説明

バッチ式熱処理炉

【課題】熱源の省エネルギ化が可能で、スペース効率が高く、被処理物の搬送効率が高く、設備コストが低く、熱損失が小さいバッチ式熱処理炉を提供することを課題とする。
【解決手段】バッチ式熱処理炉1は、低温被処理物Wfが載置される低温部300fと高温被処理物Wrが載置される高温部300rとを有する載置部30と、低温部300fと高温部300rとを仕切って載置部30に立設される仕切部31と、を有する台車3と、台車3が出入り可能な熱処理室500を有し、熱処理室500に台車3が収容されることにより、熱処理室500に、低温被処理物Wfに熱処理を施す低温室500fと、高温被処理物Wrに熱処理を施す高温室500rと、が仕切部31を境に区画されるハウジング5と、を備えてなる。低温室500fの熱源と高温室500rの熱源との少なくとも一部は、熱媒体となるガスが流通することにより、共用化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理温度の異なる二つの被処理物を並行して熱処理可能なバッチ式熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
陶磁器の製造方法は、素焼き工程と施釉工程と本焼成工程とを有している。素焼き工程においては、成形品を加熱することにより、成形品から不純物(水分やカーボンなど)を除去する。施釉工程においては、素焼き後の成形品の表面に、釉薬の膜を形成する。本焼成工程においては、再び成形品を加熱することにより、成形品を焼成させる。このように、陶磁器は、二回の加熱工程(素焼き工程と本焼成工程)を経て、作製される。しかしながら、従来は、素焼き工程用には素焼き窯が、本焼成工程用には本焼成窯が、それぞれ別々に用いられていた。このため、エネルギ消費量が莫大だった。
【0003】
この点、特許文献1には、仮焼炉と本焼炉と熱風ダクトとを備える焼成炉装置が開示されている。仮焼炉と本焼炉とは、熱風ダクトを介して、連結されている。セラミックスの成形品は、仮焼炉にて低温で加熱される。この際、成形品中のパラフィンが蒸発する。続いて、成形品は、本焼炉にて高温で加熱される。この際、成形品が焼成される。
【0004】
本焼炉にて発生する熱風は、熱風ダクトを介して、仮焼炉に導入される。当該熱風は、仮焼炉の熱源として利用される。このため、同文献記載の焼成炉装置によると、仮焼炉の熱源の省エネルギ化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭52−36114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、同文献記載の焼成炉装置によると、二つの被処理物(仮焼用の成形品と本焼用の成形品)に対して、二つの炉(仮焼炉と本焼炉)が必要だった。このため、スペース効率が低かった。また、二つの炉に対して、別個独立に、二つの被処理物を搬入、搬出していた。このため、搬送効率が低かった。
【0007】
また、熱風ダクトを通過する際の熱風の熱損失が大きかった。また、熱損失を小さくするためには、熱風ダクトの断熱性を確保する必要があった。このため、設備コストが高かった。また、熱風ダクトに設置するファンは、常時1300℃程度の熱風に曝されていた。このため、ファンの耐熱性を確保する必要があった。したがって、この点においても、設備コストが高かった。
【0008】
本発明のバッチ式熱処理炉は、上記課題に鑑みて完成されたものである。本発明は、熱源の省エネルギ化が可能で、スペース効率が高く、被処理物の搬送効率が高く、設備コストが低く、熱損失が小さいバッチ式熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するため、本発明のバッチ式熱処理炉は、低温被処理物が載置される低温部と該低温被処理物よりも高い温度で熱処理される高温被処理物が載置される高温部とを有する載置部と、該低温部と該高温部とを仕切って該載置部に立設される仕切部と、を有する台車と、該台車が出入り可能な熱処理室を有し、該熱処理室に該台車が収容されることにより、該熱処理室に、該低温被処理物に熱処理を施す低温室と、該高温被処理物に熱処理を施す高温室と、が該仕切部を境に区画されるハウジングと、を備えてなり、該低温室の熱源と該高温室の熱源との少なくとも一部は、熱媒体となるガスが流通することにより、共用化されることを特徴とする(請求項1に対応)。
【0010】
本発明のバッチ式熱処理炉によると、ガスを媒体として、高温室と低温室との間で、熱を移動させることができる。このため、低温室の余熱を高温室に、あるいは高温室の余熱を低温室に、利用することができる。したがって、熱源の省エネルギ化を図ることができる。
【0011】
また、本発明のバッチ式熱処理炉によると、熱処理室に台車が収容されることにより、熱処理室に、低温室と高温室とを区画することができる。すなわち、単一の熱処理室を、熱処理温度の異なる二つの熱処理室(低温室と高温室)として用いることができる。このため、熱処理温度の異なる二つの被処理物(低温被処理物と高温被処理物)を並行して熱処理することができる。したがって、本発明のバッチ式熱処理炉は、被処理物ごとに専用炉を用いる場合と比較して、スペース効率が高い。
【0012】
また、本発明のバッチ式熱処理炉によると、単一の台車により、低温被処理物を低温室に、高温被処理物を高温室に、一度に搬入することができる。また、単一の台車により、低温被処理物を低温室から、高温被処理物を高温室から、一度に搬出することができる。このため、搬送効率が高い。
【0013】
