説明

バックルアッセンブリ及び操作部材

【課題】締結を解除する際の操作性を向上することができるバックルアッセンブリを提供する。
【解決手段】差込部と該差込部に設けられた係止部とを有する雄部材12と、差込部を収容可能な筒部と、筒部に挿入された差込部の一部が突出する窓部と、係止部が係止されるスリーブと、窓部から突出した差込部の一部を筒部の内側へ押圧可能に設けられたアームとを有する雌部材11とを備え、窓部から突出した差込部の一部とアームとの当接により係止部及びスリーブとを非係止状態として雄部材12及び雌部材11との締結を解除するバックルアッセンブリにおいて、押圧操作される操作面と、アームと接触する接触部とを有し、接触部を作用点として雌部材11に対して傾動可能に変位する操作部材13を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バックルアッセンブリ及び操作部材に関する。
【背景技術】
【0002】
鞄やバックパック等の装身具や衣類等の中には、帯状体が挿通されたバックルが用いられているものがある。このバックルの一つとして、特許文献1には、図14に示すように、筒状部103を有し一方のベルトBが取り付けられた雌部材101と、差込みアーム104を有し他方のベルトBが取り付けられた雄部材102とを備えたバックルが記載されている。雌部材101は、係合突部106を有する1対の操作アーム105と、操作アーム105の係合突部106に対向する窓部107とを有している。雄部材102は、差込みアーム104の先端に係合部108を有する。
【0003】
雌部材101に雄部材102の差込みアーム104を挿入する際、差込みアーム104は筒状部103の内側面を摺動し、内側へ弾性変形する。そして差込みアーム104の先端の係合部108が、雌部材101の窓部107に至ると、各差込みアーム104は、撓みにより保持されていた弾発力により筒状部103内で外向きに拡開して、係合部108が窓部107に挿入された係合状態となる。
【0004】
バックルの締結を解除する際は、操作アーム105の先端を親指と人差し指とで互いに内方に押圧する。これにより、各操作アーム105が内側に撓み、それぞれの係合突部106が、雄部材102の係合部108を内側に押圧して、差込みアーム104を内側に撓ませる。これにより、雄部材102は抜き出し方向へ付勢されて雌部材101より押し出され、締結が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−187309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記したバックルの場合、雌部材101と雄部材102との締結を解除するには、係合突部106の真上をほぼ垂直に押圧しなければならない。例えば、操作アーム105の基端部を指で押圧した場合には、操作アーム105が撓まず、係合突部106を介して、雌部材101の窓部107から突出した係合部108を内側に押し込むことができない。このため、厚い手袋を装着した場合等、指先による細かな操作が難しい状況では、上記バックルの係合突部106を正確に押圧できず、締結解除が困難となる。このため、バックルの締結解除における操作性の向上が要請されていた。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、締結を解除する際の操作性を向上することができるバックルアッセンブリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、差込部と該差込部に設けられた係止部とを有する雄部材と、前記差込部を収容可能な筒部と、前記筒部に挿入された前記差込部の一部が突出する窓部と、前記係止部が係止される被係止部と、前記窓部から突出した前記差込部の一部を前記筒部の内側へ押圧可能に設けられたアームとを有する雌部材とを備え、前記窓部から突出した前記差込部の一部と前記アームとの当接により前記係止部及び前記被係止部とを非係止状態として前記雄部材及び前記雌部材との締結を解除するバックルアッセンブリにおいて、押圧操作される操作面と、前記アームと接触する接触部とを有し、前記接触部を作用点として前記雌部材に対して傾動可能に変位する操作部材を備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、操作部材は、雌部材に対して傾動可能に変位するため、接触部の真上から押圧操作された場合には水平に変位し、操作面の端部が押圧操作された場合には、差込部との接触部を作用点として傾動しつつ変位することができる。