説明

バルーンカテーテル

【課題】
本発明は、バルーンカテーテルの近位側から与えられる回動をバルーンカテーテルの遠位側まで十分に伝達できるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】
バルーンカテーテル10は、アウターシャフト30とインナーシャフト50の間に配置され、インナーシャフト50をアウターシャフト30と同軸状に位置決めすると共に、アウターシャフト50とインナーシャフト30とを接続する複数の回転伝達部材80を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するために使用されるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するためにバルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルは、主に、拡張体であるバルーンと、アウターシャフトと、この内部に配置されたインナーシャフトからなる。インナーシャフトは、ガイドワイヤを挿通させるためのものであり、アウターシャフトは、インナーシャフトとの間に設けられたルーメンを通してバルーンを拡張するための造影剤や生理食塩水等の液体を流通させるためのものである。
【0003】
このようなバルーンカテーテルは、血管等に挿入され、所望の位置に位置決めされるために、医師等の手技者によってカテーテルの手元側から先端側へカテーテルを軸方向に押す力、所謂、押し込み力が伝達される。バルーンカテーテルには、この押し込み力を手元側から先端側へ伝達する性能が高いこと、即ち、押し込み特性が高いことが要求される。
【0004】
従来、押し込み特性を向上させると共に、バルーンカテーテルの剛性を軸方向に変化させるために、アウターシャフト内にコアワイヤを有するものがある(例えば、下記特許文献1参照)。このようなコアワイヤを有するバルーンカテーテルには、押し込み特性を一層向上させるために、コアワイヤの遠位端部分をカテーテル内の一部に固定したものがある(例えば、下記特許文献2〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−291899号公報
【特許文献2】特開2004−160101号公報
【特許文献3】特表2003−517901号公報
【特許文献4】特表平8−500505号公報
【特許文献5】特表平9−503411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、押し込み特性の向上に加え、バルーンカテーテルが屈曲する血管を通過する際にバルーンカテーテルの先端が血管の内壁等に引っ掛かって通過が困難となった場合等に、バルーンカテーテルの先端を一定角度回動させたいという要求がある。即ち、バルーンカテーテルの手元側を一定角度回動させた場合に先端側が追従して回動する回転追従性が要求されている。
【0007】
上記のような従来のバルーンカテーテルは、押し込み特性を向上させるために一定の効果があると考えられるが、バルーンカテーテルが回転追従性を備えるには十分では無い。バルーンカテーテルのアウターシャフトの先端には、バルーンが取り付けられているため、手元側でアウターシャフトを回動させたとしても、その回転力はバルーンによって伝達が阻害されてしまい、バルーンカテーテルの先端であるインナーシャフトの先端には伝わり難いためである。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、バルーンカテーテルの近位側から与えられる回動をバルーンカテーテルの遠位側まで十分に伝達できるバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明では、上記の課題は以下に列挙される手段により解決がなされる。
【0010】
<1>バルーンと、前記バルーンの後端側の取付部が接合された管状のアウターシャフトと、前記アウターシャフト内に挿通されると共に、前記アウターシャフトから延出した部分に前記バルーンの先端側の取付部が接合されたインナーシャフトと、前記アウターシャフトと前記インナーシャフトの間に配置され、前記インナーシャフトを前記アウターシャフトと同軸状に位置決めすると共に、前記アウターシャフトと前記インナーシャフトとを接続する複数の回転伝達部材とを備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【0011】
<2>前記複数の回転伝達部材は、前記インナーシャフトの周方向に対して均等な間隔で配置された少なくとも3つの回転伝達部材からなることを特徴とする態様1に記載のバルーンカテーテル。