また、本発明のバッチ式熱処理炉によると、低温室と高温室との間に、敢えて炉外の経路を辿る熱風ダクトを配置する必要がない。このため、設備コストが低い。また、熱損失が小さい。
【0014】
(1−1)好ましくは、上記(1)の構成において、前記ハウジングは、既設のバッチ式熱処理炉のハウジング(単一の熱処理室を有するハウジング)である構成とする方がよい。本構成によると、既設のバッチ式熱処理炉に、台車および付随設備を追加するだけで、本発明のバッチ式熱処理炉を得ることができる。すなわち、既存の単一の熱処理室に、低温室と高温室とを区画することができる。このため、汎用性が高い。また、既設のハウジングを利用する分、バッチ式熱処理炉の設置コストを削減することができる。
【0015】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、前記低温室および前記高温室のうち、一方は前記ガスの流れの上流側に配置される上流側室であり、他方は該上流側室よりも下流側に配置される下流側室であり、前記ハウジングは、該下流側室と該ハウジングの外部とを連通するハウジング第一流路を有し、前記載置部は、前記低温部と前記高温部とを連通する台車第一流路を有し、該台車第一流路を介して該上流側室から該下流側室に該ガスを案内し、該ハウジング第一流路を介して該下流側室から該外部に該ガスを案内する構成とする方がよい(請求項2に対応)。
【0016】
本構成によると、ガスは、上流側室→台車第一流路→下流側室→ハウジング第一流路→外部という経路(以下、適宜、「第一経路」と称す。)を辿って、流通する。すなわち、ガスは、載置部の台車第一流路を介して、つまり仕切部をくぐって、上流側室から下流側室に流通する。下流側室のガスは、ハウジング第一流路を介して、外部に放出される。このように、本構成によると、ガスは、上流側室から、下流側室を経由して、外部に放出される。したがって、上流側室の余熱を下流側室に利用することができる。
【0017】
(3)好ましくは、上記(2)の構成において、前記載置部は、前記台車第一流路から分岐する台車第二流路を有し、前記ハウジングは、該台車第二流路と前記外部とを連通するハウジング第二流路を有し、該台車第二流路および該ハウジング第二流路を介して該台車第一流路から該外部に前記ガスの少なくとも一部を案内する構成とする方がよい(請求項3に対応)。
【0018】
本構成によると、ガスは、上記第一経路に加えて、上流側室→台車第一流路→台車第二流路→ハウジング第二流路→外部という経路(以下、適宜、「第二経路」と称す。)を辿って、流通する。すなわち、下流側室を経由する第一経路と、下流側室を迂回する第二経路と、いう二つのガス流通経路が設定される。このため、第一経路だけの場合と比較して、下流側室の熱処理温度を容易に調整することができる。
【0019】
(4)好ましくは、上記(3)の構成において、前記ハウジングは、前記ハウジング第一流路を流れる前記ガスの流量を調整可能な第一調整部と、前記ハウジング第二流路を流れる該ガスの流量を調整可能な第二調整部と、を有する構成とする方がよい(請求項4に対応)。本構成によると、下流側室に流れ込むガスの流量を調整することができる。このため、下流側室の熱処理温度を緻密に調整することができる。
【0020】
(5)好ましくは、上記(2)ないし(4)のいずれかの構成において、前記上流側室は前記高温室であり、前記下流側室は前記低温室である構成とする方がよい(請求項5に対応)。本構成によると、高温室が低温室よりも上流側に配置されている。このため、高温のガスを低温室に導入することができる。したがって、低温室を加熱しやすい。
【0021】
(6)好ましくは、上記(1)ないし(5)のいずれかの構成において、前記低温被処理物は素焼き用陶磁器であり、前記高温被処理物は本焼成用陶磁器であり、該素焼き用陶磁器を素焼きする素焼き工程と、該本焼成用陶磁器を本焼成する本焼成工程と、を並行して行う構成とする方がよい(請求項6に対応)。
【0022】
陶磁器の製造方法は、素焼き工程と本焼成工程とを有している。素焼き工程においては、成形品を加熱することにより、成形品から不純物(水分やカーボンなど)を除去する。本焼成工程においては、素焼き工程の加熱温度よりも高い加熱温度で当該成形品を加熱することにより、成形品を焼成させる。素焼き工程と本焼成工程とは、順番に行われている。
【0023】
この点、本構成によると、素焼き工程と本焼成工程とを並行して行うことができる。すなわち、素焼き工程の熱処理と本焼成工程の熱処理との少なくとも一部を、同期して行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、熱源の省エネルギ化が可能で、スペース効率が高く、被処理物の搬送効率が高く、設備コストが低く、熱損失が小さいバッチ式熱処理炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態となるバッチ式熱処理炉の前後方向断面図である。
【図2】図1のII−II方向断面図である。
【図3】図1のIII−III方向断面図である。
【図4】図1のIV−IV方向断面図である。
【図5】図1のV−V方向断面図である。
【図6】同バッチ式熱処理炉の台車の斜視図である。
【図7】同台車の分解斜視図である。
【図8】同バッチ式熱処理炉のハウジングの斜視図である。
【図9】同ハウジングの透過斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のバッチ式熱処理炉の実施の形態について説明する。
【0027】
<構成>
