説明

バッテリーケース用ハウジング

【課題】金型腐食性、物性低下、外観不良等の問題を改善し、かつ臭素や塩素等のハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤を使用せず、薄肉であっても優れた難燃性を有するポリカーボネート樹脂製バッテリーケース用ハウジングの提供
【解決手段】難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなるバッテリーケース用ハウジングであって、該組成物がポリカーボネート樹脂(A)100重量部、硫酸二価金属塩(B)0.03〜10.0重量部、特定のシリコーン化合物(C)0.01〜5.0重量部、有機金属塩化合物(D)0.01〜2.0重量部および繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)0.05〜5.0重量部からなり、該組成物を成形してなる厚さ0.8mmの試験片を用いて燃焼試験を行ったときV−0等級を有することを特徴とするバッテリーケース用ハウジング。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーケース用ハウジングに関する。更に詳しくは、耐衝撃性、耐熱性、熱安定性、および外観に優れ、かつ薄肉であっても優れた難燃性を有するポリカーボネート樹脂製バッテリーケース用ハウジングを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯情報端末機器、ゲーム機、ノートタイプのパーソナルコンピュータなどの普及に伴い、これら機器に使用されるバッテリーケース用ハウジングも時代の趨勢である軽薄短小の流れのなかにあって薄肉であっても難燃性に優れ、かつ耐衝撃性、耐熱性、熱安定性および外観等の諸性能も満足することが求められている。
【0003】
上記の要求を満足させるため、バッテリーケース用ハウジングに用いる樹脂材料としてポリカーボネート樹脂が注目されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は耐衝撃性、耐熱性、熱安定性等に優れ、かつ自己消火性を備えた難燃性の高いプラスチック材料ではあるが、バッテリーケース用ハウジングの用途では薄肉、特に厚さ0.8mmであってもアンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価においてV−0相当のより一層高い難燃性が求められている。
【0004】
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与させる手法として、従来、難燃剤として塩素や臭素系化合物、あるいはリン系化合物を配合する方法が採用されている。しかし、塩素や臭素系難燃剤は、優れた難燃効果を示すものの、射出成形時に成形機スクリューや製品金型を腐食させる等の問題があった。また、リン系難燃剤は縮合リン酸エステル系難燃剤を中心に使用されているが、耐熱性あるいは衝撃強度の極端な低下が発生するという問題があった。これら著しい物性低下や環境面への配慮から、臭素や塩素等のハロゲン系化合物およびリン系化合物を含有しない難燃剤の使用が望まれている。
【0005】
上記難燃剤を使用せず難燃化する方法として、芳香族スルホン酸金属塩を添加する方法(特許文献1)やパーフルオロアルカンスルホン酸カリウムを添加する方法(特許文献2)、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩とフッ素化ポリオレフィンを添加する方法(特許文献3)、又、シリコーン樹脂を添加する方法(特許文献4)などの提案がされてきた。これらの手法を用いることにより、UL94試験に準拠した難燃性の評価において、燃焼時間の減少効果および燃焼時における樹脂の滴下(ドリッピング)抑制効果はある程度認められるものの、バッテリーケース用ハウジングの用途においては防火安全上の要求を満たすには十分ではなく、より一層優れた難燃性を有する材料の開発が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開昭50−98546号公報
【特許文献2】特公昭47−40445号公報
【特許文献3】特開昭51−45159号公報
【特許文献4】特開平10−139964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の金型腐食性、物性低下、外観不良等の問題を改善し、かつ臭素や塩素等のハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤を使用せず、薄肉であっても優れた難燃性を有するポリカーボネート樹脂製バッテリーケース用ハウジングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題に鑑み鋭意研究を行った結果、特定のシリコーン化合物により難燃化されたポリカーボネート樹脂に、硫酸二価金属塩と有機金属塩化合物、更に繊維形成型の含フッ素ポリマーを特定量配合することにより、ポリカーボネート樹脂が有する種々の優れた性能を損なうことなく、薄肉であっても優れた難燃性を発現するポリカーボネート樹脂製バッテリーケース用ハウジングが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなるバッテリーケース用ハウジングであって、該組成物がポリカーボネート樹脂(A)100重量部、硫酸二価金属塩(B)0.03〜10.0重量部、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.01〜5.0重量部、有機金属塩化合物(D)0.01〜2.0重量部および繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)0.05〜5.0重量部からなり、かつ、UL94試験方法(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に基づき、該組成物を成形してなる厚さ0.8mmの試験片を用いて燃焼試験を行ったときV−0等級を有する、ことを特徴とするバッテリーケース用ハウジングを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバッテリーケース用ハウジングは、ハロゲンやリンなどを含有する従来の難燃剤を使用することなく薄肉であっても優れた難燃性を有し、また燃焼時に当該難燃剤に起因するハロゲンやリンを含むガスの発生の懸念もなく、環境面からも優れている。さらに、優れた衝撃強度、耐熱性、熱安定性、外観等の諸性能も併せもつ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0012】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0013】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0014】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0015】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは15000〜30000、さらに好ましくは17000〜26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0016】
本発明にて使用される硫酸二価金属塩(B)とは、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム等が挙げられ、これらは単独で使用または二種以上を併用してもよい。なかでも、硫酸バリウムが好適に使用できる。
【0017】
硫酸二価金属塩(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.03〜10.0重量部である。配合量が0.03重量部未満であると難燃性に劣り、配合量が10.0重量部を越えると衝撃強度が低下するので好ましくない。より好ましくは0.05〜8.0重量部、更に好ましくは0.1〜5.0重量部である。
【0018】
本発明にて使用されるシリコーン化合物(C)は、主鎖が分岐構造でかつ有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなり、下記一般式(1)にて示される。
一般式(1)
【0019】
【化1】

