説明

バルーンカテーテル

【課題】従来のバルーンカテーテルに比較して、血管等の管腔内壁への損傷を低減すると共に留置固定力を向上することができるバルーンカテーテルを提供すること。
【解決手段】長さ方向に貫通する1つの主内腔と少なくとも1つの副内腔を有する可撓性チューブと、可撓性チューブの先端側に付設され膨張可能部11と両端部に非膨張部14とを有するバルーンと、から少なくとも構成されるバルーンカテーテルであって、バルーンは、略中央部を中心にして、先端側と基端側とでほぼ対称形状であると共に、バルーンの膨張可能部の両端部近傍12の肉厚T2が最も薄く、両端部近傍から略中央部にかけて漸次肉厚が増加し、略中央部T1が最も肉厚であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは様々な医療用途に使用されており、例えば、血管内に留置固定して送血するバルーンカテーテル(以後、送血用バルーンカテーテルと述べる)がある。
送血用バルーンカテーテルは、例えば、弓部大動脈瘤手術において使用される。この場合、瘤のある大動脈部位を人工血管に置換するため、心臓を一時的に停止させて、送血用バルーンカテーテルを人工心肺ポンプと接続して、大動脈から分岐している血管(例えば、脳保護を目的として左総頚動脈)に血液を循環させるために使用される。送血用バルーンカテーテルは、血管内でバルーンを膨張させることにより、血管内の適切な位置に留置固定することが必要である。
【0003】
バルーンが血管から逸脱しないようにするため、すなわち、バルーンを血管内に確実に留置固定するために、バルーンの外表面に、長さ方向に直交しないリブ同士を交叉させて、網状としたリブを一体的に成形して設けるとともに、球形状に膨張するバルーンが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、留置固定性能や安全性において更なる改良が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−038609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のバルーンカテーテルに比較して、血管等の管腔内壁への損傷を低減すると共に留置固定力を向上することができるバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記(1)〜(5)に記載の本発明により達成される。
(1)長さ方向に貫通する1つの主内腔と少なくとも1つの副内腔を有する可撓性チューブと、前記可撓性チューブの先端側に付設され膨張可能部と両端部に非膨張部とを有するバルーンと、から少なくとも構成されるバルーンカテーテルであって、
前記バルーンは、略中央部を中心にして、先端側と基端側とでほぼ対称形状であると共に、前記バルーンの膨張可能部の両端部近傍の肉厚が最も薄く、前記両端部近傍から略中央部にかけて漸次肉厚が増加し、前記略中央部が最も肉厚であることを特徴とするバルーンカテーテル。
(2)前記略中央部の肉厚(T1)と、前記両端部近傍の肉厚(T2)と、の比(T1/T2)が1.2倍以上、1.4倍以下である(1)に記載のバルーンカテーテル。
(3)前記膨張可能部の両端部近傍に、前記膨張可能部と非膨張部との境界部にかけて、前記膨張可能部の外径および内径が漸次縮小しているショルダー部を設けた(1)又は(2)に記載のバルーンカテーテル。
(4)前記バルーンの材質はシリコーンゴムを含むものである(1)〜(3)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
(5)血管内に留置され、血液を含む液体を循環させるバルーン付循環カニューレとして用いられる(1)〜(4)のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のバルーンカテーテルに比較して、血管等の管腔内壁への損傷を低減すると共に留置固定力を向上することができるバルーンカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明によるバルーンカテーテルの一実施形態を示す概略図である。
【図2】図1の可とう性チューブのA−A’断面図である。
【図3】本発明によるバルーンカテーテルの別の実施形態を示す概略図である。
【図4】図2の可とう性チューブのB−B’断面図である。
【図5】本発明によるバルーンの収縮時の状態を示すバルーンの拡大図である。
【図6】図5のバルーンのC−C’断面図である。