まず、本実施形態のバッチ式熱処理炉の構成について説明する。図1に、本実施形態のバッチ式熱処理炉の前後方向断面図を示す。図2に、図1のII−II方向断面図を示す。図3に、図1のIII−III方向断面図を示す。図4に、図1のIV−IV方向断面図を示す。図5に、図1のV−V方向断面図を示す。図1〜図5に示すように、本実施形態のバッチ式熱処理炉1は、十個の上流側バーナ2rと、六個の下流側バーナ2fと、台車3と、ハウジング5と、を備えている。
【0028】
[台車3]
図6に、本実施形態のバッチ式熱処理炉の台車の斜視図を示す。図7に、同台車の分解斜視図を示す。図1〜図7に示すように、台車は、載置部30と、仕切部31と、一対の車輪部32f、32rと、一対の台車遮蔽板33L、33Rと、を備えている。
【0029】
(載置部30)
図7、図5に示すように、載置部30は、第一層部302と、第二層部303と、第三層部304と、第四層部305と、第五層部306と、第六層部307と、横梁部308と、台車第一流路A1と、台車第二流路A2と、を備えている。
【0030】
第一層部302は、組み合わせられた多数の耐火煉瓦により形成されている。第一層部302は、長方形板状を呈している。第一層部302は、低温部300fと、高温部300rと、六個の下流側縦孔302fと、十五個の上流側縦孔302rと、を備えている。低温部300fは、第一層部302の上面に配置されている。低温部300fは、後述する仕切部31の前方に配置されている。低温部300fには、素焼き用陶磁器Wfが載置されている。高温部300rは、第一層部302の上面に配置されている。高温部300rは、後述する仕切部31の後方に配置されている。高温部300rには、本焼成用陶磁器Wrが載置されている。六個の下流側縦孔302fは、低温部300fに配置されている。六個の下流側縦孔302fは、第一層部302を上下方向に貫通している。十五個の上流側縦孔302rは、高温部300rに配置されている。十五個の上流側縦孔302rは、第一層部302を上下方向に貫通している。
【0031】
第二層部303は、組み合わせられた多数の耐火断熱煉瓦により形成されている。第二層部303は、第一層部302の下方に積層されている。第二層部303は、枠材部303aと、六個の角材部303bと、を備えている。枠材部303aは、前方に開口する「C」字状を呈している。六個の角材部303bは、枠材部303aの内側に配置されている。六個の角材部303bは、三個ずつ、左右方向二列に並んで配置されている。各列は、前後方向に延在している。枠材部303aおよび六個の角材部303bは、互いに所定間隔ずつ離間して配置されている。
【0032】
第三層部304は、組み合わせられた多数の耐火断熱煉瓦により形成されている。第三層部304は、第二層部303の下方に積層されている。第三層部304は、一対の長尺角材部304aと、六個の角材部304bと、を備えている。一対の長尺角材部304aは、枠材部303aの左右両縁に沿って配置されている。六個の角材部304bは、一対の長尺角材部304aの間に配置されている。六個の角材部304bは、三個ずつ、左右方向二列に並んで配置されている。各列は、前後方向に延在している。一対の長尺角材部304aおよび六個の角材部304bは、互いに所定間隔ずつ離間して配置されている。
【0033】
第四層部305は、組み合わせられた多数の耐火断熱煉瓦により形成されている。第四層部305は、第三層部304の下方に積層されている。第四層部305は、一対の長尺角材部305aと、六個の角材部305bと、を備えている。一対の長尺角材部305aは、一対の長尺角材部304aに沿って配置されている。六個の角材部305bは、一対の長尺角材部305aの間に配置されている。六個の角材部305bは、三個ずつ、左右方向二列に並んで配置されている。各列は、前後方向に延在している。一対の長尺角材部305aおよび六個の角材部305bは、互いに所定間隔ずつ離間して配置されている。
【0034】
第五層部306は、鋼製であって長方形板状を呈している。第五層部306は、第四層部305の下方に積層されている。第二層部303、第三層部304、第四層部305を構成する各部材の配置により、第一層部302と第五層部306との間には、図5に点線で示すように、隙間309が区画されている。隙間309を介して、六個の下流側縦孔302fと十五個の上流側縦孔302rとは、連通している。隙間309は、前方に開口している。図7に示すように、第六層部307は、鋼製であって長方形板状を呈している。第六層部307は、第五層部306の下方に積層されている。
【0035】
横梁部308は、耐火断熱煉瓦製であって、左右方向に延びる角柱状を呈している。図1に示すように、横梁部308は、第五層部306の後縁上面と、第二層部303の後縁下面との間に介装されている。
【0036】
図1、図5に示すように、台車第一流路A1は、十五個の上流側縦孔302rと、隙間309の一部(最前列の下流側縦孔302fよりも後方部分)と、六個の下流側縦孔302fと、により形成されている。台車第二流路A2は、隙間309の残部(最前列の下流側縦孔302fよりも前方部分)に形成されている。
【0037】
(仕切部31)
図3、図6、図7に示すように、仕切部31は、長方形板状を呈している。仕切部31は、組み合わせられた多数の耐火断熱煉瓦により形成されている。仕切部31は、第一層部302の上面に、立設されている。前述したように、仕切部31の前方には低温部300fが配置されている。また、仕切部31の後方には高温部300rが配置されている。
【0038】
(車輪部32f、32r)
図3、図7に示すように、車輪部32fは、回転可能な左右一対の車輪を備えている。車輪部32fは、第六層部307の下面前方に配置されている。車輪部32rは、回転可能な左右一対の車輪を備えている。車輪部32rは、第六層部307の下面後方に配置されている。車輪部32f、32rにより、台車3は前後方向に移動可能である。
