説明

バッテリーペースト材料および方法

バッテリープレートを作製する方法は、ペースト材料を形成するために四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物と混合することを含む。粒子は、2.5マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する。方法はまた、ペースト材料の少なくとも一部をバッテリーグリッド上に供給することと、その上に硬化ペーストを有するバッテリープレートを製造するためにバッテリーグリッドおよびペースト材料を約48℃未満の温度で硬化させることとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連特許出願の相互参照)
本出願は2003年10月21日に提出された米国仮特許出願60/512,951号の利益を請求する。以下の特許出願は、参照によりその全体が明示的に本明細書に組み入れられている:2003年10月21日の米国仮特許出願60/512,951号。
【0002】
(背景)
本発明は一般に、バッテリーの分野に関するものである(たとえば自動車始動、照明およびイグニッション(SLI)バッテリーなどの鉛酸バッテリー、工業用バッテリー、市販バッテリー、および船舶用バッテリー)。さらに詳細には、本発明は、バッテリー用の活性材料で使用するための材料およびそのような材料を作製する方法に関するものである。
【0003】
鉛酸バッテリーで利用される陽極および陰極プレートまたはグリッドは、鉛または鉛合金より成り、複数のノードに連結された複数のワイヤを含む(たとえばバッテリープレートは4つの側面を含むフレームを含み、突起または電流コレクタが側面の1つから延伸し、ワイヤまたはグリッド要素のネットワークが複数のノードと相互接続されている)。
【0004】
陽極グリッドまたはプレートの少なくとも一部は、それに塗布された材料(たとえばペースト)を有する。ペーストは通例、酸化鉛(PbO)を含む。活性材料は、四塩基性硫酸鉛(4PbO・PbSO)(「4BS」と省略されることが多い)および三塩基性硫酸鉛(3PbO・PbSO・HO)(「3BS」と省略されることが多い)の一方または両方も含む。例示的な実施形態により、活性材料は約40%のPbOおよび60%の4BSを含む。他の例示的な実施形態により、活性材料は異なる組成を有することがある(たとえば活性材料は、約10%〜100%の4BSなどを含む)。四塩基性硫酸鉛および三塩基性硫酸鉛は、酸化鉛ペースト材料内へ混合される個別の結晶の形で提供される。例示的な実施形態により、四塩基性硫酸鉛および三塩基性硫酸鉛は、適切な混合およびプレート硬化条件下でペーストミックスに酸を添加することによって供給される。
【0005】
ペーストが塗布された陽極プレートは、ペースト中の過剰な液体を除去するために硬化または乾燥させて、バッテリー内へ取り付ける(たとえば陽極および陰極プレートは、バッテリー容器内でそれらの間にセパレータを装備させて、その後に酸(たとえば硫酸)をバッテリー内に導入する)。硬化の間に四塩基性硫酸鉛および/または三塩基性硫酸鉛結晶は、サイズが成長または増大する。
【0006】
バッテリー形成の間(たとえば初期電荷をバッテリーに提供する)に、ペーストの成分を活性材料、たとえば陽極プレート上の二酸化鉛(PbO)および陰極プレート上のスポンジ鉛に変換する。例示的な実施形態により、硫酸化反応は、バッテリーに酸が添加されたときに次式に従って進行する:
PbO+HSO=PbSO+H
【0007】
形成の間、例示的な実施形態によって、陽極および陰極プレートにおける反応は、以下の式に従って進行する:
陽極プレート
PbSO+2HO=PbO+HSO+2H+2e
PbO+HO=PbO+2H+2e
陰極プレート
PbSO+2H+2e=Pb+HSO
PbO+2H+2e=Pb+H
全体の反応
2PbSO+2HO=PbO+Pb+2HSO
2PbO=PbO+Pb
【0008】
それに塗布されたペーストの成分として四塩基性硫酸鉛を含有する硬化陽極プレートは、ペースト内の成分として三塩基性硫酸鉛を利用している硬化陽極プレートと比較して、改善された完全放電サイクル寿命を提供する。B.Culpinは、4BS陽極プレート化学作用およびその利点の概説をJ.Power Sources,25,p.305−311(1989)に提供している。
