説明

バタフライバルブ

【課題】シートリングを適正な圧縮量で締付けて安定したシール性を発揮でき、シートリングの応力緩和による漏れを防いで高シール性を維持できる簡単な構造のバタフライバルブを提供すること。
【解決手段】筒状のボデー31の端部内周側に形成した段部36にシートリテーナ45を介してシートリング40を保持し、このシートリテーナ45の外周側先端面46aを段部36に形成した突当て面37に当接させ、シートリテーナ45の内周側先端面46bでシートリング40を押圧保持させてシートリテーナ45を両持ち支持構造とし、このシートリテーナ45の両持ち支持構造により、シートリテーナ45の先端面46と段部36との間に所定の間隙Gを設けてシートリテーナ45の先端面46をたわみ面とすると共に、シートリテーナ45と段部36とを間隙Gの領域でボルト50を介して固着したバタフライバルブである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライバルブに関し、特に、シートリテーナを介してシートリングをボルト締めで固着するシートリングの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弁棒の中心を弁体の中心から偏心させた構造の偏心形バタフライバルブが知られている。偏心形バタフライバルブとしては、弁棒の中心と弁体の中心を離した構造の一次偏心弁と呼ばれるバルブ、一次偏心に加えて、バルブ本体の中心線から弁棒の中心を離すようにした二重偏心弁と呼ばれるバルブ、二重偏心に加えて、管軸方向から傾けて配置された円錐を、弁体とシールするシートリングの厚さ方向の両端面位置にて切断し、この円錐の表面をシール面とした三重偏心弁と呼ばれるバタフライバルブがある。
【0003】
この種のバタフライバルブは、シートリングをシートリテーナにより固着する取付け構造を有しており、この取付け構造としては、一般的に、シートリングと、このシートリングの背面側にガスケットを設けた状態でシートリテーナを被せ、この上から締付けボルトを締付けて、シートリングとガスケットを押圧して固着している。
【0004】
このようなシートリングの取付け構造を有するバタフライバルブとしては、例えば、特許文献1や図7に示した偏心弁がある。これらの偏心弁は、例えば、図7において、弁本体(弁箱)1側に円筒状の座面1aを設け、この座面1aにシート押え(シートリテーナ)2を介して、シートリング3とガスケット4をボルト5締めによって挟み込んで保持し、シートリング3全体を固定する構造になっている。
【0005】
一方、特許文献2のバタフライ弁は、弁本体とシート押え部材のシートリングとの当接面にそれぞれ凹状の段部を設け、この段部に凸状の段部を係合させた状態でシートリングやガスケットを装着し、シート押え部材(シートリテーナ)の上から取付ボルトで固定してシートを保持する構造になっている。
また、図8のバタフライ弁は、特許文献2とは別の形状の凹状段部を有するものであり、弁本体(弁箱)6のみに凹状の段部7を設け、この段部7にシートリング9とガスケット10を装着し、この上からシートリテーナ8をボルト5締めしたものである。
これらのバルブは、例えば、図8において、シートリテーナ8と、弁箱6に設けた段部7でシートリング9を挟み込み、シートリテーナ8をボルト5で固定することで、段部7に装着したシートリング9を締付け方向に圧縮させながら装着したものである。この場合、シートリング9及びガスケット10の圧縮後の高さ寸法Lは、段部7における当り面7aからシートリテーナ8の押え面8aまでの長さによって決定されている。
【0006】
一方、これらのシートリングの取付け構造を、弁体側に設けたバタフライバルブがあり、例えば、図9に示すように、弁体11のシール側に円筒状の座面11aを有し、この座面11aにシートリテーナ12を介してシートリング13、ガスケット14をボルト15締めしたバタフライバルブがある。また、図10に示すように、弁体16側に凹状段部16aを形成し、この段部16aにシートリング18とガスケット19を装着し、この上からシートリテーナ17をボルト15締めした構造のバタフライバルブがある。
【0007】
ところで、この種のバタフライバルブには、ボルトの緩み防止対策を設けたものがあり、例えば、特許文献3の偏心弁は、シートリテーナを締付ける取付ボルトが緩んだ場合の脱落防止対策として、取付ボルトを締付けた上からスナップリングを装着したものである。また、スナップリングと同様の目的で、ボルト締め後にこのボルトを溶接止めしたバタフライバルブがある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−148563号公報
