AHBバス102からのライト転送を示す。
【0039】
また、図6及び7のタイミングチャート中の数字は、それぞれ図8のフローチャートにおいて示されるステップ数(S1〜S7)を表している。尚、リード転送の場合は、初期状態で転送データが用意されていることは無いので、図8のフローチャートのステップ6(S6)まで進んでいると仮定したタイミングチャートとする。
【0040】
図8のフローチャートは、図6,7のタイミングチャートで説明した本発明の転送制御部の動作を、処理フローに分解して説明するものである。図8に示すフローチャートにおいて、AHBバスブリッジ回路100は、ステップ1(S1)でAHBバス102からの転送を検出する。次に、かかるAHBバス102からの転送に対応したデータが既に転送先のバス104に準備されているか否かの確認が実行される。
【0041】
その転送に対応したデータが既に転送先のバス104に準備されている場合は、ステップ7(S7)に進み、データ転送を終了させる。このときのバスブリッジ回路の動作は、図7のタイミングチャートで示される場合である。
【0042】
上述のAHBバス102からの転送に対応したデータがまだ準備されていない場合は、図6のタイミングチャートのようにステップ2(S2)にてスプリット応答を返し、転送を一時中断して、転送がリードかライトかを判定する。
【0043】
このときの転送がリードである場合は、ステップ3(S3)にて、バス104に対してリード転送を開始し、バス104にリードデータを準備させる。また、このときの転送がライト転送である場合は、ステップ4(S4)を経てバス104がライトデータを受け付けられるようになるまで待機する。
【0044】
また、この間にAHBバス102にて別の転送が開始された場合、これらの転送に対してもスプリット応答を返し、これらのスプリット応答の転送をマスクする。データの準備が完了した場合は、ステップ5(S5)にてデータの準備が出来た転送に対してのみ再送要求を出す。
【0045】
ステップ6(S6)では、転送が再開されたタイミングで上述のステップ3、4の期間中にマスクした転送に対して再送要求を出し、マスクを解除する。その後、ステップ7(S7)では、転送先のバス104でデータ転送の準備が完了しているので、AHBバス102と転送先のバス104のデータパスを接続してデータ転送を終了させる。
【0046】
以上説明したように本実施の形態によれば、スプリット応答をした転送元のバスのマスタを2種類に分類して、現在実行する転送と先延ばしにする転送とを明確に分割することにより、先延ばしにした転送を実行可能になるまでマスクしておくことができるため、スプリット転送の効果的な制御が実現される。すなわち、転送元のAHBバス102のデータを他のプロトコルのバス104に転送する際に、分割転送によりバス効率を向上させることが可能となる。
【0047】
また、スプリット応答を用いた双方のデータ転送フェーズの待ち合わせにより、転送データの準備が可能になったタイミングで再送要求を出し、転送データをそのまま転送先のバスに送信可能としたため、転送データのバッファリングが不要となる。換言すると、従来のバスブリッジ回路のようなデータ変換装置を省略可能とすることにより、回路効率の向上、及びバスブリッジ回路のコンパクト化が実現される。
【0048】
更に、入力されたAHBトランザクションを他のバストランザクションに一層効率的に変換する構成を有することに伴って、本実施の形態のバスブリッジ回路を備える情報処理システムの省スペース化、かかる情報処理システムでの情報処理方法におけるマスタデバイスおよびスレーブデバイス間のデータアクセスの効率化により消費電力の削減を可能にする。
【0049】
(第2の実施の形態)
次に、本発明のバスブリッジ回路の第2の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0050】
図9は、本発明の第2の実施の形態によるバスブリッジ回路200の全体構成を示すブロック図である。第1の実施の形態においては、対象のバスはAHBバスと架空のバスプロトコルを持つバス104間のバスブリッジとしていたが、本実施の形態では、コマンド変換手段をAHB以外のバスプロトコルに対応させることで、AHB以外のバスに対してもバスブリッジ回路200が適用可能となる。
【0051】
本実施の形態では、第1の実施の形態のバスブリッジ回路100のコマンド変換部106を変更し、AHB以外のバスプロトコルに対応可能なコマンド変換部206とし、AHBバス102の代わりに転送中断・再開機能を有するバス202を転送元のバスとする。すなわち、本実施の形態は、AHB以外のバスプロトコルを有するバス202から他のプロトコルを有するバス204へ、データ転送をするバスブリッジ回路200である。
【0052】
次に、図10のタイミングチャートを用いて、本実施の形態のバスブリッジ回路200の動作について説明する。図10のタイミングチャート中の数字は、それぞれ図8のフローチャートにおいて示されるステップ数(S1〜S7)を表し、また図10のタイミングチャート中の数字にダッシュが付されている数字は、それぞれ図8のフローチャートにおいて示されるステップ数(S1〜S7)と略同一の動作の工程を表している。
【0053】
図10に示す工程(1)に示す通り、バス202でリード転送が発生した場合、工程(2)にてデータの準備が出来るまで転送を中断させ、工程(3)にてデータの準備のためにバス204でも転送を開始する。また、他の転送が開始された場合は、上記の工程(3)で転送中断し後続の転送を待たせる。その後、工程(4)にてデータの準備が整った時点で、工程(5)でリード転送の再送を要求し、工程(6)で転送が再開された場合に、工程(7)でデータパスを接続し、転送先のバス204からリードデータをバス202に転送する。
【0054】
