説明

バンドパスフィルタ、受信システム及び電子機器

【課題】回路規模を増大させることなく、イメージ信号を適切に除去すること。
【解決手段】非遮断域として、規定搬送波周波数「fRF」とイメージ周波数「fIM」との差の2倍以上の周波数帯域を有し、規定搬送波周波数「fRF」から変位した周波数であって、イメージ周波数「fIM」が非遮断域外となる周波数に中心周波数「fC」を有するバンドパスフィルタによって、受信信号に含まれるイメージ周波数「fIM」の雑音(イメージ信号)を減衰・除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドパスフィルタ、受信システム及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
信号受信を行う場合の大きな課題の1つとして、イメージ信号の除去の問題がある。例えば、スーパーヘテロダイン方式によって信号受信を行う受信システムでは、搬送波信号に局部発振信号を乗算することで、搬送波信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバージョンする手法が採られている。
【0003】
しかし、この場合、局部発振信号の周波数を中心として搬送波信号の周波数と対称の周波数(いわゆるイメージ周波数)に雑音が存在すると、これがイメージ信号となって同じ周波数にダウンコンバージョンされてしまい、信号劣化の大きな要因となる。
【0004】
この問題を解決するための技術として、例えば特許文献1には、イメージリジェクションミキサを用いてイメージ信号を除去する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−142947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、イメージリジェクションミキサを用いてイメージ信号を除去する場合は、特許文献1にも開示されているように、搬送波信号をIQ分離して中間周波数にダウンコンバージョンするために2個のミキサが必要となる上、IQ分離するための局部発振信号の移相器や、IQ分離後の2系統分の信号系統が必要となるため、回路規模が増大してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、回路規模を増大させることなく、イメージ信号を適切に除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための第1の発明は、アンテナ部で受信された受信信号から規定搬送波周波数の搬送波信号を濾波するバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタにより濾波された搬送波信号に所定の局部発振周波数の信号を乗算することで所定周波数にダウンコンバージョンするミキサとを備えた受信回路を構成する前記バンドパスフィルタであって、非遮断域として、前記規定搬送波周波数と前記局部発振周波数に対する前記搬送波信号のイメージ周波数との差の2倍以上の周波数帯域を有し、前記規定搬送波周波数から変位した周波数であって前記イメージ周波数が非遮断域外となる周波数に中心周波数を有してなるバンドパスフィルタである。
【0008】
また、第3の発明として、アンテナ部で受信された受信信号から規定搬送波周波数の搬送波信号を濾波するバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタにより濾波された搬送波信号に所定の局部発振周波数の信号を乗算することで所定周波数にダウンコンバージョンするミキサと、を備え、前記バンドパスフィルタが、非遮断域として、前記規定搬送波周波数と前記局部発振周波数に対する前記搬送波信号のイメージ周波数との差の2倍以上の周波数帯域を有し、前記規定搬送波周波数から変位した周波数であって前記イメージ周波数が非遮断域外となる周波数に中心周波数を有してなる受信システムを構成してもよい。
【0009】
この第1の発明等によれば、バンドパスフィルタは、非遮断域として、規定搬送波周波数と局部発振周波数に対する搬送波信号のイメージ周波数との差の2倍以上の周波数帯域を有しているが、イメージ周波数が非遮断域外となる周波数に中心周波数を有しているため、イメージ周波数の雑音(イメージ信号)は、当該バンドパスフィルタによって減衰・除去されることになる。また、本発明のバンドパスフィルタを設けるだけでイメージ信号を除去することができるため、IQ分離用の移相器等の回路構成は不要であり、回路規模が増大することもない。
【0010】
第2の発明は、第1の発明のバンドパスフィルタにおける前記搬送波信号は直接スペクトラム拡散方式の信号であり、前記搬送波信号の信号帯域が非遮断域内となる周波数に中心周波数が定められてなるバンドパスフィルタである。
【0011】