【0009】
別の潜在的で好都合な特徴は、三塩基性硫酸鉛を利用するプレートと比較して、四塩基性硫酸鉛を利用する陽極プレートの改善された放電容量が得られることである。たとえば、四塩基性硫酸鉛陽極プレート技術を使用して製造したバッテリーは、予備容量において約20%までの改善を生じることが示されている(予備容量は、バッテリー電圧が10.5ボルトに低下するまでの、80°Fでの25アンペア放電での分として定義される)。
【0010】
約10〜20マイクロメートルの結晶厚および約60〜90マイクロメートルの長さを有する四塩基性硫酸鉛が、従来提供されている。そのような四塩基性硫酸鉛の使用に関する1つの問題は、形成工程の間にペースト材料を二酸化鉛に変換させるのに結晶サイズが最適でないことである。別の問題は、そのような四塩基性硫酸鉛を使用するには、陽極プレートが高温蒸気硬化を約1時間以上受ける必要があるということである。
【0011】
従来の四塩基性硫酸鉛結晶を使用する1つの有害な影響は、そのような結晶を利用するプレートが不完全な形成を示すことである(すなわち、初期充電の間にすべての四塩基性硫酸鉛が二酸化鉛活性材料に変換されるわけではない)。したがってそのようなプレートを用いて製造されたバッテリーは、形成工程を完全にするために追加急速充電を必要とすることがある。大型結晶は、不完全形成と相まって、形成された陽極プレートの反りを引き起こすこともある。
【0012】
四塩基性硫酸鉛の化学作用を利用するときの別の問題は、ペースト混合工程および/またはプレート硬化ステップは、少なくとも70℃以上の、より通例では80℃を超える高温で実施しなければならないことである。そのような高温は、そのような製造工程には望ましくないことがあり、製造コストの上昇および製造効率の低下を引き起こすことがある。
【0013】
それゆえ、バッテリーペーストで使用するための四塩基性硫酸鉛材料を製造する改良方法を提供する必要性がある。四塩基性硫酸鉛の二酸化鉛活性材料への比較的効率的な変換を可能にするために、最適結晶サイズの四塩基性硫酸鉛を有するバッテリーペーストを提供する必要性もある。さらに、鉛酸バッテリーで使用するためのバッテリーペーストを製造する比較的効率的でコスト効率のよい方法を提供する必要性がある。さらに、バッテリー性能またはサイクル寿命を犠牲にすることなく、そして製造効率を低下させることなく、バッテリー製造のための材料要件を減少させる、バッテリーペーストで使用するための材料を製造する方法を提供する必要性がある。これらのおよび他の必要性は、本明細書で述べる例示的な実施形態の1つ以上によって満足される。
【0014】
(要約)
本発明は、ペースト材料を生成するために四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物と混合することを含む、バッテリープレートを作製する方法に関するものである。粒子は、約2.5マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する。方法はまた、ペースト材料の少なくとも一部をバッテリーグリッド上に供給することと、その上に硬化ペーストを有するバッテリープレートを製造するために、約48℃未満の温度にてバッテリーグリッドおよびペースト材料を硬化させることを含む。
【0015】
本発明は、ペーストを形成するために2マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物と混合することを含む、バッテリー用プレートを作製する方法にも関する。方法はまた、バッテリーグリッドの少なくとも一部をペーストでコーティングすることと、その上に硬化ペーストを有するバッテリープレートを製造するために、バッテリーグリッドおよびペースト材料を約48℃未満の温度で加熱することを含む。
【0016】
本発明は、ペースト材料を形成するために、2.5マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する四塩基性硫酸鉛粒子を鉛含有酸化物に添加することを含む、バッテリーを作製する方法にも関する。方法はまた、ペースト材料の少なくとも一部をバッテリーグリッド上に供給することと、その上に硬化ペーストを有するバッテリープレートを形成するために、バッテリーグリッドおよびペースト材料を約48℃未満の温度で硬化させることとを含む。方法はまた、バッテリーを製造するためにバッテリープレートを容器内に供給することと、バッテリーを充電することとを含む。
