バンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器
【課題】非常に広い2つの通過帯域近傍の阻止域における充分な減衰量を有するとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性を得ることができるバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器を提供する。
【解決手段】積層体に配置された第1,第2の接地電極と、単一共振電極30a,30b,30c,30dおよび複合共振電極29a,29bと、入力段の単一共振電極30aに対向する第1の入力結合電極40aおよびそれに接続されて入力段の複合共振電極29aに対向する第2の入力結合電極41aと、出力段の単一共振電極30bに対向する第1の出力結合電極40bおよびそれに接続されて出力段の複合共振電極29bに対向する第2の出力結合電極41bと、単一共振電極30aと30dとを結合させる単一共振電極結合導体71とを備えるバンドパスフィルタである。
【解決手段】積層体に配置された第1,第2の接地電極と、単一共振電極30a,30b,30c,30dおよび複合共振電極29a,29bと、入力段の単一共振電極30aに対向する第1の入力結合電極40aおよびそれに接続されて入力段の複合共振電極29aに対向する第2の入力結合電極41aと、出力段の単一共振電極30bに対向する第1の出力結合電極40bおよびそれに接続されて出力段の複合共振電極29bに対向する第2の出力結合電極41bと、単一共振電極30aと30dとを結合させる単一共振電極結合導体71とを備えるバンドパスフィルタである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器に関するものであり、特にUWB(Ultra Wide Band)に好適に使用可能な非常に広い2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい通信手段としてUWBが着目されている。UWBは10m程度の短い距離において広い周波数帯域を使用して大容量のデータ転送を実現するものである。
【0003】
このようなUWBに使用可能な超広帯域のフィルタに関する研究は近年盛んに行なわれており、例えば、方向性結合器の原理を応用したバンドパスフィルタによって、通過帯域幅が比帯域(帯域幅/中心周波数)で100%を超える広帯域な特性が得られたとの報告がある(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
一方、従来よく使用されるフィルタとして、複数の1/4波長ストリップライン共振器を併設して相互に結合させて構成したバンドパスフィルタが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【非特許文献1】「マイクロストリップ−CPWブロードサイド結合構造を用いた超広帯域バンドパスフィルタ」2005年3月電子情報通信学会総合大会講演論文集 C-2-114 p.147
【特許文献1】特開2004−180032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1および特許文献1にて提案されたバンドパスフィルタはそれぞれ問題点を有しており、特にUWB用のバンドパスフィルタには適さないものであった。
【0006】
例えば、非特許文献1にて提案されたバンドパスフィルタは通過帯域幅が広すぎるという問題があった。すなわち、UWBは基本的には3.1GHz〜10.6GHzの周波数帯域を使用するが、国際電気通信連合無線通信部門では、IEEE802.11.aで使用する5.3GHzを避ける形で3.1〜4.7GHz程度の帯域を使用するLow Band(ローバンド)と6GHz〜10.6GHz程度の帯域を使用するHigh Band(ハイバンド)とに分割した企画が立案されている。よって、UWBのLow BandおよびHigh Bandに使用されるフィルタには、それぞれ比帯域で40%〜50%程度の通過帯域幅と5.3GHzにおける減衰が同時に要求されるため、通過帯域幅が比帯域で100%を超えるような特性を有する非特許文献1にて提案されたバンドパスフィルタは通過帯域幅が広すぎて使えないものであった。
【0007】
また、従来の1/4波長共振器を使用したバンドパスフィルタの通過帯域幅は狭すぎ、広帯域化を図った特許文献1に記載のバンドパスフィルタの通過帯域幅であっても比帯域で10%にも満たないものであった。よって、比帯域で40%〜50%に相当する広い通過帯域幅を要求されるUWB用のバンドパスフィルタとして使えるものではなかった。
【0008】
そこで、本願の発明者は特願2007-222976において、UWBのLow Band用フィルタおよびHigh Band用フィルタを1つのフィルタでまかなうことが可能な、非常に広い2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタを提案したが、さらに薄型化するとLow Band用の通過帯域を形成する共振器とHigh Band用の通過帯域を形成する共振器との間の電磁気的な結合が強くなり過ぎて良好なフィルタ特性を得るのが困難になる場合があるという問題を有していた。また、フィルタの通過特性において、通過帯域近傍の阻止域における減衰量に改善の余地があった。
【0009】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、非常に広い2つの通過帯域近傍の阻止域における充分な減衰量を有するとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性を得ることができるバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバンドパスフィルタは、複数の誘電体層が積層されてなる積層体と、該積層体の下面に配置された第1の接地電極および上面に配置された第2の接地電極と、前記積層体の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合する帯状の4個以上の単一共振電極と、一方端が接地される基部および該基部の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに配置された帯状の複数の突起部によって前記基部の前記一方端が一方端となり前記突起部の他方端が他方端となるように構成され、前記一方端が接地されることによって、前記基部および前記突起部を合わせた全体が前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する共振器として機能するとともに、前記突起部が前記第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する共振器として機能する、前記積層体の第1の層間とは異なる第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された複数の複合共振電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち入力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が入力される電気信号入力点を有する帯状の第1の入力結合電極と、前記積層体の前記第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち出力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が出力される電気信号出力点を有する帯状の第1の出力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち入力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの入力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の入力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち出力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの出力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の出力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間を間に挟んで前記第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の前記