説明

バッター練込み用油脂組成物

【課題】分散性が良好であることに加え、サクサクした食感でかつ油脂風味、とくに香味が良好であるフライ食品を得ることができるバッター練込み用油脂組成物、及び該バッター練込み用油脂組成物を含有してなるバッター液、該バッター液を使用したフライ食品を提供すること。
【解決手段】油分含量が60質量%以上である高油分水中油型乳化物であることを特徴とするバッター練込み用油脂組成物、及び該バッター練込み用油脂組成物を含有してなるバッター液、さらに、該バッター液を使用したフライ食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香味に優れたフライ食品を得ることができるバッター練込み用油脂組成物、及び該バッター練込み用油脂組成物を含有してなるバッター液、該バッター液を使用したフライ食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コロッケ、メンチかつなどのフライ食品は、タネ(食品素材)を、小麦粉と水を主体とし、その他必要に応じ卵液や調味料などを添加したバッター液に浸漬後、パン粉を付着させ、フライ油でフライして得られるものであり、バッター液に含まれる澱粉や蛋白質、あるいは付着させたパン粉が高温のフライ用油脂でフライされることにより固化し、クラスト(ころも層)が得られる。
また、てんぷらは、タネ(食品素材)を、ダシ汁や水に、小麦粉を薄く溶いたバッター液に浸漬後、フライ油でフライして得られるものであり、バッター液に含まれる澱粉や蛋白質が高温のフライ用油脂でフライされることにより固化し、クラスト(ころも層)が得られる。
これらのフライ食品やてんぷらのクラストの風味は、基本的にフライ用油脂が大きく左右することが知られており、一般的にはさっぱりした風味を出すために米油、ナタネ油、大豆油、パーム油等の植物油脂が使用されるが、高級品では香味のあるゴマ油を、濃厚な風味を求める場合は牛脂や豚脂などの動物油脂が使用される。
【0003】
しかし、これらのフライ用油脂として好まれる油脂は酸化安定性が低いため、フライ中に劣化しやすく、良好な風味のフライ食品やてんぷらを安定して得るためには油脂の取替えを一定頻度で行ったり、油脂の回転率を上げるために少ない油脂で多数回のフライを行うなど、生産性が悪い問題があった。
一方、バッター液に油脂を乳化あるいは混合して、水中油型乳化型のバッター液を製造し、これを用いることで、食感を改良することが行われている。しかし、バッター液は小麦粉のグルテンを出さないように低温下で短時間で混合する必要があるため、配合する油脂は低温下で流動状の油脂、すなわち低融点の油脂を使用することになる。そのため、バッター液のタネへの付着性が低下してしまう問題に加え、経日的にサクサクした食感が失われてしまう問題があった。
【0004】
そのため、添加する油脂に、極度硬化油や特定の乳化剤を添加することで、融点が低くとも良好な流動性と付着性を示し、しかも、経日的な食感の低下が防止された油脂が提案されている。(例えば特許文献1、2参照)しかし、これらの油脂もバッター液への分散性は良好であるが、バッター液の粘度と油脂組成物の粘度を一致させることで分散性を改良しているものであり、通常のバッター液の製造方法では、油脂粒が粗粒状態で分散した水中油型乳化物になっており、そのためフライ時にフライ油中に流失し、クラスト部分はフライ油で置換されてしまっているため、バッター用油脂に改良剤成分や香味油を使用した場合には、その効果が得られにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−253145号公報
【特許文献2】特開2001−128617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、分散性が良好であることに加え、サクサクした食感でかつ油脂風味、とくに香味が良好であるフライ食品を得ることができるバッター練込み用油脂組成物、及び該バッター練込み用油脂組成物を含有してなるバッター液、該バッター液を使用したフライ食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、フライ食品やてんぷらの油脂風味を、フライ用油脂に求めるのではなく、バッター用油脂に求め、そのバッター用油脂も通常使用する流動状ショートニングではなく、水中油型乳化物、それも高油分の水中油型乳化物とすることで、上記問題を解決することが可能であることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、油分含量が60質量%以上である高油分水中油型乳化物であることを特徴とするバッター練込み用油脂組成物、該バッター練込み用油脂組成物を含有するバッター液、該バッター液を使用したフライ食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバッター練込み用油脂組成物は、液状油を主体として使用せずとも分散性が良好であることに加え、サクサクした食感でかつ油脂風味、とくに香味が良好である、てんぷら、コロッケ、メンチかつなどのフライ食品を得ることができる。