説明

バリ除去方法及びその装置

【課題】鋳造作業を行った後の金型から、バリを効率よく除去する。
【解決手段】バリ除去装置は、第1先端アームにエアブロー機構が設けられた第1多関節ロボットと、第2先端アーム34に磁石式バリ除去機構36及び離型剤塗布機構38が設けられた第2多関節ロボットとを具備する。金型14からバリを除去する際には、先ず、エアブロー機構32からの圧縮エアで軽量の異物を除去するとともに、圧縮エアでは除去されることなく金型14に残留したバリを冷却する。その後、磁石式バリ除去機構36を構成する第1磁石列78及び第2磁石列84の磁力によって、金型14に残留したバリを保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造作業が終了して鋳造品を取り出した後、金型に残留したバリを除去するバリ除去方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造は、複数個の金型が組み合わされて形成されるキャビティに金属の溶湯を充填して冷却固化させ、所定の形状の鋳造品を得る加工方法として周知であり、広汎に実施されるに至っている。
【0003】
この種の鋳造においては、キャビティに充填した溶湯が金型同士の合わせ面に若干漏洩することがある。この漏洩した溶湯が冷却固化すると、バリとして合わせ面に残留する。また、鋳造では、鋳造品に中空部位を形成するべく砂中子を用いることが多々あるが、離型時に砂中子の一部が崩れてしまい、砂粒として金型に残留することもある。
【0004】
以上のように、鋳造には、バリや砂粒等の異物が金型に残留するという不都合がある。このような異物を除去することなく次回の鋳造を行うと、バリが合わせ面に残留しているときには、金型に傷が入る懸念がある。また、バリがキャビティに進入したときには、バリを噛み込んだ不良鋳造品が作製されてしまう。
【0005】
このような不具合が発生することを回避するべく、鋳造品を金型から取り出した後、該金型に対してエアブローを行うことで該金型を清掃することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−145258号公報(特に段落[0020]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
砂粒や小さなバリは比較的軽量であるので、エアブローによって容易に飛散する。従って、このような異物を金型から除去することは容易である。これに対し、大きなバリは重量が比較的大であり、エアブローで飛散させることは容易ではない。また、鉛直上方に金型を上昇させて型開きを行うような鋳造装置では、キャビティや合わせ面が水平方向に沿って延在するため、金型の下方にバリが落下することが困難である。
【0008】
このように、エアブローではバリの除去が不十分となるときがある。除去し得なかった大きなバリは、作業者が手作業で除去すればよいが、煩雑である上に比較的長時間を要する。
【0009】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、重量が大であるバリを容易に、しかも、効率よく除去することが可能なバリ除去方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明は、鋳造品が取り出された後の金型に残留したバリを除去するバリ除去方法であって、
金型に対して圧縮気体を供給する工程と、
前記金型に残留し、且つ前記圧縮気体によって冷却されたバリを磁石で捕集して前記金型から離脱させる工程と、
を有することを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明においては、比較的軽量な異物を圧縮気体によって金型から除去すると同時に、比較的重量が大であるバリ等、圧縮気体では除去し得ないバリを冷却するようにしている。鋳造品(溶湯)が鋳鉄からなる場合には、この冷却によってバリが強磁性を示すようになる。このため、次なる工程において、該バリを磁石によって容易に除去することができる。
【0012】
さらに、バリ除去機構と同一の保持手段に離型剤塗布手段を設け、この離型剤塗布手段の作用下に、バリが除去された後の前記金型に離型剤を塗布するようにしてもよい。これにより、バリを除去してから次回の鋳造作業を開始するまでの時間が短縮される。