また、第4の発明として、第3の発明の受信システムにおける前記搬送波信号は直接スペクトラム拡散方式の信号であり、前記バンドパスフィルタは、前記搬送波信号の信号帯域が非遮断域内となる周波数に中心周波数が定められてなる受信システムを構成してもよい。
【0012】
この第2の発明等によれば、バンドパスフィルタは、搬送波信号の信号帯域が非遮断域内となる周波数に中心周波数を有しているため、搬送波信号の信号帯域の一部が遮断されることにより搬送波信号に重畳されている情報の一部が失われることが防止される。
【0013】
また、第5の発明として、第4の発明の受信システムにおける前記搬送波信号はGPS衛星信号であり、前記バンドパスフィルタはSAWフィルタでなる受信システムを構成してもよいし、さらには、第6の発明として、第3〜第5の何れかの発明の受信システムを備えた電子機器を構成してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。本実施形態では、アンテナ部で受信された受信信号から、規定された搬送波周波数(以下、「規定搬送波周波数」と称す。)の搬送波信号を濾波するバンドパスフィルタ(BP:Band Pass Filter)を用いてイメージ信号を除去する場合について説明する。
【0015】
1.原理
図1は、本実施形態におけるイメージ信号除去の原理を説明するための図である。図1では、横軸を周波数とし、搬送波信号(RF)、局部発振信号(LO)及びイメージ信号(IM)の各信号のスペクトルと、バンドパスフィルタの周波数帯域との関係を模式的に示している。尚、説明の簡明化のため、バンドパスフィルタは理想的な周波数特性を有しているものとして図示・説明する。
【0016】
今、規定搬送波周波数を「fRF」とし、搬送波信号をダウンコンバージョンするための局部発振信号の周波数(以下、「局部発振周波数」と称す。)を「fLO」とする。この場合、搬送波信号に局部発振信号を乗算することで、搬送波信号は周波数「fIF=fRF−fLO」のIF信号にダウンコンバージョンされる。すなわち、IF信号の周波数は、規定搬送波周波数と局部発振周波数との差で表される。但し、ここでは、局部発振周波数が規定搬送波周波数よりも低い場合(fLO<fRF)を想定している。
【0017】
しかし、局部発振周波数「fLO」よりも低い周波数「fIM=2fLO−fRF」(以下、「イメージ周波数」と称す。)に雑音が存在すると、当該雑音がイメージ信号となり、局部発振信号と乗算されることで、同じ周波数「fIF=fLO−fIM=fRF−fLO」にダウンコンバージョンされてしまう。これにより、搬送波信号のSN比が劣化する。
【0018】
そこで、本実施形態では、特異な周波数特性を有するバンドパスフィルタを用いてイメージ信号を除去する。具体的には、非遮断域として、規定搬送波周波数とイメージ周波数との差の2倍以上の周波数帯域を有し、規定搬送波周波数から変位した周波数であって、イメージ周波数が非遮断域外となる周波数に中心周波数を有するバンドパスフィルタを用いて、イメージ信号を除去する。
【0019】
例えば図1では、非遮断域の一端の周波数(以下、「一端周波数」と称す。)「fE」がイメージ周波数「fIM」と局部発振周波数「fLO」との間の周波数となるように、規定搬送波周波数「fRF」よりも高い周波数に中心周波数「fC」を有するバンドパスフィルタを示している。この場合、イメージ周波数「fIM」がバンドパスフィルタの遮断域内となるため、イメージ周波数の雑音(イメージ信号)は、バンドパスフィルタによって減衰・除去されることになる。
【0020】
ここまで、局部発振周波数「fLO」が規定搬送波周波数「fRF」よりも低い場合(fLO<fRF)について説明したが、局部発振周波数が規定搬送波周波数よりも高い場合(fRF<fLO)についても同様である。この場合は、例えば図2に示すように、非遮断域の一端周波数「fE」が局部発振周波数「fLO」とイメージ周波数「fIM」との間の周波数となるように、規定搬送波周波数「fRF」よりも低い周波数に中心周波数「fC」を有するバンドパスフィルタを用いることにすればよい。
【0021】
また、実際のバンドパスフィルタでは、通過周波数帯域が理想的な矩形となることはない。従って、上述した非遮断域の一端周波数「fE」は、実験等によって適宜設計変更して定められることとなる。尚、非遮断域の一端周波数は、例えばカットオフ周波数「fCUT」としてバンドパスフィルタを設計しても良いし、いわゆる遷移域(通過域と遮断域間の一定の減衰がえられるまでの周波数範囲)と遮断域の境界の周波数としてもよい。但し、イメージ周波数が遮断域内に位置するようにバンドパスフィルタのフィルタ特性を設計する必要がある。
【0022】
