説明

バッグインボックス用内袋およびバッグインボックス

【課題】耐ピンホール性、耐食性および自立性に優れたバッグインボックス用内袋を提供すること。
【解決手段】ステンレス鋼箔と熱融着性ポリオレフィン系樹脂層とを有する積層フィルムを熱融着して、バッグインボックス用内袋を製造する。ステンレス鋼箔の板厚は、20〜200μmの範囲内が好ましい。また、ステンレス鋼箔と熱融着性ポリオレフィン系樹脂層との間には、酸変性ポリオレフィン系樹脂層を設けることが好ましい。バッグインボックス用内袋の形状は、自立可能なガセット袋であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ピンホール性、耐食性および自立性に優れたバッグインボックス用内袋、およびそれを有するバッグインボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水系電解液電池では、非水系電解液が使用される。この非水系電解液に大気中の水分が混入すると、非水系電解液が劣化してしまう。このため、非水系電解液を輸送または保存する際には、頑強なステンレス鋼製のボトル型容器を使用するのが一般的である。
【0003】
一方、液体の輸送用または保存用の容器として、バッグインボックスが知られている。バッグインボックスは、段ボールシートなどで形成された外箱(ボックス)の中に、樹脂フィルムなどで形成された内袋(バッグ)を収容した複合容器である。内袋は、密封性やバリア性、耐薬品性などの機能を担い、外箱は、保管性や輸送性などの機能を担っている。バッグインボックスは、金属缶やガラス瓶などの一般的な容器に比べて、軽量で破損しにくく、かつ容易に廃棄処分することができる。このため、バッグインボックスを使用することで、液体の輸送コストを低減することができる。
【0004】
バッグインボックスの内袋には、構成する樹脂フィルムの種類や形状などにより様々な種類がある。たとえば、内部に収容する液体の揮発を防止するために、ガスバリア性に優れるアルミニウム箔を樹脂フィルムの間に挟み込んだ積層フィルムからなる内袋が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−22369号公報
【特許文献2】特開2000−185743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、現在、非水系電解液を輸送または保存する際には、頑強なステンレス鋼製のボトル型容器を使用するのが一般的である。しかしながら、このような頑強な容器には、その重量により輸送コストが上昇してしまうという問題だけでなく、廃棄処分が容易ではないという問題もある。たとえば、ステンレス鋼製のボトル型容器を用いて非水系電解液を海外に輸送した場合、内容物を消費した後に現地にて空の容器を廃棄処分することは困難である。また、発送元に送り返すとしても輸送コストがかさんでしまうことになる。
【0007】
このような問題を解決する手段として、バッグインボックスを用いて非水系電解液を輸送または保存することが考えられる。しかしながら、これまで、非水系電解液などの腐食性のある液体の輸送または保存に適したバッグインボックス用内袋はなかった。
【0008】
すなわち、本発明者らの予備実験によれば、ポリエチレンなどの樹脂フィルムからなる内袋は、収容した非水系電解液が徐々に揮発してしまうため、非水系電解液の輸送容器および保存容器として適していなかった。前述の通り、このような内部に収容した液体の揮発は、アルミニウム箔を含む積層フィルムからなる内袋を使用することで防止することができる。そこで、本発明者らは、さらなる予備実験として、アルミニウム箔を含む積層フィルムからなる内袋に非水系電解液を収容した。その結果、アルミニウム箔を使用した内袋では、折り曲げ部にピンホールが発生してしまうとともに、このピンホール部においてアルミニウム箔が腐食してしまった。また、アルミニウム箔は剛性が低いため、内部に液体を収容していないと内袋を自立させることができなかった。研究開発の現場などでは、容器内の非水系電解液を一回で全量使用することはほとんどなく、少量ずつ取り出して使用することが多い。しかしながら、非水系電解液の量が少なくなると内袋が倒れてしまうため、内袋を外箱から取り出した状態で内袋から非水系電解液を少量ずつ取り出すことは困難であった。
【0009】
以上のように、これまで、非水系電解液などの腐食性のある液体の輸送または保存に適したバッグインボックス用内袋はなかった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、耐ピンホール性、耐食性および自立性に優れたバッグインボックス用内袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、ステンレス鋼箔を含む積層フィルムを使用することで上記課題を解決できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、本発明は、以下のバッグインボックス用内袋に関する。
