説明

バッテリ及び車両

【課題】赤外線温度センサを用いて各単電池の温度を検出する際の検出精度の低下を抑制する。
【解決手段】階段状に配列された複数の単電池を有する電池群と、前記電池群の階段面から放射される赤外線を受光することにより、前記各単電池の温度に関する情報を取得する赤外線温度センサと、を有することを特徴とするバッテリ。前記配列方向に直交する直交方向視において、前記赤外線温度センサは、前記複数の単電池のうち該配列方向の一端部に位置する端部単電池における前記配列方向の端部に重なる位置に設けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単電池を配列したバッテリの測温技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車、ハイブリッド自動車の走行モータに供給される電力を蓄電するバッテリとして、複数の単電池を配列したバッテリ(例えば、特許文献1参照)が知られている。
この種のバッテリでは、温度が高くなると電池劣化が促進されるため、冷却装置が設けられる。具体的には、バッテリの温度が所定温度に達したときに、ブロアから供給される冷却風を互いに隣接する単電池の間に導通させることにより、バッテリは冷却される。
【0003】
バッテリの温度を検出する検出方法として、全ての単電池に熱電対、或いはサーミスタからなる接触式の温度センサを取り付け、各温度センサの取得結果を監視ユニットに送信することにより全ての単電池の温度を監視する方法が知られている。しかしながら、この方法では個々の単電池に接触式の温度センサを設ける必要があるため、温度センサ及び監視ユニットを接続する配線が複雑化するとともに、コストが増大する。
【0004】
また、別の検出方法として、一部の単電池に接触式の温度センサを取り付け、当該一部の単電池の温度情報、電圧情報及び電流情報などを用いて残りの他の単電池の温度を推定する方法が知られている。しかしながら、この方法では、推定精度の誤差を考慮する必要があるため、単電池の使用範囲(使用電圧の範囲)が制限される。そのため、必要な単電池の個数が増加し、バッテリのサイズ、重量及びコストが増大する。
【0005】
特許文献1は、電池パック内に一つの非接触型の赤外線温度センサを設けて、複数の単電池の温度を検出する検出方法を開示する。この検出方法によれば、上記検出方法の問題を解消することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−353480号公報
【特許文献2】特開2011−008963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
赤外線温度センサには、当該センサから離れる程検出領域(測定視野範囲)が広がり、測定対象物とともにその周辺に位置する物体の温度をも検出してしまうという問題がある。例えば、赤外線センサから最も離れた位置に位置する端部単電池の温度を検出する場合、当該端部単電池とともにその周辺に位置する他の物体の温度をも検出してしまい、測定精度が低下するおそれがある。しかしながら、特許文献1では、前記課題について何ら考慮されていない。そこで、本願発明は、赤外線温度センサを用いて各単電池の温度を検出する際の検出精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るバッテリは、(1) 階段状に配列された複数の単電池を有する電池群と、前記電池群の階段面から放射される赤外線を受光することにより、前記各単電池の温度に関する情報を取得する赤外線温度センサと、を有することを特徴とする。
【0009】
(2)上記(1)の構成において、前記配列方向に直交する直交方向視において、前記赤外線温度センサは、前記複数の単電池のうち該配列方向の一端部に位置する端部単電池における前記配列方向の端部に重なる位置に設けることができる。(2)の構成によれば、各単電池の温度に関する情報をより確実に取得できる位置に赤外線温度センサを配置することができる。
【0010】
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記赤外線温度センサは、サーモパイルを含み、前記サーモパイルは格子状に仕切られた複数の単位検出部を有し、これらの単位検出部はそれぞれ、対応する前記単電池の温度に関する情報を取得する。(3)の構成によれば、個々の単位検出部により各単電池の温度を検出することができる。また、複数のサーモパイルを設ける必要がないため、コストの削減及びバッテリの大型化を抑制することができる。
【0011】