【0012】
<3>前記回転伝達部材は、軸方向に貫通する孔を有することを特徴とする態様1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0013】
<1>本発明のバルーンカテーテルは、手技者によって与えられる回転力を回転伝達部材によって、アウターシャフトからインナーシャフトへと伝達して、バルーンカテーテルの先端部を回動させることができる。この時、インナーシャフトは、アウターシャフト内で同軸状に連結されているため、効果的に回転力をアウターシャフトからインナーシャフトへと伝達できる。
【0014】
従って、屈曲する血管等をバルーンカテーテルが通過する場合等に、手技者がアウターシャフトを回動させることにより、バルーンカテーテルの先端部を回動させることができるため、屈曲する血管等にバルーンカテーテルを良好に通過させることができる。
【0015】
<2>本発明の態様2において、複数の回転伝達部材は、インナーシャフトの周方向に対して均等な間隔で配置された少なくとも3つの回転伝達部材からなっている。即ち、少なくとも3本の回転伝達部材が、アウターシャフトとインナーシャフトの間に形成される拡張ルーメン内で均等に配置されている。このような配置は、アウターシャフトとインナーシャフトとを同軸状に安定的に配置する上で効果的であり、アウターシャフトの回転力をインナーシャフトに効果的に伝達することができる。
【0016】
<3>本発明の態様3では、回転伝達部材が軸方向に貫通する孔を有している。このような構成にすることによって、アウターシャフトとインナーシャフトの間に複数の回転伝達部材が存在しても、拡張ルーメンが狭くなることを防止できる。即ち、貫通する孔によって、拡張ルーメンの開口面積を確保することができる。このため、回転伝達部材を配置したとしても、バルーンの拡張や収縮を行う時間が長くなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施の形態のバルーンカテーテルの全体図である。
【図2】図2は、図1のバルーンカテーテルの先端部分の拡大図である。
【図3】図3は、図2のIII−III方向から見た断面図である。
【図4】図4は、他の実施の形態を示した図である。
【図5】図5は、更に他の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態のバルーンカテーテルを図1〜3を参照しつつ説明する。図1及び図2において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(近位側、基端側)である。
【0019】
バルーンカテーテル10は、例えば、心臓の血管の閉塞部や狭窄部等の治療に用いられるものであり、全長が約1500mm程度のものである。
バルーンカテーテル10は、主にバルーン20、アウターシャフト30、インナーシャフト50、コネクタ60、及び回転伝達部材80からなる。
【0020】
バルーン20は、樹脂製の部材であり、軸線方向中央にバルーン20が拡張するための拡張部21と、先端側に先端取付部22、後端側に後端取付部23を有している。
【0021】
先端取付部22は、インナーシャフト50の先端部分(チップ59を含む)に固着されている。
後端取付部23は、アウターシャフト30の先端部分の外周面に固着されている。
【0022】
アウターシャフト30は、バルーン20を拡張するための流体を供給するための拡張ルーメン36を構成する管状の部材である。アウターシャフト30は、遠位側に位置する先端アウターシャフト部31と後端側に位置する後端アウターシャフト部37とからなる。先端アウターシャフト部31は樹脂製のチューブである。先端アウターシャフト部31を構成する樹脂には、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等が用いられる。
【0023】
先端アウターシャフト部31の先端部分の外周には、バルーン20の後端取付部23が固着されている。本実施の形態の場合、後端取付部23は、先端アウターシャフト部31の先端部分の外周面に固着されているが、先端アウターシャフト部31の先端部分の内周面に固着しても良い。
【0024】
また、先端アウターシャフト部31は、インナーシャフト50を収納する。インナーシャフト50の後端は、先端アウターシャフト部31の側面に取り付けられており、この側面に後端側ガイドワイヤポート54が形成されている。先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50の間の空間は、拡張ルーメン36の先端部分を構成する先端拡張ルーメン36aとなっている。