【図7】本発明による別の実施形態のバルーンの収縮時の状態を示すバルーンの拡 大図である。
【図8】図7のバルーンのD−D’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照にしつつ、本発明によるバルーンカテーテルについて詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0010】
図1に示す本発明のバルーンカテーテル13は、長さ方向に貫通する1つの主内腔6と、1つの副内腔7を有する可とう性チューブ2と、可とう性チューブ2の先端側に付設されたバルーン1と、可とう性チューブ2の後端側に主内腔6と連通して付設された接続部3と、可とう性チューブ2の後端側に副内腔7と連通して付設された分岐管4と、分岐管4に付設されたバルーン膨張/収縮用コネクター5、から構成される。
【0011】
バルーン1内に、可とう性チューブ2の副内腔7と連通した開口部(不図示)が設けられており、また、上記開口部より先端側の可とう性チューブ2の副内腔7は封止されているため、バルーン膨張用コネクター5からシリンジ等により、可とう性チューブ2の副内腔7を通してバルーン1内に膨張用流体を送ることができる。また、接続部3は、人工心肺ポンプの送血用部材と接続することができ、可とう性チューブ2の先端において開口している主内腔6を通して送血することができる。
【0012】
また、図3に示す本発明の別の実施形態であるバルーンカテーテル13’は、長さ方向に貫通する1つの主内腔6’と2つの副内腔7’、10を有する可とう性チューブ2’と、可とう性チューブ2’の先端側に付設されたバルーン1と、可とう性チューブ2’の後端側に主内腔6’と連通して付設された接続部3’と、可とう性チューブ2’の後端側に第一副内腔7’と連通して付設された第一分岐管4’と、第一分岐管4’に付設されたバルーン膨張/収縮用コネクター5’と、可とう性チューブ2’の後端側に第二副内腔10と連通して付設された第二分岐管8と、第二分岐管8に付設された血圧測定用コネクター9、から構成される。
【0013】
この場合、バルーン1内に、可とう性チューブ2’の第一副内腔7’と連通した開口部(不図示)が設けられており、また、上記開口部より先端側の可とう性チューブ2’の第一副内腔7’は封止されているため、コネクター5’からシリンジ等により、可とう性チューブ2’の第一副内腔7’を通してバルーン1内に膨張用流体を送ることができる。また、接続部3’は、人工心肺ポンプの送血用部材と接続することができ、可とう性チューブ2’の先端において開口している主内腔6’を通して送血することができる。さらに、血圧測定用コネクター9は、人工心肺ポンプの血圧を測定できる部材と接続することができ、可とう性チューブ2’の先端において開口している第二副内腔10を介して、血管内の血圧を測定することができる。
【0014】
また、図示しないが、上記のバルーンカテーテル13’において、可とう性チューブ2’の後端側に第二副内腔10と連通して付設された第二分岐管8、および第二分岐管8に付設された血圧測定用コネクター9を設けずに、可とう性チューブ2’の略全長に亘って、第二副内腔10に金属線などの補強体を挿入し、副内腔10の先端側、および後端側を封止し、補強体を固定することで、バルーンカテーテルを補強できる。またこうすることにより、バルーンカテーテルの可とう性チューブを任意に曲げた状態に維持することができるため、バルーンカテーテルの操作性を向上させることができる。
【0015】
図5および図6に示すように、バルーン1は、略中央部を中心にして、先端側と基端側とでほぼ対称形状であると共に、バルーン1の膨張可能部11の両端部の肉厚が最も薄く、両端部から略中央部にかけて漸次肉厚が増加し、略中央部が最も肉厚である。こうすることにより、バルーン1を血管内で膨張させたとき、球形状ではなく、略円筒形状に膨張することができ、血管内面との接触面積を増大させることができる。こうすることでバルーン1の血管からの滑脱または位置ずれを防止でき、確実にバルーン1を血管内に留置固定することができる。また、球形状に膨張する従来のバルーンでは、バルーンの最大径部で血管内に局部的に応力がかかって血管壁を傷つける可能性があるが、バルーン1は略円筒形状に膨張することができ、血管内にほぼ均一且つ分散した応力をかけることができるため、より安全にバルーン1を血管内に留置固定することができる。
【0016】
バルーン1の略中央部の肉厚(T1)、バルーン1の膨張可能部11の両端部近傍の肉厚(T2)の比(T1/T2)が1.2倍以上、1.4倍以下とすることが好ましい。こうすることにより、確実にバルーン1が略円筒形状に膨張することができる。
