説明

バラ積み船及びバラ積み用バージ

【課題】ポリマーペレット等の損傷や汚染を嫌う粉粒体をも効率よく輸送できるバラ積み船及びバラ積みバージを提供する。
【解決手段】バラ積み乾貨物を搭載するバラ積み船1において、バラ積み乾貨物の荷揚げ時の残留量を減らすためと、シャドーエリアをなくして、水洗浄にて残留貨物を洗い流して貨物積み替え時のコンタミネーションを防ぐために、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10の貨物倉壁を、該貨物倉10の内部側に突出する骨部材を設けずに平滑に形成すると共に、該貨物倉10の下部に傾斜部12を有する排出口15を設け、該排出口15からバルブを通過して排出されるバラ積み乾貨物を気体の流れで荷揚げするための気体輸送管を該排出口15に接続して設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来技術では、損傷と汚染を嫌って袋詰めで輸送されていたポリマーペレット等の粉粒体をもバラ積みで輸送することができるバラ積み船及びバラ積み用バージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術において、ポリマーペレットを船舶で海上輸送する場合には、ポリマーペレットを袋詰めして、この袋を搭載したコンテナをコンテナ船でコンテナ輸送している。
【0003】
このポリマーペレットは、高圧で製造される低密度ポリエチレン(比重が約0.92)、低圧で製造される高密度ポリエチレン(比重が約0.95)、透明で結晶性(95%)のあるポリプロピレン(比重が約0.9)などのポリマーと呼ばれるものを、大きさがφ3mm×L3mm〜φ6mm×L6mm程度のペレット状に形成したものである。このポリマーペレットの物性は、比重が約0.9〜1.0であり、かさ比重は約0.5程度と比較的軽く、安息角も約30度程度である。
【0004】
このポリマーは次のようにして製造される。石油精製工業においては、原油を蒸留して、沸点の差により、石油ガス、ガソリン、ナフサ(粗製ガソリン)、灯油、軽油、重油、アスファルトに分けて、このうちのナフサをナフサ分解装置で加熱分解させて簡単な構造の物質に変化させて、エチレン、プロピレン、ブチレン等の物質毎に抽出する。このエチレンやプロピレン等を化学反応で、同じ物質の分子と分子を結び付ける重合反応によって、別の性質を持つポリエチレンやポリプロピレン等のポリマー(重合体)を製造している。
【0005】
このポリマーの性質は、可燃性のため、粉塵状態では爆発混合気を形成して危険状態となる場合があるが、ペレット状態では、常温での取り扱いで危険性は無く、また、生理学的に不活性であり、人体への特別な毒性はない。また、水との反応性や自己反応性や爆発性はなく、常温では安定しているが、ペレットがこぼれた場合には、足を滑らせて転倒する可能性があるので、漏出防止と漏出時の回収は重要である。特に、輸送時に水域に漏出した場合には、動物が飲み込むと窒息する可能性があるので、注意が必要である。
【0006】
多くのポリマーの場合、表面に水分が付着したままで成形すると、製品の表面不良や外観不良や機械的物性(強度)不良などが生じる。また、ペレットの損傷により砕けた細かいポリマーがコンタミネーションとなることから、ペレットの表面の損傷も嫌われるので、ペレット表面の欠陥防止のため、管や貨物倉の内面でのペレット磨耗を避けることが望ましい。更に、錆やペイント片や別種類のペレットの混入を嫌うので、塗装や錆や他種との混合を避ける必要がある。そのため、前述のように、従来技術では、ポリマーペレットの海上及び水上輸送では、ポリマーペレットを袋詰めして、この袋を搭載したコンテナをコンテナ船でコンテナ輸送している。
【0007】
しかしながら、この袋とコンテナを使用する輸送方法では、ペレットの袋詰め作業や、コンテナへの収納作業や、開封のための袋の破断作業や、袋からのペレット取り出し作業等のために、人手や機械による作業が必要となり、効率が悪いという問題がある。また、ペレットの小口運搬時に使用する袋等の包装資材が資源の無駄遣いになるという問題もある。今後も、ポリマーペレットの需要は世界的に伸びてきており、効率的な海上輸送方法が業界で望まれている。
