説明

バルーンカテーテル

【課題】
本発明は、バルーンカテーテルの近位側から与えられる押し込み力をバルーンカテーテルの遠位側まで十分に伝達できると共に、迅速に拡張用の液体をバルーンから排出することができるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】
バルーンカテーテル10は、アウターシャフト30内に挿入された、長尺な線材からなり、押圧部72を有するコアワイヤ70と、アウターシャフト30に設けられ、拡張ルーメン36と連通する制御孔36bを有する開口制御部33とを備える。開口制御部33の制御孔36bは、コアワイヤ70の押圧部72が当接することにより開口面積の一部が閉止されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するために使用されるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するためにバルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルは、主に、拡張体であるバルーンと、アウターシャフトと、この内部に配置されたインナーシャフトからなる。インナーシャフトは、ガイドワイヤを挿通させるためのものであり、アウターシャフトは、インナーシャフトとの間に設けられた拡張ルーメンを通してバルーンを拡張するための造影剤や生理食塩水等の液体を流通させるためのものである。
【0003】
このようなバルーンカテーテルは、血管内等において所望の位置に位置決めされるために、医師等の手技者によってカテーテルの手元側からカテーテルを軸方向に押して体内に挿入する力、所謂、押し込み力が伝達される。バルーンカテーテルには、この押し込み力を手元側から先端側へ伝達する性能が高いこと、即ち、押し込み特性が高いことが要求される。
【0004】
従来、押し込み特性を向上させると共に、バルーンカテーテルの剛性変化を調整するために、アウターシャフト内にコアワイヤを有するものがある(例えば、下記特許文献1、2参照)。このようなコアワイヤを有するバルーンカテーテルには、押し込み特性を一層向上させるために、コアワイヤの遠位端部分をカテーテル内の一部に固定したものがある(例えば、下記特許文献3、4、5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−291899号公報
【特許文献2】特表2002−505166号公報
【特許文献3】特表2003−517901号公報
【特許文献4】特表平8−500505号公報
【特許文献5】特表平9−503411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来のバルーンカテーテルでは、押し込み特性を向上させるために一定の効果があると考えられるが、より一層の押し込み特性の向上が要求されている。一方で、押し込み特性を向上させるためにコアワイヤを太くした場合、コアワイヤが配置されている拡張ルーメンの断面積がコアワイヤによって小さくなってしまうため、バルーンを収縮する際に、拡張ルーメンを通してバルーンを拡張していた液体を排出するための時間、所謂デフレートタイムが長くなってしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バルーンカテーテルの近位側から与えられる押し込み力をバルーンカテーテルの遠位側まで十分に伝達できると共に、迅速に拡張用の液体をバルーンから排出することができるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明では、上記の課題は以下に列挙される手段により解決がなされる。
【0009】
<1> バルーンと、前記バルーンの少なくとも一部が取り付けられ、前記バルーンを拡張するための流体を供給する拡張ルーメンを構成する筒状のアウターシャフトと、前記アウターシャフトに設けられ、前記拡張ルーメンと連通する制御孔を有する開口制御部と、前記アウターシャフト内に挿入された、長尺な線材からなり、前記開口制御部の前記制御孔と当接可能な押圧部を有するコアワイヤとを備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【0010】
<2>前記アウターシャフトの内部に配置され、ガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメンを内部に有するインナーシャフトと、前記インナーシャフトの遠位端に形成された先端側ガイドワイヤポートと、前記インナーシャフトの近位端に形成された後端側ガイドワイヤポートとを備え、前記後端側ガイドワイヤポートは、前記アウターシャフトの前記開口制御部に形成されていることを特徴とする態様1に記載のバルーンカテーテル。