【0017】
(実施例の詳細な説明)
例示的な実施形態により、バッテリーペーストの成分として四塩基性硫酸鉛を(たとえばPbOと共に)利用する、陽極プレートまたはグリッドを製造する工程または方法は、陽極プレート材料の節約(たとえば4〜8%)をもたらし、鉛酸バッテリー性能またはサイクル寿命の損失がほとんどまたは全くなく、製造生産性の低下がほとんどまたは全くない。
【0018】
例示的な実施形態により、工程は60℃未満のペースト混合温度および46℃未満の硬化温度が利用されるようにする。そのような温度は、約70°〜80°以上の範囲である、従来の四塩基性硫酸鉛プレート成分製造工程で使用された温度よりも著しく低い。
【0019】
例示的な実施形態により、別の標準ペースト混合工程において、細かく破砕または粉砕された四塩基性硫酸鉛粒子は約1重量%の装填レベルで鉛含有酸化物に添加される。例示的な実施形態により、粒子は約2.5マイクロメートル(μm)未満の平均球状粒径を有する(すなわち粒子は一般に球状であり、約2.5マイクロメートル未満の粒径を有する)。例示的な実施形態により、粒子は最大約2マイクロメートルの平均球状粒径を有する。例示的な実施形態により、粒子は約1マイクロメートルの平均球状粒径を有する。例示的な実施形態により、粒子は約2マイクロメートルの平均球状粒径を有する。例示的な実施形態により、粒子は約1〜2マイクロメートルの平均球状粒径を有する。他の例示的な実施形態により、粒子は異なる平均球状粒径(たとえば2マイクロメートル以上)を有する。
【0020】
比較的低温でのバッテリーペーストの硬化の後、粒子は、核生成および粒成長を通じて、従来の高温硬化を使用して可能であるよりも小さいサイズまで成長するであろう(たとえば厚さ約2〜5マイクロメートル(好ましくは厚さ約3マイクロメートル)および長さ約20〜30マイクロメートル)。四塩基性硫酸鉛結晶の成長を引き起こす硬化ステップの後、四塩基性硫酸鉛結晶は硬化ペーストの約50〜60重量%を構成する。他の例示的な実施形態により、硬化プレートの約10%〜100重量%である四塩基性硫酸鉛のレベルを得るために、ペースト中のより高いまたはより低い酸含有率を使用できる。なお他の例示的な実施形態により、四塩基性硫酸鉛の総重量も、利用した四塩基性硫酸鉛粒子の量に基づいて変化する。
【0021】
比較的細かく破砕された四塩基性硫酸鉛粒子、すなわち「種結晶」を利用する1つの好都合な特徴は、すべてのPbSOの約90%超が四塩基性硫酸鉛に変換されることである。さらなる硬化工程(たとえば蒸気硬化工程)は必要ない。これに対して、従来の四塩基性硫酸鉛製造方法は、蒸気硬化工程の使用を必要とすることがあり、このことは追加のステップを製造工程に加える。
【0022】
四塩基性硫酸鉛粒子すなわち「種結晶」は、湿度が約95%に維持されるという条件で、約46〜48℃の硬化温度において、すべての三塩基性硫酸鉛成分の四塩基性硫酸鉛への完全な変換を触媒する。他の例示的な実施形態により、湿度は異なるレベルに維持されることがある(たとえば約80〜100%)。そのような温度を利用する1つの好都合な特徴は、より低い製造温度がより少ないエネルギーを必要として、硬化工程の間にプレートを支持する耐反り性ファイバー充填プラスチック積層板の使用に関連するより高いコストを回避することである。さらに高温ペースト混合工程は、さらに高価な工程装置(たとえば真空冷却ペーストミキサー)を必要とすることがある。
【0023】
小さな四塩基性硫酸鉛種結晶を使用する1つの好都合な特徴は、四塩基性硫酸鉛の必要量が削減されて、それゆえこのペーストミックス添加剤のコストが削減されることである。例示的な実施形態により、各四塩基性硫酸鉛核結晶は1個の硬化四塩基性硫酸鉛結晶へと発達する。種結晶の数が多くなればなるほど、硬化結晶の数も多くなる。多数の種結晶があるため、最終的な硬化結晶は、従来の工程を使用して製造したものよりも小さいサイズを有する(たとえば各種結晶のより大きな硬化結晶への成長は、供給された種結晶の数によって制約される)。比較的小さい硬化結晶サイズは、硬化温度にかかわらず製造できる。
