説明

バリ取り装置

【課題】ワークの管状端部のバリを簡素な構造で除去することができるバリ取り装置の提供。
【解決手段】バレル26が、開口穴33が形成されたケース34と、ケース34に固定されるとともに研磨部材30,31が開口穴33から脱落するのを防止する脱落防止部材35と、からなり、ケース34の開口穴33と脱落防止部材35との間には、ワークWの管状端部Waが挿入される隙間85が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
加工物からバリを除去する装置として、バレル内に収容された多数のメディア内で加工物を回転させることでバリを除去するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ワークの管状端部の加工に関する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−46056号公報
【特許文献2】特開2004−351451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワークの管状端部のバリを簡素な構造で除去することが要望されている。
【0006】
したがって、本発明は、ワークの管状端部のバリを簡素な構造で除去することができるバリ取り装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、バレルが、開口穴が形成されたケースと、該ケースに固定されるとともに研磨部材が前記開口穴から脱落するのを防止する脱落防止部材と、からなり、前記ケースの前記開口穴と前記脱落防止部材との間には、ワークの管状端部が挿入される隙間が形成される構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ワークの管状端部のバリを簡素な構造で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る一実施形態のバリ取り装置を示す側面図である。
【図2】本発明に係る一実施形態のバリ取り装置のバレルを示す側断面図である。
【図3】同バレルを示す正面図である。
【図4】同バレルのケース本体を示す正面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態のバリ取り装置でバリ取りが行われるワーク等を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のバリ取り装置10は、全体にわたって管状をなす金属製のワークWの管状端部WaのバリをワークWから除去するものである。このバリ取り装置10は、水平方向の一側に設けられてワークWを位置決め保持するワークセット部11と、水平方向の逆側に設けられてワークWの管状端部Waのバリを除去するバリ取り部12とを有している。
【0012】
ワークセット部11は、ワークWが中心軸線を水平に配置した状態で載置される載置台15と、載置台15の上側にあって、載置台15に載置されたワークWをバリ取り部12とは反対側から押圧してワークWをバリ取り部12側に前進させる幅寄せ部16と、昇降可能であって幅寄せ部16で所定のクランプ位置まで前進させられたワークWを停止させる停止部17と、幅寄せ部16および停止部17でクランプ位置に停止させられたワークWを上下からクランプするクランプ部(クランプ手段)18とを有している。
【0013】
ここで、ワークWは、載置台15に載置されることで径方向に位置決めされることになり、幅寄せ部16および停止部17でクランプ位置まで前進させられることで軸方向に位置決めされることになる。そして、クランプ部18は、このように径方向および軸方向に位置決めされたワークWをクランプすることになり、その際に、管状端部Waよりも軸方向内側の首元部Wbをクランプする。
【0014】
バリ取り部12は、載置台15に載置されたワークWの中心軸に沿うように敷設されたガイドレール21と、ガイドレール21に沿ってスライドするスライダ22と、回転軸23をガイドレール21に平行とし且つワークセット部11側に突出するようにした状態でスライダ22上に固定されるモータ(駆動手段)24と、モータ24をワークセット部11とは反対側から押し引きしてモータ24およびスライダ22をガイドレール21に沿って軸方向に往復動させる軸方向駆動部25と、モータ24の回転軸23に同軸に設けられるバレル26と、モータ24の回転軸23を一端にバレル26を他端にそれぞれ嵌合させることによりこれらを一体的に連結する中空の固定治具27と有している。
【0015】
バレル26は、図2に示すように、内部に、粒状の球体からなる多数の研磨部材30と、粒状の多面体からなる多数の研磨部材31とが充填されるものであり、開口穴33が形成されたケース34と、ケース34に固定されるとともに研磨部材30,31が開口穴33から脱落するのを防止する脱落防止部材35と、ケース34内に配される一定厚さのシート状の合成樹脂製の弾性部材36,37とから構成されている。