そして、この操作部材の変位により、操作部材と接触したアームが、窓部から突出した差込部の一部を筒部の内側へ押圧し、係止部と被係止部とを非係止状態とする。このように操作面のどの位置を押圧操作しても、雄部材及び雌部材の締結を容易に解除することができるので、バックルアッセンブリの締結を解除する際の操作性を向上することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバックルアッセンブリにおいて、前記操作部材の接触部は、前記操作面の裏側に設けられた内側面の中央部に位置することを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、操作部材の接触部は、その内側面の中央部に配置されている。このため、操作面のうち、接触部の真上以外のどの位置が操作されても、接触部を作用点として傾動しつつ変位することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のバックルアッセンブリにおいて、前記操作部材は、前記操作面が、互いに締結された前記雌部材及び前記雄部材の外周面に対して同一平面又は内側に配置されることを要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、雌部材及び雄部材が締結された際に、操作部材は、その操作面が、雌部材及び雄部材の外周面に対して同一面上若しくは内側となるように配置されるので、操作面がバックルアッセンブリの外周面から突出せず、誤って解除操作されるようなことがない。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバックルアッセンブリにおいて、前記操作部材は、前記雌部材に対して遊嵌構造により連結されていることを要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、操作部材及び雌部材は、間隔を持って互いに嵌合される遊嵌構造によって連結されているため、操作部材を雌部材に対して変位可能に固定することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のバックルアッセンブリにおいて、前記操作部材は、傾動可能な各方向に、前記操作部材の傾動角度に応じてスライド量を可変とする前記遊嵌構造をそれぞれ備えていることを要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、操作部材は、傾動可能な各方向に異なるスライド量でスライド可能な遊嵌構造を備えているので、操作部材が傾動した場合には、傾動側でスライド量を大きく、その反対側でスライド量を小さくすることができる。このため、操作部材が傾動した場合でも、操作部材を安定して支持することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバックルアッセンブリにおいて、前記操作部材は、金属材からなることを要旨とする。
請求項6に記載の発明によれば、操作部材は金属材からなるため、例えば樹脂で形成する場合よりも薄く形成することができる。このため、操作面に印加された押圧力を、雌部材の可撓片に伝達しやすくすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバックルアッセンブリにおいて、前記操作部材は、少なくとも前記アーム全体を覆う大きさであることを要旨とする。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、操作部材は、少なくともアーム全体を覆う大きさであるため、押圧操作が容易になる。
請求項8に記載のバックルアッセンブリの操作部材は、請求項1〜7のいずれか1項に記載された操作部材の構成を有することを要旨とする。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、操作部材は、雌部材に傾動可能に設けられるため、従来のバックルアッセンブリに取り付けることで、バックルアッセンブリの操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、この発明によれば、締結解除における操作性を向上することができるバックルアッセンブリを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のバックルアッセンブリを具体化した一実施形態を示す斜視図。