単一共振電極からなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極の前記一方端の近傍で一方端が接地され、前記単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極の前記一方端の近傍で他方端が接地されており、前記最前段の単一共振電極および前記最後段の単一共振電極の前記一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体とを備え、前記単一共振電極と前記複合共振電極における前記突起部とは前記積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されており、前記第2の入力結合電極は前記第1の入力結合電極の前記入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号入力点から遠い側に接続されて前記第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるとともに、前記第2の出力結合電極は前記第1の出力結合電極の前記出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号出力点から遠い側に接続されて前記第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記構成において、前記単一共振電極結合導体は、前記最前段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の前段側結合領域と、前記最後段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の後段側結合領域と、前記前段側結合領域および前記後段側結合領域をこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域とから構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記入力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されており、前記第2の出力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記出力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
またさらに、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の入力結合電極と一体化しており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の出力結合電極と一体化していることを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して前記第1の入力結合電極に接続されており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して前記第1の出力結合電極に接続されていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の無線通信モジュールは、上記各構成のいずれかの本発明のバンドパスフィルタを備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の無線通信機器は、上記各構成のいずれかの本発明のバンドパスフィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部と、前記RF部に接続されたアンテナとを備えることを特徴とするものである。
【0017】
なお、第1の入力結合電極の電気信号入力点は第1の入力結合電極に対して電気信号が入力されるところであり、第1の出力結合電極の電気信号出力点は第1の出力結合電極から電気信号が出力されるところである。また、第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側とは、入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央を境界にして第1の入力結合電極を長さ方向に2つの領域に分けたときに、電気信号入力点を含まない側の領域のことを意味する。同様に、第1の出力結合電極の出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点から遠い側とは、出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央を境界にして第1の出力結合電極を長さ方向に2つの領域に分けたときに、電気信号出力点を含まない側の領域のことを意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバンドパスフィルタによれば、複数の単一共振電極と複数の複合共振電極における複数の突起部とは積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されていることから、積層体の厚みが薄くて複数の単一共振電極と複数の複合共振電極とが近接する場合においても、複数の単一共振電極と複数の複合共振電極における複数の突起部との間に生じる電磁界結合を最小限にすることができるので、複数の単一共振電極と複数の複合共振電極との間の電磁界結合が強くなりすぎることによる通過帯域における通過特性の悪化を防止することができる。
【0019】
ここで、比帯域で10%を超える非常に広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失な通過特性を得るためには、入力段の共振電極と入力結合電極との電磁界結合および出力段の共振電極と出力結合電極との電磁界結合を非常に強いものにする必要がある。ところが、単純に、入力段の単一共振電極に対向して電磁界結合する第1の入力結合電極と入力段の複合共振電極における入力段の突起部に対向して電磁界結合する第2の入力結合電極とを接続し、出力段の単一共振電極に対向して電磁界結合する第1の出力結合電極と出力段の複合共振電極における出力段の突起部に対向して電磁界結合する第2の出力結合電極とを接続しただけでは、入力段の単一共振電極と第1の入力結合電極との電磁界結合および出力段の単一共振電極と第1の出力結合電極との電磁界結合が不足してしまい、複数の単一共振電極によって形成される通過帯域において良好な通過特性が全く得られないことが本願の発明者の検討によって判明した。
【0020】
そこで、本願の発明者は種々の検討を重ねた結果、第1の入力結合電極に電気信号が入力される電気信号入力点を設け、第2の入力結合電極は第1の入力結合電極に接続されて第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるようにするとともに、第2の入力結合電極が第1の入力結合電極に接続される位置を第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側にすることにより、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合を充分に強いものにすることができることを見出した。このような効果が得られる理由は、第2の入力結合電極が第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側に接続されて第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるようにすることにより、第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部を流れる電流を充分に確保できるためではないかと考えられる。
【0021】
同様に、第1の出力結合電極に電気信号が出力される電気信号出力点を設け、第2の出力結合電極は第1の出力結合電極に接続されて第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されるようにするとともに、第2の出力結合電極が第1の出力結合電極に接続される位置を第1の出力結合電極の出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点から遠い側にすることにより、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合を充分に強いものにすることができる。
【0022】