【0016】
ケース34は、円板状の底部40と、底部40の外周縁部から軸方向一側に突出する筒状の側壁部41と、底部40の中央から軸方向他側に突出する取付軸部42とを有する一体の金属製のケース本体43を有している。このケース本体43は、側壁部41の底部40とは反対の一端が開口している。ケース34は、さらに、このケース本体43の一端側の開口を覆うように取り付けられる円板状の図3にも示す金属製の蓋部材44を有している。なお、ケース34や蓋部材44は金属製が望ましいが、樹脂製であってもよい。
【0017】
図2に示すケース本体43は、その取付軸部42において図1に示す固定治具27に嵌合固定されることになり、その結果、モータ24の回転軸23に固定されることになる。図2に示すように、底部40および取付軸部42には、貫通穴48が中央に形成されており、貫通穴48の底部40側にはメネジ49が形成されている。貫通穴48は、バレル26がモータ24に取り付けられた状態にあるとき、モータ24の回転軸23と中心が一致する。
【0018】
図4に示すように、ケース本体43の側壁部41は、外周面が貫通穴48と中心が一致する円筒面となる一方、内周面は曲率半径が大きく最大外径が小さい小径部51と曲率半径が小さく最大外径が大きい大径部52とが交互に3カ所ずつ配され、小径部51と大径部52の間が突起部41Aとなっている。ケース本体43内に配される3カ所の小径部51は、貫通穴48と中心が一致する同一の円筒面からなっており、円周方向の長さが互いに同等に形成されている。ケース本体43内に配される3カ所の大径部52は貫通穴48と中心が一致する円筒面上に中心を有する同径の円筒面からなっており、円周方向の長さが互いに同等に形成されている。以上により、側壁部41は、小径部51の位置が大径部52の位置よりも全体として厚肉となる厚肉部54となっており、大径部52の位置が厚肉部54よりも全体として薄肉となる薄肉部55となっている。そして、各厚肉部54の円周方向の中央かつ径方向の中央にネジ穴56が形成されている。
【0019】
弾性部材36は、ゴムやウレタン等のエラストマーであり、ケース本体43の側壁部41の内周面の全面に貼付されており、言い換えれば、すべての小径部51およびすべての大径部52に対して設けられている。また、図2に示すように、弾性部材37は、底部40の底面の全面に貼付されている。
【0020】
蓋部材44には、その径方向の中央に円形の上記した開口穴33を有している。開口穴33は蓋部材44を軸方向に貫通しており、軸方向の一側が一定径の円筒内周面60となり、軸方向の他側が円筒内周面60から離れるほど大径となるテーパ内周面61となっている。開口穴33はその円筒内周面60の内径が、ワークWの管状端部Waを挿入可能となるように管状端部Waの外径よりも若干大径となっている。また、蓋部材44には、軸方向の円筒内周面60側に、他の部分よりも小径の嵌合部62が開口穴33と中心を一致させて形成されている。加えて、蓋部材44には、嵌合部62よりも径方向外側に、図3に示すように、大径の大径穴部64と小径の小径穴部65とからなるダルマ穴66が、開口穴33と中心が一致する円上に、互いに円周方向の向きを一致させるようにして複数形成されている。
【0021】
上記の蓋部材44をケース本体43に取り付ける場合、六角穴付ボルト68が予めネジ穴56に螺合された状態にあるケース本体43に対し、蓋部材44を、図2に示す嵌合部62がケース本体43側に向く姿勢とする。この姿勢で、図3に示すダルマ穴66の大径穴部64に六角穴付ボルト68を通し、嵌合部62を側壁部41の小径部51の内周部に嵌合させる。そして、蓋部材44を小径穴部65の位置に六角穴付ボルト68が位置するように回転させた後、六角穴付ボルト68を締め付ける。このようにして、蓋部材44はケース本体43の開口側の端部に取り付けられることになり、六角穴付ボルト68と蓋部材44とケース本体43と弾性部材36,37とが一体化されてケース34となる。この状態で、蓋部材44の開口穴33は、ケース本体43の貫通穴48と中心が一致することになり、モータ24の回転軸23に取り付けられることで、この回転軸23と中心が一致することになる。このケース34には、径方向の中央に開口穴33が形成されている。
【0022】
脱落防止部材35は、図2に示すように、金属製の芯部材71の表面をゴム等の柔軟な層72で覆ってなる部材本体73と、部材本体73に軸方向一端側にて嵌合される金属製のピン74とからなっている。部材本体73には、芯部材71の中央にピン74が嵌合固定される嵌合穴77が形成されている。また、部材本体73の層72からなる外周面は、ピン74の突出側がピン74と中心を一致させる一定径の円筒外周面80となっており、ピン74の突出側とは反対側がピン74と中心を一致させて円筒外周面80から離れるほど小径となるテーパ外周面81となっている。部材本体73はその円筒外周面80の外径が、ワークWの管状端部Wa内に進入可能となるように管状端部Waの内径よりも若干小径となっている。
