バッテリーペースト添加物及びバッテリープレート製造方法
本発明は、加硫時間の短縮及びバッテリー性能のその他改善を実現するための、バッテリーペースト添加物、並びに四塩基性硫酸鉛の微粉化された種結晶を含むバッテリーペースト添加物製造法に関する。バッテリーペースト添加物は、プラス又はマイナスのバッテリープレートの製造に使用することができ、従来式の混合、ペースト化及び加硫方法及び設備に使用することができる。
選択図 図1
選択図 図1
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は概して、バッテリーペースト、及びバッテリープレートの加硫プロセスに関する。特に、鉛酸バッテリー用バッテリーペースト及びバッテリープレートの加硫プロセスの改良が開示される。具体的には、本発明は、バッテリーペースト及びバッテリープレート中の追加的な四塩基性硫酸鉛の形成を促進するために使用される微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶からなるバッテリーペースト添加物から構成される。結果として、加硫プロセスが加速され、その結果得られるプラス及びマイナスのバッテリープレートの性能特性が改善される。
【0002】
発明の背景
従来の鉛酸バッテリー用バッテリープレート製造法では、通常、混合、加硫及び乾燥処理を行って、バッテリーペーストに含まれる活物質を化学的及び物理的に変化させ、それを使用してバッテリープレートを形成するのに必要な化学的及び物理的構造と、それによる機械的強度を確立する。典型的なバッテリープレートを製造するためには、当技術分野で一般的な市販のペースト混合機に、酸化鉛、粒子群、水及び硫酸の順に材料を加え、ペースト状になるまで混合する。混合の間、ペースト中に化学反応が起こって塩基性硫酸鉛が生成される。最も一般的な塩基性硫酸鉛は三塩基性硫酸鉛である。最終ペースト成分は塩基性硫酸鉛、無反応一酸化鉛及び残留物を含まない鉛粒子からなる混合物である。ペースト化は、ペースト混合物からバッテリープレートを作成するプロセスである。このペーストは、本分野で一般的な種類の市販の自動ペースト化装置に供給され、この装置は、鉛合金からなる格子構造にペーストを加える。ペーストは、ペースト化装置上のホッパに供給され、そこから高速で格子に適用される。ペーストプレートは通常、本分野で一般的な種類のトンネル乾燥機で上乾き処理され、次いでカラム内に積み重ねられるか、又はラック上に置かれる。積み重ねられるか、ラックに置かれたプレートは、次いで加硫チャンバに入れられる。これらのチャンバでは、プレートは70〜80℃の温度の高湿空気に曝され、これによりプレートに含まれる三塩基性硫酸鉛が四塩基性硫酸鉛に転化し、残留物を含まない鉛の酸化が可能になる。これにより、完成したプレートのバッテリーへのアセンブリを行う準備が整う。
【0003】
加硫プロセスにおいて重要な鍵となる要因は、ペースト混合段階で形成された三塩基性硫酸鉛(TRBLS)を四塩基性硫酸鉛(TTBLS)に転化することにより、適切な結晶構造を形成すること、及び残留物を含まない鉛金属の酸化により正方晶硫酸鉛を形成することである。一般に、四塩基性硫酸鉛を多く含む結晶構造は、バッテリーの寿命を延ばす。三塩基性硫酸鉛を四塩基性硫酸鉛に転換する一般的公式は、以下のように表される。
3PbO・PbSO4・H2O+PbO―――>4PbO・PbSO4+H2O
従来のバッテリーペースト成分及び加硫方法に共通する問題は、結果として得られるプレートの化学的性質が不均一で、質が不安定なことである。その他の共通問題には、製造再現性の実現が困難であること、加硫時間が不確定及び/又は長いこと、プレートの処理に多数の加硫チャンバが必要であること、並びに資本コスト及びエネルギーコストが高いことである。
【0004】
従って、従来のペースト混合及び加硫プロセスに使用できるようにバッテリーペーストを改良する必要があり、また、従来のプラス及び/又はマイナスのバッテリープレート用ペースト、並びにペースト混合及び加硫方法と比較して、プレートの均一性が向上し、品質及び再現性が安定し、加硫時間が短縮され且つ安定し、プレートの処理に必要な加硫チャンバの数が低減され、資本コスト及びエネルギーコストが削減された、プラス及び/又はマイナスのバッテリープレートを製造する手順及び設備に対する需要が存在している。
本発明は、既知の従来技術によるバッテリーペースト、及びバッテリープレートの加硫方法が持つ不都合及び/又は欠点を克服し、従来技術を大きく改善する。
【0005】
発明の概要
本明細書では、微粉化された四塩基性硫酸鉛の結晶を含むバッテリーペースト添加物、並びに、バッテリーペースト添加物及びバッテリープレートの製造方法を開示する。本バッテリーペースト添加物をバッテリーペーストに添加することにより、ペースト混合段階及び加硫段階における四塩基性硫酸鉛(TTBLS)結晶の形成が促進及び増大される。本バッテリーペースト添加物を従来のペースト混合物、並びに従来式のペースト混合及び加硫を行う手順及び設備に使用して、バッテリープレート製造とその結果得られるバッテリープレートを改善することができる。
従って、本発明の目的の1つは、微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶を含むバッテリーペースト添加物を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、バッテリープレート中にペーストを加硫するのに掛かる時間を短縮するバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、従来のペースト混合物、並びに従来式の混合及び加硫を行う手順及び設備に使用できるバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、結果として得られるバッテリープレートの機械的及び物理的強度を向上させることである。
【0007】
本発明のまた別の目的は、物理的構造及び質が均一なバッテリープレートを作成することである。
本発明のまた別の目的は、バッテリーペースト及びバッテリープレートに一定の再現性が実現されるバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、バッテリーペーストに使用すると、或る程度一定の時間で加硫できるプレートを製造できるような、バッテリーペースト添加物を提供することである。
【0008】
本発明のまた別の目的は、プラスのバッテリープレートを製造するのに使用できるバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、マイナスのバッテリープレートを製造するのに使用できるバッテリーペースト添加物を提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、従来の加硫手順及び加硫チャンバに関する加硫処理コスト及び資本コストを削減するバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のその他多くの目的、特徴及び利点は、後述の詳細な説明及び請求の範囲により明らかになる。
【0010】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明には、多くの異なる実施形態が可能であるが、本明細書では、好適且つ選択的な本発明の実施形態を詳細に記載する。しかしながら、本開示内容は、本発明の原理の例示と考えられるべきであり、本発明の精神と範囲、及び/又は説明される実施形態の特許請求内容を限定するものではない。
【0011】
ここに開示するように、バッテリープレートの処理及び性能の向上を目的として、バッテリーペースト添加物を作成し、次いでバッテリーペーストに添加する。本バッテリーペースト添加物は、微粉化された四塩基性硫酸鉛の種結晶を含み、その粒子の大きさは好ましくはメジアン値で約0.5〜5.0ミクロン(好ましくは約1ミクロン)である。これらの種結晶は、好ましくはHT−100一酸化鉛(高温のbarton反応装置内で製造された後で空気分級により粒子分離を行い、その高い反応性により硫酸に反応して主にTTBLS結晶を形成し、その結果TTBLSの割合を高める、99%以上が斜方晶酸化鉛である原材料)の形態の酸化鉛と水に時間を掛けて硫酸を添加する方法により製造されてTTBLS結晶を形成し、続いて遠心分離及び乾燥処理を行なって微細に粉砕することにより、微粉化されたTTBLS結晶を製造する。結果として得られたバッテリーペースト添加物を、混合段階において混合物中の酸化鉛の約0.25〜5.00重量%に相当する添加量でペーストに加えることにより、加硫の前に、バッテリーペーストに含まれる三塩基性硫酸鉛からの四塩基性硫酸鉛の形成を加速及び増大させる。微粉化された四塩基性硫酸鉛の小結晶は、ペーストを混合する間に更に多くのTTBLSを形成するための種又は核部位として機能する。種結晶は、結晶化のエネルギーの必要性を排除し、三塩基性硫酸鉛のTTBLSへの転化を加速する。
【0012】
好適には、上記の四塩基性硫酸鉛結晶の製造及び粉砕プロセスを使用して、微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶を製造する。粉砕プロセスは、個々の結晶を更に小さな粒子に分割する。その結果得られる微粉化されたTTBLS種結晶の微粉材料は、ペースト中に更に多くのTTBLSを製造するためのバッテリーペースト添加物として使用することができ、これについて後述で詳しく説明する。好適には、砂等の研削用媒質を必要としない乾燥粉砕を使用して、上記混合物から形成されるTTBLS結晶を微粉化する。微細粉砕機にTTBLS製品を保存及び/又は移動するのにホッパを使用することができる。本明細書には乾燥微細粉砕プロセスを記載するが、本発明の利点及び特徴を実現する限りにおいて、TTBLSの微細な粒子を製造及び/又は分離するための従来技術に既知のあらゆる方法を使用してバッテリーペースト添加物を製造することができる。
【0013】
