バックライトに用いられるレンズシート、それを用いたバックライト及び液晶表示装置
【課題】1枚で高い正面輝度を有し、かつ、広視野角を実現できるレンズシートを提供する。
【解決手段】バックライトに用いられるレンズシート17は、ベースフィルム21と、第1プリズム層22と、第2プリズム層23と、充填層24とを備える。第1プリズム層22は、ベースフィルム21の表面211上に形成され、各々の横断形状が鈍角の頂角を有する三角形状である、複数のプリズム220を備える。第2プリズム層23は、ベースフィルム21の表面212上に形成され、プリズム220の並設方向と同じ方向に並設された複数のプリズム230を含み、ベースフィルム21よりも低い屈折率を有する。充填層24は、プリズム230が並設された表面上に充填され、第2プリズム層23の屈折率よりも高い屈折率を有する。
【解決手段】バックライトに用いられるレンズシート17は、ベースフィルム21と、第1プリズム層22と、第2プリズム層23と、充填層24とを備える。第1プリズム層22は、ベースフィルム21の表面211上に形成され、各々の横断形状が鈍角の頂角を有する三角形状である、複数のプリズム220を備える。第2プリズム層23は、ベースフィルム21の表面212上に形成され、プリズム220の並設方向と同じ方向に並設された複数のプリズム230を含み、ベースフィルム21よりも低い屈折率を有する。充填層24は、プリズム230が並設された表面上に充填され、第2プリズム層23の屈折率よりも高い屈折率を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシート、それを用いたバックライト及び液晶表示装置に関する。さらに詳しくは、正面輝度を向上する機能を有し、バックライトに用いられるレンズシート、それを用いたバックライト及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイに代表される液晶表示装置は、正面輝度の向上を求められる。そのため、ディスプレイに利用されるバックライトには、面光源からの光線を正面に集光して正面輝度を向上するレンズシートが敷設される。このようなレンズシートとして、一般的には、特許第3262230号に開示されているようなプリズムシートが使用される。
【0003】
図19及び図20を参照して、従来のプリズムシート100は、互いに並設された複数の柱状のプリズムPLを表面に備える。各プリズムPLの頂角は、一般的に90°であり、プリズムシート100の屈折率は、1.5〜1.6程度である。面光源からの拡散光R100はプリズムのPLの表面で屈折し、正面に偏向されて出射する。このように、プリズムシート100は、拡散光を正面に集光させることにより、ディスプレイの正面輝度を向上する。
【0004】
上述のとおり、プリズムシート100は正面輝度を向上する。しかしながら、プリズムシート100は、正面斜め方向の輝度も高くしてしまう。図21は、液晶表示装置の表示画面の上下方向に並設された複数の蛍光灯を備えたバックライト上に、1枚のプリズムの並設方法が蛍光灯の並設方向と同じとなるようにプリズムシートを敷設した場合の輝度の視野角依存性を示すグラフである。図中の破線は表示画面の上下方向の輝度の視野角依存性を示し、図中の実線が左右方向の輝度の視野角依存性を示す。なお、図中の横軸は視野角を示し、縦軸はプリズムシートを敷設していない液晶表示装置の正面輝度を基準とした相対輝度を示す。
【0005】
図21を参照して、上下方向、左右方向ともに、視野角0degを中心に所定の視野角(上下方向で約±30deg、左右方向で約±50deg)までは輝度がほぼ一定である。しかしながら、所定の視野角を越えると、上下方向及び左右方向ともに輝度が急速に低下する。さらに、上下方向では、視野角が±50degを越えると、輝度が再び上昇し、いわゆるサイドローブが出現する。また、2枚のプリズムシートを各プリズムシートのプリズムが互いに平行になるように積層した場合、急激な輝度の低下やサイドローブはさらに顕著になる。
【0006】
このような急激な輝度の低下やサイドローブは液晶表示装置の表示画面を見るユーザに違和感を与える。そのため、輝度は、視野角0deg(つまり、表示画面の法線方向)をピークとして視野角の広がりとともに徐々に低下する、自然な配向分布となるのが好ましい。
【0007】
このような不自然な輝度の視野角依存性を解消するために、最近では、2枚の拡散シートが積層されたバックライトを用いた液晶表示装置が提案されている。この場合、輝度の視野角依存性は、視野角0degを輝度のピークとして視野角の広がりとともに徐々に輝度が低下する自然な配向分布となる。また、2枚の拡散シートを用いるため、高い正面輝度が得られる。
【0008】
しかしながら、輝度の視野角依存性の分布幅は狭くなる。液晶表示装置を利用するユーザは、上下斜め方向よりも左右斜め方向から表示画面を見る機会が多い。そのため、左右方向は特に、広視野角である方が好ましい。具体的には、IPS方式の液晶パネルを含む液晶表示装置の左右方向の輝度の視野角依存性において、正面輝度の1/2以上となる輝度の視野角範囲(以下、1/2視野角という)が100deg以上であるのが好ましい。 また、面光源上に2枚の拡散シートを重ねなければならず、製造工程が煩雑になる。
【0009】
さらに、バックライトが、互いに並設された複数の線光源を含む場合、輝度ムラが発生する場合がある。輝度ムラは、表示画面を見るユーザに違和感を与える。そのため、輝度ムラの発生は抑制される方が好ましい。
【特許文献1】特許第3262230号
【特許文献2】特願2006−126839号(同一出願人の未公開先願)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、1枚で高い正面輝度を有し、かつ、広視野角を実現できるレンズシートを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、輝度ムラを抑制できるレンズシートを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
本発明によるレンズシートは、バックライトに用いられる。レンズシートは、ベースフィルムと、第1及び第2のプリズム層と、充填層とを備える。第1のプリズム層は、ベースフィルムの一方の表面上に並設された複数の第1のプリズムを含む。第1のプリズムの横断形状は、鈍角の頂角を持つ三角形状である。ここで、三角形状の頂上は丸みを帯びていてもよい。第2のプリズム層は、ベースフィルムの他方の表面上に並設された複数の第2のプリズムを含む。第2のプリズムの並設方向は、第1のプリズムの並設方向と略同じである。第2のプリズム層は、ベースフィルムよりも低い屈折率を有する。充填層は、第2のプリズム層の第2のプリズムが並設された表面上に充填され、第2のプリズム層の屈折率よりも高い屈折率を有する。なお、ベースフィルムは、フィルム状やシート状であってもよく、板状であってもよい。
【0013】
本発明によるレンズシートでは、入射された光線を段階的に集光する。充填層の屈折率が第2のプリズム層の屈折率よりも高いため、充填層に入射された拡散光は、第2のプリズム表面で屈折し、正面に集光される。次に、ベースフィルムの屈折率が第2のプリズム層の屈折率よりも高いため、第2のプリズム層からベースフィルムに入射された光線は、ベースフィルムの表面で屈折し、より正面に集光される。さらに、ベースフィルムから出射された光線は第1のプリズム層に入射され、第1のプリズムの表面で屈折し、より正面に集光されて出射される。このように、本発明のレンズシートは、入射された光線をレンズシート内部で段階的に集光させることができる。そのため、1枚で高い正面輝度を得ることができる。
【0014】
また、第2のプリズム層の第2のプリズムの表面に充填層が形成されるため、充填層にもプリズムが形成されるが、このプリズムによるサイドローブの発生は抑制される。第2のプリズム層の屈折率は充填層よりも小さいものの、空気の屈折率よりも大きい。そのため、充填層上のプリズム表面では、従来のプリズムシートよりも臨界角が大きくなる。したがって、充填樹脂層上のプリズムの側面で光線が全反射される割合が減少し、サイドローブの発生が抑制される。
【0015】
さらに、本発明のレンズシートは、第1及び第2のプリズムの並設方向が互いに略同じである。そのため、第1及び第2のプリズムの長手方向における輝度の視野角依存性は、幅の広い分布を示し、広視野角となる。また、輝度ムラの発生を抑制できる。
【0016】
ここで、第1及び第2のプリズムの並設方向は厳密に同じである必要はなく、ほぼ同じであればよい。具体的には、本発明の効果を奏する程度に同じであればよい。
【0017】
好ましくは、充填層は、各々が、隣り合う第2のプリズムの間に充填される複数の第3のプリズムを含み、第3のプリズムの稜線は、第3のプリズムの幅方向に蛇行している。
【0018】
この場合、第1及び第2のプリズムの配列に起因したモアレの発生を抑制できる。
【0019】
好ましくは、第1及び/又は第2のプリズムのピッチは、不均一である。
【0020】
第1及び/又は第2のプリズムのピッチが一定である場合、これらのプリズムのピッチが一定周期で同期することによりモアレが発生する。第1及び/又は第2のプリズムのピッチが不均一であれば、これらのプリズムが一定周期で同期しにくくなるため、モアレの発生を抑制できる。
【0021】
好ましくは、充填層は、樹脂と、複数の粒子とを含む。複数の粒子は、樹脂内に分散され、樹脂と異なる屈折率を有する。
【0022】
この場合、充填層に入射した光は充填層内で拡散して、第2のプリズム層に入射する。そのため、モアレの発生を抑制できる。
【0023】
本発明によるバックライトは、上述のレンズシートを備える。また、本発明による表示装置は、上記バックライトを備える。本発明による液晶表示装置は、上述のバックライトと、バックライト上に敷設される液晶パネルとを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を援用する。
[全体構成]
図1及び図2を参照して、液晶表示装置1は、バックライト10と、バックライト10の正面に敷設される液晶パネル20とを備える。バックライト10は、拡散光を出射する面光源16と、面光源16上に敷設されたレンズシート17とを備える。
[面光源]
面光源16は、ハウジング11と、線光源である複数の蛍光管12と、光拡散板13とを備える。ハウジング11は、正面に開口部110を有する筐体であり、内部に蛍光管12を収納する。ハウジング11の内面は、反射フィルム111で覆われている。反射フィルム111は、蛍光管12から出射された光を乱反射させ、開口部110に導く。反射フィルム111は、たとえば東レ製ルミラー(登録商標)E60LやE60Vであり、拡散反射率が95%以上であるものが好ましい。
【0025】
複数の蛍光管12は、ハウジング11の背面手前に上下方向(図1中y方向)に並設される。蛍光管12は左右方向(図1中x方向)に伸びた線光源であり、たとえば冷陰極管やEEFL(External Electrode Fluorescent Lamp)である。なお、蛍光管12とともに、LED(Light Emitting Device)等の複数の点光源がハウジング11内に収納されてもよい。また、収納された複数のLEDが線状に配列されることにより、擬似的な線光源が形成されてもよい。
【0026】
光拡散板13は、開口部110に嵌め込まれ、ハウジング11の背面と並行して配設される。光拡散板13を開口部110に嵌め込むことによりハウジング11の内部は密閉される。そのため、蛍光管12からの光が光拡散板13以外の箇所からハウジング11外へ漏れるのを防止でき、光の利用効率が向上される。
【0027】
