説明

バルブ誤装着防止構造を有するリフレクタ

【課題】バルブの誤装着を防止することができるリフレクタを提供する。
【解決手段】周方向に配置された少なくとも一つの爪部を含む口金を有するバルブが挿入される開口が形成されたリフレクタ本体と、前記爪部が嵌め込まれる少なくとも一つの凹部が形成された環状リブと、前記環状リブに設けられた鉤状のフック部と、前記フック部に係合させて前記リフレクタ本体に固定するバルブ固定用スプリングと、を備えるリフレクタにおいて、前記リフレクタ本体部分には切欠部が形成されており、前記切欠部の周囲には、前記切欠部に誤って位置合わせされた爪部が当接し、切欠部深さ方向への移動を規制する規制部、該爪部の光軸回りの回転を規制する壁部が形成されており、前記規制部と前記フック部の間の距離は、前記規制部及び前記壁部に当接した爪部と前記フック部の間に前記バブル固定用スプリングが通過するスペースが形成されない長さに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクタに係り、特にバルブ誤装着防止構造を有するリフレクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブ固定用スプリングを用いてバルブを固定する構造を有するリフレクタが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1のリフレクタは、該リフレクタの口金の内周面に設けられた突起状の掛止部、及び、該リフレクタに回動自在に設けられた固定するバルブ固定用スプリング等を備えており、バルブ固定用スプリングを掛止部に係合することによりバルブをリフレクタ固定するようになっている。この種の突起状の掛止部を有するリフレクタは、一般に、座金回りの形状の制約等の理由から、スライド機構付きの金型を用いた射出成形により製造される。
【0004】
一方、スライド機構を用いることなくリフレクタを射出成形するため、図6に示すように、突起状の掛止部に代えて鉤状のフック部16´が採用されることがある。一般に、鉤状のフック部16´を採用すると、射出成形の型抜き等の理由により、フック部16´の先端部下方のリフレクタ10´部分に切欠部17´が形成される。
【特許文献1】実開平4−66712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フック部16´の先端部下方のリフレクタ10´部分に切欠部17´が形成されたリフレクタ10´においては、バルブの口金の一部である爪部(図示せず)が切欠部17´に誤って位置合わせされた状態でバルブがバルブ固定スプリング30´により固定されることがある(バルブ誤装着)。このため、配光規格を満足できない等の各種不都合を生じる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バルブの誤装着を防止することができるバルブ誤装着防止構造を有するリフレクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、周方向に配置された少なくとも一つの爪部を含む口金を有する所定規格のバルブが挿入されるバルブ挿入用開口が形成されたリフレクタ本体と、前記バルブ挿入用開口の周囲に設けられており、前記爪部が位置合わせされ嵌め込まれる少なくとも一つの凹部が形成された環状リブと、前記環状リブに設けられた鉤状のフック部と、前記リフレクタ本体に回動自在に連結されており、前記フック部に係合させられることにより前記バルブを前記リフレクタ本体に固定するバルブ固定用スプリングと、を備えるリフレクタにおいて、前記フック部の先端部下方の前記リフレクタ本体部分には、切欠部が形成されており、前記切欠部の周囲には、前記切欠部に誤って位置合わせされた爪部が当接し、該爪部の前記切欠部深さ方向への移動を規制する規制部、及び、前記切欠部に誤って位置合わせされた爪部が当接し、該爪部の光軸回りの回転を規制する壁部が形成されており、前記規制部と前記フック部の間の光軸方向の距離は、前記規制部及び前記壁部に当接した爪部と前記フック部の間に前記バブル固定用スプリングが通過するスペースが形成されない長さに設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、規制部とフック部の間の光軸方向の距離は、規制部及び壁部に当接した爪部とフック部の間にバブル固定用スプリングが通過するスペースが形成されない長さに設定されている。
【0009】
このため、バルブの爪部が切欠部に誤って位置合わせされ(さらに嵌め込もうとされ)、該爪部が規制部及び壁部に当接した場合、該爪部とフック部の間にバブル固定用スプリングが通過するスペースが形成されない(すなわち、バルブ固定用スプリングをフック部に係合させることができない)。
【0010】
従って、爪部が切欠部に誤って位置合わせされた状態でバルブがバルブ固定スプリングにより固定されることがない。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、バルブの誤装着を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、バルブの誤装着を防止することができるバルブ誤装着防止構造を有するリフレクタを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態であるバルブ誤装着防止構造を有するリフレクタ(以下単にリフレクタともいう)について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、リフレクタ本体10の一部(バルブ誤装着防止構造)を拡大した斜視図である。図1に示すリフレクタ10(リフレクタ本体ともいう)は、自動車等の車両の前照灯等を構成する一部品であり、所定規格のバルブ20(以下単にバルブ20という)が挿入されるバルブ挿入用開口11が形成されている。バルブ20は、例えば、HB2と称される規格のバルブであり、図2に示すように、バルブ本体21、及び、周方向に沿って所定間隔で配置された三つの爪部22を含む口金等を備えている。