本発明の好適な実施形態では、微粉化されたTTBLS結晶の第1バッチが作成された後、微粉化されたTTBLS結晶の第2バッチが同じ方法で作成されるが、但しその際に第1バッチの微粉化されたTTBLS結晶が一成分として第2バッチに添加される。上記の手順によって最初に製造された、微粉化されたTTBLS結晶(第1バッチ)は、次いで後続の混合物の一成分として使用される。後述するように、後続の混合物は、最初の混合物と同じ混合物に、微粉化されたTTBLS結晶を添加したものである。微粉化されたTTBLS種結晶添加物を製造するために、後続の混合物(第2バッチ)に第1バッチの初回微粉化種結晶を使用することは、ペーストに対し、微粉化されたTTBLS種結晶添加物が与えるものと基本的に同じ機能を果たし、TTBLSの形成を促進し、その結果、純度が高く且つ一定のTTBLS結晶が製造される。よって、後続の混合物(第2バッチ)の結果として得られる製品は、バッテリーペースト添加物として使用することができる。別の実施形態では、後続の混合物を作成することなく、最初の混合物だけをバッテリーペースト添加物として使用することができる。
【0014】
最初の混合物
通常、微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶添加物の製造法では、0〜100℃(好ましくは50〜100℃、理想的には約90〜100℃)の温度で全式量に占める割合が1〜90%(好ましくは約75%)の水;全式量に占める割合が10〜70%(好ましくは約15〜20%)の酸化鉛;及び全式量に占めるの割合が0.05〜12%(好ましくは約3〜7%)の、濃度1〜99%の希硫酸(H2SO4)(好ましくは濃度約20〜50%、理想的には約35%)からなる最初の混合物が使用される。後述するように、硫酸は2回に亘って添加される。
【0015】
以下の好ましい手順によれば、最初の混合物は反応装置で混合することができる。反応装置に水を加え、混合を開始し、水を所望の温度、好ましくは約90〜100℃まで加熱する。次いで反応装置の水を、pHが好ましくは約2以下となるように、全式量に占める割合が約0.05〜2.00%、好ましくは0.05%の希硫酸で酸性化する。次に酸性化した水に酸化鉛を加える。次いで、後述するように、ゆっくりとした一定の速度で硫酸溶液を添加することにより、全式量に占める割合が約5〜10%、好ましくは5%の希硫酸を混合物に加える。硫酸溶液の添加が完了し、pHが約9.5〜8.5に到達したら、結果として得られた最初の混合物を遠心分離して余分な水を除き、固体生成物を乾燥機で乾燥させ、次いでホッパを通し、微細に粉砕することにより微粉化されたTTBLS結晶を製造する。最終的に得られる生成物は微粉化されたTTBLS結晶である。ここで乾燥試料を分析することができる。ホッパ及び粉砕工程に先立って分析を行うこともできる。
【0016】
好適には、最初の混合物又は上記第1バッチから得られる微粉化されたTTBLS生成物を後続の混合物又は第2バッチに使用して、微粉化されたTTBLS結晶のペースト添加物を製造する。後続の混合物(第2バッチ)、及びその手順は最初の混合物と同一であるが、但し、全式量の0.01〜5.00%、好ましくは0.01%の割合で最初の混合物(第1バッチ)から得られた微粉化TTBLSを、好ましくは酸化鉛を加えた後、且つ硫酸を加える前に混合物に添加する。最初の混合物(第1バッチ)に関して記載したものと同じ手順を後続の混合物(第2バッチ)についても行う。その後、後続の混合物(第2バッチ)を乾燥し、微細に粉砕した結果得られる生成物をバッテリーペースト添加物として使用することができる。最初の混合物(第1バッチ)から得られる微粉化された結晶生成物を後続の混合物(第2バッチ)に使用することにより、TTBLSの形成が促進され、その結果、最初の混合物から生成された微粉化TTBLSと比較して、TTBLS結晶の割合(即ち純度)、並びに生成されるTTBLS結晶の純度の一貫性が高まる。別法として、最初の混合物から得られる微粉化TTBLS生成物をバッテリーペースト添加物として使用することができる。
【0017】
硫酸溶液の添加
以下の手順は、上述の最初の混合物及び後続の混合物の両方に好ましい。硫酸の初回重量及び反応装置内の硫酸の重量を記録し、一定の期間に亘って規則的に、好ましくは30分毎にモニタリングする。約90〜100℃の温度で、約35%の硫酸を用いて硫酸溶液の添加を開始し、一定の速度で約2.5〜4時間続ける。添加プロセスに使用する硫酸の総量は、全式量の約5%である。
好適には、水/酸化鉛混合物に硫酸を、約30〜40lb/時間、好ましくは30lb/時間の一定速度で、強く攪拌しながら加える。この添加速度は、四塩基性硫酸鉛が形成されるのに十分に小さい。このように希酸をゆっくりと添加することは、局所的なインサイツ化学量論に基づき余剰の酸化鉛(PbO)分子を提供するので、四塩基性硫酸鉛の形成に有利に働く。余剰の酸化鉛分子に富む環境を提供し、強く攪拌することによって硫酸を素早く分散させることにより、以下の化学式に示されるように、各硫酸分子が5つのPbO分子と結合し、限られた数の硫酸分子が四塩基性硫酸鉛の形成を助ける。硫酸の添加速度が速すぎると、以下の化学式に示されるように四塩基性硫酸鉛ではなく三塩基性硫酸鉛が形成される場合がある。
5PbO+H2SO4→4PbOPbSO4+H2O(四塩基性硫酸鉛)
4PbO+H2SO4→3PbOPbSO4+H2O(三塩基性硫酸鉛)
【0018】
約2時間に亘り硫酸を添加した後、硫酸の温度、pH及び重量をモニタリングする。好適には、pHは約10〜11でなければならない。約2.5時間に亘り硫酸を添加した後、15分毎に反応装置内のバッチをサンプリングしてpHを確認することができる。好適には、pHが約8.5〜9.5になったら硫酸の添加を止める。結果として得られるTTBLS結晶生成物をサンプリングし、鉛の量、pH及びX線回折(XRD)分析を含む特性を分析し、試料に含まれる硫酸鉛及び酸化鉛の量を測定することができる。この生成物を次いで遠心分離し、ドライパン及び乾燥機で乾燥させ、粒子サイズ及び湿度を含む特性を分析する。大きな粒子は再度微細に粉砕し、所望の大きさのTTBLS結晶を生成することができる。
酸化鉛(PbO)と硫酸(H2SO4)との反応は発熱性であり、約99〜101℃を超えるような沸騰温度は発泡及びバッチのあふれを招くため、避けることが好ましい。温度が約99〜101℃を超えた場合、冷却用の水を加え、約95〜99℃を下回るまで温度を下げることができる。
【0019】
好適には、結果として得られる乾燥TTBLSの微粉化された種結晶は、約90.5〜93.3重量%の酸化鉛からなる鉛量、及び約90重量%以上のTTBLSからなるTTBLS量を有する。生成物の鉛量は、EDTA滴定によって測定可能であり、これを使用して硫酸が適正な割合で添加されたことを決定することができる。TTBLS量はX線回折により測定可能であり、これを使用して生成物の純度を決定することができる。結果として得られるTTBLS生成物はまた、好適には約1.0重量%以下の水分量/湿度を有し、その粒子サイズのメジアン値は約0.5〜5.0ミクロン、好ましくは1ミクロン以下であり、粒子の外観は黄褐色である。TTBLSは紫外線に当たると変色するか、又は黒ずむことがある。従って、太陽光及び室内灯を含むUV光に長時間に亘って曝すことは避けることが好ましい。
斜方晶系の酸化鉛に富む特定の形態の酸化鉛であるHT−100が、微粉化された種結晶の生成に好ましいが、いかなる形態の一酸化鉛も使用可能である。結果として得られるバッテリーペースト添加物をバッテリーペーストに加えることにより生成されるプレート及びバッテリーでは、従来品より寿命が長く、性能が良く、プレート強度が大きく、且つ添加物を製造し、それをバッテリープレートに導入するプロセスの再現性は高い。
【0020】
最初の混合物及び後続の混合物への硫酸の添加は、上述のように、好ましくはゆっくりとした一定の速度で行うが、他の硫酸添加方法も考慮可能である。例えば、硫酸を複数の間隔で添加する、希硫酸の量を減らし、添加速度を更に落とす、及び/又は希硫酸の量を増やし、添加速度を上げるなどすることができる。加えて、硫酸及び酸化鉛を合わせて連続する流れとした連続的プロセスにより、バッチ処理の必要性を排除することができる。
TTBLS結晶を微粉化する手順には、好適には遠心分離、乾燥、ホッパ及び微細粉砕が必要であるが、他のTTBLS生成物微粉化方法も考慮可能である。例えば、結晶成長の変更、シーヤー(sheer)ポンプ、均質化粉砕、低温研削、及び/又は空気分級等が可能である。ペースト添加物用に小さな粒子を製造するために、硫酸ナトリウム等の他の化学薬品を使用する必要は無い。
【0021】
結果として得られる微粉化TTBLS添加物は、ペースト混合物中の酸化鉛の約0.25〜5.00重量%、好ましくは約1.0%の微粉化TTBS添加物を、従来式のペーストミキサー、ペースト化装置、トンネル式乾燥機及び加硫チャンバを使用して、標準的工業混合手順及び加硫手順を用いた標準条件下で従来のペースト混合物と混合することにより、バッテリーペースト添加物として使用することができる。
【0022】
ペースト混合及び加硫における微粉化されたTTBLS添加物の使用
好ましくは、ペースト混合物に添加される微粉化されたTTBLS結晶の量は、ペースト混合物中の酸化鉛の1.0重量%にほぼ等しい。ペースト混合物中の酸化鉛の1.0重量%にほぼ等しい微粉化されたTTBLS結晶の量は、プラスのプレートペースト混合物及びマイナスのプレートペースト混合物の両方に使用するのに十分である。微粉化されたTTBLS添加物は、TTBLSの形成を促進し、ペースト中のTTBLSの量を増大させる。TTBLSの形成は混合、ペースト化及び/又は加硫の段階で起こる。反応条件に応じて、混合、ペースト化及び加硫の各段階でのTTBLSの形成率が決定される。形成率は、ペースト混合物を調整するための温度及び時間といった要因によって決まる。
従来的なペースト混合は、約45〜65℃の温度で起こる。従来のペースト混合では、この温度が低すぎてTTBLSは形成されない。本発明は、約50℃という低温のペースト混合段階において、ペースト中にTTBLSの形成を可能にする。ペースト添加物により、低温においてもペースト混合段階で相当量のTTBLSが形成され、よって加硫段階におけるTTBLS形成の必要性が低減又は排除される。
【0023】
従来のペースト混合では、60℃未満の温度では、加硫段階で追加形成が必要である。一般に、四塩基性硫酸鉛は60℃未満でも形成され、これは約40℃でも起こり得る。しかしながら、低温では形成率が低く、完成したペーストに含まれる量も小さい。これは混合時間を延ばすことにより相殺できる。しかし、これによりペースト混合物の製造時間が増大し、バッテリー業界で好まれるよりも20〜30分長い時間が掛かることになる。