さらに、該フライ食品は長期冷凍保管品の解凍時に電子レンジを使用したり、電子レンジ調理後冷蔵保管しても良好なサクサク感が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明で使用する、油分含量が60質量%以上である高油分水中油型乳化物(以下、単に「高水中油型乳化組成物」ともいう)について述べる。
【0011】
上記高油分水中油型乳化物に使用する油脂としては特に制限されず、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される一又は二以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
なお、上記油脂として、もちろん下で述べる香味油を使用することもできる。
【0012】
上記高油分水中油型乳化物における油分含量は、高油分水中油型乳化物に使用するその他の原材料に含まれる油分も含め、60質量%以上であることが必要であり、好ましくは70質量%以上とする。60質量%未満であると本発明の効果は得られない。なお、上限については、90質量%である。90質量%超であると高油分水中油型乳化物が安定に製造できない可能性がある。
【0013】
上記高油分水中油型乳化物に使用する水としては特に制限されず、例えば、水道水、ミネラル水、地下水等が挙げられる。本発明においては、これらの水を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。また、卵、クリーム、液糖など、水分を含有する食品素材に含まれる水分を、該水として使用することもできる。
【0014】
上記高油分水中油型乳化物における水分含量は、高油分水中油型乳化物に使用するその他の原材料に含まれる水分も含め、35質量%以下である。35質量%超であると本発明の効果は得られない。なお、下限については、8質量%である。8質量%未満であると高油分水中油型乳化物が安定に製造できない可能性がある。
【0015】
上記高油分水中油型乳化物は、上記油脂と上記水を乳化するために乳化剤を使用する。本発明では、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステルの中から選ばれた1種又は2種以上の乳化剤を含有するのが好ましい。さらに好ましくはソルビタン脂肪酸エステル1種以上とグリセリン脂肪酸エステル1種以上を含有するのがよい。
【0016】
上記のソルビタン脂肪酸エステルは、好ましくはHLBが2〜10、さらに好ましくは2〜8のソルビタン脂肪酸エステルを用いるのがよい。上記ソルビタン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限はなく、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の残基が挙げられる。上記ソルビタン脂肪酸エステルの含有量は上記高油分水中油型乳化物中、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.1〜5重量%である。
【0017】
上記のグリセリン脂肪酸エステルとしては、好ましくはHLBが0〜6、さらに好ましくは0〜4のグリセリン脂肪酸エステルを用いるのがよい。また上記のグリセリン脂肪酸エステルとしては、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、グリセリン脂肪酸エステルとしてモノグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
【0018】
上記グリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸残基としては特に制限はなく、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の残基が挙げられる。