【0025】
拡張ルーメン36aの先端部分には、後述する3本の回転伝達部材80が配置されている。
また、拡張ルーメン36a内には、後述するコアワイヤ90が挿入されている。
【0026】
先端アウターシャフト部31の外径は、本実施の形態の場合、約0.80mm〜約0.95mmに設定され、約0.84mmである。先端アウターシャフト部31の内径は、本実施の形態の場合、約0.70mm〜約0.85mmに設定され、約0.73mmである。
【0027】
後端アウターシャフト部37は、所謂ハイポチューブと呼ばれる金属製の管状部材である。後端アウターシャフト部37の先端部は、先端アウターシャフト部31の後端部に挿入されて固着されている。後端アウターシャフト部37の内部に形成された後端拡張ルーメン36bは、上記した先端拡張ルーメン36aと共に拡張ルーメン36を構成している。
【0028】
後端アウターシャフト部37の後端には、コネクタ60が取り付けられている。コネクタ60に取り付けられた図示しないインデフレータからバルーン20を拡張するための造影剤や生理食塩水等の液体が供給されると、液体は、拡張ルーメン36を通ってバルーン20を拡張するようになっている。
【0029】
本実施の形態の場合、後端アウターシャフト部37の外径は、本実施の形態の場合、約0.60mm〜約0.65mmの範囲に設定されており、約0.64mmである。内径は、本実施の形態の場合、約0.48mmである。後端アウターシャフト部37の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼が用いられている。これ以外の材料として、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が用いられる。
【0030】
後端アウターシャフト部37の先端部の内周面には、コアワイヤ90が取り付けられている。コアワイヤ90の後端は後端アウターシャフト部37の内周面にロー付け、又は、レーザによる溶接等により固着されている。
【0031】
コアワイヤ90は、先端アウターシャフト部31における拡張ルーメン36a内に挿入されている。コアワイヤ90は、断面形状が円形である金属製の線材である。コアワイヤ90の先端は、後端側ガイドワイヤポート54を越えて先端側へ延びているが、後述する回転伝達部材80の後端にまでは達していない。コアワイヤ90の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼(SUS304)が用いられている。これ以外の材料としてNi−Ti合金のような超弾性合金やピアノ線等が用いられる。
【0032】
コアワイヤ90は、バルーンカテーテル10が先端に向かって柔軟となるような剛性変化を付与するために、先端に向かって細径化されている。コアワイヤ90は、本実施の形態の場合、直径が遠位方向に向けて約0.45mmから約0.10mmに減少している。
【0033】
インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31内に収納されている。インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31と同様の樹脂で形成された管状の部材であり、内部にガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメン51を有している。
【0034】
本実施の形態の場合、インナーシャフト50の外径は、本実施の形態の場合、約0.50mm〜約0.60mmの範囲に設定されており、約0.53mmである。内径は、本実施の形態の場合、約0.36mm〜約0.45mmの範囲に設定されており、約0.41mmである。
【0035】
インナーシャフト50の後端は、先端アウターシャフト部31の側面に溶着されることによって、後端側ガイドワイヤポート54が形成されている。
【0036】
インナーシャフト50の先端部分は、先端アウターシャフト部31の先端から延出した延出部52を有している。延出部52は、先端にチップ59を有している。
チップ59は、先端に向かって外径が漸進的に減少するテーパ状の外形を有する部材であり、柔軟な樹脂で形成されている。チップ59は、ガイドワイヤルーメン51の先端部分を構成する筒状の部材であり、先端に先端側ガイドワイヤポート53を有する。
【0037】
インナーシャフト50の延出部52の先端部(チップ59を含む)には、バルーン20の先端取付部22が固着されている。
【0038】
