説明

バラスト水処理装置

【課題】本発明はバラスト水処理装置に関するもので、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種を十分かつ漏れなく殺滅、殺菌することを目的とする。
【解決手段】紫外線ランプ17と光触媒体18とを備え、この光触媒体18は、バラスト水流入口16からバラスト水流出口19へ向けて、開口断面積が徐々に小さくなる複数の筒状基材18a、18b、18c、18dを順次配置した構成とすることによって、バラスト水流入口16から流入し、整流板26によって均一な水流となったバラスト水が、バラスト水流出口19に達するまでに、紫外線と光触媒によって、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種に、殺滅に至るまでの十分なダメージを与え、殺滅済みとなった生物種から順に、光触媒体18を構成している筒状基材18a、18b、18c、18d内から、外へ排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶の安定航行を行うために、この船舶には、その停泊地において、バラスト水が適宜取り込まれ、また排出されるようになっているが、バラスト水を取り込む停泊地と、それを排出させる停泊地とは異なることが多いので、生態系の破壊が問題となっている。
【0003】
すなわち、バラスト水を取り込んだ停泊地に生息していた水生生物や細菌類等の生物種が、その環境とは異なる停泊地において排出されると、その排出地における生物種の生態系を破壊させることがあるのである。
【0004】
そこで、バラスト水を処理することにより、上述した生態系の破壊を防止しようとするバラスト水処理装置が提案されている(例えば下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/039146号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記バラスト水処理装置は、バラスト水流入口、およびバラスト水流出口を有するバラスト水処理槽と、このバラスト水処理槽内に、脱着自在に設けた紫外線照射手段、および光触媒作用を有するプレートを備えた構成となっており、水生生物や細菌類等の生物種に対して、直接的、または間接的に紫外線を照射することで、水生生物や細菌類のDNAの複製を阻害するので、それらを殺滅、殺菌するようにしている。また光触媒により生成される活性化されたOHラジカルと水生生物や細菌類を接触させることによって、それらを殺滅、殺菌するようにしている。
【0007】
水生生物や細菌類等の生物種を、紫外線および光触媒によって、殺滅、殺菌するものでは、バラスト水処理槽内をバラスト水が通過する際に、十分にバラスト水に紫外線を照射させ、また光触媒に直接接触させる必要がある。
【0008】
紫外線照射手段から照射される紫外線は、線光源からの拡散光であることから、遠方においては、単位面積あたりの紫外線強度が低下する。また、遠方においては、水中に浮遊している物質による散乱や吸収による影響で単位面積あたりの紫外線強度が低下する。
【0009】
つまり、紫外線線照射手段の近傍にバラスト水を通過させることで、殺滅、殺菌効果を高めることができる。
【0010】
一方、光触媒による殺菌効果はOHラジカルの発生部位である光触媒の近傍が最も高く、光触媒の活性は紫外線強度に依存するので、光触媒を紫外線照射手段に近接させることで高い活性を示すことができる。
【0011】
そのため、バラスト水中の水生生物や細菌類等の生物種を十分に殺滅、殺菌するためには、バラスト水処理槽内において、紫外線照射手段、および光触媒を近接配置することが望ましい。
【0012】
しかしながら、紫外線照射手段と光触媒を近接配置すると、紫外線照射手段と光触媒の間隔が狭くなり、バラスト水が通過する際の流動抵抗となるので、バラスト水処理槽による圧力損失が増加する。そのような状態ではバラスト水を吸排水するためのポンプに高い負荷がかかり、ポンプの消費電力の増加や高出力ポンプへの変更が必要となる。
【0013】