仮に、一端周波数「fE」をカットオフ周波数「fCUT」とした場合(fE=fCUT)には、次の点に留意する必要がある。すなわち、搬送波信号が直接スペクトラム拡散方式等によって広い帯域幅を有していると、搬送波信号の一部が遮断域に含まれてしまう(非遮断域に含まれない)場合がある。そこで、一端周波数「fE」を設計するに際しては、カットオフ周波数「fCUT」と中心周波数「fC」間の領域(図3のハッチングで示した領域:通過域)に定め、バンドパスフィルタのフィルタ特性を設計することが望ましい。
【0023】
2.実施例
次に、受信システムを備えた電子機器の一例として、ナビゲーション機能を有する携帯型電話機に本発明を適用した場合の実施例について説明する。但し、本発明を適用可能な実施例がこれに限定されるものではない。
【0024】
2−1.構成・動作
図4は、本実施例における携帯型電話機1の機能構成を示すブロック図である。携帯型電話機1は、GPS(Global Positioning System)アンテナ10と、RF(Radio Frequency)受信回路部20と、ベースバンド処理回路部30と、ホストCPU(Central Processing Unit)40と、操作部50と、表示部60と、携帯電話用アンテナ70と、携帯電話用無線通信回路部80と、ROM(Read Only Memory)90と、RAM(Random Access Memory)100とを備えて構成される。尚、RF受信回路部20と、ベースバンド処理回路部30とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、1チップとして製造することも可能である。
【0025】
GPSアンテナ10は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF信号を受信するアンテナであり、受信した信号をRF受信回路部20に出力する。尚、GPS衛星信号は、C/A(Coarse and Acquisition)コードと呼ばれるスペクトラム拡散変調された信号であり、1575.42[MHz]を規定搬送波周波数とするL1帯の搬送波に重畳されている。
【0026】
RF受信回路部20は、高周波信号(RF信号)の回路ブロックであり、LNA(Low Noise Amplifier)201と、SAW(Surface Acoustic Wave)フィルタ202と、局部発振信号生成部203と、ミキサ204と、増幅部205と、A/D(Analog Digital)変換部206とを備えて構成される。RF受信回路部20は、入力段にバンドパスフィルタとしてのSAWフィルタ202を備え、いわゆるスーパーへテロダイン方式によって信号受信を行う受信システムである。
【0027】
LNA201は、GPSアンテナ10から出力された信号を増幅するローノイズアンプであり、増幅した信号をSAWフィルタ202に出力する。
【0028】
SAWフィルタ202は、LNA201で増幅された信号から所定の周波数帯域成分を通過させるバンドパスフィルタであり、通過させた信号をミキサ204に出力する。
【0029】
局部発振信号生成部203は、LO(Local Oscillator)等の発振器で構成されるRF信号乗算用の局部発振信号を生成する回路部であり、生成した局部発振信号をミキサ204に出力する。
【0030】
ミキサ204は、SAWフィルタ202を通過した信号に、局部発振信号生成部203で生成された局部発振信号を乗算する乗算器であり、RF信号をIF信号にダウンコンバージョンした後、増幅部205に出力する。
【0031】
増幅部205は、ミキサ204から出力された信号を所定の増幅率で増幅する増幅器であり、増幅した信号をA/D変換部206に出力する。
【0032】
A/D変換部206は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器であり、増幅部205で増幅された信号をデジタル信号に変換した後、ベースバンド処理回路部30に出力する。
【0033】
図5は、本実施例におけるSAWフィルタ202の周波数特性の一例を示す図である。本実施例では、局部発振信号生成部203が1571.42[MHz]の局部発振信号を生成し、1575.42[MHz](以下、「GPS周波数」と称す。)のGPS衛星信号を、4[MHz]のIF信号にダウンコンバージョンする。従って、イメージ周波数は、局部発振周波数である1571.42[MHz]よりも4[MHz]低い1567.42[MHz]となる。また、本実施例におけるSAWフィルタ202は、非遮断域幅として60[MHz](中心周波数から前後に30[MHz])の帯域を有する。
【0034】
そして、本実施例においては、SAWフィルタ202の中心周波数が、GPS周波数1575.42[MHz]よりも24[MHz]高い1599.42[MHz]に定められている。SAWフィルタ202の非遮断域の一端周波数は1569.42[MHz]であるため、イメージ周波数1567.42[MHz]はSAWフィルタ202の遮断域に含まれ、イメージ信号はSAWフィルタ202によって減衰・除去される。