【0017】
また、図7および図8に示すように、バルーン1の膨張可能部11の両端部近傍に、非膨張部14の境界部にかけて、膨張可能部11の外径および内径が漸次縮小しているショルダー部12を設けることができる。こうすることにより、さらに確実にバルーン1を略円筒形状に膨張させることができる。
【0018】
バルーン1の材質は、例えば、シリコーンゴムとすることができる。シリコーンゴムのような弾性体を用いることで、バルーンの膨張径を血管内に確実に留置固定できる程度に十分膨張できると共に、バルーン収縮時のバルーンの嵩張りを小さくすることができる。
【0019】
バルーン1が収縮時の状態で、バルーン1の略中央部の肉厚(T1)は、例えば0.3mm以上、0.6mm以下とし、バルーン1の膨張可能部11の両端部近傍の肉厚(T2)は、例えば、0.2mm以上、0.5mm以下とすることができる。こうすることにより、バルーンを膨張させるための十分な耐圧を得ることができる。また、バルーン1の膨張可能部の長さは、例えば、5mm以上、30mm以下とすることができる。こうすることにより、バルーン1を血管内に確実に留置固定するために必要十分な大きさに膨張させることができる。
【0020】
バルーンカテーテル13、13’の全長は、例えば、200mm以上、600mm以下、好ましくは300mm以上、500mm以下とすることができる。また、バルーンカテーテル13、13’の可とう性チューブ2、2’の外径、およびバルーン1の収縮時の状態の外径は、例えば、2mm以上、8mm以下とすることができる。こうすることにより、バルーンカテーテル13、13’を使用する際の操作性がよくなり、また、対象とする血管内にスムーズにバルーンカテーテル13、13’を挿入することができ、かつ十分な送血量を確保することができる。
【0021】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。これらの実施形態はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0022】
1 バルーン
2、2’可とう性チューブ
3 3’接続部
4、4’分岐管
5、5’バルーン膨張/収縮用コネクター
6、6’主内腔
7、7’副内腔、第一副内腔
8 第二分岐管
9 血圧測定用コネクター
10 第二副内腔
11 膨張可能部
12 ショルダー部
13、13’バルーンカテーテル
14 非膨張部
T1 バルーンの略中央部の肉厚
T2 バルーンの膨張可能部の両端部近傍の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に貫通する1つの主内腔と少なくとも1つの副内腔を有する可撓性チューブと、
前記可撓性チューブの先端側に付設され膨張可能部と両端部に非膨張部とを有するバルーンと、
から少なくとも構成されるバルーンカテーテルであって、
前記バルーンは、略中央部を中心にして、先端側と基端側とでほぼ対称形状であると共に、前記バルーンの膨張可能部の両端部近傍の肉厚が最も薄く、前記両端部近傍から略中央部にかけて漸次肉厚が増加し、前記略中央部が最も肉厚であることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記略中央部の肉厚(T1)と、前記両端部近傍の肉厚(T2)と、の比(T1/T2)が1.2倍以上、1.4倍以下である請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記膨張可能部の両端部近傍に、前記膨張可能部と非膨張部との境界部にかけて、前記膨張可能部の外径および内径が漸次縮小しているショルダー部を設けた請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記バルーンの材質はシリコーンゴムを含むものである請求項1〜3のいずれかに記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
血管内に留置され、血液を含む液体を循環させるバルーン付循環カニューレとして用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−201007(P2010−201007A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50502(P2009−50502)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】