説明

バルーンカテーテル

【課題】
本発明は、ガイドワイヤとバルーンカテーテルとを一体型としたバルーンカテーテルにおいて、ガイドワイヤのコイル部分とバルーンカテーテルの先端部分との間に段差が生じることを防止して、バルーンカテーテルの通過性を向上させることを目的とする。
【解決手段】
バルーンカテーテル1は、先端コイル部90の外側コイル91の外形形状と
先端側インナーシャフト51の先端部の外形形状を滑らかに接続する樹脂からなる遷移部54を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するために使用されるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するためにバルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルには各種のものがあるが、外径を小さくする等の理由から、バルーンカテーテルを案内するガイドワイヤをバルーンカテーテルの本体から取り外し不能に収納したものがある(例えば、下記特許文献1、2、3参照)。
【0003】
このようなガイドワイヤと一体型のバルーンカテーテルでは、ガイドワイヤの先端部分に設けられたコイル部分とバルーンカテーテルの先端部分との間の段差を可及的に小さくすると共に、コイル部分とカテーテルの先端部分とが一体的に滑らかに屈曲することが求められる。
ガイドワイヤのコイル部分とバルーンカテーテルの先端部分との間に段差、特に、カテーテル側の端部がコイル部分の外径より径方向に突出して段差が生じると、屈曲する血管内をバルーンカテーテルが進行する際に、この段差が血管の内壁や留置したステントのストラット(網目を構成する支柱)等に引っ掛かる等してバルーンカテーテルの通過性が阻害されるためである。
【0004】
上記した特許文献1と特許文献2は、ガイドワイヤのコイル部の後端と、バルーンカテーテル本体部の先端部との間に接続構造を有するため、ガイドワイヤのコイル部分とバルーンカテーテルの先端部分との間に段差を減少させることに一定の効果があると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平6−509244号公報
【特許文献2】米国特許第5,409,470号明細書
【特許文献3】特表平5−503872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された接続構造は、バルーンの拡張ルーメンを閉止するための弁として機能させることが目的であることから、ガイドワイヤのコイル部分とバルーンカテーテルの先端部分との間に段差を十分に低減できる可能性は低い。また、ガイドワイヤのコイル部分とカテーテル本体の先端部分とを接続した状態でなければ、バルーンを拡張するための液体が漏れ出してしまうため、ガイドワイヤのコイル部分をカテーテル本体の先端部分に対して回動させる等の操作することが困難と考えられる。
【0007】
特許文献2に記載された接続構造は、ガイドワイヤのコイル部分の後端の外形形状を螺子構造としてカテーテル本体の先端部分に螺合させるものであるため、螺子の山谷によって平滑な表面が形成できないばかりでなく、操作機構が複雑となるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ガイドワイヤとバルーンカテーテルとを一体型としたバルーンカテーテルにおいて、ガイドワイヤのコイル部分とバルーンカテーテルの先端部分との間に段差が生じることを防止して、バルーンカテーテルの通過性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明では、上記の課題は以下に列挙される手段により解決がなされる。
【0010】
<1>ガイドワイヤが一体的に収納されたバルーンカテーテルであり、バルーンと、前記バルーンを拡張するための流体を供給するための拡張ルーメンと、前記ガイドワイヤを収納するためのガイドワイヤルーメンとを有するカテーテル本体と、前記ガイドワイヤルーメンに挿入されたコアシャフトと、少なくとも1本の素線が巻回されてなり、前記カテーテル本体の先端から延出した前記コアシャフトの先端部を包囲する先端コイル部と、前記先端コイル部の後端及び前記カテーテル本体の先端の少なくとも一方に設けられ、前記先端コイル部の外形形状と前記カテーテル本体の先端部の外形形状とを滑らかに接続する樹脂からなる遷移部とを備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【0011】