【特許文献2】特許第3410682号公報
【特許文献3】特許第3342409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1や図7、図9のシート取付け構造を有する偏心弁は、取付け後のシートリングとガスケットの厚さ寸法がボルトの締付け量(締付けトルク)に依存し、このボルト締付け量がバルブのシール性に大きな影響を及ぼしている。すなわち、これらのバルブは、ボルト締付け量が増すにつれてシートリング及びガスケットの圧縮量が上昇するため、過剰に締付けた場合にはこれらを損傷するおそれがあり、この場合、適正なシール性が得られないという問題があった。
このように、特許文献1や図7、図9のようなシート全体を締付け固定する構造のバタフライバルブは、シートリング及びガスケットを圧縮するときの圧縮量(潰し代)の精度が悪く、所定のシール性を発揮するための圧縮量を確保することが難しいという問題がある。このため、これらのバルブは、シール性が安定していなかった。
【0010】
また、この種のバルブにおいては、ボルトの締付け後に、シートリングとガスケットがシートリテーナと弁箱(或は弁体)との間に締付けられて一定の歪み(変形量)を生じ、一定の変形状態を維持するための応力が徐々に低下する現象が生じる。シートリングとガスケットには、このような、いわゆる応力緩和が生じているため、ボルトの緩みが発生し、シール性が徐々に悪化して漏れを生じる危険性があった。
【0011】
更に、シートリングやガスケットの圧縮された状態が長期に亘った場合には、シートリングやガスケットの変形部位が隙間へ逃げようとするクリープ現象を生じて応力緩和が発生して漏れを生じることがある。
【0012】
また、シートリングやガスケットと、これを保持する弁箱やシートリテーナに温度変化が繰り返し生じると、過剰締付けが発生し、温度が戻ったときにシートリングやガスケットの変形量(圧縮率)が低下して応力緩和が発生することがあった。
【0013】
しかも、シートリングやガスケットの材質も応力緩和の発生に影響を及ぼしており、例えば、シートリングやガスケットが、膨張黒鉛等の、弁箱やシートリテーナの材質よりも熱膨張率が小さい材質である場合、バルブ全体が高温側に温度変化すると、シートリングやガスケットの圧縮率は低下することになる。一方、バルブ全体が低温側に温度変化すると、シートリングやガスケットを過剰締付けすることになり、温度変化が解消したときに、圧縮率が低下することになる。
一方、シートリングやガスケットが、PTFE等の、弁箱(バルブ本体)やシートリテーナの材質よりも熱膨張率が大きい材質である場合、バルブ全体が高温側に温度変化すると、シートリングやガスケットを過剰締付けすることになり、温度変化が解消したときに、圧縮率が低下することになる。一方、バルブ全体が低温側に温度変化すると、シートリングやガスケットの圧縮率は低下することになる。
【0014】
更には、シートリングやガスケットを、例えば、ステンレスと膨張黒鉛などの異なる材料によってラミネート構造に設けた場合には、各材料の熱膨張率が互いに異なるため、バルブ本体が高温又は低温側に温度変化したときに、積層した材料間に隙間が生じて全体が歪んだり、材料同士が擦れあったりして消耗が激しくなることもあった。
【0015】
また、シートリングやガスケットと、弁箱やシートリテーナに温度変化が生じている時には、各部品に温度差(熱膨張差)が生じ、この熱膨張差によりボルトの締付緩和が生じることがあった。
【0016】
一方、特許文献2や図8、図10のシート取付け構造を有するバタフライ弁は、ボルトの締付け量が段部寸法により決定されることから、シートリングやガスケットの圧縮量の精度が確保される構造であり、また、ボルトがシートリテーナを弁本体の段部位置にて固定していることから、シートリングやガスケットに応力緩和が発生しても、ボルトの緩みが発生し難い構造になっている。
【0017】
しかし、これらのバタフライ弁であっても、シートリングやガスケットにクリープ現象が生じ、応力緩和が発生した場合には、これに対応することができず、シール性が悪化して漏れを生じるおそれがあった。