【0020】
ここで、R1、R2およびR3は主鎖の有機官能基を、Xは末端の官能基を表わす。
すなわち、分岐単位としてT単位(RSiO1.5)および/またはQ単位(SiO2.0)を持つことを特徴とする。これらは全体のシロキサン単位(R3〜0SiO2〜0.5)の20モル%以上含有することが好ましい。(Rは有機官能基をあらわす。)また、シリコーン化合物(C)は、含有される有機官能基のうち芳香族基が20モル%以上であることが好ましい。
【0021】
この含有される芳香族基としては、フェニル、ビフェニル、ナフタレンまたはこれらの誘導体であるが、フェニル基が好適に使用できる。
【0022】
シリコーン化合物(C)中の有機官能基で、主鎖や分岐した側鎖に付いたもののうち芳香族基以外の有機基としては、炭素数4以下の炭化水素基が好ましく、メチル基が好適に使用できる。さらに、末端基はメチル基、フェニル基、水酸基の内から選ばれた1種またはこれらの2種から3種までの混合物であることが好ましい。
【0023】
シリコーン化合物(C)の平均分子量(重量平均)は、好ましくは3000〜500000であり、更に好ましくは5000〜270000である。
【0024】
シリコーン化合物(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜5.0重量部である。配合量が0.01重量部未満であると難燃性に劣り、配合量が5.0重量部を越えると成形品表面に表層剥離が発生し外観に劣るので好ましくない。より好ましくは0.05〜2.0重量部の範囲である。
【0025】
本発明にて使用される有機金属塩化合物(D)としては、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩があげられる。金属の種類としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属等が挙げられる。好適には、4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3`−ジスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩等が使用出来る。
【0026】
有機金属塩化合物(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜2.0重量部である。配合量が0.01重量部未満では、難燃性が低下するので好ましくない。また、2.0重量部を越えると、難燃性の低下や機械的強度が低下するといった問題が発生するので好ましくない。好ましくは0.02〜1.0重量部、より好ましくは0.02〜0.8重量部である。
【0027】
本発明にて使用される、繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)としては、ポリカーボネート樹脂(A)中で繊維構造(フィブリル状構造)を形成するものがよく、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、等)、米国特許第4379910号に示される様な部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート等が挙げられる。とりわけ、分子量1000000以上で二次粒子径100μm以上のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好適に使用される。
【0028】
繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.05〜5.0重量部である。配合量が0.05重量部未満では、燃焼時のドリッピング防止効果に劣るので好ましくない。また5.0重量部を越えると造粒が困難となる事から安定生産に支障をきたすので好ましくない。この配合量は、好ましくは、0.05〜1.0重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲である。この範囲では、難燃性、成形性のバランスが一層良好になる。
【0029】
本発明の各種配合成分(A)、(B)、(C)、(D)、および(E)の配合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で容易に溶融混練することができる。また、これらの配合順序についても特に制限はない。
【0030】
また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば離型剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)等を配合することができる。充填剤としては、例えばガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、タルク粉、クレー粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミウィスカー、ワラストナイト粉、シリカ粉等が挙げられる。マイカとしては、白雲母、黒雲母、金雲母、人工金雲母などが挙げられ、形状は薄片状をなすものが好適である。
【0031】
本発明のバッテリーケース用ハウジングの成形方法に関しては、特に限定されないが、公知の射出成形機による成形方法が採用できる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、特に断りのない限り重量基準に基づく。
【0033】
使用した配合成分の詳細は、以下のとおりである。
ポリカーボネート樹脂:
住友ダウ社製 カリバー200−20(粘度平均分子量:19000)
(以下、PCと略記)
【0034】
シリコーン化合物:(以下「シリコーン化合物」と略記)
シリコーン化合物は、一般的な製造方法に従って製造した。すなわち、適量のジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシランおよびテトラクロロシラン、あるいはそれらの部分加水分解縮合物を有機溶剤中に溶解し、水を添加して加水分解して、部分的に縮合したシリコーン化合物を形成し、さらにトリオルガノクロロシランを添加して反応させることによって重合を終了させ、その後、溶媒を蒸留等で分離した。上記方法で合成したシリコーン化合物の構造特性は、以下のとおり:
・主鎖構造のD/T/Q単位の比率:40/60/0(モル比)
・全有機官能基中のフェニル基の比率(*):60モル%
・末端基:メチル基のみ
・重量平均分子量(**):15000
*:フェニル基は、T単位を含むシリコーン中ではT単位にまず含まれ、残った場合がD単位に含まれる。D単位にフェニル基が付く場合、1個付くものが優先し、さらにフェニル基が残余する場合に2個付く。末端基を除き、有機官能基は、フェニル基以外は全てメチル基である。
**:重量平均分子量は、有効数字2桁。
【0035】
硫酸二価金属塩:
硫酸バリウム(堺化学工業社製B55、一次粒子径0.66μm)
有機金属塩化合物
パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩(ランクセス社製Bayowet C−4)
繊維形成型の含フッ素ポリマー:
ポリテトラフルオロエチレン(ダイキン社製FA500C、以下PTFEと略記)
【0036】
前述の各種原料を表2〜5に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所製KTX37)を用いて、溶融温度280℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(日本製鋼所製J100E−C5)を用いて各種試験片を加工し、下記方法により各種データを採取した。それぞれの評価結果を表2〜5に示した。
【0037】
(1)造粒性
各種原料を二軸押出機にて造粒する際の造粒機先端ダイ部から押し出されるストランドの押出性に関し、造粒性を評価した。安定したストランドが得られた場合を合格とした。
(2)外観
得られた各種ペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100SAIIを用いて245℃、射出圧力1600kg/cmにて難燃性評価用試験片(125×13×0.8mm)を成形し、該試験片の成形品外観を目視にて表層剥離の有無を評価した。表層剥離のない外観を合格とした。
(3)難燃性
得られた試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で72時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。UL94によるクラスを表1に示す。0.8mm厚み試験片の難燃性としてV−0を満足するものを合格とした。
(4)衝撃強度
得られた各種ペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100SAIIを用いて280℃、射出圧力1600kg/cmにて衝撃試験用試験片(63.5×12.7×3.2mm)を成形しASTM D−256に準拠したノッチ付きアイゾット衝撃強度の評価を行った。ノッチ付きアイゾット衝撃強度が30KJ/m2以上を合格とした。
【0038】
【表1】