<2>前記カテーテル本体は、管状のアウターシャフトと、前記アウターシャフトの内部に挿通され、前記ガイドワイヤルーメンを構成するインナーシャフトとを有し、前記インナーシャフトは、前記アウターシャフトよりも先端側に延出しており、前記遷移部は、前記先端コイル部の外形形状と前記インナーシャフトの先端部の外形形状とを滑らかに接続することを特徴とする態様1に記載のバルーンカテーテル。
【0012】
<3>前記インナーシャフトは、少なくとも1本の素線が巻回されてなるコイルと、このコイルを被覆する樹脂からなる樹脂層とを有し、前記遷移部は、前記樹脂層と一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0013】
<1>本発明のバルーンカテーテルは、先端コイル側の外形形状とカテーテル本体側の外形形状とを遷移部を介して滑らかに接続した構成としている。このため、ガイドワイヤの先端コイル部の後端部分とカテーテル本体側の先端部分との間に段差を生じることなく、全体として柔軟且つ滑らかに屈曲する構成とすることができる。即ち、屈曲した血管の内壁や留置したステントのストラット等で先端コイル部とカテーテル本体の境界部分が引っ掛かる等してバルーンカテーテルの通過性を阻害することを可及的に防止できる。
【0014】
<2>本発明の態様2では、カテーテル本体をアウターシャフトと、このアウターシャフトの内部に挿通されたインナーシャフトとから構成し、遷移部をインナーシャフトの先端に設けた構成としている。このため、先端コイル側の外形形状とカテーテル本体側の外形形状とを接続する遷移部が略円筒状の細径化された構成となる。
また、ガイドワイヤの先端コイル部に余分な部材を付加する必要がないため、ガイドワイヤの本来の性能を十分に発揮できると共に、ガイドワイヤの繊細な操作が阻害されることが可及的に防止できる。
【0015】
<3>本発明の態様3では、態様2のインナーシャフトが、少なくとも1本の素線からなるコイルと、このコイルを被覆する樹脂からなる樹脂層とを有し、遷移部は、樹脂層と一体的に形成されている。このため、柔軟性を維持しつつ剛性を高めることができるため、耐圧の高いバルーンカテーテルを製造することができる。また、インナーシャフトの柔軟性を維持しつつ、バルーンカテーテルを軸方向に押し込む、押し込み力が向上する。更に、遷移部を構成する樹脂がインナーシャフトのコイル52を被覆する樹脂層と一体的に形成されているため、遷移部が柔軟に屈曲しても脱落することを可及的に防止できる安全性の高い構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施の形態のバルーンカテーテルの全体図である。
【図2】図2は、本実施の形態のバルーンカテーテルの先端部分の拡大図である。
【図3】図3は、図1のIII−III方向から見た断面図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV方向から見た断面図である。
【図5】図5は、本実施の形態のコネクタの断面図である。
【図6】図6は、本実施の形態のバルーンカテーテルの作用を説明するための図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施の形態のバルーンカテーテルを図1〜5を参照しつつ説明する。
図1、2、5において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(手元側、基端側)である。
バルーンカテーテル1は、例えば、心臓の血管の閉塞部や狭窄部等の治療に用いられるものであり、全長が約1500mm程度のものである。
バルーンカテーテル1は、カテーテル本体10の内部にガイドワイヤ70が取り外しできないように、一体的に収納されおり、カテーテル本体10に対して、ガイドワイヤ70が軸線周りに回転可能、及び所定の距離だけ軸線方向に移動可能となっている。
【0018】
カテーテル10は、主にバルーン20、アウターシャフト30、インナーシャフト50及びコネクタ60からなる。
【0019】
アウターシャフト30は、樹脂製のチューブであり、先端側が後端側より細径化されている。
本実施の形態の場合、アウターシャフト30の先端側の外径は、約0.50〜約0.70mmであり、本実施の形態の場合、約0.60mmである。また、後端側の外径は、約0.55〜約0.75mmであり、本実施の形態の場合、約0.65mmである。
アウターシャフト30に用いる樹脂チューブには、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等の樹脂が用いられる。
アウターシャフト30の後端には、コネクタ60が取り付けられている。
【0020】