【0014】
リフレクタ10は、合成樹脂等の樹脂材料を射出成形しアルミニウム等の反射材を蒸着することにより形成された反射面(図示せず)を有している。バルブ挿入用開口11の周囲には、該開口11に挿入されたバルブ20の口金が当接する環状当接面12、及び、この環状当接面12の外側に配置された環状リブ14が設けられている。この環状リブ14には、バルブ20の三つの爪部22が位置合わせされ嵌め込まれる三つの凹部13が周方向に形成されている。
【0015】
環状リブ14にはヒンジ部15を介してバルブ固定用スプリング30が回動自在に連結されている。このバルブ固定用スプリング30は、バネ性のある線材を曲げ加工して形成されており、環状リブ14に設けられた鉤状のフック部16に係合させられる先端部31、及び、先端部31がフック部16に係合した状態でバルブ20の口金を環状当接面12に対して押圧固定する一対の付勢部32を備えている。
【0016】
バルブ20は次のようにしてリフレクタ10に装着される。
【0017】
まず、図2に示すように、バルブ本体21をリフレクタ10の背面側からバルブ挿入用開口11に挿入し、三つの爪部22を三つの凹部13に位置合わせし各爪部22を各凹部13に所定深さまで嵌め込む。次に、自然状態のバルブ固定用スプリング30の先端部31を、円周方向(図2中右方向)に弾性変形させるとともに押し下げて、傾斜面14aに沿って円周方向(図2中左方向)にスライド移動させ、フック部16に係合させる。これにより、バルブ20は、一対の付勢部32によりリフレクタ10(環状当接面12)に押圧固定される。
【0018】
しかしながら、図1に示すように、フック部16の先端部下方のリフレクタ10部分(リブ14部分等)には、射出成形の型抜き等の理由により、凹部13と略同形状の切欠部17が形成されている。このため、図3に示すように、バルブ20の爪部22がこの切欠部17に誤って位置合わせされた(さらに該切欠部17に嵌め込まれた)状態でバルブ20がバルブ固定用スプリング30により押圧固定されることがある(バブル20の誤装着)。
【0019】
このバルブ20の誤装着を防止するために、図1、図4等に示すように、切欠部17の周囲リブ14には爪部22(切欠部17に誤って位置合わせされた爪部22)が当接する規制部14bを有する傾斜面14aが射出成形により一体的に設けられている。この規制部14bに爪部22(切欠部17に誤って位置合わせされた爪部22)が当接することにより、該爪部22の切欠部17深さ方向(図4中矢印方向)への移動が規制される。また、切欠部17の周囲には爪部22(切欠部17に誤って位置合わせされた爪部22)が当接する縦壁部17aが射出成形により一体的に形成されている。この縦壁部17aに爪部22(切欠部17に誤って位置合わせされた爪部22)が当接することにより、該爪部22の光軸回りの回転が規制される。
【0020】
従って、爪部22が切欠部17に誤って位置合わせされ(さらに嵌め込もうとされ)た場合、該爪部22は、規制部14b及び縦壁部17aに当接し、該当接位置に固定された状態となる(図4参照)。
【0021】
規制部14bとフック部16の先端部16aの間の光軸方向の距離H1は、図4に示すように、規制部14b及び縦壁部17aに当接した爪部22(すなわち当接位置に固定された状態の爪部22)とフック部16の先端部16aの間にバブル固定用スプリング30の先端部31が通過するスペースが形成されない長さに設定されている。
【0022】
例えば、距離H1は、次の式を満たすように設定されている。
【0023】
爪部22(当接位置に固定された状態の爪部22)とフック部16の先端部16aの間の光軸方向の距離H2<バルブ固定用スプリング30の先端部31の直径H3
このため、爪部22が切欠部17に誤って位置合わせされ(さらに嵌め込もうとされ)、該爪部22が規制部及び壁部に当接した場合、該爪部22とフック部16の先端部16aの間にバルブ固定用スプリング30が通過するスペースが形成されない(すなわち、バブル固定用スプリング30をフック部16に係合させることができない)。
【0024】
従って、爪部22が切欠部17に誤って位置合わせされた状態でバルブ20がバルブ固定スプリング30により固定されることがない。すなわち、バルブ20の誤装着を防止することが可能となる。
【0025】
なお、上記のように、爪部22が切欠部17に誤って位置合わせされ(さらに嵌め込もうとされ)た場合、該爪部22は、規制部14b及び縦壁部17aに当接し、該当接位置に固定された状態となる(図4参照)。このため、図5に示すように、爪部22(切欠部17に誤って位置決めされた爪部22)の規制部14bに対する当接位置をずらすことができない(すなわち、爪部22が当初の当接位置に固定された状態となるため、バルブ20をがたつかせることができず、爪部22の規制部14bに対する当接位置をずらすことができない)。従って、図5に示すように、爪部22(切欠部17に誤って位置決めされた爪部22)の規制部14bに対する当接位置をずらし、爪部22とフック部16の先端部16aの間にバルブ固定用スプリング30が通過するスペースを形成し、バブル固定用スプリング30をフック部16に係合させることができない。
【0026】
