説明

バッテリーボックス気密検査装置

【課題】自動車の組立てラインにおいて、車両に搭載されたバッテリーボックスの気密検査を複数台並行して行い、且つ精度の高い検査装置の提供を目的とする。
【解決手段】バッテリーボックス4内に導かれて気密検査に用いられる検査気体を供給する検査気体供給装置1と、検査気体が流動する第1配管7に検査気体の流量と圧力を調整して減圧する第1調整器31を配設し、第1調整器31の下流側に複数の分岐部が配設される第1圧力調整領域3と、第1圧力調整領域3の下流側で前記分岐部に接続した第2配管8に第2調整器51を配設し、該第2調整器51によって調整された所定圧力の検査気体をバッテリーボックス4内に供給する第2圧力調整領域5と、一定圧力に保持された検査気体がバッテリーボックス4から漏出するのを検出する検査気体漏出検知装置6と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室外に配置されるバッテリーボックスの気密性を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の電気駆動の車両においては、大容量のバッテリーが収納されたバッテリーボックスを車両の室外に搭載している。乗用車の場合、バッテリーボックスは車両の床下等に配設されている。そのため、車両に搭載されている状態において、収納されているバッテリーに水等がかかるのを防止する必要がある。
このような要望から、収納容器の気密性をチェックする方法が種々開示されている。
【0003】
例えば、特開平10−300626号公報(特許文献1)の図6には、本願の図3に概念的に示されているように、被検査物052内にプローブガスをバルブ055の開閉によって、外気圧よりもやや高めの圧力を圧力計054によってチェックしながら充填し、被検査物052に形成された孔部等から漏出してくるプローブガスをスニッファーと呼ばれる機器で吸い込み、漏れを検知器053によって検出するように構成されている。
尚、排気側(図3における右側)のバルブ055は検査開始後に、被検査物052内のプローブガスを排出するものである。
【0004】
また、特開平10−300626号公報(特許文献1)の図7には、本願の図4に概念的に示すようにフード法と呼ばれる検出法が開示されている。
これは、被検査物052を検査容器としての密閉されたフード056内に配置し、真空ポンプ057を作動させて、フード056内を真空にさせて、被検査物052内にプローブガスをバルブ055の開閉によって、外気圧よりもやや高めの圧力を圧力計054によってチェックしながら充填する。その後一定期間経過後に検知器053にてプローブガスの濃度を検出法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−300626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これら開示された技術は、単にリーク検査装置を示すものであり、電気自動車のバッテリーボックスのように大量生産ラインで短時間に且つ効率的に検査するシステムを構築することまでは開示されてない。
特に、図4に示すフード法においては、被検査物052を検査容器としてのフード056内に収容しなければならず、被検査物が大物の場合には、フード056が大型化して検査システムが大型化して生産ラインのスペース確保等の設備面での問題を生じる。
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、自動車の組立てライン等において、車両に搭載されたバッテリーボックスの気密検査を複数台並行して行って効率的に、且つ精度の高い気密検査装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、