また、これらのバタフライ弁は、温度変化に伴い、シートリングやガスケットが膨張した場合には、シートリテーナの押え面付近が撓むことにより、シートリングやガスケットの過剰締付けは回避できるものの、これらの部品が収縮して応力緩和を生じた場合には、これに対応することができず、上記と同様に漏れを生じるおそれがあった。
更に、各部品に温度差(熱膨張差)が生じている時の、熱膨張差によるボルトの締付緩和現象も防ぐことができず、依然として漏れを生ずるおそれがあった。
【0018】
他方、特許文献3の偏心弁は、スナップリングによって取付ボルトの緩みや脱落を防止することはできるが、この脱落防止構造によってシートリングやガスケットの応力緩和の発生を防ぐことはできず、応力緩和の発生によってシール力の低下を防ぐことはできなかった。また、ボルト締め後に溶接止めする場合も同様であり、応力緩和によるシール力に低下を防ぐことはできなかった。更に、この偏心弁は、構造が複雑になるため、メンテナンス時等の手間が増えるというデメリットもあった。
【0019】
本発明は、上記の実情に鑑みて鋭意研究の結果開発に至ったものであり、その目的とするところは、シートリングを適正な圧縮量で締付けて安定したシール性を発揮でき、シートリングの応力緩和による漏れを防いで高シール性を維持できる簡単な構造のバタフライバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、筒状のボデーの端部内周側に形成した段部にシートリテーナを介してシートリングを保持し、このシートリテーナの外周側先端面を段部に形成した突当て面に当接させ、シートリテーナの内周側先端面でシートリングを押圧保持させてシートリテーナを両持ち支持構造とし、このシートリテーナの両持ち支持構造により、シートリテーナの先端面と段部との間に所定の間隙を設けてシートリテーナの先端面をたわみ面とすると共に、シートリテーナと段部とを間隙領域でボルトを介して固着したバタフライバルブである。
【0021】
請求項2に係る発明は、間隙間に段部の一部、又は、シートリテーナの一部を突設させて間隙を狭くしたバタフライバルブである。
【0022】
請求項3に係る発明は、シートリングの一側面、又は、双方の側面にガスケットを介在させたバタフライバルブである。
【0023】
請求項4に係る発明は、ボデー内に弁棒を介して回転自在に軸支される弁体を設け、この弁体は、中心を弁棒の回転軸から一定距離偏心させ、かつ流路方向の中心から一定距離偏心させた位置に配設し、流路の中心から傾斜した中心を有する円錐の外周面により楕円形状のシール面を形成し、このシール面を、シートリングの内周シール面に密接シールするようにした三重偏心構造を呈するバタフライバルブである。
【0024】
請求項5に係る発明は、弁体の端部外周側に形成した段部にシートリテーナを介してシートリングを保持し、このシートリテーナの内周側先端面を段部に形成した突当て面に当接させ、シートリテーナの外周側先端面でシートリングを押圧保持させてシートリテーナを両持ち支持構造とし、このシートリテーナの両持ち支持構造により、シートリテーナの先端面と段部との間に所定の間隙を設けてシートリテーナの先端面をたわみ面とすると共に、シートリテーナと段部とを間隙領域でボルトを介して固着したバタフライバルブである。
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によると、シートリングを、シートリテーナを介してボルトにより締付ける際に、シートリングの圧縮量の精度がボルトの締付けトルクに拠らず、ボデーに設けた段部を介して決定されて適正な圧縮量で締付けられるため、安定したシール性能が発揮できるバタフライバルブである。しかも、シートリングを、シートリテーナとボルトによりボデーの突当て面に圧縮させるように押圧しているため、このシートリテーナが皿ばねの如く僅かなたわみを生じ、このたわみによりボルトの締付け軸力が弾性力として蓄えられて応力緩和に対する漏れを防ぐことができ、優れた耐久性を発揮しながら長期に亘って高シール性を維持できる。また、シートリテーナのたわみにより、シートリングの応力緩和に対して耐久性が発揮されると共にボルトが緩むのも防ぐことができ、新たなボルトの脱落構造を必要とすることなく、簡単な構造によって形成することができるバタフライバルブである。
【0026】
請求項2に係る発明によると、シートリテーナ先端面と段部との間の間隙が狭くなることにより、この間隙に流体が滞留するのを抑制することができ、流体による各部品の劣化や滞留した流体の腐敗を防ぐことができるバタフライバルブである。
【0027】