【0011】
<3>前記開口制御部の前記制御孔は、前記押圧部が当接することにより開口が閉止される第1孔部と、常時開口する第2孔部からなることを特徴とする態様1又は態様2に記載のバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0012】
<1>本発明のバルーンカテーテルは、医師等の手技者によって与えられる押し込み力をアウターシャフトの近位端から順次、遠位側へ伝達する。これに加えて、本発明のバルーンカテーテルは、コアワイヤの押圧部が制御孔を閉鎖し、開口制御部を押圧することによって押し込み力を伝達することができるため、押し込み特性を向上させることができる。
【0013】
また、拡張用の流体をバルーンから排出する際には、コアワイヤの押圧部は、制御孔から離間し、制御孔全体を開放する。このため、制御孔全体からバルーンの拡張用の流体を排出し、迅速にバルーンを収縮させることができる。仮に、押し込み力がコアシャフトに作用して制御孔の一部が封鎖されていたとしても、残りの制御孔の一部は、常時開放されているため、拡張用の流体を排出することができる。
【0014】
<2>本発明の態様2の様に、後端側ガイドワイヤポートは、前記アウターシャフトの開口制御部に形成されている場合には、コアワイヤの押圧部によって、インナーシャフトの近位端側を押圧する。このため、インナーシャフトへも押し込み力を伝達することができる。従って、近位側から与えられる押し込み力を、効果的にバルーンカテーテルの先端まで伝達することができる。即ち、バルーンカテーテルの押し込み力の伝達性を向上させることができる。
【0015】
<3>本発明の態様3の様に、開口制御部の制御孔が、押圧部が当接することにより開口が閉止される第1孔部と、常時開口する第2孔部からなる場合には、押圧部が当接する制御孔の当接面を制御孔の略全周囲とすることができるため、押圧部と開口制御部の接触面積が増大し、効果的に押し込み力を伝達することができる。
【0016】
また、第2孔部によって、常時開放される開口面積も確保されるため、バルーンの収縮を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施の形態のバルーンカテーテルの全体図である。
【図2】図2は、図1のA部の拡大図である。
【図3】図3は、図2のIII−III方向から見た断面図である。
【図4】図4は、押圧部の他の実施の形態を示した図である。
【図5】図5は、開口制御部の他の実施の形態を示した図である。
【図6】図6は、制御孔の他の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態のバルーンカテーテルを図1〜3を参照しつつ説明する。図1及び図2において、図示左側が体内に挿入される遠位側(先端側)、右側が医師等の手技者によって操作される近位側(後端側、基端側)である。
【0019】
バルーンカテーテル10は、例えば、心臓の血管の閉塞部や狭窄部等の治療に用いられるものであり、全長が約1500mm程度のものである。
バルーンカテーテル10は、主にバルーン20、アウターシャフト30、インナーシャフト50、及びコネクタ60からなる。
【0020】
バルーン20は、樹脂製の部材であり、軸線方向中央にバルーン20が拡張するための拡張部21と、先端側に先端取付部22、後端側に後端取付部23を有している。
【0021】
先端取付部22は、後述するインナーシャフト50の延出部52の先端部分に固着されている。
後端取付部23は、アウターシャフト30の遠位端の外周面に固着されている。
【0022】
アウターシャフト30は、バルーン20を拡張するための流体を供給するための拡張ルーメン36を構成する円筒状の部材である。アウターシャフト30は、遠位側から順に、先端アウターシャフト部31、開口制御部33、中間アウターシャフト部35、及び後端アウターシャフト部37とからなる。先端アウターシャフト部31と中間アウターシャフト部35は樹脂製のチューブである。開口制御部33は、先端アウターシャフト部31、中間アウターシャフト部35、及びインナーシャフト50が溶着により接合された部分である。先端アウターシャフト部31及び中間アウターシャフト部35を構成する樹脂には、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等が用いられる。
【0023】
先端アウターシャフト部31の遠位端の外周には、バルーン20の後端取付部23が固着されている。