すなわち、本発明のバンドパスフィルタによれば、第1の入力結合電極は誘電体層を介して入力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合し、第1の出力結合電極は誘電体層を介して出力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、第2の入力結合電極は第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側に接続されて第1の入力結合電極を介して電気信号が入力され、第2の出力結合電極は第1の出力結合電極の出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点から遠い側に接続されて第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されることから、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合および第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合を充分に強いものにすることができるので、複数の単一共振電極により形成される広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失な優れた通過特性を有するバンドパスフィルタを得ることができる。
【0023】
また、本発明のバンドパスフィルタによれば、積層体の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の単一共振電極からなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極の一方端の近傍で一方端が接地され、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極の一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の単一共振電極および最後段の単一共振電極の一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体とを備えることから、バンドパスフィルタの通過特性において、単一共振電極によって形成される通過帯域の両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。このメカニズムは次のように考えられる。すなわち、単一共振電極結合導体によって、隣り合う4以上の偶数個の単一共振電極からなる単一共振電極群の最前段の単一共振電極と最後段の単一共振電極との間に誘導性の結合が生じる。また、隣り合う単一共振電極同士はインターデジタル型に結合しており、磁界による結合と電界による結合とが加算されて強く結合しているが、全体としては容量性の結合になっている。このため、隣り合う4以上の偶数個の単一共振電極からなる単一共振電極群の最前段の単一共振電極と最後段の単一共振電極との間で、単一共振電極結合導体を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う単一共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。この現象をバンドパスフィルタの通過帯域の両側近傍で生じさせることができるため、バンドパスフィルタの通過特性において、単一共振電極によって形成される通過帯域の両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。
【0024】
なお、単一共振電極群を構成する単一共振電極の数については、4以上の偶数個であることが上記効果を奏する上で必要である。例えば、単一共振電極群を構成する単一共振電極の数が奇数個の場合には、最前段の単一共振電極と最後段の単一共振電極との間に単一共振電極結合導体による誘導性の結合を生じさせたとしても、単一共振電極結合導体を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う単一共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象がバンドパスフィルタの通過帯域よりも高周波側でしか生じないため、バンドパスフィルタの通過特性において、通過帯域の両側近傍に減衰極を形成することはできない。また、単一共振電極群を構成する単一共振電極の数が2個の場合には、単一共振電極間を単一共振電極結合導体で接続したとしても、単一共振電極間に誘導性の結合と容量性の結合とによるLC並列共振回路が形成されるに過ぎないため、減衰極は一つしか形成されず、通過帯域の両側近傍に減衰極を形成することはできない。
【0025】
さらに、本発明のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極結合導体が、最前段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の前段側結合領域と、最後段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の後段側結合領域と、前段側結合領域および後段側結合領域をこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域とから構成されているときには、前段側結合領域と最前段の単一共振電極との磁界による結合および後段側結合領域と最後段の単一共振電極との磁界による結合を強めることができるとともに、最前段の単一共振電極および最後段の単一共振電極ならびにその間に位置する単一共振電極と接続領域との磁界による結合を最小限に抑えることができるので、接続領域を介した意図しない単一共振電極同士の電磁界結合による電気特性の悪化を最小限に抑えることができる。
【0026】
またさらに、本発明のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極は積層体の積層方向から見て入力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも一方端側と交わるように配置されており、第2の出力結合電極は、積層体の積層方向から見て出力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも一方端側と交わるように配置されているときには、第2の入力結合電極と入力段の単一共振電極との間の電界による結合を小さくするとともに、第2の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電界による結合を小さくすることができるので、第2の入力結合電極と入力段の単一共振電極との間および第2の出力結合電極と出力段の単一共振電極との間の不要な電磁界結合が大きくなることに起因するフィルタ特性の悪化を防止することができる。
【0027】
さらにまた、本発明のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極は第3の層間に配置されて第1の入力結合電極と一体化しており、第2の出力結合電極は第3の層間に配置されて第1の出力結合電極と一体化しているときには、第1の入力結合電極と第2の入力結合電極とを接続する接続導体および第1の出力結合電極と第2の出力結合電極とを接続する接続導体が不要であるため、接続導体による損失をなくすことができるとともに単純な構造を備える薄型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0028】
またさらに、本発明のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極が第3の層間よりも第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して第1の入力結合電極に接続されているときには、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との間隔および第2の入力結合電極と入力段の複合共振電極との間隔を維持したままで、入力段の単一共振電極と入力段の複合共振電極との間隔を広げることが可能になるため、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の入力結合電極と入力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることなく、入力段の単一共振電極と入力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の入力結合電極と入力段の複合共振電極との電磁界結合をさらに強めることができる。同様に、第2の出力結合電極が第3の層間よりも第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して第1の出力結合電極に接続されているときには、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との間隔および第2の出力結合電極と出力段の複合共振電極との間隔を維持したままで、出力段の単一共振電極と出力段の複合共振電極との間隔を広げることが可能になるため、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の出力結合電極と出力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることなく、出力段の単一共振電極と出力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の出力結合電極と出力段の複合共振電極との電磁界結合をさらに強めることができる。