従来の加硫工程では、TTBLSの形成には約70〜80℃の温度が必要であった。本発明により、加硫中の温度を50℃まで下げることができる。本発明は高温でも使用可能であり、この場合従来のペーストよりもTTBLSの形成速度が上昇する。好適には、TTBLS添加物を含むバッテリーペーストの加硫は、約50℃以下の温度で行う。
【0024】
加硫プロセスの間、添加物を含むペーストから作成されたプレートは、重ねるか又は分離することができるが、分離することは必須ではない。ペースト中のTTBLS結晶を結合させるためにポリマーを使用する必要はない。
本発明の好適な実施形態は、限定するものではないが、自動車用及び工業用バッテリープレートの生産を含む様々なバッテリー用途に使用することができる。本発明の好適な実施形態をプラス又はマイナスのバッテリーペーストに使用して、プラス又はマイナスのバッテリープレートを製造することができる。
本添加物は、ペースト中に生成されるTTBLSを増加させ、TRBLSのTTBLSへの転化速度を上昇させ、且つプレート毎の再現性を向上させる。添加物によって必要な加硫時間が短縮される結果、バッテリープレートの製造要件を満たすために必要とされる加硫チャンバの数を削減することができる。
【実施例】
【0025】
図1は、本明細書に記載の方法と添加物とを用いて調製された4つの鉛酸バッテリープレート用ペースト混合物それぞれに含まれる各成分の量を示す。図1の実施例は、上記バッテリーペースト添加物を、自動車用及び工業用の鉛酸バッテリー用バッテリープレートに使用されるペースト混合物に加えた場合を示す。自動車用のプラスのプレート用ペースト混合物の場合、混合物の実施例に含まれる硫酸の比重は、好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.15〜4.27g/ccである。自動車用のマイナスのプレート用ペースト混合物の場合、硫酸の比重は好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.27〜4.39g/ccである。工業用のプラスのプレート用ペースト混合物の場合、硫酸の比重は好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.33〜4.45g/ccである。工業用のマイナスのプレート用ペースト混合物の場合、硫酸の比重は好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.45〜4.57g/ccである。
ペースト密度とは、プラス又はマイナスのプレートペーストを混合するための市販のペースト混合装置によりペースト化を行った場合の、ペーストの組成及び安定性の指標である。ペースト密度は、50立方センチメートルの一定容量を有するコップを満たすのに必要なペーストの重量を測定することにより決定される。図1の「粒子群」という成分は、一般にポリエステル、ナイロン又はアクリル系繊維からなる繊維材料であり、ペースト化プレートの機械的強度を増大するためにペーストに添加される。図1の「エキスパンダー」という成分は、通常、硫酸バリウム、カーボンブラック及びリグノスルホン酸塩の混合物であり、マイナスプレートの性能と耐用年数を向上させるためにマイナスペーストに添加される。
【0026】
図1に記載された種類のバッテリーペースト混合物は、本添加物を添加する以外は標準的な設備を使用した標準的手順に従って混合及び加硫した。使用される特定の混合物、及び混合と加硫の手順は、通常産業分野によって異なる。図1のバッテリーペースト混合物は、本添加物を添加する以外は、本産業分野で一般に使用されるペースト混合物である。各ペースト混合物に対し、微粉化されたTTBLSの添加物を、ペースト混合物に含まれる酸化鉛の1重量%の割合で添加した。結果として得られた工業用及び自動車用ペーストとプレートを、混合及び加硫プロセスの間に、本バッテリーペースト添加物を含まない対照試料と比較しながら選択された時間に亘って試験した。その結果を図2〜11に示す。対照試料は本バッテリーペースト添加物を加えない標準のペースト混合物から生成した。結果として得られたペーストとプレートは、X線回折を用いて、TTBLS、TRBLS、正方晶酸化鉛、斜方晶酸化鉛及び無鉛の割合を含む複数の位相について試験した。添加物を用いて得られたペースト混合物及び加硫プレートでは、添加物を加えないペーストと比較して、加硫特性が向上し、TTBLSの形成量が増すことが実証された。
【0027】
図2〜14に示すデータは、酸化鉛の約1重量%に相当する量のバッテリーペースト添加物を含むプラスのバッテリープレート混合物から得られた結果を示す。マイナスのプレートペースト混合物についても同様の試験結果が得られている。
図2〜14に示すように、添加物を加えて得られたバッテリーペーストは、既知のバッテリーペースト成分よりも優れた特徴を示した。図2及び3の表は、対照試料と比較した場合の、工業用ペースト及びプレートからなる第1試料(図2)及び第2試料(図3)の加硫に対する1%のバッテリーペースト添加物の影響を示す。図2は、5回に亘る試験結果、並びにその平均に関するデータを示す。図3は、添加物を加えたペーストの3回に亘る試験結果とその平均、及び対照試料の1回分の試験結果を示す。図2及び3に示す表は、ペーストの混合及び加硫段階における様々な期間の四酸化鉛、正方晶酸化鉛、四塩基性硫酸鉛、及び三塩基性硫酸鉛の量を、含有割合(%)で示す。図3はまた、ペースト混合段階及び加硫段階における様々な期間の鉛(Pb)の量を、含有割合(%)で示す。ペースト混合段階終了時と加硫段階の間の時間間隔に実験試料が示す四塩基性硫酸の含有量は、有意に高かった。図中のデータに示されるように、ペースト混合段階、並びに加硫段階において、本添加物を加えないペースト混合物と比較して本添加物を含むペースト混合物中に形成されるTTBLSの量は有意に大きい。
【0028】
図4及び5のグラフは、第1試料及び第2試料それぞれについて、工業用ペースト及びプレートの加硫に対する1%の微粉化TTBLSの影響を、対照試料と対比させた結果の平均を示し、混合段階及び加硫段階の様々な期間におけるペースト及びプレート中の四塩基性硫酸鉛の割合(%)を示す。図4及び5に示す結果は、TTBLS結晶添加物を含有する試料では、加硫段階におけるペースト及びプレート中のTTBLSの割合(%)が、有意に増大したことを実証するものである。
図6の表は、自動車用ペースト及びプレートからなる第3試料の加硫に対する1%のバッテリーペースト添加物の影響を示す。図6の表は、ペースト混合段階及び加硫段階における様々な期間の四酸化鉛、正方晶酸化鉛、四塩基性硫酸鉛、及び三塩基性硫酸鉛の量を、含有割合(%)で示す。図6はまた、ペースト混合段階及び加硫段階における様々な期間の鉛(Pb)の量を、含有割合(%)で示す。ペースト混合段階終了時と加硫段階の間の時間間隔に、本添加物を含む実験試料が示す四塩基性硫酸の含有量は、複数回の試行、並びにそれらの平均値において、有意に大きかった。
【0029】
図7は、第3試料を用いた場合の、自動車用ペースト及びプレートの加硫に対する1%の微粉化TTBLSの影響を、対照試料と対比させたグラフであり、混合段階及び加硫段階の様々な期間におけるペースト及びプレート中の四塩基性硫酸鉛の割合(%)を示す。図7に示す結果は、TTBLS結晶添加物を含有する試料を用いた場合の、加硫段階における、ペースト及びプレートのTTBLSの含有割合が有意に大きいことを実証するものである。
図9〜10の表は、自動車用ペースト及びプレートからなる第4試料及び第5試料それぞれの加硫に対する、1%のバッテリーペースト添加物の影響を、図8に示す対照試料と対比させて示す。図8〜10の表は、ペースト混合段階及び加硫段階における、四酸化鉛、正方晶酸化鉛、四塩基性硫酸鉛及び三塩基性硫酸鉛の量を含有割合(%)で示す。図8〜10の表はまた、ペーストの混合段階及び加硫段階における様々な期間の鉛(Pb)の量を、含有割合(%)で示す。図8の対照試料は、同じペースト混合物から異なる時点で採取した異なる試料を表す。本添加物を有する実験試料(図9及び10)では、ペースト混合段階終了時と加硫段階の間の時間間隔における四塩基性硫酸鉛の含有量が、複数回の試行において、対照試料(図8)より有意に大きかった。
【0030】
図11は、自動車用ペースト及びプレートの第4試料及び第5試料の加硫に対する1%の微粉化TTBLSの影響を示すグラフであり、混合段階及び加硫段階の様々な期間におけるペースト及びプレート中の四塩基性硫酸鉛の平均割合を示す。図11に示す結果は、TTBLS結晶添加物を含有する試料を用いた場合の、加硫段階における、ペースト及びプレートのTTBLSの含有割合(%)が有意に大きいことを実証するものである。図11は、本添加物を含むペースト混合物を用いて行った2回の試行、及び添加物を含まないペースト混合物を用いて行った1回の試行の結果を示す。本添加物を含むペースト混合物を用いて行った2回の試行の結果が示すように、この結果は非常に再現性が高く、各試料のTTBLSの割合は対照試料よりも有意に大きかった。
図12は、放電率5時間(通常の電池を5時間で完全に放電する電流流出(85アンペア))で試験した場合の、原動力工業用バッテリーセルの最初の容量に対する1%の微粉化TTBLSの影響を、対照試料と対比させて示す。図示するように、1%の微粉化TTBLSを含むセルの容量は、プレート及びペーストに従来の製法を用いた場合を上回った。1サイクルは、バッテリーが1回放電し、その後1回の充電を行う期間である。
【0031】
図13は、14の異なるペースト混合の結果を示す。このペースト化及び加硫試験は工業用ペースト混合物について行われたもので、本方法の優れた再現性を示す。使用したペースト混合物は、図1に記載のペースト混合物と同様であるが、混合方法を様々に変化させても同様の結果を呈した。この試験は、加硫プロセスを24時間行った後の完成プレートについて行った。
図14は、TTBLS添加物を用いて製造された3つの自動車用バッテリーから得られた試験データと、TTBLS添加物を用いていない3つの自動車用バッテリーから得られたデータとの対比、並びに、第1、第2及び第3予備容量の平均値、第1、第2及び第3の低温始動アンペア、及び20時間率におけるアンペア時を示す。図示するように、低温始動アンペア、予備容量、及び20時間率容量はすべて、プラスプレートの製造に用いるペーストに1%の微粉化TTBLS添加物を含むバッテリーにおいて向上した。自動車用バッテリーの性能も、マイナスプレートの製造用のマイナスペースト混合物に1%の微粉化TTBLS添加物を用いた場合に同様に向上した。これらの試験は、自動車用バッテリーの標準的な業界評価試験であり、自動車用バッテリーの試験のために国際電池評議会によって指定されているものである。