【0013】
また、本発明は、鋳造品が取り出された後の金型に残留したバリを除去するためのバリ除去装置であって、
金型に対して圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段と、
前記圧縮気体供給手段を保持する第1保持手段と、
前記圧縮気体によって冷却されたバリを捕集する磁石と、
前記磁石を保持する第2保持手段と、
を有することを特徴とする。
【0014】
ここで、第1保持手段と第2保持手段は、同一のものであってもよいし、別体であってもよい。すなわち、例えば、第1保持手段、第2保持手段は、多関節ロボットのアームで構成することができるが、同一のアームに圧縮気体供給手段及び磁石の双方を設けるようにしてもよいし、第1のアームに圧縮気体供給手段を設けるとともに第2のアームに磁石を設ける等、圧縮気体供給手段と磁石を個別に設けるようにしてもよい。
【0015】
このように構成することにより、圧縮気体では除去し得なかったバリを磁石で除去することが可能となり、その結果、金型を容易に、しかも、効率よく清浄化することができる。
【0016】
この場合、前記磁石を覆うカバーを設けることが好ましい。なお、このカバーは、常磁性体又は非磁性体から形成する。
【0017】
この構成では、磁石をカバーに近接させることによって、該磁石の磁力がカバーの外方に及ぶ。この状態でバリを引き寄せて保持した後、磁石をカバーから離間させれば、磁石の磁力がカバーの外方に及ばなくなり、バリが容易に磁石から離脱する。従って、磁石からバリを除去することが極めて容易となる。
【0018】
さらに、金型に塗布される離型剤を供給する離型剤供給手段を設けるようにしてもよい。この離型剤塗布手段の作用下に、バリが除去された後の前記金型に離型剤を塗布することにより、バリを除去してから次回の鋳造作業を開始するまでの時間が短縮されるという利点が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、先ず、金型に対して圧縮気体を供給することにより、比較的軽量な異物を金型から除去すると同時に、圧縮気体では除去し得なかったバリを冷却し、その後、該バリを磁石によって除去するようにしている。このように2段階の除去作業を行うことにより、金型を効率よく清浄化することができる。
【0020】
特に、鋳造品(溶湯)が鋳鉄からなる場合には、冷却によってバリが強磁性を示すようになるため、該バリを磁石によって除去することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】型閉じがなされた状態の金型の要部側方断面図である。
【図2】前記金型を構成する下型の平面図である。
【図3】本実施の形態に係るバリ除去装置を構成するエアブロー機構を備える第1多関節ロボットの第1先端アームの模式的側面図である。
【図4】前記バリ除去装置を構成する磁石式バリ除去機構及び離型剤塗布機構を備える第2多関節ロボットの第2先端アームを、図2のIV−IV線矢視から模式的に示した模式的断面図である。
【図5】前記第2先端アームの要部概略正面図である。
【図6】前記第2先端アームの要部概略背面図である。
【図7】前記磁石式バリ除去機構を構成する金型用磁石でバリを保持した状態を簡易的に示す模式的正面図である。
【図8】前記第2先端アームの下方からの平面図である。
【図9】図7の金型用磁石からバリを離脱させた状態を簡易的に示す模式的正面図である。
【図10】前記下型に対して離型剤の塗布を開始する際の第2多関節ロボットの先端アームの位置を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るバリ除去方法につき、それを実施するバリ除去装置との関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
はじめに、鋳造装置につき図1を参照して概略説明する。この鋳造装置は、下型10と、該下型10に載置される上型12とからなる金型14を有する。なお、図1においては、型閉じがなされた状態の金型14を示している。
【0024】
この場合、下型10及び上型12は、略直方体形状をなし、且つその軸線方向が略水平方向に沿って延在する。換言すれば、これら下型10及び上型12は、横臥した姿勢となる。下方の下型10は位置決め固定され、一方、上方の上型12は、図示しない昇降機構の作用下に略鉛直方向に沿って変位することが可能である。この変位に伴い、上型12が下型10に対して接近又は離間する。
