説明

バッテリー用温度センサーの取付用クリップ

【課題】バッテリー用温度センサーの取付用クリップに関し、温度センサーの抜けや移動、或いはガタ付きを防止することで、取付精度の向上並びに維持を図ることができるようにする。
【解決手段】クリップ(10)は、ケース(30)の外面に当接する当接部(40)、センサー本体(21)を挿入可能な挿通孔(41)、センサー本体(21)を挿通可能であり、内部に張出部(22)を保持可能な保持筒(50)、取付穴(31)に挿入可能な脚筒(60)、当接部(40)との間でケース(30)をはさみ持つ弾性爪(62)を備える。当接部(40)には、当接部(40)の直径方向の両端部にそれぞれ位置し、ケース(30)の外面に向かって突出し、一対の弾性爪(62)との間でケース(30)をはさみ持つ際に、当該当接部(40)を撓めて、開放端面(51)を狭める方向の力を保持筒(50)に作用させるための少なくとも一対のリブを設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリー用温度センサーの取付用クリップに関し、温度センサーの抜けや移動、或いはガタ付きを防止することで、取付精度の向上並びに維持を図ることができるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサーユニットを備えた電気自動車のバッテリ構造が知られている(例えば特許文献1の段落番号「0034」、図1、図6〜8参照)。
従来の温度センサーユニットは、バッテリケースの上壁のセンサー取付孔にねじ込み固定されるネジ部を有する筒状のユニット本体と、その内側に摺動自在に配設した合成樹脂性の温度検出部と、該温度検出部の先端部内に配設した温度センサーと、ユニット本体内に弾装されて温度検出部をユニット本体から突出する方向に付勢するスプリングとから構成されていた(例えば特許文献1の段落番号「0034」参照)。
【0003】
なお、自動車のバッテリケースに直接取り付けられる温度センサーではないが、従来、外気温センサー等に使用される温度センサーの取付構造(特許文献2の段落番号「0001」及び図1〜3参照)や、送風用エアダクトに取り付けられる温度センサーの取付構造(特許文献3の段落番号「0001」及び図1〜3参照)、バッテリの保持板に取り付けられる温度センサーの取付ホルダー(特許文献4の段落番号「0015」及び図1〜5参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-302847号公報
【特許文献2】特開2006-250763号公報
【特許文献3】特開2010-281787号公報
【特許文献4】特許第4025218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した従来の電気自動車のバッテリ構造の温度センサーユニットは、センサー取付孔にねじ込まなければならず、取付時に工具が必要となり、又、取り付けが面倒で、時間が掛かるという問題点があった。
また、バッテリの温度センサーは、取付精度が要求されるため、上記した従来の温度センサーユニットでは、スプリングを使用して温度検出部を突出する方向に付勢していた。このため、従来の温度センサーユニットは、部品点数が多く、構造が複雑であるという問題点があった。
【0006】
そこで、各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次の点にある。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を目的とする。
すなわち、請求項1に記載の発明は、構造が簡便で、簡便に装着ができるばかりでなく、温度センサーの抜けや移動、或いはガタ付きを防止することで、取付精度の向上並びに維持を図ることができるようにしたものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0007】
すなわち、請求項2に記載の発明は、一対のスリットを設けることで、当接部及び保持筒を撓み易くすることができるようにしたものである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0008】
すなわち、請求項3に記載の発明は、内部突起を設けることで、保持筒の筒内部での温度センサーのガタ付きを防止することができるようにしたものである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の目的に加え、次の点を目的とする。
【0009】
すなわち、請求項4に記載の発明は、係止部を設けていることで、保持筒の筒内部での温度センサーの抜けを防止し、又、温度センサーの装着時の節度感を持たせることができるようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
各請求項にそれぞれ記載された各発明は、上記した各目的を達成するためになされたものであり、各発明の特徴点を図面に示した発明の実施の形態を用いて、以下に説明する。
なお、カッコ内の符号は、発明の実施の形態において用いた符号を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