【0008】
一方、このような、かさ比重が0.5程度と非常に軽量な粉粒体を船でバラ積みにて輸送しようとすると、重心位置が高くなり、更に、粉粒体は船倉内で横移動し易いため、横揺れに伴って貨物が移動するという、水槽の自由表面影響に近い現象が生じ易いので、横揺れに対して十分な復原力を持つことができなくなるという問題があり、十分な復原力を保てる重心位置とする必要がある。
【0009】
また、損傷や汚染を嫌うので、従来技術のバラ積み船のように骨部材が貨物倉に突出していたり、風雨密ハッチカバーのみで外気と隔離されていたりする船倉に搭載して輸送することは、貨物の品質管理上好ましくないと考えられていた。更に、従来技術のバラ積み船における荷役で、荷役用グラブ等で貨物を荷揚げすることも貨物の品質管理上好ましくない。更に、商品価値を高めるためには、乾燥状態で輸送するのが望ましいという課題もある。
【0010】
一般に、石炭、小麦、チップ等をバラ積み状態で運搬する船舶は、乾貨物バラ積み船、又は、バルクキャリヤと呼ばれており、その貨物倉の構造は、通常は、二重底の内底板、船側外板、上甲板、隔壁で周囲を囲われ、船側下方には、ホッパーサイドタンクが、船側上方にはトップサイドタンクが設けられ、上甲板にはハッチが開口され、ハッチカバーで覆われる構造となっている(例えば、引用特許文献1参照)。
【0011】
このような乾貨物バラ積み船では、貨物倉の内部には、上甲板と船側外板の骨部材が突出して設けられている。また、船の前後方向を仕切り、貨物倉の壁を兼ねる隔壁もコルゲート等で凹凸を有して形成されることが多い。
【0012】
また、貨物倉の下部からバラ積み乾貨物を揚げ荷荷役する場合には、各貨物倉の下端から切り出したバラ積み乾貨物(ばら物)を、船の前後方向に延びる無端式の切り出しコンベアで船首側又は船尾側に搬送して、別のコンベアに移送して、陸上荷役施設のコンベアに搬送している(例えば、特許文献2参照。)。
【0013】
また、粉末セメント等の粉体を輸送する場合には、底部中央に向けて傾斜部(約8度)を有し、この傾斜部は通気シートの底部から圧縮空気を吹き出して粉体の流動性を確保し、傾斜部の上位置に設けた空気噴射ノズルから粉体の流れる方向に向けて圧縮空気を吹き出すことで、底部を平面状に形成しても、圧縮空気で粉体を崩して、船倉内に充填した粉体が残存することなく抽出できて、しかも、有効容積を大きく維持できる粉体輸送船が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0014】
しかしながら、ポリマーペレットの貨物倉内への残留量低減はセメント船よりも厳しい管理が求められることや貨物積み替え時の貨物倉内の水洗浄を考慮するとセメント運搬船で用いられているようなキャンパスを用いた空気噴射方式、または、コンベアによる乾貨物の搬送では問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実昭62−165193号公報
【特許文献2】特開平5−124576号公報
【特許文献3】特開2002−356194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、ポリマーペレット等の損傷や汚染を嫌う粉粒体をも効率よく輸送できるバラ積み船及びバラ積みバージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するための本発明のバラ積み船は、バラ積み乾貨物を搭載するバラ積み船において、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉の貨物倉壁を、該貨物倉の内部側に突出する骨部材を設けずに平滑に形成すると共に、該貨物倉の下部に傾斜部を有する排出口を設け、該排出口からバルブを通過して排出されるバラ積み乾貨物を気体の流れで荷揚げするための気体輸送管を該排出口に接続して設けて構成する。この構成により、バラ積み乾貨物の荷揚げ時の残留量を減らし、且つ、シャドーエリアがないので、水洗浄にて残留物を洗い流すことができ、貨物積み替え時のコンタミネーションを防ぐことができる。