光拡散板13は、蛍光管12からの光及び反射フィルム111で反射された光を拡散して正面に出射する。光拡散板13は、透明な基材と、基材内に分散された複数の粒子とで構成される。基材内に分散される粒子は、可視光領域の波長の光に対する屈折率が基材と異なるため、光拡散板13に入射した光は拡散透過される。光拡散板13の基材は、たとえば、ガラスや、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン酸系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の樹脂である。光拡散板13はまた、レンズシート17の支持体として機能する。
[レンズシート]
図3及び図4を参照して、レンズシート17は、ベースフィルム21と、ベースフィルム21の一方の表面211上に形成された第1プリズム層22と、ベースフィルム21の他方の表面212上に形成されたコリメート層25とを備える。これらは一体的に形成されている。
【0028】
ベースフィルム21は、可視光領域の波長に対して透明である。ベースフィルム21は、たとえば、ガラスや、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン酸系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の樹脂で構成される。ベースフィルム21の表面211及び212はともに平坦である。また、ベースフィルム21は、フィルム状またはシート状であってもよく、板状であってもよい。
【0029】
第1プリズム層22は、表面211上に形成される。第1プリズム層22は、互いに並設された複数のプリズム220を備える。プリズム220は、柱状であり、横断形状は鈍角の頂角を有する三角形状である。三角形状の頂上は丸みを帯びていても良い。プリズム220は、ハウジング11内の複数の蛍光管12の並設方向と同じく、液晶表示装置1の画面の上下方向(図1中のy方向)に並設される。
【0030】
コリメート層25は、充填層24と、第2プリズム層23とで構成される。第2プリズム層23は、ベースフィルム21の表面212上に形成され、互いに並設された複数のプリズム230を備える。
【0031】
充填層24は、第2プリズム層23のプリズム230が並設された表面上に充填される。充填層24のうち、複数のプリズム230間に充填された部分は、プリズム240を構成する。プリズム230が互いに並設されているため、複数のプリズム240も互いに並設されている。プリズム240が並設された表面と反対側の表面243は平坦である。表面243は、面光源16と対向する。
【0032】
プリズム230及び240は、液晶表示装置1の画面の上下方向(図1中のy方向)に並設される。つまり、プリズム220の並設方向はプリズム230及び240の並設方向と同じである。そのため、面光源から出射される光のうち、上下方向に出射される光が集光され、正面輝度が向上する。一方、左右方向に出射される光は上下方向に出射される光よりも集光されないため、左右の視野角は広くなる。さらに、輝度ムラの発生を抑制できる。
【0033】
第1プリズム層22、第2プリズム層23、及び充填層24は、樹脂で構成される。より具体的には、第1プリズム層22及び第2プリズム層23は、電離放射線硬化樹脂で構成される。電離放射線硬化樹脂とは、紫外線や電子線等の電離放射線により硬化する樹脂であり、たとえば、ポリエステル系アクリレート樹脂、ウレタン系アクリレート樹脂、ポリエーテル系アクリレート樹脂、エポキシ系アクリレート樹脂、ポリエステル系メタクリレート樹脂、ウレタン系メタクリレート樹脂、ポリエーテル系メタクリレート樹脂、エポキシ系メタクリレート樹脂である。充填層24は、電離放射線硬化樹脂で構成されてもよいし、ポリカーボネ−ト、ポリスチレン等の他の樹脂で構成されてもよい。
[レンズシート内の各層の屈折率]
プリズム層23の屈折率n23は、充填層24の屈折率n24と以下の式(1)の関係を有し、ベースフィルム21の屈折率n21と以下の式(2)の関係を有する。
【0034】
n23<n24 (1)
n23<n21 (2)
要するに、屈折率n23は屈折率n24及び屈折率n21よりも小さい。なお、第2プリズム層23は上述のとおり樹脂で構成されるため、その屈折率n23は空気の屈折率na=1.0よりも大きい。
【0035】
充填層24の屈折率n24は、第2プリズム層23の屈折率n23よりも大きいため、コリメート層25は、充填層24に入射される光線を正面にコリメートしてベースフィルム21に出射する。屈折率n24を大きくすれば、充填層24の下面243での光線の屈折角が大きくなる。下面243でコリメートされた光線がプリズム240の表面に達してさらに正面にコリメートされる。そのため、屈折率n24が大きい方が、正面輝度がより向上する。充填層24の好ましい屈折率n24は、1.5<n24≦1.8である。ただし、屈折率n24が1.5以下であっても、屈折率n23よりも大きければ、本発明の効果をある程度奏することができる。
【0036】
第2プリズム層23の屈折率は、充填層24の屈折率よりも小さいが、空気の屈折率na=1.0よりも大きい。そのため、コリメート層25内のプリズム240の表面に入射された光線の臨界角が大きくなる。臨界角が大きくなれば、充填層24に入射された光線が全反射する割合が減少する。そのため、プリズム240の頂角が90°以下であっても、n23とn24との相対屈折率が小さいとサイドローブ光の出射を抑制できる。第2プリズム層23の好ましい屈折率n23は、1.3≦n23≦1.5である。ただし、屈折率n23が上述の範囲外であっても、屈折率n23が式(1)及び(2)を満たせば、本発明の効果をある程度奏することができる。
【0037】
ベースフィルム21の屈折率n21は、屈折率n23よりも大きい。そのため、コリメート層25で正面に集光された光は、ベースフィルム21の表面212に入射されたとき、さらに正面にコリメートされる。そのため、ベースフィルム21は正面輝度の向上に寄与する。
【0038】
以上の構成を有するレンズシート17は、1枚で高い正面輝度を有する。レンズシート17はさらに、サイドローブの発生を抑制し、かつ、左右方向が広視野角となる。また、輝度ムラが抑制される。以下、これらの効果について詳述する。
[サイドローブの抑制]
レンズシート17は、コリメート層25により上下視野角におけるサイドローブの発生を抑制する。
【0039】
コリメート層25がサイドローブを抑制する理由は必ずしも定かではないが、主として以下に示す事項が起因していると推測される。
【0040】
まず、従来のプリズムシートにおけるサイドローブの発生機構について説明する。図5Aにおいて、従来のプリズムシート100上の頂角が90°のプリズムPLに入射される光線の中には、プリズムPLの一方の側面BP1で全反射した後、他方の側面BP2で透過して外部に出射する光線R2がある。この光線R2がサイドローブを形成する。
【0041】
具体的には、面光源16の出射面の法線n0(バックライト正面)から角度θ0の方向に出射された光線R0がプリズムPLの側面BP1に達する。光線R0の入射角θi1が臨界角θc1よりも大きい場合、光線R0は全反射し、光線R1としてプリズムPL内を伝播する。光線R1が側面BP2に達したとき、その入射角θi2が臨界角θc1よりも小さければ、光線R1は、法線n0(正面)に対して広角度をなすサイドローブ光R2として外部に出射される。
【0042】
これに対し、コリメート層25は、サイドローブ光の発生を抑制する。図5Bを参照して、コリメート層25内は式(1)の関係を満たす第2プリズム層23と充填層24とで構成され、複数のプリズム230の間には、プリズム240が充填されている。
【0043】
ここで、充填層24の屈折率n24がプリズムシート100の屈折率n100と同じであると仮定する。この場合、充填層24から第2プリズム層23に光線が入射するときの相対屈折率は、プリズムシート100から空気に光線が入射するときの相対屈折率よりも小さくなる。なぜなら、樹脂で構成されるプリズム層23の屈折率n23は、空気の屈折率(=1.0)よりも大きいためである。
【0044】
相対屈折率が小さくなるため、コリメート層25内でのプリズム240の表面241及び242における臨界角θc0は、プリズムシート100のプリズムPLの表面BP1及びBP2における臨界角θc1よりも大きくなる。その結果、プリズム240の表面では、全反射される光線R0の割合が減少し、サイドローブ光R2の出射を抑制できると考えられる。
【0045】
なお、第1プリズム層22のプリズム220の頂角は鈍角である。そのため、頂角が90°以下のプリズムよりもサイドローブの発生を抑制できる。頂角が大きいほど、プリズム表面241、242に入射された光のうち、全反射する光の割合が大きくなるからである。ただし、頂角が大きすぎれば、正面輝度が低下する。したがって、プリズム220の好ましい頂角は90°よりも大きく130°以下である。さらに好ましくは、100°以上120°以下である。
以上の推定される理由により、レンズシート17は、高い正面輝度を維持しつつ、上下視野角におけるサイドローブの発生を抑制する。その結果、視野角0degをピークに視野角の広がりとともに輝度が徐々に低下する自然な配向分布を示す輝度の視野角依存性が得られる。
[広視野角の実現]
レンズシート17のプリズム220、230及び240は、いずれも蛍光管12の並設方向と同じ方向に並設される。そのため、上下方向(図中y方向)に比べて、左右方向(図中x方向)の光は集光されにくい。その結果、左右方向の輝度角度特性において、広視野角を実現できる。
【0046】
図6に、レンズシート17の輝度角度依存性の一例を示す。図6の横軸は視野角である。視野角は表示画面の法線方向(正面)を0deg軸とし、0deg軸から上下方向への傾き角を上下視野角、0deg軸から左右方向への傾き角を左右視野角とする。左右視野角のうち、法線から右方向への傾き角(視野角)をプラス(+)で示し、法線から左方向への傾き角(視野角)をマイナス(−)で示す。同様に、上下視野角のうち、法線から上方向への傾き角(視野角)をプラス(+)で示し、法線から下方向への傾き角(視野角)をマイナス(−)で示す。図6の縦軸は、面光源の正面輝度を基準(1.0)に対する各視野角での輝度の比である相対輝度(a.u.)を示す。図6中の実線が左右方向の輝度の視野角依存性を示し、破線が上下方向の輝度の視野角依存性を示す。
【0047】
図6を参照して、レンズシート17の輝度角度依存性は、上下方向及び左右方向ともに視野角0degをピークとし、視野角の広がりとともに輝度が徐々に低下する自然な配向分布を示す。
【0048】
さらに、左右方向の輝度角度依存性は、上下方向よりも広がりを有する。より具体的には、ISP方式の液晶パネルを含む液晶表示装置に用いた場合、正面輝度の1/2以上の輝度となる視野角範囲が100deg(−50deg〜+50deg)以上となる。液晶表示装置のユーザは、上下斜め方向から表示画面を見る機会よりも、左右斜め方向から表示画面を見る機会の方が多い。本実施の形態では、左右方向の輝度角度依存性が広視野角である。そのため、ユーザは斜め方向から表示画面を見ても、輝度の極端な変動を感じにくく、違和感なく表示画面を見ることができる。
[正面輝度の向上]
レンズシート17では、下面から入射された光を、コリメート層25、ベースフィルム21、及び第1プリズム層22の各々で正面に集光する。そのため、1枚で高い正面輝度が得られる。
【0049】
コリメート層25内の充填層24の屈折率n24は、第2プリズム層23の屈折率n23よりも大きい。そのため、コリメート層25は、面光源からの拡散光を正面に集光してベースフィルム21に出射する。
【0050】
ベースフィルム21の屈折率n21は第2プリズム層23の屈折率n23よりも大きい。そのため、コリメート層25からベースフィルム21に入射された光線は、ベースフィルム21の下面で屈折し、さらに正面に集光されて第1プリズム層22に出射される。
【0051】
第1プリズム層22は、プリズム220により、入射された光線をさらに正面に集光し、外部に出射する。
【0052】