【図2】同バックルアッセンブリの非締結状態を示す平面図。
【図3】同バックルアッセンブリの操作部材を取り外した状態を示す平面図。
【図4】同バックルアッセンブリの雌部材の断面図。
【図5】同雌部材の要部平面図。
【図6】締結状態の同バックルアッセンブリの底面図。
【図7】同バックルアッセンブリの雄部材の平面図。
【図8】同バックルアッセンブリの操作部材の斜視図。
【図9】締結操作中の同バックルアッセンブリの断面図。
【図10】締結状態の同バックルアッセンブリの断面図。
【図11】解除操作中の同バックルアッセンブリの断面図。
【図12】解除操作中の同バックルアッセンブリの断面図であって、(a)は操作面のうち鍔部側が押圧操作された状態の全体を示し、(b)はその要部を示す。
【図13】解除操作中の同バックルアッセンブリの断面図であって、(a)は操作面のうちテープ取付部側が押圧操作された状態の全体を示し、(b)はその要部を示す。
【図14】従来のバックルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のバックルアッセンブリを具体化した一実施形態について、図1〜図13に従って説明する。本実施形態のバックルアッセンブリは、鞄やバックパック等の装身具、衣類といった被取付物に具備され、指で解除操作されるアッセンブリである。
【0025】
図1に示すように、バックルアッセンブリは、雌部材11と、雌部材11に着脱可能な雄部材12と、雌部材11に固定された1対の操作部材13とを備えている。雌部材11及び雄部材12は、樹脂から形成され、操作部材13はステンレスやアルミニウム等の金属材から形成されている。
【0026】
図2に示すように、このバックルアッセンブリは、雌部材11に取り付けられた一方のテープTと、雄部材12に取り付けられた他方のテープTとを、ほぼ平行に接続するストレートタイプのアッセンブリである。各テープTは、少なくともテープTの長手方向の端が上記被取付物に固定されている。各テープTを接続する際には、雄部材12の差込部14を雌部材11に押し込むことで、雄部材12を雌部材11に対して締結する。
【0027】
次に、雌部材11について説明する。図3に示すように、雌部材11は、偏平状であって平面視において略矩形状をなす筒部15を備えている。筒部15の一端には、テープTを挿通するためのテープ取付部16が一体に形成されている。このテープ取付部16には、テープTを挿通するための細長状の各テープ挿通孔18a,18bが貫通形成されている。このうちテープ挿通孔18a内には、テープTを挿入しやすくするための傾斜面18cが形成されている。テープ取付部16は、筒部15の幅よりも大きい幅を有しており、テープ取付部16と筒部15との間には全周に亘って段差16aが設けられている。
【0028】
また、筒部15のうち、テープ取付部16に対して反対側の端部には、筒部15の外周面に沿って鍔部17が突出形成されている。鍔部17と筒部15との間には段差17aが設けられている。
【0029】
鍔部17とテープ取付部16とには、操作部材13を筒部15に変位可能に固定するための遊嵌構造を構成する1対の挿入穴16b,17bが凹状にそれぞれ形成されている。テープ取付部16に形成された各挿入穴16bは、段差16aにおいて開口している。鍔部17に形成された各挿入穴17bは、段差17aにおいて開口している。
【0030】
図4に示すように、筒部15は、雄部材12の差込部14を挿入するためのスロット部20を内側に備えている。スロット部20は、テープ取付部16に対して反対側に開口21を備えている。また、筒部15の各端面15aのうち、略中央には、スロット部20に連通する窓部22がそれぞれ貫通形成されている。この窓部22からは、雄部材12を雌部材11に締結した際に、差込部14の一部が突出する。
【0031】
さらに、筒部15の内側面には、雄部材12の差込部14を案内するためのガイド溝20aが凹状に形成されている。ガイド溝20aは、テープ取付部16から開口21にかけて帯状に延びるように形成され、さらに開口21に向かって三角形状に拡開している。
