説明

バルブユニット

【課題】2つの接続流路を接続するバルブユニットにおいて外部への液体の漏れ出しを確実に防止する。
【解決手段】連結前のバルブ機構11においては、リップ42の下面に、バネ45により上方に付勢された弁部材44の大径部44aが下方から当接することで筒状体41の上端が塞がれている。連結前のバルブ機構23においては、Oリング53に、バネ54により下方に付勢された弁部材52が上方から当接することにより筒状体51の下端が塞がれている。バルブ機構23とバルブ機構11とを連結すると、筒状体51が案内部材43に案内されて下方に移動し、筒状体51が貫通孔42aの壁面に接触することで、貫通孔42aが密閉空間となり、その後、弁部材52が突起44bにより上方に押圧されて移動するとともに、弁部材44が筒状体51により下方に押圧されて移動することにより、インク流路41aとインク流路51aとが連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの液体流路を接続するためのバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のカートリッジ接続装置においては、カートリッジ供給部では、第1の圧縮バネの弾性によりボールがOリングに押し付けられることにより、現像剤が流れ出るのが抑止されている。一方、画像形成装置本体の吸入部では、筒状部材の現像剤を吸入するための穴がゴム部材によって塞がれている。そして、カートリッジ供給部と画像形成装置本体の吸入部とを連結すると、ゴム部材がカートリッジ供給部の支持部材に押圧されて移動することにより、筒状部材の穴がゴム部材の外部に露出するとともに、筒状部材がボールを押圧しつつカートリッジ供給部の内部に挿入されることにより、筒状部材の穴がカートリッジ供給部のOリングよりも内側の部分に配置される。これにより、カートリッジ供給部から吸入部へ現像剤が供給される。このとき、筒状部材がOリングに挿入されることによりカートリッジが密閉され、現像剤が外部に漏れ出すのが防止されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−158108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のカートリッジ接続装置では、筒状部材がOリングに挿入される前に、筒状部材の先端がボールに接触してOリングを移動させるため、筒状部材の先端がボールに接触してから筒状部材がOリングに挿入されるまでの間に、Oリングと筒状部材との隙間から外部に現像剤が漏れ出してしまう虞がある。
【0005】
本発明の目的は、外部への液体の漏れを確実に防止することが可能なバルブユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係るバルブユニットは、液体が流れる第1流路に一端が接続された第1筒状体と、その第1筒状体の他端を塞ぐ第1弁部材と、その第1弁部材を前記第1筒状体の他端に向かって付勢する第1付勢手段とを備えた第1バルブ機構と、液体が流れる第2流路に一端が接続された第2筒状体と、その第2筒状体の他端に配置された弾性体と、その弾性体に接触することにより前記第2筒状体の他端を塞ぐ第2弁部材と、その第2弁部材を前記第2筒状体の他端に向かって付勢する第2付勢手段とを備えた第2バルブ機構とを備え、前記第1バルブ機構の他端と前記第2バルブ機構の他端とを連結する場合に、前記第1筒状体が前記弾性体に接触して前記弾性体と前記第2弁部材との間に密閉空間を形成し、その後、前記第2弁部材が前記第1弁部材に接触して前記第1筒状体の他端を開口し、前記第1筒状体が前記第2弁部材に接触して前記第2筒状体の他端を開口することを特徴とするものである。
【0007】
これによると、第1バルブ機構と第2バルブ機構とを連結したときに、第2弁部材が第1弁部材に接触して第1筒状体の他端を開口し、第1筒状体が第2弁部材に接触して第2筒状体の他端を開口する前に、第1筒状体が弾性体に接触して弾性体と第2弁部材との間に密閉空間が形成されるので、第1筒状体の他端及び第2筒状体の他端から、それぞれ、第1液体流路及び第2液体流路内の液体が外部に漏れ出すことがない。
【0008】
第2の発明に係るバルブユニットは、第1の発明に係るバルブユニットであって、前記第2弁部材は、前記第2筒状体の他端方向に延び、前記第1筒状体の内部に挿入可能な突起を備えたことを特徴とするものである。
【0009】
これによると、突起が第1筒状体の内部に挿入されたあとは、第1筒状体が突起に沿って移動することになるので、第1バルブ機構と第2バルブ機構との連結が容易になる。