以上のとおり、レンズシート17では、コリメート層25、ベースフィルム21及び第1プリズム層22の各々が、入射された光線を正面にコリメートする。そのため、レンズシート17は、1枚で正面輝度をより向上できる。
[輝度ムラの防止]
上述の通り、複数の蛍光管12が上下方向に並設される場合、上下方向で輝度ムラが発生しやすい。具体的には、蛍光管12直上部分で輝度が最も高く、隣り合う蛍光管12の間の中間部分で輝度が最も低くなりやすい。
【0053】
しかしながら、本実施の形態によるレンズシート17では、プリズム230及びプリズム240の並設方向は、面光源16内の複数の蛍光管12の並設方向と同じであり、かつ、プリズム220の並設方向も、蛍光管12の並設方向と同じである。そのため、レンズシート17は、上下方向(図1中のy方向)の光をより集光して正面に出射する。その結果、輝度ムラの発生を抑制できる。
[モアレの防止]
プリズム220、230、プリズム240が互いに同じ方向に配列される場合、これらのレンズの配列ピッチが一定であれば、モアレが発生しやすくなる。
【0054】
そこで、好ましくは、プリズム220、230及び240のうち、少なくとも1種のプリズムの配列ピッチを不均一にする。たとえば、図7に示すように、隣り合うプリズム230の稜線間距離PnとPn+1(n=1〜6)とが互いに異なるように、同一の頂角を有する複数のプリズム230を配列する。モアレは、プリズム220、230及び240の配列ピッチが一定である場合に、これらのプリズムのピッチが一定周期で同期することにより発生する。プリズム220、230及び240のうち少なくとも1種のプリズムの配列ピッチが不均一であれば、これらのプリズムのピッチが同期しにくくなる。そのため、モアレの発生を抑制できる。
【0055】
また、図8A及び図8Bに示すように、コリメート層25を上方から見た場合、プリズム240の稜線が直線ではなく、プリズム240の幅方向に蛇行していてもよい。この場合も、プリズム220、230及び240のピッチが一定周期で同期しにくくなるため、モアレの発生を抑制できる。なお、図8A及び図8Bにおいて、プリズム240の高さが軸方向で変化してもよい。
【0056】
図9に示すように、プリズム230のピッチは、プリズム220のピッチよりも小さい方が好ましい。プリズム230は、低屈折率の樹脂で構成されるが、低屈折率の樹脂は製造コストが高いため、第2プリズム層23はできるだけ少量の樹脂により形成されるのが好ましい。第2プリズム層23内のプリズム230のピッチをプリズム220のピッチよりも小さくすれば、プリズム220とプリズム230のピッチが同期する周期が長くなるため、モアレの発生をある程度抑制できる。
【0057】
さらに、レンズシート17の最下層である充填層24内に、充填層24を構成する樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する粒子を含有してもよい。図10を参照して、充填層24は、透明な樹脂244と、樹脂内に分散された複数の粒子(フィラ)245とで構成される。フィラ245は、樹脂244と異なる屈折率を有する。
【0058】
充填層24の内部に入射された光は、フィラ245によりある程度拡散され、プリズム層23に出射される。そのため、輝度ムラ及びモアレの発生を抑制できる。
【0059】
フィラ245は、有機物で構成されてもよいし、無機物で構成されてもよい。フィラ245は、たとえば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、シリコーン系微粒子、アクリル系微粒子、スチレン系微粒子、MS系微粒子、ガラス系微粒子などである。これらは、単独で使用されてもよいし、併用されていてもよい。フィラ245の粒径は特に制限されないが、過剰に大きいと、充填層24の形成が困難になる。また、過剰に小さいと拡散効果が少ない。好ましいフィラ245の粒径は、0.5μm〜10μmである。また、フィラ245を過剰に含有すれば、レンズシート17の正面輝度が低下する。そのため、好ましいフィラ245の含有量は、樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部である。
[製造方法]
レンズシート17の製造方法の一例として、ロール版を用いたロールトゥロール方式による製造方法について説明する。
【0060】
はじめに、ベースフィルム21の表面212にコリメート層25を形成する。表面にフィルム状のベースフィルム21を巻いた円筒状の第1ロールと、図11A及び図11Bに示すように、プリズム230の転写用溝52を表面に有する第2プリズム層形成用のロール版50(以下、単にロール版50という)とを準備する。転写用溝52の横断面形状は、プリズム230の横断形状と同じであり、転写用溝52の縁部(フランジ部)に相当する凸条53の横断形状は、プリズム240の横断形状と同じである。転写用溝52はロール軸方向に並設される。なお、図8Aに示すように、プリズム240の稜線が蛇行する場合、たとえば、図11Cで示すように、転写用溝52のピッチP0は図11Bと同じであっても、転写用溝52の深さが異なる部分が設けられる。つまり、転写用溝52の谷部の角度(頂角)は一定とし、その深さが転写用溝52の長手方向で変化する。この場合、プリズム240の稜線は、転写用溝52の凸条53の頂上に相当するため、形成されたプリズム240の稜線はプリズム240の幅方向に蛇行した波状の曲線となる。
【0061】
第1ロールの軸方向がロール版50の軸方向と平行になるように、第1ロール及びロール版50を配置する。配置後、ベースフィルム21の屈折率n21よりも低い屈折率n23を有する電離放射線硬化樹脂を、ロール版50の表面に充填する。第1ロール及びロール版50を回転させながら、充填された電離放射線硬化樹脂を、第1ロールから送り出されたベースフィルム21上に転写する。このとき、ベースフィルム21を挟んでロール版50と対向して配置されるバックアップロールと、ロール版50とで、ベースフィルム21を挟みながら転写する。転写された電離放射線硬化樹脂に電離放射線を照射して電離放射線硬化樹脂を硬化し、第2プリズム層23を形成する。
【0062】
第2プリズム層23を形成後、第2プリズム層23上に充填層24を形成する。まず、表面が平滑なロール版を準備する。次に、屈折率n23よりも高い屈折率n24を有する電離放射線硬化樹脂をロール版に塗布する。表面に電離放射線硬化樹脂が塗布されたロール版をプリズム層23のプリズム230が形成された表面に押し当てて、電離放射線硬化樹脂を転写する。そして、電離放射線を照射することにより、転写された電離放射線硬化樹脂を硬化させ、充填層24を形成する。
【0063】
充填層24は、上述の方法に代えて、次の方法で製造してもよい。まず、第2プリズム層23の屈折率n23よりも高い屈折率n24を有する樹脂を溶剤に溶解した塗料を準備する。グラビアコータ等を用いて、準備した塗料をプリズム層23上に均一に塗布する。塗布された塗料を乾燥し、充填層24を形成する。
【0064】
以上の工程により、ベースフィルム21の表面212にコリメート層25が形成される。コリメート層25が形成されたベースフィルム21の軸方向に並設されている。コリメート層25が形成されたベースフィルム21は、第2ロールに巻き取られる。
【0065】
次に、ベースフィルム21の表面211に第1プリズム層22を形成する。軸方向にプリズム220の転写用溝が並設された表面を有する第1プリズム層形成用のロール版を準備する。ロール版の転写用溝の谷部の角度(プリズム220の頂角に相当)は鈍角である。
【0066】
ロール版の軸方向が第2ロールの軸方向と平行となるように、ロール版を配置する。続いて、ロール版の転写用溝に電離放射線硬化樹脂を充填する。第2ロール及びロール版を回転させながら、充填された電離放射線硬化樹脂を、第2ロールから送り出されたベースフィルム21の表面211に転写する。このとき、バックアップロールによりフィルムを挟みながら転写する。転写された電離放射線硬化樹脂に電離放射線を照射して硬化させ、第1プリズム層22を形成する。以上の工程によりレンズシート17が形成される。
【0067】
上述の製造方法では、はじめにコリメート層25を形成し、次に第1プリズム層22を形成したが、はじめに第1プリズム層22を形成し、次にコリメート層25を形成してもよい。
【0068】
以上、製造方法の一例として、ロール版を用いたロールトゥロール方式による製造方法を説明したが、他の製造方法によってもレンズシート17を製造できる。ロールトゥロール方式ではなく、板状の版を用いてコリメート層25及び第1プリズム層22を形成してもよい。また、第1プリズム層22は、押し出し法や、熱プレス法、射出形成法により形成してもよい。
【0069】
以上、本実施の形態によるレンズシート17は、第2プリズム層23の屈折率n23、充填層24の屈折率n24、及びベースフィルム21の屈折率n21を式(1)及び(2)を満たす関係とすることにより、正面輝度を向上できる。また、コリメート層25により、サイドローブの発生を抑制し、視野角0degをピークとして、視野角が大きくなるにしたがい輝度が徐々に低下する、自然な配向分布が得られる。
【0070】
さらに、プリズム220、230及び240の並設方向がほぼ同じであるため、左右方向の輝度角度依存性を広視野角にすることができる。具体的には、ISP方式の液晶パネルを含む液晶表示装置に用いた場合の1/2視野角を100deg以上とすることができる。ここで、プリズム220、230及び240の並設方向は全く同じである必要はなく、その交差角が10°以内であれば、上述の広視野角を得ることができる。なお、プリズム220、230及び240の稜線がいずれも直線であり、かつ、同じピッチである場合、交差角が3°以上あれば、モアレの発生を防止できる。
本実施の形態ではバックライト10を直下型としたが、エッジライト型にしてもよい。
【0071】
図3及び4では、複数のプリズム220の各々を互いに接触させたが、隣り合うプリズム220の間に隙間を設けてもよい。同様に、隣り合うプリズム240の間に隙間を設けてもよい。また、プリズム230及び240の横断面形状を三角形としたが、台形でもよい。また、プリズム220、230及び240の頂上が丸みを帯びていてもよい。
【実施例1】
【0072】
表1に示す形状及び屈折率を有する試験番号1〜8のレンズシートを準備した。
【表1】
試験番号1〜6は、図3及び図4に示す形状のレンズシートであった。これらのレンズシートを以下の方法で製造した。
【0073】
複数のプリズム転写用溝が軸方向に配列された表面を有する第2プリズム層形成用ロール版を準備した。ベースフィルムとして、厚さ188μm、屈折率(n21)=1.6のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。ロール版に第2プリズム層用の紫外線硬化樹脂を充填した。そして、ロール版をPETフィルムの表面に押し当てることにより、紫外線硬化樹脂を転写した。紫外線を照射することにより転写された紫外線硬化樹脂を硬化させ、第2プリズム層を形成した。
【0074】
続いて、充填層を作製した。まず、表面が平滑なロール版を準備した。ロール版に充填層用の紫外線硬化樹脂を塗布し、表面に紫外線硬化樹脂が塗布されたロール版を第2プリズム層の表面に押し当てて、紫外線硬化樹脂を転写した。紫外線を照射することにより、転写された紫外線硬化樹脂を硬化させ、充填層を形成した。
【0075】
以上の工程によりベースフィルム上にコリメート層を形成した後、コリメート層が形成された表面と反対側のベースフィルムの表面に、第1プリズム層を形成した。プリズム転写用溝が軸方向に配列された表面を有する第1プリズム層形成用のロール版を準備した。第1プリズム層用の紫外線硬化樹脂をロール版の転写用溝に充填し、PETフィルム表面上に転写した。転写された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し硬化させ、第1プリズム層を形成した。