【0029】
本発明の無線通信モジュールおよび本発明の無線通信機器によれば、通信帯域の全域に渡って通過する信号の損失が小さくかつ通過帯域近傍に形成された減衰極によって阻止域の減衰量が充分に確保された本発明のバンドパスフィルタを送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタを通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるとともにノイズも減少するため、受信感度が向上し、また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。よって受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。さらに、1つのフィルタで2つの通信帯域をカバーすることができるとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性が得られる本発明のバンドパスフィルタを用いることにより、小型で製造コストが低い無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0031】
(実施の形態の第1の例)
図1は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第1の例を模式的に示す外観斜視図である。図2は図1に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。図3は図1に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。図4は図1に示すバンドパスフィルタの例のP−P’線断面図である。
【0032】
本例のバンドパスフィルタは、図1〜図4に示すように、複数の誘電体層11が積層されてなる積層体10と、積層体10の下面に配置された第1の接地電極21および上面に配置された第2の接地電極22と、積層体10の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合する帯状の単一共振電極30a,30b,30c,30dと、一方端が接地される基部27および基部27の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに配置された帯状の突起部28a,28bによって基部27の一方端が一方端となり突起部28a,28bの他方端が他方端となるように構成され、一方端が接地されることによって、基部27および突起部28a,28bを合わせた全体が第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する共振器として機能するとともに、突起部28a,28bが第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する共振器として機能する、積層体10の第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された複合共振電極29a,29bと、を備えている。
【0033】
また、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間と第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、入力段の単一共振電極30aの長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が入力される電気信号入力点45aを有する帯状の第1の入力結合電極40aと、出力段の単一共振電極30bの長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が出力される電気信号出力点45bを有する帯状の第1の出力結合電極40bと、入力段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aと対向して電磁界結合する第2の入力結合電極41aと、出力段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bと対向して電磁界結合する第2の出力結合電極41bとを備えている。なお、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとは一体化されており、第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとは一体化されている。
【0034】
さらに、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間に単一共振電極30a,30b,30c,30dの周囲を取り囲むように環状に形成され、単一共振電極30a,30b,30c,30dの一方端が接続された、接地電位に接続される第1の環状接地電極23と、第2の層間に複合共振電極29a,29bの周囲を取り囲むように環状に形成され、複合共振電極29a,29bの一方端が接続された、接地電位に接続される第2の環状接地電極24とを備えている。
【0035】
またさらに、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4個の単一共振電極30a,30b,30c,30dからなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aの一方端の近傍で一方端が接地され、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体71と、積層体10の第2の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第5の層間に配置された、それぞれが2個の突起部28a,28bを備え、一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された隣り合う2個の複合共振電極29a,29bからなる複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端の近傍で一方端が接地され、複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する複合共振電極結合導体72とを備えている。
【0036】
そして、本例のバンドパスフィルタにおいて、単一共振電極結合導体71は、最前段の単一共振電極30aに対して平行に対向する帯状の前段側結合領域71aと、最後段の単一共振電極30bに対して平行に対向する帯状の後段側結合領域71bと、前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域71cとから構成されており、複合共振電極結合導体72は、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aに対して平行に対向する帯状の第2の前段側結合領域72aと、最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bに対して平行に対向する帯状の第2の後段側結合領域72bと、第2の前段側結合領域72aおよび第2の後段側結合領域72bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する第2の接続領域72cとから構成されている。なお、単一共振電極結合導体71の両端部は貫通導体50を介して第1の環状接地電極23にそれぞれ接続されており、複合共振電極結合導体72の両端部は貫通導体50を介して第2の環状接地電極24にそれぞれ接続されている。
【0037】