【0039】
(台車遮蔽板33L、33R)
図3、図7に示すように、台車遮蔽板33Lは、長方形板状を呈している。台車遮蔽板33Lは、第六層部307の下面から突設されている。台車遮蔽板33Lは、車輪部32f、32rの左方に配置されている。台車遮蔽板33Rは、長方形板状を呈している。台車遮蔽板33Rは、第六層部307の下面から突設されている。台車遮蔽板33Rは、車輪部32f、32rの右方に配置されている。
【0040】
[ハウジング5]
図8に、本実施形態のバッチ式熱処理炉のハウジングの斜視図を示す。図9に、同ハウジングの透過斜視図を示す。図1〜図5、図8、図9に示すように、ハウジング5は、外壁部57と、断熱壁部58と、熱処理部50と、煙道部51と、煙突部52と、一対のハウジング遮蔽板53L、53Rと、レール54と、基部55と、扉部56と、ハウジング第一流路a1と、ハウジング第二流路a2と、第一ダンパb1と、第二ダンパb2と、を備えている。第一ダンパb1は、本発明の第一調整部に含まれる。第二ダンパb2は、本発明の第二調整部に含まれる。
【0041】
(外壁部57、断熱壁部58)
外壁部57は、複数の鋼板により形成されている。断熱壁部58は、組み合わせられた多数の耐火断熱煉瓦により形成されている。断熱壁部58の大半は、内張り状に外壁部57の内面に固定されている。これら外壁部57、断熱壁部58により、ハウジング5の外殻が形成される。
【0042】
(熱処理部50)
図1に示すように、熱処理部50は、外壁部57と断熱壁部58とにより形成されている。熱処理部50は、角筒状を呈している。図1、図3、図5、図9に示すように、熱処理部50は、熱処理室500と、一対の側柱部501L、501Rと、を備えている。熱処理室500は、熱処理部50の内部に区画されている。左方の側柱部501Lは、熱処理室500の左面の前後方向中央よりもやや前寄りに配置されている。右方の側柱部501Rは、熱処理室500の右面の前後方向中央よりもやや前寄りに配置されている。一対の側柱部501L、501Rは、左右方向に対向している。
【0043】
図3、図5に示すように、熱処理室500に台車3が収容されると、台車3の仕切部31が、ちょうど一対の側柱部501L、501Rの間に配置される。このため、仕切部31により、熱処理室500に、上流側室(高温室)500rと下流側室(低温室)500fとが区画される。図1に示すように、上流側室500rと下流側室500fとは、台車第一流路A1により連通している。上流側室500rの容積は、1.5mである。下流側室500fの容積は、0.75mである。
【0044】
(煙道部51)
煙道部51は、外壁部57と断熱壁部58とにより形成されている。図8に示すように、煙道部51は、上方から見て、前方に突出する「凸」字状を呈している。煙道部51は、スリット部59aを介して、熱処理部50の前方に配置されている。図1、図9(ハッチング部分)に示すように、煙道部51は、縦孔510と、第一横孔511と、第二横孔512と、第三横孔513と、を備えている。縦孔510は、煙道部51の左右方向中央部分に配置されている。縦孔510は、上下方向に延在している。縦孔510は、上方に開口している。第一横孔511は、前後方向に延在している。第一横孔511は、縦孔510の上部から後方に延在している。第一横孔511は、下流側室500fの前面上部に開口している。第二横孔512は、前後方向に延在している。第二横孔512は、縦孔510の下部から後方に延在している。第二横孔512は、下流側室500fよりも下方において開口している。第二横孔512は、台車第二流路A2に繋がっている。第三横孔513は、前後方向に延在している。第三横孔513は、縦孔510の上部から前方に延在している。第三横孔513は、ハウジング5の外部に開口している。
【0045】
(煙突部52)
図1、図8、図9に示すように、煙突部52は、角錘部520と、円筒部521と、を備えている。角錘部520は、鋼製であって四角錐筒状を呈している。角錘部520は、煙道部51の上方に配置されている。角錘部520は、縦孔510の開口を覆っている。円筒部521は、鋼製である。円筒部521は、角錘部520の上方に連なっている。円筒部521の上端は、ハウジング5の外部に開口している。
【0046】
(ハウジング第一流路a1、ハウジング第二流路a2)
図1に示すように、ハウジング第一流路a1は、第一横孔511と、縦孔510の一部(第一横孔511よりも上方部分)と、煙突部52と、により形成されている。ハウジング第二流路a2は、第二横孔512と、縦孔510の一部(第二横孔512よりも上方部分)と、煙突部52と、により形成されている。
【0047】
(第一ダンパb1、第二ダンパb2)
第一ダンパb1は、セラミックファイバーボード製であって長方形板状を呈している。図1に示すように、熱処理部50と煙道部51との間には、スリット部59aを渡る架橋部59bが架設されている。架橋部59bの内部には、第一横孔511が区画されている。第一ダンパb1は、架橋部59bの上方に配置されている。第一ダンパb1を上下動させることにより、第一横孔511つまりハウジング第一流路a1の流路断面積を調整することができる。このため、ハウジング第一流路a1を流れる燃焼ガスGの流量を調整することができる。
【0048】
第二ダンパb2は、セラミックファイバーボード製であって長方形板状を呈している。図1に示すように、第二ダンパb2は、煙道部51の前方に配置されている。第二ダンパb2を前後動させることにより、縦孔510における第一横孔511分岐部分よりも上流側の部分、つまりハウジング第二流路a2の流路断面積を調整することができる。このため、ハウジング第二流路a2を流れる燃焼ガスGの流量を調整することができる。