請求項3に係る発明によると、シートリングの側面にガスケットを配した場合に、ガスケットの応力緩和による漏れを防止して高いシール性を発揮できるバタフライバルブである。
【0028】
請求項4に係る発明によると、密封性能や機能性に優れた三重偏心構造のバタフライバルブに適用することができ、この三重偏心構造のバタフライバルブの機能をより一層高めることができるバタフライバルブである。
【0029】
請求項5に係る発明によると、ボデーに取付ける場合と同様に、弁体に対してシートリングを装着することができ、このとき、ボデーに装着した場合と同様に、適正なシートリングの圧縮量によって安定したシール性を発揮でき、また、シートリングの応力緩和による漏れを防いで高シール性を維持でき、ボルトの緩みを防ぐこともできるバタフライバルブである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明におけるバタフライバルブの好ましい実施形態及び作用を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態においては、三重偏心形のバタフライバルブに適用した例を用いて説明する。
図1〜図3において、本発明のバタフライバルブの第1実施形態を示している。
図の三重偏心形バタフライバルブにおいて、バルブ本体30のボデー(弁箱)31は、筒状に形成され、内部に流路31aを有しており、このボデー31内に、弁棒32を介して弁体33を回転自在に軸支している。弁体33は、弁棒32を90°回転操作することにより開又は閉状態に操作可能に設けている。ボデー31の両側には取付フランジ35aを備えた配管35を取付け可能に設けており、この配管35は、ボデー31を挟んだ状態にして、ボルト孔35bに図示しない固着ボルトを固着することで取付けられる。本例においては、便宜上、バルブ本体30の流路の向きとして、弁体33における弁棒32の取付け側を一次側、弁体33を挟んだ他方側を二次側としているが、一次側と二次側を逆向きに使用することもできる。
【0031】
ボデー31の側面と配管35の取付フランジ35aの間にはガスケット35cを装着している。このガスケット35cは、ボデー31と配管35の間のシール性を確保するために、シートリテーナ45と取付溝38の嵌合部分やシートリテーナ45のボルト取付穴47を避けるようにしてシートリテーナ45の外周側に配置されている。
【0032】
ボデー31の端部内周側には、シートリング40を装着可能な段部36を設けており、この段部36の外周側には、シートリテーナ45を当接するための環状の突当て面37を形成している。また、段部36の内周側には、シートリング40が当接する座面36aを形成し、この座面36aには、ボルト50取付け用のボルト穴36bを穿孔して形成している。また、段部36よりも端部側には、シートリテーナ45を装着するための取付溝38を設けている。なお、シートリテーナ45は、ステンレス等の金属によって環状に形成される。
【0033】
シートリング40は、例えば、SUS316、SUS316Lなどのステンレス等の金属製からなっている。シートリング40の材質は、これ以外にも、例えば、ステンレス等の金属と耐熱性非金属弾性体などを積層したラミネート構造であってもよく、この場合、耐熱性非金属弾性体の板として、例えば、膨張黒鉛(グラファイト)を主体とするものがある。またシートリング40として、黒鉛等の混合材を含んだPTFE等の樹脂を用いてもよい。
【0034】
このシートリング40は、図示しないが、その内周シール面41が流路方向から見て楕円形状になるように形成され、更に、この内周シール面41は、図1のように、流路方向に対して一次側を拡径した略円錐形状に設けられている。シートリング40の外径側は図示しない真円形状に設けており、このシートリング40を段部36に装入した後に、外周側をシートリテーナ45を介してリテーナボルト50で均一に締付け可能に設けている。
【0035】
ガスケット39は、例えば、膨張黒鉛や、ステンレス等の金属を芯金としてこの芯金に膨張黒鉛を被覆したり、或は、全体をPTFE等の樹脂製とし、シートリング40の一側面、又は、双方の側面に介在させている。本実施形態においては、ガスケット39をバルブ本体30の一次側に装着してシートリング40とボデー31との間をシールしている。これにより、図3において、弁閉時の漏れの経路を塞ぎ、流体がシートリング40とボデー31との間を経由して二次側に漏れるような流れfを防いでいる。なお、ガスケット39は、省略することもでき、シートリング40のみを装着することもできる。