【0025】
金型14には、注湯口16の下流側に、押湯室18に連通するランナ20が形成される。前記押湯室18には、フィルタ22が配設される。
【0026】
金型14は、長尺な鋳造品を複数本同時に得るためのものである。従って、下型10の平面図である図2に示すように、前記ランナ20から分岐し、且つ各々の形状が鋳造品の形状に対応するキャビティ24が複数個形成される。注湯口16から導入された溶湯は、押湯室18を経た後、ランナ20から分配されて各キャビティ24に導入される。
【0027】
次に、本実施の形態に係るバリ除去装置につき説明する。図3、及び図2のIV−IV線矢視からの模式的断面図である図4に示すように、該バリ除去装置は、第1多関節ロボットの第1先端アーム30に設けられたエアブロー機構32(図3参照)と、第2多関節ロボットの第2先端アーム34に設けられた磁石式バリ除去機構36(図4参照)及び離型剤塗布機構38とを有する。なお、図3及び図4においては、第1多関節ロボット及び第2多関節ロボットの第1先端アーム30、第2先端アーム34のみを図示しており、それ以外は図示していない。また、理解を容易にするべく、エアブロー機構32や磁石式バリ除去機構36、離型剤塗布機構38を模式的に示すに留めている。
【0028】
第1多関節ロボットの長尺な第1先端アーム30は、図3中の矢印X1方向に沿って回転自在である。この第1先端アーム30の先端には、圧縮気体としての圧縮エアを供給する第1エアノズル40及び第2エアノズル42(圧縮気体供給手段)が互いに略180°離間するようにして設けられる。勿論、これら第1エアノズル40及び第2エアノズル42からは、図示しない配管を介して供給された圧縮エアが吐出される。
【0029】
また、第1エアノズル40の近傍には、フィルタ22(図1参照)を把持するためのフィルタ用チャック44が配設される。すなわち、フィルタ用チャック44は、互いに接近・離間することで開閉する1組のチャック爪46、48を有し、これらチャック爪46、48は、閉状態でフィルタ22を把持する一方、開状態でフィルタ22を解放する。
【0030】
第2多関節ロボットの長尺な第2先端アーム34は、角柱形状をなし、図4中の矢印X2方向に沿って回転自在である。次に、この第2先端アーム34に設けられる磁石式バリ除去機構36及び離型剤塗布機構38について説明する。
【0031】
図5及び図6は、それぞれ、第2多関節ロボットの第2先端アーム34の要部概略正面図、要部概略背面図である。これら図5及び図6では、磁石式バリ除去機構36が下型10に臨む状態を示しており、この場合、離型剤塗布機構38を構成する離型剤吐出ノズルは、下型10に臨む下型用ノズル50と、上型12に臨む上型用ノズル52とからなる。
【0032】
図5に示すように、第2先端アーム34には、略平板形状の第1支持盤54及び第2支持盤56が取り付けられる。さらに、これら第1支持盤54、第2支持盤56同士の間に、略平板形状の第3支持盤58が配置される。この中の第1支持盤54及び第2支持盤56には、第1シリンダユニット60及び第1フレーム62、第2シリンダユニット64及び第2フレーム66がそれぞれ支持され、第3支持盤58には、第3シリンダユニット68及び第3フレーム70が支持される。
【0033】
第1シリンダユニット60のロッド72の先端には、長尺な第1磁石支持板74(図6参照)が取り付けられる。この第1磁石支持板74は、複数個の金型用磁石76から構成される第1磁石列78を支持する。同様に、第2シリンダユニット64のロッド80の先端にも長尺な第2磁石支持板82(図6参照)が取り付けられるとともに、該第2磁石支持板82に、複数個の金型用磁石76から構成される第2磁石列84が支持される。
【0034】
第1磁石列78及び第2磁石列84の各々は、第1カバー86、第2カバー88で覆われる。これら第1カバー86及び第2カバー88は、前記第1フレーム62、前記第2フレーム66のそれぞれに連結されている。
【0035】
また、第3シリンダユニット68のロッド90の先端には、単数個の押湯室用磁石92が設けられる。この押湯室用磁石92は、前記第3フレーム70に連結された第3カバー94で覆われている。
【0036】