【0010】
第3の発明に係るバルブユニットは、第1又は第2の発明に係るバルブユニットであって、前記第2筒状体は、前記第1バルブ機構と前記第2バルブ機構とが連結される際に、前記第1筒状体を案内する案内部を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
これによると、第1筒状体が第2筒状体の案内部に案内されるので、第1バルブ機構と第2バルブ機構との連結が容易になる。また、第1筒状体が第2筒状体の案内部に案内されることにより、第1バルブ機構と第2バルブ機構が位置合わせされて連結されることになるので、弾性体と第1弁部材との間に形成される密閉空間が確実に密閉され、液体の外部への漏れ出しをより確実に防止することができる。
【0012】
第4の発明に係るバルブユニットは、第1〜第3のいずれかの発明に係るバルブユニットであって、前記第2弁部材は、前記第2弁部材が前記第1筒状体に接触する際に、前記第2弁部材と前記第1筒状体との間に液体が流れる空隙を形成するためのリブを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
これによると、第2弁部材が第1筒状体に接触したときに、これらの間に空隙ができるため、この空隙を介して第1筒状体と第2筒状体とを連通させることができる。
【0014】
第5の発明に係るバルブユニットは、第1〜第4のいずれかの発明に係るバルブユニットであって、前記第2弁部材が前記第2筒状体の他端を塞いでいる状態における前記第2付勢手段による付勢力が、前記第1弁部材が前記第1筒状体の他端を塞いでいる状態における前記第1付勢手段による付勢力よりも大きいことを特徴とするものである。
【0015】
これによると、第2弁部材が第2筒状体の他端を塞いでいる状態における第2付勢手段の付勢力が、第1弁部材が第1筒状体の他端を塞いでいる状態における第1付勢手段の付勢力よりも大きいので、第2弁部材が第1弁部材に接触したときに、第1筒状体の他端が確実に開口される。
【0016】
第6の発明に係るバルブユニットは第1〜第5のいずれかの発明に係るバルブユニットであって、前記第1流路がインクカートリッジに接続されたチューブであり、前記第2流路がインクジェットヘッドの内部に形成されたインク流路であることを特徴とするものである。
【0017】
これによると、インクカートリッジとインクジェットヘッドとを接続する際にインク漏れが発生してしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0019】
図1は本実施の形態に係るプリンタの概略構成図であり、(a)が後述するカートリッジユニット7を取り付けた状態、(b)がカートリッジユニット7を取り外した状態をそれぞれ示している。図1に示すように、プリンタ1は、本体ケース2、蓋3、インクジェットヘッド4、搬送ローラ5、カートリッジ装着部6などを備えている。
【0020】
本体ケース2は上面が開口した略直方体形状のケースであって、本体ケース2の内部に、インクジェットヘッド4、搬送ローラ5などが配置されている。蓋3は、本体ケース2の上面に配置されており、本体ケース2上面の開口の開閉を行うことができるよう、図1における奥側の端部を中心として回動可能となっている。そして、プリンタ1の使用者は、蓋3を回動させて本体ケース2の上面の開口を開いた状態で、カートリッジユニット7の取り付け、交換作業などを行う。
【0021】
インクジェットヘッド4は、走査方向(図1の左右方向)に、記録用紙Pの全長にまたがって延びた、いわゆるライン型のインクジェットヘッドであり、その下面に形成されたノズル10(図2参照)からインクを吐出する。また、インクジェットヘッド4の上面の図1における右側の端部には、4つのバルブ機構11が形成されている。4つのバルブ機構11は、後述するように、その下端部がインクジェットヘッド4の内部のインク流路に接続されているとともに、その上端部がカートリッジユニット7のチューブ22に接続されたバルブ機構23と連結可能となっている。そして、バルブ機構11とバルブ機構23とが連結されると、インクカートリッジ21内のインクがインクジェットヘッド4に供給される。
【0022】
搬送ローラ5は、記録用紙Pを紙送り方向(図1の手前方向)に搬送する。4つのカートリッジ装着部6は、カートリッジユニット7のインクカートリッジ21を装着する部分であり、プリンタ1においては、本体ケース2の前面に4つのカートリッジ装着部6が走査方向に配列されている。そして、カートリッジ装着部6にインクカートリッジ21を装着することによりインクカートリッジ21をプリンタ1に対して固定することができるようになっている。なお、これら4つのカートリッジ装着部には、図1の左側に配置されているものから順に、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクが充填されたインクカートリッジ21が装着される。