【0023】
そして、ピン74の部材本体73とは反対側にはオネジ82が形成されており、脱落防止部材35は、このオネジ82においてケース本体43の取付軸部42のメネジ49に螺合される。これにより、脱落防止部材35がケース34に固定される。このようにケース34に固定された状態で、ケース34の開口穴33と脱落防止部材35とは中心を一致させることになり、よって、これらの間には、軸方向から見て円形をなす隙間85が形成される。この隙間85にワークWの管状端部Waが挿入されることになる。
【0024】
ここで、上記のように脱落防止部材35がケース34に固定された状態で、テーパ外周面81は開口穴33を軸方向全長にわたって横切るように配置されている。つまり、テーパ外周面81の小径側の端部は、開口穴33よりも蓋部材44の軸方向のケース34外側に位置しており、テーパ外周面81の大径側の端部は、開口穴33よりも蓋部材44の軸方向のケース34内側に位置している。言い換えれば、テーパ外周面81は、ケース34の開口穴33よりも軸方向外側に突出しており、ケース34の開口穴33よりも軸方向内側に引っ込んでいる。よって、部材本体73の円筒外周面80は全体がケース34の開口穴33よりも軸方向内側に位置している。
【0025】
なお、脱落防止部材35は、蓋部材44が取り付けられる前の状態のケース本体43に取り付けられることになり、このようにケース本体43に脱落防止部材35が固定された状態でこれらの隙間85に多数の研磨部材30および多数の研磨部材31が投入されることになる。そして、このように研磨部材30,31が投入された状態のケース本体43に六角穴付ボルト68で蓋部材44が固定されてバレル26となる。
【0026】
ここで、ケース34の開口穴33と脱落防止部材35との間の円形の隙間85のうち、開口穴33の円筒内周面60のテーパ内周面61とは反対側の端縁部と、脱落防止部材35のテーパ外周面81との間の距離が最小となる部分が、最も狭い最小隙間部86となっており、少なくともこの最小隙間部86は、新品状態にある規定の研磨部材30,31のいずれの粒径(最小の長さとなる部分の長さ)よりも狭く、よって、隙間85は新品状態にある研磨部材30,31がいずれも通過できないものとなっている。なお、欠けた研磨部材など規定外の研磨部材30,31は、隙間85を通過することもある。
【0027】
また、バレル26内の最小隙間部86より内側となる充填空間87への研磨部材30,31の充填量は、弾性部材36,37の弾性変形がなければ隙間85を介して充填空間87へワークWの管状端部Waを入り込ませることができない量、具体的には充填空間87を満杯とする量となっている。これに対して、弾性部材36,37の弾性変形の許容量が、研磨部材30,31を上記のように満杯に充填しても、隙間85を介して充填空間87へワークWの管状端部Waを所定量入り込ませることができる量、つまり逃げ代を確保できる量となっている。なお、弾性部材36,37は、ケース34内にあってワークWの管状端部Waの挿入時の逃げ代を確保できれば、ケース本体43の側壁部41の内面、底部40の内面、蓋部材44の内面のいずれに設けられていても良い。また、各内面に部分的に設けられていても良い。また、性能は低下するが、研磨部材30,31の充填量を減らせば、弾性部材36,37は、設けなくともよい。
【0028】
以上のようなバレル26が、図1に示すように、モータ24の回転軸23に固定治具27を介して固定される。この状態でバレル26の軸方向の一側にはバレル26を正転および逆転させるモータ24が配されており、バレル26の軸方向の他側にワークWをクランプするクランプ部18が配されている。
【0029】
なお、上記したワークWは、例えば、長尺状の管状の素材から切断されて形成されるものであり、この素材の切断時に、切断端となる管状端部Waにバリが発生することになる。このような管状端部Waに発生したバリを上記したバリ取り装置10を用いて除去することになる。
【0030】
具体的に、上記したワークWは、緩衝器に用いられるシリンダとなっている。緩衝器には、図5に示すように、作動流体としての油液が封入される円筒状の内側シリンダ100と、この内側シリンダ100を覆う外側シリンダ101とを有する複筒式の緩衝器や、図示は略すが一つのシリンダを有する単筒式の緩衝器がある。
【0031】