【0076】
以上の製造方法で製造された試験番号1の第2プリズム層のプリズムの横断形状は二等辺三角形であり、その頂角は90°であった。また、互いに隣り合うプリズムの頂点間距離、すなわち、プリズムの配列ピッチは50μmであった。各プリズムの高さは、長手方向に15μm〜25μmの範囲で周期的に変化した。さらに、同一横断面上での各プリズムの高さは、互いに異なっていた。このため、充填層のプリズムの稜線は、直線ではなく、プリズムの並設方向に蛇行する曲線となった。
【0077】
第1プリズム層の横断形状は二等辺三角形であり、その頂角は110°であった。また、プリズムの配列ピッチは50μmであり、高さは17.5μmで一定であった。第1プリズム層のプリズムの並設方向は、第2プリズム層のプリズムの並設方向と同じであった。
【0078】
形成された第2プリズム層の屈折率は1.49であり、充填層の屈折率(=1.56)及び第1プリズム層の屈折率(=1.56)よりも低かった。
【0079】
試験番号2の第2プリズム層のプリズムは、試験番号1と異なり、高さが11.5μmで一定であった。また、配列ピッチは23μmであった。このため、第2プリズム層のプリズムの配列ピッチ(=23μm)と第1プリズム層のプリズムの配列ピッチ(=50μm)とは、互いに素の関係となった。その他の構成は、試験番号1と同じであった。
【0080】
試験番号3の第2プリズム層には、6.5μmの高さと13μmのプリズム底辺とを有する複数のプリズムと、11.5μmの高さと23μmのプリズム底辺とを有する複数のプリズムと、16.5μmの高さと33μmのプリズム底辺とを有する複数のプリズムとが形成された。これらのプリズムは互いに並設されているが、その配列順は不規則であった。なお、いずれのプリズムも頂角は90°であった。その他の構成は試験番号1と同じであった。
【0081】
試験番号4の充填層は、充填層用の紫外線硬化樹脂100重量部に対してフィラを1重量部含有した。フィラは酸化チタンからなり、平均粒子径は0.5μmであった。また、第2プリズム層のプリズムの頂角は80°であり、配列ピッチは50μmであり、プリズム高さは29.8μmであった。その他の構成は試験番号1と同じであった。
【0082】
試験番号5のレンズシートでは、第1プリズム層のプリズムと第2プリズム層のプチズムとが交差した。具体的には、第1プリズム層のプリズムの並設方向と第2プリズム層のプリズムの並設方向とがなす角度が5°であった。また、第2プリズム層のプリズムの高さは25μmであった。その他の構成は試験番号1と同じであった。
【0083】
試験番号6のレンズシートは、試験番号5と比較して、第1及び第2のプリズム層のプリズムの並設方向が互いに同じであった。その他の構成は試験番号5と同じであった。
【0084】
試験番号7では、上述の試験番号1〜6と異なり、本実施の形態によるレンズシートの代わりに、80%のヘイズを有する2枚の拡散シートを積層した。また、試験番号8では、プリズムシート上に拡散シートを敷設した。プリズムシートの屈折率は1.56であり、プリズムの頂角は110°、配列ピッチは50μm、各プリズムの高さは17.5μmであった。拡散シートのヘイズは80%であった。要するに、試験番号7及び8は、2枚のレンズシートを組合せたものとした。
【0085】
[輝度の視野角依存性及び1/2視野角の調査]
試験番号1〜8のレンズシートを用いて輝度の視野角依存性を調査した。
【0086】
内部に16本の外部電極陰極管を収納した筐体と、表1に示すとおり65%の全光線透過率とを有する拡散板とを備える面光源を複数準備した。
【0087】
各面光源上に、試験番号1〜8のレンズシートをそれぞれ敷設して、試験番号1〜8のバックライトを製造した。試験番号1〜8の各バックライト上に、IPS方式の液晶パネルを敷設して、試験番号1〜8の液晶表示装置を製造した。
【0088】
製造された液晶表示装置を白色表示した場合の、液晶表示装置の上下方向及び左右方向の視野角依存性を調査した。視野角は、表示画面の法線方向(正面)を0deg軸とし、0deg軸から上下方向への傾き角を上下視野角、左右方向への傾き角を左右視野角とした。左右方向のうち、法線から右方向への傾き角をプラス(+)で示し、左方向への傾き角をマイナス(−)とした。同様に、上下視野角のうち、法線から上方向への傾き角をプラスで示し、下方向への傾き角をマイナスで示した。
【0089】
さらに、各試験番号について、上下方向及び左右方向の1/2視野角を以下の方法で求めた。まず、図6及び図12〜図18に示すように、各試験番号1〜8の輝度の視野角依存性のグラフを作成した。表1に示すとおり、図12は試験番号1の輝度の視野角依存性のグラフであり、図13〜図16は、それぞれ試験番号2〜5の視野角依存性のグラフである。図6は試験番号6の視野角依存性のグラフであり、図17及び18はそれぞれ試験番号7及び8の視野角依存性のグラフである。グラフの横軸は視野角を示す。また、縦軸は、試験番号7で得られた正面輝度に対する各視野角での輝度の比(以下、相対輝度という)である。図中の実線は左右方向の輝度の視野角依存性を示し、破線は上下方向の輝度の視野角依存性を示す。
【0090】
図6及び図12〜図18に示す上下及び左右方向の輝度の視野角依存性のうち、輝度が正面輝度の1/2以上となる視野角範囲を求め、求めた視野角範囲を1/2上下視野角、1/2左右視野角とした。
【0091】
[輝度ムラ及びモアレの調査]
輝度ムラ及びモアレは、以下の方法で評価した。上述の試験番号1〜8の液晶表示装置を用いて、表示画面上に輝度ムラ及びモアレが発生しているか否かを、目視により評価した。
【0092】
[調査結果]
調査結果を表1に示す。表1中の「輝度ムラ」及び「モアレ」項目中の「無し」は、輝度ムラ、モアレが目視では確認できなかったことを示し、「有り」は目視で確認されたことを示す。
【0093】
表1を参照して、試験番号1〜6の左右方向の1/2視野角はいずれも100deg以上であった。また、試験番号1〜6のいずれにも輝度ムラは発生しなかった。また、図6、図12〜図16を参照して、サイドローブの発生も抑えられた。また、正面輝度は、試験番号7(2枚の拡散シートを積層)とほぼ同じであった。
【0094】
さらに、試験番号1は、充填層のプリズムの稜線が蛇行していたため、モアレが発生しなかった。また、試験番号2は、第2プリズム層のプリズムのピッチと第1プリズム層のプリズムのピッチとが異なっており、互いに素の関係であっため、モアレが発生しなかった。試験番号3は、第2プリズム層のプリズムにおいて、配列ピッチが不均一であったため、モアレが発生しなかった。試験番号4は、充填層がフィラを含有したため、モアレが発生しなかった。試験番号5は、第1及び第2プリズム層のプリズムが互いに5°で交差したため、モアレが発生しなかった。
【0095】
一方、試験番号7及び8は、左右方向の1/2視野角が100deg未満であった。また、試験番号7及び8のいずれにも、輝度ムラが観察された。
【0096】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態によるレンズシートを備えた表示装置の斜視図である。
【図2】図1中の線分II−IIでの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態によるレンズシートの斜視図である。
【図4】図3中の線分IV−IVでの断面図である。
【図5A】プリズムシートに入射された光線の軌跡を説明するための模式図である。
【図5B】図4中のコリメート層に入射された光線の軌跡を説明するための模式図である。
【図6】図3に示すレンズシートの輝度の視野角依存性の一例を示す図である。
【図7】図4と異なる他のレンズシートの断面図である。
【図8A】図4及び図7と異なる他のレンズシートのコリメート層の上面図である。
【図8B】図8A中の線分VIIIB−VIIIBでの断面図である。
【図9】図4,図7及び図8と異なる他のレンズシートの断面図である。
【図10】図4及び図7〜図9と異なる他のレンズシートの断面図である。
【図11A】図3に示したレンズシートを製造するための第1のプリズム層形成用のロール版の斜視図である。
【図11B】図11Aに示したロール版の一部の例を示す図である。
【図12】本実施例における試験番号1のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図13】本実施例における試験番号2のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図14】本実施例における試験番号3のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図15】本実施例における試験番号4のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図16】本実施例における試験番号5のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図17】本実施例における試験番号7のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図18】本実施例における試験番号8のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図19】従来のプリズムシートの斜視図である。
【図20】図19中の線分XIX−XIXでの断面図である。
【図21】図19に示したプリズムシートの輝度角度分布図である。
【符号の説明】
【0098】
1 液晶表示装置
10 バックライト
11 ハウジング
12 蛍光管
13 光拡散板
16 面光源
17 レンズシート
20 液晶パネル
21 ベースフィルム
22 第1プリズム層
23 第2プリズム層
24 充填層
220,230,240 プリズム
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシート、それを用いたバックライト及び液晶表示装置に関する。さらに詳しくは、正面輝度を向上する機能を有し、バックライトに用いられるレンズシート、それを用いたバックライト及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイに代表される液晶表示装置は、正面輝度の向上を求められる。そのため、ディスプレイに利用されるバックライトには、面光源からの光線を正面に集光して正面輝度を向上するレンズシートが敷設される。このようなレンズシートとして、一般的には、特許第3262230号に開示されているようなプリズムシートが使用される。
【0003】
図19及び図20を参照して、従来のプリズムシート100は、互いに並設された複数の柱状のプリズムPLを表面に備える。各プリズムPLの頂角は、一般的に90°であり、プリズムシート100の屈折率は、1.5〜1.6程度である。面光源からの拡散光R100はプリズムのPLの表面で屈折し、正面に偏向されて出射する。このように、プリズムシート100は、拡散光を正面に集光させることにより、ディスプレイの正面輝度を向上する。
【0004】
上述のとおり、プリズムシート100は正面輝度を向上する。しかしながら、プリズムシート100は、正面斜め方向の輝度も高くしてしまう。図21は、液晶表示装置の表示画面の上下方向に並設された複数の蛍光灯を備えたバックライト上に、1枚のプリズムの並設方法が蛍光灯の並設方向と同じとなるようにプリズムシートを敷設した場合の輝度の視野角依存性を示すグラフである。図中の破線は表示画面の上下方向の輝度の視野角依存性を示し、図中の実線が左右方向の輝度の視野角依存性を示す。なお、図中の横軸は視野角を示し、縦軸はプリズムシートを敷設していない液晶表示装置の正面輝度を基準とした相対輝度を示す。
【0005】