【0032】
さらに、図3に示すように、筒部15のうち、窓部22が形成された端面15aであって、窓部22と鍔部17との間には、被係止部としてのスリーブ23が張り出すように形成されている。スリーブ23は、その基端が鍔部17に一体に設けられ、先端には、傾斜面23aを備えている。この傾斜面23aの頂部には、雌部材11に挿入された雄部材12の差込部14の一部が係止される。
【0033】
また筒部15とテープ取付部16との間に設けられた段差16aであって、筒部15の両側には、アーム25が片持ち梁状に支持されている。アーム25は、段差16aから図中斜め下方に向かって延出するアーム部26と、アーム部26の先端に設けられた押圧部27とを備えている。アーム部26は、押圧部27に押圧力が加えられると、段差16a側の基端を中心に雌部材11の筒部15に向かって撓むようになっている。また、押圧部27への押圧が解除されると、弾性力により元の位置に復帰する。また、押圧部27は、窓部22に対向するように配置されている。
【0034】
図5に示すように、アーム25の押圧部27は、偏平状をなし、雌部材11の窓部22に挿入可能な大きさに形成されている。押圧部27には、雌部材11に操作部材13が固定された際に、操作部材13の内側面にその一部が接触する当接面27aと、窓部22から突出した雄部材12の差込部14の一部を押圧する押圧面27bとが形成されている。当接面27aは、押圧部27の外周面のうち最も外側に配置されている。また、押圧面27bは、雌部材11に操作部材13を固定しない状態では、筒部15の端面15aに対して傾斜し、スリーブ23に係止された雄部材12の差込部14の一部に略平行となっている。
【0035】
また、雌部材11に操作部材13を固定しない状態では、押圧部27は、その一部が、テープ取付部16のうち最も外側に張り出した下端と鍔部17の外周面とを結ぶ外側線LNよりも突出している。このため、雌部材11に操作部材13を固定すると、アーム25は操作部材13の内側面に押圧されて内側に撓むとともに、弾性力により操作部材13を外側に付勢する。
【0036】
図6に示すように、筒部15の底面には、各操作部材13を雌部材11に固定するための遊嵌構造を構成する突条15sが2対形成されている。各対の突条15sは、筒部15の幅方向に平行に延び、テープ取付部16の近傍と鍔部17の近傍とに間隔を空けてそれぞれ形成されている。
【0037】
次に、雄部材12について説明する。図7に示すように、雄部材12は、テープTを挿通するためのテープ取付部30を備えている。テープ取付部30には、テープTを挿通するための細長状のテープ挿通孔31,32が形成されている。このうちテープ挿通孔32内には、傾斜面32aが形成されている。
【0038】
テープ取付部30からは、雌部材11のスロット部20に挿入される差込部14が延出されている。差込部14は、テープ取付部30に連続して形成された台形状の基部14aと、基部14aの長手方向における中央部から、その長手方向と直交する方向に延びる支持部33とを備えている。支持部33の先端には、該先端から基部14a側に向かって斜めに延びる1対の可撓片34が形成されている。可撓片34の先端には、雌部材11のスリーブ23の傾斜面23aの頂部に係止可能な係止部35が設けられている。係止部35は、先細り形状に形成された、平面視略三角形状の爪部と、爪部の基端側に設けられた段差とを有している。各係止部35の間の距離L1は、差込部14の最大幅であり、この距離L1は、差込部14が挿入される雌部材11のスロット部20の幅よりも大きい。このため、差込部14は、スロット部20に対し、可撓片34を互いに近接する方向に撓ませた状態で挿入されていく。
【0039】
次に、各操作部材13について図8に従って説明する。尚、各操作部材13は同一形状である。操作部材13は、板状の金属材を切削及びプレス加工することにより形成されている。また操作部材13は、雌部材11に固定された際に、アーム25を含む筒部15の端面15a側を覆うことができる大きさに形成されている。
【0040】
操作部材13は、断面略コの字状(又はU字状)に形成され、略長方形状の第1片部36と、第1片部36と略平行に延びる第2片部39と、第1片部36及び第2片部39とを連結する操作部38とを備えている。
【0041】