図5に示す複筒式の緩衝器において、内側シリンダ100内には、内側シリンダ100内を上室102および図示略の下室に区画する図示略のピストンが摺動可能に嵌装されており、このピストンに連結されたピストンロッド103が、内側シリンダ100および外側シリンダ101に嵌合されたロッドガイド104およびシールリング105に挿通されて内側シリンダ100および外側シリンダ101の外部へと延出されている。外側シリンダ101の開口側は内側に加締められて加締部106となっており、この加締部106はロッドガイド104との間にシールリング105を係止している。特に損傷しやすいシールリング105を傷つけることがないように外側シリンダ101の管状端部のバリを確実に除去することが重要となっている。同様に、単筒式の緩衝器においても、シリンダの開口側が内側に加締められてシールリングを係止するものがあり、このようなシリンダについても管状端部のバリを確実に除去することが重要となっている。よって、これらのシリンダをワークWとし、そのシールリング105に接触する加締部106を含む管状端部Waについて上記したバリ取り装置10を用いてバリ取りを行うことになる。
【0032】
上記のようなバリ取り装置10を用いてワークWの管状端部Waのバリ取りを行う場合は、作業者が、載置台15上に、ワークWをバリ取り対象である管状端部Waをバレル26に対向する姿勢で載置させてスタートボタンを押す。すると、バリ取り装置10は、停止部17が下降した後、幅寄せ部16が前進してワークWを停止部17に当接するクランプ位置まで移動させることになり、その後、クランプ部18がワークWの首元部Wbをクランプする。なお、クランプ部18がワークWをクランプすると幅寄せ部16は後退し停止部17は上昇する。
【0033】
バリ取り装置10は、クランプ部18によるワークWのクランプ後、軸方向駆動部25がモータ24およびバレル26をワークW側の所定位置まで前進させることになる。すると、ワークWの管状端部Waがバレル26のケース34の開口穴33と脱落防止部材35との間の隙間85に入り込むことになる。このとき、開口穴33のテーパ内周面61が管状端部Waの外周側を案内することになり、脱落防止部材35のテーパ外周面81が管状端部Waの内周側を案内することになって、管状端部Waが、円滑に開口穴33の円筒内周面60の内側を通り、その後、脱落防止部材35の円筒外周面80の外側を通って脱落防止部材35の部材本体73とケース34の底部40との間に至る。また、このとき、ワークWは研磨部材30,31を押圧し、弾性部材36,37を弾性変形させながらバレル26内に進入する。
【0034】
これにより、弾性部材36,37の反力で、ワークWの管状端部Waがバレル26内の研磨部材30,31に適宜の押圧力で押し付けられることになり、この状態で、バリ取り装置10は、モータ24がバレル26を正方向および逆方向にそれぞれ所定時間(例えば4〜5秒)ずつ回転させる。すると、バレル26内に充填された研磨部材30,31が管状端部Waに圧力をもって接触しつつ相対移動してバリを削り取り、除去することになる。その際に、ケース34の側壁部41の大径部52間に設けられた小径部51が研磨部材30,31の移動のストッパとして機能することになり、その結果、研磨部材30,31が相対回転する管状端部Waに対し略停止状態となり、管状端部Waから良好にバリを削り取ることになる。
【0035】
そして、バレル26を正方向および逆方向にそれぞれ所定時間ずつ回転させると、モータ24を停止させた後、軸方向駆動部25がモータ24およびバレル26を後退させてワークWから離間させ、ワークWからのバレル26の離間後に、クランプ部18がワークWのクランプを解除する。このようにして、一つのワークWに対するバリ取りが終了する。
【0036】
上記した特許文献2に記載の技術のように、管状端部が折り曲げられることでシールリングを係止する緩衝器のシリンダにおいては、折り曲げられる管状端部にバリがあるとシールリングを傷つけ、シリンダの内部に封入される例えば油が漏れ出る可能性があるため、確実にバリを除去する必要がある。なお、バリは、管状端部が切断加工により形成される場合に発生することが多いが、特許文献2のように管状端部Waに平行スエージ加工を施す場合、この平行スエージ加工によっても生じることがある。
【0037】
上記した特許文献1には、メディアをバレル内に設け、このメディアを用いて加工物からバリを除去する装置が記載されている。この装置では、ドア部材を開いてワークをバレル内に挿入し、ドア部材を閉じてワークWをメディア内で回転させるため、複雑な構造となっている。
【0038】
本実施形態は、バレル26が、開口穴33が形成されたケース34と、研磨部材30,31が開口穴33から脱落するのを防止する脱落防止部材35と、からなり、ケース34の開口穴33と脱落防止部材35との間には、ワークWの管状端部Waが挿入される隙間85が形成されている。よって、研磨部材30,31の脱落が規制された隙間85からバレル26内にワークWの管状端部Waを挿入すると、バレル26内に充填されている研磨部材30,31にワークWの管状端部Waが接触してバリが除去される。したがって、ワークWの管状端部Waを隙間85に挿入すれば良く、ドア部材の開閉等が不要となるため、簡素な構造となるとともに、生産性を向上できる。