【0035】
また、一端周波数に関して、以下の点も考慮に入れてSAWフィルタ202が設計されている。すなわち、GPS衛星信号は、直接スペクトラム拡散方式によって、GPS周波数を中心としておよそ2[MHz]の帯域幅を有している。従って、当該帯域幅に含まれる周波数をSAWフィルタ202でカットしてしまうと、GPS衛星信号に重畳されている情報の一部が失われ、測位精度が低下するおそれがある。従って、一端周波数が、GPS衛星信号の信号帯域が非遮断域内となる周波数となるように、SAWフィルタが設計されている。
【0036】
具体的には、SAWフィルタ202は、図6に示すように、イメージ周波数である1567.42[MHz]よりも高く、且つ、GPS衛星信号の信号帯域の境界である1574.42[MHz]よりも低い周波数に一端周波数を有するSAWフィルタである必要がある。本実施例のSAWフィルタ202の一端周波数は、1569.42[MHz]である。
【0037】
また、SAWフィルタ202は、LNA201とミキサ204との段間に設けられているが、これには次のような理由がある。LNA201は、一般に非線形な入出力特性を有しているため、全周波数帯に一律な増幅が得られず、出力信号は入力信号に対して歪んだ信号となり、入力信号の周波数以外の周波数成分に雑音成分が生じることとなる。従って、LNA201の前段にSAWフィルタ202を設けてイメージ周波数をカットしたとしても、受信信号がLNA201を通過することで、イメージ周波数の雑音が増幅される可能性がある。かかる事態を防止するため、本実施例では、LNA201で増幅された後の信号をSAWフィルタ202に通過させることで、イメージ信号を完全に除去するようにしている。
【0038】
ベースバンド処理回路部30は、RF受信回路部20から出力されたIF信号に対して相関処理等を行ってGPS衛星信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや時刻情報等を取り出して測位演算を行う回路部である。ベースバンド処理回路部30は、プロセッサとしてのCPUと、メモリとしてのROM及びRAMとを備えて構成される。
【0039】
ホストCPU40は、ROM90に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御するプロセッサである。
【0040】
操作部50は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、押下されたキーやボタンの信号をホストCPU40に出力する。この操作部50の操作により、通話要求やメールの送受信要求等の各種指示入力がなされる。
【0041】
表示部60は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホストCPU40から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部60には、ナビゲーション画面や時刻情報等が表示される。
【0042】
携帯電話用アンテナ70は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地局との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
【0043】
携帯電話用無線通信回路部80は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで、通話やメールの送受信等を実現する。
【0044】
携帯電話用無線信号を受信する場合もイメージ信号が発生するという問題があるため、携帯電話用無線通信回路部80の入力段にもSAWフィルタ802を設けることが望ましい。具体的には、携帯電話用無線信号の周波数は、通信方式にもよるが、0.8,1.7,2.0[GHz]等である。この携帯電話用無線信号の周波数と局部発振周波数とによって求まるイメージ信号の周波数や、フィルタの非遮断域の帯域等を考慮して、上述のSAWフィルタ202と同様の設計手法によって設計されるSAWフィルタを、SAWフィルタ802とする必要がある。
【0045】
また、携帯電話用無線信号は直接スペクトラム拡散方式により、およそ5[MHz]の帯域幅を有している。従って、SAWフィルタ802は、携帯電話用無線信号の周波数から前後2.5[MHz]の信号帯域が非遮断域内となるように、一端周波数が設計されたSAWフィルタである必要がある。
【0046】
ROM90は、ホストCPU40が携帯型電話機1を制御するためのシステムプログラムや、ナビゲーション機能を実現するための各種プログラムやデータ等を記憶している。
【0047】
RAM100は、ホストCPU40により実行されるシステムプログラム、各種処理プログラム、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを形成している。