【0023】
そして、プリンタ1においては、搬送ローラ5により搬送される記録用紙Pにインクジェットヘッド4のノズル10からインクが吐出されることにより、記録用紙Pに画像の印刷が行われる。
【0024】
次に、カートリッジユニット7について説明する。図2は、カートリッジユニット7の概略構成図である。図2に示すように、カートリッジユニット7は、インクカートリッジ21、チューブ22及びバルブ機構23を備えている。
【0025】
インクカートリッジ21は、ケース31、インクパック32、押圧板33、バネ34及びギア機構35を有している。ケース31は略直方体形状を有しており、内部に空間31aが形成されている。インクパック32は、ケース31の空間31a内に配置されており、その内部にインクジェットヘッド4に供給するためのインクが充填されている。また、インクパック32は、図2における左側の端部がケース31の外部に露出しており、この部分にチューブ22の一端が接続されている。
【0026】
押圧板33は、ケース31の空間31a内におけるインクパック32の上方にインクパック32に当接するように配置されており、その図2における右側の端部に設けられた軸32aを中心として回動可能となっている。バネ34は、ケース31の空間31a内に圧縮された状態で配置されており、その下端部が押圧板33の上面に接続されているとともに、その上端部が空間31aの天井面に接続されている。これにより、押圧板33はバネ34によって下方に付勢され、バネ34に付勢された押圧板33がインクパック32を下方に押圧する。
【0027】
ギア機構35は、押圧板33の図2における左側の端部を下方から支持するように構成されており、ギア機構35により、押圧板33がバネ34により押圧されて回動するのが妨げられる。これにより、押圧板33がインクパック32を押圧する力の大きさが調整されている。
【0028】
チューブ22は、合成樹脂などの高分子材料により構成されており、一端が前述したようにインクパック32に接続されているとともに、他端がバルブ機構23に接続されている。
【0029】
次に、インクジェットヘッド4の内部のインク流路に接続されたバルブ機構11、及び、チューブ22に接続されたバルブ機構23について説明する。図3〜図6は、バルブ機構11、23の断面図であり、図3がバルブ機構11とバルブ機構23とが連結されていない状態、図4〜図6がバルブ機構11とバルブ機構23とが連結される過程をそれぞれ示している。なお、本実施の形態では、バルブ機構11とバルブ機構23とをあわせたものが、本発明に係るバルブユニットに相当する。
【0030】
図3〜図6に示すように、バルブ機構11(第2バルブ機構)は、筒状体41(第2筒状体)、リップ42(弾性体)、案内部材43、弁部材44(第2弁部材)、バネ45(第2付勢手段)を備えている。筒状体41は、内部にインク流路41aが形成された略円筒形状の部材である。そして、インク流路41aは、その下端(一端)がインクジェットヘッド4の内部に形成されたインク流路(第2流路)に接続されているとともに、その上端(他端)が開口している。
【0031】
リップ42は、ゴムなどの弾性材料によって構成された部材であり、筒状体41の上端部(他端)に設けられている。また、リップ42には、その略中央部に、上下方向にリップ42を貫通する貫通孔42aが形成されている。案内部材43は、内部に空間43aが形成された円筒形状の部材であって、リップ42が配置された筒状体41の上端部に設けられている。案内部材43は、後述するようにバルブ機構11とバルブ機構23とを連結する際にバルブ機構23の後述する筒状体51を案内するためのものである。
【0032】
図7は弁部材44の斜視図である。図3〜図7に示すように、弁部材44は、インク流路41a内に配置されており、その上端部が他の部分よりも径が大きくなり、平面視でリップ42の貫通孔42aよりも外側まで延びた大径部44aとなっている。これにより、弁部材44(大径部44a)の上面がリップ42の下面に当接可能となっており、弁部材44の上面がリップ42の下面に当接した状態では、リップ42と弁部材44とにより筒状体41の上端の開口が塞がれ、インク流路41a及びインクジェットヘッド4と外部との連通が遮断される。
【0033】