上記有機酸モノグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、酢酸グリセリン脂肪酸エステル、乳酸グリセリン脂肪酸エステル、コハク酸グリセリン脂肪酸エステル、ジアセチル酒石酸グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
上記ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成するグリセリン残基としては特に制限はないが、重合度が1〜10のものが好ましい。
【0019】
上記高油分水中油型乳化物には、糖類や甘味料を配合してもよい。上記糖類や甘味料としては、上白糖、グラニュー糖、粉糖、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、蔗糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、はちみつ等が挙げられ、この中から選ばれた1 種又は2種以上を使用することができる。
【0020】
上記高油分水中油型乳化物には増粘安定剤を配合してもよい。上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、この中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の配合量は、特に制限はないが、上記高油分水中油型乳化物中、好ましくは0〜10重量%、さらに好ましくは0〜5重量%、最も好ましくは0.001〜3重量%である。
【0021】
上記高油分水中油型乳化物は香味成分を油相中に含有することが好ましい。
上記香味成分としては、油溶性の香料、香味油、抽出物、精油などが挙げられる。
なお、香味油とは、シーズニングオイル、調味油、風味油、着香油とも呼ばれ、野菜や香辛料、畜産物、水産物、調味料などの原料の持つそのままの香味、もしくは調理したときの香味を動植物油脂や食用精製加工油脂に移行させて作るものや、油脂の採油工程で積極的に香味成分を生成させて採油したり油脂精製条件をマイルドにし製造したものなどがある。なお、後者の例としては、胡麻油、ラード、ヘット、オリーブ油があげられる。
【0022】
また、精油とは、主に植物原料から水蒸気蒸留、溶剤抽出、超臨界抽出や圧搾法などにより得られるものであり、セージ、フェンネル、バジル、ペパーミント、オレンジ、ライム、ベルガモット、レモン、ジャスミン、ゼラニウム、ラベンダー、サンダルウッド、カルダモン、クローブ、シナモン、ローレル、マスタード、パプリカ、ジンジャー、ガーリック、ブラックペッパー、サイプレス、シダーウッド、ティーツリー、ユーカリ等の精油を挙げることができる。
なお、上記香味成分は基本的には食用油脂中に溶解して使用するが、少量の香味成分で良好な風味のフライ食品を得るため、及び、高油分水中油型乳化物中での香味成分の安定性が良好である点で、香味成分を含む油相と、香味成分を含まない油相が混在する形態であることが好ましい。
すなわち、高濃度に香味成分を含有する油滴と、低濃度あるいは香味成分を含有しない油滴が、連続した水相中に別々の油滴として存在することが好ましい。
なお、この2種の油滴の存在比は、その香味成分の香味の強さに応じ適宜設定可能であり、また、その粒径についても適宜設定可能である。
【0023】
上記高油分水中油型乳化物は必要により、蛋白質、穀類、無機塩及び有機酸塩、カカオ製品、コーヒー及びコーヒー製品、その他各種食品素材全般、着香料、果汁、調味料等の呈味成分、着色料、保存料、pH調整剤、酸化防止剤等を用いることができる。
【0024】
次に、上記高油分水中油型乳化物の製造方法を説明する。上記高油分水中油型乳化物は、その製造方法が特に制限されるものではなく一般的な水中油型乳化物の製造方法により得ることができるが、好ましくは以下の方法により製造する。まず、油脂、必要により香味成分、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、その他の油溶性物質を添加した油相を用意する。
これを必要により水溶性物質を添加した水相に添加し、水中油型に乳化する。そして必要により殺菌処理を行う。殺菌方法は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続式でも構わない。
【0025】
次に、これを容器に入れ、冷却固化し高油分水中油型乳化物を得る。また、上記高油分水中油型乳化物を製造する際の何れかの製造工程で、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