また、図面番号も、発明の実施の形態において用いた図番を示し、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、次の点を特徴とする。
【0011】
第1に、例えば図1及び図8に示すように、センサー本体(21)と、センサー本体(21)の基端部の周囲から張り出す張出部(22)とを有する温度センサー(20)を保持し、バッテリー(図示せず)を収納したケース(30)の内外に貫通した取付穴(31)に取り付けられ、センサー本体(21)の先端部をケース(30)内に突出させるためのバッテリー用温度センサー(20)の取付用クリップ(10)である。
【0012】
第2に、クリップ(10)は、例えば図1及び図8に示すように、次の構成を備える。
(1)当接部(40)
当接部(40)は、例えば図1及び図8に示すように、取付穴(31)より大径で、ケース(30)の外面に当接するものである。
(2)挿通孔(41)
挿通孔(41)は、例えば図1及び図8に示すように、当接部(40)を貫通し、張出部(22)より小径で、センサー本体(21)を挿入可能なものである。
【0013】
(3)保持筒(50)
保持筒(50)は、例えば図1及び図8に示すように、挿通孔(41)と連通し,当接部(40)からケース(30)の外側に向かって筒形に延び、端面が開放し、当該開放端面(51)から挿通孔(41)に通してセンサー本体(21)を挿通可能であり、内部に張出部(22)を保持可能なものである。
【0014】
(4)脚筒(60)
脚筒(60)は、例えば図1及び図8に示すように、挿通孔(41)と連通し,当接部(40)からケース(30)の内部に向かって筒形に延び、先端が開口し、挿通孔(41)から先端開口(61)を通してセンサー本体(21)を挿通可能であり、取付穴(31)に挿入可能なものである。
(5)弾性爪(62)
弾性爪(62)は、例えば図1及び図8に示すように、少なくとも一対有り、脚筒(60)の外側面から弾性的に突出し、取付穴(31)を通過する際に、脚筒(60)の筒内部に向かって撓み込み、取付穴(31)を通過後、復元して当接部(40)との間でケース(30)をはさみ持つものである。
【0015】
第3に、当接部(40)には、例えば図3、図5及び図6に示すように、当接部(40)の直径方向の両端部にそれぞれ位置し、ケース(30)の外面に向かって突出し、一対の弾性爪(62)との間でケース(30)をはさみ持つ際に、当該当接部(40)を撓めて、開放端面(51)を狭める方向の力を保持筒(50)に作用させるための少なくとも一対のリブ(42)を設けている。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、保持筒(50)には、例えば図3、図4及び図6に示すように、一対のリブ(42)の対向方向と直交する向きに開口し、開放端面(51)から保持筒(50)に向かって途中まで延びる少なくとも一対のスリット(52)を設けている。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0017】
すなわち、保持筒(50)の内周面には、例えば図4及び図6に示すように、当該保持筒(50)の筒内部に向かって突出し、温度センサー(20)の挿入方向に沿って延びる内部突起(53)を設けている。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、保持筒(50)の内周面には、例えば図4及び図6に示すように、温度センサー(20)の挿入方向の途中に位置し、保持筒(50)の筒内部に向かって突出し、張出部(22)の外側面に当接し、当該外側面に押されて、保持筒(50)を拡径する方向に弾性的に撓み、外側面が通過後、復元して保持筒(50)の底に位置する当接部(40)との間で張出部(22)をはさみ持つ係止部(54)を設けている。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。(請求項1)
請求項1に記載の発明によれば、次のような効果を奏する。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、構造が簡便で、簡便に装着ができるばかりでなく、温度センサーの抜けや移動、或いはガタ付きを防止することで、取付精度の向上並びに維持を図ることができる。
(請求項2)
請求項2に記載の発明によれば、上記した請求項1に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0020】
すなわち、請求項2に記載の発明によれば、一対のスリットを設けることで、当接部及び保持筒を撓み易くすることができる。
(請求項3)
請求項3に記載の発明によれば、上記した請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0021】
すなわち、請求項3に記載の発明によれば、内部突起を設けることで、保持筒の筒内部での温度センサーのガタ付きを防止することができる。
(請求項4)
請求項4に記載の発明によれば、上記した請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の効果に加え、次のような効果を奏する。
【0022】