図21を参照して、上下方向、左右方向ともに、視野角0degを中心に所定の視野角(上下方向で約±30deg、左右方向で約±50deg)までは輝度がほぼ一定である。しかしながら、所定の視野角を越えると、上下方向及び左右方向ともに輝度が急速に低下する。さらに、上下方向では、視野角が±50degを越えると、輝度が再び上昇し、いわゆるサイドローブが出現する。また、2枚のプリズムシートを各プリズムシートのプリズムが互いに平行になるように積層した場合、急激な輝度の低下やサイドローブはさらに顕著になる。
【0006】
このような急激な輝度の低下やサイドローブは液晶表示装置の表示画面を見るユーザに違和感を与える。そのため、輝度は、視野角0deg(つまり、表示画面の法線方向)をピークとして視野角の広がりとともに徐々に低下する、自然な配向分布となるのが好ましい。
【0007】
このような不自然な輝度の視野角依存性を解消するために、最近では、2枚の拡散シートが積層されたバックライトを用いた液晶表示装置が提案されている。この場合、輝度の視野角依存性は、視野角0degを輝度のピークとして視野角の広がりとともに徐々に輝度が低下する自然な配向分布となる。また、2枚の拡散シートを用いるため、高い正面輝度が得られる。
【0008】
しかしながら、輝度の視野角依存性の分布幅は狭くなる。液晶表示装置を利用するユーザは、上下斜め方向よりも左右斜め方向から表示画面を見る機会が多い。そのため、左右方向は特に、広視野角である方が好ましい。具体的には、IPS方式の液晶パネルを含む液晶表示装置の左右方向の輝度の視野角依存性において、正面輝度の1/2以上となる輝度の視野角範囲(以下、1/2視野角という)が100deg以上であるのが好ましい。 また、面光源上に2枚の拡散シートを重ねなければならず、製造工程が煩雑になる。
【0009】
さらに、バックライトが、互いに並設された複数の線光源を含む場合、輝度ムラが発生する場合がある。輝度ムラは、表示画面を見るユーザに違和感を与える。そのため、輝度ムラの発生は抑制される方が好ましい。
【特許文献1】特許第3262230号
【特許文献2】特願2006−126839号(同一出願人の未公開先願)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、1枚で高い正面輝度を有し、かつ、広視野角を実現できるレンズシートを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、輝度ムラを抑制できるレンズシートを提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0012】
本発明によるレンズシートは、バックライトに用いられる。レンズシートは、ベースフィルムと、第1及び第2のプリズム層と、充填層とを備える。第1のプリズム層は、ベースフィルムの一方の表面上に並設された複数の第1のプリズムを含む。第1のプリズムの横断形状は、鈍角の頂角を持つ三角形状である。ここで、三角形状の頂上は丸みを帯びていてもよい。第2のプリズム層は、ベースフィルムの他方の表面上に並設された複数の第2のプリズムを含む。第2のプリズムの並設方向は、第1のプリズムの並設方向と略同じである。第2のプリズム層は、ベースフィルムよりも低い屈折率を有する。充填層は、第2のプリズム層の第2のプリズムが並設された表面上に充填され、第2のプリズム層の屈折率よりも高い屈折率を有する。なお、ベースフィルムは、フィルム状やシート状であってもよく、板状であってもよい。
【0013】
本発明によるレンズシートでは、入射された光線を段階的に集光する。充填層の屈折率が第2のプリズム層の屈折率よりも高いため、充填層に入射された拡散光は、第2のプリズム表面で屈折し、正面に集光される。次に、ベースフィルムの屈折率が第2のプリズム層の屈折率よりも高いため、第2のプリズム層からベースフィルムに入射された光線は、ベースフィルムの表面で屈折し、より正面に集光される。さらに、ベースフィルムから出射された光線は第1のプリズム層に入射され、第1のプリズムの表面で屈折し、より正面に集光されて出射される。このように、本発明のレンズシートは、入射された光線をレンズシート内部で段階的に集光させることができる。そのため、1枚で高い正面輝度を得ることができる。
【0014】
また、第2のプリズム層の第2のプリズムの表面に充填層が形成されるため、充填層にもプリズムが形成されるが、このプリズムによるサイドローブの発生は抑制される。第2のプリズム層の屈折率は充填層よりも小さいものの、空気の屈折率よりも大きい。そのため、充填層上のプリズム表面では、従来のプリズムシートよりも臨界角が大きくなる。したがって、充填樹脂層上のプリズムの側面で光線が全反射される割合が減少し、サイドローブの発生が抑制される。
【0015】
さらに、本発明のレンズシートは、第1及び第2のプリズムの並設方向が互いに略同じである。そのため、第1及び第2のプリズムの長手方向における輝度の視野角依存性は、幅の広い分布を示し、広視野角となる。また、輝度ムラの発生を抑制できる。
【0016】
ここで、第1及び第2のプリズムの並設方向は厳密に同じである必要はなく、ほぼ同じであればよい。具体的には、本発明の効果を奏する程度に同じであればよい。
【0017】
好ましくは、充填層は、各々が、隣り合う第2のプリズムの間に充填される複数の第3のプリズムを含み、第3のプリズムの稜線は、第3のプリズムの幅方向に蛇行している。
【0018】
この場合、第1及び第2のプリズムの配列に起因したモアレの発生を抑制できる。
【0019】
好ましくは、第1及び/又は第2のプリズムのピッチは、不均一である。
【0020】
第1及び/又は第2のプリズムのピッチが一定である場合、これらのプリズムのピッチが一定周期で同期することによりモアレが発生する。第1及び/又は第2のプリズムのピッチが不均一であれば、これらのプリズムが一定周期で同期しにくくなるため、モアレの発生を抑制できる。
【0021】
好ましくは、充填層は、樹脂と、複数の粒子とを含む。複数の粒子は、樹脂内に分散され、樹脂と異なる屈折率を有する。
【0022】
この場合、充填層に入射した光は充填層内で拡散して、第2のプリズム層に入射する。そのため、モアレの発生を抑制できる。
【0023】
本発明によるバックライトは、上述のレンズシートを備える。また、本発明による表示装置は、上記バックライトを備える。本発明による液晶表示装置は、上述のバックライトと、バックライト上に敷設される液晶パネルとを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明を援用する。
[全体構成]
図1及び図2を参照して、液晶表示装置1は、バックライト10と、バックライト10の正面に敷設される液晶パネル20とを備える。バックライト10は、拡散光を出射する面光源16と、面光源16上に敷設されたレンズシート17とを備える。
[面光源]
面光源16は、ハウジング11と、線光源である複数の蛍光管12と、光拡散板13とを備える。ハウジング11は、正面に開口部110を有する筐体であり、内部に蛍光管12を収納する。ハウジング11の内面は、反射フィルム111で覆われている。反射フィルム111は、蛍光管12から出射された光を乱反射させ、開口部110に導く。反射フィルム111は、たとえば東レ製ルミラー(登録商標)E60LやE60Vであり、拡散反射率が95%以上であるものが好ましい。
【0025】
複数の蛍光管12は、ハウジング11の背面手前に上下方向(図1中y方向)に並設される。蛍光管12は左右方向(図1中x方向)に伸びた線光源であり、たとえば冷陰極管やEEFL(External Electrode Fluorescent Lamp)である。なお、蛍光管12とともに、LED(Light Emitting Device)等の複数の点光源がハウジング11内に収納されてもよい。また、収納された複数のLEDが線状に配列されることにより、擬似的な線光源が形成されてもよい。
【0026】
光拡散板13は、開口部110に嵌め込まれ、ハウジング11の背面と並行して配設される。光拡散板13を開口部110に嵌め込むことによりハウジング11の内部は密閉される。そのため、蛍光管12からの光が光拡散板13以外の箇所からハウジング11外へ漏れるのを防止でき、光の利用効率が向上される。
【0027】
光拡散板13は、蛍光管12からの光及び反射フィルム111で反射された光を拡散して正面に出射する。光拡散板13は、透明な基材と、基材内に分散された複数の粒子とで構成される。基材内に分散される粒子は、可視光領域の波長の光に対する屈折率が基材と異なるため、光拡散板13に入射した光は拡散透過される。光拡散板13の基材は、たとえば、ガラスや、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン酸系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の樹脂である。光拡散板13はまた、レンズシート17の支持体として機能する。
[レンズシート]
図3及び図4を参照して、レンズシート17は、ベースフィルム21と、ベースフィルム21の一方の表面211上に形成された第1プリズム層22と、ベースフィルム21の他方の表面212上に形成されたコリメート層25とを備える。これらは一体的に形成されている。
【0028】
ベースフィルム21は、可視光領域の波長に対して透明である。ベースフィルム21は、たとえば、ガラスや、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン酸系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂等の樹脂で構成される。ベースフィルム21の表面211及び212はともに平坦である。また、ベースフィルム21は、フィルム状またはシート状であってもよく、板状であってもよい。
【0029】
第1プリズム層22は、表面211上に形成される。第1プリズム層22は、互いに並設された複数のプリズム220を備える。プリズム220は、柱状であり、横断形状は鈍角の頂角を有する三角形状である。三角形状の頂上は丸みを帯びていても良い。プリズム220は、ハウジング11内の複数の蛍光管12の並設方向と同じく、液晶表示装置1の画面の上下方向(図1中のy方向)に並設される。
【0030】
コリメート層25は、充填層24と、第2プリズム層23とで構成される。第2プリズム層23は、ベースフィルム21の表面212上に形成され、互いに並設された複数のプリズム230を備える。
【0031】
充填層24は、第2プリズム層23のプリズム230が並設された表面上に充填される。充填層24のうち、複数のプリズム230間に充填された部分は、プリズム240を構成する。プリズム230が互いに並設されているため、複数のプリズム240も互いに並設されている。プリズム240が並設された表面と反対側の表面243は平坦である。表面243は、面光源16と対向する。
【0032】
プリズム230及び240は、液晶表示装置1の画面の上下方向(図1中のy方向)に並設される。つまり、プリズム220の並設方向はプリズム230及び240の並設方向と同じである。そのため、面光源から出射される光のうち、上下方向に出射される光が集光され、正面輝度が向上する。一方、左右方向に出射される光は上下方向に出射される光よりも集光されないため、左右の視野角は広くなる。さらに、輝度ムラの発生を抑制できる。
【0033】
第1プリズム層22、第2プリズム層23、及び充填層24は、樹脂で構成される。より具体的には、第1プリズム層22及び第2プリズム層23は、電離放射線硬化樹脂で構成される。電離放射線硬化樹脂とは、紫外線や電子線等の電離放射線により硬化する樹脂であり、たとえば、ポリエステル系アクリレート樹脂、ウレタン系アクリレート樹脂、ポリエーテル系アクリレート樹脂、エポキシ系アクリレート樹脂、ポリエステル系メタクリレート樹脂、ウレタン系メタクリレート樹脂、ポリエーテル系メタクリレート樹脂、エポキシ系メタクリレート樹脂である。充填層24は、電離放射線硬化樹脂で構成されてもよいし、ポリカーボネ−ト、ポリスチレン等の他の樹脂で構成されてもよい。