【0018】
また、排出口には、積み荷荷役で貨物倉に貯蔵中のバラ積み乾貨物が気体輸送管に落下するのを防止するために、バルブ、例えば、ロータリーバルブ等で形成される定量排出バルブを設け、揚げ荷荷役中は、空気、乾燥空気、不活性ガス等の気体で粉粒体を輸送する気体輸送管に送られる気体量に見合った量のバラ積み乾貨物を気体輸送管内に送る。つまり、貨物倉の下部排出口から船体に常設の気体輸送管を通して上甲板までバラ積み乾貨物を揚げ荷する。これにより、バラ積み乾貨物を気体で輸送することで、容易にかつ効率良く揚げ荷できる。なお、気体輸送に関しては空気等を用いた気体圧送式の替りに真空吸引式としてもよい。
【0019】
ポリマーペレット等の水分を嫌うバラ積み乾貨物の場合には、積み荷時や揚げ荷時等の荷役時は陸上施設の空気乾燥設備やブロワーやコンプレッサーといった送風装置から乾燥空気を貨物倉内や気体輸送管内に供給し、荷役時以外と運航時には、船に搭載した空気乾燥機と送風機から乾燥空気を貨物倉内に供給し、貨物倉内のバラ積み乾貨物が湿気を持つのを防止する。
【0020】
上記のバラ積み船において、前記貨物倉を、上部にバラ積み乾貨物を落下させるための投入口を有して構成すると共に、下部に傾斜部を備えた排出部を一つの前記貨物倉に対して複数個設けて構成することにより、排出口の周辺の傾斜部の高さを低くすることができ、貨物倉及び貨物を積んだ状態での貨物倉の重心位置を低くすることができる。
【0021】
これにより、船全体の重心の低下と横揺れに関する復原性能を確保できる。また、傾斜部の高さを低くすることで、傾斜部の外側周囲のデッドスペースを小さくすることができる。また、デッドスペースが減少してスペースの利用効率が向上することにより、積載量を最適化できる。
【0022】
上記のバラ積み船において、前記貨物倉を船幅方向に複数配置することにより、個々の貨物倉の横幅を小さくして、荒天時の船体動揺等によるバラ積み乾貨物の移動量を少なくして、バラ積み乾貨物の横移動量を抑えて、横揺れに対する復原性能を確保することができる。
【0023】
上記のバラ積み船において、前記貨物倉の貨物倉壁が、液体に接しない構造とすると、つまり、前記貨物倉をバラストタンクのバラスト水、燃料タンクの燃料、船体外側の海水、水に隣接させないように設けることにより、貨物倉の貨物倉壁に結露が生じることを防止できる。
【0024】
この構造によれば、水分付着によって品質低下を引き起こすポリマーペレット等の嫌水性のバラ積み乾貨物も搭載できるようになる。なお、この嫌水性のバラ積み乾貨物の場合は、荷役時には貨物倉内に乾燥空気を送風して、バラ積み乾貨物が水分の多い空気に接触するのを防止する。
【0025】
上記のバラ積み船において、貨物倉を船体と一体に建造してもよいが、貨物倉を構成する耐錆材料で形成される部分を船体とは別体で製造して船体に搭載するように構成すると、耐錆材料としてクラッド鋼等特殊な鋼材を用いて貨物倉の貨物倉壁を形成する場合には、個々の貨物倉を別に製造して、耐錆金属で形成される部分が略完成した貨物倉を船体に搭載することにより、製造が容易となる。また、耐錆材料としてFRPなどの非金属材料で形成した貨物倉を用いることも可能となる。
【0026】
上記のバラ積み船において、前記貨物倉を、上甲板から突出させると共に、前記貨物倉の側壁と上甲板との間を水密若しくは風雨密構造とすることにより、貨物倉を完全に上甲板やカバーで覆う構造よりも、構造が単純化し、重量を軽減して横揺れに関する復原性能を容易に確保でき、上甲板を貨物倉の上部構造とする構造よりも、貨物容積を大きくすることができる。
【0027】
また、上記の目的を達成するためのバラ積み用バージは、上記のバラ積み船を、推進装置を持たないバージ船として形成する。この構成のバラ積み用バージは、上記のバラ積み船と同様な効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のバラ積み船及びバラ積み用バージによれば、従来技術では、損傷や汚染を回避するために袋詰めとコンテナ輸送を行っていた、ポリマーペレット等の粉粒体も、粉粒体に損傷を与えることなくバラ積みして輸送することができ、従来技術で行われている粉粒体の袋詰め作業や袋のコンテナ収納作業、袋からの粉粒体の取り出し作業等を無くして、輸送時の作業効率を向上させ、大量輸送を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態のバラ積み船における貨物倉の配置を示した側断面図である。
