説明

バルブ装置

【課題】反応性の流体を制御しても生成物により密閉性が阻害されないバルブ装置を提供する。
【解決手段】バルブ部材210が開放位置に回動されると、その貫通孔の両端がバルブハウジング120の一対の導管部に個々に連通するので、流体を自在に流動させることができ、バルブ部材210が閉止位置に回動されると、このバルブ部材210によりバルブハウジング120の導管部が閉止されるので、流体の流動を阻止することができ、閉止状態ではバルブハウジング120の導管部にバルブ部材210の凹部211が対向するので、例えば、反応性の流体を停止させることでバルブ部材210の凹部211に生成物が堆積しても、この生成物がバルブ部材210とバルブハウジング120との隙間に入り込むことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流動の可否を切換自在なバルブ装置に関し、特に、貫通孔が形成されている回転体形状のバルブ部材が、一対の導管部が形成されているバルブハウジングに、回動自在に密閉状態で収容されているバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、流体の流動の可否を切換自在なバルブ装置が、各種の用途に利用されている。このようなバルブ装置の一従来例を図5および図6を参照して以下に説明する。なお、以下では説明を簡単とするため、図示するように、前後上下左右を規定して説明する。
【0003】
まず、このバルブ装置100は、バルブ部材110とバルブハウジング120とを有する。バルブ部材110は、回転体形状である球状に形成されている。その上端には回転軸111が一体に形成されている。この回転軸111の上端には操作レバー112が装着されている。
【0004】
バルブハウジング120は、球状の内部空間を有し、そこにバルブ部材110が回転軸111の軸心方向を中心に回動自在に密閉状態で収容されている。そして、バルブ部材110は、軸心方向と直交する方向に直線状に貫通孔113が形成されている。一方、バルブハウジング120は、一対の導管部121,122が前端と後端とに一体に形成されている。
【0005】
上述のような構造のバルブ装置100では、図6(a)に示すように、操作レバー112の手動操作によりバルブ部材110を開放位置に回動させると、その貫通孔113の両端がバルブハウジング120の一対の導管部121,122に個々に連通するので、流体を自在に流動させることができる。
【0006】
また、図6(b)に示すように、バルブ部材110を閉止位置に回動させると、このバルブ部材110によりバルブハウジング120の導管部121,122が閉止されるので、流体の流動を阻止することができる。
【0007】
現在、上述のようなバルブ装置として各種の提案がある(例えば、特許文献1,2参照)。
【特許文献1】特開2004−308670号
【特許文献2】特開2000−130610号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のようなバルブ装置100は、流体の流動の可否を制御することができるので、例えば、半導体装置の製造に利用される反応性の流体の制御などにも利用される。
【0009】
しかし、このような反応性の流体を閉止状態のバルブ装置100で停止させておくと、バルブ部材110の導管部121,122に対向している部分に、流体の生成物が堆積することがある。
【0010】
この場合、バルブ部材110を開放位置に回動させると、その生成物がバルブ部材110とバルブハウジング120との隙間に入り込むことになる。すると、バルブ部材110とバルブハウジング120との密閉性が阻害されることになり、バルブ部材110が流体を良好に制御することが困難となる。
【0011】
これを防止するため、バルブ装置100を半導体製造装置に利用する場合には、例えば、バルブ装置100が定期的に分解洗浄されている。しかし、当然ながら、このような作業は煩雑であり、半導体製造装置の量産性を阻害することになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のバルブ装置は、貫通孔が形成されている回転体形状のバルブ部材と、一対の導管部が形成されていてバルブ部材が回動自在に密閉状態で収容されているバルブハウジングと、を有し、開放位置に回動されたバルブ部材の貫通孔の両端がバルブハウジングの一対の導管部に個々に連通し、閉止位置に回動されたバルブ部材がバルブハウジングの導管部を閉止するバルブ装置であって、閉止位置のときに導管部と対向する凹部がバルブ部材に形成されている。
【0013】
従って、本発明のバルブ装置では、バルブ部材が開放位置に回動されると、その貫通孔の両端がバルブハウジングの一対の導管部に個々に連通するので、流体を自在に流動させることができ、バルブ部材が閉止位置に回動されると、このバルブ部材によりバルブハウジングの導管部が閉止されるので、流体の流動を阻止することができ、閉止状態ではバルブハウジングの導管部にバルブ部材の凹部が対向するので、例えば、反応性の流体を停止させることでバルブ部材の凹部に生成物が堆積しても、この生成物がバルブ部材とバルブハウジングとの隙間に入り込むことがない。
【0014】
本発明の半導体製造装置は、半導体装置の製造に利用される反応性の流体を導管に流動させる半導体製造装置であって、本発明のバルブ装置が導管に挿入されている。従って、本発明の半導体製造装置では、反応性の流体の流動をバルブ部材により制御することができ、反応性の流体を停止させることでバルブ部材の凹部に生成物が堆積しても、この生成物がバルブ部材とバルブハウジングとの隙間に入り込むことがない。