[レンズシート内の各層の屈折率]
プリズム層23の屈折率n23は、充填層24の屈折率n24と以下の式(1)の関係を有し、ベースフィルム21の屈折率n21と以下の式(2)の関係を有する。
【0034】
n23<n24 (1)
n23<n21 (2)
要するに、屈折率n23は屈折率n24及び屈折率n21よりも小さい。なお、第2プリズム層23は上述のとおり樹脂で構成されるため、その屈折率n23は空気の屈折率na=1.0よりも大きい。
【0035】
充填層24の屈折率n24は、第2プリズム層23の屈折率n23よりも大きいため、コリメート層25は、充填層24に入射される光線を正面にコリメートしてベースフィルム21に出射する。屈折率n24を大きくすれば、充填層24の下面243での光線の屈折角が大きくなる。下面243でコリメートされた光線がプリズム240の表面に達してさらに正面にコリメートされる。そのため、屈折率n24が大きい方が、正面輝度がより向上する。充填層24の好ましい屈折率n24は、1.5<n24≦1.8である。ただし、屈折率n24が1.5以下であっても、屈折率n23よりも大きければ、本発明の効果をある程度奏することができる。
【0036】
第2プリズム層23の屈折率は、充填層24の屈折率よりも小さいが、空気の屈折率na=1.0よりも大きい。そのため、コリメート層25内のプリズム240の表面に入射された光線の臨界角が大きくなる。臨界角が大きくなれば、充填層24に入射された光線が全反射する割合が減少する。そのため、プリズム240の頂角が90°以下であっても、n23とn24との相対屈折率が小さいとサイドローブ光の出射を抑制できる。第2プリズム層23の好ましい屈折率n23は、1.3≦n23≦1.5である。ただし、屈折率n23が上述の範囲外であっても、屈折率n23が式(1)及び(2)を満たせば、本発明の効果をある程度奏することができる。
【0037】
ベースフィルム21の屈折率n21は、屈折率n23よりも大きい。そのため、コリメート層25で正面に集光された光は、ベースフィルム21の表面212に入射されたとき、さらに正面にコリメートされる。そのため、ベースフィルム21は正面輝度の向上に寄与する。
【0038】
以上の構成を有するレンズシート17は、1枚で高い正面輝度を有する。レンズシート17はさらに、サイドローブの発生を抑制し、かつ、左右方向が広視野角となる。また、輝度ムラが抑制される。以下、これらの効果について詳述する。
[サイドローブの抑制]
レンズシート17は、コリメート層25により上下視野角におけるサイドローブの発生を抑制する。
【0039】
コリメート層25がサイドローブを抑制する理由は必ずしも定かではないが、主として以下に示す事項が起因していると推測される。
【0040】
まず、従来のプリズムシートにおけるサイドローブの発生機構について説明する。図5Aにおいて、従来のプリズムシート100上の頂角が90°のプリズムPLに入射される光線の中には、プリズムPLの一方の側面BP1で全反射した後、他方の側面BP2で透過して外部に出射する光線R2がある。この光線R2がサイドローブを形成する。
【0041】
具体的には、面光源16の出射面の法線n0(バックライト正面)から角度θ0の方向に出射された光線R0がプリズムPLの側面BP1に達する。光線R0の入射角θi1が臨界角θc1よりも大きい場合、光線R0は全反射し、光線R1としてプリズムPL内を伝播する。光線R1が側面BP2に達したとき、その入射角θi2が臨界角θc1よりも小さければ、光線R1は、法線n0(正面)に対して広角度をなすサイドローブ光R2として外部に出射される。
【0042】
これに対し、コリメート層25は、サイドローブ光の発生を抑制する。図5Bを参照して、コリメート層25内は式(1)の関係を満たす第2プリズム層23と充填層24とで構成され、複数のプリズム230の間には、プリズム240が充填されている。
【0043】
ここで、充填層24の屈折率n24がプリズムシート100の屈折率n100と同じであると仮定する。この場合、充填層24から第2プリズム層23に光線が入射するときの相対屈折率は、プリズムシート100から空気に光線が入射するときの相対屈折率よりも小さくなる。なぜなら、樹脂で構成されるプリズム層23の屈折率n23は、空気の屈折率(=1.0)よりも大きいためである。
【0044】
相対屈折率が小さくなるため、コリメート層25内でのプリズム240の表面241及び242における臨界角θc0は、プリズムシート100のプリズムPLの表面BP1及びBP2における臨界角θc1よりも大きくなる。その結果、プリズム240の表面では、全反射される光線R0の割合が減少し、サイドローブ光R2の出射を抑制できると考えられる。
【0045】
なお、第1プリズム層22のプリズム220の頂角は鈍角である。そのため、頂角が90°以下のプリズムよりもサイドローブの発生を抑制できる。頂角が大きいほど、プリズム表面241、242に入射された光のうち、全反射する光の割合が大きくなるからである。ただし、頂角が大きすぎれば、正面輝度が低下する。したがって、プリズム220の好ましい頂角は90°よりも大きく130°以下である。さらに好ましくは、100°以上120°以下である。
以上の推定される理由により、レンズシート17は、高い正面輝度を維持しつつ、上下視野角におけるサイドローブの発生を抑制する。その結果、視野角0degをピークに視野角の広がりとともに輝度が徐々に低下する自然な配向分布を示す輝度の視野角依存性が得られる。
[広視野角の実現]
レンズシート17のプリズム220、230及び240は、いずれも蛍光管12の並設方向と同じ方向に並設される。そのため、上下方向(図中y方向)に比べて、左右方向(図中x方向)の光は集光されにくい。その結果、左右方向の輝度角度特性において、広視野角を実現できる。
【0046】
図6に、レンズシート17の輝度角度依存性の一例を示す。図6の横軸は視野角である。視野角は表示画面の法線方向(正面)を0deg軸とし、0deg軸から上下方向への傾き角を上下視野角、0deg軸から左右方向への傾き角を左右視野角とする。左右視野角のうち、法線から右方向への傾き角(視野角)をプラス(+)で示し、法線から左方向への傾き角(視野角)をマイナス(−)で示す。同様に、上下視野角のうち、法線から上方向への傾き角(視野角)をプラス(+)で示し、法線から下方向への傾き角(視野角)をマイナス(−)で示す。図6の縦軸は、面光源の正面輝度を基準(1.0)に対する各視野角での輝度の比である相対輝度(a.u.)を示す。図6中の実線が左右方向の輝度の視野角依存性を示し、破線が上下方向の輝度の視野角依存性を示す。
【0047】
図6を参照して、レンズシート17の輝度角度依存性は、上下方向及び左右方向ともに視野角0degをピークとし、視野角の広がりとともに輝度が徐々に低下する自然な配向分布を示す。
【0048】
さらに、左右方向の輝度角度依存性は、上下方向よりも広がりを有する。より具体的には、ISP方式の液晶パネルを含む液晶表示装置に用いた場合、正面輝度の1/2以上の輝度となる視野角範囲が100deg(−50deg〜+50deg)以上となる。液晶表示装置のユーザは、上下斜め方向から表示画面を見る機会よりも、左右斜め方向から表示画面を見る機会の方が多い。本実施の形態では、左右方向の輝度角度依存性が広視野角である。そのため、ユーザは斜め方向から表示画面を見ても、輝度の極端な変動を感じにくく、違和感なく表示画面を見ることができる。
[正面輝度の向上]
レンズシート17では、下面から入射された光を、コリメート層25、ベースフィルム21、及び第1プリズム層22の各々で正面に集光する。そのため、1枚で高い正面輝度が得られる。
【0049】
コリメート層25内の充填層24の屈折率n24は、第2プリズム層23の屈折率n23よりも大きい。そのため、コリメート層25は、面光源からの拡散光を正面に集光してベースフィルム21に出射する。
【0050】
ベースフィルム21の屈折率n21は第2プリズム層23の屈折率n23よりも大きい。そのため、コリメート層25からベースフィルム21に入射された光線は、ベースフィルム21の下面で屈折し、さらに正面に集光されて第1プリズム層22に出射される。
【0051】
第1プリズム層22は、プリズム220により、入射された光線をさらに正面に集光し、外部に出射する。
【0052】
以上のとおり、レンズシート17では、コリメート層25、ベースフィルム21及び第1プリズム層22の各々が、入射された光線を正面にコリメートする。そのため、レンズシート17は、1枚で正面輝度をより向上できる。
[輝度ムラの防止]
上述の通り、複数の蛍光管12が上下方向に並設される場合、上下方向で輝度ムラが発生しやすい。具体的には、蛍光管12直上部分で輝度が最も高く、隣り合う蛍光管12の間の中間部分で輝度が最も低くなりやすい。
【0053】
しかしながら、本実施の形態によるレンズシート17では、プリズム230及びプリズム240の並設方向は、面光源16内の複数の蛍光管12の並設方向と同じであり、かつ、プリズム220の並設方向も、蛍光管12の並設方向と同じである。そのため、レンズシート17は、上下方向(図1中のy方向)の光をより集光して正面に出射する。その結果、輝度ムラの発生を抑制できる。
[モアレの防止]
プリズム220、230、プリズム240が互いに同じ方向に配列される場合、これらのレンズの配列ピッチが一定であれば、モアレが発生しやすくなる。
【0054】
そこで、好ましくは、プリズム220、230及び240のうち、少なくとも1種のプリズムの配列ピッチを不均一にする。たとえば、図7に示すように、隣り合うプリズム230の稜線間距離PnとPn+1(n=1〜6)とが互いに異なるように、同一の頂角を有する複数のプリズム230を配列する。モアレは、プリズム220、230及び240の配列ピッチが一定である場合に、これらのプリズムのピッチが一定周期で同期することにより発生する。プリズム220、230及び240のうち少なくとも1種のプリズムの配列ピッチが不均一であれば、これらのプリズムのピッチが同期しにくくなる。そのため、モアレの発生を抑制できる。
【0055】
また、図8A及び図8Bに示すように、コリメート層25を上方から見た場合、プリズム240の稜線が直線ではなく、プリズム240の幅方向に蛇行していてもよい。この場合も、プリズム220、230及び240のピッチが一定周期で同期しにくくなるため、モアレの発生を抑制できる。なお、図8A及び図8Bにおいて、プリズム240の高さが軸方向で変化してもよい。
【0056】
図9に示すように、プリズム230のピッチは、プリズム220のピッチよりも小さい方が好ましい。プリズム230は、低屈折率の樹脂で構成されるが、低屈折率の樹脂は製造コストが高いため、第2プリズム層23はできるだけ少量の樹脂により形成されるのが好ましい。第2プリズム層23内のプリズム230のピッチをプリズム220のピッチよりも小さくすれば、プリズム220とプリズム230のピッチが同期する周期が長くなるため、モアレの発生をある程度抑制できる。
【0057】
さらに、レンズシート17の最下層である充填層24内に、充填層24を構成する樹脂の屈折率と異なる屈折率を有する粒子を含有してもよい。図10を参照して、充填層24は、透明な樹脂244と、樹脂内に分散された複数の粒子(フィラ)245とで構成される。フィラ245は、樹脂244と異なる屈折率を有する。
【0058】
充填層24の内部に入射された光は、フィラ245によりある程度拡散され、プリズム層23に出射される。そのため、輝度ムラ及びモアレの発生を抑制できる。
【0059】