【図2】図1のバラ積み船の貨物倉の配置を示した水平面図である。
【図3】図1のバラ積み船の貨物倉の構造を示した船体の横断面図である。
【図4】本発明に係る第2の実施の形態のバラ積み船における貨物倉の配置を示した側断面図である。
【図5】図4のバラ積み船の貨物倉の配置を示した水平面図である。
【図6】図4のバラ積み船の貨物倉の構造を示した船体の横断面図である。
【図7】貨物倉の覆い構造を持たないバラ積み船の構造を示した側断面図である。
【図8】貨物倉の覆い構造を持たないバラ積み船の構造を示した船体の横断面図である。
【図9】本発明に係るバラ積み乾貨物の輸送方法に使用するバラ積み船と陸上荷役設備の構成を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して本発明に係るバラ積み船及びバラ積み用バージについて説明する。なお、ここでは、推進装置を有するバラ積み船について説明しているが、本発明は、推進装置を持たないバラ積み用バージに関しても同様に適用できる。なお、図面は説明のための図であり、必ずしも実船で用いる船型や貨物倉の寸法比で作図したものではない。また、図9も荷役方法を説明するための図であり、図1〜図8の船体構造とは貨物倉の形状や排出口の異なる船体構造となっている。
【0031】
図1〜図3に示すように、本発明に係る第1の実施の形態のバラ積み船1は、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10を備えて構成される。この第1の実施の形態では、貨物倉10は船体と一体で形成される。つまり、貨物倉10の側壁11などが船体構造の一部を構成する。
【0032】
この貨物倉10は、従来技術のバラ積み船(バルクキャリア)と同様に、船長方向に、隔壁6を介して並べて配置される。また、船幅方向に関しても、貨物倉10を複数配置する。この幅方向に関して、貨物倉10を複数配置することにより、個々の貨物倉10の横幅を小さくして、荒天時の船体動揺等による貨物倉10の内部におけるバラ積み乾貨物の移動範囲を少なくする。これにより、バラ積み乾貨物の横移動量を抑えて、横揺れに対する復原性能を確保する。
【0033】
また、貨物倉10を、船側外板4と離間して配置すると共に、船側外板4、船底板2では貨物倉壁を形成せず、また、バラストタンクに対しても隣接させないように配置する。これにより、海水、水、バラスト水、燃料等の液体に貨物倉壁が接しないように構成し、バラストタンクにバラスト水を入れた場合等でも、貨物倉10の貨物倉壁が冷却されて結露が生じることを防止する。
【0034】
この貨物倉10は、図3に示すように、垂直に形成された側壁部11と船側側上部の傾斜部13と、上甲板5の一部からなり、バラ積み乾貨物を投入する投入口14aを有する天井部14と、排出のための排出口15の絞られる傾斜部12とで囲まれた区画として形成される。貨物倉壁は、傾斜部12と側壁部11と傾斜部13と天井部14とで構成される。
【0035】
この貨物倉10の貨物倉壁は、内側に突出する骨部材を設けずに、かつ、板耳を出さずに、貨物倉10の内面を平滑に形成する。つまり、貨物倉10を前後方向に仕切る隔壁6の側壁部11を形成する部分では骨部材は全て貨物倉10の外側、即ち、貨物倉10同士の間等に配置する。また、貨物倉10が横方向に向き合う側壁部11も骨部材を備えた一枚板で形成せずに、骨部材を間に挟んだ二枚の側壁部11で構成する。その他の貨物倉壁も貨物倉10の外側に骨部材を配置する。これにより、バラ積み乾貨物の残留量を減らし、且つ、シャドーエリアがないので、水もしくは圧縮空気による洗浄にて残留物を洗い流すことができ、貨物積み替え時のコンタミネーションを防ぐことができる。
【0036】