【0036】
シートリング40とガスケット39は、段部36の座面36aにシートリテーナ45を介して保持される。ここで、シートリテーナ45において、弁体33側の側面を先端面46、配管35側の側面を後端面45aという。シートリング40とガスケット39を装着する際には、シートリテーナ45の外周側先端面46aを突当て面37に当接させた状態で、このシートリテーナ45の内周側先端面46bでシートリング40とガスケット39を押圧保持する。これにより、シートリテーナ45は、外周がボデー31の段部36により支持される一方、内周がシートリング40とガスケット39をボデー31側に押圧する。このように、シートリテーナ45は、外周側と内周側が支持された、両持ち支持構造によりボデー31の側部に配置されている。
【0037】
この支持構造により、シートリテーナ45の先端面46と段部36(座面36a)との間には所定の間隙Gが形成され、シートリテーナ45の先端面46をたわみ面とし、シートリテーナ45と段部36を、間隙Gの領域でボルト50を介して固着するようにしている。
なお、段部36の高さ(間隙Gの高さ寸法)Tは、シートリング40とガスケット39をボルト50によって締付けたときに、所定の圧縮力を付加し得る寸法に設定している。
【0038】
図1に示すように、弁体33は、弁棒32の回転軸Oを、弁体13の中心(シートリング20とのシール位置)から一次側に一定距離偏心させて設けており、かつ、回転軸Oをボデー31流路の中心線Oから一定距離偏心させた位置に配設し、更に、中心線Oから傾斜した中心線Oを有する円錐Eの外周面により楕円形状のシール面34を形成している。このシール面34は、ボデー31側に固定されたシートリング40の内周シール面41にシール可能に設けている。弁体33は、弁棒32を介して回転自在に軸支され、弁体33を閉方向に回転させたときに、この三重偏心構造によってシール面34が摺動することなく内周シール面41に密接シールできる。これにより、弁体33を操作する際には、操作トルクに悪影響を与えることなく、優れた耐久性を発揮でき、開閉時にはこの弁体33がスムーズに動作してトルクシール機能による高シール性を確保できるようにしている。
【0039】
次に、以上のように構成されたバタフライバルブについて、その動作を説明する。
図3において、ボデー31の座面36aにガスケット39とシートリング40を装着し、この上からシートリテーナ45を装着し、シートリテーナ45をボルト50で締付ける。ボルト50の締付けによって、シートリング40及びガスケット39が圧縮されると、これらの肉厚が薄くなり、シートリテーナ45の外周側先端面46aが段部36の突当て面37に当接する。シートリング40とガスケット39が圧縮保持されるときの基本的な圧縮量の精度は、この段部の高さTの寸法によって決定される。これにより、ボルト50の締付け精度が確保され、シートリング40及びガスケット39の圧縮量の精度が高く保たれて所定の圧縮量を常に確保して安定したシール性が得られる。
【0040】
シートリテーナ45は、外周側先端面46aを段部36に、内周側先端面46bをシートリング40(ガスケット39)にそれぞれ支持されて両持ち支持構造によってバルブ本体30の側部に配置されている。従って、この状態からボルト50を更に締付けると、図3の破線に示すように、シートリテーナ45は、その弾性によって皿ばねの如く僅かなたわみδを生じ、ボルト50の締付け軸力はこのシートリテーナのたわみδにより弾性力として蓄えられる。
【0041】
ボルト50は、その締付け力に伴って、シートリテーナ45のたわみδに基づく反力(復元力)が加わって締め込み難くなる。従って、ボルト50の締付け時において、このボルト50の過剰な締付けを阻止することができ、適正な締付け力によって締付けることができる。また、このとき、シートリング40やガスケット39に肉厚寸法の誤差等が生じている場合でも、適切な締付け力を発揮して、この誤差を吸収しながら適正な状態に締付けることができる。
【0042】
シートリテーナ45において、ボルト50の締付け部位を力点、段部36との接触部位を支点、シートリング40との接触部位を作用点とすると、ボルト50の締付けにより蓄えられた弾性力は、てこの原理により、シートリング40及びガスケット39を押圧する図示しない押圧力に変換される。この押圧力は、シートリング40やガスケット39に規定の大きい圧縮量を付与するように、ボルト50の締付け力を調節することで設定される。