そこで本発明は、紫外線照射手段、および光触媒を用いたバラスト水処理装置内において、整流板により層流としたバラスト水に、万遍なくかつ十分に紫外線を照射させ、また光触媒に直接接触させることで、バラスト水処理装置による圧力損失を増加させることなく、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種を十分に殺滅、殺菌することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために本発明は、一端側にバラスト水流入口、および他端側にバラスト水流出口を有する筒状のバラスト水処理槽と、バラスト水処理槽の長手方向に着脱自在に設けた紫外線照射手段と、バラスト水流入口と紫外線照射手段の間に設けられた整流板と、バラスト水処理槽内に着脱自在に設けられた光触媒体とを備え、この光触媒体は、バラスト水流入口からバラスト水流出口へ向けて、開口断面積が徐々に小さくなる複数の筒状基材を順次配置した構成とすることによって、バラスト水流入口から流入し、整流板によって均一な層流となったバラスト水が、バラスト水流出口に達するまでに、紫外線と光触媒によって、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種に、殺滅に至るまでの十分なダメージを与え、殺滅済みとなった生物種から順に、光触媒体を構成している筒状基材内から、外へ排出するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のようにして、本発明は、光触媒体を複数の筒状基材を各段部とし、光触媒体は、バラスト水流入口からバラスト水流出口へ向けて、開口断面積が徐々に小さくなる複数の筒状基材を順次配置した構成とすることによって、万遍なくかつ十分に、バラスト水に紫外線を照射させ、また光触媒に直接接触させ、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種に、殺滅に至るまでの十分なダメージを与え、そして殺滅済みとなった生物種から順に光触媒体を構成している筒状基材内から、外へ排出する構成となり、殺滅済みの生物種が、未反応の生物種の反応を妨げることなく、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種を十分に殺滅、殺菌することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1に係るバラスト水処理装置を用いた船舶を示す斜視図
【図2】同船舶の要部正面図
【図3】同バラスト水処理装置の主要正面図
【図4】本発明の実施の形態1に係るバラスト水処理槽の構成図
【図5】同バラスト水処理槽の(a)垂直方向の断面図、(b)上蓋の下面から見た上面図
【図6】同バラスト水処理槽の紫外線および光触媒による殺滅可能領域および紫外線によるダメージ付与領域の説明図
【図7】各筒状基材18a〜18dと殺菌率の関係図
【図8】本発明の実施の形態2に係る筒状基材の接続部の斜視断面図
【図9】本発明の実施の形態3に係る筒状基材の接続部の斜視断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1の1は、港2に係留している船舶を示し、この船舶1の喫水線3の下方にはシーチェスト4が設けられている。
【0019】
図2は前記船舶1のバラスト水の取り込み、排出経路を示している。
【0020】
すなわち、船舶1内にバラスト水を取り込む場合には、まず船舶1内の切換弁5の吸引方向をシーチェスト4側に切換え、切換弁7の吐出方向を流入口8側に切換え、次に船舶1内のポンプ9を駆動する。
【0021】
すると、シーチェスト4から例えば海水がバラスト水として流入し、その後、ポンプ9、流入口8を介してバラストタンク10内に取り込まれる。
【0022】
また、バラストタンク10内のバラスト水を排出する場合には、切換弁5の吸引方向を流出口11側に切換え、切換弁7の吐出方向をシーチェスト4側に切換え、次にポンプ9を駆動する。
【0023】
すると、バラストタンク10内のバラスト水は流出口11から切換弁5、ポンプ9、切換弁7を介してシーチェスト4を介して船舶1外に排出される。
【0024】
図3は図2におけるポンプ9から切換弁7までの間に介在されたバラスト水処理装置12を示している。
【0025】
このバラスト水処理装置12は、バラスト水中に存在するゴミや50μm以上の大きさの大型水生生物を除去するための前処理装置13、紫外線照射手段と光触媒によって50μmより小さい小型水生生物を殺滅するためのバラスト水処理槽14、およびバラスト水処理槽14内のクリーニングを行なうための洗浄液タンク22により構成される。
【0026】
また、バラスト水処理槽14内の紫外線照射手段と図2のポンプ9は制御盤15によって制御されている。
【0027】
このため、シーチェスト4、ポンプ9を経由したバラスト水は、先ず、前処理装置13内に供給され、ここで、バラスト水中に存在するゴミや、50μm以上の大きさの大型水生生物が除去される。
【0028】
そしてこの状態で、バラスト水は、次にバラスト水流入口16から、バラスト水処理槽14内へと供給される。
【0029】
図4は実施の形態1に係る、バラスト水処理槽14の構成図である。
【0030】
バラスト水処理槽14内には、紫外線照射手段の一例として設けた複数の紫外線ランプ17と、バラスト水流入口16からバラスト水流出口19へ向けて、開口断面積が徐々に小さくなる複数の筒状基材18a〜18dを順次配置した構成とした光触媒体18とを設けている。