そして、本例のバンドパスフィルタにおいて、第1の入力結合電極40aは誘電体層11を貫通する貫通導体50を介して積層体10の上面に配置された入力端子電極60aに接続されており、第1の出力結合電極40bは誘電体層11を貫通する貫通導体50を介して積層体10の上面に配置された出力端子電極60bに接続されている。よって、第1の入力結合電極40aと貫通導体50との接続点が第1の入力結合電極40aにおける電気信号入力点45aになっており、第1の出力結合電極40bと貫通導体50との接続点が第1の出力結合電極40bにおける電気信号出力点45bになっている。
【0038】
このような構成を備える本例のバンドパスフィルタは、入力端子電極60aおよび貫通導体50を介して第1の入力結合電極40aに外部回路からの電気信号が入力されると、第1の入力結合電極40aと電磁界結合する入力段の単一共振電極30aが励振されることによって、相互に電磁界結合する単一共振電極30a,30b,30c,30dが共振し、出力段の単一共振電極30bと電磁界結合する第1の出力結合電極40bから貫通導体50および出力端子電極60bを介して外部回路に電気信号が出力される。このとき、単一共振電極30a,30b,30c,30dが共振する第1の周波数を含む第1周波数帯域の信号が選択的に通過するため、これによって第1の通過帯域が形成される。また、同時に、入力端子電極60a,貫通導体50および第1の入力結合電極40aを介して第2の入力結合電極41aにも外部回路からの電気信号が入力されるので、第2の入力結合電極41aと電磁界結合する入力段の複合共振電極29aが励振されることによって、相互に電磁界結合する複合共振電極29a,29bが共振し、出力段の複合共振電極29bと電磁界結合する第2の出力結合電極41bから第1の出力結合電極40b,貫通導体50および出力端子電極60bを介して外部回路に電気信号が出力される。このとき、複合共振電極29a,29bが共振する第2の周波数および第3の周波数を含む第2周波数帯域の信号が選択的に通過するため、これによって、第2の通過帯域が形成される。このようにして、本例のバンドパスフィルタは、周波数の異なる2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタとして機能する。
【0039】
本例のバンドパスフィルタにおいて、帯状の単一共振電極30a,30b,30c,30dは、電気長が第1の周波数における波長の1/4程度に設定されており、それぞれ一方端が第1の環状接地電極23に接続されて接地されることによって1/4波長共振器として機能する。また、複合共振電極29a,29bは、一方端が接地される基部27および基部27の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに間隔を開けて配置された帯状の複数の突起部28a,28bによって基部27の一方端が一方端となり突起部28a,28bの他方端が他方端となるように構成されている。そして、一方端(すなわち基部27の一方端)が接地されることによって、基本的には、基部27および突起部28a,28bを合わせた全体が第2の周波数で共振する1/4波長共振器として機能するとともに、突起部28a,28bが第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する1/4波長共振器として機能する。よって、基部27と突起部28a,28bとを合わせた複合共振電極全体の長さは、第2の周波数における波長の1/4にほぼ等しく、突起部28a,28bの長さは第3の周波数における波長の1/4にほぼ等しい。突起部28aと突起部28bの長さは基本的には等しく設定するが、他の電極との結合状態等によって長さを若干異ならせた方がよい場合もある。また、突起部の本数を3本以上にしてもよいが、小型化のためには2本にした方がよい。
【0040】
また、本例のバンドパスフィルタにおいて、単一共振電極30a,30b,30c,30dは積層体10の第1の層間にそれぞれの一方端が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合しており、複合共振電極29a,29bは積層体10の第2の層間にそれぞれの一方端が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合している。このような磁界による結合と電界による結合とが加算されたインターデジタル型の強い結合によって、通過帯域を形成するそれぞれの共振モードの共振周波数の間隔を、比帯域で10%を超える非常に広い通過帯域幅を得るのに適度なものにすることが容易になる。横並びに配置されたそれぞれの共振電極同士の間隔は小さい方が強い結合が得られるが、間隔を小さくすると製造が困難になるので、例えば、0.05〜0.5mm程度に設定される。
【0041】
さらに、本例のバンドパスフィルタにおいて、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bの形状寸法は入力段の単一共振電極30aおよび出力段の単一共振電極30bと同程度に設定されるのが好ましい。また、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bと入力段の単一共振電極30aおよび出力段の単一共振電極30bとの間隔、ならびに第2の入力結合電極41aおよび第2の出力結合電極41bと入力段の複合共振電極29aおよび出力段の複合共振電極29bとの間隔については、小さくすると結合は強くなるが製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
【0042】
さらに、本例のバンドパスフィルタにおいて、第2の入力結合電極41aは帯状であり、入力段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aに沿って対向するように配置されており、第1の入力結合電極40aと交わるように第1の入力結合電極40aと一体化している。よって、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとが交わる部分は第1の入力結合電極40aとして機能するとともに第2の入力結合電極41aとしても機能する。また、第2の出力結合電極41bは帯状であり、出力段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bに沿って対向するように配置されており、第1の出力結合電極40bと交わるように第1の出力結合電極40bと一体化している。よって、第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとが交わる部分は第1の出力結合電極40bとして機能するとともに第2の出力結合電極41bとしても機能する。なお、第2の入力結合電極41a及び第2の出力結合電極41bの長さは必要な結合量に応じて適宜設定される。
【0043】
本例のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bにおける突起部28a,28bとは積層体10の積層方向から見て互いに直交するように配置されていることから、積層体10の厚みが薄くて単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bとが近接する場合においても、単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bにおける突起部28a,28bとの間に生じる電磁界結合を最小限にすることができるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bとの間の電磁界結合が強くなりすぎることによる通過帯域における通過特性の悪化を防止することができる。
【0044】
また、本例のバンドパスフィルタによれば、第1の入力結合電極40aは誘電体層11を介して入力段の単一共振電極30aの長さ方向の全体に渡る領域と対向して電磁界結合し、第1の出力結合電極40bは誘電体層11を介して出力段の単一共振電極30bの長さ方向の全体に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、第2の入力結合電極41aは第1の入力結合電極40aの入力段の単一共振電極30aとの対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点45aから遠い側に接続されて第1の入力結合電極40aを介して電気信号が入力され、第2の出力結合電極41bは第1の出力結合電極40bの出力段の単一共振電極30bとの対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点45bから遠い側に接続されて第1の出力結合電極40bを介して電気信号が出力されることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合を充分に強いものにすることができるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dにより形成される広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失な優れた通過特性を有するバンドパスフィルタを得ることができる。