【0039】
また、ケース34内に、弾性部材36,37が配されているため、ワークWの管状端部Waを挿入すると、ケース34内に充填された研磨部材30,31を押圧し弾性部材36,37を変形させながら入り込む。よって、ワークWの管状端部Waには弾性部材36,37の反力により研磨部材30,31が押し付けられるため、ワークWの管状端部Waに研磨部材30,31を隙間なく接触させることができ、管状端部Waのバリを確実に除去できるため、信頼性を向上できる。
【0040】
また、バレル26の一側にバレル26を回転させるモータ24が設けられ、バレル26の他側にワークWをクランプするクランプ部18が設けられているため、さらに簡素な構造となる。
【0041】
また、モータ24がバレル26を正転および逆転させるため、様々な方向のバリに対して研磨部材30,31を接触させることができる。つまり、例えば正転では取り切れないバリを逆転でとることができる。したがって、管状端部Waの様々な方向に向いているバリを一層確実に除去できることになり、信頼性をさらに向上できる。
【0042】
また、ケース34内に、大径部52と小径部51とが交互に配されているため、バレル26の回転時に、ケース34の側壁部41の大径部52間に設けられた小径部51が研磨部材30,31の管状端部Waに対する相対移動のストッパとして機能することになる。よって、大径部52だけであると生じる研磨部材30,31のスリップする現象がなくなり、その結果、研磨部材30,31が管状端部Waから良好にバリを削り取ることになる。したがって、管状端部Waのバリを一層確実に除去できることになり、信頼性をさらに向上できる。
【0043】
また、ケース34内に、大径部52と小径部51とが交互に配されているため、これらの繋がり部分で研磨部材30,31を攪拌でき、研磨部材30,31を平均的に使用することができ、研磨部材30,31の交換頻度を少なくすることができる。
【0044】
また、ケース34内に、大径部52と小径部51とが交互に配されているため、側壁部41に厚肉部54と薄肉部55とが交互に形成されることになり、蓋部材44の取付用のネジ穴56を厚肉部54に形成しつつ、他の部分は薄肉部55とすることで研磨部材30,31が充填される充填空間87の容積を大きくできる。よって、研磨部材30,31の充填量を大きくでき、研磨部材30,31の交換頻度を少なくすることができる。
【0045】
また、ケース34は、一端が開口するケース本体43と、開口穴33を有してケース本体43の一端側に取り付けられる蓋部材44とを有するため、ケース34内に容易かつ確実に満杯量の研磨部材30,31を投入することができる。
【0046】
また、ケース34内の充填空間87に満杯に研磨部材30,31が充填されるため、ワークWの管状端部Waをケース34内に挿入すれば、弾性部材36,37に確実に反力を生じさせることができ、研磨部材30,31を管状端部Waに確実に押し付けることができる。したがって、管状端部Waのバリを確実に除去できることになり、信頼性をさらに向上できる。
【0047】
また、ケース34内の充填空間87に満杯に研磨部材30,31が充填されるため、バレル26を中心軸が横方向に沿う横置きとしてもバレル26内の上部に隙間ができることがなくなる。よって、縦方向の大型化を抑制した上で、管状端部Waのバリを確実に除去することができる。
【0048】
また、ワークWは、緩衝器に用いられてシールリング105を管状端部Waで係止するシリンダ101であるため、バリを確実に除去することの効果が高い。つまり、バリを確実に除去することでシールリング105の傷付きを防止して信頼性を高めることの効果が高い。
なお、ケース34内の底部となる位置、例えば本実施の形態では筒状の側壁部41内に研磨部材30,31が脱落しない程度の小さな穴を設け、除去したバリを排出するようにしてもよい。さらには、ケース34内に磁石を配置し、バリを磁石に付着させることにようにしてもよい。そのようなバリ排出手段を設けることにより、メンテナンスサイクルを延ばすことができ、生産性を向上させることができる。
【0049】
以上に述べた本実施形態によれば、内部に粒状の研磨部材が充填されるバレルを備え、ワークの管状端部のバリを前記ワークから除去するバリ取り装置であって、前記バレルは、開口穴が形成されたケースと、該ケースに固定されるとともに前記研磨部材が前記開口穴から脱落するのを防止する脱落防止部材と、からなり、前記ケースの前記開口穴と前記脱落防止部材との間には、前記管状端部が挿入される隙間が形成されている。よって、研磨部材の脱落が規制された隙間からバレル内にワークの管状端部を挿入すると、バレル内に充填されている研磨部材にワークの管状端部が接触してバリが除去される。したがって、ワークの管状端部を隙間に挿入すれば良く、ドア部材の開閉等が不要となるため、簡素な構造となるとともに、生産性を向上できる。