なお、香味成分を含む油相と、香味成分を含まない油相が混在する高油分水中油型乳化物を製造する場合は、香味成分を含む油相と、香味成分を含まない油相の2種の油相を用意し、水相に別々に添加することにより得ることができるが、好ましくは、片方の油相のみを添加して後、残りの片方の油相を添加して乳化する。なお、添加する順序は、融点の高い油相を先に添加し、添加し終えた後に若干冷却し、油脂中の固形分がやや析出した状態となってから融点の低い油相の添加を行うことが2種の油滴の混合がおきにくいことから好ましい。また、油相の融点が同一である場合は、香味成分を含む油相を後に添加するほうが香味成分の分散がおきにくい点で好ましい。
【0026】
次に本発明のバッター液について述べる。
本発明のバッター液は、上記の本発明のバッター練込み用油脂組成物を好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%含有してなるものであり、タネ(食品素材)への付着性が適度であり、該バッター液を使用して得られたフライ食品はサクサクした食感でかつ油脂風味、とくに香味が良好であり、さらにフライ食品を冷凍保管あるいは冷蔵保管した際の再加熱時に電子レンジを使用しても良好なサクサク感が得られるという特徴を有する。
【0027】
本発明のバッター液は、従来のバッター液を製造する際に使用する食品素材や食品添加物に加え、本発明のバッター練込み用油脂組成物を上記の含有量となるように添加して製造すればよい。
つまり、水、クリーム、牛乳、濃縮乳、醗酵乳、卵、ダシ汁等の水性原料や、穀粉及び/又は澱粉等の粉体原料に加え、本発明のバッター練込み用油脂組成物を使用し、これに必要に応じて、糖類、脱脂粉乳や全粉乳等の乳製品、食塩等の塩味剤、β−カロチン等の着色料、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、ホエー蛋白質、カゼイン蛋白質等の動物蛋白質、卵及び各種卵加工品、酢酸やクエン酸等の酸味料、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ゼラチン、ペクチン、キサンタンガム等の増粘安定剤、乳化剤、酸化防止剤、膨張剤、保存料、苦味料、グルタミン酸ナトリウム等の調味料、ステビア抽出物等の甘味料、香辛料、香辛料抽出物、香料、食塩等の無機塩類、着色料、調味料、豆類、野菜類等の食品素材や食品添加物を加え、常法に従って加工することにより、本発明のバッター液を得ることができる。
【0028】
本発明のバッター練込み用油脂組成物をバッター液に含有させる方法としては、予め、穀粉及び/又は澱粉等の粉体原料を水性原料に分散させたバッター液に、本発明のバッター練込み用油脂組成物を添加し、十分に混合する方法、穀粉及び/又は澱粉等の粉体原料に、本発明のバッター練込み用油脂組成物を分散させた後、水性原料を添加し、十分に混合する方法、本発明のバッター練込み用油脂組成物を水性原料に分散させた後、穀粉及び/又は澱粉等の粉体原料を添加し、十分に混合する方法等があり、これらのうちの何れの方法でも良い。
なお、本発明のバッター練込み用油脂組成物は、分散性が極めて良好であるため、手混ぜであっても簡単に均質なバッター液とすることが可能であるが、コロイドミル等の乳化機、ホモゲナイザー等の均質化機を使用することにより、より均質で良好な物性のバッター液を得ることができる。
また、本発明のバッター練込み用油脂組成物は、常温で使用してもよく、また、加温溶解して使用してもよい。
【0029】
次に、本発明のフライ食品について述べる。
本発明のフライ食品は、本発明のバッター液を使用して得られたフライ食品であり、上記の特徴を有するものである。
本発明のフライ食品を得るための本発明のバッター液の使用方法は、従来のバッター液の使用方法と同様であり、例えばタネ(食品素材)に、必要に応じ小麦粉等の打ち粉をまぶし、次いでバッター液を付着させ、更にパン粉を付け、又はそのまま成型するというものである。これを直ちに、又は冷蔵や冷凍等の方法にて保管後、フライ油で揚げることによってフライ食品が得られる。
具体的なフライ食品の例としては、てんぷら、コロッケ、クリームコロッケ、メンチカツ、魚介類や畜肉類のフライ等を挙げることができる。
なお、フライ油で揚げる代わりに電子レンジやフライパン等で加熱することでも良好な食感と香味を有するフライ食品を得ることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例、比較例をもって本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例などによって何ら制限を受けるものではない。なお、文中の「部」または、「%」とあるのは、断りのない限り質量基準である。