【0045】
さらに、本例のバンドパスフィルタによれば、電気信号入力点45aは第1の入力結合電極40aの入力段の単一共振電極30aとの対向部における長さ方向の端部に位置しており、電気信号出力点45bは第1の出力結合電極40bの出力段の単一共振電極30bとの対向部における長さ方向の端部に位置していることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合をさらに強いものにすることができる。
【0046】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、電気信号入力点45aは第1の入力結合電極40aの入力段の単一共振電極30aとの対向部における長さ方向の中央よりも入力段の単一共振電極30aの一方端(接地端)から遠い側に位置しており、電気信号出力点45bは第1の出力結合電極40bの出力段の単一共振電極30bとの対向部における長さ方向の中央よりも出力段の単一共振電極30bの一方端(接地端)から遠い側に位置していることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとがインターデジタル型に電磁界結合し、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとがインターデジタル型に電磁界結合するので、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合をさらに強いものにすることができる。
【0047】
さらにまた、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aは入力段の単一共振電極30aの長さ方向の中央よりも一方端(接地端)側と対向するように配置されており、第2の出力結合電極41bは出力段の単一共振電極30bの長さ方向の中央よりも一方端(接地端)側と対向するように配置されているので、第2の入力結合電極41aと入力段の単一共振電極30aとの間の電界による結合を小さくするとともに、第2の出力結合電極41bと出力段の単一共振電極30bとの電界による結合を小さくすることができるので、第2の入力結合電極41aと入力段の単一共振電極30aとの間および第2の出力結合電極41bと出力段の単一共振電極30bとの間の不要な電磁界結合が大きくなることに起因するフィルタ特性の悪化を防止することができる。
【0048】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aは第3の層間に配置されて第1の入力結合電極40aと一体化しており、第2の出力結合電極41bは第3の層間に配置されて第1の出力結合電極40bと一体化しているので、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとを接続する接続導体および第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとを接続する接続導体が不要であるため、接続導体による損失をなくすことができるとともに単純な構造を備える薄型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0049】
さらにまた、本例のバンドパスフィルタによれば、入力段の単一共振電極30aの一方端と出力段の単一共振電極30bの一方端とが互い違いになるように配置されているとともに、入力段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端と出力段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端とが互い違いになるように配置されていることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合が充分に強く、且つ対称性を有する構造および回路構成を備えたバンドパスフィルタを得ることができる。
【0050】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、複合共振電極29a,29bを用いて第2の通過帯域を形成していることから、複合共振電極29a,29bの長さおよび突起部28a,28bの長さに応じて第2の周波数および第3の周波数が決定されるので、第2の通過帯域の帯域幅を高い自由度で容易に設定することが可能なバンドパスフィルタを得ることができる。
【0051】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、積層体10の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4個の単一共振電極30a,30b,30c,30dからなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aの一方端の近傍で一方端が接地され、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体71を備えることから、単一共振電極群の最前段の単一共振電極30aと最後段の単一共振電極30bとの間で、単一共振電極結合導体71を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う単一共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。それに加えて、積層体10の第2の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第5の層間に配置された、それぞれが2個の突起部28a,28bを備え、一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された隣り合う2個の複合共振電極29a,29bからなる複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端の近傍で一方端が接地され、複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する複合共振電極結合導体72とを備えていることから、複合共振電極群の最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aと最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bとの間で、複合共振電極結合導体72を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う複合共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。これにより、バンドパスフィルタの通過特性において、単一共振電極および複合共振電極によって形成される2つの通過帯域のそれぞれの両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。