【0050】
また、前記ケース内に、弾性部材を配する構成となっているため、ワークの管状端部を挿入すると、ケース内に充填された研磨部材を押圧し弾性部材を変形させながら入り込む。よって、ワークの管状端部には弾性部材の反力により研磨部材が押し付けられるため、管状端部のバリを確実に除去できることになる。
【0051】
また、前記バレルの一側に該バレルを正転および逆転させる駆動手段を配し、前記バレルの他側に前記ワークをクランプするクランプ手段を配する構成となっているため、さらに簡素な構造となるとともに、バレルを正転および逆転させることから、様々な方向のバリに対して研磨部材を接触させることができ、管状端部の様々な方向に向いているバリを一層確実に除去できることになる。
【0052】
また、前記ケース内に、大径部と小径部とを交互に配する構成となっているため、バレルの回転時に、ケースの大径部間に設けられた小径部が研磨部材の管状端部に対する相対移動のストッパとして機能することになり、その結果、研磨部材が管状端部から良好にバリを削り取ることになる。したがって、管状端部のバリを一層確実に除去できることになり、信頼性をさらに向上できる。加えて、大径部52と小径部51との繋がり部分で研磨部材を攪拌でき、研磨部材を平均的に使用することができ、研磨部材の交換頻度を少なくすることができる。
【0053】
また、前記ケースは、一端が開口するケース本体と、前記開口穴を有して前記ケース本体の前記一端側に取り付けられる蓋部材とを有する構成となっているため、ケース内に容易かつ確実に研磨部材を投入することができる。
【0054】
また、前記ワークは、緩衝器に用いられるシリンダであることから、バリを確実に除去することの効果が高く、緩衝器の信頼性を向上できる。
【0055】
なお、以上の実施形態では、全体にわたって管状をなすワークWの管状端部WaのバリをワークWから除去する場合を例にとり説明したが、管状端部を有するワークであれば全体にわたって管状をなすものでなくても良く、例えば、中実の軸部の先端に管状端部が設けられているワークのバリも除去可能である。
なお、上記実施形態では、モータ24がバレル26を正転および逆転させるものを示したが、さらに、軸方向駆動部25により軸方向に振動させることで、更に、バリを確実に除去する効果を高めることができる。
また、上記実施では、バレルを正転および逆転や軸方向に振動させるものを示したが、バレルを固定し、ワーク側を回転や軸方向に振動させるようにしてもよい。よって、バレルとワークが相対的に回転や軸方向に動くようにすればよい。
また、ケースの内周を多角形としてもよく、または、円形で部分的に突起を設ける形状であっても良い。
【符号の説明】
【0056】
10 バリ取り装置
17 クランプ部(クランプ手段)
24 モータ(駆動手段)
26 バレル
30,31 研磨部材
33 開口穴
34 ケース
35 脱落防止部材
36 弾性部材
43 ケース本体
44 蓋部材
51 小径部
52 大径部
85 隙間
W ワーク
Wa 管状端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に粒状の研磨部材が充填されるバレルを備え、ワークの管状端部のバリを前記ワークから除去するバリ取り装置であって、
前記バレルは、
開口穴が形成されたケースと、
該ケースに固定されるとともに前記研磨部材が前記開口穴から脱落するのを防止する脱落防止部材と、からなり、
前記ケースの前記開口穴と前記脱落防止部材との間には、前記管状端部が挿入される隙間が形成されていることを特徴とするバリ取り装置。
【請求項2】
前記ケース内に、弾性部材を配することを特徴とする請求項1に記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記バレルの一側に該バレルを正転および逆転させる駆動手段を配し、
前記バレルの他側に前記ワークをクランプするクランプ手段を配することを特徴とする請求項1または2に記載のバリ取り装置。
【請求項4】
前記ケースを筒状とし、内周面に突起を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバリ取り装置。
【請求項5】
前記ケースは、
一端が開口するケース本体と、
前記開口穴を有して前記ケース本体の前記一端側に取り付けられる蓋部材とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のバリ取り装置。
【請求項6】
前記ワークは、緩衝器に用いられるシリンダであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバリ取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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