【0031】
<高油分水中油型乳化物の調製>
〔実施例1〕
ラード(豚脂)100%に、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0%、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0%を添加、加温溶解し油相を得た。水のみからなる水相24質量部に、上記油相76質量部を徐々に添加しながら乳化させ、冷却固化し、油分含量が73質量%の高油分水中油型乳化物である、本発明のバッター練込み用油脂組成物Aを得た。
【0032】
〔実施例2〕
ラード(豚脂)100%に代えて、ラード(豚脂):ナタネ液状油=2:3の混合油脂100%を使用した以外は製造例1と同様にして、油分含有量が73%の高油分水中油型乳化物である、本発明のバッター練込み用油脂組成物Bを得た。
【0033】
〔実施例3〕
ラード(豚脂)100%に、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0%、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0%を添加、加温溶解し油相(1)を得た。一方、ナタネ液状油100%に、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0%、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0%を添加、加温溶解し油相(2)を得た。水のみからなる水相24質量部に、上記油相(1)30.5質量部を徐々に添加しながら乳化させ、続いて上記油相(2)45.5質量部を徐々に添加しながら乳化させ、冷却固化し、油分含量が73質量%の高油分水中油型乳化物である、本発明のバッター練込み用油脂組成物Cを得た。
【0034】
〔実施例4〕
ラード(豚脂)100%に代えて、ナタネ液状油:マスタードオイル(精油)=96:4の混合油脂100%を使用した以外は製造例1と同様にして、油分含有量が73%の高油分水中油型乳化物である、本発明のバッター練込み用油脂組成物Dを得た。
【0035】
〔実施例5〕
ナタネ液状油100%に、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0%、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0%を添加、加温溶解し油相(1)を得た。一方、ナタネ液状油50%に、マスタードオイル(精油)50質量%、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0%、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0%を添加、加温溶解し油相(2)を得た。水のみからなる水相24質量部に、上記油相(1)70質量部を徐々に添加しながら乳化させ、続いて上記油相(2)6質量部を徐々に添加しながら乳化させ、冷却固化し、油分含量が73質量%の高油分水中油型乳化物である、本発明のバッター練込み用油脂組成物Eを得た。
【0036】
〔比較例1〕
上記製造例1における水相24質量部を40質量部に、油相76質量部を60質量部に変更した以外は製造例1と同様にして、油分含量が57.6質量%の水中油型乳化物である比較例のバッター練込み用油脂組成物Fを得た。
【0037】
〔比較例2〕
ラード(豚脂)100%に、グリセリン脂肪酸エステル(HLB2)4.0%を添加、加温溶解し油相を得た。水のみからなる水相24質量部を、上記油相76質量部に徐々に添加しながら乳化させ、マーガリン製造機(コンビネーター)で急冷可塑化し、油分含量が73質量%の油中水型乳化物である比較例のバッター練込み用油脂組成物Gを得た。
【0038】
<分散性試験>
上記の実施例1〜5及び比較例1〜2で得られたバッター練込み用油脂組成物について、下記の方法で分散性試験を行なった。
1,000ml容のステンレスビーカーに30℃の湯600gを入れ、撹拌羽根を使用して泡立たないように400rpmで撹拌しながら、ここへ30℃に加温したバッター練込み用油脂組成物100gを一度に添加し、さらに400rpmで2分混合・分散させた。その際のバッター練込み用油脂組成物の分散性について、下記評価基準に従って4段階で評価した。その結果を表1に記載した。
【0039】
(分散性の評価基準)