第1片部36は、操作部材13が雌部材11に対して固定された際に、雌部材11の筒部15の表面に配設される。第1片部36は、筒部15の表面の形状に合わせてプレス加工されており、その長手方向の両端からは、操作部材13を雌部材11に遊嵌するための遊嵌構造を構成する各挿入片36aが突出している。これらの挿入片36aは、雌部材11の挿入穴16b,17bにそれぞれ固定される。また、挿入片36aの幅は、挿入穴16b,17bの幅よりも小さく形成されている。即ち、挿入片36a及び挿入穴16b,17bは、操作部材13を雌部材11に対して変位可能に固定するための遊嵌構造を構成し、挿入片36aは、挿入穴16b,17bに対して間隔(遊び)をもった状態で嵌合される。
【0042】
第2片部39は、操作部材13が雌部材11に対して固定された際に、突条15sが形成された底面に固定される。第2片部39もまた、筒部15の裏面の形状に合わせてプレス加工されており、その各端部には、雌部材11の底面に形成された突条15sを嵌合するための遊嵌構造を構成する1対の嵌合孔39aが貫通形成されている。嵌合孔39aは、細長状に形成され、その長手方向に沿った幅は、突条15sの幅よりも大きく形成されている。即ち、嵌合孔39a及び突条15sは、操作部材13を雌部材11に対して変位可能に固定するための遊嵌構造を構成し、突条15sは、嵌合孔39aに対して間隔(遊び)をもった状態で嵌合される。
【0043】
第2片部39の短手方向の幅は、第1片部36の短手方向の幅よりも大きくなっている。また、操作部材13を雌部材11に対して変位可能に設けるために、1対の操作部材13を雌部材11に固定した際に、各第2片部39の間には間隔が設けられるようになっている。
【0044】
操作部38は、雌部材11の筒部15の端面15aの大きさとほぼ同一の大きさであって、人差し指や親指の指先の腹の大きさ程度に形成されている。操作部38は、その外側に操作面38aを有し、内側に同じく平面状の接触面38bを有する。接触面38bは、操作部材13が雌部材11に固定された際、その一部が、雌部材11のアーム25の当接面27aに接触する。
【0045】
操作部材13を雌部材11に固定する際は、第1片部36及び第2片部39の間の開口から雌部材11の筒部15を挿入する。そして、操作部材13の挿入片36aを、雌部材11の挿入穴16b,17bにそれぞれ挿入する(図1参照)。また、図6に示すように、操作部材13の嵌合孔39aに、雌部材11の突条15sをそれぞれ嵌合する。上記したように、挿入片36aと挿入穴16b、17bとの間には間隔が設けられ、嵌合孔39aと突条15sとの間にも間隔が設けられるため、各操作部材13は雌部材11に対してスライド(変位)可能である。
【0046】
また、雌部材11に各操作部材13を固定すると、上記したように操作部材13の内側面による規制によりアーム25が内側に撓む。このため、アーム25は、その弾性力により、操作部材13を外側に付勢しながら、操作部材13の内側に収容された状態となる。このとき、アーム25の当接面27aの一部は、操作部材13の接触面38bの中央部に接触する。
【0047】
アーム25に内側から付勢された操作部材13は、挿入片36aと挿入穴16b、17bとの係止、及び嵌合孔39aと突条15sとの係止により、その操作面38aがテープ取付部16の外周面と鍔部17の外周面から突出しない位置に配置される。以下、この操作部材13の位置を、非作用位置という。
【0048】
次にバックルアッセンブリの作用について図9〜図13に従って説明する。尚、図9〜図13では、雌部材11及び雄部材12に挿通されたテープTを便宜上省略している。
雌部材11と雄部材12とを締結する際は、一方のテープTが挿通された雌部材11の開口21と、他方のテープTが挿通された雄部材12の差込部14とを対向させる。そして、図9に示すように、差込部14を、雌部材11のスロット部20に挿入していく。この際、上記したように差込部14の最大幅は、スロット部20の幅よりも大きいため、各可撓片34は、ガイド溝20aに導かれながら係止部35を互いに近接させるように内側に撓んだ状態で挿入されていく。また、係止部35は、スロット部20の側面を摺動していく。
【0049】