【0024】
四塩基性硫酸鉛粒子は、約1〜2マイクロメートルの平均球状粒径を得るために、四塩基性硫酸鉛のより大きい粒子をジェット粉砕することによって製造する。例示的な実施形態により、Fluid Energy Aljet Model 8 Micro−Jet Grinding System(ペンシルバニア州テルフォードのFluid Energy Aljet製)を利用して、縮小した球状粒径(たとえば約1〜2マイクロメートル)を有する四塩基性硫酸鉛種結晶または粒子を製造する。他の例示的な実施形態により、他の種類のジェットミルあるいは他の粉砕または破砕装置を使用できる。他の例示的な実施形態により、従来使用されているよりも小さい粒径を有する四塩基性硫酸鉛粒子の他の製造方法も利用できる。
【0025】
他の例示的な実施形態により、平均四塩基性硫酸鉛球状粒径が異なることがある。たとえば平均粒径および装填レベルは、形成工程中の四塩基性硫酸鉛の二酸化鉛への変換を最適化するために変化させることができる。1つの実施形態により、四塩基性硫酸鉛粒子の球状粒径は約2〜5マイクロメートルの範囲である。別の例示的な実施形態により、四塩基性硫酸鉛粒子は、複数の粒径で供給される(たとえば四塩基性硫酸鉛粒子の約10%は約10〜20マイクロメートルの平均球状粒径を有し、四塩基性硫酸鉛粒子の90%は約1マイクロメートルの球状粒径を有する)。粒径の特定の混合物は、各種の考慮事項に従って変化することがある。別の例示的な実施形態により、ペーストの四塩基性硫酸鉛種結晶の装填量は、約0.5重量%〜10.0重量%の範囲である。他の装填量も、他の例示的な実施形態によって変化することがある。
【0026】
縮小したサイズを有する四塩基性硫酸鉛粒子の使用の1つの好都合な特徴は、四塩基性硫酸鉛結晶が、鉛酸バッテリーの最初の充填において(一般に形成工程と呼ばれる)比較的効率的な二酸化鉛陽極活性材料への変換を提供するために十分に小さい硬化四塩基性硫酸鉛結晶サイズを生じることである。
【0027】
図1は、46℃の低い温度にて16時間、湿度95%で硬化させた三塩基性硫酸鉛化学作用を利用した(すなわち四塩基性硫酸鉛を使用しない)従来の陽極プレートの、倍率2000Xの走査型電子顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真に示した小さい結晶性構造は、X線回折および熱重量分析によって確認されたように、従来の三塩基性硫酸鉛化学作用の特徴を示している(J.Materials Science Letters,Vol.11,pp369−372(1992))。
【0028】
これに対して図2は、図1に示したプレートと同じ低温条件下で硬化させたが、1重量%の四塩基性硫酸鉛核結晶添加剤を含むペーストミックスを利用するプレートの、走査型電子顕微鏡写真を同じ倍率2000Xで示す。例示的な実施形態による四塩基性硫酸鉛結晶の使用は、より大きな、厚さ2−3マイクロメートルの結晶を提供する。そのような硬化結晶サイズが望ましいのは、そのような結晶がバッテリー形成工程の間に二酸化鉛へ変換するのに最適なサイズであるのと同時に、三塩基性硫酸鉛プレート化学作用に勝る寿命および性能の改善を生じるためである。X線回折および熱重量分析は、プレート中に存在するPbSOの90%超が四塩基性硫酸鉛結晶形に変換されたことを確認した。
【0029】
図3は、粉砕四塩基性硫酸鉛核結晶添加剤の利益なしで、高温硬化(約100℃)を用いて作製した、より大きなサイズの四塩基性硫酸鉛結晶を有するプレートの倍率2000Xの走査型電子顕微鏡写真を示す。プレートは約100℃の温度にて蒸気硬化させた。大きくなればなるほど、続いてのバッテリー形成工程の間に厚さ約10マイクロメートルの四塩基性硫酸鉛が二酸化鉛陽極プレート活性材料へ変換することがより困難である。そのようなプレートは、形成工程の間に、より大きな反り傾向も示す。
【0030】
公称1−2マイクロメートル球状粒径の四塩基性硫酸鉛「種結晶」の使用は比較的簡単なおよび着実な工程を提供して、これは続いての重要なプレート硬化ステップの間に、四塩基性硫酸鉛種材料の適正なサイズおよび量がプレートに存在するようにする。
【0031】