(4)上記(1)〜(3)の構成において、前記電池群を挟んで前記赤外線温度センサと向きあう領域には、該バッテリの制御に関わる機器を搭載することができる。(4)の構成によれば、単電池を階段状に配列することにより形成されたデットスペースを有効に活用することができる。当該デットスペースに配置される機器は、バッテリの温度制御に用いられる機器(例えば、ブロア)、或いはバッテリの蓄電制御に関わる機器(例えば、J/Bボックス)であってもよい。
【0012】
(5)上記(1)〜(4)に記載のバッテリは、車両に搭載することができる。車両は、バッテリから供給される電力により回転するモータと、内燃機関とを動力源として兼用するハイブリッド自動車、或いはバッテリから供給される電力により回転するモータのみを動力源とする電気自動車であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、赤外線温度センサを用いて各単電池の温度を検出する際の検出精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両の一部におけるブロック図である。
【図2】バッテリをY軸方向から視たときの概略図である。
【図3】バッテリをZ軸方向から視たときの概略図である。
【図4】バッテリをX軸方向から視たときの概略図である。
【図5】赤外線温度センサのブロック図である。
【図6】比較例のバッテリをY軸方向から視たときの概略図である。
【図7】参考例のバッテリをZ軸方向から視たときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係るバッテリが搭載される車両の一部におけるブロック図である。点線で示す矢印は、信号の流れる方向を示している。
【0016】
同図を参照して、車両1は、バッテリ11と、電圧コンバータ12と、インバータ13と、モータ14と、システムメインリレー15と、ECU30と、監視ユニット31とを含む。車両1は、さらに、電源ラインPL1と、接地ラインSLとを含む。
【0017】
バッテリ11は、システムメインリレー15を構成するシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pを介して、電圧コンバータ12に接続されている。バッテリ11のプラス端子には、システムメインリレーSMR−Gが接続され、バッテリ11のマイナス端子には、システムメインリレーSMR−Bが接続されている。また、システムメインリレーSMR−Pおよびプリチャージ抵抗17は、システムメインリレーSMR−Bに対して並列に接続されている。
【0018】
これらのシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pは、コイルに対して通電したときに接点が閉じるリレーである。SMRがオンとは通電状態を意味し、SMRがオフとは非通電状態を意味する。
【0019】
ECU30は、電流遮断時、全てのシステムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pをオフする。すなわち、システムメインリレーSMR−G,SMR−B,SMR−Pのコイルに対する励磁電流をオフにする。ECU30は、CPU、MPUであってもよいし、これらのCPUなどにおいて実行される処理の少なくとも一部を回路的に実行するASIC回路を含んでも良い。
【0020】
システムメインリレーSMR−Pにはプリチャージ抵抗17が接続されている。このため、システムメインリレーSMR−Pをオンしてもインバータ13への入力電圧は緩やかに上昇し、突入電流の発生を防止できる。
【0021】
イグニッションがオフになると、ECU30は、先ずシステムメインリレーSMR−Bをオフし、続いてシステムメインリレーSMR−Gをオフする。これにより、バッテリ11とインバータ13との間の電気的な接続が遮断され、電源遮断状態となる。システムメインリレーSMR−B,SMR−G,SMR−Pは、ECU30から与えられる制御信号に応じて導通/非導通状態が制御される。
【0022】
電圧コンバータ12は、バッテリ11から供給される電圧を昇圧する。インバータ13は、電圧コンバータ12から与えられる直流電圧を三相交流に変換してモータ14に出力する。ECU30は、バッテリ11の充電状態(SOC:Stae of charge)を制御上限値及び制御下限値により規定される制御範囲に維持されるように制御する。
【0023】
次に、図2、図3及び図4を参照しながら、バッテリの構成について説明する。図2は、バッテリをY軸方向から視たときの概略図である。図3は、バッテリをZ軸方向から視たときの概略図である。図4は、バッテリをX軸方向から視たときの概略図である。X軸、Y軸及びZ軸は互いに直交する異なる三軸である。
【0024】