また、貨物倉10の貨物倉壁は、耐錆材料、例えば、二種類の性質の異なる金属を張り合わせたクラッド鋼(圧着鋼)を用いて、内側の表面側の金属をステンレス(SUS)材等の錆びない金属とすることが好ましい。これにより、錆を嫌うバラ積み乾貨物でも輸送できるようになる。
【0037】
貨物倉10の上部の投入口14aには、積み荷荷役時に陸上側のバラ積み用配管と接続可能な投入用配管31を設ける。この投入用配管31には、接続フランジ31aを設ける。積み荷荷役時に、この投入用配管31に陸上荷役設備からの積み荷荷役用配管(図9の52)を接続し、バラ積み乾貨物を自然落下により、貨物倉10内に収納する。この投入口14aは、バラ積み乾貨物を均等に貨物倉10内に収納できるように、傾斜部12の中央、即ち、排出口15の直上に設けるのが好ましい。
【0038】
また、貨物倉10の下部の傾斜部12を供えた排出部の排出口15には、積み荷荷役で貨物倉に貯蔵中のバラ積み乾貨物が気体輸送管に落下するのを防止するために、バルブを設ける。このバルブは、例えば、ロータリーバルブ等の定量排出バルブ21aで形成する。この定量排出バルブ21aを有する排出用配管21を介して気体輸送管22を排出口15に接続し、揚げ荷荷役時には、貨物倉10内のバラ積み乾貨物を重力により傾斜部12を滑らせて排出口15に移動させると共に、定量排出バルブ21aにより気体輸送管22で輸送可能な量に調整しながら、バラ積み乾貨物を気体輸送管22に排出して、気体輸送により陸上の荷役設備に輸送する。この気体輸送に関しては空気等を用いた気体圧送式を用いるが、この気体圧送式の替りに真空吸引式としてもよい。
【0039】
なお、水分を嫌うバラ積み乾貨物の場合には、気体輸送管22に乾燥空気を送る。この場合、積み荷時や揚げ荷時等の荷役時は陸上施設の空気乾燥設備やブロワーやコンプレッサーといった送風装置から乾燥空気を貨物倉10内や気体輸送管22内に供給し、荷役時以外と運航時には、船に搭載した空気乾燥機と送風機から乾燥空気を貨物倉10内に供給し、貨物倉10内のバラ積み乾貨物が湿気を持つのを防止する。なお、真空吸引式の場合には、送風装置の替りに真空ポンプを用いる。
【0040】
また、陸上施設に空気乾燥設備や送風装置を持っていない港湾に寄港する可能性がある場合は、このような港でも自力で荷役できるように、1乃至2の貨物倉10の荷揚げを行えるだけの容量を持つ空気乾燥設備と送風装置をバラ積み船1内に設けることが好ましい。
【0041】
また、排出口15を一つの貨物倉10に1個若しくは複数個(図1〜図8では4個)設ける。複数個設けることにより1個の場合よりも、排出口15の周辺の傾斜部12の高さを低くすることができ、貨物倉10及びバラ積み乾貨物を積んだ状態における貨物倉10全体の重心位置を低くすることができる。このことは、かさ比重が小さいバラ積み乾貨物を搭載すると、重心位置が高くなり、船体の横揺れに関する復原性能が悪化するが、この悪化の程度を減少させることができる。これにより、船全体の重心の低下と船体の横揺れに関する復原性能を確保できる。また、傾斜部12の高さを低くすることで、傾斜部12の外側周囲にできるデッドスペースを小さくすることができる。
【0042】
次に、第2の実施の形態について説明する。図4〜図8に示すように、本発明に係る第2の実施の形態のバラ積み船1Aは、第1の実施の形態のバラ積み船1と同様にバラ積み乾貨物を搭載する貨物倉10Aを備えて構成されるが、この第2の実施の形態では、貨物倉10Aを個々の別体の容器として形成し、この別体の容器構造の貨物倉10Aを船体に搭載する。なお、図7及び図8に示すバラ積み船1Aは、図4〜図6に示すバラ積み船1Aにおいて、貨物倉10Aの上部に覆い構造7を設けない構造となっている。
【0043】
この貨物倉10Aは、図4〜図8に示すように、垂直に形成された側壁部11A、バラ積み乾貨物を投入する投入口14Aaを有する天井部14Aと、排出のための排出口15Aに絞られる傾斜部12Aとで囲まれた区画として形成される。貨物倉壁は、傾斜部12Aと側壁部11Aと傾斜部13Aと天井部14Aとで構成される。貨物倉10Aの水平断面形状は、図5では、排出口15Aを複数設け易い四角形に形成しているが、別体の容器方式なので、円形や長円形や楕円等であってもよい。また、貨物倉10Aに複数の排出口15Aを持つ場合の排出口15Aの配置は船体前後方向であっても、船体横方向であってもその他の方向であってもよいが、気体輸送管22の配置に合わせて配置する。