【0043】
このように、シートリテーナ45の弾性力(蓄勢力)を利用してシートリング40(ガスケット39)を押圧するような構造に設けていることにより、応力緩和が発生してもボルト50が緩むのを防ぐことができる。
また、ボルト50には、前記のような反力が加わることにより、常に引抜き方向への軸方向の張力が生じている。従って、ボルト50とボデー31との締結力(摩擦力)が強固になり、脱落防止構造をあらたに設けることなくこのボルト50が自然に緩んだり脱落したりするのを防止することができ、しかも、応力緩和が生じた場合でも、この軸方向の力を維持でき、延いては、シートリング40及びガスケット39のシール性を維持できる。
【0044】
シートリング40やガスケット39のクリープ現象が発生した場合には、シートリテーナ45の蓄勢力によりこのシートリング40やガスケット39を押さえつける力を補うことができ、シートリング40やガスケット39によるシール力を維持することができる。
【0045】
また、バルブ本体30に繰り返し温度差が生じることによって過剰締付けが発生しても、シートリテーナ45の蓄勢力によりこれを緩和することができ、温度差が戻った際にもこの蓄勢力により締付け方向への力を補うことができる。しかも、シートリング40やガスケット39の熱膨張率の差によって生じる、温度変化後の圧縮率の低下も解消できる。
【0046】
また、バルブ本体30に温度差が生じている時に、シートリング40やガスケット39の熱膨張差によって締付緩和が発生しても、シートリテーナ45の蓄勢力により適切な締付け力を維持できる。
【0047】
なお、シートリング40とガスケット39は、段部36によって外周側に設けられている間隙Gにより、円周方向に適宜の自由度を有している。これにより、シートリテーナ45による押圧時や弁体33によるシール時には、このシートリング40とガスケット39に自己調心機能が働き、内周シール面41を流路に対して自動的に適切な状態に保つことができる。
【0048】
図4においては、本発明のバタフライバルブの第2実施形態を示している。なお、この実施形態において、上記実施形態と同一部分は同一符号によってあらわし、その説明を省略する。ここで、前記実施形態で示したように、ガスケット35cは、シートリテーナ45の外周側に配置されているため、図3のバルブにおいては、流体が流れfやfの経路によってバルブの二次側(シートリテーナ45の後端面45aと取付フランジ35bの隙間)から間隙G内に浸入する可能性がある。
【0049】
そこで、第2実施形態においては、間隙領域において、段部48の一部を内径側に突設させて突設部48aを設け、この突設部48aによって間隙Gを第1実施形態よりも狭くした間隙Gとし、間隙領域内に浸入した流体の滞留を抑制することができるようにしたものである。このときの突設部48aから突当て面37までの高さTは、シートリング40とガスケット39に所定の圧縮力を負荷した際に、シートリテーナ45に生じる図示しないたわみの量よりもやや大きい寸法になるように設定する必要がある。この高さTは、例えば、バルブ呼び径150Aのバルブの場合、1〜2mm程度に設定するとよい。
なお、この実施形態においては、段部48側の一部を突設させて間隙Gを狭くしているが、シートリテーナ45の一部を間隙側に突設形成して間隙を狭くするようにしてもよい(図示せず)。この場合にも、段部48側を突設させた場合と同様の効果を発揮できる。
【0050】
図5においては、本発明のバタフライバルブの第3実施形態を示している。
この実施形態においては、弁体51の端部外周側に段部52を形成し、この段部52にシートリテーナ55によってシートリング57とガスケット58を保持した構造に設けている。この場合、シートリテーナ55の先端面56における内周側先端面56aを段部52に形成した突当て面53に当接させ、一方、シートリテーナ55の外周側先端面56bでシートリング57(ガスケット58)を押圧保持させることによりシートリテーナ55を両持ち支持構造としている。このように、シートリング57(ガスケット58)は、前記実施形態におけるボデー31に装着する場合と同様の装着構造により弁体51に取付けることができ、このシートリテーナ55の両持ち支持構造によって、前記と同様にシートリテーナ55の先端面56と段部52との間に所定の間隙Gを設けてシートリテーナ55の先端面56をたわみ面とすると共に、シートリテーナ55と段部52とを間隙Gの領域でボルト50を介して固着することが可能になる。