車両車室外に装着され内部にバッテリーが収納されるバッテリーボックスの気密検査装置において、前記バッテリーボックス内に導かれて気密検査に用いられる検査気体を供給する検査気体供給装置と、前記検査気体供給装置からの検査気体が流動する第1配管に、前記検査気体の流量と圧力を調整して減圧する第1調整器を配設し、該第1調整器の下流側に複数の分岐部が配設される第1圧力調整領域と、前記第1圧力調整領域の下流側で前記分岐部に接続した第2配管に、前記第1圧力調整領域の圧力よりさらに減圧する第2調整器を配設し、該第2調整器によって調整された所定圧力の検査気体を前記バッテリーボックス内に供給する第2圧力調整領域と、前記バッテリーボックスに供給されて一定圧力に保持された前記検査気体が前記バッテリーボックスから漏出するのを検出する検査気体漏出検知装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
かかる発明によれば、第1圧力調整領域を設けて、検査気体の流量及び圧力を下げ、さらに、第2圧力調整領域を設けて、検査気体の流量及び圧力を下げてから検査対象のバッテリーボックスに供給するので、第1圧力調整領域の第1配管中においては検査気体供給装置側の圧力と、バッテリーボックスに供給される圧力との中間的圧力に保持されて均一化するため、複数の分岐部へ均一圧力を作用することができ、複数の分岐部にそれぞれ接続する第2配管には均等に検査気体を供給することが可能になる。
その結果、各第2配管から供給される検査気体を複数のバッテリーボックスに偏りなく供給できるため、複数のバッテリーボックスを同時に同一条件で且つ、精度よく測定できる。
【0010】
また、本願発明において好ましくは、前記第2調整器をバイパスするバイパス配管を設け、該バイパス配管に検査気体の流通を開閉するバルブを配設して、該開閉バルブを開にして前記バッテリーボックス内に検査開始時に検査気体を急速に充填するバイパス部を配設するとよい。
【0011】
このような構成により、バッテリーボックス内に検査気体を早急に充填すると共に、バッテリーボックス内の検査気体の圧力を任意の圧力に微調整するための時間が短縮でき、検査時間が短縮でき検査効率が向上する。
【0012】
また、前記バッテリーボックスに連結され、前記バッテリーボックス内の前記検査気体の圧力が検査圧力より高い場合に大気に排出する検査気体排出手段を備えると良い。
【0013】
第2圧力調整領域の第2調整器によって、検査気体を更に、減圧することにより、圧力微調整器によるバッテリーボックス内の検査気体の圧力微調整が容易になる(圧力が高いと微調整が難しくなる)。
【0014】
また、本願発明において好ましくは、前記バッテリーボックスの前記検査気体の入口側に配設された第1圧力センサと、前記バッテリーボックスの前記検査気体の排出側に配設された第2圧力センサとを備え、前記第1および第2圧力センサからの圧力がほぼ等しくなってから前記検査気体漏出検知装置によって測定するようにするとよい。
【0015】
このような構成により、バッテリーボックス内の検査気体を入口側と排出側で検知することにより、バッテリーボックス内の検査気体の圧力が均一に成っていることを検知することにより、バッテリーボックス内に検査気体が偏って充填されている状態での不正確な計測を排除して、バッテリーボックスの気密性を精度よく確認できる。
【0016】
また、本願発明において好ましくは、前記検査気体供給装置は、複数の検査気体供給経路と、該検査気体供給経路の検査気体供給源となる検査気体ボンベと、該検査気体ボンベの圧力が任意以下の圧力に低下した場合に警報を発する警報装置と、前記検査気体ボンベの圧力が任意の圧力以下に低下した場合に、前記検査気体供給経路を他の検査気体ボンベに切替える切替バルブとを備えるとよい。
【0017】
このような構成により、検査気体の無供給の状態をなくして、検査の非稼働状態をなくして検査効率を向上できる。
【0018】
また、本願発明において好ましくは、前記検査気体は窒素(N)と水素(H)の混合ガスであり、前記検査気体漏出検知装置は前記バッテリーボックスの外周面に沿って移動可能で、且つ前記水素(H)濃度を検出するリークテスターであることを特徴とする。
【0019】
このような構成により、検査気体を、分子量の小さい水素(H)と不活性気体である窒素(N)との混合ガスを使用するので、取扱いが容易であることと、分子量の小さい水素(H)の浸透性の高さを利用したので、検査気体漏出検知装置をバッテリーボックスの外周面に沿って移動することにより、気密不良を精度よく、且つ容易に検査できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両に搭載されたバッテリーボックスの気密性を複数台並行して検査することができ、大量生産ラインでの作業性の向上を図った検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る、気密検査装置の配管系統概略図を示す。