◎:極めて良好(撹拌を止めて2分以上たっても乳化層が残る)
○:良好(撹拌を止めると徐々に分離して2分後にははっきりと2層に分かれる)
△:やや悪い(撹拌を止めるとすぐに2層に分かれる)
×:悪い(撹拌しても乳化しない)
【0040】
<バッター液の調製及びフライ試験1>
上記の実施例1〜5及び比較例1〜2で得られたバッター練込み用油脂組成物を使用して、下記の方法でバッター液をそれぞれ調製し、調製した各バッター液について、下記の方法でフライ試験を行なった。
1,000ml容のステンレスビーカーに30℃の湯600gを入れ、撹拌羽根を使用して泡立たないように400rpmで撹拌しながら、ここへ30℃に加温したバッター練込み用油脂組成物100gを一度に添加し、さらに400rpmで2分混合・分散させた。次いで小麦粉300gを投入してさらに2分混合・分散させ、バッター液を調製した。
【0041】
このバッター液に白身魚(タラ)の切り身30gを浸漬し、パン粉を付着させたものを急速冷凍し、−20℃で1週間冷凍保管した。冷凍のまま180℃のフライ油(菜種油使用)で3分間フライしてフライ食品を得た。
このフライ食品のフライ直後の食感(サクサク感、口溶け)と風味(豚脂風味又はマスタードオイル風味)について、下記評価基準に従って4段階で評価した。その結果を表1に記載した。
【0042】
<フライ試験2>
〔実施例6〕
ナタネ液状油100%に、ソルビタンステアリン酸エステル(HLB7)2.0%、グリセリン脂肪酸エステル(HLB4)2.0%を添加、加温溶解し油相を得た。水のみからなる水相24質量部に、上記油相76質量部を徐々に添加しながら乳化させ、冷却固化し、油分含量が73質量%の高油分水中油型乳化物である、本発明のバッター練込み用油脂組成物Hを得た。
【0043】
このバッター練込み用油脂組成物Hを使用して、上記<バッター液の調製及びフライ試験1>と同様の方法でバッター液の調製を行ない、フライ用油脂をラード(豚脂)を使用した以外は上記フライ試験1と同様の方法でフライ試験を行なった。
このフライ食品のフライ直後の食感(サクサク感、口溶け)と風味(豚脂風味)について、下記評価基準に従って4段階で評価した。その結果を表1に記載した。
【0044】
<フライ食品の評価>
食感比較試験は20人のパネラーに、フライ食品を試食させ、食感(サクサク感、口溶け)と風味(豚脂風味又はマスタードオイル風味)について、下記の3点評価をさせ、その合計点を評価点数とし、下記評価基準に当てはめ評価結果とした。
【0045】
食感(サクサク感)
5点:非常にサクサクしていて、極めて良好な食感である
3点:サクサクした箇所が部分的に残っており、ほぼ良好な食感である
1点:しんなりしていて、食感が不良である
【0046】
食感(口溶け)
5点:極めて良好な口溶けである
3点:ほぼ良好な口溶けである
1点:ワキシーであり、不良である
【0047】
(食感の評価基準)
◎ :合計点/人数が4.1点以上5.0点以下
○ :合計点/人数が3.1点以上4.0点以下
△ :合計点/人数が2.1点以上3.0点以下
× :合計点/人数が2.0点以下
【0048】
風味(豚脂風味又はマスタードオイル風味)
5点:風味をはっきりと感じる
3点:風味を若干感じる
1点:風味が感じられない
【0049】
(風味の評価基準)
◎ :合計点/人数が4.1点以上5.0点以下
○ :合計点/人数が3.1点以上4.0点以下
△ :合計点/人数が2.1点以上3.0点以下
× :合計点/人数が2.0点以下
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分含量が60質量%以上である高油分水中油型乳化物であることを特徴とするバッター練込み用油脂組成物。
【請求項2】
香味成分を油相中に含有することを特徴とする請求項1記載のバッター練込み用油脂組成物。
【請求項3】
香味成分を含む油相と、香味成分を含まない油相が混在することを特徴とする請求項1又は2記載のバッター練込み用油脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッター練込み用油脂組成物を3〜30質量%含有してなるバッター液。
【請求項5】
請求項4記載のバッター液を使用したフライ食品。

【公開番号】特開2013−81433(P2013−81433A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224830(P2011−224830)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】