【0049】
(基部55、レール54)
基部55は、鋼製であって、前後方向に延びる長方形板状を呈している。図1〜図4に示すように、基部55は、外壁部57の底板の上方に積層されている。図9に示すように、バッチ式熱処理炉1の外部であって、基部55の後方には、外部基部90が連なっている。
【0050】
レール54は、基部55に敷設されている。レール54は、前後方向に延在している。バッチ式熱処理炉1の外部であって、レール54の後方には、外部レール91が連なっている。外部レール91は、外部基部90に敷設されている。
【0051】
台車3の一対の車輪部32f、32rは、レール54および外部レール91に沿って、前後方向に移動可能である。このため、台車3は、熱処理室500に対して、後方から出入り可能である。
【0052】
(ハウジング遮蔽板53L、53R)
図1〜図3、図9に示すように、ハウジング遮蔽板53Lは、長方形板状を呈している。ハウジング遮蔽板53Lは、基部55から立設されている。ハウジング遮蔽板53Lは、台車遮蔽板33Lと車輪部32f、32rとの間に介装されている。ハウジング遮蔽板53Rは、長方形板状を呈している。ハウジング遮蔽板53Rは、基部55から立設されている。ハウジング遮蔽板53Rは、台車遮蔽板33Rと車輪部32f、32rとの間に介装されている。
【0053】
(扉部56)
図5、図8に示すように、扉部56は、後壁部560と断熱壁部561とを備えている。扉部56は、熱処理部50の後壁の開口部500aを、開閉可能に覆っている。後壁部560は、鋼製であって長方形板状を呈している。断熱壁部561は、組み合わせられた多数の耐火断熱煉瓦により形成されている。断熱壁部561は、後壁部560の前面に配置されている。扉部56は、熱処理室500に台車3を出し入れする際に開かれる。
【0054】
[上流側バーナ2r、下流側バーナ2f]
図2、図5、図9に示すように、上流側バーナ2rは、上方に開口している。上流側バーナ2rは、上流側室500rおよび下流側室500fの熱源である。上流側バーナ2rからは、燃焼ガスGが供給される。上流側バーナ2rは、合計十個配置されている。このうち五個の上流側バーナ2rは、上流側室500rの左面に沿って配置されている。残りの五個の上流側バーナ2rは、上流側室500rの右面に沿って配置されている。
【0055】
下流側バーナ2fは、上方に開口している。下流側バーナ2fは、下流側室500fの熱源である。下流側バーナ2fからは、燃焼ガスGが供給される。下流側バーナ2fは、合計六個配置されている。このうち三個の下流側バーナ2fは、下流側室500fの左面に沿って配置されている。残りの三個の下流側バーナ2fは、下流側室500fの右面に沿って配置されている。
【0056】
<バッチ式熱処理炉の動き>
次に、熱処理を行う際の本実施形態のバッチ式熱処理炉1の動きについて説明する。まず、炉外において、台車3の低温部300fに素焼き用陶磁器Wfを搭載する。並びに、台車3の高温部300rに本焼成用陶磁器Wrを搭載する。次に、扉部56を開き、開口部500aを介して、台車3を熱処理室500に収容する。続いて、扉部56を閉じる。台車3の仕切部31は、一対の側柱部501L、501Rの間に配置される。このため、仕切部31により、熱処理室500に下流側室500fと上流側室500rとが区画される。下流側室500fには、素焼き用陶磁器Wfが収容される。上流側室500rには、本焼成用陶磁器Wrが収容される。
【0057】
それから、上流側バーナ2rに点火する。上流側バーナ2rからは、高温の燃焼ガスGが噴射される。上流側室500rでは、当該燃焼ガスGを用いて本焼成工程を行う。具体的には、燃焼ガスGにより、上流側室500rの温度を、1300℃まで昇温させる。なお、昇温速度は80℃/時である。また、昇温時間は16時間である。続いて、上流側室500rの温度を、1300℃のまま、3時間保持する。そして、冷却する。このようにして、本焼成用陶磁器Wrを焼成させる。
【0058】
また、下流側室500fでは、当該燃焼ガスGを用いて、本焼成工程に並行して、素焼き工程を行う。上流側室500rの燃焼ガスGは、台車第一流路A1を経由して、下流側室500fに流れ込む。当該燃焼ガスGにより、下流側室500fの温度を、900℃まで昇温させる。なお、昇温速度は50℃/時である。また、昇温時間は18時間である。続いて、下流側室500fの温度を、900℃のまま、1時間保持する。そして、冷却する。このようにして、素焼き用陶磁器Wfから水分やカーボンなどの不純物を除去する。
【0059】
最後に、扉部56を開け、台車3を熱処理室500から退出させる。そして、本焼成工程後の本焼成用陶磁器Wrを回収する。並びに、素焼き工程後の素焼き用陶磁器Wfを回収する。なお、次回のバッチにおいては、素焼き工程後の素焼き用陶磁器Wfの表面を釉薬で覆ったものが、本焼成用陶磁器Wrとして、上流側室500rに搬入される。
【0060】
<下流側室の熱処理温度の調整方法>
次に、下流側室500fの熱処理温度の調整方法について説明する。上述したように、熱処理を行う場合は、下流側室500fの熱処理温度を、所定の温度パターンで変化させる必要がある。
【0061】