インナーシャフト50は、アウターシャフト30内に同軸状に配置されている。アウターシャフト30とインナーシャフト50との間には、バルーン20を拡張するための拡張ルーメン35が形成されるようになっている。コネクタ60に取り付けられた図示しないインデフレータからバルーン20を拡張するための液体が供給されると、液体は、拡張ルーメン35を通ってバルーン20を拡張するようになっている。
【0021】
インナーシャフト50は、先端側インナーシャフト51及び後端側インナーシャフト56を有する。先端側インナーシャフト51及び後端側インナーシャフト56は、それぞれ先端側ガイドワイヤルーメン41及び後端側ガイドワイヤルーメン46を構成する。
【0022】
図2、図3に示すように、先端側インナーシャフト51は、撚り線コイル52と、この撚り線コイル52の外周に被覆された外側樹脂層53からなる可撓性の円筒状の部材である。
【0023】
撚り線コイル52は、複数の金属製の素線52aを芯金上に撚り合わせた後、撚り合わせた際の残留応力を公知の熱処理にて除去し、芯金を抜き取ることによって製造されたものである。
図3に示すように、本実施の形態において撚り線コイル52には、4本の素線52aが用いられており、素線52aは断面が略長方形の所謂、平線である。素線52aの数および寸法は、先端側インナーシャフト51に必要な外径及び内径と、剛性を考慮して適宜に決定されるものであり、素線52aの数は限定されるものでは無い。また、素線52aには、断面が円形の丸線を用いても良い。
【0024】
外側樹脂層53は、溶解した樹脂槽に撚り線コイル52を浸漬して、撚り線コイル52の外周に樹脂を被覆することによって形成される。この外側樹脂層53によって、拡張ルーメン35にバルーン20を拡張するための液体が流通しても、この液体が撚り線コイル52の素線52a間の隙間から先端側インナーシャフト51の内部に漏れ出すことは無いようになっている。
また、このように撚り線コイル52を用いることにより、柔軟性を維持しつつ、強度の高いインナーシャフトを構成することができるため、バルーンカテーテル1の折れ曲がりを防止することができると共に、細径化を図ることができる。また、耐圧の高いバルーン20を使用しても先端側インナーシャフト51が圧力によって潰れることを防止できる。
【0025】
本実施の形態の場合、先端側インナーシャフト51の外径は、約0.27mmであり、内径は、約0.19mmである。
尚、熱収縮チューブを用いて熱による収縮作用によって樹脂チューブを撚り線コイル52に密着させる構成としても良い。
外側樹脂層53は、上記したアウターシャフト30に用いられる樹脂と同様の樹脂に加え、フッ素系の樹脂、ポリエチレン系の樹脂等を用いることができる。
【0026】
先端側インナーシャフト51の先端は、アウターシャフト30の先端から延出した延出部51aを有し、この延出部51aの先端には樹脂製の遷移部54を有している。
遷移部54は、上記した外側樹脂層53に用いられる樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0027】
遷移部54は、先端側ガイドワイヤルーメン41の先端部分を構成する筒状の部材であり、撚り線コイル52の先端部を被覆すると共に、後述する先端コイル90の外側コイル91の外形形状との間を滑らかに接続するためのものである。遷移部54は、先端に先端側ガイドワイヤルーメン41の開口端である先端側ガイドワイヤポート42(先端開口部)を有する。
【0028】
遷移部54の軸方向の長さLは、約1.0〜5.0mmが好ましいが、本実施の形態の場合、約3.0mmである。また、遷移部54の外径は、先端側インナーシャフト51の外径と略同じで、約0.27mmである。先端側ガイドワイヤポート42の内径は、先端側インナーシャフト51の内径よりも小さくされており、内部に挿通されるコアシャフト71の軸方向の移動と回動を許容する範囲で可及的に小さくされている。本実施の形態の場合、約0.18mmである。
尚、図2では、この間隙はやや誇張して記載されている。
【0029】
遷移部54は、上述したように撚り線コイル52を樹脂槽に浸漬して外側樹脂層53を形成する際に、樹脂で撚り線コイル52の先端まで被覆した後、更に撚り線コイル52より先へ樹脂のみが延び出すようにすることにより、外側樹脂層53と一体的に形成することができる。このように遷移部54を外側樹脂層53と一体的に形成することによって、遷移部54を撚り線コイル52に強固に固着することができ、先端側インナーシャフト51と遷移部54を一体的に屈曲させることができる。
尚、遷移部54は、外側樹脂層53と別部材としても良い。