【0032】
要約すれば、混合段階及び加硫段階中の複数の時間間隔におけるバッテリーペースト混合物中のTTBLS及び遊離酸化鉛の量に関する前出の試験に示されるように、本発明は非常に望ましい結果をもたらし、同時に既知のバッテリーペースト材料の不都合及び/又は欠点を克服する。このような結果は、既知の先行技術によるバッテリーペースト及びバッテリーペースト材料、並びにその製造方法の改善である。
上述の明細書には、本発明の好適な実施形態及び選択的実施形態のみを記載した。上記以外の実施形態も実施可能である。従って、上記の用語及び表現は本発明を実施例によって説明するためだけに使用されているものであり、本発明を何ら限定しない。上述とは異なるが、本明細書に記載され、特許請求される本発明の精神と範囲から逸脱しない変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本バッテリー添加物を加えたプラス及びマイナスのプレート用の自動車用及び工業用ペースト混合物の成分を示す表である。
【図2A】工業用ペースト及びプレートからなる第1試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図2B】工業用ペースト及びプレートからなる第1試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図3A】工業用ペースト及びプレートからなる第2試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図3B】工業用ペースト及びプレートからなる第2試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図4】図2の試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図5】図3の試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図6A】自動車用ペースト及びプレートからなる第3試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図6B】自動車用ペースト及びプレートからなる第3試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図7】図6の試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図8】本添加物を含まない、自動車用ペースト及びプレートからなる対照試料の実験結果により、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図9】自動車用ペースト及びプレートからなる第4試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図10】自動車用ペースト及びプレートからなる第5試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図11】図9及び10に示す第4及び第5試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を、図8に示す対照試料と対比させて示すグラフである。
【図12】工業用バッテリーセルの最初の容量に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図13】加硫サイクルの終了時における、14の異なるペースト混合物に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図14】本ペースト添加物を含む自動車用バッテリー、及び同添加物を含まない同バッテリーに対して行った、標準的産業評価試験の結果を示す表である。
【発明の開示】
【0001】
本発明は概して、バッテリーペースト、及びバッテリープレートの加硫プロセスに関する。特に、鉛酸バッテリー用バッテリーペースト及びバッテリープレートの加硫プロセスの改良が開示される。具体的には、本発明は、バッテリーペースト及びバッテリープレート中の追加的な四塩基性硫酸鉛の形成を促進するために使用される微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶からなるバッテリーペースト添加物から構成される。結果として、加硫プロセスが加速され、その結果得られるプラス及びマイナスのバッテリープレートの性能特性が改善される。
【0002】
発明の背景
従来の鉛酸バッテリー用バッテリープレート製造法では、通常、混合、加硫及び乾燥処理を行って、バッテリーペーストに含まれる活物質を化学的及び物理的に変化させ、それを使用してバッテリープレートを形成するのに必要な化学的及び物理的構造と、それによる機械的強度を確立する。典型的なバッテリープレートを製造するためには、当技術分野で一般的な市販のペースト混合機に、酸化鉛、粒子群、水及び硫酸の順に材料を加え、ペースト状になるまで混合する。混合の間、ペースト中に化学反応が起こって塩基性硫酸鉛が生成される。最も一般的な塩基性硫酸鉛は三塩基性硫酸鉛である。最終ペースト成分は塩基性硫酸鉛、無反応一酸化鉛及び残留物を含まない鉛粒子からなる混合物である。ペースト化は、ペースト混合物からバッテリープレートを作成するプロセスである。このペーストは、本分野で一般的な種類の市販の自動ペースト化装置に供給され、この装置は、鉛合金からなる格子構造にペーストを加える。ペーストは、ペースト化装置上のホッパに供給され、そこから高速で格子に適用される。ペーストプレートは通常、本分野で一般的な種類のトンネル乾燥機で上乾き処理され、次いでカラム内に積み重ねられるか、又はラック上に置かれる。積み重ねられるか、ラックに置かれたプレートは、次いで加硫チャンバに入れられる。これらのチャンバでは、プレートは70〜80℃の温度の高湿空気に曝され、これによりプレートに含まれる三塩基性硫酸鉛が四塩基性硫酸鉛に転化し、残留物を含まない鉛の酸化が可能になる。これにより、完成したプレートのバッテリーへのアセンブリを行う準備が整う。
【0003】
加硫プロセスにおいて重要な鍵となる要因は、ペースト混合段階で形成された三塩基性硫酸鉛(TRBLS)を四塩基性硫酸鉛(TTBLS)に転化することにより、適切な結晶構造を形成すること、及び残留物を含まない鉛金属の酸化により正方晶硫酸鉛を形成することである。一般に、四塩基性硫酸鉛を多く含む結晶構造は、バッテリーの寿命を延ばす。三塩基性硫酸鉛を四塩基性硫酸鉛に転換する一般的公式は、以下のように表される。
3PbO・PbSO4・H2O+PbO―――>4PbO・PbSO4+H2O
従来のバッテリーペースト成分及び加硫方法に共通する問題は、結果として得られるプレートの化学的性質が不均一で、質が不安定なことである。その他の共通問題には、製造再現性の実現が困難であること、加硫時間が不確定及び/又は長いこと、プレートの処理に多数の加硫チャンバが必要であること、並びに資本コスト及びエネルギーコストが高いことである。
【0004】
従って、従来のペースト混合及び加硫プロセスに使用できるようにバッテリーペーストを改良する必要があり、また、従来のプラス及び/又はマイナスのバッテリープレート用ペースト、並びにペースト混合及び加硫方法と比較して、プレートの均一性が向上し、品質及び再現性が安定し、加硫時間が短縮され且つ安定し、プレートの処理に必要な加硫チャンバの数が低減され、資本コスト及びエネルギーコストが削減された、プラス及び/又はマイナスのバッテリープレートを製造する手順及び設備に対する需要が存在している。
本発明は、既知の従来技術によるバッテリーペースト、及びバッテリープレートの加硫方法が持つ不都合及び/又は欠点を克服し、従来技術を大きく改善する。
【0005】
発明の概要
本明細書では、微粉化された四塩基性硫酸鉛の結晶を含むバッテリーペースト添加物、並びに、バッテリーペースト添加物及びバッテリープレートの製造方法を開示する。本バッテリーペースト添加物をバッテリーペーストに添加することにより、ペースト混合段階及び加硫段階における四塩基性硫酸鉛(TTBLS)結晶の形成が促進及び増大される。本バッテリーペースト添加物を従来のペースト混合物、並びに従来式のペースト混合及び加硫を行う手順及び設備に使用して、バッテリープレート製造とその結果得られるバッテリープレートを改善することができる。
従って、本発明の目的の1つは、微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶を含むバッテリーペースト添加物を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、バッテリープレート中にペーストを加硫するのに掛かる時間を短縮するバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、従来のペースト混合物、並びに従来式の混合及び加硫を行う手順及び設備に使用できるバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、結果として得られるバッテリープレートの機械的及び物理的強度を向上させることである。
【0007】
本発明のまた別の目的は、物理的構造及び質が均一なバッテリープレートを作成することである。
本発明のまた別の目的は、バッテリーペースト及びバッテリープレートに一定の再現性が実現されるバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、バッテリーペーストに使用すると、或る程度一定の時間で加硫できるプレートを製造できるような、バッテリーペースト添加物を提供することである。
【0008】
本発明のまた別の目的は、プラスのバッテリープレートを製造するのに使用できるバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のまた別の目的は、マイナスのバッテリープレートを製造するのに使用できるバッテリーペースト添加物を提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、従来の加硫手順及び加硫チャンバに関する加硫処理コスト及び資本コストを削減するバッテリーペースト添加物を提供することである。