下流側室500fの熱処理温度は、下流側室500fに配置した温度計(図略、例えば熱電対など)により検出される。下流側室500fの熱処理温度は、燃焼ガスGの流量により調整される。下流側室500fの熱処理温度を上げたい場合、あるいは下げたくない場合は、第二ダンパb2の開度を小さくする。すなわち、台車第二流路A2およびハウジング第二流路a2を流れる燃焼ガスGの流量を小さくする。並びに、第一ダンパb1の開度を大きくする。すなわち、台車第一流路A1およびハウジング第一流路a1を流れる燃焼ガスGの流量を大きくする。こうすることにより、大量の燃焼ガスGを下流側室500fに供給することができる。このため、下流側室500fの熱処理温度を上げることができる。あるいは、下流側室500fの熱処理温度が下がるのを、抑制することができる。
【0062】
また、下流側バーナ2fに点火し、下流側バーナ2fから燃焼ガスGを供給することによっても、下流側室500fの熱処理温度を上げることができる。あるいは、下流側室500fの熱処理温度が下がるのを、抑制することができる。
【0063】
下流側室500fの熱処理温度を下げたい場合、あるいは上げたくない場合は、第二ダンパb2の開度を大きくする。すなわち、台車第二流路A2およびハウジング第二流路a2を流れる燃焼ガスGの流量を大きくする。並びに、第一ダンパb1の開度を小さくする。すなわち、台車第一流路A1およびハウジング第一流路a1を流れる燃焼ガスGの流量を小さくする。こうすることにより、燃焼ガスGが下流側室500fに流れ込むのを抑制することができる。このため、下流側室500fの熱処理温度を下げることができる。あるいは、下流側室500fの熱処理温度が上がるのを、抑制することができる。
【0064】
また、下流側バーナ2fから外気を導入することによっても、下流側室500fの熱処理温度を下げることができる。あるいは、下流側室500fの熱処理温度が上がるのを、抑制することができる。
【0065】
<作用効果>
次に、本実施形態のバッチ式熱処理炉1の作用効果について説明する。本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、熱処理室500に台車3が収容されることにより、熱処理室500に、下流側室(低温室)500fと上流側室(高温室)500rとを区画することができる。すなわち、単一の熱処理室500を、熱処理温度の異なる二つの熱処理室(下流側室500fと上流側室500r)として用いることができる。このため、熱処理温度の異なる二つの被処理物(素焼き用陶磁器Wfと本焼成用陶磁器Wr)を並行して熱処理することができる。したがって、本実施形態のバッチ式熱処理炉1は、素焼き窯と本焼成窯とを併用する場合と比較して、スペース効率が高い。
【0066】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、単一の台車3により、素焼き用陶磁器Wfを下流側室500fに、本焼成用陶磁器Wrを上流側室500rに、一度に搬入することができる。また、単一の台車3により、素焼き用陶磁器Wfを下流側室500fから、本焼成用陶磁器Wrを上流側室500rから、一度に搬出することができる。このため、搬送効率が高い。
【0067】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、ハウジング5として、既設のバッチ式熱処理炉のハウジング(単一の熱処理室500を有するハウジング)を転用している(ちなみに、図5、図9に示すように、前から数えて四つ目のバーナは、側柱部501L、501Rにより塞がれている。)。このため、既設のバッチ式熱処理炉に、台車3および付随設備(例えば、側柱部501L、501R、レール54など)を追加するだけで、本実施形態のバッチ式熱処理炉1を得ることができる。すなわち、既存の単一の熱処理室500に、下流側室500fと上流側室500rとを区画することができる。このため、汎用性が高い。また、既設のハウジングを利用する分、バッチ式熱処理炉1の設置コストを削減することができる。
【0068】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、燃焼ガスGは、上流側室500r→台車第一流路A1→下流側室500f→ハウジング第一流路a1→外部という第一経路を辿って、流通する。このため、上流側室500rの余熱を下流側室500fに利用することができる。したがって、下流側バーナ2fの省エネルギ化を図ることができる。特に、上流側室500rの熱処理温度と、下流側室500fの熱処理温度と、の間の温度差が大きい場合は、省エネルギ化の効果が顕著になる。また、下流側バーナ2fの使用頻度が減る分、二酸化炭素の発生量を削減することができる。このため、環境保護性に優れている。
【0069】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、下流側室500fと上流側室500rとの間に、敢えて炉外の経路を辿る熱風ダクトを配置する必要がない。このため、設備コストが低い。また、熱損失が小さい。
【0070】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、燃焼ガスGは、上記第一経路に加えて、上流側室500r→台車第一流路A1→台車第二流路A2→ハウジング第二流路a2→外部という第二経路を辿って、流通する。すなわち、下流側室500fを経由する第一経路と、下流側室500fを迂回する第二経路と、いう二つのガス流通経路が設定される。このため、第一経路だけの場合と比較して、下流側室500fの熱処理温度を容易に調整することができる。
【0071】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、第一ダンパb1、第二ダンパb2により、下流側室500fに流れ込む燃焼ガスGの流量を調整することができる。このため、下流側室500fの熱処理温度を緻密に調整することができる。また、第一ダンパb1、第二ダンパb2により、上流側室500rの雰囲気(本焼成工程の焼成雰囲気)を調整することができる。