【0031】
また、バラスト水処理槽14は立設配置され、バラスト水流入口16を下端側に、バラスト水流出口19を上端側に配置している。
【0032】
つまり、立設配置されたバラスト水処理槽14の下端側にバラスト水流入口16、上端側にバラスト水流出口19が設けられ、またバラスト水処理槽14は上下方向に縦長状態となっている。そして、この縦長状態のバラスト水処理槽14内の中央部分長手方向に、前記複数の紫外線ランプ17が配置されているのである。そして、これら複数の紫外線ランプ17の外周と、立設配置されたバラスト水処理槽14の内周間に、前記光触媒体18が配置されているのである。
【0033】
このため、バラスト水処理槽14内に設けた紫外線ランプ17からの紫外線と、この紫外線を受けた光触媒体18により発生した、活性化された水酸ラジカルとにより、水生生物や細菌類等の生物種は殺滅させられることになる。
【0034】
そして、このように水生生物や細菌類等の生物種が殺滅させられたバラスト水が、次にはバラスト水処理槽14のバラスト水流出口19から、切換弁7、流入口8を介してバラストタンク10内に取り込まれる。
【0035】
なお、このとき図3において、切換弁20は前処理装置13とバラスト水流入口16を連通し、切換弁21はバラスト水流出口19と切換弁7を連通している。
【0036】
また、バラストタンク10内に取り込まれたバラスト水を排出する場合にも、バラスト水処理槽14を経由させて排出する。
【0037】
すなわち、図2に示した船舶1内の切換弁5の吸引方向を流出口11側に切換え、切換弁7の吐出方向をシーチェスト4側に切換え、次に船舶1内のポンプ9を駆動する(なお、この時にも切換弁20は前処理装置13とバラスト水流入口16を連通し、切換弁21はバラスト水流出口19と切換弁7を連通している)。
【0038】
そして、バラストタンク10内のバラスト水を、流出口11から切換弁5、ポンプ9を経由し、バラスト水流入口16から、バラスト水処理槽14内へと供給し、水生生物や細菌類等の生物種が殺滅した後、バラスト水流出口19、切換弁21、切換弁7、を介してシーチェスト4から船舶1外に排出する。
【0039】
このように、バラスト水を排出する場合にも、バラスト水処理槽14を経由させて排出することで、バラスト水の取り込み時に、バラスト水処理槽14で、水生生物や細菌類等の生物種を殺滅はしたが、例えば、それら生物種の休眠胞子などが処理できずに残ってしまった場合には、それがバラストタンク10内で発芽してしまう虞もあるので、このようなバラスト水の排出時にも、バラスト水処理槽14内で、それら生物種の殺滅を行うことができる。
【0040】
また、バラスト水の取り込み、および排出の後には、洗浄液タンク22の洗浄液によって、バラスト水処理槽14内の、紫外線ランプ17に付着している汚れを取り除き、汚れによって紫外線ランプ17の照射強度が弱まることを防ぐことができる。
【0041】
また、例えば、研磨剤を洗浄液とともに使用後のバラスト水処理槽14内に供給することで、光触媒体18の表面に付着した、水生生物の死骸などの汚れを、耐紫外線バインダーとともに取り除くことができる。
【0042】
これによって、光触媒体18の表面を新生面とすることができ、次回の使用の際にも、水生生物や細菌類等の生物種の殺滅・殺菌効果を高い状態で維持することができる。
【0043】
またこのとき、洗浄液は、図3に示す切換弁20で洗浄液ポンプ23とバラスト水流入口16を連通させ、切換弁21でバラスト水流出口19と洗浄液タンク22を連通させる。その状態で洗浄液ポンプ23を駆動することで、洗浄液タンク22内の洗浄液をバラスト水処理槽14内へ流入させることができる。
【0044】
なお、本実施形態では、バラスト水処理槽14は立設配置され、バラスト水流入口16を下端側に、バラスト水流出口19を上端側に配置し、バラスト水をバラスト水処理槽14の下端から上端にむけて、流水させる構造としているが、逆に流水させてもよい。これは、洗浄液についても同様である。
【0045】
以上のようにして、バラスト水をバラストタンク10内に取り込むまでの過程で、バラスト水処理槽14内において、万遍なくかつ十分に、バラスト水に紫外線を照射させ、また光触媒に直接接触させ、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種に、殺滅に至るまでの十分なダメージを与えるための、バラスト水処理槽14の構成について、以下で図4〜図6を用いて詳しく説明する。
【0046】
図4に示したように、バラスト水処理槽14内には、紫外線照射手段の一例として設けた複数の紫外線ランプ17と、バラスト水流入口16からバラスト水流出口19へ向けて、開口断面積が徐々に小さくなる複数の円筒の筒状基材18a、18b、18c、18dを順次配置した構成とした光触媒体18とを設けている。