すなわち、請求項4に記載の発明によれば、係止部を設けていることで、保持筒の筒内部での温度センサーの抜けを防止し、又、温度センサーの装着時の節度感を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】クリップ、温度センサー、パネルの一部を断面にした断面図である。
【図2】一半を断面にしたクリップの正面図である。
【図3】クリップの側面図である。
【図4】クリップの平面図である。
【図5】クリップの底面図である。
【図6】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図7】図3のB−B線に沿う一部断面図である。
【図8】一半を断面にしたクリップの取付状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図中、10は、クリップを示し、クリップ10は、図1及び図8に示すように、温度センサー20を保持し、バッテリー(図示せず)を収納したケース30の内外に貫通した取付穴31に取り付けられものである。
バッテリーは、図示しないが、電気自動車やハイブリッド自動車に用いられ、セルを積層したモジュールとして構成されている。バッテリーは、図示しないが、ケース30内に収容された状態で車両に搭載される。バッテリーは、内部での電気化学反応によって発熱し、その温度が上昇する。高温になるとバッテリーの発電効率が低下するため、バッテリーは、熱伝達性の高いケース30内に収容され、外部から冷却風を送風して冷却している。冷却風の送風を制御するため、ケース30内の温度を温度センサー20により測定している。
【0025】
ケース30には、図1に示すように、その上壁に内外に貫通した円形の取付穴31を設けている。
温度センサー20は、図示しないが、内部にサーミスタ素子が内蔵されたものである。温度センサー20は、図1に示すように、センサー本体21と、張出部22とを有する。
センサー本体21は、図示しないが、サーミスタ素子が内蔵され、円筒形に形成され、先端部が試験管状に半球形に丸く形成されている。張出部22は、センサー本体21の基端部の周囲から略ドーナツ形に張り出し、その外径をセンサー本体21の外径より大きく形成している。
【0026】
クリップ10は、適度な弾性と剛性とを有する熱可塑性合成樹脂、例えばPOM(ポリアセタール)により一体的に成形されている。
クリップ10は、図1に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(3)については、後述する。
(1)当接部40
(2)保持筒50
(3)脚筒60
なお、クリップ10の各部は、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(当接部40)
当接部40は、図1及び図8に示すように、取付穴31より大径で、ケース30の外面に当接するものであり、略円盤状に形成されている。
【0027】
当接部40には、図1、図3、図5、図6及び図8に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)及び(2)については、後述する。
(1)挿通孔41
(2)リブ42
なお、当接部40の各部は、上記した(1)及び(2)に限定されない。
(保持筒50)
保持筒50は、図1及び図8に示すように、挿通孔41と下面が連通し,当接部40からケース30の外側に向かって筒形、例えば上下に貫通した略円筒形に延び、端面、すなわち上面が略円形に開放し、当該開放端面51から挿通孔41に通してセンサー本体21を挿通可能であり、内部に張出部22を保持可能なものである。
【0028】
保持筒50は、上記した開放端面51を備えるほか、図3、図4及び図6に示すように、大別すると、次の各部を備える。
なお、次の(1)〜(3)については、後述する。
(1)スリット52
(2)内部突起53
(3)係止部54
なお、保持筒50の各部は、上記した(1)〜(3)に限定されない。
(脚筒60)
脚筒60は、図1及び図8に示すように、挿通孔41と上面が連通し,当接部40からケース30の内部に向かって筒形、例えば保持筒50より一回り小さく、上下に貫通した略円筒形に延び、先端、すなわち下面が略円形に開口し、挿通孔41から先端開口61を通してセンサー本体21を挿通可能であり、取付穴31に挿入可能なものである。
【0029】
脚筒60は、上記した先端開口61を備えるほか、図1及び図8に示すように、大別すると、次の各部を備える。
(1)弾性爪62
弾性爪62は、図1及び図8に示すように、少なくとも一対、例えば2個有り、脚筒60の外側面から弾性的に突出し、取付穴31を通過する際に、脚筒60の筒内部に向かって撓み込み、取付穴31を通過後、復元して当接部40との間でケース30をはさみ持つものである。
【0030】
2個の弾性爪62は、図5に示すように、後述する2個のリブ42と直交する向きに対向して位置する。弾性爪62は、図3に示すように、脚筒60の内外に貫通する断面が略チャネル状の切り欠きで囲まれた内側に位置し、上端部が自由端となり、下端部がヒンジとなって脚筒60に連接している。弾性爪62の外側面は、図7に示すように、上端部から下端部に向かって脚筒60の外径が徐々に縮径するように斜めに傾斜させている。
【0031】