【0044】
また、貨物倉10Aの貨物倉壁は、第1の実施の形態の貨物倉10と同様に、内側に突出する骨部材を設けずに、貨物倉壁の骨部材は全て貨物倉10Aの外側に配置して、貨物倉10Aの内面を平滑に形成する。
【0045】
この個々の貨物倉10Aを別体で製造して船体に搭載する別体の容器方式を採用することにより、貨物倉を構成する耐錆材料で形成される部分を船体と別体で製造してから、船体に搭載することができる。特に、耐錆材料としてクラッド鋼等特殊な鋼材を用いて貨物倉10Aの貨物倉壁を形成する場合には、個々の貨物倉10Aを別に製造して、耐錆金属で形成される部分が略完成した貨物倉10Aを船体に搭載することにより、製造が著しく容易となる。また、耐錆材料としてFRPなどの非金属材料で形成した貨物倉10Aを用いることも可能となる。
【0046】
更に、貨物倉10Aを上甲板から突出させると共に、貨物倉10Aの側壁部11Aと上甲板5との間を水密若しくは風雨密構造で構成する。これにより、上甲板5を貨物倉10の上部構造とするよりも、船体構造の鋼材が削減され製造原価を低減できる。また、貨物倉10を完全に上甲板5やハッチカバー(図示しない)で覆う構造よりも、構造が単純化するので、船体重量を軽減でき、また、船体の重心を下げることができる。その結果、船体の横揺れに関する復原性能を容易確保できるようになる。
【0047】
ただし、貨物倉10Aの上部が暴露されるため、貨物倉10A内の温度上昇に配慮する必要が有り、遮熱塗料などによる防熱施工を行うこともありうる。
【0048】
また、図4〜図6に示すように、貨物倉10Aの上部に覆い構造7を設けると、貨物倉10Aの天井部14Aが大気中に露出しないので、湿度を嫌うバラ積み乾貨物の場合には特に湿気防止の効果を奏することができる。
【0049】
その他の、貨物倉10Aの前後方向の配置及び横方向の複数配置、バラストタンク等からの離間配置、クラッド鋼の利用、積み荷荷役用の貨物倉10Aの上部の投入口14Aaと投入配管31、貨物倉10Aの下部の傾斜部12Aを供えた排出部の排出口15Aと定量排出バルブ21aと排出管21と気体輸送管22、乾燥空気Aの送入方式等の構成は、第1の実施の形態のバラ積み船1と同じである。
【0050】
次に、バラ積み乾貨物の輸送方法について説明する。この輸送方法は、上記のバラ積み船1,1Aを用いて行う輸送方法であり、次のようなバラ積み乾貨物の積み荷荷役と揚げ荷荷役を行う。
【0051】
図9を参照しながら、バラ積み乾貨物の積み荷荷役と揚げ荷荷役について説明する。先ず、積み荷荷役は、陸上荷役設備の積み荷用陸上設備50のバラ積み乾貨物用貯蔵容器51の下部とバラ積み船1Aの貨物倉10Aの天井部14Aに設けられた投入用配管31に積み荷荷役用配管52を接続し、積み荷用送風装置53から乾燥空気Aを送って、気体輸送によりバラ積み乾貨物Bを投入用配管31の先端の投入口14Aに搬送する。投入口14Aに搬送されたバラ積み乾貨物Bは自然落下により、貨物倉10Aに収納される。
【0052】
各貨物倉10Aにバラ積み乾貨物Bが収納されたら、投入用配管31を閉じて、積み荷荷役用配管52を外して、この貨物倉10Aに関する積み荷荷役を終了する。各貨物倉10Aの積み荷荷役を終了したら、出港準備を行って航海に移る。
【0053】
次に、揚げ荷荷役について説明する。入港した後に、陸上荷役設備の揚げ荷用陸上設備60の揚げ荷用送風装置61に接続された空気送入管62を、バラ積み船1Aの空気供給口23(図9では、船体上部の側面の上側)に接続する。また、一時貯蔵容器63の上部に接続された揚げ荷用配管64をバラ積み船1Aの貨物排出口24(図9では、船体上部の側面の下側)に接続する。
【0054】
接続後、揚げ荷用送風装置61を駆動し、乾燥空気Aを空気供給口23から気体輸送管22に送ると共に、バラ積み乾貨物Bを貨物倉10Aの排出口15Aから、定量排出バルブ21aで流量を調整しながら気体輸送管22に供給する。これにより、気体輸送によりバラ積み乾貨物Bを気体輸送管22、貨物排出口24、揚げ荷用配管64経由で、一時貯蔵容器63に搬送する。