【0047】
すなわち、光触媒体18は、最下段である筒状基材18aの直径から、筒状基材18b、筒状基材18c、筒状基材18dにかけて徐々にその直径を小さくし、最上段である筒状基材18dの直径を最小とした、多段形状を成している。
【0048】
なお、本実施形態では、光触媒体18は4段型の多段形状としているが、本発明の実施の形態としては、これに限られるものではない。光触媒体18の配置と段数は、バラスト水処理槽14に要求される処理水量と紫外線ランプ17の殺滅殺菌効果が得られる範囲、および光触媒体18の殺滅殺菌効果の得られる範囲により定まるものである。
【0049】
また、複数の紫外線ランプ17は、上蓋24に着脱可能に設けられており、光触媒体18はその複数の紫外線ランプ17を略中心とし、上蓋24と離間した状態で、複数の支持体25によって、その一端を上蓋24に固定されている。
【0050】
紫外線ランプ17と光触媒体18は、定期的に交換されることで、その殺滅効果を維持できるので、このように、ともに上蓋24に固定しておくことで、交換の際に便利である。
【0051】
図5(a)は本実施形態に係るバラスト水処理槽14の垂直方向の断面図である。
【0052】
バラスト水流入口16と紫外線照射手段の一例である紫外線ランプ17との間には、多数の孔が設けられた、円盤状の整流板26が設けられている。
【0053】
このとき、整流板26は最下段の筒状基材18aと空間をもって設けることが望ましい。
【0054】
このようにすることで、バラスト水流入口16から流入したバラスト水は、整流板26によって、均一な層流となった後、図5(a)に示す領域Aにおいて、渦を発生させることができ、発生した渦によって、整流板26の幅で均一となった水流を、最下段の筒状基材18aの内周にまで広げることができる。
【0055】
また、整流板26の面積は、最上段に位置する筒状基材18dの開口断面積と同等か、もしくはそれ以上とするとよい。
【0056】
これによって、バラスト水流入口16から流入するバラスト水を、光触媒体18の全体にわたって均一な層流とすることができる。
【0057】
また、筒状基材18aは、バラスト水処理槽14の内壁面に対して、密着するように設けるとよい。
【0058】
図5(b)は本実施形態に係るバラスト水処理槽14の上蓋24の下面から見た上面図である。
【0059】
図5(b)に示されるように、紫外線ランプ17は光触媒体18の略中心に配置されている。これによって、均等な照射強度で、紫外線ランプ17から光触媒体18へ紫外線を照射させることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、図4および、図5(b)に示されるように、バラスト水処理槽14と光触媒体18を構成する筒状基材18a〜18dは、円筒形としているが、それらの開口断面の形状は、円筒に限られるものではなく、楕円形や、四角形に代表されるその他の多角形によって実施されるものであっても、本発明の効果を得ることができる。
【0061】
また、整流板26についても、その形状は円盤に限られず、バラスト水処理槽14の形状に合わせた形状であれば、楕円形や、四角形に代表されるその他の多角形によって実施されるものや、流入するバラスト水の水圧に耐えるようドーム状のものであっても、本発明の効果を得ることができる。
【0062】
次に、本実施形態の効果として、万遍なくかつ十分に、バラスト水に紫外線を照射させ、また光触媒に直接接触させ、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種に、殺滅に至るまでの十分なダメージを与え、そして殺滅済みとなった生物種から順に光触媒体18を構成している筒状基材18a〜18d内から、外へ排出する構成となり、殺滅済みの生物種が、未反応の生物種の反応を妨げることなく、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種を十分に殺滅、殺菌することができる仕組みについて、説明する。
【0063】
図6は、本実施形態に係るバラスト水処理槽14内の、紫外線および光触媒による殺滅可能領域の説明図である。
【0064】
一般に、紫外線ランプ17の照射強度は、距離によって著しく減衰するため、本実施形態では、照射強度の弱いところにおいては、光触媒で殺滅効果を補うことで、十分に殺滅させる構成としている。
【0065】
そのため、バラスト水処理槽14内はその紫外線照射強度と、光触媒と接触の有無の違いによって、3つの領域に分けることができる。
【0066】