[1]積層フィルムを熱融着することで形成された、液体を収容するためのバッグインボックス用内袋であって、前記積層フィルムは、前記バッグインボックス用内袋の内側に面する第1の面および前記バッグインボックス用内袋の外側に面する第2の面を有するステンレス鋼箔と、前記ステンレス鋼箔の第1の面に配置された熱融着性ポリオレフィン系樹脂層とを有する、バッグインボックス用内袋。
[2]自立可能なガセット袋である、[1]に記載のバッグインボックス用内袋。
[3]前記積層フィルムは、前記ステンレス鋼箔と前記熱融着性ポリオレフィン系樹脂層との間に、酸変性ポリオレフィン系樹脂層をさらに有する、[1]または[2]に記載のバッグインボックス用内袋。
[4]前記ステンレス鋼箔の板厚は、20〜200μmの範囲内である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のバッグインボックス用内袋。
[5]前記熱融着性ポリオレフィン系樹脂層は、厚みが20〜200μmの直鎖状低密度ポリエチレン層である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のバッグインボックス用内袋。
[6]前記積層フィルムは、前記ステンレス鋼箔の第2の面に形成された外層樹脂層をさらに有する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のバッグインボックス用内袋。
[7]前記外層樹脂層は、厚みが20〜50μmの延伸ナイロン層である、[6]に記載のバッグインボックス用内袋。
[8]前記液体は、非水系電解液である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のバッグインボックス用内袋。
【0013】
また、本発明は、以下のバッグインボックスに関する。
[9][1]〜[8]のいずれか一項に記載のバッグインボックス用内袋を有する、バッグインボックス。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバッグインボックス用内袋は、耐ピンホール性、耐食性および自立性に優れている。たとえば、本発明のバッグインボックス用内袋を使用することで、非水電解液などの腐食性のある液体をバッグインボックスで輸送または保存することができる。前述の通り、バッグインボックスは、液体の輸送コストの低減および容器の廃棄処分の容易化に好適である。したがって、本発明によれば、非水電解液などの腐食性の液体の輸送コストおよび保存コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1のバッグインボックス用内袋の構成を示す模式図
【図2】積層フィルムの構成を示す断面模式図
【図3】本発明の実施の形態1のバッグインボックス用内袋の製造過程を示す模式図
【図4】本発明の実施の形態1のバッグインボックス用内袋の使用状態を示す模式図
【図5】積層フィルムの折りたたみ方の別の例を示す模式図
【図6】本発明の実施の形態2のバッグインボックス用内袋の形状を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.バッグインボックス用内袋
本発明のバッグインボックス用内袋は、ステンレス鋼箔および熱融着性ポリオレフィン系樹脂層を含む積層フィルムを熱融着することで形成された袋である。熱融着性ポリオレフィン系樹脂層は、ステンレス鋼箔の第1の面に直接接合されているか、または酸変性ポリオレフィン系樹脂を介してステンレス鋼箔の第1の面に接合されている。本明細書では、ステンレス鋼箔の2つの面のうち、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層が配置されている面を「第1の面」といい、反対側の面を「第2の面」という。第1の面は内面(液体側の面)となり、第2の面は外面(外箱側の面)となる。
【0017】
ステンレス鋼箔を構成するステンレス鋼の鋼種は、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系など特に限定されない。鋼種の例には、SUS304、SUS430、SUS316などが含まれる。また、ステンレス鋼箔の表面仕上げの種類も、特に限定されない。表面仕上げの種類の例には、BA、2B、2D、No.4、HLなどが含まれる。
【0018】