また、先端アウターシャフト部31は、インナーシャフト50を収納する。先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50の間には、拡張ルーメン36の先端部分を構成する先端拡張ルーメン36aが形成されている。
【0024】
先端アウターシャフト部31の外径は、開口制御部33の外径と略同じに設定されており、約0.85mm〜約0.95mmに設定され、本実施の形態の場合、約0.90mmである。先端アウターシャフト部31の内径は、約0.69mm〜約0.80mmに設定され、本実施の形態の場合、約0.75mmである。
【0025】
開口制御部33は、先端アウターシャフト部31と中間アウターシャフト部35を接合すると共に、後端側ガイドワイヤポート54を形成するためにインナーシャフト50の後端をアウターシャフト30に取り付けるための部分である。これらの部材は溶着によって接合されるため、開口制御部33の材料は、これらの部材を構成する樹脂が溶解し、混ざり合った状態となっている。
【0026】
開口制御部33の軸方向の長さは、約3.0mm〜約7.0mmに設定されており、本実施の形態の場合、約5.0mmに設定されている。
【0027】
開口制御部33は、制御孔36bを有する。制御孔36bは、図3に示すように、アウターシャフト30の軸線方向に直交する方向に並列に配列された第1孔部36b1と第2孔部36b2からなる。
第1孔部36b1は、後述するコアワイヤ70が挿通され、コアワイヤ70の押圧部72が当接することによって閉止される開口部である。よって、コアワイヤ70の押圧部72が当接していない時、第1孔部36b1の先端側の開口は、先端拡張ルーメン36aに連通し、第1孔部36b1の後端側の開口は、案内部36cを介して後端拡張ルーメン36dに連通するようになっている。
【0028】
第2孔部36b2は、コアワイヤ70が挿通されず、常に開放された開口部である。よって、第2孔部36b2の先端側の開口は、常時、先端拡張ルーメン36aに連通し、第2孔部36b2の後端側の開口も常時、案内部36cを介して後端拡張ルーメン36dに連通するようになっている。
【0029】
第1孔部36b1と第2孔部36b2は、それぞれ略円形の断面形状を有し、これらの断面が僅かに重なりあうように接続されて連通し、一つの開口部を形成している。第1孔部36b1と第2孔部36b2は、先端アウターシャフト部31、中間アウターシャフト部35、及びインナーシャフト50を溶着する際に、同時に形成される。即ち、先端アウターシャフト部31と中間アウターシャフト部35との間に第1孔部36b1と第2孔部36b2を形成するための二本の芯金を挿入して、先端アウターシャフト部31、中間アウターシャフト部35、及びインナーシャフト50を溶着した後、二本の芯金を引き抜くことによって、第1孔部36b1と第2孔部36b2は容易に形成される。
【0030】
第1孔部36b1の開口面積と第2孔部36b2の開口面積は、同じである。第1孔部36b1と第2孔部36b2の直径Dは、約0.20mm〜約0.30mmに設定され、本実施例の場合、約0.25mmである。
【0031】
第1孔部36b1と第2孔部36b2は、一部が重なり合っているため、重なり合った部分の外周の一部が欠けているものの、互いに独立した円形形状の外周を有している。
【0032】
中間アウターシャフト部35は、円筒状の樹脂チューブである。中間アウターシャフト部35は、開口制御部33の制御孔36bと連通し、拡張ルーメン36の一部を構成する案内部36cと中間拡張ルーメン36dを有する。
【0033】
案内部36cは、先細りのテーパ状の管路であり、制御孔36bと接続されている。この案内部36cによって、後述するコアワイヤ70の押圧部72が先端側へ案内されて、押圧部72が第1孔部36b1の後端側の開口部を閉止し、押圧するようになっている。この時、押圧部72は、第1孔部36b1の略円形の外周を押圧するため、コアワイヤ70から伝達される押し込み力を開口制御部33を介してアウターシャフト30に伝達することができるようになっている。
【0034】
中間拡張ルーメン36dは、外径が一定の管路であり、案内部36c以外の中間アウターシャフト部35のルーメンを構成する。
【0035】
中間アウターシャフト部35の軸方向の長さは、約150.0mm〜約200.0mmの範囲に設定されており、本実施の形態の場合、約160.0mmに設定されている。中間拡張ルーメン36dを構成する中間アウターシャフト部35の外径が一定な部分の外径は、約0.80mm〜約0.90mmに設定され、本実施の形態の場合、約0.85mmである。また、この部分の中間アウターシャフト部35の内径は、約0.65mm〜約0.80mmに設定され、本実施の形態の場合、約0.75mmである。