本発明のその他多くの目的、特徴及び利点は、後述の詳細な説明及び請求の範囲により明らかになる。
【0010】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明には、多くの異なる実施形態が可能であるが、本明細書では、好適且つ選択的な本発明の実施形態を詳細に記載する。しかしながら、本開示内容は、本発明の原理の例示と考えられるべきであり、本発明の精神と範囲、及び/又は説明される実施形態の特許請求内容を限定するものではない。
【0011】
ここに開示するように、バッテリープレートの処理及び性能の向上を目的として、バッテリーペースト添加物を作成し、次いでバッテリーペーストに添加する。本バッテリーペースト添加物は、微粉化された四塩基性硫酸鉛の種結晶を含み、その粒子の大きさは好ましくはメジアン値で約0.5〜5.0ミクロン(好ましくは約1ミクロン)である。これらの種結晶は、好ましくはHT−100一酸化鉛(高温のbarton反応装置内で製造された後で空気分級により粒子分離を行い、その高い反応性により硫酸に反応して主にTTBLS結晶を形成し、その結果TTBLSの割合を高める、99%以上が斜方晶酸化鉛である原材料)の形態の酸化鉛と水に時間を掛けて硫酸を添加する方法により製造されてTTBLS結晶を形成し、続いて遠心分離及び乾燥処理を行なって微細に粉砕することにより、微粉化されたTTBLS結晶を製造する。結果として得られたバッテリーペースト添加物を、混合段階において混合物中の酸化鉛の約0.25〜5.00重量%に相当する添加量でペーストに加えることにより、加硫の前に、バッテリーペーストに含まれる三塩基性硫酸鉛からの四塩基性硫酸鉛の形成を加速及び増大させる。微粉化された四塩基性硫酸鉛の小結晶は、ペーストを混合する間に更に多くのTTBLSを形成するための種又は核部位として機能する。種結晶は、結晶化のエネルギーの必要性を排除し、三塩基性硫酸鉛のTTBLSへの転化を加速する。
【0012】
好適には、上記の四塩基性硫酸鉛結晶の製造及び粉砕プロセスを使用して、微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶を製造する。粉砕プロセスは、個々の結晶を更に小さな粒子に分割する。その結果得られる微粉化されたTTBLS種結晶の微粉材料は、ペースト中に更に多くのTTBLSを製造するためのバッテリーペースト添加物として使用することができ、これについて後述で詳しく説明する。好適には、砂等の研削用媒質を必要としない乾燥粉砕を使用して、上記混合物から形成されるTTBLS結晶を微粉化する。微細粉砕機にTTBLS製品を保存及び/又は移動するのにホッパを使用することができる。本明細書には乾燥微細粉砕プロセスを記載するが、本発明の利点及び特徴を実現する限りにおいて、TTBLSの微細な粒子を製造及び/又は分離するための従来技術に既知のあらゆる方法を使用してバッテリーペースト添加物を製造することができる。
【0013】
本発明の好適な実施形態では、微粉化されたTTBLS結晶の第1バッチが作成された後、微粉化されたTTBLS結晶の第2バッチが同じ方法で作成されるが、但しその際に第1バッチの微粉化されたTTBLS結晶が一成分として第2バッチに添加される。上記の手順によって最初に製造された、微粉化されたTTBLS結晶(第1バッチ)は、次いで後続の混合物の一成分として使用される。後述するように、後続の混合物は、最初の混合物と同じ混合物に、微粉化されたTTBLS結晶を添加したものである。微粉化されたTTBLS種結晶添加物を製造するために、後続の混合物(第2バッチ)に第1バッチの初回微粉化種結晶を使用することは、ペーストに対し、微粉化されたTTBLS種結晶添加物が与えるものと基本的に同じ機能を果たし、TTBLSの形成を促進し、その結果、純度が高く且つ一定のTTBLS結晶が製造される。よって、後続の混合物(第2バッチ)の結果として得られる製品は、バッテリーペースト添加物として使用することができる。別の実施形態では、後続の混合物を作成することなく、最初の混合物だけをバッテリーペースト添加物として使用することができる。
【0014】
最初の混合物
通常、微粉化された四塩基性硫酸鉛結晶添加物の製造法では、0〜100℃(好ましくは50〜100℃、理想的には約90〜100℃)の温度で全式量に占める割合が1〜90%(好ましくは約75%)の水;全式量に占める割合が10〜70%(好ましくは約15〜20%)の酸化鉛;及び全式量に占めるの割合が0.05〜12%(好ましくは約3〜7%)の、濃度1〜99%の希硫酸(H2SO4)(好ましくは濃度約20〜50%、理想的には約35%)からなる最初の混合物が使用される。後述するように、硫酸は2回に亘って添加される。
【0015】
以下の好ましい手順によれば、最初の混合物は反応装置で混合することができる。反応装置に水を加え、混合を開始し、水を所望の温度、好ましくは約90〜100℃まで加熱する。次いで反応装置の水を、pHが好ましくは約2以下となるように、全式量に占める割合が約0.05〜2.00%、好ましくは0.05%の希硫酸で酸性化する。次に酸性化した水に酸化鉛を加える。次いで、後述するように、ゆっくりとした一定の速度で硫酸溶液を添加することにより、全式量に占める割合が約5〜10%、好ましくは5%の希硫酸を混合物に加える。硫酸溶液の添加が完了し、pHが約9.5〜8.5に到達したら、結果として得られた最初の混合物を遠心分離して余分な水を除き、固体生成物を乾燥機で乾燥させ、次いでホッパを通し、微細に粉砕することにより微粉化されたTTBLS結晶を製造する。最終的に得られる生成物は微粉化されたTTBLS結晶である。ここで乾燥試料を分析することができる。ホッパ及び粉砕工程に先立って分析を行うこともできる。
【0016】
好適には、最初の混合物又は上記第1バッチから得られる微粉化されたTTBLS生成物を後続の混合物又は第2バッチに使用して、微粉化されたTTBLS結晶のペースト添加物を製造する。後続の混合物(第2バッチ)、及びその手順は最初の混合物と同一であるが、但し、全式量の0.01〜5.00%、好ましくは0.01%の割合で最初の混合物(第1バッチ)から得られた微粉化TTBLSを、好ましくは酸化鉛を加えた後、且つ硫酸を加える前に混合物に添加する。最初の混合物(第1バッチ)に関して記載したものと同じ手順を後続の混合物(第2バッチ)についても行う。その後、後続の混合物(第2バッチ)を乾燥し、微細に粉砕した結果得られる生成物をバッテリーペースト添加物として使用することができる。最初の混合物(第1バッチ)から得られる微粉化された結晶生成物を後続の混合物(第2バッチ)に使用することにより、TTBLSの形成が促進され、その結果、最初の混合物から生成された微粉化TTBLSと比較して、TTBLS結晶の割合(即ち純度)、並びに生成されるTTBLS結晶の純度の一貫性が高まる。別法として、最初の混合物から得られる微粉化TTBLS生成物をバッテリーペースト添加物として使用することができる。
【0017】
硫酸溶液の添加
以下の手順は、上述の最初の混合物及び後続の混合物の両方に好ましい。硫酸の初回重量及び反応装置内の硫酸の重量を記録し、一定の期間に亘って規則的に、好ましくは30分毎にモニタリングする。約90〜100℃の温度で、約35%の硫酸を用いて硫酸溶液の添加を開始し、一定の速度で約2.5〜4時間続ける。添加プロセスに使用する硫酸の総量は、全式量の約5%である。
好適には、水/酸化鉛混合物に硫酸を、約30〜40lb/時間、好ましくは30lb/時間の一定速度で、強く攪拌しながら加える。この添加速度は、四塩基性硫酸鉛が形成されるのに十分に小さい。このように希酸をゆっくりと添加することは、局所的なインサイツ化学量論に基づき余剰の酸化鉛(PbO)分子を提供するので、四塩基性硫酸鉛の形成に有利に働く。余剰の酸化鉛分子に富む環境を提供し、強く攪拌することによって硫酸を素早く分散させることにより、以下の化学式に示されるように、各硫酸分子が5つのPbO分子と結合し、限られた数の硫酸分子が四塩基性硫酸鉛の形成を助ける。硫酸の添加速度が速すぎると、以下の化学式に示されるように四塩基性硫酸鉛ではなく三塩基性硫酸鉛が形成される場合がある。
5PbO+H2SO4→4PbOPbSO4+H2O(四塩基性硫酸鉛)
4PbO+H2SO4→3PbOPbSO4+H2O(三塩基性硫酸鉛)
【0018】
約2時間に亘り硫酸を添加した後、硫酸の温度、pH及び重量をモニタリングする。好適には、pHは約10〜11でなければならない。約2.5時間に亘り硫酸を添加した後、15分毎に反応装置内のバッチをサンプリングしてpHを確認することができる。好適には、pHが約8.5〜9.5になったら硫酸の添加を止める。結果として得られるTTBLS結晶生成物をサンプリングし、鉛の量、pH及びX線回折(XRD)分析を含む特性を分析し、試料に含まれる硫酸鉛及び酸化鉛の量を測定することができる。この生成物を次いで遠心分離し、ドライパン及び乾燥機で乾燥させ、粒子サイズ及び湿度を含む特性を分析する。大きな粒子は再度微細に粉砕し、所望の大きさのTTBLS結晶を生成することができる。
酸化鉛(PbO)と硫酸(H2SO4)との反応は発熱性であり、約99〜101℃を超えるような沸騰温度は発泡及びバッチのあふれを招くため、避けることが好ましい。温度が約99〜101℃を超えた場合、冷却用の水を加え、約95〜99℃を下回るまで温度を下げることができる。
【0019】
好適には、結果として得られる乾燥TTBLSの微粉化された種結晶は、約90.5〜93.3重量%の酸化鉛からなる鉛量、及び約90重量%以上のTTBLSからなるTTBLS量を有する。生成物の鉛量は、EDTA滴定によって測定可能であり、これを使用して硫酸が適正な割合で添加されたことを決定することができる。TTBLS量はX線回折により測定可能であり、これを使用して生成物の純度を決定することができる。結果として得られるTTBLS生成物はまた、好適には約1.0重量%以下の水分量/湿度を有し、その粒子サイズのメジアン値は約0.5〜5.0ミクロン、好ましくは1ミクロン以下であり、粒子の外観は黄褐色である。TTBLSは紫外線に当たると変色するか、又は黒ずむことがある。従って、太陽光及び室内灯を含むUV光に長時間に亘って曝すことは避けることが好ましい。
斜方晶系の酸化鉛に富む特定の形態の酸化鉛であるHT−100が、微粉化された種結晶の生成に好ましいが、いかなる形態の一酸化鉛も使用可能である。結果として得られるバッテリーペースト添加物をバッテリーペーストに加えることにより生成されるプレート及びバッテリーでは、従来品より寿命が長く、性能が良く、プレート強度が大きく、且つ添加物を製造し、それをバッテリープレートに導入するプロセスの再現性は高い。