次に、変形例について説明する。
【0027】
上記実施形態では、所定規格のバルブ20がHB2と称される規格のバルブであるように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、所定規格のバルブ20は、HB4等の他の規格のバルブであってもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、所定規格のバルブ20が、周方向に沿って所定間隔で配置された三つの爪部22を含む口金等を有しているように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、所定規格のバルブ20は、1、2、又は、4本以上の爪部22を有していてもよい。要は、切欠部17に誤って位置合わせされる可能性がある爪部を有するバルブであればよい。
【0029】
また、上記実施形態では、縦壁部17aに爪部22(切欠部17に誤って位置合わせされた爪部22)が当接することにより、該爪部22の光軸回りの回転が規制されるように説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、凹部13の幅を他の爪部22と略同じ幅に設定し、凹部13に嵌め込まれた他の爪部22と凹部13を当接させることにより、爪部22(切欠部17に誤って位置合わせされた爪部22)の光軸回りの回転を規制するようにしてもよい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態のバルブ誤装着防止構造を有するリフレクタ10によれば、規制部14bとフック部16の間の光軸方向の距離H1は、規制部14b及び縦壁部17aに当接した爪部22とフック部16の間にバブル固定用スプリング30が通過するスペースが形成されない長さに設定されている。
【0031】
このため、爪部22が切欠部17に誤って位置合わせされ(さらに嵌め込もうとされ)、該爪部22が規制部及び壁部に当接した場合、該爪部22とフック部16の間にバブル固定用スプリング30が通過するスペースが形成されない(すなわち、バルブ固定用スプリング30をフック部16に係合させることができない)。
【0032】
従って、本実施形態のバルブ誤装着防止構造を有するリフレクタ10によれば、爪部22が切欠部17に誤って位置合わせされた状態でバルブ20がバルブ固定スプリング30により固定されることがない。すなわち、バルブ20の誤装着を防止することが可能となる。
【0033】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】リフレクタ本体10の一部(バルブ誤装着防止構造)を拡大した斜視図である。
【図2】リフレクタ本体10の一部(バルブ装着防止構造)及び該リフレクタ本体10に正しく位置合わせされたバルブ20を拡大した平面図である。
【図3】リフレクタ本体10の一部(バルブ装着防止構造)及び該リフレクタ本体10(切欠部17)に誤って位置合わせされたバルブ20を拡大した平面図である。
【図4】バルブ固定用スプリング30とフック部16と切欠部17に誤って位置合わせさた爪部22の関係を説明するための拡大図である。
【図5】爪部22(切欠部17に誤って位置決めされた爪部22)の規制部14bに対する当接位置をずらすことにより、爪部22とフック部16の先端部16aの間にバルブ固定用スプリング30が通過するスペースを形成した状態を説明するための図である。
【図6】従来のバルブ固定用スプリングを用いてバルブを固定する構造を有するリフレクタを説明するための図である。
【符号の説明】
【0035】
10…リフレクタ、11…バルブ挿入用開口、12…環状当接面、13…凹部、14…環状リブ、14a…傾斜面、14b…規制部、15…ヒンジ部、16…フック部、17…切欠部、17a…縦壁部、20…バルブ、21…バルブ本体、22…爪部、30…バルブ固定用スプリング、31…先端部、32…付勢部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に配置された少なくとも一つの爪部を含む口金を有する所定規格のバルブが挿入されるバルブ挿入用開口が形成されたリフレクタ本体と、
前記バルブ挿入用開口の周囲に設けられており、前記爪部が位置合わせされ嵌め込まれる少なくとも一つの凹部が形成された環状リブと、
前記環状リブに設けられた鉤状のフック部と、
前記リフレクタ本体に回動自在に連結されており、前記フック部に係合させられることにより前記バルブを前記リフレクタ本体に固定するバルブ固定用スプリングと、
を備えるリフレクタにおいて、
前記フック部の先端部下方の前記リフレクタ本体部分には、切欠部が形成されており、
前記切欠部の周囲には、前記切欠部に誤って位置合わせされた爪部が当接し、該爪部の前記切欠部深さ方向への移動を規制する規制部、及び、前記切欠部に誤って位置合わせされた爪部が当接し、該爪部の光軸回りの回転を規制する壁部が形成されており、
前記規制部と前記フック部の間の光軸方向の距離は、前記規制部及び前記壁部に当接した爪部と前記フック部の間に前記バブル固定用スプリングが通過するスペースが形成されない長さに設定されていることを特徴とするバルブ誤装着防止構造を有するリフレクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−87731(P2009−87731A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256048(P2007−256048)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】