以上の構成において、第1カバー86、第2カバー88及び第3カバー94は、普段は強磁性を示さず、且つ第1磁石列78、第2磁石列84及び押湯室用磁石92が近接したときにこれら磁石の影響を受けて弱い磁性を示す物質、すなわち、常磁性体からなる。なお、常磁性体の好適な例としては、ステンレス鋼が挙げられる。第1カバー86、第2カバー88及び第3カバー94は、第1磁石列78、第2磁石列84及び押湯室用磁石92の磁力が通過できる程度に厚みが小さな樹脂やゴム等の非磁性体からなるものであってもよい。
【0037】
図5及び図6、さらに、図7においては、第1シリンダユニット60、第2シリンダユニット64及び第3シリンダユニット68の各ロッド72、80、90が最大に伸張し、これに伴って第1磁石列78、第2磁石列84及び押湯室用磁石92が最大限下降した際の状態を示している。これら図5〜図7から諒解されるように、第1磁石列78、第2磁石列84及び押湯室用磁石92が最大限下降したとき、各磁石76、92は、第1カバー86、第2カバー88及び第3カバー94の底壁に当接する。
【0038】
なお、図7における参照符号Bは、バリを示す。
【0039】
図6に示すように、第2先端アーム34には、その軸線が第2先端アーム34の軸線に沿って延在する長尺な第1流通路形成部材96及び第2流通路形成部材98が支持される。また、これら第1流通路形成部材96及び第2流通路形成部材98の間には、その軸線が第2先端アーム34の軸線に対して略直交する長尺な第3流通路形成部材100が配設される。勿論、この第3流通路形成部材100も、第2先端アーム34に支持されている。さらに、第3流通路形成部材100の図6における下方及び上方には、第4流通路形成部材102、第5流通路形成部材104がそれぞれ配設される。
【0040】
これら第1流通路形成部材96、第2流通路形成部材98、第3流通路形成部材100、第4流通路形成部材102及び第5流通路形成部材104の内部には、それぞれ、離型剤を流通させるための図示しない流通路が形成されている。
【0041】
離型剤の流通経路に沿って説明すると、第3流通路形成部材100には、複数個の導入用配管106が接続され、第4流通路形成部材102及び第5流通路形成部材104には、単数個の導入用配管106が接続される。勿論、全ての導入用配管106には、チューブを介して離型剤供給源(いずれも図示せず)が接続される。
【0042】
第1流通路形成部材96の流通路は、第1連通用配管108、109を介して第3流通路形成部材100の流通路に連通される。同様に、第2流通路形成部材98の流通路は、第2連通用配管110、111を介して第3流通路形成部材100の流通路に連通される。
【0043】
さらに、第1流通路形成部材96には、その軸線に対して略直交する方向に延在する各4本の下型用ノズル50及び上型用ノズル52が接続される。第2流通路形成部材98にも同様に、その軸線に対して略直交する方向に延在する各4本の下型用ノズル50及び上型用ノズル52が接続される。
【0044】
一方、第4流通路形成部材102に形成された流通路は、図8に示すように、第1流通路形成部材96に設けられた下型用ノズル50と、第2流通路形成部材98に設けられた下型用ノズル50との間に設けられた別の下型用ノズル50に連通する。また、第5流通路形成部材104に形成された流通路は、図5及び図6に示す上型用ノズル52に連通する。
【0045】
以上とは別に、第2先端アーム34には、導入用継手管112が設けられる(図5参照)。図示しないホースを介して導入用継手管112に導入された離型剤は、分配部材114に連結された第1分配管116、第2分配管118を経由し、さらに、仮想線で示した第1ホース120、第2ホース122を介して、前記第1フレーム62及び前記第2フレーム66の各々に支持された第1中継部材124、第2中継部材126に送られる。
【0046】
第1中継部材124、第2中継部材126には、それぞれ、第1吐出用管128、第2吐出用管130が接続される。これら第1吐出用管128、第2吐出用管130には、図8に示すように、下型10に臨むようにして吐出口132、134が複数個形成されている。これらの吐出口132、134からも、離型剤が吐出される。
【0047】
本実施の形態に係るバリ除去装置は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果につき、バリ除去方法との関係で説明する。