【0020】
最初の混合物及び後続の混合物への硫酸の添加は、上述のように、好ましくはゆっくりとした一定の速度で行うが、他の硫酸添加方法も考慮可能である。例えば、硫酸を複数の間隔で添加する、希硫酸の量を減らし、添加速度を更に落とす、及び/又は希硫酸の量を増やし、添加速度を上げるなどすることができる。加えて、硫酸及び酸化鉛を合わせて連続する流れとした連続的プロセスにより、バッチ処理の必要性を排除することができる。
TTBLS結晶を微粉化する手順には、好適には遠心分離、乾燥、ホッパ及び微細粉砕が必要であるが、他のTTBLS生成物微粉化方法も考慮可能である。例えば、結晶成長の変更、シーヤー(sheer)ポンプ、均質化粉砕、低温研削、及び/又は空気分級等が可能である。ペースト添加物用に小さな粒子を製造するために、硫酸ナトリウム等の他の化学薬品を使用する必要は無い。
【0021】
結果として得られる微粉化TTBLS添加物は、ペースト混合物中の酸化鉛の約0.25〜5.00重量%、好ましくは約1.0%の微粉化TTBS添加物を、従来式のペーストミキサー、ペースト化装置、トンネル式乾燥機及び加硫チャンバを使用して、標準的工業混合手順及び加硫手順を用いた標準条件下で従来のペースト混合物と混合することにより、バッテリーペースト添加物として使用することができる。
【0022】
ペースト混合及び加硫における微粉化されたTTBLS添加物の使用
好ましくは、ペースト混合物に添加される微粉化されたTTBLS結晶の量は、ペースト混合物中の酸化鉛の1.0重量%にほぼ等しい。ペースト混合物中の酸化鉛の1.0重量%にほぼ等しい微粉化されたTTBLS結晶の量は、プラスのプレートペースト混合物及びマイナスのプレートペースト混合物の両方に使用するのに十分である。微粉化されたTTBLS添加物は、TTBLSの形成を促進し、ペースト中のTTBLSの量を増大させる。TTBLSの形成は混合、ペースト化及び/又は加硫の段階で起こる。反応条件に応じて、混合、ペースト化及び加硫の各段階でのTTBLSの形成率が決定される。形成率は、ペースト混合物を調整するための温度及び時間といった要因によって決まる。
従来的なペースト混合は、約45〜65℃の温度で起こる。従来のペースト混合では、この温度が低すぎてTTBLSは形成されない。本発明は、約50℃という低温のペースト混合段階において、ペースト中にTTBLSの形成を可能にする。ペースト添加物により、低温においてもペースト混合段階で相当量のTTBLSが形成され、よって加硫段階におけるTTBLS形成の必要性が低減又は排除される。
【0023】
従来のペースト混合では、60℃未満の温度では、加硫段階で追加形成が必要である。一般に、四塩基性硫酸鉛は60℃未満でも形成され、これは約40℃でも起こり得る。しかしながら、低温では形成率が低く、完成したペーストに含まれる量も小さい。これは混合時間を延ばすことにより相殺できる。しかし、これによりペースト混合物の製造時間が増大し、バッテリー業界で好まれるよりも20〜30分長い時間が掛かることになる。
従来の加硫工程では、TTBLSの形成には約70〜80℃の温度が必要であった。本発明により、加硫中の温度を50℃まで下げることができる。本発明は高温でも使用可能であり、この場合従来のペーストよりもTTBLSの形成速度が上昇する。好適には、TTBLS添加物を含むバッテリーペーストの加硫は、約50℃以下の温度で行う。
【0024】
加硫プロセスの間、添加物を含むペーストから作成されたプレートは、重ねるか又は分離することができるが、分離することは必須ではない。ペースト中のTTBLS結晶を結合させるためにポリマーを使用する必要はない。
本発明の好適な実施形態は、限定するものではないが、自動車用及び工業用バッテリープレートの生産を含む様々なバッテリー用途に使用することができる。本発明の好適な実施形態をプラス又はマイナスのバッテリーペーストに使用して、プラス又はマイナスのバッテリープレートを製造することができる。
本添加物は、ペースト中に生成されるTTBLSを増加させ、TRBLSのTTBLSへの転化速度を上昇させ、且つプレート毎の再現性を向上させる。添加物によって必要な加硫時間が短縮される結果、バッテリープレートの製造要件を満たすために必要とされる加硫チャンバの数を削減することができる。
【実施例】
【0025】
図1は、本明細書に記載の方法と添加物とを用いて調製された4つの鉛酸バッテリープレート用ペースト混合物それぞれに含まれる各成分の量を示す。図1の実施例は、上記バッテリーペースト添加物を、自動車用及び工業用の鉛酸バッテリー用バッテリープレートに使用されるペースト混合物に加えた場合を示す。自動車用のプラスのプレート用ペースト混合物の場合、混合物の実施例に含まれる硫酸の比重は、好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.15〜4.27g/ccである。自動車用のマイナスのプレート用ペースト混合物の場合、硫酸の比重は好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.27〜4.39g/ccである。工業用のプラスのプレート用ペースト混合物の場合、硫酸の比重は好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.33〜4.45g/ccである。工業用のマイナスのプレート用ペースト混合物の場合、硫酸の比重は好ましくは約1.400であり、ペースト密度は通常約4.45〜4.57g/ccである。
ペースト密度とは、プラス又はマイナスのプレートペーストを混合するための市販のペースト混合装置によりペースト化を行った場合の、ペーストの組成及び安定性の指標である。ペースト密度は、50立方センチメートルの一定容量を有するコップを満たすのに必要なペーストの重量を測定することにより決定される。図1の「粒子群」という成分は、一般にポリエステル、ナイロン又はアクリル系繊維からなる繊維材料であり、ペースト化プレートの機械的強度を増大するためにペーストに添加される。図1の「エキスパンダー」という成分は、通常、硫酸バリウム、カーボンブラック及びリグノスルホン酸塩の混合物であり、マイナスプレートの性能と耐用年数を向上させるためにマイナスペーストに添加される。
【0026】
図1に記載された種類のバッテリーペースト混合物は、本添加物を添加する以外は標準的な設備を使用した標準的手順に従って混合及び加硫した。使用される特定の混合物、及び混合と加硫の手順は、通常産業分野によって異なる。図1のバッテリーペースト混合物は、本添加物を添加する以外は、本産業分野で一般に使用されるペースト混合物である。各ペースト混合物に対し、微粉化されたTTBLSの添加物を、ペースト混合物に含まれる酸化鉛の1重量%の割合で添加した。結果として得られた工業用及び自動車用ペーストとプレートを、混合及び加硫プロセスの間に、本バッテリーペースト添加物を含まない対照試料と比較しながら選択された時間に亘って試験した。その結果を図2〜11に示す。対照試料は本バッテリーペースト添加物を加えない標準のペースト混合物から生成した。結果として得られたペーストとプレートは、X線回折を用いて、TTBLS、TRBLS、正方晶酸化鉛、斜方晶酸化鉛及び無鉛の割合を含む複数の位相について試験した。添加物を用いて得られたペースト混合物及び加硫プレートでは、添加物を加えないペーストと比較して、加硫特性が向上し、TTBLSの形成量が増すことが実証された。
【0027】
図2〜14に示すデータは、酸化鉛の約1重量%に相当する量のバッテリーペースト添加物を含むプラスのバッテリープレート混合物から得られた結果を示す。マイナスのプレートペースト混合物についても同様の試験結果が得られている。
図2〜14に示すように、添加物を加えて得られたバッテリーペーストは、既知のバッテリーペースト成分よりも優れた特徴を示した。図2及び3の表は、対照試料と比較した場合の、工業用ペースト及びプレートからなる第1試料(図2)及び第2試料(図3)の加硫に対する1%のバッテリーペースト添加物の影響を示す。図2は、5回に亘る試験結果、並びにその平均に関するデータを示す。図3は、添加物を加えたペーストの3回に亘る試験結果とその平均、及び対照試料の1回分の試験結果を示す。図2及び3に示す表は、ペーストの混合及び加硫段階における様々な期間の四酸化鉛、正方晶酸化鉛、四塩基性硫酸鉛、及び三塩基性硫酸鉛の量を、含有割合(%)で示す。図3はまた、ペースト混合段階及び加硫段階における様々な期間の鉛(Pb)の量を、含有割合(%)で示す。ペースト混合段階終了時と加硫段階の間の時間間隔に実験試料が示す四塩基性硫酸の含有量は、有意に高かった。図中のデータに示されるように、ペースト混合段階、並びに加硫段階において、本添加物を加えないペースト混合物と比較して本添加物を含むペースト混合物中に形成されるTTBLSの量は有意に大きい。
【0028】
図4及び5のグラフは、第1試料及び第2試料それぞれについて、工業用ペースト及びプレートの加硫に対する1%の微粉化TTBLSの影響を、対照試料と対比させた結果の平均を示し、混合段階及び加硫段階の様々な期間におけるペースト及びプレート中の四塩基性硫酸鉛の割合(%)を示す。図4及び5に示す結果は、TTBLS結晶添加物を含有する試料では、加硫段階におけるペースト及びプレート中のTTBLSの割合(%)が、有意に増大したことを実証するものである。
図6の表は、自動車用ペースト及びプレートからなる第3試料の加硫に対する1%のバッテリーペースト添加物の影響を示す。図6の表は、ペースト混合段階及び加硫段階における様々な期間の四酸化鉛、正方晶酸化鉛、四塩基性硫酸鉛、及び三塩基性硫酸鉛の量を、含有割合(%)で示す。図6はまた、ペースト混合段階及び加硫段階における様々な期間の鉛(Pb)の量を、含有割合(%)で示す。ペースト混合段階終了時と加硫段階の間の時間間隔に、本添加物を含む実験試料が示す四塩基性硫酸の含有量は、複数回の試行、並びにそれらの平均値において、有意に大きかった。
【0029】
図7は、第3試料を用いた場合の、自動車用ペースト及びプレートの加硫に対する1%の微粉化TTBLSの影響を、対照試料と対比させたグラフであり、混合段階及び加硫段階の様々な期間におけるペースト及びプレート中の四塩基性硫酸鉛の割合(%)を示す。図7に示す結果は、TTBLS結晶添加物を含有する試料を用いた場合の、加硫段階における、ペースト及びプレートのTTBLSの含有割合が有意に大きいことを実証するものである。