【図2】本発明の実施形態に係る、検査気体の供給経路切替バルブの概略構造で、(A)は第1経路からの供給、(B)は第2経路からの供給の場合を示す。
【図3】従来技術における第1の気密検査装置概略構成図を示す。
【図4】従来技術における第2の気密検査装置概略構成図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1において、1は本発明の実施形態における検査気体供給装置である。該検査気体供給装置1は、検査気体供給経路を切替える切替バルブ11と、供給する検査気体の圧力を一定に保つ出口側圧力調整器12と、検査気体供給経路を形成する検査気体ボンベB1(第1経路15)、B2(第2経路16)及び検査気体ボンベB1及びB2の圧力が規定値以下になると警報する警報装置2とで構成されている。
尚、本実施形態での検査気体は窒素95%、水素5%(体積比)の気体を使用している。
水素は分子量が小さいため、僅かな隙間でも浸透するので、被検査対象であるバッテリーボックス4内の気圧は大気圧に対して若干高い程度にすることで、十分に精度の高い検査が可能となる。
また、不活性気体である窒素と混合して使用することで、安全面でも取扱いが容易となる。
【0024】
図2(A)に示すように、切替バルブ11には、第1逆止弁143側に検査気体を検査気体ボンベB1から導き、開閉バルブ151を介して連結された第1経路15と、逆止弁133側に検査気体を検査気体ボンベB2から導き、開閉バルブ161を介して連結された第2経路16とが配設される。
第1経路15を流動する加圧された検査気体は常開されているバルブ(元弁)151を通り、第1逆止弁143を開く。第1圧力調整弁14はスプリング142により上方(図面上)へ押圧されているので開閉弁141は開放されている。
従って、検査気体は第1逆止弁143から第1圧力調整弁14を通り、配管17を経て、出口側圧力調整器12にて任意の圧力に減圧されて、第1配管7に流出していく。
一方、第1経路から第1圧力調整弁14を通り配管17側へ流動しなかった検査気体の一部は、第2圧力調整弁13を上方へ押圧するので、開閉弁131が閉状態になっている。
従って、第2経路16側から圧力が逆止弁133に作用しても、開閉弁131が閉状態になっているために、第2経路16側からの検査気体は流動を遮断された状態が維持される。
【0025】
ところが、図2(B)に示すように、第1経路15の検査気体が減少して、圧力が低下すると、第1逆止弁143はスプリング力に押されて閉状態になる。そうすると、第2圧力調整弁13を上方へ押圧していた検査気体の圧力が低下するので、第2圧力調整弁13のスプリング132が第2圧力調整弁13を下方(図面上)へ押し下げるので開閉弁131は開放される。
検査気体は第2逆止弁133から第2圧力調整弁13を通り、配管17を経て、出口側圧力調整器12にて任意の圧力に減圧されて第1配管7へ流出していく。
一方、第2経路16から第2圧力調整弁13を通り配管17側へ流動しなかった検査気体の一部は、第1圧力調整弁14を下方へ押圧するので、開閉弁141が閉状態になっている。
従って、第1経路15側から圧力が第1逆止弁143に作用しても、開閉弁141が閉状態になっているために、第1経路15側からの検査気体は流動を遮断された状態が維持される。
【0026】
ところが、第1経路15側は圧力が低下した状態なので、第1逆止弁143と第1圧力調整弁14間に配置した圧力センサ144(図1参照)が検知した信号に基づいて警報機2が第1経路15の検査気体ボンベB1の交換を知らせるようになっている。
また、第2経路16側にも同様に圧力センサ134(図1参照)が配設され、第2経路16の検査気体が不足すると、検査気体ボンベB2の交換を知らせるようになっている。
このようにして、検査気体の供給が途切れないようになっている。
尚、警報装置の警報方法については、ランプ、ブザー又は音声等で知らせることもでき、または、これらを併用すると、より効果が向上する。