【0030】
バルーン20は、樹脂製の部材であり、軸線方向中央にバルーン20が拡張するための拡張部21と、先端側に先端取付部22、後端側に後端取付部23を有している。先端取付部22は、遷移部54を突出させた状態でインナーシャフト50の延出部51aの先端部分に固着されている。後端取付部23は、アウターシャフト30の先端に取り付けられている。本実施の形態の場合、後端取付部23は、アウターシャフト30の先端の外周面に固着されている。
尚、図1、図2の実線で示すバルーン20は、使用前のバルーン20を折り畳んだ状態を示し、図2の二点鎖線は、バルーン20を拡張した状態を示している。
【0031】
先端側インナーシャフト51の延出部51aにおけるバルーン20の拡張部21の内部の中央には、マーカ25が取り付けられている。マーカ25は、白金等の放射線不透過性の合金からなる1本の素線を巻回したコイルにて形成されている。
【0032】
後端側インナーシャフト56は、内部に後端側ガイドワイヤルーメン46を構成する所謂ハイポチューブと呼ばれる金属製の管状部材である。後端側インナーシャフト56の先端部には、先端側インナーシャフト51の後端部が挿入されて固着されており、後端側ガイドワイヤルーメン46が先端側ガイドワイヤルーメン41と連通するようになっている。
本実施の形態の場合、後端側インナーシャフト56の外径は約0.33mmであり、内径は約0.29mmである。後端側アウターシャフト56の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼が用いられている。これ以外の材料として、Ni−Ti合金のような超弾性合金が用いられる。また、樹脂チューブを用いても良い。
【0033】
後端側インナーシャフト56の後端部は、コネクタ60に取り付けられている。
【0034】
次に、インナーシャフト50内に収納されたガイドワイヤ70について説明する。ガイドワイヤ70は、主にコアシャフト71、先端コイル部90とからなる。そして、先端コイル部90は、内側コイル81、外側コイル91からなる。
【0035】
コアシャフト71は、断面が円形の部材であり、先端ほど柔軟となるように細径化されている。コアシャフト71は、先端側から順に、最先端部72、第1テーパ部73、第1円柱部74、第2テーパ部75、第2円柱部76を有する。第1円柱部74と第2円柱部76は、直径が一定の部分であり、第1テーパ部73と第2テーパ部75は、先端に向かって細径化されるよう外径が漸進的に減少する部分である。
【0036】
細径化された第1円柱部74から先端側は、主に先端側インナーシャフト51内に収納されており、最も直径の大きい第2円柱部76と第2テーパ部75は、後端側インナーシャフト56内に収納されている。第1円柱部74の外径と先端側インナーシャフト51の内径の間と、第2円柱部76の外径と後端側インナーシャフト56の内径の間には、それぞれ所定の間隙が設けられており、ガイドワイヤ70のインナーシャフト50内での軸線周りに回動と軸線方向における所定の距離の移動を許容するようになっている。本実施の形態の場合、ガイドワイヤ70が軸線方向に移動できる距離は、約3.0〜5.0cmに設定されている。
【0037】
コアシャフト71の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼(SUS304)が用いられている。これ以外の材料としてNi−Ti合金のような超弾性合金やピアノ線等が用いられる。
尚、各テーパ部73,75及び各円柱部74,76の間には、必要に応じて他のテーパ部や円柱部を設けることも可能である。また、テーパ部の角度等の寸法も、必要に応じて適宜に設定できる。
【0038】
コアシャフト71の最先端部72は、後述する内側コイル81内に位置すると共に、先端側に位置する第1柔軟部72aと後端側に位置する第2柔軟部72bからなる。最先端部72は、手技中にガイドワイヤ70の先端に負荷が作用しても塑性変形して折れ曲がることなく復元する特性、即ち、復元力が向上するように可及的に細径化された部分である。また、シェイピングと呼ばれる、医師等の手技者によって、ガイドワイヤ70の先端を予め所望な方向に意図的に折り曲げておく処理が行われる部分である。
第1柔軟部72aと第2柔軟部72bはいずれも断面が円形で直径が一定の部分であり、第1柔軟部72aの直径は、第2柔軟部72bの直径よりも小さくなっている。このため、第1柔軟部72aと第2柔軟部72bの間には、図示しない微小なテーパ部が存在する。
尚、第1柔軟部72aをプレス加工して断面形状が略長方形の平坦な部分で構成しても良い。
【0039】