フィラ245は、有機物で構成されてもよいし、無機物で構成されてもよい。フィラ245は、たとえば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、シリコーン系微粒子、アクリル系微粒子、スチレン系微粒子、MS系微粒子、ガラス系微粒子などである。これらは、単独で使用されてもよいし、併用されていてもよい。フィラ245の粒径は特に制限されないが、過剰に大きいと、充填層24の形成が困難になる。また、過剰に小さいと拡散効果が少ない。好ましいフィラ245の粒径は、0.5μm〜10μmである。また、フィラ245を過剰に含有すれば、レンズシート17の正面輝度が低下する。そのため、好ましいフィラ245の含有量は、樹脂100重量部に対して0.1〜30重量部である。
[製造方法]
レンズシート17の製造方法の一例として、ロール版を用いたロールトゥロール方式による製造方法について説明する。
【0060】
はじめに、ベースフィルム21の表面212にコリメート層25を形成する。表面にフィルム状のベースフィルム21を巻いた円筒状の第1ロールと、図11A及び図11Bに示すように、プリズム230の転写用溝52を表面に有する第2プリズム層形成用のロール版50(以下、単にロール版50という)とを準備する。転写用溝52の横断面形状は、プリズム230の横断形状と同じであり、転写用溝52の縁部(フランジ部)に相当する凸条53の横断形状は、プリズム240の横断形状と同じである。転写用溝52はロール軸方向に並設される。なお、図8Aに示すように、プリズム240の稜線が蛇行する場合、たとえば、図11Cで示すように、転写用溝52のピッチP0は図11Bと同じであっても、転写用溝52の深さが異なる部分が設けられる。つまり、転写用溝52の谷部の角度(頂角)は一定とし、その深さが転写用溝52の長手方向で変化する。この場合、プリズム240の稜線は、転写用溝52の凸条53の頂上に相当するため、形成されたプリズム240の稜線はプリズム240の幅方向に蛇行した波状の曲線となる。
【0061】
第1ロールの軸方向がロール版50の軸方向と平行になるように、第1ロール及びロール版50を配置する。配置後、ベースフィルム21の屈折率n21よりも低い屈折率n23を有する電離放射線硬化樹脂を、ロール版50の表面に充填する。第1ロール及びロール版50を回転させながら、充填された電離放射線硬化樹脂を、第1ロールから送り出されたベースフィルム21上に転写する。このとき、ベースフィルム21を挟んでロール版50と対向して配置されるバックアップロールと、ロール版50とで、ベースフィルム21を挟みながら転写する。転写された電離放射線硬化樹脂に電離放射線を照射して電離放射線硬化樹脂を硬化し、第2プリズム層23を形成する。
【0062】
第2プリズム層23を形成後、第2プリズム層23上に充填層24を形成する。まず、表面が平滑なロール版を準備する。次に、屈折率n23よりも高い屈折率n24を有する電離放射線硬化樹脂をロール版に塗布する。表面に電離放射線硬化樹脂が塗布されたロール版をプリズム層23のプリズム230が形成された表面に押し当てて、電離放射線硬化樹脂を転写する。そして、電離放射線を照射することにより、転写された電離放射線硬化樹脂を硬化させ、充填層24を形成する。
【0063】
充填層24は、上述の方法に代えて、次の方法で製造してもよい。まず、第2プリズム層23の屈折率n23よりも高い屈折率n24を有する樹脂を溶剤に溶解した塗料を準備する。グラビアコータ等を用いて、準備した塗料をプリズム層23上に均一に塗布する。塗布された塗料を乾燥し、充填層24を形成する。
【0064】
以上の工程により、ベースフィルム21の表面212にコリメート層25が形成される。コリメート層25が形成されたベースフィルム21の軸方向に並設されている。コリメート層25が形成されたベースフィルム21は、第2ロールに巻き取られる。
【0065】
次に、ベースフィルム21の表面211に第1プリズム層22を形成する。軸方向にプリズム220の転写用溝が並設された表面を有する第1プリズム層形成用のロール版を準備する。ロール版の転写用溝の谷部の角度(プリズム220の頂角に相当)は鈍角である。
【0066】
ロール版の軸方向が第2ロールの軸方向と平行となるように、ロール版を配置する。続いて、ロール版の転写用溝に電離放射線硬化樹脂を充填する。第2ロール及びロール版を回転させながら、充填された電離放射線硬化樹脂を、第2ロールから送り出されたベースフィルム21の表面211に転写する。このとき、バックアップロールによりフィルムを挟みながら転写する。転写された電離放射線硬化樹脂に電離放射線を照射して硬化させ、第1プリズム層22を形成する。以上の工程によりレンズシート17が形成される。
【0067】
上述の製造方法では、はじめにコリメート層25を形成し、次に第1プリズム層22を形成したが、はじめに第1プリズム層22を形成し、次にコリメート層25を形成してもよい。
【0068】
以上、製造方法の一例として、ロール版を用いたロールトゥロール方式による製造方法を説明したが、他の製造方法によってもレンズシート17を製造できる。ロールトゥロール方式ではなく、板状の版を用いてコリメート層25及び第1プリズム層22を形成してもよい。また、第1プリズム層22は、押し出し法や、熱プレス法、射出形成法により形成してもよい。
【0069】
以上、本実施の形態によるレンズシート17は、第2プリズム層23の屈折率n23、充填層24の屈折率n24、及びベースフィルム21の屈折率n21を式(1)及び(2)を満たす関係とすることにより、正面輝度を向上できる。また、コリメート層25により、サイドローブの発生を抑制し、視野角0degをピークとして、視野角が大きくなるにしたがい輝度が徐々に低下する、自然な配向分布が得られる。
【0070】
さらに、プリズム220、230及び240の並設方向がほぼ同じであるため、左右方向の輝度角度依存性を広視野角にすることができる。具体的には、ISP方式の液晶パネルを含む液晶表示装置に用いた場合の1/2視野角を100deg以上とすることができる。ここで、プリズム220、230及び240の並設方向は全く同じである必要はなく、その交差角が10°以内であれば、上述の広視野角を得ることができる。なお、プリズム220、230及び240の稜線がいずれも直線であり、かつ、同じピッチである場合、交差角が3°以上あれば、モアレの発生を防止できる。
本実施の形態ではバックライト10を直下型としたが、エッジライト型にしてもよい。
【0071】
図3及び4では、複数のプリズム220の各々を互いに接触させたが、隣り合うプリズム220の間に隙間を設けてもよい。同様に、隣り合うプリズム240の間に隙間を設けてもよい。また、プリズム230及び240の横断面形状を三角形としたが、台形でもよい。また、プリズム220、230及び240の頂上が丸みを帯びていてもよい。
【実施例1】
【0072】
表1に示す形状及び屈折率を有する試験番号1〜8のレンズシートを準備した。
【表1】
試験番号1〜6は、図3及び図4に示す形状のレンズシートであった。これらのレンズシートを以下の方法で製造した。
【0073】
複数のプリズム転写用溝が軸方向に配列された表面を有する第2プリズム層形成用ロール版を準備した。ベースフィルムとして、厚さ188μm、屈折率(n21)=1.6のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。ロール版に第2プリズム層用の紫外線硬化樹脂を充填した。そして、ロール版をPETフィルムの表面に押し当てることにより、紫外線硬化樹脂を転写した。紫外線を照射することにより転写された紫外線硬化樹脂を硬化させ、第2プリズム層を形成した。
【0074】
続いて、充填層を作製した。まず、表面が平滑なロール版を準備した。ロール版に充填層用の紫外線硬化樹脂を塗布し、表面に紫外線硬化樹脂が塗布されたロール版を第2プリズム層の表面に押し当てて、紫外線硬化樹脂を転写した。紫外線を照射することにより、転写された紫外線硬化樹脂を硬化させ、充填層を形成した。
【0075】
以上の工程によりベースフィルム上にコリメート層を形成した後、コリメート層が形成された表面と反対側のベースフィルムの表面に、第1プリズム層を形成した。プリズム転写用溝が軸方向に配列された表面を有する第1プリズム層形成用のロール版を準備した。第1プリズム層用の紫外線硬化樹脂をロール版の転写用溝に充填し、PETフィルム表面上に転写した。転写された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し硬化させ、第1プリズム層を形成した。
【0076】
以上の製造方法で製造された試験番号1の第2プリズム層のプリズムの横断形状は二等辺三角形であり、その頂角は90°であった。また、互いに隣り合うプリズムの頂点間距離、すなわち、プリズムの配列ピッチは50μmであった。各プリズムの高さは、長手方向に15μm〜25μmの範囲で周期的に変化した。さらに、同一横断面上での各プリズムの高さは、互いに異なっていた。このため、充填層のプリズムの稜線は、直線ではなく、プリズムの並設方向に蛇行する曲線となった。
【0077】
第1プリズム層の横断形状は二等辺三角形であり、その頂角は110°であった。また、プリズムの配列ピッチは50μmであり、高さは17.5μmで一定であった。第1プリズム層のプリズムの並設方向は、第2プリズム層のプリズムの並設方向と同じであった。
【0078】
形成された第2プリズム層の屈折率は1.49であり、充填層の屈折率(=1.56)及び第1プリズム層の屈折率(=1.56)よりも低かった。
【0079】
試験番号2の第2プリズム層のプリズムは、試験番号1と異なり、高さが11.5μmで一定であった。また、配列ピッチは23μmであった。このため、第2プリズム層のプリズムの配列ピッチ(=23μm)と第1プリズム層のプリズムの配列ピッチ(=50μm)とは、互いに素の関係となった。その他の構成は、試験番号1と同じであった。
【0080】
試験番号3の第2プリズム層には、6.5μmの高さと13μmのプリズム底辺とを有する複数のプリズムと、11.5μmの高さと23μmのプリズム底辺とを有する複数のプリズムと、16.5μmの高さと33μmのプリズム底辺とを有する複数のプリズムとが形成された。これらのプリズムは互いに並設されているが、その配列順は不規則であった。なお、いずれのプリズムも頂角は90°であった。その他の構成は試験番号1と同じであった。
【0081】
試験番号4の充填層は、充填層用の紫外線硬化樹脂100重量部に対してフィラを1重量部含有した。フィラは酸化チタンからなり、平均粒子径は0.5μmであった。また、第2プリズム層のプリズムの頂角は80°であり、配列ピッチは50μmであり、プリズム高さは29.8μmであった。その他の構成は試験番号1と同じであった。
【0082】
試験番号5のレンズシートでは、第1プリズム層のプリズムと第2プリズム層のプチズムとが交差した。具体的には、第1プリズム層のプリズムの並設方向と第2プリズム層のプリズムの並設方向とがなす角度が5°であった。また、第2プリズム層のプリズムの高さは25μmであった。その他の構成は試験番号1と同じであった。
【0083】
試験番号6のレンズシートは、試験番号5と比較して、第1及び第2のプリズム層のプリズムの並設方向が互いに同じであった。その他の構成は試験番号5と同じであった。
【0084】
試験番号7では、上述の試験番号1〜6と異なり、本実施の形態によるレンズシートの代わりに、80%のヘイズを有する2枚の拡散シートを積層した。また、試験番号8では、プリズムシート上に拡散シートを敷設した。プリズムシートの屈折率は1.56であり、プリズムの頂角は110°、配列ピッチは50μm、各プリズムの高さは17.5μmであった。拡散シートのヘイズは80%であった。要するに、試験番号7及び8は、2枚のレンズシートを組合せたものとした。
【0085】
[輝度の視野角依存性及び1/2視野角の調査]
試験番号1〜8のレンズシートを用いて輝度の視野角依存性を調査した。
【0086】
内部に16本の外部電極陰極管を収納した筐体と、表1に示すとおり65%の全光線透過率とを有する拡散板とを備える面光源を複数準備した。
【0087】
各面光源上に、試験番号1〜8のレンズシートをそれぞれ敷設して、試験番号1〜8のバックライトを製造した。試験番号1〜8の各バックライト上に、IPS方式の液晶パネルを敷設して、試験番号1〜8の液晶表示装置を製造した。