残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の試験片が、有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。V−0を満足するものを合格とした。
【0039】
【表2】

(*): 5試料の全残炎時間(秒)
○: 合格 ×:不合格
【0040】
【表3】

(*): 5試料の全残炎時間(秒)
○: 合格 ×:不合格
【0041】
【表4】

(*): 5試料の全残炎時間(秒)
○: 合格 ×:不合格
【0042】
【表5】

(*): 5試料の全残炎時間(秒)
○: 合格 ×:不合格
【0043】
表2および3のとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を全て満足する場合(実施例1〜10)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0044】
一方、表4および5で示したとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は、シリコーン化合物の配合量が規定量より少ない場合で、難燃性に劣っていた。
比較例2は、シリコーン化合物の配合量が規定量より多い場合で、成型品外観(表層剥離有り)に劣っていた。
比較例3は、硫酸バリウムの配合量が規定量より少ない場合で、難燃性に劣っていた。
比較例4は、硫酸バリウムの配合量が規定量より多い場合で、衝撃強度に劣っていた。
比較例5は、有機金属塩化合物の配合量が規定量より少ない場合で、難燃性に劣っていた。
比較例6は、有機金属塩化合物の配合量が規定量より多い場合で、難燃性と衝撃強度に劣っていた。
比較例7は、PTFEの配合量が規定量より多い場合で、造粒が困難であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形してなるバッテリーケース用ハウジングであって、該組成物がポリカーボネート樹脂(A)100重量部、硫酸二価金属塩(B)0.03〜10.0重量部、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)0.01〜5.0重量部、有機金属塩化合物(D)0.01〜2.0重量部および繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)0.05〜5.0重量部からなり、
かつ、UL94試験方法(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に基づき、該組成物を成形してなる厚さ0.8mmの試験片を用いて燃焼試験を行ったときV−0等級を有する、
ことを特徴とするバッテリーケース用ハウジング。
【請求項2】
硫酸二価金属塩(B)が、硫酸バリウムである請求項1に記載のバッテリーケース用ハウジング。
【請求項3】
主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物(C)の配合量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.05〜2.0重量部であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーケース用ハウジング。
【請求項4】
硫酸二価金属塩(B)の配合量が、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.1〜5.0重量部であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーケース用ハウジング。
【請求項5】
有機金属塩化合物(D)が、4−メチル−N−(4−メチルフェニル)スルフォニル−ベンゼンスルフォンアミドのカリウム塩、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3−3`−ジスルホン酸カリウム、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩の群から選択される1種もしくは2種以上の化合物であることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーケース用ハウジング。

【公開番号】特開2011−116855(P2011−116855A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275173(P2009−275173)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(396001175)住友ダウ株式会社 (215)
【Fターム(参考)】