図9〜10の表は、自動車用ペースト及びプレートからなる第4試料及び第5試料それぞれの加硫に対する、1%のバッテリーペースト添加物の影響を、図8に示す対照試料と対比させて示す。図8〜10の表は、ペースト混合段階及び加硫段階における、四酸化鉛、正方晶酸化鉛、四塩基性硫酸鉛及び三塩基性硫酸鉛の量を含有割合(%)で示す。図8〜10の表はまた、ペーストの混合段階及び加硫段階における様々な期間の鉛(Pb)の量を、含有割合(%)で示す。図8の対照試料は、同じペースト混合物から異なる時点で採取した異なる試料を表す。本添加物を有する実験試料(図9及び10)では、ペースト混合段階終了時と加硫段階の間の時間間隔における四塩基性硫酸鉛の含有量が、複数回の試行において、対照試料(図8)より有意に大きかった。
【0030】
図11は、自動車用ペースト及びプレートの第4試料及び第5試料の加硫に対する1%の微粉化TTBLSの影響を示すグラフであり、混合段階及び加硫段階の様々な期間におけるペースト及びプレート中の四塩基性硫酸鉛の平均割合を示す。図11に示す結果は、TTBLS結晶添加物を含有する試料を用いた場合の、加硫段階における、ペースト及びプレートのTTBLSの含有割合(%)が有意に大きいことを実証するものである。図11は、本添加物を含むペースト混合物を用いて行った2回の試行、及び添加物を含まないペースト混合物を用いて行った1回の試行の結果を示す。本添加物を含むペースト混合物を用いて行った2回の試行の結果が示すように、この結果は非常に再現性が高く、各試料のTTBLSの割合は対照試料よりも有意に大きかった。
図12は、放電率5時間(通常の電池を5時間で完全に放電する電流流出(85アンペア))で試験した場合の、原動力工業用バッテリーセルの最初の容量に対する1%の微粉化TTBLSの影響を、対照試料と対比させて示す。図示するように、1%の微粉化TTBLSを含むセルの容量は、プレート及びペーストに従来の製法を用いた場合を上回った。1サイクルは、バッテリーが1回放電し、その後1回の充電を行う期間である。
【0031】
図13は、14の異なるペースト混合の結果を示す。このペースト化及び加硫試験は工業用ペースト混合物について行われたもので、本方法の優れた再現性を示す。使用したペースト混合物は、図1に記載のペースト混合物と同様であるが、混合方法を様々に変化させても同様の結果を呈した。この試験は、加硫プロセスを24時間行った後の完成プレートについて行った。
図14は、TTBLS添加物を用いて製造された3つの自動車用バッテリーから得られた試験データと、TTBLS添加物を用いていない3つの自動車用バッテリーから得られたデータとの対比、並びに、第1、第2及び第3予備容量の平均値、第1、第2及び第3の低温始動アンペア、及び20時間率におけるアンペア時を示す。図示するように、低温始動アンペア、予備容量、及び20時間率容量はすべて、プラスプレートの製造に用いるペーストに1%の微粉化TTBLS添加物を含むバッテリーにおいて向上した。自動車用バッテリーの性能も、マイナスプレートの製造用のマイナスペースト混合物に1%の微粉化TTBLS添加物を用いた場合に同様に向上した。これらの試験は、自動車用バッテリーの標準的な業界評価試験であり、自動車用バッテリーの試験のために国際電池評議会によって指定されているものである。
【0032】
要約すれば、混合段階及び加硫段階中の複数の時間間隔におけるバッテリーペースト混合物中のTTBLS及び遊離酸化鉛の量に関する前出の試験に示されるように、本発明は非常に望ましい結果をもたらし、同時に既知のバッテリーペースト材料の不都合及び/又は欠点を克服する。このような結果は、既知の先行技術によるバッテリーペースト及びバッテリーペースト材料、並びにその製造方法の改善である。
上述の明細書には、本発明の好適な実施形態及び選択的実施形態のみを記載した。上記以外の実施形態も実施可能である。従って、上記の用語及び表現は本発明を実施例によって説明するためだけに使用されているものであり、本発明を何ら限定しない。上述とは異なるが、本明細書に記載され、特許請求される本発明の精神と範囲から逸脱しない変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本バッテリー添加物を加えたプラス及びマイナスのプレート用の自動車用及び工業用ペースト混合物の成分を示す表である。
【図2A】工業用ペースト及びプレートからなる第1試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図2B】工業用ペースト及びプレートからなる第1試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図3A】工業用ペースト及びプレートからなる第2試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図3B】工業用ペースト及びプレートからなる第2試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図4】図2の試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図5】図3の試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図6A】自動車用ペースト及びプレートからなる第3試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図6B】自動車用ペースト及びプレートからなる第3試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図7】図6の試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図8】本添加物を含まない、自動車用ペースト及びプレートからなる対照試料の実験結果により、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図9】自動車用ペースト及びプレートからなる第4試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図10】自動車用ペースト及びプレートからなる第5試料の加硫に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図11】図9及び10に示す第4及び第5試料について、1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を、図8に示す対照試料と対比させて示すグラフである。
【図12】工業用バッテリーセルの最初の容量に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示すグラフである。
【図13】加硫サイクルの終了時における、14の異なるペースト混合物に対する1%(鉛酸の重量比)の本バッテリーペースト添加物の影響を示す表である。
【図14】本ペースト添加物を含む自動車用バッテリー、及び同添加物を含まない同バッテリーに対して行った、標準的産業評価試験の結果を示す表である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリープレート用ペーストに添加される化学成分であって:
酸化鉛、及び
硫酸
を含む成分。
【請求項2】
酸化鉛と硫酸とが反応することにより四塩基性硫酸鉛結晶が形成される、請求項1に記載の成分。
【請求項3】
TTBLS結晶が微粉化されている、請求項2に記載の成分。
【請求項4】
バッテリープレート用ペーストに添加される化学成分であって:
四塩基性硫酸鉛を含む第1の錯化剤、
酸化鉛を含む第2の錯化剤、及び
硫酸を含む第3の錯化剤
を含む成分。
【請求項5】
前記第1の錯化剤と、前記第2の錯化剤と、前記第3の錯化剤とが反応することにより、四塩基性硫酸鉛結晶が形成される、請求項4に記載の成分。
【請求項6】
酸化鉛が一酸化鉛を含む、請求項4に記載の成分。
【請求項7】
硫酸が希釈されている、請求項4に記載の成分。
【請求項8】
酸化鉛の斜方晶酸化鉛含有率が高い、請求項4に記載の成分。
【請求項9】
TTBLS結晶が微粉化される、請求項4に記載の成分。
【請求項10】
バッテリープレート用ペーストの添加物の製造方法であって:
水と酸化鉛を混合するステップ、及び
水と酸化鉛との混合物に硫酸を混合することによりTTBLS結晶を生成するステップ、
を含む方法。
【請求項11】
TTBLS結晶を微粉化するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バッテリープレート用ペーストの添加物の製造方法であって:
水と酸化鉛錯化剤とを混合することにより第1の物質を生成するステップ、
第1の物質に四塩基性硫酸鉛錯化剤を混合することにより第2の物質を生成するステップ、及び
第2の物質に硫酸錯化剤を混合することによりTTBLS結晶を生成するステップ
を含む方法。
【請求項13】
硫酸を希釈する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
硫酸の添加は、強く攪拌しながらゆっくりとした速度で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
酸化鉛の斜方晶酸化鉛含有率が高い、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
TTBLS結晶を微粉化するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
TTBLS結晶を遠心分離するステップ、
TTBLS結晶を乾燥させるステップ、及び
TTBLS結晶を微細粉砕機で処理することにより微粉化されたTTBLS結晶を生成するステップ
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
硫酸により第1の物質のpHを調節する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
酸化鉛が一酸化鉛を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