また、弁部材44の上面には、突起44b及びリブ44cが形成されている。突起44bは、弁部材44の上面の略中央部から上方に(筒状体41の他端方向に)延びている。リブ44cは、弁部材44の上面に、突起44bを中心とする略十字の平面形状を有している。
【0034】
バネ45は、インク流路41a内において弁部材44の下方に配置されており、大径部44aの下面を上方に押圧することで弁部材44をリップ42に向かって付勢する。これにより、弁部材44は、後述するように筒状体51に押圧されていない状態で、その上面がリップ42の下面に当接する。
【0035】
バルブ機構23(第1バルブ機構)は、筒状体51(第1筒状体)、弁部材52(第1弁部材)、Oリング53及びバネ54(第1付勢手段)を備えている。筒状体51は、内部にインク流路51aが形成された、案内部材43の空間43aよりも若干小さい径を有しているとともに、その下端部において他の部分よりも径が小さくなった、平面視で略円形の筒状の部材である。また、筒状体51の下端部の径が他の部分よりも小さくなっているのにともなって、インク流路51aはその下端部においてその径が小さくなっている。また、筒状体51は、その上端部(一端)がチューブ22(第1流路)に接続されているとともに下端(他端)が開口している。
【0036】
弁部材52は球体であって、インク流路51a内に配置されている。Oリング53は、インク流路51aにおける径が小さくなった部分に配置されており、弁部材52の下方に位置している。そして、弁部材52及びOリング53は、弁部材52がOリング53に当接可能となるように構成されており、弁部材52がOリング53に当接した状態では、弁部材52とOリング53とにより筒状体51の下端の開口が塞がれる。
【0037】
バネ54はインク流路51aにおける弁部材52の上方に配置されており、弁部材52を下方に付勢している。そして、後述するように、弁部材52が弁部材44の突起44bに押圧されていない状態では、弁部材52がバネ54に付勢されてOリング53と当接している。ここで、弁部材52がOリング53に当接した状態におけるバネ54の付勢力は、弁部材44がリップ42に当接した状態におけるバネ45の付勢力よりも小さくなっている。
【0038】
次に、バルブ機構11とバルブ機構23とが連結される過程について説明する。バルブ機構11とバルブ機構23とが連結されていない状態では、前述したように、リップ42及び弁部材44により筒状体41の上端の開口が塞がれているとともに、弁部材52及びOリング53により筒状体51の下端の開口が塞がれている。
【0039】
そして、バルブ機構11とバルブ機構23とを連結する際には、バルブ機構23の筒状体51を上方からバルブ機構11の案内部材43の空間43aに挿入する。すると、筒状体51が空間43aを通過した後、図4に示すように、弁部材44の突起44bが、下方からインク流路51aに挿入されるとともに、筒状体51が上方からリップ42の貫通孔42aに挿入される。これにより、筒状体51の外周面とリップ42の貫通孔42aを画定する壁面とが互いに接触し、その後、筒状体51の外周面が貫通孔42aの壁面と摺動しながら下方に移動することとなり、リップ42の貫通孔42aが、弁部材44、52により塞がれた密閉空間となる。すなわち、弁部材52とリップ42との間に密閉空間が形成される。
【0040】
このとき、筒状体51が案内部材43の空間43aよりも若干小さい径を有しているので、筒状体51の外周面が空間43aの壁面に案内され、バルブ機構23とバルブ機構11とが位置合わせされた状態で挿入される。これにより、バルブ機構23とバルブ機構11とを容易に連結することができる。
【0041】
また、バルブ機構23とバルブ機構11とが位置合わせされて連結されるため、リップ42の貫通孔42aは確実に密閉される。
【0042】
また、バルブ機構23とバルブ機構11とが位置合わせされた状態で筒状体51が空間43aに挿入されることにより、突起44bが確実にインク流路51aに挿入されるので、筒状体51が突起44bに接触することがなく、突起44bの損傷が防止される。
【0043】
さらに、突起44bがインク流路51aに挿入された後は、筒状体51が突起44bに沿って移動するので、バルブ機構23とバルブ機構11とをさらに容易に連結することができる。
【0044】
ここで、突起44b及び筒状体51は、上下方向に関して、弁部材44の上面がリップ42の下面に当接した状態での突起44bの、貫通孔42aの壁面における筒状体51と接触する部分よりも上方に突出した部分の長さL1が、筒状体51の下端からOリング53までの長さL2よりも短くなるように構成されている。したがって、筒状体51が貫通孔42aの壁面に接触し始めた状態では、突起44bが弁部材52に接触していない。これにより、貫通孔42aが密閉空間となる前に、後述するように弁部材52が突起44bに押圧されることで上方に移動してインク流路51aが外部に連通してしまうことがない。