【0055】
この一時貯蔵容器63からは、貯蔵用送風装置65の駆動により、バラ積み乾貨物Bを貯蔵用配管66経由で貯蔵容器67の上部に搬送し、貯蔵容器67に貯蔵する。この貯蔵容器67に貯蔵されたバラ積み乾貨物Bは、貨車68等で各所に搬送される。
【0056】
貨物倉10Aのバラ積み乾貨物Bを揚げ荷した後は、空気供給口23の流通を閉じた後、揚げ荷用配管64の取外しと貨物排出口24の閉鎖を行う。これにより揚げ荷荷役を終了し、出港の準備をして航海に移る。
【0057】
上記の構成のバラ積み船1,1A及びバラ積み乾貨物の輸送方法によれば、従来技術では、損傷や汚染を回避するために袋詰めとコンテナ輸送を行っていた、ポリマーペレット等の粉粒体も、粉粒体に損傷を与えることなくバラ積みして輸送することができ、従来技術で行われている粉粒体の袋詰め作業や袋のコンテナ収納作業、袋からの粉粒体の取り出し作業等を無くして、輸送時の作業効率を向上させることができる。また、上記のバラ積み船1,1Aと同様な貨物倉10,10Aの構成を持ち、且つ、推進装置を持たないバラ積み用バージを形成した場合には、このバラ積みバージも上記のバラ積み船1,1Aと同様の効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のバラ積み船及びバラ積み用バージは、上記のような効果を奏することができるので、従来技術では、損傷や汚染を回避するために袋詰めとコンテナ輸送を行っていた、ポリマーペレット等の粉粒体等の輸送に利用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1A バラ積み船
2 船底板
3 二重底(内底板)
4 船側外板
5 上甲板
6 隔壁
7 覆い構造
10,10A 貨物倉
11,11A 側壁部
12,12A 傾斜部
13 船側側上部の傾斜部
14,14A 天井部
14a,14Aa 投入口
15,15A 排出口
21 排出用配管
21a 定量排出バルブ
22 気体輸送管
23 空気供給口
24 貨物排出口
31 投入用配管
A 乾燥空気
B バラ積み乾貨物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ積み乾貨物を搭載するバラ積み船において、バラ積み乾貨物を搭載する貨物倉の貨物倉壁を、該貨物倉の内部側に突出する骨部材を設けずに平滑に形成すると共に、該貨物倉の下部に傾斜部を有する排出口を設け、該排出口からバルブを通過して排出されるバラ積み乾貨物を気体の流れで荷揚げするための気体輸送管を該排出口に接続して設けたことを特徴とするバラ積み船。
【請求項2】
前記貨物倉を、上部にバラ積み乾貨物を落下させるための投入口を有して構成すると共に、下部に傾斜部を備えた排出部を一つの前記貨物倉に対して複数個設けて構成したことを特徴とする請求項1記載のバラ積み船。
【請求項3】
前記貨物倉を船幅方向に複数配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載のバラ積み船。
【請求項4】
前記貨物倉の貨物倉壁が、液体に接しない構造としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバラ積み船。
【請求項5】
前記貨物倉は、該貨物倉を構成する耐錆材料で形成される部分を船体とは別体で製造して船体に搭載することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバラ積み船。
【請求項6】
前記貨物倉を、上甲板から突出させると共に、前記貨物倉の側壁と上甲板との間を水密若しくは風雨密構造としたことを特徴とする請求項4又は5に記載のバラ積み船。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のバラ積み船を、推進装置を持たないバージ船としたことを特徴とするバラ積み用バージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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