TTBLS結晶が、全式量の約1〜90%の水、全式量の約0.05〜20%の硫酸、全式量の約10〜70%の酸化鉛、及び全式量の約0.01〜5.00%の四塩基性硫酸鉛を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
約1〜2%の前記硫酸を水に加えることにより、水のpHを約2以下に低下させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
全式量の約5〜10%の硫酸を第1物質に加える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の成分がバッテリーペースト混合物に添加されているバッテリーペースト。
【請求項24】
請求項4に記載の成分がバッテリーペースト混合物に添加されているバッテリーペースト。
【請求項25】
プラスのバッテリープレートの製造に前記バッテリーペーストが使用されている、請求項24に記載のバッテリーペースト。
【請求項26】
マイナスのバッテリープレートの製造に前記バッテリーペーストが使用されている、請求項24に記載のバッテリーペースト。
【請求項27】
酸化鉛錯化剤と四塩基性硫酸鉛錯化剤とを混合することにより第1の物質を生成するステップ、
水と硫酸錯化剤とを混合することにより、第2の物質を生成するステップ、
第1の物質と第2の物質とを混合することにより、バッテリーペースト添加物を生成するステップ、及び
バッテリーペースト添加物とバッテリーペースト混合物とを混合するステップ
を含む、バッテリーペースト製造方法。
【請求項28】
微粉化された四塩基性硫酸鉛化学成分を生成するステップ、及び
前記化学成分をバッテリーペースト混合物に混合するステップ
を含む、バッテリープレート用ペースト製造方法。
【請求項29】
四塩基性硫酸鉛化学成分が:
酸化鉛、
硫酸、及び
水
からなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
水、
酸化鉛、
硫酸、及び
四塩基性硫酸鉛
からなるバッテリーペースト添加物。
【請求項31】
添加物が、全式量の約1〜90%の水、全式量の約0.05〜20%の希硫酸、全式量の約10〜70%の酸化鉛、及び全式量の約0.01〜5.00%の四塩基性硫酸鉛を含む、請求項30に記載のバッテリーペースト添加物。
【請求項32】
添加物によりバッテリーペースト中の四塩基性硫酸鉛の形成が促進された、請求項30に記載のバッテリーペースト添加物。
【請求項33】
微粉化された四塩基性硫酸鉛をバッテリーペースト混合物と混合することにより、バッテリーペーストを生成するステップ、及び
バッテリーペーストを加硫するステップ
を含む、バッテリープレート製造方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法により作成されたバッテリープレート。
【請求項35】
前記添加物が、ペースト混合物中約0.25〜5.00重量%の酸化鉛を含む、請求項23に記載の成分。
【請求項36】
前記添加物が、ペースト混合物中約0.25〜5.00重量%の酸化鉛を含む、請求項24に記載の成分。
【請求項1】
バッテリープレート用ペーストに添加される化学成分であって:
酸化鉛、及び
硫酸
を含む成分。
【請求項2】
酸化鉛と硫酸とが反応することにより四塩基性硫酸鉛結晶が形成される、請求項1に記載の成分。
【請求項3】
TTBLS結晶が微粉化されている、請求項2に記載の成分。
【請求項4】
バッテリープレート用ペーストに添加される化学成分であって:
四塩基性硫酸鉛を含む第1の錯化剤、
酸化鉛を含む第2の錯化剤、及び
硫酸を含む第3の錯化剤
を含む成分。
【請求項5】
前記第1の錯化剤と、前記第2の錯化剤と、前記第3の錯化剤とが反応することにより、四塩基性硫酸鉛結晶が形成される、請求項4に記載の成分。
【請求項6】
酸化鉛が一酸化鉛を含む、請求項4に記載の成分。
【請求項7】
硫酸が希釈されている、請求項4に記載の成分。
【請求項8】
酸化鉛の斜方晶酸化鉛含有率が高い、請求項4に記載の成分。
【請求項9】
TTBLS結晶が微粉化される、請求項4に記載の成分。
【請求項10】
バッテリープレート用ペーストの添加物の製造方法であって:
水と酸化鉛を混合するステップ、及び
水と酸化鉛との混合物に硫酸を混合することによりTTBLS結晶を生成するステップ、
を含む方法。
【請求項11】
TTBLS結晶を微粉化するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
バッテリープレート用ペーストの添加物の製造方法であって:
水と酸化鉛錯化剤とを混合することにより第1の物質を生成するステップ、
第1の物質に四塩基性硫酸鉛錯化剤を混合することにより第2の物質を生成するステップ、及び
第2の物質に硫酸錯化剤を混合することによりTTBLS結晶を生成するステップ
を含む方法。
【請求項13】
硫酸を希釈する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
硫酸の添加は、強く攪拌しながらゆっくりとした速度で行う、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
酸化鉛の斜方晶酸化鉛含有率が高い、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
TTBLS結晶を微粉化するステップを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
TTBLS結晶を遠心分離するステップ、
TTBLS結晶を乾燥させるステップ、及び
TTBLS結晶を微細粉砕機で処理することにより微粉化されたTTBLS結晶を生成するステップ
を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
硫酸により第1の物質のpHを調節する、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
酸化鉛が一酸化鉛を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
TTBLS結晶が、全式量の約1〜90%の水、全式量の約0.05〜20%の硫酸、全式量の約10〜70%の酸化鉛、及び全式量の約0.01〜5.00%の四塩基性硫酸鉛を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
約1〜2%の前記硫酸を水に加えることにより、水のpHを約2以下に低下させる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
全式量の約5〜10%の硫酸を第1物質に加える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の成分がバッテリーペースト混合物に添加されているバッテリーペースト。
【請求項24】
請求項4に記載の成分がバッテリーペースト混合物に添加されているバッテリーペースト。
【請求項25】
プラスのバッテリープレートの製造に前記バッテリーペーストが使用されている、請求項24に記載のバッテリーペースト。
【請求項26】
マイナスのバッテリープレートの製造に前記バッテリーペーストが使用されている、請求項24に記載のバッテリーペースト。
【請求項27】
酸化鉛錯化剤と四塩基性硫酸鉛錯化剤とを混合することにより第1の物質を生成するステップ、
水と硫酸錯化剤とを混合することにより、第2の物質を生成するステップ、
第1の物質と第2の物質とを混合することにより、バッテリーペースト添加物を生成するステップ、及び
バッテリーペースト添加物とバッテリーペースト混合物とを混合するステップ
を含む、バッテリーペースト製造方法。
【請求項28】
微粉化された四塩基性硫酸鉛化学成分を生成するステップ、及び
前記化学成分をバッテリーペースト混合物に混合するステップ
を含む、バッテリープレート用ペースト製造方法。
【請求項29】
四塩基性硫酸鉛化学成分が:
酸化鉛、
硫酸、及び
水
からなる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
水、
酸化鉛、
硫酸、及び
四塩基性硫酸鉛
からなるバッテリーペースト添加物。
【請求項31】
添加物が、全式量の約1〜90%の水、全式量の約0.05〜20%の希硫酸、全式量の約10〜70%の酸化鉛、及び全式量の約0.01〜5.00%の四塩基性硫酸鉛を含む、請求項30に記載のバッテリーペースト添加物。
【請求項32】
添加物によりバッテリーペースト中の四塩基性硫酸鉛の形成が促進された、請求項30に記載のバッテリーペースト添加物。
【請求項33】
微粉化された四塩基性硫酸鉛をバッテリーペースト混合物と混合することにより、バッテリーペーストを生成するステップ、及び
バッテリーペーストを加硫するステップ
を含む、バッテリープレート製造方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法により作成されたバッテリープレート。
【請求項35】
前記添加物が、ペースト混合物中約0.25〜5.00重量%の酸化鉛を含む、請求項23に記載の成分。
【請求項36】
前記添加物が、ペースト混合物中約0.25〜5.00重量%の酸化鉛を含む、請求項24に記載の成分。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−531222(P2007−531222A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505144(P2007−505144)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/009721
【国際公開番号】WO2005/094501
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506322558)ハモンド グループ,インク. (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/009721
【国際公開番号】WO2005/094501
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(506322558)ハモンド グループ,インク. (3)
【Fターム(参考)】
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