【0036】
後端アウターシャフト部37は、所謂ハイポチューブと呼ばれる金属製の管状部材である。後端アウターシャフト部37の先端部は、中間アウターシャフト部35の後端部に挿入されて固着されている。後端アウターシャフト部37の内部に形成された後端拡張ルーメン36eは、上記した先端拡張ルーメン36a、制御孔36b、案内部36c、及び中間拡張ルーメン36dと共に拡張ルーメン36を構成している。
【0037】
後端アウターシャフト部37の後端には、コネクタ60が取り付けられている。コネクタ60に取り付けられた図示しないインデフレータからバルーン20を拡張するための影剤や生理食塩水等の液体が供給されると、液体は、拡張ルーメン36を通ってバルーン20を拡張するようになっている。
【0038】
本実施の形態の場合、後端アウターシャフト部37の外径は、約0.60mm〜約0.65mmの範囲に設定されており、本実施の形態の場合、約0.64mmである。内径は、約0.40mm〜約0.50mmの範囲に設定されており、本実施の形態の場合、約0.48mmである。後端側アウターシャフト40の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼が用いられている。これ以外の材料として、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が用いられる。
【0039】
尚、図1〜図3は、先端アウターシャフト部31、開口制御部33、中間アウターシャフト部35、及び後端アウターシャフト部37の構成を判り易くするために寸法が誇張されて示されている。
【0040】
後端アウターシャフト部37の遠位部の内面には、コアワイヤ70が取り付けられている。
コアワイヤ70は、断面が円形であり、先端に向かって細径化されたテーパ状の金属製の線材である。コアワイヤ70の直径は、本実施の形態では、直径が遠位方向に向けて漸進的に約0.40mmから約0.10mmに減少している。
コアワイヤ70の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼(SUS304)が用いられている。これ以外の材料としてNi−Ti合金のような超弾性合金やピアノ線等が用いられる。
【0041】
コアワイヤ70は、中間アウターシャフト部35及び開口制御部33の第1孔部36b1を貫通し、先端アウターシャフト部31の遠位部にまで延びている。コアワイヤ70の開口制御部33の第1孔部36b1の近位側には、押圧部72が取り付けられている。このため、コアワイヤ70は、押圧部72を基準として先端側である先端コア部71と後端側であるコア本体部75に分けられる。
【0042】
コア本体部75の後端は後端アウターシャフト部37の遠位部分の内壁にロー付けあるいはレーザによる溶接等により固着されている。
【0043】
押圧部72は、上記したように開口制御部33における第1孔部36b1の近位側に位置する。押圧部72は、コアワイヤ70に押し込み力が作用した際に、図2に二点鎖線で示すように先端側へ移動して、第1孔部36b1の開口部に嵌め合わされて、第1孔部36b1の開口部を閉止するためのものである。このように第1孔部36b1の開口部を閉止できるならば、押圧部72の形状や大きさは、特に限定されるものでは無い。本実施の形態の場合、押圧部72の形状は、楕円体形状となっている。また、楕円体形状のコアワイヤ70の軸円方向に直交する方向の最大直径は、第1孔部36b1の直径よりも大きく設定されている。
【0044】
押圧部72は、押し込み力がコアワイヤ70に作用した際に、第1孔部36b1の開口部を閉止する機能を果たすだけでなく、押し込み力がコアシャフト70に作用していない場合には、第1孔部36b1の開口部を開放し、バルーン20を拡張する液体を流通させる機能も有する。このため、コアワイヤに押し込み力が作用しない通常状態において、押圧部72は、第1孔部36b1の開口部に接触しておらず、僅かな間隙Lを有している。そして、バルーンカテーテル10に押し込み力が作用した際に、中間アウターシャフト部35等が圧縮されることにより押圧部72が第1孔部36b1の開口部に接触するようになっている。間隙Lは、中間アウターシャフト部35等に押し込み力が作用した場合の撓み量等によっても変化するが、約0.5mm〜約2.0mmに設定されており、本実施の形態の場合、間隙Lは、約1.0mmに設定されている。