【0048】
2−2.作用効果
携帯型電話機1のRF受信回路部20の入力段に、SAWフィルタ202が設けられている。SAWフィルタ202は、GPS周波数と局部発振周波数に対するGPS衛星信号のイメージ周波数との差の2倍以上の周波数帯域を有しているが、イメージ周波数が非遮断域外となる周波数特性を有しているため、イメージ周波数の雑音(イメージ信号)は、SAWフィルタ202によって減衰・除去されることになる。また、SAWフィルタ202を設けるだけでイメージ信号を除去することができるため、IQ分離用の移相器等の回路構成は不要であり、回路規模が増大することもない。
【0049】
さらに、SAWフィルタ202は、GPS衛星信号の信号帯域が非遮断域内となる周波数に中心周波数を有しているため、GPS衛星信号の信号帯域の一部が遮断されることでGPS衛星信号に重畳されている情報の一部が失われ、測位精度が低下することが防止される。
【0050】
3.変形例
3−1.電子機器
本発明は、受信システムとしてのRF受信回路部を備えた電子機器であれば何れの電子機器にも適用可能である。例えば、無線通信機能を備えたノート型パソコンやPDA(Personal Digital Assistant)、カーナビゲーション装置等についても同様に適用可能である。
【0051】
3−2.衛星測位システム
上述した実施例では、衛星測位システムとしてGPSを例に挙げて説明したが、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の他の衛星測位システムであってもよい。
【0052】
3−3.バンドパスフィルタの種類
上述した実施例では、SAWフィルタを用いてイメージ信号を除去するものとして説明したが、SAWフィルタの代わりに、例えば誘電体フィルタといった他のバンドパスフィルタを用いてイメージ信号を除去することにしてもよい。
【0053】
3−4.バンドパスフィルタの段数
また、RF受信回路部のSAWフィルタをイメージ信号除去用の1段とするのではなく、段数を2段以上とし、イメージ信号除去用のSAWフィルタでは除去しきれない不要波を減衰・除去することにしてもよい。
【0054】
図7は、この場合における携帯型電話機2の機能構成を示すブロック図である。尚、携帯型電話機1と同一の構成要素については同一の符号を付して、説明を省略する。携帯型電話機2は、RF受信回路部20の代わりにRF受信回路部22を備えており、RF受信回路部22は、第1SAWフィルタ221と、LNA201と、第2SAWフィルタ222(202)と、局部発振信号生成部203と、ミキサ204と、増幅部205と、A/D変換部206とを備えて構成されている。
【0055】
第1SAWフィルタ221の中心周波数はGPS周波数と一致しており、GPSアンテナ10から出力された信号のうち、GPS周波数から前後30[MHz]の帯域外の周波数の不要波を減衰・除去させる。第1SAWフィルタ221の非遮断域にはイメージ周波数が含まれており、第1SAWフィルタ221を通過した段階では、イメージ信号が除去されずに残存している。
【0056】
第2SAWフィルタ222は、GPS周波数から変位した周波数であってイメージ周波数が非遮断域外となる周波数に中心周波数を有してなるフィルタであり、RF受信回路部20のSAWフィルタ202に相当するものである。すなわち、第2SAWフィルタ222は、イメージ信号除去用のフィルタである。
【0057】
第2SAWフィルタ222の中心周波数はGPS周波数と一致していないため、第2SAWフィルタ222を用いただけでは、イメージ信号を除去することはできても、他の不要波を除去しきれない可能性がある。しかし、LNA201の前段に第1SAWフィルタ221を設けることで、イメージ信号除去用のSAWフィルタ(第2SAWフィルタ222)では除去しきれない不要波を適切に除去することが可能となる。
【0058】
3−5.ダイレクトコンバージョン方式
上述した実施例では、RF受信回路部20はスーパーへテロダイン方式によって信号受信を行うものとして説明したが、ダイレクトコンバージョン方式によって信号受信を行うことにしてもよい。
【0059】
図8は、この場合における携帯型電話機3の機能構成を示すブロック図である。尚、携帯型電話機1と同一の構成要素については同一の符号を付して、説明を省略する。携帯型電話機3では、RF受信回路部20の代わりに、ダイレクトコンバージョン方式で信号受信を行うRF受信回路部24が設けられている。
【0060】
RF受信回路部24は、LNA201と、SAWフィルタ202と、局部発振信号生成部203と、第1ミキサ241と、第1増幅部242と、第1A/D変換部243と、移相部244と、第2ミキサ245と、第2増幅部246と、第2A/D変換部247とを備えて構成される。
【0061】