【0052】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極結合導体71が、最前段の単一共振電極30aに対して平行に対向する帯状の前段側結合領域71aと、最後段の単一共振電極30bに対して平行に対向する帯状の後段側結合領域71bと、前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域71cとから構成されており、複合共振電極結合導体72が、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aに対して平行に対向する帯状の第2の前段側結合領域72aと、最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bに対して平行に対向する帯状の第2の後段側結合領域72bと、第2の前段側結合領域72aおよび第2の後段側結合領域72bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する第2の接続領域72cとから構成されていることから、次の効果を得ることができる。まず、前段側結合領域71aと最前段の単一共振電極30aとの磁界による結合、後段側結合領域71bと最後段の単一共振電極30bとの磁界による結合、第2の前段側結合領域72aと最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aとの磁界による結合および第2の後段側結合領域72bと最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bとの磁界による結合をそれぞれ強めることができる。また、最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bならびにその間に位置する単一共振電極と接続領域71cとの磁界による結合を最小限に抑えることができるので、接続領域71cを介した意図しない単一共振電極同士の電磁界結合による電気特性の悪化を最小限に抑えることができる。同様に、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bならびにその間に位置する突起部と第2の接続領域72cとの磁界による結合を最小限に抑えることができるので、第2の接続領域72cを介した意図しない複合共振電極同士の電磁界結合による電気特性の悪化を最小限に抑えることができる。
【0053】
さらにまた、本例のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極結合導体71は、単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aの一方端の近傍の第1の環状接地電極23に貫通導体50を介して一方端が接続されており、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍の第1の環状接地電極23に貫通導体50を介して他方端が接続されていることから、単一共振電極結合導体71の両端を第1の接地電極21または第2の接地電極22に接続して接地する場合と比較すると、単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aと単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bとの単一共振電極結合導体71を介した電磁界結合をさらに強めることができるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dによって形成される通過帯域の両側に形成される減衰極を通過帯域の近傍にさらに近づけることができる。これにより通過帯域近傍の阻止域における減衰量をさらに増大させることができる。
【0054】
同様に、本例のバンドパスフィルタによれば、複合共振電極結合導体72は、複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端の近傍の第2の環状接地電極24に貫通導体50を介して一方端が接続されており、複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍の第2の環状接地電極24に貫通導体50を介して他方端が接続されていることから、複合共振電極結合導体72の両端を第1の接地電極21または第2の接地電極22に接続して接地する場合と比較すると、複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aと複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bとの複合共振電極結合導体72を介した電磁界結合をさらに強めることができるので、複合共振電極29a,29bによって形成される通過帯域の両側に形成される減衰極を通過帯域の近傍にさらに近づけることができる。これにより通過帯域近傍の阻止域における減衰量をさらに増大させることができる。
【0055】
(実施の形態の第2の例)
図5は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第2の例を模式的に示す外観斜視図である。図6は図5に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。図7は図5に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。図8は図5に示すバンドパスフィルタの例のQ−Q’線断面図である。なお、本例においては前述した第1の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0056】
本例のバンドパスフィルタにおいては、図5〜図8に示すように、積層体10の第1の層間と第4の層間との間に位置する層間Aに、第1の環状接地電極23に対向する領域と単一共振電極30c,30dに対向する領域とを有するように配置され、単一共振電極30c,30dに対向する領域が誘電体層11を貫通する貫通導体50によって単一共振電極30c,30dの他方端側にそれぞれ接続された共振補助電極32c,32dが、単一共振電極30c,30dに対応してそれぞれ配置されている。また、積層体10の第3の層間に、第1の環状接地電極23に対向する領域と単一共振電極30a,30bに対向する領域とを有するように配置され、単一共振電極30a,30bに対向する領域が誘電体層11を貫通する貫通導体50によって単一共振電極30a,30bの他方端側にそれぞれ接続された共振補助電極32a,32bが、単一共振電極30a,30bに対応してそれぞれ配置されている。
【0057】
また、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第2の層間に、共振補助電極32aに対向する領域と第1の入力結合電極40aに対向する領域とを有するように配置されるともに、第1の入力結合電極40aに対向する領域が貫通導体50によって第1の入力結合電極40aに接続され、共振補助電極32aに対向する領域が貫通導体50によって入力端子電極60aに接続された入力結合補助電極46aを備えている。そして、同じく第2の層間に、共振補助電極32bに対向する領域と第1の出力結合電極40bに対向する領域とを有するように配置されるともに、第1の出力結合電極40bに対向する領域が貫通導体50によって第1の出力結合電極40bに接続され、共振補助電極32bに対向する領域が貫通導体50を介して出力端子電極60bに接続された出力結合補助電極46bを備えている。
【0058】
さらに、本例のバンドパスフィルタにおいては、複合共振電極結合導体72が設けられておらず、単一共振電極結合導体71のみが設けられている。
【0059】
このような構造を備える本例のバンドパスフィルタによれば、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の環状接地電極23との間に生じる静電容量が、単一共振電極30a,30b,30c,30dと接地電位との間に生じる静電容量に加算されるため、単一共振電極30a,30b,30c,30dの長さを短縮することができるので、より小型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0060】
また、本例のバンドパスフィルタによれば、入力結合補助電極46aと共振補助電極32aとの電磁界結合が第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合に加算され、出力結合補助電極46bと共振補助電極32bとの電磁界結合が、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合に加算されるため、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合がさらに強まるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dによって形成される通過帯域において、非常に広い通過帯域幅であっても、それぞれの共振モードの共振周波数の間に位置する周波数における挿入損失の増加がさらに低減された、広い通過帯域の全域に渡ってより平坦でより低損失な通過特性を得ることができる。
【0061】
さらに、本例のバンドパスフィルタによれば、複合共振電極結合導体72が設けられていないが、前述した実施の形態の第1の例と同様に単一共振電極結合導体71が設けられているため、前述した実施の形態の第1の例と同様に、単一共振電極30a,30b,30c,30dによって形成される通過帯域の低周波側と高周波側の両側近傍に減衰極を形成することができる。
【0062】