内側コイル81は、コアシャフト71の最先端部72と第1テーパ部73の先端部分を包囲するように取り付けられている。内側コイル81を構成する撚り線コイルは、剛性と柔軟性を兼ね備えた性質を有するため、最先端部72を撚り線コイル81で包囲することにより、先端コイル部90の柔軟性と剛性を劣化させることなく、最先端部72を細径化できる。従って、上述した最先端部72の復元力を向上できる。また、軸方向に剛性を有するため、最先端部72が細径化され、剛性が低下しても、ガイドワイヤ70の軸方向に押し付ける方向の力である、押し込み力の低下を防止できる。
【0040】
内側コイル81は、複数の金属製の素線81aを芯金上に撚り合わせた後、撚り合わせた際の残留応力を公知の熱処理にて除去し、芯金を抜き取ることによって製造された中空の撚り線コイルである。内側コイル81の外径は、本実施の形態の場合、約0.17mmである。また、内側コイル81の軸方向の長さは、約33.0mmである。
内側コイル81には、6本の素線81aが用いられている。素線81aの直径は、約0.03mmとなっている。素線81aの数および直径は、内側コイル81に必要な外径と、剛性を考慮して適宜に決定されるものであり、これらの値に限定されるものでは無い。
素線81aの材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼が用いられている。これ以外の材料として、Ni−Ti合金のような超弾性合金が用いられる。また、異なる材料の素線を組み合わせても良い。
【0041】
内側コイル81の先端は、コアシャフト71の軸線を中心として、コアシャフト71の先端に、外側コイル91の先端と共にロウ付けによって接合されており、このロウ付け部が略半球状のコイルチップ85(先端接合部)を形成している。内側コイル81の後端は、第1テーパ部73にロウ付けによって接合され、内側後端接合部86を形成している。
【0042】
内側コイル81内において、コイルチップ85から第2柔軟部72bの間には、コアシャフト71の最先端部72と略平行に安全ワイヤ82が取り付けられている。安全ワイヤ82は、ガイドワイヤ70の最先端部72等に体内で過大な負荷が作用した際に、最先端部72等が分断されることを防止するためのものである。
安全ワイヤ82は、複数の金属製の素線、例えば、7本の素線を撚り合わせることによって製造された撚り線である。安全ワイヤ82の外径は、本実施の形態の場合、約0.042mmである。
【0043】
素線82aの材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼が用いられている。また、異なる材料の素線を組み合わせても良い。
尚、このような撚り線を安全ワイヤ82に用いることは、柔軟で切断されにくい安全ワイヤを製造する上で有利であるが、安全ワイヤ82には、単線のワイヤや、断面が略長方形の平坦な線材を用いても良い。
【0044】
安全ワイヤ82の先端は、内側コイル81及び外側コイル91と共にコイルチップ85にてロウ付けによって接合されている。安全ワイヤ82の後端は、内側コイル81と共に第2柔軟部72bにロウ付けによって接合され、内側中間接合部83を形成している。尚、内側中間接合部83は、外側コイル91とは接合されていない。
【0045】
外側コイル91は、内側コイル81を包囲している。外側コイル91は、1本の金属製の素線91aを巻回したものである。外側コイル91の外径は、本実施の形態の場合、約0.30mmである。この外側コイル91の外径は、遷移部54の外径よりも僅かに大きく設定されている。
外側コイル91の素線91aは、プラチナ合金等の放射線不透過性の金属線で構成されている。尚、放射線不透過性の金属線とステンレス鋼等の放射線透過性の金属線が接合されて1本の素線となったものを用いても良い。
【0046】
外側コイル91の先端側は、柔軟性を高めるために、素線91aの間に間隙が形成されるように疎巻きに巻回されており、後端側は、素線91a同士が互いに接触するように密巻きに巻回されている。
【0047】
外側コイル91の先端は、コイルチップ85にて内側コイル81と同軸状にコアシャフト71の先端にロウ付けによって接合されている。外側コイル91の後端は、内側コイル81の内側後端接合部86よりも後端側で第1テーパ部73にロウ付けによって接合され、外側後端接合部96を形成している。
【0048】