【0015】
なお、本発明で云う各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が1個の部材として形成されていること、1つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。また、本発明で云う流体とは、バルブ装置により流動の可否を制御できるものであればよく、例えば、液体、気体、粉体、ゲル、これらの組み合わせ、の何れでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のバルブ装置では、閉止状態ではバルブハウジングの導管部にバルブ部材の凹部が対向することにより、例えば、反応性の流体を停止させることでバルブ部材の凹部に生成物が堆積しても、この生成物がバルブ部材とバルブハウジングとの隙間に入り込むことがないので、生成物によりバルブ部材とバルブハウジングとの密閉性が阻害されることがなく、常時良好に流体を制御することができ、例えば、定期的な分解洗浄の頻度を低下させることができる。
【0017】
本発明の半導体製造装置は、本発明のバルブ装置が導管に挿入されていることにより、常時良好に流体を制御することができるので、バルブ装置の定期的な分解洗浄の頻度を低下させることができ、半導体装置の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の一形態を図1および図2を参照して以下に説明する。ただし、本実施の形態に関して前述した一従来例と同一の部分は、同一の名称および符号を使用して詳細な説明は省略する。
【0019】
また、本実施の形態では前後左右上下の方向を規定して説明するが、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものであり、本発明を実施する場合の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
【0020】
本実施の形態のバルブ装置200も、一従来例のバルブ装置100と同様に、バルブ部材210とバルブハウジング120とを有する。バルブ部材210は、回転体形状である球状に形成されており、図2に示すように、その上端には回転軸111により操作レバー112が装着されている。
【0021】
バルブハウジング120は、一対の導管部121,122が前端と後端とに一体に形成されており、バルブ部材210が回転軸111の軸心方向を中心に回動自在に密閉状態で収容されている。
【0022】
そして、バルブ部材210は、軸心方向と直交する方向に直線状に貫通孔113が形成されている。さらに、バルブ部材210は、閉止位置に回動された状態で一対の導管部121,122と個々に対向する位置に、凹部211が形成されている。なお、この凹部211と導管部121,122とは、開口形状が同一である。
【0023】
上述のような構成において、本実施の形態のバルブ装置200も、一従来例のバルブ装置100と同様に、図1(a)に示すように、操作レバー112の手動操作によりバルブ部材210を開放位置に回動させると、その貫通孔113の両端がバルブハウジング120の一対の導管部121,122に個々に連通するので、流体を自在に流動させることができる。
【0024】
また、図1(b)に示すように、バルブ部材210を閉止位置に回動させると、このバルブ部材210によりバルブハウジング120の導管部121,122が閉止されるので、流体の流動を阻止することができる。
【0025】
ただし、本実施の形態のバルブ装置200では、上述のように流体の流動を停止させているとき、バルブハウジング120の導管部121,122にバルブ部材210の凹部211が対向する。
【0026】
このため、例えば、反応性の流体を停止させることでバルブ部材210の凹部211に生成物が堆積しても、この生成物がバルブ部材210とバルブハウジングとの隙間に入り込むことがない。
【0027】
従って、本実施の形態のバルブ装置200では、生成物によりバルブ部材210とバルブハウジング120との密閉性が阻害されることがなく、常時良好に流体を制御することができる。
【0028】
なお、本実施の形態のバルブ装置200も、例えば、半導体製造装置に利用される(図示せず)。その場合、半導体装置の導管にバルブ装置200が挿入されることにより、エッチングガスなどの反応性の流体を制御することができる。
【0029】
そして、このような半導体製造装置では、バルブ装置200が反応性の流体を常時良好に制御することができるので、バルブ装置200の定期的な分解洗浄の頻度を低下させることができ、半導体装置(図示せず)の生産性を向上させることができる。
【0030】
なお、このように半導体製造装置に利用されるバルブ装置200では、反応性の流体との化学反応を防止するため、バルブハウジング120およびバルブ部材210が特定の金属で形成されていることが好適である。
【0031】
なお、前述した特許文献2には、バルブ部材を樹脂で形成したバルブ装置が開示されている。樹脂成型により形成されるバルブ部材のバリが、バルブハウジングとの隙間に入り込むことを防止するため、バルブ部材のバリが発生するパーティングラインの位置凹状に形成している。
【0032】
しかし、その凹部はバルブハウジングの導管部と対向する位置に形成されていないので、上述のような反応性の流体の生成物がバルブ部材とバルブハウジングとの隙間に入り込むことは防止できない。
【0033】
さらに、バルブ部材の凹部とバルブハウジングの導管部との開口形状も同一ではないので、やはり反応性の流体の生成物がバルブ部材とバルブハウジングとの隙間に入り込むことは防止できない。しかも、バルブ部材が樹脂で形成されているので、反応性の流体を制御することは困難である。