尚、押し込み力とは、医師等の手技者によってバルーンカテーテルを体内へ進入させていくために、バルーンカテーテルを先端側に向けて軸方向に押す力をいう。
【0045】
先端コア部71は、開口制御部33の第1孔部36b1を貫通し、先端アウターシャフト部31の遠位部にまで延びている。先端コア部71は、バルーンカテーテル10に軸方向の剛性変化を与えるだけでなく、第1孔部36b1に挿入されることによって、押し込み力が作用した際に、押圧部72を案内部36cに沿って先端方向に移動させ、押圧部72が確実に第1孔部36b1の開口部に接触し、封鎖すること補助する機能を有する。
【0046】
先端コア部71の軸方向の長さは、約5.0mm〜約150.0mmに設定されており、本実施の形態の場合、約130.0mmに設定されている。
【0047】
このような構成により、コアワイヤ70に後端側から先端側への軸方向の力である押し込み力が作用した場合、押圧部72の先端が、開口制御部33の第1孔部36b1を封鎖すると共に押圧し、アウターシャフト30を先端側へ押圧するようになっている。一方、コアワイヤに押し込み力が作用しない通常状態において、押圧部72は、第1孔部36b1の開口部から離間し、第1孔部36b1と第2孔部36b2からなる制御孔36b全体を開口し、バルーン20を拡張させる液体を流通させるようになっている。
【0048】
インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31内に略同軸状に収納されている。インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31及び中間アウターシャフト部35と同様の樹脂で形成された円筒状の部材であり、内部にガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメン51を有している。
先端アウターシャフト部31の内周面とインナーシャフト50の外周面の間には、拡張ルーメン36の先端部分を構成する先端拡張ルーメン36aが形成されている。
インナーシャフト50の近位端は、アウターシャフト30の開口制御部33に溶着されることによって、後端側ガイドワイヤポート54が形成されている。
【0049】
インナーシャフト50の先端は、先端アウターシャフト部31の先端から延出した延出部52を有し、この延出部52の先端にチップ59が取り付けられている。
チップ59は、先端に向かって外径が漸進的に減少するテーパ状の外形を有する部材であり、柔軟な樹脂で形成されている。チップ59は、ガイドワイヤルーメン51の先端部分を構成する筒状の部材であり、先端に先端側ガイドワイヤポート53を有する。
【0050】
インナーシャフト50の延出部52の遠位端には、バルーン20の先端取付部22が固着されている。
【0051】
インナーシャフト50の延出部52におけるバルーン20の拡張部21の内部に位置する部分には、所定距離離間した一対の放射線不透過性のマーカ25a、25bが取り付けられている。
【0052】
以上の構成に基づいて、本実施の形態のバルーンカテーテル10を心臓の冠状動脈にある狭窄部を拡張する手技に用いる場合について説明する。
【0053】
治療の目標である狭窄部がある心臓の冠状動脈には、予め図示しないガイドワイヤが挿入されており、このガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル10が体内に挿入される。ガイドワイヤは、バルーンカテーテル10のチップ59の先端側ガイドワイヤポート53から挿入され、インナーシャフト50内のガイドワイヤルーメン51を通過して、後端側ガイドワイヤポート54から延出される。
【0054】
バルーンカテーテル10をガイドワイヤに沿って血管内を進行させる際、医師等の手技者がバルーンカテーテル10を近位側から軸方向に押し、この押し込み力は、金属管である後端アウターシャフト部37から、樹脂製の中間アウターシャフト部35、開口制御部33、及び先端アウターシャフト部31へと順次遠位側へ伝達される。
【0055】
同時に、押し込み力は、後端アウターシャフト部37から後端アウターシャフト部37に取り付けられたコアワイヤ70に伝達される。この時、中間アウターシャフト部35等が撓む等してコアワイヤ70の押圧部72が案内部36cに沿って制御孔36bの第1孔部36b1を封鎖し、開口制御部33の近位端を押圧する。即ち、コアワイヤ70は、アウターシャフト30を開口制御部33において直接的に押圧する。よって、押し込み力をアウターシャフト30の遠位側へ効果的に伝達できる。
【0056】