ステンレス鋼箔の板厚は、バッグインボックス用内袋として要求される重量や強度などに応じて適宜設定することができる。通常、ステンレス鋼箔の板厚は、20〜200μmの範囲内である。板厚が20μm未満の場合、内袋の強度が不足してしまうおそれがある。一方、板厚が200μmを超える場合、内袋の形状が折りたたみ可能な形状であっても、折りたたむのが困難となってしまうおそれがある。また、重量が大きくなるため、輸送コストの観点からも好ましくない。
【0019】
熱融着性ポリオレフィン系樹脂層は、ステンレス鋼箔の第1の面に直接接合されているか、または後述の酸変性ポリオレフィン系樹脂を介してステンレス鋼箔の第1の面に接合されている。熱融着性ポリオレフィン系樹脂層は、内袋の内部を外気から遮断して密封系にする機能を担う。すなわち、本発明の内袋を製造する際に、一方の積層フィルムの熱融着性ポリオレフィン系樹脂層を他方の積層フィルムの熱融着性ポリオレフィン系樹脂層と熱融着させることにより、内袋の内部を外気(例えば、水蒸気)から遮断するとともに、内袋の内部に収容された液体(例えば、非水系電解液)の液漏れを防止する。また、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層は、非水系電解液など腐食性のある液体に対するステンレス鋼箔の耐腐食性を向上させる機能も担っている。
【0020】
熱融着性ポリオレフィン系樹脂層を構成する熱融着性ポリオレフィン系樹脂の種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。熱融着性ポリオレフィン系樹脂の例には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体などが含まれる。これらの中では、耐衝撃性や耐寒性、シール強度、低温シール性などの観点から直鎖状低密度ポリエチレン(特にメタロセン触媒を用いて製造されたもの)が好ましい。
【0021】
熱融着性ポリオレフィン系樹脂層の厚みは、20〜200μmの範囲内が好ましい。厚みが20μm未満の場合、十分な強度で熱融着させることができないおそれがある。また、厚みを200μm超としても、熱融着の強度の向上は認められず、製造コストの観点から好ましくない。また、厚みが200μmを超える場合、加工性が低下するおそれもある。
【0022】
本発明の内袋を構成する積層フィルムは、ステンレス鋼箔と熱融着性ポリオレフィン系樹脂層との間に、酸変性ポリオレフィン系樹脂層を有していてもよい。酸変性ポリオレフィン系樹脂層は、ステンレス鋼箔と熱融着性ポリオレフィン系樹脂層との密着性をより向上させる。
【0023】
酸変性ポリオレフィン系樹脂層を構成するポリオレフィン系樹脂の種類は、特に限定されず、公知のものから適宜選択することができる。酸変性ポリオレフィン系樹脂の例には、不飽和カルボン酸でグラフト変性したオレフィン樹脂、エチレンまたはプロピレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体などが含まれる。これらの中では、耐熱性の観点から、不飽和カルボン酸でグラフト変性したオレフィン樹脂が特に好ましい。
【0024】
酸変性ポリオレフィン系樹脂層の厚みは、20〜100μmの範囲内が好ましい。厚みが20μm未満の場合、ステンレス鋼箔への密着性を十分に確保できないおそれがある。また、厚みを100μm超としても、ステンレス鋼箔への密着性の向上は認められず、製造コストの観点から好ましくない。また、厚みが100μmを超える場合、加工性が低下するおそれもある。
【0025】
本発明の内袋を構成する積層フィルムは、ステンレス鋼箔の第2の面(外面)側に樹脂層(以下「外層樹脂層」ともいう)を有していてもよい。外層樹脂層を配置することで、内袋の外面にロット番号や図柄などを印刷することが可能となる。また、ステンレス鋼箔だけでも十分な耐突き刺し性を有しているが、外層樹脂層を配置することで、内袋の耐突き刺し性をより向上させることができる。外層樹脂層は、例えばウレタン系接着剤などによりステンレス鋼箔の第2の面上に接着される。
【0026】
外層樹脂層を構成する樹脂の種類は、特に限定されず、要求される特性(意匠性や耐突き刺し性など)に応じて公知のものから適宜選択することができる。外層樹脂層を構成する樹脂の例には、延伸ナイロン、延伸ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどが含まれる。
【0027】
外層樹脂層の厚みは、特に限定されず、要求される特性に応じて適宜設定することができる。たとえば、外層樹脂層の厚みは、20〜50μmの範囲内である。
【0028】
本発明の内袋の形状は、特に限定されないが、液体を収容しなくても自立可能で、かつ中身が空のときに折りたたみ可能な形状が好ましい。そのような内袋の形状の例には、ガセット袋(横ガセットタイプ、底ガセットタイプ)やスタンディングパウチなどが含まれる。
【0029】