PbSOの所望の四塩基性硫酸鉛化学作用への変換度も、四塩基性硫酸鉛核結晶粒径によって、比較的低い硬化温度にて決定的に制御され、そうでなければ硬化中により多くの四塩基性硫酸鉛結晶を生成しないであろう。低温硬化プレート対核結晶直径の四塩基性硫酸鉛変換パーセントの理論的な量的予測を図4に示す。図4の基準を形成する1つの仮定は、低温硬化四塩基性硫酸鉛結晶が厚さ約3マイクロメートルおよび長さ30マイクロメートルより大きく成長できないことである。これらの硬化結晶の数は、硬化プレート中の四塩基性硫酸鉛への変換パーセントを決定する。粒径縮小によって添加剤単位重量当たりの四塩基性硫酸鉛種結晶の数を増加させると、硬化プレート中の四塩基性硫酸鉛の変換パーセントが上昇して、それによってより多数の核生成部位が生成され、より多数の硬化四塩基性硫酸鉛結晶が生成される。
【0032】
図4は、硬化工程における四塩基性硫酸鉛結晶への完全な変換を確実にするために、核結晶球状直径が直径約2マイクロメートルを超える必要がないことを示している。なお小さい核結晶サイズは、低い硬化温度での四塩基性硫酸鉛への完全な変換をさらに確実にして、工程コストを削減するためにより少ない量の核結晶添加剤の使用を可能にする。
【0033】
四塩基性硫酸鉛種結晶を利用するペースト材料は、さらなる高温蒸気硬化工程の必要性を回避することによって、従来の四塩基性硫酸鉛プレート製造より優れた改善を生じる。方法はまた、従来の四塩基性硫酸鉛プレート製造方法を使用して可能であるよりもより効率的に二酸化鉛に変換される、最適なサイズの硬化後四塩基性硫酸鉛結晶を製造する。そのような種結晶の使用は、四塩基性硫酸鉛プレート成分の利益、たとえば陽極プレート材料利用の5〜15%の増加、反復予備容量試験の間の改善された放電容量安定性、および改善された完全放電サイクル寿命を好都合に維持する。
【0034】
各種の好都合な特徴は、本出願の教示を利用して実現できる。たとえば、本明細書で述べた教示に従った四塩基性硫酸鉛ペースト化学作用を利用するバッテリープレートの製造または加工の方法は、従来の方法よりも低い温度を利用する。すなわちプレートまたはグリッド上をいったんコーティングされたバッテリーペーストを硬化させるために、低い温度が利用できる。
【0035】
例示的な実施形態により、四塩基性硫酸鉛の比較的小さい種結晶を使用して、硬化操作後に、従来の方法を使用して可能であるよりも小さく、同時にバッテリー形成工程の間に従来の製造方法を使用して得られるよりも四塩基性硫酸鉛の二酸化鉛へのより高い変換パーセンテージを示す、四塩基性硫酸鉛の結晶を生産する。そのような工程は、適切なサイズ(厚さ2−5マイクロメートル)の四塩基性硫酸鉛への比較的高い変換パーセンテージで硬化鉛酸バッテリープレートを作製するための、比較的簡単で、着実な、コスト効率の良い手段を提供し、四塩基性硫酸鉛は次にバッテリー形成工程の間に比較的効率的に二酸化鉛活性材料へ変換することができる。
【0036】
他の利点も得られる。たとえば活性材料ペースト重量は、バッテリー性能またはサイクル寿命を低下させずに、製造コストを著しく上昇させずに、または製造効率を低下させずに減少させることができる。
【0037】
以下の非排他的な実施例は、本発明の特徴を説明する。
【0038】
(実施例)
90重量%超の純度の四塩基性硫酸鉛(三塩基性硫酸鉛汚染物質)を、Bell System Technical Journalの1970年11月に発行された号でBiagetti and Weeksが述べた手順に従って、高温水性スラリー50ガロン中で60ポンドのロットで調製した。乾燥材料を、1マイクロメートルの球状粒径に基づく平均体積まで、公称標準偏差1マイクロメートルでジェット粉砕した。レーザベース粒径アナライザを使用して、四塩基性硫酸鉛種粒径すべてを定量した。
【0039】
四塩基性硫酸鉛種粒子を従来の鉛含有酸化物のペーストミックス2400ポンドに添加して、所望の1重量%装填レベルを達成した(すなわち硫酸鉛種24ポンドをミックスに添加した)。次に水を添加して通常水準の混合を実施して、公称10分間かけて比重1.325の硫酸の適切量の添加を続け、60℃の公称ピーク温度を得た。
【0040】