局部発振信号生成部203は、RF信号を直接ベースバンド信号に変換するための局部発振信号を生成する。また、移相部244は、局部発振信号生成部203により生成された局部発振信号を90度移相する移相器である。第1ミキサ241及び第2ミキサ245において、位相が90度異なる局部発振信号がRF信号に乗算されることで、RF信号はIQ分離されるとともにベースバンド信号に変換される。
【0062】
尚、ダイレクトコンバージョン方式で信号受信を行う場合についても、「3−4.バンドパスフィルタの段数」で説明したように、LNA201の前段で不要波を除去することにしてもよい。すなわち、図9に示す携帯型電話機4のように、LNA201の前段に第1SAWフィルタ221を設け、LNA201の後段に第2SAWフィルタ222(202)を設けたRF受信回路部26を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】イメージ信号除去の原理の説明図。
【図2】イメージ信号除去の原理の説明図。
【図3】バンドパスフィルタの一端周波数の選択方法の説明図。
【図4】携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。
【図5】SAWフィルタの通過帯域の一例を示す図。
【図6】SAWフィルタの通過帯域の一例を示す図。
【図7】変形例における携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。
【図8】変形例における携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。
【図9】変形例における携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0064】
1 携帯型電話機 、 10 GPSアンテナ、 20 RF受信回路部、 30 ベースバンド処理回路部、 40 ホストCPU、 50 操作部、 60 表示部、 70 携帯電話用アンテナ、 80 携帯電話用無線通信回路部、 90 ROM、 100 RAM、 201 LNA、 202 SAWフィルタ、 203 局部発振信号生成部、 204 ミキサ、 205 増幅部、 206 A/D変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ部で受信された受信信号から規定搬送波周波数の搬送波信号を濾波するバンドパスフィルタと、前記バンドパスフィルタにより濾波された搬送波信号に所定の局部発振周波数の信号を乗算することで所定周波数にダウンコンバージョンするミキサとを備えた受信回路を構成する前記バンドパスフィルタであって、
非遮断域として、前記規定搬送波周波数と前記局部発振周波数に対する前記搬送波信号のイメージ周波数との差の2倍以上の周波数帯域を有し、前記規定搬送波周波数から変位した周波数であって前記イメージ周波数が非遮断域外となる周波数に中心周波数を有してなるバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記搬送波信号は直接スペクトラム拡散方式の信号であり、
前記搬送波信号の信号帯域が非遮断域内となる周波数に中心周波数が定められてなる請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
アンテナ部で受信された受信信号から規定搬送波周波数の搬送波信号を濾波するバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタにより濾波された搬送波信号に所定の局部発振周波数の信号を乗算することで所定周波数にダウンコンバージョンするミキサと、
を備え、
前記バンドパスフィルタが、非遮断域として、前記規定搬送波周波数と前記局部発振周波数に対する前記搬送波信号のイメージ周波数との差の2倍以上の周波数帯域を有し、前記規定搬送波周波数から変位した周波数であって前記イメージ周波数が非遮断域外となる周波数に中心周波数を有してなる受信システム。
【請求項4】
前記搬送波信号は直接スペクトラム拡散方式の信号であり、
前記バンドパスフィルタは、前記搬送波信号の信号帯域が非遮断域内となる周波数に中心周波数が定められてなる、
請求項3に記載の受信システム。
【請求項5】
前記搬送波信号はGPS(Global Positioning System)衛星信号であり、
前記バンドパスフィルタはSAW(Surface Acoustic Wave)フィルタでなる、
請求項4に記載の受信システム。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか一項に記載の受信システムを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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