インナーシャフト50の延出部52におけるバルーン20の拡張部21の内部に位置する部分には、所定距離離間した一対の放射線不透過性のマーカ70が取り付けられている。
【0039】
先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50の間には、複数の回転伝達部材80が円周方向に等しい間隔で配置されている。回転伝達部材80は、断面形状が円形であり、直径が一定の円柱状の部材である。回転伝達部材80の数と材質は特に限定されるものでは無いが、本実施の形態の場合、3本の同じ形状の金属製の線材である。金属材料としては特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼(SUS304)が用いられている。これ以外の材料としてNi−Ti合金のような超弾性合金やピアノ線等が用いられる。また、金属以外にも樹脂製の線材を用いることができる。
【0040】
回転伝達部材80は、先端が先端アウターシャフト部31の先端近傍に位置するように配置されている。即ち、回転伝達部材80の先端は、先端アウターシャフト部31におけるバルーン20の後端取付部23が固着されている部分に重なるように配置されている。このように回転伝達部材80を可及的にアウターシャフト30の先端側に配置することにより、アウターシャフト30によって伝達された回転力をバルーンカテーテル10のより先端側でインナーシャフト50に伝達できるため、回転力の伝達性を向上させることができる。
【0041】
回転伝達部材80は、先端アウターシャフト部31の内周面とインナーシャフト50の外周面を接続するように介在しており、接着剤によって固定されている。3本の回転伝達部材80の直径は同じであり、インナーシャフト50が先端アウターシャフト部31に対して略同軸状に位置されるように設定されている。即ち、図2及び図3に示すように、インナーシャフト50の中心軸は、先端アウターシャフト部31の中心軸Aに一致するように配置されている。このため、回転伝達部材80の直径は、先端アウターシャフト部31の内径とインナーシャフト50の外径を考慮して決定される。本実施の形態の場合、回転伝達部材80の直径は、約0.03mm〜約0.13mmの範囲に設定されており、約0.10mmとされている。
【0042】
尚、上記した回転伝達部材80は、先端アウターシャフト部31の内周面とインナーシャフト50の外周面の間に接着剤によって固定されているが、誘導加熱等を用いて回転伝達部材80を加熱することによって先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50との間に固着させることもできる。
【0043】
3本の回転伝達部材80は、先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50の間に形成される先端拡張ルーメン36aを略均等に分割するように円周方向に等しい間隔で配置されている。即ち、中心軸Aを中心として回転伝達部材80は等しい角度θ(=120°)間隔で配置されている。
【0044】
回転伝達部材80の長さは特に限定されるものでは無いが、先端アウターシャフト部31からの回転力をインナーシャフト50に効果的に伝達するためには、線接触によって先端アウターシャフト部31の内周面とインナーシャフト50の外周面が接合されることが好ましいため、軸方向に所定の長さを有する。
本実施の形態の場合、回転伝達部材80の軸方向の長さは、約3.0mm〜約20.0mmの範囲に設定されており、約10.0mmとされている。また、可及的にインナーシャフト50の先端に近い位置で回転力を伝達させるために、
回転伝達部材80は、後端側ガイドワイヤポート54より先端側に配置されている。
【0045】
尚、上記した実施の形態では、複数の回転伝達部材80の長さは同じであるが、複数の回転伝達部材80の長さを異なったものとすることも可能である。
【0046】
このような構成により、後端アウターシャフト部37の回動により先端アウターシャフト部31に軸線周りの回動が与えられた場合、3本の回転伝達部材80が先端アウターシャフト部31の先端部で回転力をインナーシャフト50へ伝達し、インナーシャフト50を先端アウターシャフト部31と同軸状に回動させるようになっている。即ち、複数の回転伝達部材80がインナーシャフト50と先端アウターシャフト部31を同軸状に支持することにより、効果的に先端アウターシャフト部31の回転力はインナーシャフト50へと伝達される。そして、インナーシャフト50の回動は、延出部52からチップ59へと順次伝達され、バルーンカテーテル10の先端が回動するようになっている。従って、手元側からアウターシャフト30に与えられた回転力は、バルーン20によって阻害されることなく、チップ59を回動させるようになっている。