そして、係止部35が雌部材11の窓部22に到達すると、可撓片34は、撓み戻しにより外側へ拡開していく。可撓片34が拡開していく過程で、スリーブ23の傾斜面23aの頂部は、可撓片34の外側面に当接した状態から、図10に示すように係止部35との段差と当接した状態へと移行し、係止部35と係止して可撓片34の拡開を規制する。このとき可撓片34の一部が窓部22から突出した状態となる。また、可撓片34の先端は、雌部材11の押圧部27に当接する。このように可撓片34の係止部35が雌部材11のスリーブ23の頂部に係止されると、その係止によって雄部材12が通常の力では雌部材11から抜出できなくなり、雄部材12が雌部材11に締結された状態になる。
【0050】
次に、互いに締結された雌部材11及び雄部材12を締結解除する際の作用について説明する。操作部材13が雌部材11に装着されていない場合、雌部材11のアーム25の押圧部27を指で押圧する必要があるが、本実施形態のように雌部材11に操作部材13が装着されている場合、操作部材13の操作面38aのいずれかの位置を押圧すればよい。
【0051】
まず、操作部材13の中央部を押圧した場合について説明する。図10に示すように、操作部材13は、その接触面38bの中央部にアーム25との接触部Pを有している。このため、操作面38aの中央部を押圧すると、図11に示すように、操作面38aが、筒部15の端面15aに対して平行な状態を維持したまま変位する。
【0052】
操作部材13が筒部15に近接する方向に変位すると、操作部材13と押圧部27との当接によりアーム25が内側へ押圧される。アーム25は内側へ向かって撓み、押圧部27は、窓部22から突出した雄部材12の可撓片34の外側面を押圧する。各可撓片34は、押圧部27からの押圧力を受けて内側に撓もうとする。そして、押圧力が、係止部35とスリーブ23の頂部との係止状態を解除可能な大きさとなったとき、係止部35がスリーブ23の頂部から外れ、各可撓片34が互いに近接する方向へ撓む。このときの操作部材13の位置を、以下、作用位置という。
【0053】
係止部35とスリーブ23の頂部との係止が解除されると、雄部材12は、その撓み戻しの弾性力により、ガイド溝20aに導かれながら雌部材11から抜け出す。そして、操作部材13への押圧力が解除されると、操作部材13は、アーム25の弾性力により、作用位置から非作用位置に付勢される。
【0054】
次に、各操作部材13の操作面38aのうち、雌部材11の鍔部17側(開口側)を押圧した場合について説明する。図12(a)に示すように、操作面38aのうち、アームとの接触部Pの真上ではなく、雌部材11の鍔部17側を指先で押圧操作した場合、各操作部材の操作部38は、鍔部17側へ傾動する。この際、操作部材13は、傾動方向の両側において、挿入片36a及び挿入穴16bによる遊嵌構造と、挿入片36a及び挿入穴17bによる遊嵌構造とによって雌部材11に連結され、各嵌合孔39a及び各突条15sによる遊嵌構造によって雌部材11に連結されているので、操作部38が傾いた状態であっても安定して支持することができる。また、挿入穴17b内での挿入片36aのスライド量と、鍔部17側の嵌合孔39a内の突条15sのスライド量を、挿入穴16b内の挿入片36aのスライド量と、テープ取付部16側の嵌合孔39a内の突条15sのスライド量よりも大きくすることで、操作部材13傾動による両側の変位量の差を吸収することができる。
【0055】
また、図12(b)に示すように、操作部材13は、その接触面38bの中央部においてアーム25と接触しているので、その接触部Pを作用点とし、接触部Pを中心に鍔部17側へ傾動し、非作用位置から、鍔部17側へ傾いた傾斜作用位置まで変位する。このとき、操作面38aに加えられた押圧力は、接触部Pを介して、押圧部27に伝達される。
【0056】
操作面38aに加えられた押圧力の大きさが、雄部材12の可撓片34の係止部35とスリーブ23の頂部との係止を解除可能な大きさ以上となると、係止部35がスリーブ23の頂部から外れ、雄部材12は雌部材11から抜出する。
【0057】
次に、操作部材13の操作面38aのうち、雌部材11のテープ取付部16側を押圧した場合について説明する。図13(a)に示すように、操作面38aのうちテープ取付部16側を押圧操作した場合、操作部材13は、テープ取付部16側へ傾動する。このとき、挿入穴16b内の挿入片36aのスライド量と、テープ取付部16側の嵌合孔39a内の突条15sのスライド量を、挿入穴17b内の挿入片36aのスライド量と、鍔部17側の嵌合孔39a内に嵌合された突条15sのスライド量よりも大きくすることで、操作部材13の両側の変位量の差を吸収することができる。