【0051】
更に、図6においては、本発明のバタフライバルブの第4実施形態を示している。この実施形成において第3実施形態と同一部分は同一符号によってあらわし、その説明を省略する。この実施形態においては、第3実施形態のバタフライバルブから間隙領域に段部59の一部を外周側に突設させて突設部59aを設けた弁体58とし、この突設部59aによって間隙Gを狭くしたものである。このように、弁体側にシートリングを装着する場合でも、前記実施形態と同様に間隙を狭くでき、この間隙Gに浸入した流体の滞留を抑制することができる。しかも、この場合も前記と同様にシートリテーナ55の一部を間隙側に突設させることもできる(図示せず)。
【0052】
本発明は、上記実施形態において説明した三重偏心構造以外の構造のバタフライバルブにも適用でき、一次偏心形、二重偏心形のバタフライバルブは勿論、偏心構造を有しない通常のバタフライバルブにも簡単に応用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明におけるバタフライバルブの第1実施形態を示した断面図である。
【図2】図1のボデー付近を示した要部拡大図である。
【図3】図2の要部を示した一部拡大断面図である。
【図4】本発明のバタフライバルブの第2実施形態を示した要部断面図である。
【図5】本発明のバタフライバルブの第3実施形態を示した要部断面図である。
【図6】本発明のバタフライバルブの第4実施形態を示した要部断面図である。
【図7】従来のバタフライバルブの第1例を示した要部断面図である。
【図8】従来のバタフライバルブの第2例を示した要部断面図である。
【図9】従来のバタフライバルブの第3例を示した要部断面図である。
【図10】従来のバタフライバルブの第4例を示した要部断面図である。
【符号の説明】
【0054】
30 バルブ本体
31 ボデー
32 弁棒
33 弁体
34 シール面
36 段部
37 突当て面
39 ガスケット
40 シートリング
41 内周シール面
45 シートリテーナ
46 先端面
46a 外周側先端面
46b 内周側先端面
50 ボルト
G 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のボデーの端部内周側に形成した段部にシートリテーナを介してシートリングを保持し、このシートリテーナの外周側先端面を前記段部に形成した突当て面に当接させ、前記シートリテーナの内周側先端面で前記シートリングを押圧保持させて前記シートリテーナを両持ち支持構造とし、このシートリテーナの両持ち支持構造により、前記シートリテーナの先端面と前記段部との間に所定の間隙を設けて前記シートリテーナの先端面をたわみ面とすると共に、前記シートリテーナと段部とを前記間隙領域でボルトを介して固着したことを特徴とするバタフライバルブ。
【請求項2】
前記間隙間に段部の一部、又は、シートリテーナの一部を突設させて前記間隙を狭くした請求項1に記載のバタフライバルブ。
【請求項3】
前記シートリングの一側面、又は、双方の側面にガスケットを介在させた請求項1又は2に記載のバタフライバルブ。
【請求項4】
前記ボデー内に弁棒を介して回転自在に軸支される弁体を設け、この弁体は、中心を前記弁棒の回転軸から一定距離偏心させ、かつ流路方向の中心から一定距離偏心させた位置に配設し、前記流路の中心から傾斜した中心を有する円錐の外周面により楕円形状のシール面を形成し、このシール面を、前記シートリングの内周シール面に密接シールするようにした三重偏心構造を呈する請求項1乃至3の何れか1項に記載のバタフライバルブ。
【請求項5】
弁体の端部外周側に形成した段部にシートリテーナを介してシートリングを保持し、このシートリテーナの内周側先端面を前記段部に形成した突当て面に当接させ、前記シートリテーナの外周側先端面で前記シートリングを押圧保持させて前記シートリテーナを両持ち支持構造とし、このシートリテーナの両持ち支持構造により、前記シートリテーナの先端面と前記段部との間に所定の間隙を設けて前記シートリテーナの先端面をたわみ面とすると共に、前記シートリテーナと段部とを前記間隙領域でボルトを介して固着したことを特徴とするバタフライバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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