【0048】
はじめに、図示しない溶解炉にて生成された溶湯が、図1に示す金型14の注湯口16から導入される。すなわち、溶湯の金型14内への注湯が開始される。
【0049】
注湯口16から押湯室18に流動した溶湯は、後から押湯室18に導入される溶湯によって押圧され、ランナ20に向かって流動する。この最中に前記フィルタ22を通過する際に、溶湯中に生成したノロや酸化物等の各種の異物が除去される。溶湯は、さらに、ランナ20から分配されて複数個のキャビティ24の各々に導入される。
【0050】
全てのキャビティ24に溶湯が充填された後、該溶湯は、所定の時間が経過することに伴って冷却固化する。これにより、鋳造品が形成される。その後、上型12を上方に変位させて下型10から離間させ、いわゆる型開きを行うことにより、鋳造品が露呈する。また、上型12に重量が大なるバリB(図7参照)が付着していた場合には、該バリBは、自重によって下型10に向かって落下する。
【0051】
露呈した鋳造品が取り出しロボットに取り出された後、本実施の形態に係るバリ除去方法が実施される。
【0052】
すなわち、先ず、図3に示す第1多関節ロボットの第1先端アーム30が下型10と上型12の間に、注湯口16から離間する側(キャビティ24の終端側)から進入し、その後、該注湯口16に近接する側(溶湯充填開始側)に進行する。この進行に際し、第1エアノズル40及び第2エアノズル42からは、圧縮エアが吐出される。この圧縮エアによって、軽量な異物が下型10及び上型12の双方から飛散する。すなわち、この種の異物が金型14から除去される。
【0053】
また、金型14、特に下型10に残留した重量が大なるバリB(図7参照)が圧縮エアによって冷却される。鋳鉄の溶湯を用いた場合、高温のバリBは常磁性を示すが、この冷却、換言すれば、温度降下に伴って強磁性を示すようになる。
【0054】
フィルタ用チャック44のチャック爪46、48は、フィルタ22の位置に到達した際、開状態から閉状態となる。これにより、フィルタ22を把持する。
【0055】
第1先端アーム30の進行が終了することに伴い、下型10及び上型12からの軽量な異物の除去が終了するとともに、重量が大であるバリBの冷却が終了する。その後、第1先端アーム30が所定の位置に退避し、さらに、チャック爪44、48が開状態とされることでフィルタ22が解放される。
【0056】
次に、第2多関節ロボットの第2先端アーム34が下型10と上型12の間に進入して、図2の仮想線で示される位置、すなわち、注湯口16に近接する側(溶湯充填開始側)に第2先端アーム34が位置するように動作する。
【0057】
第2先端アーム34は、第1磁石列78及び第2磁石列84が下型10に近接するとともに、押湯室用磁石92が押湯室18に近接するように移動する。これにより、下型10に残留した重量が大なるバリBが第1磁石列78及び第2磁石列84に引き寄せられ、図7に示すように、その磁力によって保持される。このバリBが、既に強磁性を示す程度に冷却されているからである。同時に、押湯室18に残留した重量が大なるバリBが、押湯室用磁石92に保持される。
【0058】
なお、第1磁石列78及び第2磁石列84が第1カバー86、第2カバー88に覆われており、且つ押湯室用磁石92が第3カバー94に覆われているので、バリBは、見かけ上、第1カバー86、第2カバー88及び第3カバー94に保持される。また、下型10は、常磁性体である銅合金から構成されているので、第1磁石列78、第2磁石列84及び押湯室用磁石92が下型10に引き寄せされることはない。上型12においても同様である。
【0059】
このようにしてバリBの除去を開始した後、第2多関節ロボットは、図2に矢印Y1として示すように、各キャビティ24の終端側に第2先端アーム34が移動するように動作する。その結果、各キャビティ24の全体にわたってバリBが除去される。
【0060】
以上のようにして全てのキャビティ24からバリBを除去した後、第2先端アーム34は、金型14から離間した所定の位置で停止する。この位置には、図示しない捕集トレーが予め設置されている。
【0061】
この位置で、図9に模式的に示すように、第1シリンダユニット60(第2シリンダユニット64)のロッド72、80が後退する。これに追従し、第1磁石列78(第2磁石列84)が上昇し、第1カバー86(第2カバー88)から離間する。
【0062】