【0058】
また図13(b)に示すように、操作部材13は、接触面38bの中央においてアーム25と接触しているので、その接触部Pを作用点としてテープ取付部16側へ移動して、非作用位置からテープ取付部側へ傾いた傾斜作用位置まで変位する。即ち、操作部材13は、接触面38bの中央部において接触部Pを有しているので、鍔部17側及びテープ取付部16側の両方へほぼ同様に傾動可能である。このとき、操作面38aに加えられた押圧力は、接触部Pを介して、押圧部27に伝達される。
【0059】
操作面38aに加えられた押圧力の大きさが、雄部材12の可撓片34の係止部35とスリーブ23の頂部との係止を解除可能な大きさ以上となると、係止部35がスリーブ23の頂部から外れ、弾性力により、雄部材12は雌部材11から抜出する。
【0060】
このように、操作部材13の操作面38aのうち接触部Pの真上に当たる位置を押圧せずとも、操作面38a上の一箇所を押圧すれば雌部材11及び雄部材12の締結を解除することができる。このため、厚い手袋を装着していても、締結を解除するための操作を容易に行うことができる。また、例えば子供等、細かな操作が難しいユーザであっても締結解除操作を容易に行うことができる。
【0061】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、操作部材13は、雌部材11に対して傾動可能に変位するため、接触部Pの上から押圧操作された場合には水平に変位し、操作面38aの端部が押圧操作された場合には、アーム25との接触部Pを作用点として傾動しつつ変位することができる。そして、この操作部材13の変位により、操作部材13と当接したアーム25が、雄部材12の可撓片34の一部を筒部15の内側へ押圧し、係止部35及びスリーブ23の係止状態を解除する。このため、操作面38aのどの位置を押圧操作しても、雄部材12及び雌部材11の締結を容易に解除することができる。従って、バックルアッセンブリの操作性を向上することができる。
【0062】
(2)上記実施形態では、操作部材13の接触部Pは、操作部材13の接触面38bの中央部に配置されている。このため、操作面38aのうち、接触部Pの真上以外のどの位置が操作されても、接触部Pを作用点としてアーム25を押圧可能に傾動且つ変位することができる。
【0063】
(3)上記実施形態では、操作部材13は、その操作面38aが、互いに締結された雌部材11及び雄部材12の外周面に対して同一面上若しくは内側となるように設けられている。このため、操作面38aがバックルアッセンブリの外周面から突出せず、誤って解除操作されるようなことがない。
【0064】
(4)上記実施形態では、操作部材13及び雌部材11は、間隔を持って互いに嵌合される遊嵌構造により連結されている。即ち、操作部材13は、挿入片36a及び嵌合孔39aを有し、雌部材11は、挿入片36aを遊嵌する挿入穴16b、17bと、嵌合孔39aに遊嵌される突条15sとを有する。従って、挿入片36aと挿入穴16b,17bとの間隔、及び嵌合孔39aと突条15sとの間隔が設けられることで、操作部材13が、非作用位置と、窓部から突出した可撓片34の一部を押圧可能な作用位置又は傾斜作用位置との間で変位することができる。
【0065】
(5)操作部材13は、傾動可能な方向の両側、即ちテープ取付部16側と鍔部17側とに、操作部材13の傾動角度に応じてスライド量を可変とする遊嵌構造を備えている。即ち、操作部材13は、傾動可能な各方向に挿入片36aをそれぞれ備えるとともに、嵌合孔39aをそれぞれ備えている。また、雌部材11は、各挿入片36aを挿入可能な挿入穴16b,17bと、各嵌合孔39aにそれぞれ嵌合可能な突条15sとを備えている。このため、例えば操作部材13がテープ取付部16側に傾動した場合には、挿入穴16b内の挿入片36aのスライド量を、挿入穴17b内の挿入片36aのスライド量よりも大きくすることができる。また、テープ取付部16側の嵌合孔39a内の突条15sのスライド量を、鍔部17側の嵌合孔39a内の突条15sのスライド量よりも大きくすることができる。このため、傾動時の操作部材13の両側における変位量の差を吸収することができる。従って、操作部材13を安定して支持することができる。
【0066】