アルミニウム箔および樹脂層からなる積層フィルムを用いてガセット袋またはスタンディングパウチを製造した場合、アルミニウム箔は剛性が低いため、これらの袋は液体を収容しなければ自立させることは困難である。一方、ステンレス鋼箔および樹脂層からなる積層フィルムを用いてガセット袋またはスタンディングパウチを製造した場合、ステンレス鋼箔は剛性が大きいため、これらの袋は液体を収容しなくても自立させることができる。
【0030】
また、ステンレス鋼箔および樹脂層からなる積層フィルムを用いて製造されたガセット袋またはスタンディングパウチは、使用前または使用後に容易に折りたたむことが可能である。
【0031】
本発明の内袋の大きさは、特に限定されず、収容する液体の種類や量などに応じて適宜設定することができる。たとえば、本発明の内袋の内容量は、500mL〜数L程度である。
【0032】
本発明の内袋には、様々な液体を収容することができる。本発明の内袋を構成する積層フィルムは、折り曲げ部でもピンホールが発生せず、かつ耐食性にも優れている。したがって、本発明の内袋には、非水系電解液などの腐食性のある液体(酸性またはアルカリ性の液体)も収容することができる。ここで「非水系電解液」とは、リチウムイオン二次電池などで用いられている、非水溶媒に電解質を溶解させた電解液を意味する。たとえば、非水系電解液は、非プロトン性有機溶媒(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホランまたはこれらを混合した溶媒)に電解質を溶解させた電解液である。
【0033】
本発明の内袋の製造方法は、特に限定されない。たとえば、本発明の内袋は、1)ステンレス鋼箔および熱融着性ポリオレフィン系樹脂層を含む積層フィルムを準備し、2)準備した積層フィルムを所定の形状に折りたたんだ上で熱融着する、ことで製造されうる。
【0034】
第1のステップでは、ステンレス鋼箔および熱融着性ポリオレフィン系樹脂層を含む積層フィルムを準備する。
【0035】
ステンレス鋼箔の第1の面に熱融着性ポリオレフィン系樹脂層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法から適宜選択することができる。たとえば、ステンレス鋼箔の第1の面に熱融着性ポリオレフィン系樹脂フィルムを積層してもよいし(積層法)、ステンレス鋼箔の第1の面に熱融着性ポリオレフィン系樹脂組成物を塗布してもよい(塗布法)。積層法の例には、熱ラミネーション法やサンドラミネーション法などが含まれる。また、熱融着性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、市販のものを使用してもよいし、Tダイ押し出し機などを用いて作製してもよい。また、熱融着性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、未延伸のものでもよいし、一軸または二軸延伸されたものでもよい。一方、塗布法の例には、樹脂組成物を溶融してバーコータやロールコータなどで塗布する方法、溶融した樹脂組成物にステンレス鋼箔を浸漬する方法、樹脂組成物を溶媒に溶解してバーコータやロールコータ、スピンコートなどで塗布する方法などが含まれる。
【0036】
また、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層に加えて酸変性ポリオレフィン系樹脂層を形成する場合も、上記積層法や上記塗布法などの公知の方法で配置することができる。酸変性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、市販のものを使用してもよいし、Tダイ押し出し機などを用いて作製してもよい。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂フィルムは、未延伸のものでもよいし、一軸または二軸延伸されたものでもよい。
【0037】
第2のステップでは、第1のステップで準備した積層フィルムを所定の形状に折りたたんだ上で熱融着する。たとえば、内袋の形状がガセット袋(横ガセットタイプ)の場合、側面の折り込み部を折り込んだ上で、積層フィルムの所定の部位をヒートシールする(実施の形態参照)。使用する積層フィルムの枚数やヒートシールする部位は、内袋の形状などに応じて適宜選択すればよい。
【0038】
本発明の内袋に液体を収容する際には、折りたたまれた状態の内袋を展開した後、開口部から液体を注ぎ、開口部をヒートシールして密封すればよい。本発明の内袋から液体を取り出す際には、ヒートシール部を切除し、開口部から液体を取り出せばよい。本発明の内袋から液体を一部取り出す場合は、必要量の液体を取り出した後、再度開口部をヒートシールして密封すればよい。
【0039】
本発明のバッグインボックス用内袋は、ステンレス鋼箔を基材(ベースフィルム)としているため、耐ピンホール性、耐食性および自立性に優れている。たとえば、本発明のバッグインボックス用内袋を使用することで、非水系電解液などの腐食性のある液体をバッグインボックスで輸送または保存することができる。