【0045】
バルブ機構23をさらに下方まで挿入すると、図5に示すように、弁部材44の突起44bが弁部材52に当接して弁部材52を上方に押圧する。これにより、弁部材52がバネ54の付勢力に抗して上方に移動し、弁部材52とOリング53との間に空隙ができ(筒状体51の下端が開口し)、インク流路51aが貫通孔42aと連通してインク流路51a内のインクが貫通孔42aに流れ出す。このとき、インク流路51aが貫通孔42aと連通する前に、貫通孔42aが密閉空間となっているため、インク流路51aから貫通孔42aに流れ出したインクがバルブ機構11、23の外部に漏れ出してしまうことがない。また、このとき、弁部材44がリップ42に当接した状態におけるバネ45の付勢力が、弁部材52がOリング53に当接した状態におけるバネ54の付勢力よりも大きくなっているので、突起44bと弁部材52とが当接したときに、確実に弁部材52が突起44bに押圧されて上方に移動する。
【0046】
この状態からバルブ機構23をさらに下方に挿入すると、図6に示すように、筒状体51の下面がリブ44cの上面に当接するとともに、弁部材44が筒状体51によって下方に押圧される。すると、弁部材44は、バネ45の付勢力に抗して下方に移動してリップ42と当接しなくなり、弁部材44の上面とリップ42の下面との間に空隙ができる(筒状体41の上端が開口する)。
【0047】
さらに、リブ44cが略十字の平面形状を有していることから、インク流路51aの開口の一部はリブ44cと対向しておらず、筒状体51の開口とリブ44cとの間には空隙ができ、この空隙を介して、インク流路51aとインク流路41aとが連通する。そして、このように、筒状体51の開口とリブ44cとの間に空隙ができるので、筒状体51の側面にインク流路51aとインク流路41aとを連通させるための穴や切り欠きなどを形成する必要がなく、筒状体51の側面とリップ42の貫通孔42aの壁面とが接触した状態で摺動しても、リップ42が損傷しにくい。
【0048】
そして、この状態では、筒状体51のインク流路51aと筒状体41のインク流路41aとが、インク流路51aの開口とリブ44cとの間の空隙、及び、リップ42の下面と弁部材44の上面との空隙を介して互いに連通する。これにより、インクパック32内のインクはチューブ22及びバルブ機構11、23を介してインクジェットヘッド4に供給される。
【0049】
また、この状態でも、筒状体51とリップ42の貫通孔42aの壁面とが接触しているため、貫通孔42aは、インク流路41a、51a以外の部分には連通しておらず、インク流路51aからインク流路41aに流れ込んだインクが、バルブ機構11、23の外部に漏れ出すことがない。
【0050】
さらに、この状態では、筒状体51が、案内部材43の空間43a内に配置されることにより、筒状体51が案内部材43に支持されるので、筒状体51の側方から外力が加わったときに、バルブ機構23がバルブ機構11から外れてしまうのが防止される。
【0051】
一方、バルブ機構23をバルブ機構11から取り外す際には、図6に示す状態からバルブ機構23を上方に引き抜く。すると、まず、図5に示すように、弁部材44が筒状体51に押圧されなくなり、これにより、バネ45に付勢された弁部材44(大径部44a)の上面がリップ42の下面に当接し、リップ42と弁部材44とにより筒状体41の上端部の開口が塞がれる。
【0052】
その後、図4に示すように、弁部材52が弁部材44の突起44bに押圧されなくなり、これにより、バネ54に付勢された弁部材52がOリング53に当接し、弁部材52とOリング53とにより筒状体51の下端部の開口が塞がれる。
【0053】
さらにその後、図3に示すように、筒状体51がリップ42の貫通孔42aから引き抜かれ、バルブ機構23がバルブ機構11から取り外される。
【0054】
このように、バルブ機構23をバルブ機構11から取り外す際には、リップ42と弁部材44とにより筒状体41の上端の開口が塞がれ、弁部材52とOリング53とにより筒状体51の下端の開口が塞がれた後、筒状体51がリップ42の貫通孔42aから引き抜かれるので、リップ42と弁部材44とにより筒状体41の上端の開口が塞がれる前、及び、弁部材52とOリング53とにより筒状体51の下端の開口が塞がれる前の状態では、リップ42の貫通孔42aがインク流路41a、51a以外の部分には連通していない。これにより、バルブ機構11、23から外部にインクが漏れ出してしまうのが防止されている。