【0034】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態ではバルブハウジング120の一対の導管部121,122の両方と個々に対向する一対の凹部211がバルブ部材210に形成されていることを例示した。
【0035】
しかし、流体の流動方向が一定の場合、例えば、反応性の流体が流入する導管部と対向する位置のみバルブ部材に凹部が形成されており、流体が流出する導管部と対向する位置にはバルブ部材に凹部が形成されていない構造とすることもできる(図示せず)。
【0036】
また、上記形態ではバルブ部材210に貫通孔113が直線状に形成されており、バルブハウジング120にも一対の導管部121,122が直線状に形成されており、バルブ部材210の中心から対称の位置に凹部211が形成されていることを例示した。
【0037】
しかし、図3に例示するバルブ装置300のように、バルブ部材310に所定角度に曲折した貫通孔311が形成されており、この貫通孔311の両端に導管部321,322が連通するようにバルブハウジング320が形成されており、バルブ部材310の中心から所定角度の位置に凹部312が形成されている構造とすることもできる。
【0038】
さらに、上記形態ではバルブ部材210の軸心方向と直交する方向に貫通孔113が形成されていることを例示した。しかし、図4に例示するバルブ装置330のように、バルブ部材340の軸心方向に所定角度で交差する方向に貫通孔341が形成されており、この貫通孔341の両端に導管部351,352が連通するようにバルブハウジング350が形成されており、その導管部351,352と対向する位置に凹部312が形成されている構造とすることもできる。
【0039】
また、上記形態ではバルブ部材210が球状に形成されていることを例示した。しかし、バルブ部材はバルブハウジングの内部空間を回転自在に密閉する回転体形状であればよいので、例えば、バルブ部材が円筒状に形成されている構造とすることもできる(図示せず)。
【0040】
さらに、上記形態ではバルブ装置200の操作レバー112の手動操作によりバルブ部材210が回動されることを例示した。しかし、回転軸111に駆動モータなどの駆動機構およびロータリエンコーダなどの角度検出部(ともに図示せず)が連結されており、バルブ部材210が適切な角度に回動制御されてもよい。
【0041】
また、上記形態ではバルブ装置200が半導体製造装置に利用され、エッチングガスなどの反応性の流体を制御することを例示した。しかし、さらに反応生成物が付着しやすいドライエッチ装置の排気ガスの配管などにバルブ装置200が挿入されていてもよい(図示せず)。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態のバルブ装置の内部構造を示す横断平面図である。
【図2】バルブ装置の内部構造を示す縦断側面図である。
【図3】一変形例のバルブ装置の内部構造を示す横断平面図である。
【図4】他の変形例のバルブ装置の内部構造を示す縦断側面図である。
【図5】一従来例のバルブ装置の内部構造を示す縦断側面図である。
【図6】バルブ装置の内部構造を示す横断平面図である。
【符号の説明】
【0043】
113 貫通孔
120 バルブハウジング
121,122 導管部
200 バルブ装置
210 バルブ部材
211 凹部
300 バルブ装置
310 バルブ部材
311 貫通孔
312 凹部
320 バルブハウジング
321,322 導管部
330 バルブ装置
340 バルブ部材
341 貫通孔
350 バルブハウジング
351,352 導管部
352 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されている回転体形状のバルブ部材と、一対の導管部が形成されていて前記バルブ部材が回動自在に密閉状態で収容されているバルブハウジングと、を有し、開放位置に回動された前記バルブ部材の貫通孔の両端が前記バルブハウジングの一対の導管部に個々に連通し、閉止位置に回動された前記バルブ部材が前記バルブハウジングの導管部を閉止するバルブ装置であって、
前記閉止位置のときに前記導管部と対向する凹部が前記バルブ部材に形成されているバルブ装置。
【請求項2】
前記凹部と前記導管部との開口形状が同一である請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項3】
前記バルブ部材が球状に形成されている請求項1または2に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記バルブ部材が金属で形成されている請求項1ないし3の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記バルブハウジングが金属で形成されている請求項1ないし4の何れか一項に記載のバルブ装置。
【請求項6】
半導体装置の製造に利用される反応性の流体を導管に流動させる半導体製造装置であって、
請求項1ないし5の何れか一項に記載のバルブ装置が前記導管に挿入されている半導体製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−247694(P2007−247694A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68632(P2006−68632)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】