また、コアワイヤ70は、インナーシャフト50の近位端が取り付けられている開口制御部33の後端側を押圧するため、近位側から与えられる押し込み力は、インナーシャフト50にも伝達される。このため、押し込み力をアウターシャフト30だけでなく、インナーシャフト50によって遠位側へ伝達することができる。従って、バルーンカテーテル10の先端であるチップ59まで押し込み力を効果的に伝達することができる。
【0057】
手技者が放射線透視下において、マーカ25a、25bを用いてバルーン20を目的部位である狭窄部に位置決めした後、コネクタ60に接続された図示しないインデフレータから造影剤や生理食塩水等の拡張用の液体が供給される。
この時、拡張用の液体は、アウターシャフト30の拡張ルーメン36に流入する。この場合、押し込み力がコアシャフト70に作用して制御孔36bの第1孔部36b1が封鎖されていたとしても、第2孔部36b2は、常時開放されているため、少なくとも制御孔36bの第2孔部36b2から拡張用の液体は、開口制御部33を通過して、先端アウターシャフト部31の先端から流出し、バルーン20を拡張させる。
【0058】
バルーン20によって狭窄部を拡張する手技が終了すると、手技者は、インデフレータによって、拡張用の液体をバルーン20から排出する。バルーン20を収縮させる際には、バルーン20の位置決めは既に終了しているため、押し込み力がコアシャフト70に作用する可能性は小さい。このためコアワイヤ70の押圧部72は、第1孔部36b1から離間し、制御孔36b全体を開放する。従って、第1孔部36b1と第2孔部36b2の両方から後端アウターシャフト部37の後端拡張ルーメン36dへ拡張用の液体を排出し、迅速にバルーン20を収縮させることができる。
【0059】
また、仮に、押し込み力がコアシャフト70に作用して第1孔部36b1が封鎖されていたとしても、第2孔部36b2は、常時開放されている。従って、拡張用の液体は、少なくとも制御孔36bの第2孔部36b2から後端アウターシャフト部37の後端拡張ルーメン36dへ排出され、バルーン20を収縮することができる。
この後、バルーンカテーテル10は体外へ引き出されて、手技が終了する。
【0060】
以上述べたように、本実施の形態のバルーンカテーテル10は、手技者によって与えられる押し込み力をアウターシャフト30の近位端から順次、遠位側へ伝達するだけでなく、コアワイヤ70によって、押圧部72がアウターシャフト30の途中から開口制御部33を押圧することによって押し込み力を伝達することができる。
【0061】
また、インナーシャフト50の近位端と開口制御部33が接合されていることにより、押圧部72によって、インナーシャフト50の近位端側を押圧することができるため、インナーシャフト50へも押し込み力を伝達することができる。従って、近位側から与えられる押し込み力を、効果的にバルーンカテーテル10の先端であるチップ59まで伝達することができる。即ち、バルーンカテーテル10の押し込み力の伝達性を向上させることができる。
【0062】
更に、拡張用の液体をバルーン20から排出する際には、コアワイヤ70の押圧部72は、第1孔部36b1から離間し、制御孔36b全体を開放する。このため、第1孔部36b1と第2孔部36b2の両方から後端アウターシャフト部37の後端拡張ルーメン36dへ拡張用の液体を排出し、迅速にバルーン20を収縮することができる。仮に、押し込み力がコアシャフト70に作用して第1孔部36b1が封鎖されていたとしても、第2孔部36b2は、常時開放されているため、少なくとも制御孔36bの第2孔部36b2から拡張用の液体は排出され、バルーン20を収縮することができる。
【0063】
以上述べた実施の形態では、押圧部72の形状を楕円体形状としているが、押圧部72の形状は、このような形状以外にも、球状や、先端に向かって直径が小さくなる円錐形状等の各種の形状がとり得る。例えば、図4に示すように、先端に向かって直径が小さくなる円錐形状の押圧部172の場合、押し込み力が作用していない通常状態において、押圧部172の先端部分は、第1孔部36b1の内部に挿入されているが、第1孔部36b1との間に間隙を有することにより、第1孔部36b1が開口する状態となっている。そして、押し込み力が作用した際には、二点鎖線で示すように押圧部172は先端方向に移動して、第1孔部36b1の開口部を封鎖すると共に、開口制御部33の後端を押圧するようになっている。
【0064】
また、以上述べた実施の形態では、押圧部72は、押し込み力が作用しない通常状態において第1孔部36b1の開口部より距離Lだけ離間しているが、通常状態において押圧部が実質的に第1孔部36b1の開口部に接触している構成も採り得る。このような場合でも、バルーン20から拡張用の液体を排出する際には、中間アウターシャフト部35等のアウターシャフト30が軸方向に伸びる方向の力が作用するため、この伸びにより、第1孔部36b1の開口部より離間させ、第1孔部36b1から拡張用の液体の排出できるようにすることができる。