【0072】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、上流側室500rが高温室に、下流側室500fが低温室に、それぞれ相当する。このため、高温の燃焼ガスGを低温室に導入することができる。したがって、低温室を加熱しやすい。
【0073】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、素焼き工程と本焼成工程とを並行して行うことができる。すなわち、素焼き工程の熱処理と本焼成工程の熱処理とを、同期して行うことができる。
【0074】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、素焼き工程に要する時間と、本焼成工程に要する時間と、が一致している。このため、双方の工程に要する時間が一致していない場合と比較して、工程完了後の被処理物を、工程未完了の被処理物のために、熱処理室500内で待機させる必要がない。
【0075】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、図2に示すように、載置部30の左右両面と、載置部30の左右方向両側の断熱壁部58と、の間には、ジグザグ状の隙間(いわゆるラビリンスシール)が区画されている。並びに、載置部30の下面と基部55の上面との間には、台車遮蔽板33L、33Rとハウジング遮蔽板53L、53Rとにより、ジグザグ状の隙間(いわゆるラビリンスシール)が区画されている。このため、熱処理室500から車輪部32f、32rまでの距離を冗長化することができる。したがって、車輪部32f、32rに熱処理室500からの熱が伝わりにくい。
【0076】
また、素焼き用陶磁器Wfは、表面に何も処理が施されていない。このため、低温部300fに積み重ねて配置することができる。これに対して、本焼成用陶磁器Wrは、表面に釉薬の膜が形成されている。本焼成用陶磁器Wrを高温部300rに積み重ねて配置すると、重なり合う本焼成用陶磁器Wr同士が融結するおそれがある。このため、高温部300rに積み重ねて配置することができない。この点、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、本焼成工程用の上流側室500rの容積が、1.5mに設定されている。一方、素焼き工程用の下流側室500fの容積が、0.75mに設定されている。すなわち、上流側室500rの容積は、下流側室500fの容積の二倍である。このため、本焼成用陶磁器Wrを高温部300rに密に配置する必要がない。したがって、隣り合う本焼成用陶磁器Wr同士が融結するおそれが小さい。
【0077】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、図1に示すように、第三横孔513が配置されている。このため、縦孔510に外気を導入することができる。したがって、煙突部52から外部に排出される燃焼ガスGの温度を、下げることができる。また、高温の燃焼ガスGにより、煙突部52が過熱されるのを、抑制することができる。このため、煙突部52を保護することができる。
【0078】
また、本実施形態のバッチ式熱処理炉1によると、ハウジング第一流路a1つまり第一横孔511は、下流側室500fの上部に開口している。一方、台車第一流路A1つまり下流側縦孔302fは、下流側室500fの下部に開口している。このため、素焼き用陶磁器Wfに、まんべんなく燃焼ガスGを行き渡らせることができる。また、高温の燃焼ガスGは密度が小さいため、上昇しやすい。このため、下流側室500fの下部に台車第一流路A1の出口を、上部にハウジング第一流路a1の入口を、それぞれ設けると、燃焼ガスGが流動しやすい。
【0079】
<その他>
以上、本発明のバッチ式熱処理炉1の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である
例えば、下流側室500fの熱処理温度を調整するために、ハウジング5に、下流側室500fと外部とを連通する外気導入管を配置してもよい。こうすると、外気導入管から外気を導入することにより、下流側室500fの熱処理温度を下げることができる。あるいは、下流側室500fの熱処理温度が上がるのを、抑制することができる。また、ハウジング5に、上流側室500rと外部とを連通する外気導入管を配置してもよい。また、上流側バーナ2rから外気を導入してもよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、本焼成工程の熱処理時間と素焼き工程の熱処理時間とを一致させたが、これらの熱処理時間を一致させなくてもよい。また、上記実施形態においては、高温室を上流側室500rに、低温室を下流側室500fに、それぞれ対応させたが、高温室を下流側室500fに、低温室を上流側室500rに、それぞれ対応させてもよい。この場合は、下流側バーナ2fを追い炊きすることにより、高温室の熱処理温度を確保すればよい。
【0081】
また、上記実施形態においては、熱処理の熱源として上流側バーナ2r、下流側バーナ2fを用いたが、熱源として電気ヒータなどを用いてもよい。この場合は、熱源により加熱された上流側室500rの雰囲気ガスが、本発明のガスに相当する。
【0082】