【0047】
尚、回動とは、アウターシャフト30等が軸線周りに約360°未満の所定の角度変位する場合を包含する。従って、アウターシャフト30等は必ずしも一回転以上回転する必要は無い。
【0048】
以上の構成に基づいて、本実施の形態のバルーンカテーテル10を心臓の冠状動脈にある狭窄部を拡張する手技に用いる場合について説明する。
【0049】
治療の目標である狭窄部がある心臓の冠状動脈には、予め図示しないガイドワイヤが挿入されており、このガイドワイヤに沿ってバルーンカテーテル10が体内に挿入される。ガイドワイヤは、バルーンカテーテル10のチップ59の先端側ガイドワイヤポート53から挿入され、インナーシャフト50内のガイドワイヤルーメン51を通過して、後端側ガイドワイヤポート54から延出される。
【0050】
バルーンカテーテル10をガイドワイヤに沿って血管内を進行させる際、医師等の手技者がバルーンカテーテル10を近位側から軸方向に押し、この押し込み力は、金属管である後端アウターシャフト部37から先端アウターシャフト部31へと遠位側へ伝達される。
【0051】
同時に、押し込み力は、後端アウターシャフト部37から後端アウターシャフト部37に取り付けられたコアワイヤ90に伝達される。これによって押し込み力の伝達性を高めることができる。
【0052】
屈曲する血管等をバルーンカテーテル10が通過する場合、チップ59等のバルーンカテーテル10の先端部分が血管の内壁等に引っ掛かり、通過が阻害される場合がある。このような場合、手技者が後端アウターシャフト部37を回動させると、これに接合された先端アウターシャフト部31が回動する。先端アウターシャフト部31の回動は、回転伝達部材80によって、インナーシャフト50へと伝達され、インナーシャフト50の延出部52からチップ59へと順次伝達される。この時、インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31内で同軸状に連結されているため、効果的に回転力をアウターシャフト30からインナーシャフト50へと伝達できる。これよって、チップ59が回動するため、チップ59等のバルーンカテーテル10の先端部分が血管の内壁等に引っ掛かり、バルーンカテーテル10の動きが阻害されたとしても、この状況を解消することができる。従って、バルーンカテーテル10を屈曲する血管等に良好に通過させることができる。
【0053】
手技者が放射線透視下において、マーカ70を用いてバルーン20を目的部位である狭窄部に位置決めした後、コネクタ60に接続された図示しないインデフレータから造影剤や生理食塩水等の拡張用の液体が供給される。この時、拡張用の液体は、アウターシャフト30の拡張ルーメン36に流入する。そして、拡張用の液体は、アウターシャフト30の先端アウターシャフト部31の先端から流出し、バルーン20を拡張させる。
【0054】
バルーン20によって狭窄部を拡張する手技が終了すると、手技者は、インデフレータによって、拡張用の液体をバルーン20から排出する。即ち、拡張用の液体は、バルーン20内から流出し、先端アウターシャフト部31の先端拡張ルーメン36aと後端アウターシャフト部37の後端拡張ルーメン36bからインデフレータへ排出される。
この後、バルーンカテーテル10は体外へ引き出されて、手技が終了する。
【0055】
以上述べたように、本実施の形態のバルーンカテーテル10は、手技者によって与えられる回転力を回転伝達部材80によって、アウターシャフト30からインナーシャフト50へと伝達することができ、バルーンカテーテル10の先端であるチップ59を回動させることができる。この時、インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31内で同軸状に連結されているため、効果的に回転力をアウターシャフト30からインナーシャフト50へと伝達できる。
【0056】
従って、屈曲する血管等をバルーンカテーテル10が通過する場合等に、手技者が後端アウターシャフト部37を回動させることにより、バルーンカテーテル10の先端を回動させることができるため、バルーンカテーテル10を屈曲する血管等に良好に通過させることができる。
【0057】