図6に示される領域Bは、紫外線ランプ17からの距離が近いため、紫外線のみでもバラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種を殺滅可能な領域である。
【0067】
すなわち、バラスト水流入口16から流入し、整流板26によって均一な層流となって、領域Bを通過して、上方に位置するバラスト水流出口19に達するまでに、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種は、紫外線によって十分に殺滅される。
【0068】
図6に示される領域Dは、光触媒体18に接触させることで、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種を殺滅させることができる領域である。
【0069】
このような効果が得ることができる領域Dの殺滅可能領域の、光触媒体18の径方向の幅は、下端から上端にかけて、大きくなっている。これは、下端から上端にかけて、筒状基材18a〜18dの直径が小さくなることで、紫外線ランプ17から光触媒体18までの距離が近くなり、光触媒へ照射される紫外線の強度が強くなるため、光触媒がより活性化され光触媒による殺滅効果が高まるからである。
【0070】
また、下段の筒状基材18a、18b、または18cの内面と、その上段の筒状基材18b、18c、または18dの外面との間に形成される隙間は、下段の筒状基材18a、18b、または18cにおける領域Dの殺滅可能領域の、各筒状基材の径方向の幅と等しく構成されると良い。
【0071】
例えば、筒状基材18a内の領域Dの殺滅可能領域の、光触媒体18の径方向の幅と、筒状基材18aの内面と筒状基材18bの外面との間に形成される隙間の径方向の幅を等しく構成する。
【0072】
これによって、バラスト水流入口16から流入したバラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種は、筒状基材18a内の領域Dの殺滅可能領域において光触媒体18に接触することによって殺滅された後、筒状基材18aの内面と筒状基材18bの外面との間に形成される隙間から、光触媒体18の外へと流出することとなる。
【0073】
このように、下段の筒状基材18a、18b、または18cの内面、と上段の筒状基材18b、18c、または18dの外面との間に形成される隙間を、下段の筒状基材18a、18b、または18cにおける、領域Dの殺滅可能領域の径方向の幅と等しく構成することで、下段の領域Dの殺滅可能領域で殺滅済みの生物種のみを、光触媒体18の外へ流出させることができる。
【0074】
また、領域Dの殺滅可能領域の、光触媒体18の径方向の幅は、下端から上端にかけて、大きくなるため、下段の筒状基材18a、18b、または18cの内面と上段の筒状基材18b、18c、または18dの外面との間に形成される隙間も同等に、下端から上端にかけて広く形成される。
【0075】
図6に示される領域Cは、領域Bと領域Dの間であり、領域Bよりも紫外線ランプ17からの距離が遠く、紫外線によって、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種にある程度のダメージを与えることはできるが、完全に殺滅に至らせるためには、紫外線のみでは不十分であるため、光触媒体18による殺滅効果が加わることで、殺滅に至らせることができる領域である。
【0076】
すなわち、バラスト水流入口16から流入したバラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種は、整流板26によって均一な層流となって、紫外線によってある程度のダメージを受けながら、領域Cを通過し、水流に従って領域Dへ達すると、光触媒体18の殺滅効果によって、殺滅に至り、下段の筒状基材18a、18b、または18cの内面と上段の筒状基材18b、18c、または18dの外面との間に形成される隙間から、光触媒体18の外へと流出することとなる。
【0077】
一方、筒状基材間の隙間がない場合を想定すると、光触媒体18の効果によって殺滅された生物種、すなわち領域Dにおいて殺滅された生物種は、紫外線ランプ17と光触媒体18の間に存在しつづけることになる。その結果、紫外線ランプ17からの紫外線を遮蔽することや、光触媒体18に接触することで光触媒の活性を低下させるなどの悪影響を及ぼすことが予測される。
【0078】
このようにして、バラスト水流入口16から流入したバラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種は、領域Bまたは領域Cおよび領域Dを通過し、いずれの生物種も漏れることなく十分に殺滅され、最も上段に位置する筒状基材18dの上端の開口部、もしくは、下段の筒状基材18a、18b、または18cの内面と、その上段の筒状基材18b、18c、または18dの外面との間に形成される隙間から、光触媒体18の外へ抜け出た後には、上端に備えられた、バラスト水流出口19から流出していく。