(6)上記実施形態では、操作部材13は金属材からなるため、例えば樹脂で形成する場合よりも薄く形成することができる。このため、操作面38aに印加された押圧力を、雌部材11の可撓片34に伝達しやすくすることができる。
【0067】
(7)上記実施形態では、操作部材13は、雌部材11のうちテープ取付部16から鍔部17までを覆う大きさであるため、押圧操作を容易にすることができる。
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0068】
・上記実施形態では、操作部材13を雌部材11に対して変位可能に固定するための遊嵌構造を、挿入穴と、挿入穴に挿入される挿入片とのみから構成してもよい。或いは、嵌合孔と、嵌合孔に嵌合される突条とから構成してもよい。また、挿入穴及び突条は、操作部材13に形成してもよい。
【0069】
・操作部材13は、板状の樹脂材から形成してもよい。
・操作部材13は、少なくとも可撓片34全体を覆う大きさであればよい。
・操作部材13が固定されるバックルは、差込部と係止部とを有する雄部材と、差込部を収容可能な筒部と、筒部に挿入された差込部の一部が突出する窓部と、係止部が係止される被係止部と、窓部から突出した差込部の一部を押圧可能に設けられたアームとを有する雌部材とを備えているバックルであれば、上記実施形態以外のバックルでもよい。
【0070】
・バックルアッセンブリに挿通される挿通体は、テープ等の帯状体の他、紐でもよい。
【符号の説明】
【0071】
P…接触部、11…雌部材、12…雄部材、13…操作部材、14…差込部、15…筒部、15s…遊嵌構造を構成する突条、16b,17b…遊嵌構造を構成する挿入穴、22…窓部、23…被係止部としてのスリーブ、25…アーム、35…係止部、36a…遊嵌構造を構成する挿入片、38a…操作面、39a…遊嵌構造を構成する嵌合孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込部と該差込部に設けられた係止部とを有する雄部材と、
前記差込部を収容可能な筒部と、前記筒部に挿入された前記差込部の一部が突出する窓部と、前記係止部が係止される被係止部と、前記窓部から突出した前記差込部の一部を前記筒部の内側へ押圧可能に設けられたアームとを有する雌部材とを備え、
前記窓部から突出した前記差込部の一部と前記アームとの当接により前記係止部及び前記被係止部とを非係止状態として前記雄部材及び前記雌部材との締結を解除するバックルアッセンブリにおいて、
押圧操作される操作面と、前記アームと接触する接触部とを有し、前記接触部を作用点として前記雌部材に対して傾動可能に変位する操作部材を備えたことを特徴とするバックルアッセンブリ。
【請求項2】
前記操作部材の接触部は、前記操作面の裏側に設けられた内側面の中央部に位置する請求項1に記載のバックルアッセンブリ。
【請求項3】
前記操作部材は、前記操作面が、互いに締結された前記雌部材及び前記雄部材の外周面に対して同一平面又は内側に配置される請求項1又は2に記載のバックルアッセンブリ。
【請求項4】
前記操作部材は、前記雌部材に対して遊嵌構造により連結されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のバックルアッセンブリ。
【請求項5】
前記操作部材は、傾動可能な各方向に、前記操作部材の傾動角度に応じてスライド量を可変とする前記遊嵌構造をそれぞれ備えている請求項4に記載のバックルアッセンブリ。
【請求項6】
前記操作部材は、金属材からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載のバックルアッセンブリ。
【請求項7】
前記操作部材は、少なくとも前記アーム全体を覆う大きさである請求項1〜6のいずれか1項に記載のバックルアッセンブリ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載されたバックルアッセンブリの操作部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−217539(P2012−217539A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84315(P2011−84315)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】