【0027】
出口側圧力調整器12からの検査気体は第1配管7に導かれる。開閉バルブV1は常開しているバルブで、第1配管7での工事の際に検査気体の流出を防ぐための設備保全用(修繕作業)バルブである。
検査気体供給装置1の下流側には第1配管7によって連結されている第1圧力調整領域3が配設されている。この第1圧力調整領域3には第1配管7と、該第1配管7を流動する検査気体の流れを計測すると共に圧力調整(減圧)する流量計付圧力調整器(第1調整器)31が配設され、流量計付圧力調整器31の下流側には複数の分岐部71が直列に配置されて構成されている。
【0028】
分岐部71には後述するバッテリーボックス4の気密を検査する検査気体をバッテリーボックス4に供給する複数の第2配管8が、それぞれ第1配管7に接続して配設されて、検査ラインを形成している。すなわち、第1配管7が組み立て工場のメインの配管とされ、そこから分岐して各バッテリーボックスの検査ステーションに検査気体を供給するように配管されている。
【0029】
尚、図1においては紙面の都合上、第2配管8は2ライン表示してあるが、各第2配管8は同じ装置になっている。
開閉バルブV2は第1配管7の設備保全用バルブである。
また、第1圧力調整領域3には流量計付圧力調整器(第1調整)31を配設することにより、流量計付圧力調整器31の下流側の流量と圧力を下げることにより、検査気体の流動抵抗が下がり、第1圧力調整領域3内の圧力に大きな変化が生じずに均一化するため、複数の分岐部へ均一圧力を作用することができ、複数の分岐部にそれぞれ接続する第2配管8には均等に検査気体を供給することが可能になる。
その結果、各第2配管8における検査気体の圧力と流量が均等化でき、どの第2配管8において、同じ要領で検査作業ができるようにして、品質の安定が図れる。すなわち、第1配管7の上流側と下流側とに設けられた分岐部に接続される第2配管8において大きな圧力差が生じないようになっている。
また、複数本の第2配管8を並列に配置することにより、1台の検査に時間が要するため、大量生産の自動車組み立てライン等の場合、同時に複数台の検査が並行してできるようにしてあるため、検査効率の向上も図れる。
【0030】
各第2配管8には、配管に沿って、上流側から各第2配管8の稼働又は、休止用のバルブV3、第2配管8に流入する検査気体の圧力をチェックする圧力センサP3、バッテリーボックス4への検査気体充填及び停止用の開閉バルブV4、バッテリーボックス4内の検査気体の圧力を微調整する微圧用圧力調整器(第2調整器)51、微圧用圧力調整器51と並列に配設され、検査気体をバッテリーボックス4内に急速充填する開閉バルブV5を有したバイパス回路52、バッテリーボックス4の上流側に連結される連結管82が設けられている。
さらに、バッテリーボックス4内の検査気体を排出する排出装置である排出管83、さらに、バッテリーボックス4から検査気体が洩れているか、否かを検知する検査気体漏出検知装置であるリークテスター6を備えている。
排出管83にはバッテリーボックス4内下流側の検査気体の圧力を測定する第2圧力センサP2及び検査気体のバッテリーボックス4内の保持又は排出を行う開閉バルブV7が配設されている。
【0031】
第2圧力調整領域5には、微圧用圧力調整器51、バイパス回路52が設けられ、バッテリーボックス4と第1圧力調整領域3との間に介装され、バッテリーボックス4内の検査気体を第1圧力調整装置の圧力よりさらに減圧して圧力調整(大気圧+調整微圧に調整)する。
微圧用圧力調整器51はバッテリーボックス4内の検査気体の圧力を微圧にして、バッテリーボックス4内に無用な圧力が作用しないようにする。
また、前述したように、微圧用圧力調整器51に並列して、バッテリーボックス4内への検査気体の充填を急速に行う開閉バルブV5を有したバイパス回路52が設けてある。バイパス回路52は微圧用圧力調整器51が微圧の圧力調整を行う機器なので、検査気体の流動抵抗が大きくなっており、バッテリーボックス4内の空気の排出と、空気に替わって検査気体を充填するための検査時間を短縮させるために設けてある。
【0032】