【0079】
なお、筒状基材18dの上端はバラスト水流出口19の下端よりも上にあるとよい。
【0080】
上にあると光触媒体18の中の流れがバラスト水流出口19へ直接流れないため、バラスト水処理槽14の内壁に沿った流れが狭い隙間でもバラスト水流出口19へ流れやすくなる。
【0081】
また、バラスト水処理槽14内において、下段から上段へかけて筒状基材18a〜18dの高さを低くしてもよい。
【0082】
これは、下端から上端にかけて、筒状基材18a〜18dの直径が小さくなることで、紫外線ランプ17から光触媒体18までの距離が近くなり、光触媒へ照射される紫外線の強度が強くなるとともに、光触媒による殺滅効果が高くなるため、下段から上段へかけて筒状基材18a〜18dの高さを段階的に低くしても、殺滅するに十分な効果を得ることができるからである。
【0083】
図7は、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種が、各筒状基材18a〜18dを通過するごとに殺菌される率を表している。
【0084】
図7に示されるように、下段から上段へかけて筒状基材18a〜18dの高さを段階的に低くしても、すなわち、各筒状基材における流路の長さを短くしても、上流のバラスト水中の生物種ほど、紫外線によるダメージを長時間受けており、また光触媒へ照射される紫外線の強度が強くなるとともに、光触媒による殺滅効果が高くなるため、筒状基材18aから筒状基材18dまで、それぞれにおいてほぼ同等の殺滅効果を得ることができる。
【0085】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1の構成に加えて、光触媒体18を構成する、それぞれの筒状基材同士の接続方法に特徴を有するものである。
【0086】
図8は、実施の形態2における筒状基材18a〜18d同士の接続方法を示す図である。
【0087】
図8に示されるように、上下に隣接して位置する筒状基材18a〜18dは、上段に位置する、開口断面積の小さい筒状基材が内側に位置するように、上段の筒状基材18b、18c、または18dの下端と、下段の筒状基材18a、18b、または18cの上端とが隙間を空けて重なるように配置され、その重複部分によって固定される。
【0088】
バラスト水処理槽14にバラスト水が流入する際、光触媒体18には非常に大きな水圧がかかるため、それぞれの筒状基材18a〜18dはそれに耐えうるように固定されている必要がある。
【0089】
本実施形態では、上段の筒状基材18b、18c、または18dの下端と、下段の筒状基材18a、18b、または18cの上端とが隙間を空けて重なる重複部分をリベットやボルトによって固定することで、その水圧に耐えうる強度を光触媒体18に与えている。
【0090】
また、上段の筒状基材18b、18c、または18dの下端と、下段の筒状基材18a、18b、または18cの上端は、図8に示されるように、どちらもその断面が直線となっている。
【0091】
この形状によって、上段の筒状基材18b、18c、または18dの下端と、下段の筒状基材18a、18b、または18cの上端とが隙間を空けて重なっている部分を流路として、光触媒体18内から光触媒体18外へ流出する、殺滅、殺菌済みのバラスト水や、光触媒体18外を流れる、既に殺滅、殺菌済みのバラスト水の流れの様相を乱すことがないものとなる。また、製造・加工がし易いという利点も得ることができる。
【0092】
(実施の形態3)
図9は、実施の形態3における筒状基材同士の接続方法を示す図である。
【0093】
図9に示されるように、本実施形態では、下段の筒状基材の上端が、円周方向外側へ向けて広がる形状としている。
【0094】
すなわち、筒状基材18d以外の各筒状基材18a〜18dの上端のみが円周方向外側へ向けて広がる形状となっている。この形状によって、上段の筒状基材18b、または18dの下端と、下段の筒状基材18a、18b、または18cの上端とが隙間を空けて重なっている部分を流路として、光触媒体18内から光触媒体18外へ流出する、殺滅、殺菌済みのバラスト水が、より光触媒体18外へ流出し易くなる。また、これと同時に、光触媒体18外を流れる、既に殺滅、殺菌済みのバラスト水が、光触媒体18の内側へ流入しにくくすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