機械ペーストしたプレートを次に公称水分含有率10%まで気流乾燥させて、次に46℃および湿度95%にて16時間硬化させた。次にプレートを60℃にて、50%を超えない低湿度で公称30時間乾燥させた。試験バッテリーを作製するために、従来のバッテリー組み立ておよび形成が続いた。Battery Council International(BCI)試験手順および装置を使用して、すべてのバッテリーの性能および寿命試験を実施した。
【0041】
すべての三塩基性硫酸鉛および四塩基性硫酸鉛硬化プレート化学作用を確認するためにX線回折を使用したのに対して、これらの種を定量するために、Journal of Material Sciences Letters,Vol 11,pp369−372(1992)に述べられている手順に従って、熱重量分析を化学的硫酸塩分析と組み合わせた。
【0042】
各種の例示的な実施形態は例示のみであることに注意することが重要である。本開示では本発明のわずかな実施形態を詳細に述べたが、本開示を検討する当業者は、本明細書で引用した対象の新規な教示および利点から著しく逸脱することなく多くの改良が可能であることをただちに認識するであろう(たとえば各種の要素のサイズ、寸法、形状および比の変更、パラメータの値など)。他の代用、改良、変更および省略は、本発明の範囲から逸脱することなく、好ましいおよび他の例示的な実施形態の設計、工程パラメータ、材料特性、操作条件および他の特徴にて実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】46℃の低温にて16時間、湿度95%で硬化させた、三塩基性硫酸鉛化学作用を利用する(すなわち四塩基性硫酸鉛を使用しない)従来の陽極プレートの、倍率2000Xの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図2】図1に示したプレートと同じ低温条件下で硬化させたが、ペーストミックスを1重量%の四塩基性硫酸鉛核結晶添加剤と共に利用した陽極プレートの、倍率2000Xの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図3】四塩基性硫酸鉛核結晶添加剤の利益なしに高温硬化(約100℃)を使用して作製した大型四塩基性硫酸鉛結晶を有する陽極プレートの、倍率2000Xの走査型電子顕微鏡写真を示す。
【図4】核結晶球径に対する低温硬化プレートにおける四塩基性硫酸鉛の変換パーセントの理論的な量的予測を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリープレートを作製する方法であって、
ペースト材料を形成するために、約2.5マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物と混合することと、
前記ペースト材料の少なくとも一部をバッテリーグリッド上に供給することと、
その上に硬化ペーストを有するバッテリープレートを製造するために、前記バッテリーグリッドおよびペースト材料を約48℃未満の温度で硬化させることと、
を含む方法。
【請求項2】
前記四塩基性硫酸鉛の粒子が約2マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記四塩基性硫酸鉛の粒子が約1〜2マイクロメートルの平均球状粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化ステップが約95%の湿度レベルで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化ペーストが約2〜5マイクロメートルの厚さを有する四塩基性硫酸鉛結晶を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記硬化ステップが約46〜48℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ペースト材料を形成するために、四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物と混合する前記ステップが、前記四塩基性硫酸鉛の粒子を約0.1〜10.0重量パーセントの装填レベルで前記鉛含有酸化物に添加することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記混合ステップが約60℃未満の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記四塩基性硫酸鉛の粒子を前記鉛含有酸化物と混合する前に、前記四塩基性硫酸鉛の粒子を形成するために四塩基性硫酸鉛を粉砕することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