バッテリ11は、複数の単電池51と、赤外線温度センサ52と、ブロワ53とを含む。複数の単電池51は、X軸方向(配列方向に相当する)に階段状に配列されている。ここで、複数の単電池51における赤外線温度センサ52に面する領域(外面)を階段面11aと称するものとする。図3及び図4に図示するハッチングは、階段面11aを示している。複数の単電池51は、図示しないバスバーを介して互いに直列に接続されている。単電池51は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池、或いはキャパシタであってもよい。単電池51は、一つの電池セル、或いは複数の電池セルを接続した電池モジュールであってもよい。
【0025】
図5は、赤外線温度センサ52のブロック図である。点線で示す矢印は、信号の流れる方向を示している。赤外線温度センサ52は、集光光学系521と、サーモパイル522とを有する。集光光学系521は、各単電池51から放射される赤外線を集光する。サーモパイル522は、集光光学系521において集光された赤外線を受光した際に、受光した赤外線の強度に応じた第1の電気信号を出力する。
【0026】
ここで、サーモパイル522は、格子状に検出領域(以下、各検出領域を単位検出部と称する)が区切られており、これらの単位検出部はそれぞれ対応する単電池51から放射される赤外線を受光する。つまり、各検出領域は、対応する各単電池51が放射する赤外線の強度に応じた信号を前記第1の電気信号として出力する。
【0027】
また、サーモパイル522は、サーモパイル522自体の温度、つまり、基準温度に関する第2の電気信号を出力する。サーモパイル522から出力された第1及び第2の電気信号は、監視ユニット31に送信され、監視ユニット31からECU30に送信される。ECU30は、第1の電気信号から特定される温度を基準温度及び放射率に基づき補正し、各単電池51の温度を算出する。なお、放射率とは、ある温度の物体が熱放射するとき、その物体と同じ温度の黒体放射との比のことである。黒体とは、外部から入射する放射を、その波長、入射方向、偏向の方向に関わらず、すべて吸収する性質を持つ理想的な熱放射体のことである。
【0028】
ここで、図2乃至図6を参照しながら、複数の単電池51を階段状に配列することによる効果について詳細に説明する。説明の便宜上、複数の単電池51のうち配列方向の両端部に位置する単電池をそれぞれ近接単電池51a及び遠隔単電池51bと称するものとする。近接単電池51aは、赤外線温度センサ52の直下に位置し、遠隔単電池51bは、複数の単電池51のうち最も赤外線温度センサ52から離間した位置に位置する。
【0029】
図6は、比較例のバッテリを示しており、図2に対応している。図2及び図6に示す検出領域とは、各単電池に対応する単位検出部の検出領域(測定視野範囲)を示している。比較例のバッテリ100は複数の単電池51を一直線上に配列することにより構成されている。そのため、遠隔単電池51bに対応した単位検出部の検出領域が、遠隔単電池51bのサイズよりも大きくなるため、遠隔単電池51bとともに遠隔単電池51b以外の要素の温度が検出されるおそれがある。
【0030】
これに対して、図2に図示する実施形態の構成では、バッテリ11の測温面が階段面11aにより構成されているため、単位検出部の検出領域を対応する単電池51の外面内に収めることができる。したがって、遠隔単電池51bの温度を検出する際に、遠隔単電池51b以外の要素の温度が検出されるのを抑制することができる。これにより、各単電池51の温度を検出する際の検出精度を高めることができる。
【0031】
図2を参照して、ブロア53は、吸気した冷媒を隣接する単電池51の間に形成された隙間に導通させ、各単電池51を冷却する。図1及び図2を参照して、ECU30は、ブロア53の駆動を制御する。具体的には、ECU30は、複数の単電池51のうちいずれかの単電池51の温度が上限値に達した時に、ブロア53を作動する。これにより、各単電池51の劣化が抑制される。上述したように、各単電池51の温度を検出する際の検出精度が高まることにより、適切なタイミングでブロア53を作動させることができる。したがって、より効果的に単電池51の劣化が抑制される。なお、上限値は、単電池51の劣化速度が増速するのを抑制する観点から、電池の種類に応じて適宜設定することができる。
【0032】
ここで、単電池51がリチウムイオン電池である場合、過冷却された単電池51を高い電流値で放電することにより、Liが析出するという課題がある。したがって、単電池51の温度が下限値に達した時に、バッテリ11の放電を絞ることにより、Liの析出を抑止することができる。上述したように、各単電池51の温度を検出する際の検出精度が高まることにより、適切なタイミングでバッテリ11の放電を絞ることができる。したがって、より効果的にLiの析出を抑制することができる。