なお、弾性爪62の個数として、2個を例示したが、これらに限定されず、図示しないが、3個以上の弾性爪を放射状に形成しても良い。
(挿通孔41)
挿通孔41は、図1及び図8に示すように、当接部40を上下方向に円形に貫通し、張出部22より小径で、センサー本体21を挿入可能なものである。
(リブ42)
リブ42は、図3、図5及び図6に示すように、少なくとも一対、例えば2個形成され、当接部40の直径方向の両端部にそれぞれ位置し、ケース30の外面に向かって突出し、脚筒60の一対の弾性爪62との間でケース30をはさみ持つ際に、当該当接部40を撓めて、保持筒50の開放端面51を狭める方向の力を保持筒50に作用させるためのものである。
【0032】
2個のリブ42は、図5に示すように、保持筒50の一対の弾性爪62と直交する向きに対向して位置し、互いに平行に形成されている。リブ42は、一対の弾性爪62が対向する方向に長く直線的に延びている。また、リブ42は、図3及び図6に示すように、断面半円形に形成されている。
なお、リブ42の個数として、2個を例示したが、これらに限定されず、図示しないが、3個以上の短いリブを形成しても良い。
(スリット52)
スリット52は、図3、図4及び図6に示すように、少なくとも一対、例えば2個形成され、一対のリブ42の対向方向と直交する向きに開口し、開放端面51から保持筒50に向かって途中まで延びるものである。
【0033】
スリット52は、保持筒50の内外に貫通し、上面が開放した略U字形に形成されている。
なお、スリット52の個数として、2個を例示したが、これらに限定されず、3個以上形成しても良い。
(内部突起53)
内部突起53は、図4及び図6に示すように、保持筒50の内周面に位置し、当該保持筒50の筒内部に向かって突出し、温度センサー20の挿入方向に沿って延びるものである。
【0034】
内部突起53は、図4に示すように、挿通孔41を中心として放射状に複数個、例えば4個形成され、断面が略半円形に形成されている。4個の内部突起53で囲まれる空間内には、温度センサー20の張出部22が通過可能であり、張出部22の外周面に摺接する。
なお、内部突起53の個数として、4個を例示したが、これらに限定されず、単数、2個、3個或いは5個以上形成しても良い。
(係止部54)
係止部54は、図4及び図6に示すように、保持筒50の内周面に位置し、温度センサー20の挿入方向の途中に位置し、保持筒50の筒内部に向かって突出し、張出部22の外側面に当接し、当該外側面に押されて、保持筒50を拡径する方向に弾性的に撓み、外側面が通過後、復元して保持筒50の底に位置する当接部40との間で張出部22をはさみ持つものである。
【0035】
係止部54は、図4に示すように、少なくとも一対、例えば2個形成されている。2個の係止部54は、2個のスリット52の対向方向と直交する向きに対向させている。係止部54は、図6に示すように、開放端面51に臨む上側の面を、筒中央に向かって下り傾斜させた断面が略台形形に形成されている。係止部54の下側の面は、温度センサー20の挿入方向に対して直交した切り立った斜面となり、保持筒50の底に位置する当接部40との間隔を、温度センサー20の張出部22の上下の高さに略一致させている。
(クリップ10の使用方法)
つぎに、上記した構成を備えるクリップ10の取付方法について説明する。
【0036】
すなわち、クリップ10に、図8に示すように、温度センサー20を装着し、その後、クリップ10をケース30の取付穴31に取り付ける。
まず、センサー本体21の先端部を、図1及び図8に示すように、保持筒50の開放端面51に合わせて挿入する。
センサー本体21を挿入すると、保持筒50の筒内部を通って当接部40の挿通孔41に進む。さらに、センサー本体21を挿入すると、挿通孔41から脚筒60の筒内部に進行し、その先端開口61を通して、図8に示すように、センサー本体21の先端部が外部に突出する。
【0037】
一方、温度センサー20の張出部22も、開放端面51から保持筒50の筒内部に進行する。張出部22が筒内部に進行すると、その外周面が筒内部に突出する内部突起53と摺接する。さらに、張出部22が進行すると、その外周面が筒内部に突出する係止部54に当接する。
ここで、温度センサー20を強く押し込むと、張出部22の外周面に係止部54が押され、スリット52の溝幅が拡開され、保持筒50の内径が拡径される。このため、張出部22が2個の係止部54の間隔を押し広げるようにして、保持筒50の底に向かって進行する。張出部22が2個の係止部54の間隔内を通過すると、樹脂の弾性復元力により、保持筒50の内径が縮径し、図8に示すように、張出部22が2個の係止部54と、保持筒50の底に位置する当接部40との間ではさみ持たれる。
【0038】
このため、張出部22は、2個の係止部54により、保持筒50の開放端面51からの抜けが阻止され、温度センサー20がクリップ10に保持される。
つぎに、クリップ10の脚筒60を、図1及び図8に示すように、ケース30の取付穴31に合わせて挿入する。
脚筒60を挿入すると、その2個の弾性爪62が取付穴31の内縁と当接する。ここで、脚筒60を強く押し込むと、その2個の弾性爪62が取付穴31の内縁に押され、互いに接近する方向に撓み込む。2個の弾性爪62が取付穴31を通過すると、樹脂の弾性復元力により、拡開し、図8に示すように、当接部40の底面との間でケース30をその内外方向から弾性的にはさみ持つ。