【0055】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0056】
一変形例では、図8に示すように、弁部材44にリブ44cが形成されておらず、筒状体51の先端部に切り欠き部51bが形成されている(変形例1)。この場合には、バルブ機構23とバルブ機構11とを連結したときに、図9に示すように、筒状体51の下面の開口が完全に弁部材44の上面に接触し、筒状体51の下面の開口と弁部材44の上面との間に空隙はできないが、筒状体51に切り欠き部51bが形成されているので、インク流路51aとインク流路41aとは、切り欠き部51bを介して連通する。
【0057】
また、弁部材44にリブ44cが形成されていない場合の筒状体51は、先端部に切り欠き51bが形成されているものには限られず、筒状体51の側面にインク流路51aに連通する貫通孔が形成されていてもよい。
【0058】
別の一変形例では、図10に示すように、案内部材43(図3参照)の代わりに、案内部材61が設けられているとともに、バルブ機構11にガイド62が設けられている。案内部材61は内部に空間61aが形成された略円筒形状の部材であって、その内周面の径が筒状体51の径よりも大きくなっている。ガイド62は、筒状体51と一体的に形成された、筒状体51を取り囲む略円筒状の部材である。そして、ガイド62の内周面の径は、案内部材61の外周面の径よりも若干大きくなっている(変形例2)。
【0059】
この場合には、バルブ機構23とバルブ機構11とを連結する際に、図11に示すように、ガイド62が案内部材61に案内されることにより、ガイド62と一体的に形成された筒状体51も案内部材61に案内され、バルブ機構23とバルブ機構11とが位置合わせされる。これにより、バルブ機構23とバルブ機構11とを容易に連結することができる。
【0060】
また、バルブ機構23とバルブ機構11とが位置合わせされて連結されるため、リップ42の貫通孔42aは確実に密閉される。
【0061】
さらに、バルブ機構23とバルブ機構11とが位置合わせされた状態で筒状体51が空間61aに挿入されることにより、突起44bが確実にインク流路51aに挿入されるので、筒状体51が突起44bに接触することがなく、突起44bの損傷が防止される。
【0062】
また、本実施の形態では、筒状体41の上端部に筒状体51を案内するための案内部材43が設けられていたが、案内部材は設けられていなくてもよい。この場合には、バルブ機構23とバルブ機構11とを連結する際に、筒状体51がリップ42の貫通孔42aに挿入されるように使用者が位置合わせをすればよい。
【0063】
また、本実施の形態では、弁部材44がリップ42に当接した状態におけるバネ45の付勢力が、弁部材52がOリング53に当接した状態におけるバネ54の付勢力よりも大きくなっていたが、これとは逆に、弁部材44がリップ42に当接した状態におけるバネ45の付勢力が、弁部材52がOリング53に当接した状態におけるバネ54の付勢力よりも小さくなっていてもよい。
【0064】
この場合には、突起44bが弁部材52に当接したときに、突起44bが弁部材52に押圧されて弁部材44が下方に移動することにより、リップ42と弁部材44との間に空隙ができる。そして、その後、弁部材44が移動することで圧縮されたバネ45の付勢力が、弁部材52がOリング53に当接した状態におけるバネ54の付勢力よりも大きくなったときに、弁部材52が突起44bに押圧されて上方に移動することにより、弁部材52とOリング53との間に空隙が形成される。
【0065】
ただし、この場合には、弁部材52が突起44bに押圧されて上方に移動するようにするために、バネ45を、バルブ機構23とバルブ機構11とが完全に連結される前に、その付勢力が、弁部材52がOリング53に当接した状態におけるバネ54の付勢力よりも大きくなるようなものにする必要がある。
【0066】
また、本実施の形態では、弁部材44に突起44bが設けられており、バルブ機構23とバルブ機構11とを連結したときに、突起44bにより球体である弁部材52を上方に押圧するように構成されていたが、バルブ機構11に設けられる弁部材は、突起が形成されたものには限られず、バルブ機構23と連結されていない状態でリップ42に当接することで筒状体41の上端の開口を塞ぐとともに、バルブ機構23と連結されたときに、バルブ機構23の弁部材に接触して筒状体51の下端を開口させるものであれば、突起が設けられていないものであってもよい。