【0033】
図2を参照して、複数の単電池51を階段状に配列することにより、単電池51の下側にハッチングで示す三角形のスペースが設けられる。このスペースにブロア53などの冷却部品を配置することにより、スペースを有効に活用することができる。ここで、冷却部品は、ブロア53から送風される冷媒を単電池51に導通させる吸気ダクトを含んでも良い。なお、スペースには、システムメインリレー15(図1参照)を収容したジャンクションボックス、或いは、監視ユニット31(図1参照)などの充放電制御に関わる機器を配置することもできる。
【0034】
(参考例)
図7を参照しながら、上記実施形態の参考例について説明する。図7は、参考例に係るバッテリ110をZ軸方向から視たときの概略図である。単電池511〜51nは、上記実施形態と同様に階段状に配列されており、赤外線温度検出素子521〜52nは、Z軸方向視において隣接する単電池に跨るように配置されている。なお、nは、単電池の個数に対応している。
【0035】
すなわち、赤外線温度検出素子521は、単電池511のX軸方向における約半分の領域を検出領域としている。赤外線温度検出素子522は、単電池511の約半分の領域と単電池512の約半分の領域とを検出領域している。赤外線温度検出素子522と同様に、赤外線温度検出素子523〜52n−1はそれぞれ、対応する二つの単電池の約半分の領域を検出領域としている。赤外線温度検出素子52nは、単電池51nの約半分の領域を検出領域としている。
【0036】
ここで、赤外線温度検出素子521〜52nからそれぞれ出力される出力値をT1〜Tn、単電池511〜51nの温度をそれぞれT1〜Tnとしたときに、各単電池511〜51nの各温度T1〜Tnは、下記の連立方程式から算出することができる。
【式1】
【0037】

【0038】
上記式1における「1/2」は、各赤外線温度検出素子521〜52nの各単電池511〜51nに対する検出面積に対応している。したがって、赤外線温度検出素子521〜52nが各単電池511〜51nに対して位置ずれしている場合であっても、各検出面積を予め調べておくおとにより、各単電池511〜51nの各温度T1〜Tnをより正確に測定することができる。これにより、赤外線温度検出素子521〜52nの設置位置、或いは各単電池511〜51nの配列方法の自由度を高めながら、容易に各単電池511〜51nの温度を検出することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 車両 11 バッテリ 12 電圧コンバータ 13 インバータ
14 モータ 15 システムメインリレー 17 プリチャージ抵抗
30 ECU 31 監視ユニット 51 単電池 52 赤外線温度センサ
521 集光光学系 522 サーモパイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階段状に配列された複数の単電池を有する電池群と、
前記電池群の階段面から放射される赤外線を受光することにより、前記各単電池の温度に関する情報を取得する赤外線温度センサと、を有することを特徴とするバッテリ。
【請求項2】
前記配列方向に直交する直交方向視において、前記赤外線温度センサは、前記複数の単電池のうち該配列方向の一端部に位置する端部単電池における前記配列方向の端部に重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリ。
【請求項3】
前記赤外線温度センサは、サーモパイルを含み、前記サーモパイルは格子状に仕切られた複数の単位検出部を有し、これらの単位検出部はそれぞれ対応する前記単電池の温度に関する情報を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリ。
【請求項4】
前記電池群を挟んで前記赤外線温度センサと向きあう領域には、該バッテリの制御に関わる機器が搭載されていることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載のバッテリ。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載のバッテリを搭載した車両。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72650(P2013−72650A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209582(P2011−209582)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】