【0039】
このとき、2個の弾性爪62が完全には復元せず、蓄えた弾性力により、脚筒60を取付穴31の奥、すなわちケース30の内部に引き込もうとする力が発生する。
一方、当接部40の底面から突出する2個のリブ42が、ケース30の表面に当接する。
2個のリブ42は、当接部40の外周縁部に離れて対向するため、脚筒60をケース30の内部に引き込もうとする力により、当接部40の内周縁部がケース30の表面に接近し、当接部40が撓んで湾曲する。
【0040】
当接部40が撓んで湾曲すると、2個のリブ42と直交して位置する2個のスリット52の溝幅が狭まり、保持筒50の内径が縮径される。2個のスリット52の溝幅は、上側に位置する開放端面51側に向かって徐々に溝幅が狭くなった略逆V字形にすぼまる。
このため、筒内部の2個の係止部54の対向間隔を狭めるように力が作用し、温度センサー20の挿入方向の移動や、ケース30からの抜けが阻止される。
【0041】
そこで、図8に示すように、脚筒60の先端開口61を通して、ケース30の内部に突出するセンサー本体21の先端部を、ケース30内に正確に位置させ、その取付精度を向上することができるばかりでなく、当該状態を長期間にわたって維持することができる。
なお、温度センサー20が故障した際には、クリップ10ごと交換しても良いし、或いは温度センサー20をクリップ10から抜き取って交換するようにしても良い。
【符号の説明】
【0042】
10 クリップ 20 温度センサー
21 センサー本体 22 張出部
30 ケース 31 取付穴
40 当接部
41 挿通孔 42 リブ
50 保持筒
51 開放端面 52 スリット
53 内部突起 54 係止部
60 脚筒
61 先端開口 62 弾性爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー本体と、前記センサー本体の基端部の周囲から張り出す張出部とを有する温度センサーを保持し、バッテリーを収納したケースの内外に貫通した取付穴に取り付けられ、前記センサー本体の先端部を前記ケース内に突出させるためのバッテリー用温度センサーの取付用クリップにおいて、
前記クリップは、
前記取付穴より大径で、前記ケースの外面に当接する当接部と、
前記当接部を貫通し、前記張出部より小径で、前記センサー本体を挿入可能な挿通孔と、
前記挿通孔と連通し,前記当接部から前記ケースの外側に向かって筒形に延び、端面が開放し、当該開放端面から前記挿通孔に通してセンサー本体を挿通可能であり、内部に前記張出部を保持可能な保持筒と、
前記挿通孔と連通し,前記当接部から前記ケースの内部に向かって筒形に延び、先端が開口し、前記挿通孔から先端開口を通してセンサー本体を挿通可能であり、前記取付穴に挿入可能な脚筒と、
前記脚筒の外側面から弾性的に突出し、前記取付穴を通過する際に、前記脚筒の筒内部に向かって撓み込み、前記取付穴を通過後、復元して前記当接部との間で前記ケースをはさみ持つ少なくとも一対の弾性爪とを備え、
前記当接部には、
前記当接部の直径方向の両端部にそれぞれ位置し、前記ケースの外面に向かって突出し、前記一対の弾性爪との間で前記ケースをはさみ持つ際に、当該当接部を撓めて、前記開放端面を狭める方向の力を前記保持筒に作用させるための少なくとも一対のリブを設けていることを特徴とするバッテリー用温度センサーの取付用クリップ。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリー用温度センサーの取付用クリップであって、
前記保持筒には、
前記一対のリブの対向方向と直交する向きに開口し、前記開放端面から前記保持筒に向かって途中まで延びる少なくとも一対のスリットを設けていることを特徴とするバッテリー用温度センサーの取付用クリップ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバッテリー用温度センサーの取付用クリップであって、
前記保持筒の内周面には、
当該保持筒の筒内部に向かって突出し、前記温度センサーの挿入方向に沿って延びる内部突起を設けていることを特徴とするバッテリー用温度センサーの取付用クリップ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッテリー用温度センサーの取付用クリップであって、
前記保持筒の内周面には、
前記温度センサーの挿入方向の途中に位置し、前記保持筒の筒内部に向かって突出し、前記張出部の外側面に当接し、当該外側面に押されて、前記保持筒を拡径する方向に弾性的に撓み、前記外側面が通過後、復元して前記保持筒の底に位置する前記当接部との間で前記張出部をはさみ持つ係止部を設けていることを特徴とするバッテリー用温度センサーの取付用クリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−159304(P2012−159304A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17182(P2011−17182)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】