【0065】
以上述べた実施の形態では、制御孔36bを備える開口制御部33をインナーシャフト50の近位端を接合した構成としている。しかし、図5に示す開口制御部233のように、インナーシャフト50の近位端と開口制御部とを離間させた構成としても良い。図5に示す開口制御部233は、後端側ガイドワイヤポート54から所定距離離間した後端側に取り付けられている。
また、図5に示す実施の形態では、上記した案内部36cが省略されている。案内部36cは、押圧部72を確実に第1孔部36b1の開口部へ案内し、閉鎖する上で有効であるが、先端コア部71が第1孔部36b1へ挿入されていれば、押圧部72を第1孔部36b1の開口部へ案内する役割を果たすため、省略は可能である。先端コア部71の軸方向の長さは、押圧部72を第1孔部36b1の開口部へ案内することができれば、上記した実施の形態のように長くする必要はなく、図5に示すように、開口制御部233の軸方向の長さと同等の長さを有すれば足りる。
【0066】
図5に示す実施の形態とは逆に、開口制御部を後端側ガイドワイヤポート54から所定距離離間した先端側に取り付けても良い。
【0067】
以上述べた実施の形態では、制御孔36bが第1孔部36b1と第2孔部36b2からなり、これらが重なりあった形状となっている。しかし、制御孔36bの形状や構成はこれに限られたものでは無く、各種の態様が採り得る。例えば、図6(A)に示す制御孔336bの様に、完全に分離した第1孔部336b1と第2孔部336b2とからなる構成としても良い。
【0068】
また、図6(B)に示すように、制御孔36bを1つの長円形状の孔部436bから形成しても良い。この場合は、二点鎖線で示すようにコアワイヤ70の押圧部72が236bの約半分の開口部を封鎖する構成となる。
尚、図4〜6に示される実施の形態では、図1〜3に示される実施の形態と実質的に同じ構成は、同じ符号を用いて示されている。
【0069】
以上述べた実施の形態は、バルーンカテーテル10を心臓の血管の治療に用いるものであるが、下肢の血管や透析のためのシャントを拡張する手技等、各種の手技に用いることができる。
【符号の説明】
【0070】
10 バルーンカテーテル
20 バルーン
30 アウターシャフト
31 先端アウターシャフト部
33 開口制御部
35 中間アウターシャフト部
36 拡張ルーメン
36b 制御孔
36b1 第1孔部
36b2 第2孔部
37 後端アウターシャフト部
50 インナーシャフト
51 ガイドワイヤルーメン
54 後端側ガイドワイヤポート
70 コアワイヤ
72 押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンと、
前記バルーンの少なくとも一部が取り付けられ、前記バルーンを拡張するための流体を供給する拡張ルーメンを構成する筒状のアウターシャフトと、
前記アウターシャフトに設けられ、前記拡張ルーメンと連通する制御孔を有する開口制御部と、
前記アウターシャフト内に挿入された、長尺な線材からなり、前記開口制御部の前記制御孔と当接可能な押圧部を有するコアワイヤと
を備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記アウターシャフトの内部に配置され、ガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメンを内部に有するインナーシャフトと、
前記インナーシャフトの遠位端に形成された先端側ガイドワイヤポートと、
前記インナーシャフトの近位端に形成された後端側ガイドワイヤポートとを備え、
前記後端側ガイドワイヤポートは、前記アウターシャフトの前記開口制御部に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記開口制御部の前記制御孔は、前記押圧部が当接することにより開口が閉止される第1孔部と、常時開口する第2孔部からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−183127(P2012−183127A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47083(P2011−47083)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】