以上のように本発明は、光触媒体を複数の筒状基材を各段部とし、光触媒体は、バラスト水流入口からバラスト水流出口へ向けて、開口断面積が徐々に小さくなる複数の筒状基材を順次配置した構成とすることによって、万遍なくかつ十分に、バラスト水に紫外線を照射させ、また光触媒に直接接触させ、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種に、殺滅に至るまでの十分なダメージを与え、そして殺滅済みとなった生物種から順に光触媒体を構成している筒状基材内から、外へ排出する構成となり、殺滅済みの生物種が、未反応の生物種の反応を妨げることなく、また、漏れることなく、バラスト水中に存在する水生生物や細菌類等の生物種を十分に殺滅、殺菌することができるものである。
【0096】
したがって、船舶用のバラスト水処理装置としての活用が期待される。
【符号の説明】
【0097】
1 船舶
2 港
3 喫水線
4 シーチェスト
5 切換弁
7 切換弁
8 流入口
9 ポンプ
10 バラストタンク
11 流出口
12 バラスト水処理装置
13 前処理装置
14 バラスト水処理槽
15 制御盤
16 バラスト水流入口
17 紫外線ランプ
18 光触媒体
19 バラスト水流出口
20 切換弁
21 切換弁
22 洗浄液タンク
23 洗浄液ポンプ
24 上蓋
25 支持体
26 整流板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側にバラスト水流入口、および他端側にバラスト水流出口を有する筒状のバラスト水処理槽と、
前記バラスト水処理槽の長手方向に着脱自在に設けた紫外線照射手段と、
前記バラスト水流入口と前記紫外線照射手段の間に設けられた整流板と、
前記バラスト水処理槽内に着脱自在に設けられた光触媒体とを備え、
前記光触媒体は、バラスト水流入口からバラスト水流出口へ向けて、
開口断面積が徐々に小さくなる複数の筒状基材を順次配置した構成としたバラスト水処理装置。
【請求項2】
前記バラスト水処理槽を立設配置し、バラスト水流入口を下端側に、バラスト水流出口を上端側に配置した、
請求項1に記載のバラスト水処理装置。
【請求項3】
前記光触媒体を構成する前記筒状基材は、円筒形としたことを特徴とする、
請求項1または2に記載のバラスト水処理装置。
【請求項4】
着脱可能な前記バラスト水処理槽の上蓋に、前記紫外線照射手段の一端を固定するとともに、複数の支持体によって前記上蓋と離間して前記光触媒体を固定したことを特徴とする、
請求項2または3に記載のバラスト水処理装置。
【請求項5】
前記光触媒体は、バラスト水流入口からバラスト水流出口へ向けて、
開口断面積が徐々に小さくなる第1段の筒状基材、第2段の筒状基材、第3段の筒状基材を配置して構成し、
第1段の筒状基材の内面と第2段の筒状基材の外面との間に形成される第1の隙間より、
第2段の筒状基材の内面と第3段の筒状基材の外面との間に形成される第2の隙間を大きくしたことを特徴とする、
請求項2〜4のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【請求項6】
前記光触媒体を構成する前記筒状基材の各段部の上下方向の長さを、下段から上段へかけて短くすることを特徴とする、
請求項5に記載のバラスト水処理装置。
【請求項7】
前記光触媒体を構成する前記筒状基材の最上段に位置する筒状基材の上端は、バラスト水流出口の下端よりも上に位置することを特徴とする、
請求項5または6に記載のバラスト水処理装置。
【請求項8】
互いに上下に連続して位置する前記筒状基材は、上段に位置する前記筒状基材の下端と、下段に位置する前記筒状基材の段部の上端が重なるように配置されていることを特徴とする、
請求項5〜7のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【請求項9】
前記光触媒体を構成する前記筒状基材の各段部の上端は、円周方向外側へ向けて広がる形状としたことを特徴とする、
請求項5〜8のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【請求項10】
前記整流板に多数の孔を設けた平板状であることを特徴とする、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。
【請求項11】
前記整流板は、最上段の筒状基材の開口断面積と同等か、もしくはより大きい面積とし、最下段の筒状基材の間に空間を設けて配置されることを特徴とする、
請求項5〜10のいずれか1項に記載のバラスト水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−143716(P2012−143716A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4698(P2011−4698)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】