また、熱処理室500の雰囲気も特に限定しない。被処理物の種類に応じて、酸化雰囲気、還元雰囲気(Hガスなど)、不活性雰囲気(Ar、Heなど)とすればよい。好ましくは、酸化雰囲気、不活性雰囲気とする方がよい。その理由は、還元雰囲気の場合、上流側室500rで燃え残った未燃ガスが、下流側室500fで燃焼し、下流側室500fの温度が上昇するおそれがあるからである。すなわち、下流側室500fの温度制御が困難になるからである。
【0083】
また、上記実施形態においては、被処理物として陶磁器を用いたが、電子部品、電池材料、化学材料などを用いてもよい。特に、本発明のバッチ式熱処理炉は、複数段階(三段階以上であってもよい。)の熱処理が必要な被処理物に対して、そのうち二段階の熱処理を並行して施す際に、好適に用いることができる。
【0084】
また、上記実施形態においては、第一調整部として第一ダンパb1を、第二調整部として第二ダンパb2を、それぞれ用いたが、第一調整部、第二調整部として、バルブを用いてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1:バッチ式熱処理炉、2f:下流側バーナ、2r:上流側バーナ、3:台車、5:ハウジング。
30:載置部、31:仕切部、32f:車輪部、32r:車輪部、33L:台車遮蔽板、33R:台車遮蔽板、50:熱処理部、51:煙道部、52:煙突部、53L:ハウジング遮蔽板、53R:ハウジング遮蔽板、54:レール、55:基部、56:扉部、57:外壁部、58:断熱壁部、59a:スリット部、59b:架橋部、90:外部基部、91:外部レール。
300f:低温部、300r:高温部、302:第一層部、302f:下流側縦孔、302r:上流側縦孔、303:第二層部、303a:枠材部、303b:角材部、304:第三層部、304a:長尺角材部、304b:角材部、305:第四層部、305a:長尺角材部、305b:角材部、306:第五層部、307:第六層部、308:横梁部、309:隙間、500:熱処理室、500a:開口部、500f:下流側室(低温室)、500r:上流側室(高温室)、501L:側柱部、501R:側柱部、510:縦孔、511:第一横孔、512:第二横孔、513:第三横孔、520:角錘部、521:円筒部、560:後壁部、561:断熱壁部。
A1:台車第一流路、A2:台車第二流路、G:燃焼ガス(ガス)、Wf:素焼き用陶磁器、Wr:本焼成用陶磁器、a1:ハウジング第一流路、a2:ハウジング第二流路、b1:第一ダンパ(第一調整部)、b2:第二ダンパ(第二調整部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温被処理物が載置される低温部と該低温被処理物よりも高い温度で熱処理される高温被処理物が載置される高温部とを有する載置部と、該低温部と該高温部とを仕切って該載置部に立設される仕切部と、を有する台車と、
該台車が出入り可能な熱処理室を有し、該熱処理室に該台車が収容されることにより、該熱処理室に、該低温被処理物に熱処理を施す低温室と、該高温被処理物に熱処理を施す高温室と、が該仕切部を境に区画されるハウジングと、
を備えてなり、
該低温室の熱源と該高温室の熱源との少なくとも一部は、熱媒体となるガスが流通することにより、共用化されるバッチ式熱処理炉。
【請求項2】
前記低温室および前記高温室のうち、一方は前記ガスの流れの上流側に配置される上流側室であり、他方は該上流側室よりも下流側に配置される下流側室であり、
前記ハウジングは、該下流側室と該ハウジングの外部とを連通するハウジング第一流路を有し、
前記載置部は、前記低温部と前記高温部とを連通する台車第一流路を有し、
該台車第一流路を介して該上流側室から該下流側室に該ガスを案内し、該ハウジング第一流路を介して該下流側室から該外部に該ガスを案内する請求項1に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項3】
前記載置部は、前記台車第一流路から分岐する台車第二流路を有し、
前記ハウジングは、該台車第二流路と前記外部とを連通するハウジング第二流路を有し、
該台車第二流路および該ハウジング第二流路を介して該台車第一流路から該外部に前記ガスの少なくとも一部を案内する請求項2に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記ハウジング第一流路を流れる前記ガスの流量を調整可能な第一調整部と、前記ハウジング第二流路を流れる該ガスの流量を調整可能な第二調整部と、を有する請求項3に記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項5】
前記上流側室は前記高温室であり、前記下流側室は前記低温室である請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のバッチ式熱処理炉。
【請求項6】
前記低温被処理物は素焼き用陶磁器であり、前記高温被処理物は本焼成用陶磁器であり、該素焼き用陶磁器を素焼きする素焼き工程と、該本焼成用陶磁器を本焼成する本焼成工程と、を並行して行う請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のバッチ式熱処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−158201(P2011−158201A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21182(P2010−21182)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(390008431)高砂工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】