【0067】
また、以上の説明では、バルブ機構11がインクジェットヘッド4内部のインク流路に接続されており、バルブ機構23がチューブ22に設けられていたが、これには限られず、インクジェットヘッドの内部のインク流路やインクカートリッジに接続されるチューブとは異なる、互いに接続すべき2つの液体流路に対して、それぞれバルブ機構11、23が設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明における実施の形態に係るプリンタの概略構成図であり、(a)がカートリッジユニットを取り付けた状態、(b)がカートリッジユニットを取り外した状態をそれぞれ示している。
【図2】カートリッジユニットの概略構成図である。
【図3】2つのバルブ機構が連結されていない状態におけるバルブ機構の断面図である。
【図4】2つのバルブ機構が連結される過程を示す図である。
【図5】2つのバルブ機構が連結される過程を示す図である。
【図6】2つのバルブ機構が連結される過程を示す図である。
【図7】図3〜図6のインクジェットヘッドに設けられたバルブ機構を構成する弁部材の斜視図である。
【図8】変形例1の図3相当の図である。
【図9】変形例1の図6相当の図である。
【図10】変形例2の図3相当の図である。
【図11】変形例2の図4相当の図である。
【符号の説明】
【0069】
4 インクジェットヘッド
11 バルブ機構
22 チューブ
23 バルブ機構
41 筒状体
42 リップ
43 案内部材
44 弁部材
44b 突起
44c リブ
45 バネ
51 筒状体
52 弁部材
54 バネ
61 案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる第1流路に一端が接続された第1筒状体と、その第1筒状体の他端を塞ぐ第1弁部材と、その第1弁部材を前記第1筒状体の他端に向かって付勢する第1付勢手段とを備えた第1バルブ機構と、
液体が流れる第2流路に一端が接続された第2筒状体と、その第2筒状体の他端に配置された弾性体と、その弾性体に接触することにより前記第2筒状体の他端を塞ぐ第2弁部材と、その第2弁部材を前記第2筒状体の他端に向かって付勢する第2付勢手段とを備えた第2バルブ機構とを備え、
前記第1バルブ機構の他端と前記第2バルブ機構の他端とを連結する場合に、前記第1筒状体が前記弾性体に接触して前記弾性体と前記第2弁部材との間に密閉空間を形成し、その後、前記第2弁部材が前記第1弁部材に接触して前記第1筒状体の他端を開口し、前記第1筒状体が前記第2弁部材に接触して前記第2筒状体の他端を開口することを特徴とするバルブユニット。
【請求項2】
前記第2弁部材は、前記第2筒状体の他端方向に延び、前記第1筒状体の内部に挿入可能な突起を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバルブユニット。
【請求項3】
前記第2筒状体は、前記第1バルブ機構と前記第2バルブ機構とが連結される際に、前記第1筒状体を案内する案内部を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブユニット。
【請求項4】
前記第2弁部材は、前記第2弁部材が前記第1筒状体に接触する際に、前記第2弁部材と前記第1筒状体との間に液体が流れる空隙を形成するためのリブを備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のバルブユニット。
【請求項5】
前記第2弁部材が前記第2筒状体の他端を塞いでいる状態における前記第2付勢手段による付勢力が、前記第1弁部材が前記第1筒状体の他端を塞いでいる状態における前記第1付勢手段による付勢力よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバルブユニット。
【請求項6】
前記第1流路がインクカートリッジに接続されたチューブであり、
前記第2流路がインクジェットヘッドの内部に形成されたインク流路であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバルブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−54018(P2010−54018A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222269(P2008−222269)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】