外側コイル91の外側後端接合部96は、遷移部54の先端面と接触した状態で相対回転可能であると共に、相対回転を許容しつつ上記した様に、遷移部54の先端面から所定の距離移動しできるようになっている。ここで、外側コイル91の外径は、遷移部54の外径よりも僅かに大きく設定されているため、ガイドワイヤ70のコアシャフト71が後方に引かれ、外側コイル91の外側後端接合部96が遷移部54の先端面に押し付けられた際には、樹脂である遷移部54の先端面は僅かに径方向に伸び、外側コイル91の後端から遷移部54へ滑らかに接続するようになっている。従って、外側後端接合部96と遷移部54との間で屈曲が生じたとしても、遷移部54の端面が血管の内壁や留置したステントのストラット等と接触して、引っ掛かることが防止され、バルーンカテーテル1の血管内での通過を阻害したり、体内を損傷したりすることが防止されるようになっている。
【0049】
ガイドワイヤ70の後端部は、コネクタ60に取り付けられている。
【0050】
コネクタ60は略Y字状の部材であり、主に、本体部61、流体ポート部65、操作部67からなる。
【0051】
図5に示すように、本体部61の内部には、先端側から順に、先端固着部61a、流体室61b、後端固着部61c、後端側ガイドワイヤポート61dが同軸状に形成されている。
先端固着部61aは、アウターシャフト30及びインナーシャフト50の後端部が挿通され、アウターシャフト30の後端をコネクタ60に液密に固定する部分である。
流体室61bは、拡張ルーメン35と接続されると共に、流体ポート部65から供給されるバルーン20を拡張するための液体が流入する部分である。
【0052】
後端固着部61cは、アウターシャフト30の後端から流体室61bを通過して延びるインナーシャフト50の後端をコネクタ60に液密に固定する部分である。
後端側ガイドワイヤポート61dは、インナーシャフト50の後端からガイドワイヤ70の後端部が延出する部分である。ガイドワイヤ70の後端は、操作部67に固着されている。
【0053】
流体ポート部65は、本体部61から分岐して延びる部分であり、流体供給孔65aを有する。流体供給孔65aの一端は、流体室61bと連通し、他端には、図示しないインデフレータが接続されるようになっている。この構成によって、インデフレータからコネクタ60内部にバルーン20を拡張するための造影剤や生理食塩水等の液体が供給されると、拡張ルーメン35を介してバルーンカテーテル20が拡張されるようになっている。
【0054】
操作部67は、ガイドワイヤ70を操作するためのものである。医師等の手技者が、操作部67を本体部61に対して軸線周りに回動させたり、軸線方向に移動させたりすることにより、ガイドワイヤ70の先端コイル部90を回動させたり、軸線方向に移動させたりすることができるようになっている。
【0055】
以上の構成に基づいて、本実施の形態のバルーンカテーテル1を心臓の冠状動脈にある狭窄部を拡張する手技に用いる場合について説明する。
【0056】
治療の目的である狭窄部がある心臓の冠状動脈に、バルーンカテーテル1を挿入する。バルーンカテーテル1は、ガイドワイヤ70が一体的に収納されているため、予め血管内にガイドワイヤを挿入しておかなくても、バルーンカテーテル1を血管内に挿入していくことができる。ガイドワイヤを着脱可能に挿入できる一般的なバルーンカテーテルに比べ、バルーンカテーテルとガイドワイヤを一体化したカテーテルは、ガイドワイヤルーメンとガイドワイヤとの間の間隙を可及的に小さくできるため、バルーンカテーテルの外径の細径化が可能となる。このため、本実施の形態のバルーンカテーテル1は、比較的容易に血管内に進入させることができる。
特に、複数のバルーンカテーテルを同時に用いる、所謂、キッシングバルーンテクニックでは、本実施の形態のバルーンカテーテルは、細径化されているために、複数のカテーテルを容易に挿入できるだけでなく、ガイドワイヤが内部に収納されているため、ガイドワイヤとカテーテルが絡みつくことが効果的に防止できる。
【0057】
バルーンカテーテル1を血管内に進入させていく際、カテーテル本体10とガイドワイヤ70は一体的に進入していく。この時、屈曲する血管等をバルーンカテーテル1が通過する際でも、操作部67を手元側に引いておき、ガイドワイヤ70を後端側に位置決めしておくことにより、図6に示す様に、ガイドワイヤ70の先端コイル部90とカテーテル本体10とは、遷移部54によって接続され、ガイドワイヤ70の外側コイル91と遷移部54との間には段差が生じることが可及的に防止されて、滑らかに屈曲する。即ち、遷移部54は、樹脂からなる柔軟な構造であるため、ガイドワイヤ70の先端コイル部90側と遷移部54側との境界に外力が作用したとしても、柔軟に屈曲し、外側コイル91とカテーテル本体部10と間を滑らかに屈曲させる。
【0058】