同様に工程(1')でライト転送が発生した場合も、工程(2')でデータの受け入れ準備が出来るまで転送を中断し、工程(4')でライトデータの受け入れ準備が整った時点で、工程(5')の転送再送要求が出力される。その後、工程(6')及び工程(7')で再送検出とデータ転送が行われ、ライト転送が完了する。なお、本実施の形態における転送制御部210の動作の処理のフローチャートは、図8に示す第1の実施の形態の転送制御部110の動作の処理のフローチャートと同様である。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態では、コマンド変換手段をAHB以外のバスプロトコルに対応可能な構成とすることにより、AHB以外のバスに対しても、プロトコルの異なるバス間の接続によるデータ転送を第1の実施の形態と同様に、よりコンパクトな回路でバス効率を低下させること無く実現可能となる。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、AHBを使用している全ての半導体集積回路に適用可能であり、特にSOCに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明のバスブリッジ回路の第1の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、同実施の形態のバスブリッジ回路に備わるコマンド変換部の詳細を説明するための図である。
【図3】図3は、同実施の形態のバスブリッジ回路に備わるデータパス部の詳細を説明するための図である。
【図4】図4は、同実施の形態のバスブリッジ回路に備わる転送フロー制御部によるデータ転送の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】図5は、同実施の形態のバスブリッジ回路に備わるスプリット応答制御部の回路構成を説明するための図である。
【図6】図6は、同実施の形態のバスブリッジ回路においてAHBバスから転送要求があったときに、転送先のバスでデータ転送の準備が出来ていない場合の波形変化を示すタイミングチャートである。
【図7】図7は、同実施の形態のバスブリッジ回路においてAHBバスから転送要求があったときに、転送先のバスでデータ転送の準備が出来ている場合の波形変化を示すタイミングチャートである。
【図8】図8は、図6及び7のタイミングチャートで説明した同実施の形態での転送制御部の動作を処理フローに分解して説明するためのフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の第2の実施の形態によるバスブリッジ回路の全体構成を示すブロック図である。
【図10】図10は、同実施の形態のバスブリッジ回路において転送元のバスから転送要求があったときに、転送先のバスでデータ転送の準備が出来ていない場合の波形変化を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0059】
100 バスブリッジ回路
102 AHBバス
104 バス
106 コマンド変換部
108 データパス部
110 転送制御部
112 転送フロー制御部
114 スプリット応答制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一のバスからのデータを前記一のバスとプロトコルの異なる他のバスへスプリット応答を使用して転送するバスブリッジ回路において、
前記スプリット応答により前記一のバスからの前記データの使用効率を転送中断・マスキングにより向上させるバス効率化手段と、
前記転送中断した際に中断した転送に対して優先順位を設けて前記データを管理するデータ管理手段と、
前記一のバス及び前記他のバス間で転送させる前記データをバッファリングする機能を省略するデータバッファ省略手段と、
を備えることを特徴とする、バスブリッジ回路。
【請求項2】
前記一のバスは、AHB(Advanced High-performance Bus)であることを特徴とする、請求項1に記載のバスブリッジ回路。
【請求項3】
前記データバッファ省略手段は、前記一のバス及び前記他のバス間でのデータ転送フェーズの待ち合わせを実行する回路であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバスブリッジ回路。
【請求項4】
一のバスからのデータを前記一のバスとプロトコルの異なる他のバスへバスブリッジ回路を介してスプリット応答により転送する情報処理システムにおいて、
前記バスブリッジ回路には、
前記スプリット応答により前記一のバスからの前記データの使用効率を転送中断・マスキングにより向上させるバス効率化手段と、
前記転送中断した際に中断した転送に対して優先順位を設けて前記データを管理するデータ管理手段と、
前記一のバス及び前記他のバス間で転送させる前記データをバッファリングする機能を省略するデータバッファ省略手段と、
を備えることを特徴とする、情報処理システム。
【請求項5】
前記一のバスは、AHBであることを特徴とする、請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記データバッファ省略手段は、前記一のバス及び前記他のバス間でのデータ転送フェーズの待ち合わせを実行する回路であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の情報処理システム。
【請求項7】
一のバスからのデータを前記一のバスとプロトコルの異なる他のバスへバスブリッジ回路を介してスプリット応答を使用することにより転送する情報処理方法において、
前記スプリット応答により前記一のバスからの前記データの使用効率を転送中断・マスキングにより向上させるバス効率化工程と、
前記バス効率化工程で中断した前記データの転送に対して優先順位を設けて前記データを管理するデータ管理工程と、
前記一のバス及び前記他のバス間で転送させる前記データをバッファリングする機能を省略するデータバッファ省略工程と、
を含むことを特徴とする、情報処理方法。
【請求項8】
前記一のバスは、AHBであることを特徴とする、請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記データバッファ省略工程は、前記一のバス及び前記他のバス間でのデータ転送フェーズの待ち合わせにより実行されることを特徴とする、請求項7又は8に記載の情報処理方法。
【請求項10】
請求項7、8又は9に記載の情報処理方法を一の情報処理装置に実現させることを特徴とする、プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−313451(P2006−313451A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135719(P2005−135719)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】