このようにして第1磁石列78(第2磁石列84)が離間すると、その磁力が第1カバー86(第2カバー88)の外方に及ばなくなる。従って、第1カバー86(第2カバー88)に保持されていたバリBが前記捕集トレーに落下する。これにより、第1磁石列78(第2磁石列84)に保持された全てのバリBが捕集トレーに捕集される。
【0063】
勿論、押湯室用磁石92に保持されたバリBも、第3シリンダユニット68のロッド90が後退して押湯室用磁石92が上昇することに伴い、第3カバー94から前記捕集トレーに落下する。押湯室用磁石92の磁力が第3カバー94の外方に及ばなくなるからである。その結果として、押湯室用磁石92に保持されたバリBが捕集トレーに捕集される。
【0064】
このように、第1磁石列78、第2磁石列84及び押湯室用磁石92を第1カバー86、第2カバー88及び第3カバー94で覆ったことにより、これら第1磁石列78、第2磁石列84及び押湯室用磁石92からバリBを離脱させることが極めて容易となる。
【0065】
以上の動作及び作業の結果、金型14からバリBが除去され、該金型14が清浄化されるに至る。
【0066】
その後、第2多関節ロボットは、図2に仮想線で示すように、各キャビティ24における注湯口16に近接する側(溶湯充填開始側)に第2先端アーム34が再び位置するように動作する。この状態で、離型剤供給源から離型剤が供給される。なお、離型剤それ自体ではなく、例えば、アセチレン等の離型剤原材料であってもよい。この場合、下型10又は上型12の近傍でアセチレンを熱分解することによって、黒鉛からなる離型剤とすればよい。
【0067】
離型剤は、図示しない前記チューブ、及び導入用配管106を経由して、第3流通路形成部材100、第4流通路形成部材102及び第5流通路形成部材104に送られる。この中、第3流通路形成部材100に供給された離型剤は、第1連通用配管108、109、第2連通用配管110、111を介して第1流通路形成部材96、第2流通路形成部材98に到達し、さらに、これら第1流通路形成部材96、第2流通路形成部材98に接続された下型用ノズル50及び上型用ノズル52から、下型10及び上型12に向かって吐出される。
【0068】
また、第4流通路形成部材102及び第5流通路形成部材104に供給された離型剤は、それぞれ、下型用ノズル50、上型用ノズル52から下型10及び上型12に向かって吐出される。さらに、導入用継手管112に供給された離型剤は、第1分配管116、第1ホース120、第1中継部材124を経由して第1吐出用管128から吐出され、同時に、第2分配管118、第2ホース122、第2中継部材126を経由して第2吐出用管130から吐出される。
【0069】
以上のようにして吐出される離型剤により、下型10及び上型12に対して同時に離型剤が塗布される。なお、離型剤原材料であるアセチレンを吐出した場合、上記したように、下型10又は上型12の近傍でアセチレンを熱分解することによって、黒鉛からなる離型剤を形成すればよい。
【0070】
このようにして離型剤の塗布を開始した後、第2多関節ロボットは、図2に矢印Y1として示すように、キャビティ24の終端側に第2先端アーム34が移動するように動作する。その結果、各キャビティ24の全体にわたって離型剤が塗布されるに至る。
【0071】
このように、本実施の形態によれば、重量が大なるバリBであっても容易に除去することが可能である。しかも、第2多関節ロボットによってバリBの除去と離型剤の塗布を行うので、バリ除去用ロボットと離型剤塗布用ロボットを用いる場合に比してロボットの個数を低減することもできる。このことは、設備投資の低廉化、設備の簡素化に寄与する。
【0072】
このようにして清浄化され、しかも、離型剤が塗布された金型14は、次回の鋳造作業に即時に供することが可能である。すなわち、上記のようにバリ除去作業及び離型剤塗布作業を行うことにより、1回目の鋳造作業が終了してから次回の鋳造作業を開始するまでの間隔を短縮することができるという利点が得られる。
【0073】
なお、上記した実施の形態では、下型10に対してのみバリBの除去作業を行うようにしている。この理由は、上記したように、重量が大なるバリBが下型10に落下するので、上型12に対してバリBの除去作業を行う必要は特にないからであるが、必要に応じて、第2先端アーム34を図4中の矢印X2方向に沿って回転させ、さらに、第1磁石列78及び第2磁石列84が上型12に近接するように移動させるようにしてもよい。これにより、上型12にバリBが残留したときにも、第1カバー86、第2カバー88を介して第1磁石列78及び第2磁石列84に該バリBを保持し、上型12から除去することができる。