以上述べた実施の形態では、3本の回転伝達部材80は、先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50の間に形成される先端拡張ルーメン36aを略均等に分割するように円周方向に等しい間隔で配置されている。即ち、回転伝達部材80は120°間隔で配置されている。このような配置は、先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50とを同軸状に安定的に配置する上で効果的であり、アウターシャフト30の回転力をインナーシャフト50に効果的に伝達することができる。しかし、回転伝達部材80は3本に限られるものでは無い。また、複数の回転伝達部材は、必ずしも、このように先端拡張ルーメン36aの円周方向に等しい間隔で配置される必要は無く、図4に示すように各種の態様が採り得る。即ち、インナーシャフト50を先端アウターシャフト部31に対して略同心に配置するためには、図4(a)、(b)で示す回転伝達部材180、280の様に、回転伝達部材を対称に配置することが好ましい。しかし、インナーシャフト50がアウターシャフト30内で略同軸状に安定して配置されるならば図4(c)で示す回転伝達部材380のように複数の回転伝達部材を非対称、又は、先端拡張ルーメン36aの円周方向に対して不均等な間隔で配置しても良い。
【0058】
以上述べた実施の形態では、3本の回転伝達部材80は、金属製の円柱状の部材からなっているが、図5に示すような中空の筒状部材からなる回転伝達部材480から構成しても良い。回転伝達部材480は、軸方向に形成された貫通孔480aを有している。このため、上記した実施の形態より、貫通孔480aの分だけ拡張ルーメンの開口面積を拡大することができるため、拡張ルーメン36が回転伝達部材480によって狭くなることを防止できる。従って、回転伝達部材を配置したとしても、拡張ルーメンが狭くなり、バルーンの拡張や収縮を行う時間が長くなることを防止できる。
【0059】
以上述べた実施の形態では、回転伝達部材80の断面形状は円形であるが、回転伝達部材80の断面形状は、アウターシャフト30とインナーシャフト50の間に介在し、アウターシャフト30の回転力をインナーシャフト50に伝達できるものであれば、特に限定されるものでは無い。例えば、正方形や長円形等の断面形状を採用することも可能である。
【0060】
以上述べた実施の形態では、先端側アウターシャフト31の側面にインナーシャフト50を接続することによりガイドワイヤルーメン51を短くした構成である所謂迅速交換型の構成となっている。迅速交換型のバルーンカテーテルは、インナーシャフトがアウターシャフトの途中でまでしか存在しないため、
手元側から与えられる回転力がバルーンカテーテルの先端まで伝わり難い構成となる。このため本実施の形態の回転伝達部材を設けて回転力の伝達性を高めることが有効である。しかし、インナーシャフトをバルーンカテーテルの後端まで配置した構成である所謂オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルに回転伝達部材を設けた構成とすることも可能である。
【0061】
以上述べた実施の形態は、バルーンカテーテル10を心臓の血管の治療に用いるものであるが、下肢の血管や透析のためのシャントを拡張する手技等、各種の手技に用いることができる。
【符号の説明】
【0062】
10 バルーンカテーテル
20 バルーン
22 先端取付部
23 後端取付部
30 アウターシャフト
31 先端アウターシャフト部
36 拡張ルーメン
37 後端アウターシャフト部
50 インナーシャフト
80 回転伝達部材
480a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンと、
前記バルーンの後端側の取付部が接合された管状のアウターシャフトと、
前記アウターシャフト内に挿通されると共に、前記アウターシャフトから延出した部分に前記バルーンの先端側の取付部が接合されたインナーシャフトと、
前記アウターシャフトと前記インナーシャフトの間に配置され、前記インナーシャフトを前記アウターシャフトと同軸状に位置決めすると共に、前記アウターシャフトと前記インナーシャフトとを接続する複数の回転伝達部材と
を備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記複数の回転伝達部材は、前記インナーシャフトの周方向に対して均等な間隔で配置された少なくとも3つの回転伝達部材からなることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記回転伝達部材は、軸方向に貫通する孔を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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