加えて、外側コイル91の外径は、遷移部54の外径よりも僅かに大きく設定されているため、遷移部54の先端面の角部Eが血管の内壁や留置したステントのストラット等に引っ掛かることが可及的に防止できる。尚、図6では理解を容易にするために、誇張して図示している。
【0059】
また、先端コイル部90が手元側に引かれた場合には、外側コイル91の後端である外側後端接合部96はカテーテル本体10の撚り線コイル52を有する先端側インナーシャフト51側に当接することになるが、両者の間には、樹脂製の遷移部54が介在している。このため、先端コイル部90が強く手元側に引かれても先端側インナーシャフト51内の撚り線コイル52と金属同士で強く当接し合うことが無く、先端コイル部90とカテーテル本体10との可動部分で破損等が生じることを可及的に防止できる。
【0060】
更に、このように先端コイル部90とカテーテル本体10は、遷移部54を介して強く当接し合う可能性があっても、遷移部54を構成する樹脂は、先端側インナーシャフト51内の撚り線コイル52を被覆する外側樹脂層53と一体的に形成されているため、遷移部54が脱落することは可及的に防止され、安全性の高い構成となっている。
【0061】
医師等の手技者が、バルーンカテーテル1を進行させていく際に、ガイドワイヤ70の先端コイル部90を回動させたり、前後動させたりしたいとと考えた場合には、手技者は、コネクタ60の操作部67を操作する。手技者が手元側で操作部67を回動させた場合には、コアシャフト71を介して先端コイル部90、即ち、外側コイル91と内側コイル81とが同時に回転する。
このような先端コイル部90の回動や前後動は、ガイドワイヤ70の先端部分が屈曲した血管壁に当接し、バルーンカテーテル1の進行が阻害された場合や、コアシャフト71の最先端部72にシェイピングが施されて方向付けがなされている場合に、シェイピングされた方向を適切な向きに向けるため等に行われる。
【0062】
手技者が放射線透視下において、マーカ25を用いてバルーン20を目的部位である狭窄部に位置決めした後、コネクタ60の流体ポート部65に接続された図示しないインデフレータから造影剤や生理食塩水等の拡張用の液体が供給される。
この時、拡張用の液体は、コネクタ60の本体部61の流体室61bを介して、アウターシャフト30とインナーシャフト50の間に形成された拡張ルーメン35に流入し、バルーン20を拡張させる。
【0063】
バルーン20によって狭窄部を拡張する手技が終了すると、手技者は、インデフレータによって、拡張用の液体をバルーン20から排出する。即ち、拡張用の液体は、バルーン20内から拡張ルーメン35を通してインデフレータへ排出される。
このようにして手技が終了し、バルーンカテーテル1は体外に取り出される。
【0064】
以上述べたように、本実施の形態のバルーンカテーテル1は、ガイドワイヤ70を一体的に有する構造であり、先端コイル90側の外形形状とカテーテル本体10側の外形形状とを遷移部54を介して滑らかに接続した構成としている。このため、ガイドワイヤ70の先端コイル部90の後端部分とカテーテル本体10側の先端部分との間に段差を生じることなく、全体として柔軟且つ滑らかに屈曲する構成とすることができる。即ち、屈曲した血管内等で、カテーテル本体10の先端部である、遷移部54の端面が血管の内壁や留置したステントのストラット等に引っ掛かる等してバルーンカテーテル1の通過性を阻害することを可及的に防止できる。
【0065】
また、遷移部54は、先端側インナーシャフト51内の撚り線コイル52を被覆する外側樹脂層53と同じ樹脂で一体的に形成されているため、遷移部54が柔軟に屈曲しても脱落することを可及的に防止できる。
【0066】
以上述べた実施の形態の内側コイル80及び安全ワイヤ82は、上記した通り、コアシャフト71の復元性の向上や、コアシャフト71の先端部分が折れること等を防止する上で有利であるが、必須の構成では無い。
【0067】
以上述べた実施の形態では、先端コイル部90とカテーテル本体10の先端側インナーシャフト51の先端部分の外径を略同じとしているため、両者を接続する遷移部54は外径が一定の円筒状となっているが、何れか一方の外径が大きい場合には、外径の異なる両者を円滑に接続するために、遷移部54は外径が漸進的に変化するテーパ形状等を採用することが好ましい。
例えば、図7に示す様に、インナーシャフト150の先端部分の外径が先端コイル部90の外形よりも大きい場合には、遷移部154の外径が先端に向かって漸進的に減少するテーパ形状となる。
【0068】
以上述べた実施の形態では、カテーテル本体10側に遷移部54を設けた構成としているが、先端コイル部90側に設ける構成としても良い。また、カテーテル本体10側と先端コイル部90側の両方に設ける構成としても良い。