また、バッテリーボックス4の検査気体流路の上流側には、バイパス回路52によってバッテリーボックス4内に入り過ぎた検査気体を検査気体排出装置である開閉バルブV6の開閉によって排出するリークマスター53が配設されている。
さらに、バッテリーボックス4には、バッテリーボックス4の上流側に配置された第1圧力センサP1と、バッテリーボックス4の下流側で第2配管83に配置された第2圧力センサP2とが配設され、第1圧力センサP1と第2圧力センサP2夫々の検出圧力値が同じになるように微圧用圧力調整器5を調整して、バッテリーボックス4内全体の検査気体圧力が均一化されたことを確認する。
これは、検査気体圧力を一定の圧力に保持することにより、バッテリーボックス4の部分的検査斑が発生するのを防止するものである。
【0033】
検査気体は窒素95%、水素5%(体積比)の気体を使用している。使用されている水素は分子量が小さいため、僅かな隙間でも浸透するので、バッテリーボックス4内の気圧は大気圧に対して若干高い程度にすることで、十分に精度の高い検査が可能となる。
バッテリーボックス4内の気圧を低く抑えることにより、バッテリーボックス4に不必要な圧力をかけないので、バッテリーボックス4の変形等の悪い影響を与えないですむ。
また、水素Hは不活性気体である窒素と混合して使用するようにしたので、安全面でも取扱いが容易となる。
【0034】
リークテスター6は空気を取り入れる吸気部61を把持して、バッテリーボックス4の外周部を周回させて、吸気した空気中の水素H含有量を分析して、バッテリーボックス4の気密性を判断するようになっている。
【0035】
検査の手順について説明する。
(1)手順1は、
第2配管8に沿って設けられた、V4、V5、V6、さらに排出管83に設けられたバルブV7が閉じていることを確認する。検査気体の供給開始時に検査気体が漏出するのを防ぐ。
(2)手順2は、
バッテリーボックス4に配設されている配電用安全プラグ(プラグを外すと通電がストップするように構成されたプラグ)を外し、連結管82を連結する。(バッテリーボックス4内を流れる検査気体の上流側に相当する。)
(3)手順3は、
排出管83をバッテリーボックス4の排熱ファンの排出口に連結する。
(4)手順4は、
開閉バルブV4、及びV7を開く。(バッテリーボックス4内への充填開始)
(5)手順5は、
バッテリーボックス4内への充填を早めるために開閉バルブV5を開く。
(6)手順6は、
排出管83の排出口にて、水素Hのリークチェックを行い、規定値をオーバしたら、開閉バルブV7を閉じる。(バッテリーボックス4内の空気を排出し、検査気体に入替るためである)
(7)手順7は、
バイパス回路52の開閉バルブV5を閉じる。バッテリーボックス4内の検査気体圧力を第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2にて確認する。
(8)手順8は、
検査気体圧力が規定値を超えている場合は開閉バルブV6を開閉させて圧力を低下させる。それでも圧力が超えている場合は、微圧用圧力調整器51の設定調整つまみ(図示省略)をLow側(図示省略)に回転させて微調整する。
検査気体圧力が規定値以下の場合は、微圧用圧力調整器51の設定調整つまみをHigh側(図示省略)に回転させて微調整する。
(9)手順9は、
バッテリーボックス4の上流側と下流側(排出側)の圧力(P1、P2の検出値)が設定許容誤差範囲内になるように調整する。(圧力差が大きく、設定許容誤差範囲内にならない場合には、大量の検査気体のリークが考えられるので、配管8及び連結管82の連結部、バッテリーボックス4等を確認する。
(10)手順10は、
検査方法(マニュアル)に従って測定を実施する。
(11)手順11は、
検査が終了したら開閉バルブV4を閉じ、排気用の開閉バルブV7を開き、バッテリーボックス4内の検査気体を排出する。
【0036】
本実施形態では、検査気体を5%の水素Hと、95%の窒素Nの混合(体積比)気体を使用することにより、取扱いが容易であることに加え、水素Hの浸透性の高さを利用することで、バッテリーボックス4内の検査気体の気圧を低く抑えることができ、バッテリーボックス4に不要な圧力が作用するのを抑制して、バッテリーボックス4の変形等の悪い影響を排除する効果を有している。