バッテリー用プレートを作製する方法であって、
ペーストを形成するために、約2マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物と混合することと、
バッテリーグリッドの少なくとも一部を前記ペーストでコーティングすることと、
その上に硬化ペーストを有するバッテリープレートを製造するために、前記バッテリーグリッドおよびペースト材料を約48℃未満の温度で加熱することと、
を含む方法。
【請求項11】
前記四塩基性硫酸鉛の粒子が約2マイクロメートル平均球状粒径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記混合ステップが前記四塩基性硫酸鉛粒子を約1重量パーセントの装填レベルで前記鉛含有酸化物に添加することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記混合ステップが約60℃未満の温度で実施される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
バッテリーを作製する方法であって、
ペースト材料を形成するために、約2.5マイクロメートル未満の平均球状粒径を有する四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物に添加することと、
前記ペースト材料の少なくとも一部をバッテリーグリッド上に供給することと、
その上に硬化ペーストを有するバッテリープレートを形成するために、約40℃未満の温度で前記バッテリーグリッドおよびペースト材料を硬化することと、
バッテリーを製造するために、前記バッテリープレートを容器内に供給することと、
前記バッテリーを充電することと、
を含む方法。
【請求項15】
前記四塩基性硫酸鉛の粒子が約1〜2マイクロメートルの平均球状粒径を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化ペーストが約2〜5マイクロメートルの厚さを有する四塩基性硫酸鉛結晶を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記硬化ペーストが前記硬化ステップ後に50〜60重量パーセントの四塩基性硫酸鉛結晶を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化ステップが約46〜48℃の温度で実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
ペースト材料を形成するために四塩基性硫酸鉛の粒子を鉛含有酸化物と混合する前記ステップが、約1重量パーセントの前記四塩基性硫酸鉛の粒子を前記鉛含有酸化物に添加することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記バッテリーを充電するステップが前記硬化ペーストを二酸化鉛に変換する、請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−509484(P2007−509484A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536747(P2006−536747)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/034710
【国際公開番号】WO2005/043651
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(598147400)ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー (224)
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
【Fターム(参考)】