【0088】
製造された液晶表示装置を白色表示した場合の、液晶表示装置の上下方向及び左右方向の視野角依存性を調査した。視野角は、表示画面の法線方向(正面)を0deg軸とし、0deg軸から上下方向への傾き角を上下視野角、左右方向への傾き角を左右視野角とした。左右方向のうち、法線から右方向への傾き角をプラス(+)で示し、左方向への傾き角をマイナス(−)とした。同様に、上下視野角のうち、法線から上方向への傾き角をプラスで示し、下方向への傾き角をマイナスで示した。
【0089】
さらに、各試験番号について、上下方向及び左右方向の1/2視野角を以下の方法で求めた。まず、図6及び図12〜図18に示すように、各試験番号1〜8の輝度の視野角依存性のグラフを作成した。表1に示すとおり、図12は試験番号1の輝度の視野角依存性のグラフであり、図13〜図16は、それぞれ試験番号2〜5の視野角依存性のグラフである。図6は試験番号6の視野角依存性のグラフであり、図17及び18はそれぞれ試験番号7及び8の視野角依存性のグラフである。グラフの横軸は視野角を示す。また、縦軸は、試験番号7で得られた正面輝度に対する各視野角での輝度の比(以下、相対輝度という)である。図中の実線は左右方向の輝度の視野角依存性を示し、破線は上下方向の輝度の視野角依存性を示す。
【0090】
図6及び図12〜図18に示す上下及び左右方向の輝度の視野角依存性のうち、輝度が正面輝度の1/2以上となる視野角範囲を求め、求めた視野角範囲を1/2上下視野角、1/2左右視野角とした。
【0091】
[輝度ムラ及びモアレの調査]
輝度ムラ及びモアレは、以下の方法で評価した。上述の試験番号1〜8の液晶表示装置を用いて、表示画面上に輝度ムラ及びモアレが発生しているか否かを、目視により評価した。
【0092】
[調査結果]
調査結果を表1に示す。表1中の「輝度ムラ」及び「モアレ」項目中の「無し」は、輝度ムラ、モアレが目視では確認できなかったことを示し、「有り」は目視で確認されたことを示す。
【0093】
表1を参照して、試験番号1〜6の左右方向の1/2視野角はいずれも100deg以上であった。また、試験番号1〜6のいずれにも輝度ムラは発生しなかった。また、図6、図12〜図16を参照して、サイドローブの発生も抑えられた。また、正面輝度は、試験番号7(2枚の拡散シートを積層)とほぼ同じであった。
【0094】
さらに、試験番号1は、充填層のプリズムの稜線が蛇行していたため、モアレが発生しなかった。また、試験番号2は、第2プリズム層のプリズムのピッチと第1プリズム層のプリズムのピッチとが異なっており、互いに素の関係であっため、モアレが発生しなかった。試験番号3は、第2プリズム層のプリズムにおいて、配列ピッチが不均一であったため、モアレが発生しなかった。試験番号4は、充填層がフィラを含有したため、モアレが発生しなかった。試験番号5は、第1及び第2プリズム層のプリズムが互いに5°で交差したため、モアレが発生しなかった。
【0095】
一方、試験番号7及び8は、左右方向の1/2視野角が100deg未満であった。また、試験番号7及び8のいずれにも、輝度ムラが観察された。
【0096】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施の形態によるレンズシートを備えた表示装置の斜視図である。
【図2】図1中の線分II−IIでの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態によるレンズシートの斜視図である。
【図4】図3中の線分IV−IVでの断面図である。
【図5A】プリズムシートに入射された光線の軌跡を説明するための模式図である。
【図5B】図4中のコリメート層に入射された光線の軌跡を説明するための模式図である。
【図6】図3に示すレンズシートの輝度の視野角依存性の一例を示す図である。
【図7】図4と異なる他のレンズシートの断面図である。
【図8A】図4及び図7と異なる他のレンズシートのコリメート層の上面図である。
【図8B】図8A中の線分VIIIB−VIIIBでの断面図である。
【図9】図4,図7及び図8と異なる他のレンズシートの断面図である。
【図10】図4及び図7〜図9と異なる他のレンズシートの断面図である。
【図11A】図3に示したレンズシートを製造するための第1のプリズム層形成用のロール版の斜視図である。
【図11B】図11Aに示したロール版の一部の例を示す図である。
【図12】本実施例における試験番号1のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図13】本実施例における試験番号2のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図14】本実施例における試験番号3のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図15】本実施例における試験番号4のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図16】本実施例における試験番号5のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図17】本実施例における試験番号7のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図18】本実施例における試験番号8のレンズシートの輝度の視野角依存性を示す図である。
【図19】従来のプリズムシートの斜視図である。
【図20】図19中の線分XIX−XIXでの断面図である。
【図21】図19に示したプリズムシートの輝度角度分布図である。
【符号の説明】
【0098】
1 液晶表示装置
10 バックライト
11 ハウジング
12 蛍光管
13 光拡散板
16 面光源
17 レンズシート
20 液晶パネル
21 ベースフィルム
22 第1プリズム層
23 第2プリズム層
24 充填層
220,230,240 プリズム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトに用いられるレンズシートであって、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一方の表面上に並設され、各々の横断形状が鈍角の頂角を有する三角形状である複数の第1のプリズムを含む第1のプリズム層と、
前記ベースフィルムの他方の表面上に、前記複数の第1のプリズムの並設方向と略同じ方向に並設された複数の第2のプリズムを含み、前記ベースフィルムよりも低い屈折率を有する第2のプリズム層と、
前記第2のプリズム層の第2のプリズムが並設された表面上に充填され、前記第2のプリズム層の屈折率よりも高い屈折率を有する充填層とを備えることを特徴とするレンズシート。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズシートであって、
前記充填層は、各々が、隣り合う前記第2のプリズムの間に充填される複数の第3のプリズムを含み、
前記第3のプリズムの稜線は、前記第3のプリズムの幅方向に蛇行していることを特徴とするレンズシート。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズシートであって、
前記複数の第1及び/又は第2のプリズムのピッチは、不均一であることを特徴とするレンズシート。
【請求項4】
請求項1に記載のレンズシートであって、
前記充填層は、
樹脂と、
前記樹脂内に分散され、前記樹脂と異なる屈折率を有する複数の粒子とを含むことを特徴とするレンズシート。
【請求項5】
正面に開口部を有する筐体と、
前記筐体内に格納され、互いに並設される複数の線光源と、
前記開口部上に敷設される拡散板と、
前記拡散板上に敷設されるレンズシートとを備え、
前記レンズシートは、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一方の表面上に並設され、各々の横断形状が鈍角の頂角を有する三角形状である複数の第1のプリズムを含む第1のプリズム層と、
前記ベースフィルムの他方の表面上に、前記複数の第1のプリズムの並設方向と略同じ方向に並設された複数の第2のプリズムを含み、前記ベースフィルムよりも低い屈折率を有する第2のプリズム層と、
前記第2のプリズム層の前記第2のプリズムが並設された表面上に充填され、前記第2のプリズム層の屈折率よりも高い屈折率を有する充填層とを備えることを特徴とするバックライト。
【請求項6】
請求項5に記載のバックライトと、
前記バックライト上に敷設される液晶パネルとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項1】
バックライトに用いられるレンズシートであって、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一方の表面上に並設され、各々の横断形状が鈍角の頂角を有する三角形状である複数の第1のプリズムを含む第1のプリズム層と、
前記ベースフィルムの他方の表面上に、前記複数の第1のプリズムの並設方向と略同じ方向に並設された複数の第2のプリズムを含み、前記ベースフィルムよりも低い屈折率を有する第2のプリズム層と、
前記第2のプリズム層の第2のプリズムが並設された表面上に充填され、前記第2のプリズム層の屈折率よりも高い屈折率を有する充填層とを備えることを特徴とするレンズシート。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズシートであって、
前記充填層は、各々が、隣り合う前記第2のプリズムの間に充填される複数の第3のプリズムを含み、
前記第3のプリズムの稜線は、前記第3のプリズムの幅方向に蛇行していることを特徴とするレンズシート。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズシートであって、
前記複数の第1及び/又は第2のプリズムのピッチは、不均一であることを特徴とするレンズシート。
【請求項4】
請求項1に記載のレンズシートであって、
前記充填層は、
樹脂と、
前記樹脂内に分散され、前記樹脂と異なる屈折率を有する複数の粒子とを含むことを特徴とするレンズシート。
【請求項5】
正面に開口部を有する筐体と、
前記筐体内に格納され、互いに並設される複数の線光源と、
前記開口部上に敷設される拡散板と、
前記拡散板上に敷設されるレンズシートとを備え、
前記レンズシートは、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一方の表面上に並設され、各々の横断形状が鈍角の頂角を有する三角形状である複数の第1のプリズムを含む第1のプリズム層と、
前記ベースフィルムの他方の表面上に、前記複数の第1のプリズムの並設方向と略同じ方向に並設された複数の第2のプリズムを含み、前記ベースフィルムよりも低い屈折率を有する第2のプリズム層と、
前記第2のプリズム層の前記第2のプリズムが並設された表面上に充填され、前記第2のプリズム層の屈折率よりも高い屈折率を有する充填層とを備えることを特徴とするバックライト。
【請求項6】
請求項5に記載のバックライトと、
前記バックライト上に敷設される液晶パネルとを備えることを特徴とする液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2009−103762(P2009−103762A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273046(P2007−273046)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】
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