また、気密検査を複数台並行して実施するために、第1圧力調整領域3を設けることにより、複数の第2配管8に流入する検査気体の圧力及び、流入量を均一化でき、各第2配管8において同じ作業要領で検査ができるので、検査精度が向上でき、品質の安定化が図れる。
その結果、車両に搭載されたバッテリーボックスの気密性を複数台並行して検査することができ、大量生産ラインでの作業性の向上が図れる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
自動車の組立てライン等において、車両に搭載されたバッテリーボックスの気密検査を複数台並行して行って効率的に、且つ精度の高い気密検査ができるので、バッテリーボックス気密検査装置に用いることに適している。
【符号の説明】
【0038】
1 検査気体供給装置
2 警報機
3 第1圧力調整領域
4 バッテリーボックス
5 第2圧力調整領域
6 リークテスター(検査気体漏出検知装置)
7 第1配管
8 第2配管
11 切替バルブ
12 出口側圧力調整器
31 流量計付圧力調整器(第1調整器)
51 微圧用圧力調整器(第2調整器)
52 バイパス回路
53 リークマスター
61 吸気部
82 連結管
83 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両車室外に装着され内部にバッテリーが収納されるバッテリーボックスの気密検査装置において、
前記バッテリーボックス内に導かれて気密検査に用いられる検査気体を供給する検査気体供給装置と、
前記検査気体供給装置からの検査気体が流動する第1配管に、前記検査気体の流量と圧力を調整して減圧する第1調整器を配設し、該第1調整器の下流側に複数の分岐部が配設される第1圧力調整領域と、
前記第1圧力調整領域の下流側で前記分岐部に接続した第2配管に、前記第1圧力調整領域の圧力よりさらに減圧する第2調整器を配設し、該第2調整器によって調整された所定圧力の検査気体を前記バッテリーボックス内に供給する第2圧力調整領域と、
前記バッテリーボックスに供給されて一定圧力に保持された前記検査気体が前記バッテリーボックスから漏出するのを検出する検査気体漏出検知装置と、を備えたことを特徴とするバッテリーボックス気密検査装置。
【請求項2】
前記第2調整器をバイパスするバイパス配管を設け、該バイパス配管に検査気体の流通を開閉するバルブを配設して、該開閉バルブを開にして前記バッテリーボックス内に検査開始時に検査気体を急速に充填するバイパス部を配設したことを特徴とする請求項1記載のバッテリーボックス気密検査装置。
【請求項3】
前記バッテリーボックスに連結され、前記バッテリーボックス内の前記検査気体の圧力が検査圧力より高い場合に大気に排出する検査気体排出手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のバッテリーボックス気密検査装置。
【請求項4】
前記バッテリーボックスの前記検査気体の入口側に配設された第1圧力センサと、前記バッテリーボックスの前記検査気体の排出側に配設された第2圧力センサとを備え、前記第1および第2圧力センサからの圧力がほぼ等しくなってから前記検査気体漏出検知装置によって測定されることを特徴とする請求項1記載のバッテリーボックス気密検査装置。
【請求項5】
前記検査気体供給装置は、複数の検査気体供給経路と、該検査気体供給経路の検査気体供給源となる検査気体ボンベと、該検査気体ボンベの圧力が任意以下の圧力に低下した場合に警報を発する警報手段と、前記検査気体ボンベの圧力の圧力に伴いが任意の圧力以下に低下した場合に、前記検査気体供給経路を他の検査気体ボンベに切替える切替バルブとを備えたことを特徴とする請求項1記載のバッテリーボックス気密検査装置。
【請求項6】
前記検査気体は窒素(N)と水素(H)の混合ガスであり、前記検査気体漏出検知装置は前記バッテリーボックスの外周面に沿って移動可能で、且つ前記水素(H)濃度を検出するリークテスターであることを特徴とする請求項1記載のバッテリーボックス気密検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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