【0040】
2.バッグインボックス
本発明のバッグインボックスは、本発明の内袋と、内袋を収容する外箱とを有する。外箱の形状および大きさは、収容する内袋の形状および大きさに応じて適宜選択することができる。多くの場合、外箱の形状は直方体または立方体である。外箱を構成する材料は、特に限定されず、要求される特性(剛性や重量など)に応じて公知のものから適宜選択することができる。外箱を構成する材料の例には、段ボールシートや板紙などが含まれる。
【0041】
本発明のバッグインボックスに液体を収容する際には、外箱の外で内袋に液体を収容してもよいし、外箱内において内袋に液体を収容してもよい。同様に、本発明のバッグインボックスから液体を取り出す際も、外箱の外で内袋から液体を取り出してもよいし、外箱内において内袋から液体を取り出してもよい。従来のバッグインボックス用内袋は剛性が小さいため、外箱内において内袋に液体を収容し、外箱内に収容された状態の内袋から液体を取り出すのが一般的であった。しかしながら、本発明の内袋は剛性が大きいため、外箱の外で内袋に液体を収容した後に、液体を収容した内袋を外箱内に収容することができる。同様に、本発明のバッグインボックスから液体を取り出す際も、液体を収容した内袋を外箱の外に取り出した後、内袋から液体を取り出すことができる。
【0042】
本発明のバッグインボックスに液体を収容する前、および本発明のバッグインボックスから液体を取り出した後は、外箱も内袋も折りたたむことができる。折りたたまれた外箱および内袋は、サイズが小さく、輸送、保管または廃棄処分するのに好適である。
【0043】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0044】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1のバッグインボックス用内袋100の構成を示す模式図である。図1Aはバッグインボックス用内袋100の斜視図であり、図1Bはバッグインボックス用内袋100の底面図である。図1Aおよび図1Bでは、展開した後のバッグインボックス用内袋100を図示している。
【0045】
図1Aおよび図1Bに示されるように、バッグインボックス用内袋100は、4枚の積層フィルム110a〜dを組み合わせて形成された自立式のガセット袋である。各積層フィルム110a〜dは、ヒートシール部120(図中着色した部位)において隣接する積層フィルム110a〜dと接着されている。
【0046】
図2は、積層フィルム110の構成を示す断面模式図である。図2に示されるように、積層フィルム110は、ステンレス鋼箔112、酸変性ポリオレフィン系樹脂層114および熱融着性ポリオレフィン系樹脂層116をこの順番で積層したものである。ステンレス鋼箔112が外界に面し、熱融着性ポリオレフィン系樹脂層116は内袋の収容部に面している。
【0047】
次に、図3を参照して、バッグインボックス用内袋100の製造方法を説明する。図3A〜Cは、バッグインボックス用内袋100の製造過程を示す模式図である。
【0048】
まず、図3Aに示されるように、4枚の積層フィルム110a〜dを準備する。4枚の積層フィルム110a〜dのうち、折り込み部となる一対の積層フィルム110b,dには、V字状の折り目が付けられている。
【0049】
次に、図3Bに示されるように、4枚の積層フィルム110a〜dを重ね合わせた状態で、4枚の積層フィルム110a〜dの互いに隣接する辺および底部をヒートシールする。この工程により、バッグインボックス用内袋100の収容部が形成される。
【0050】
最後に、図3Cに示されるように、ヒートシールされた4枚の積層フィルム110a〜dの底部の余白部分(内側のヒートシール部120よりも外側の部分)を切除する。このように余白部分を切除することで、バッグインボックス用内袋100の底面の構造がシンプルになり(図1B参照)、より容易に展開できるようになる。なお、余白部分が残存していてもバッグインボックス用内袋100を展開することは可能であるため、この工程は必須ではない(図6参照)。
【0051】
以上の手順により、バッグインボックス用内袋100を製造することができる。製造されたバッグインボックス用内袋100は、折りたたまれているため、使用時には図1Aに示されるように展開される。
【0052】
図4は、バッグインボックス用内袋100の使用状態を示す模式図である。図4Aは、バッグインボックス用内袋100内に液体を収容した様子を示す模式図であり、図4Bは、バッグインボックス用内袋100を外箱130に収容した様子を示す模式図である。
【0053】