【0074】
又は、第1磁石列78、第2磁石列84に対して約180°離間した位置に第3磁石列、第4磁石列を同一軸線上に直列に配置し、第1磁石列78、第2磁石列84で下型10のバリBを除去した後、第3磁石列、第4磁石列で上型12のバリBを除去するようにしてもよい。
【0075】
また、エアブロー機構32、磁石式バリ除去機構36及び離型剤塗布機構38を同一の多関節ロボットに設けるようにしてもよい。この場合、エアブロー機構32(圧縮気体供給手段)を保持する保持手段(第1保持手段)は、磁石式バリ除去機構36(磁石)を保持する保持手段(第2保持手段)を兼ねる。本発明は、このように第1保持手段が第2保持手段を兼ねる場合を含むものとする。すなわち、第1保持手段は、第2保持手段と別体であってもよいし、同一のものであってもよい。
【0076】
又は、磁石式バリ除去機構36と離型剤塗布機構38とを別の多関節ロボットに設けるようにしてもよい。
【0077】
さらに、金型は、上記した下型10及び上型12から構成される金型14に特に限定されるものではなく、略鉛直方向に沿って延在する、いわゆる縦型のキャビティ24を形成する金型であってもよい。この場合、第1先端アーム30、第2先端アーム34の軸線を、キャビティ24の軸線に対して略平行に設定すればよい。
【0078】
さらにまた、図10に示すように、離型剤塗布を開始する際の第2先端アーム34の進行開始位置を、バリ除去を開始する際の第2先端アーム34の進行開始位置と逆にするようにしてもよい。この場合、第2先端アーム34を矢印Y2方向、すなわち、各キャビティ24の終端側から注湯口16に近接する側(溶湯充填開始側)に指向する方向とすればよい。勿論、図10に仮想線で示す位置をバリ除去開始位置とし、図2に仮想線で示す位置を離型剤塗布開始位置としてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10…下型 12…上型
14…金型 24…キャビティ
30…第1先端アーム 32…エアブロー機構
34…第2先端アーム 36…磁石式バリ除去機構
38…離型剤塗布機構 40…第1エアノズル
42…第2エアノズル 50…下型用ノズル
52…上型用ノズル 60…第1シリンダユニット
64…第2シリンダユニット 68…第3シリンダユニット
76…金型用磁石 78…第1磁石列
84…第2磁石列 86…第1カバー
88…第2カバー 92…押湯室用磁石
94…第3カバー B…バリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造品が取り出された後の金型に残留したバリを除去するバリ除去方法であって、
金型に対して圧縮気体を供給する工程と、
前記金型に残留し、且つ前記圧縮気体によって冷却されたバリを磁石で捕集して前記金型から離脱させる工程と、
を有することを特徴とするバリ除去方法。
【請求項2】
請求項1記載の除去方法において、前記磁石を支持する保持手段に離型剤塗布手段を設け、該離型剤塗布手段の作用下に、バリが除去された後の前記金型に離型剤を塗布することを特徴とするバリ除去方法。
【請求項3】
鋳造品が取り出された後の金型に残留したバリを除去するためのバリ除去装置であって、
金型に対して圧縮気体を供給する圧縮気体供給手段と、
前記圧縮気体供給手段を保持する第1保持手段と、
前記圧縮気体によって冷却されたバリを捕集する磁石と、
前記磁石を保持する第2保持手段と、
を有することを特徴とするバリ除去装置。
【請求項4】
請求項3記載の装置において、常磁性体又は非磁性体からなり、前記磁石を覆うカバーをさらに有することを特徴とするバリ除去装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の装置において、前記金型に塗布される離型剤を供給する離型剤供給手段をさらに有することを特徴とするバリ除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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