【0069】
以上述べた実施の形態では、ガイドワイヤ70は、カテーテル本体10に対して、軸線周りに回動する回転運動と軸線方向の前後運動が可能であるが、回転運動のみが可能な構成としても良い。その場合は、先端コイル部90とカテーテル本体10との境界の間隙を可及的に低減するために、外側コイル91の後端である外側後端接合部96と遷移部54の先端面とが接触した状態で相対回転することが好ましい。
【0070】
以上述べた実施の形態では、先端側インナーシャフト51の撚り線コイル52は、複数の素線からなる撚り線コイルによって構成されているが、1本の素線からなる単線のコイルから構成しても良い。但し、撚り線コイルは、柔軟性を維持しつつ剛性を高めることができるため、先端側インナーシャフト51の柔軟性と折れ曲がりの防止の観点からは、複数の素線からなる撚り線から構成されている方が好ましい。
また、撚り線コイル52の内側を、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエチレン系樹脂等で被覆した構成としても良い。この場合、低摩擦性の樹脂を用いることがより好ましい。
更に、以上述べた実施の形態では、インナーシャフト50を先端側インナーシャフト51と後端側インナーシャフト56の2つのシャフトから構成しているが、先端側インナーシャフト51と同様の撚り線コイルを有する1つのシャフトから構成しても良い。
【0071】
以上述べた実施の形態では、カテーテル本体10は、ガイドワイヤルーメンを構成するインナーシャフト50と拡張ルーメンを構成するアウターシャフト30とが別の部材からなり、インナーシャフト50がアウターシャフト30よりも先端側に延出した構成となっている。
しかし、カテーテル本体に1つのシャフト内にガイドワイヤルーメンと拡張ルーメンを有する複数のルーメンを有するシャフトを用いることもできる。
この場合、遷移部は、カテーテル本体を構成するシャフトの先端部の外形形状と先端コイル部の外形形状とを滑らかに接続するように構成する必要がある。この場合は、通常、カテーテル本体の方の直径が大きくなるため、図7の場合と同様に、遷移部の外径が先端に向かって漸進的に減少するテーパ形状となる。
【0072】
以上述べた実施の形態は、バルーンカテーテル1を心臓の血管の治療に用いるものであるが、下肢の血管や透析のためのシャントを拡張する手技等、各種の手技に用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 バルーンカテーテル
10 カテーテル本体
20 バルーン
30 アウターシャフト
41 先端側ガイドワイヤルーメン
42 先端側ガイドワイヤポート
46 後端側ガイドワイヤルーメン
50 インナーシャフト
54 遷移部
70 ガイドワイヤ
71 コアシャフト
81 内側コイル
90 先端コイル部
91 外側コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤが一体的に収納されたバルーンカテーテルであり、
バルーンと、前記バルーンを拡張するための流体を供給するための拡張ルーメンと、前記ガイドワイヤを収納するためのガイドワイヤルーメンとを有するカテーテル本体と、
前記ガイドワイヤルーメンに挿入されたコアシャフトと、
少なくとも1本の素線が巻回されてなり、前記カテーテル本体の先端から延出した前記コアシャフトの先端部を包囲する先端コイル部と、
前記先端コイル部の後端及び前記カテーテル本体の先端の少なくとも一方に設けられ、前記先端コイル部の外形形状と前記カテーテル本体の先端部の外形形状とを滑らかに接続する樹脂からなる遷移部と
を備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記カテーテル本体は、管状のアウターシャフトと、前記アウターシャフトの内部に挿通され、前記ガイドワイヤルーメンを構成するインナーシャフトとを有し、
前記インナーシャフトは、前記アウターシャフトよりも先端側に延出しており、
前記遷移部は、前記先端コイル部の外形形状と前記インナーシャフトの先端部の外形形状とを滑らかに接続することを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記インナーシャフトは、少なくとも1本の素線が巻回されてなるコイルと、このコイルを被覆する樹脂からなる樹脂層とを有し、
前記遷移部は、前記樹脂層と一体的に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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