図4Aに示されるように、液体を収容したバッグインボックス用内袋100は、開口部がヒートシールされて密封される。本発明のバッグインボックス用内袋100は、自立性に優れているため、外箱130内ではなく外箱130外においてバッグインボックス用内袋100内に液体を収容してもよい。もちろん、外箱130内にバッグインボックス用内袋100を収容した後、バッグインボックス用内袋100内に液体を収容してもよい。
【0054】
図4Bに示されるように、密封されたバッグインボックス用内袋100は、外箱130内に収容される。輸送時および保存時には、外箱130の蓋は閉じられる。
【0055】
以上のように、本実施の形態のバッグインボックス用内袋100は、ステンレス鋼箔を基材としており、かつガセット袋の形状であるため、耐ピンホール性、耐食性および自立性に優れている。
【0056】
なお、本実施の形態では、4枚の積層フィルムを用いてガセット袋を製造する例について説明したが、1〜3枚の積層フィルムを用いても同一形状のガセット袋を製造することができる。たとえば、図5に示されるように1枚の積層フィルムを折りたたみ、対向する辺および底部をヒートシールすることで(図3B参照)、1枚の積層フィルムからガセット袋を製造することができる。
【0057】
(実施の形態2)
実施の形態1では、袋の幅と同一の幅の開口部を有する内袋の例を示した。実施の形態2では、袋の幅よりも細い幅の開口部を有する内袋の例を示す。
【0058】
図6は、本発明の実施の形態2のバッグインボックス用内袋200の構成を示す模式図である。ここでは、展開前の折りたたまれた状態のバッグインボックス用内袋200を図示している。
【0059】
図6に示されるように、実施の形態2のバッグインボックス用内袋200は、開口部210の両側に、開口部210の幅を狭くするためのヒートシール部220が形成されている点で、実施の形態1のバッグインボックス用内袋100と異なる。
【0060】
このように、実施の形態2のバッグインボックス用内袋200は、開口部210の幅が細いことから、液体を収容した内袋200をより容易に密封することができる。たとえば、内袋200から液体を少量ずつ取り出す場合、取り出すごとに内袋200を密封する作業をより容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のバッグインボックス用内袋は、耐ピンホール性、耐食性および自立性に優れているため、例えば非水電解液などの腐食性のある液体をバッグインボックスで輸送する際の内袋として有用である。
【符号の説明】
【0062】
100,200 バッグインボックス用内袋
110 積層フィルム
112 ステンレス鋼箔
114 酸変性ポリオレフィン系樹脂層
116 熱融着性ポリオレフィン系樹脂層
120,220 ヒートシール部
130 外箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムを熱融着することで形成された、液体を収容するためのバッグインボックス用内袋であって、
前記積層フィルムは、前記バッグインボックス用内袋の内側に面する第1の面および前記バッグインボックス用内袋の外側に面する第2の面を有するステンレス鋼箔と、前記ステンレス鋼箔の第1の面に配置された熱融着性ポリオレフィン系樹脂層とを有する、
バッグインボックス用内袋。
【請求項2】
自立可能なガセット袋である、請求項1に記載のバッグインボックス用内袋。
【請求項3】
前記積層フィルムは、前記ステンレス鋼箔と前記熱融着性ポリオレフィン系樹脂層との間に、酸変性ポリオレフィン系樹脂層をさらに有する、請求項1に記載のバッグインボックス用内袋。
【請求項4】
前記ステンレス鋼箔の板厚は、20〜200μmの範囲内である、請求項1に記載のバッグインボックス用内袋。
【請求項5】
前記熱融着性ポリオレフィン系樹脂層は、厚みが20〜200μmの直鎖状低密度ポリエチレン層である、請求項1に記載のバッグインボックス用内袋。
【請求項6】
前記積層フィルムは、前記ステンレス鋼箔の第2の面に形成された外層樹脂層をさらに有する、請求項1に記載のバッグインボックス用内袋。
【請求項7】
前記外層樹脂層は、厚みが20〜50μmの延伸ナイロン層である、請求項6に記載のバッグインボックス用内袋。
【請求項8】
前記液体は、非水系電解液である、請求項1に記載のバッグインボックス用内袋。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載のバッグインボックス用内袋を有する、バッグインボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−153389(P2012−153389A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12973(P2011−12973)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】