なお、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の環状接地電極23との対向部の面積は、必要な静電容量に応じて、例えば、0.01〜3mm2程度に設定される。また、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の環状接地電極23との間隔は、小さい方が大きな静電容量を生じさせることができるが製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
【0063】
また、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bの幅は、例えば、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bと同程度に設定され、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bの長さは、例えば、共振補助電極32a,32bの長さよりも若干長めに設定される。入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bと共振補助電極32a,32bとの間の間隔は、小さい方が強い結合を生じさせる点で望ましいが製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
【0064】
(実施の形態の第3の例)
図9は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第3の例を模式的に示す外観斜視図である。図10は図9に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。図11は図9に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。図12は図9に示すバンドパスフィルタの例のR−R’線断面図である。なお、本例においては前述した第2の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0065】
本例のバンドパスフィルタにおいては、図9〜図12に示すように、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bが積層体10の第2の層間と第3の層間との間に位置する層間Bに配置されている。また、第2の入力結合電極41aおよび第2の出力結合電極41bが積層体10の第2の層間と層間Bとの間に位置する層間Cに配置されているとともに、第2の入力結合電極41aは入力側接続導体43aを介して第1の入力結合電極40aに接続されており、第2の出力結合電極41bは出力側接続導体43bを介して第1の出力結合電極40bに接続されている。
【0066】
このような構造を備える本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aが第3の層間よりも第2の層間に近い層間Cに配置されているので、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの間隔および第2の入力結合電極41aと入力段の複合共振電極29aとの間隔を維持したままで、入力段の単一共振電極30aと入力段の複合共振電極29aとの間隔を広げることが可能になるため、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第2の入力結合電極41aと入力段の複合共振電極29aとの電磁界結合を弱めることなく、入力段の単一共振電極30aと入力段の複合共振電極29aとの電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第2の入力結合電極41aと入力段の複合共振電極29aとの電磁界結合をさらに強めることができる。
【0067】
また、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の出力結合電極41bが第3の層間よりも第2の層間に近い層間Cに配置されているので、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの間隔および第2の出力結合電極41bと出力段の複合共振電極29bとの間隔を維持したままで、出力段の単一共振電極30bと出力段の複合共振電極29bとの間隔を広げることが可能になるため、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合および第2の出力結合電極41bと出力段の複合共振電極29bとの電磁界結合を弱めることなく、出力段の単一共振電極30bと出力段の複合共振電極29bとの電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合および第2の出力結合電極41bと出力段の複合共振電極29bとの電磁界結合をさらに強めることができる。
【0068】
(実施の形態の第4の例)
図13は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第4の例を模式的に示す分解斜視図である。図14は図13に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。なお、本例においては前述した第3の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0069】
本例のバンドパスフィルタにおいては、図13および図14に示すように、共振補助電極32a,32b,32c,32dの全てが積層体10の第3の層間に配置されている。また、積層体10の層間Aには、単一共振電極30aおよび30dの他方端とそれぞれ対向して両者を容量結合する第1の容量結合電極73aと、単一共振電極30bおよび30cの他方端とそれぞれ対向して両者を容量結合する第2の容量結合電極73bとを備えている。さらに、単一共振電極結合導体71において、接続領域71cが前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bと斜めに交わるようにして両者を接続している。
【0070】
このような構成を備える本例のバンドパスフィルタによれば、第1の容量結合電極73aおよび第2の容量結合電極73bを備えることから、共振電極間の結合状態の調整が容易になるので、フィルタの電気特性の調整が容易になる。
【0071】
(実施の形態の第5の例)
図15は本発明のバンドパスフィルタを用いた無線通信モジュール80および無線通信機器85の構成例を示すブロック図である。
【0072】
本発明の無線通信モジュール80は、例えば、ベースバンド信号が処理されるベースバンド部81と、ベースバンド部81に接続されベースバンド信号の変調後および復調前のRF信号が処理されるRF部82とを備えている。RF部82には前述の本発明のバンドパスフィルタ821が含まれており、ベースバンド信号が変調されてなるRF信号または受信したRF信号における通信帯域以外の信号をバンドパスフィルタ821によって減衰させている。具体的な構成としては、ベースバンド部81にはベースバンドIC 811が配置され、RF部82にはバンドパスフィルタ821とベースバンド部81との間にRF IC 822が配置されている。なお、これらの回路間には別の回路が介在していてもよい。そして、無線通信モジュール80のバンドパスフィルタ821にアンテナ84を接続することによってRF信号の送受信がなされる本発明の無線通信機器85が構成される。
【0073】
このような構成を有する本例の無線通信モジュール80および無線通信機器85によれば、通信に使用する周波数帯域の全域に渡って入力インピーダンスが良好に整合されて通過する信号の損失が小さくかつ通過帯域近傍に形成された減衰極によって阻止域の減衰量が充分に確保された本発明のバンドパスフィルタ821を送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタ821を通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるとともにノイズも減少するため、受信感度が向上し、また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。よって受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュール80および無線通信機器85を得ることができる。
【0074】
本発明のバンドパスフィルタにおいて、誘電体層11の材質としては、例えばエポキシ樹脂等の樹脂や例えば誘電体セラミックス等のセラミックスを用いることができる。例えば、BaTiO3,Pb4Fe2Nb2O12,TiO2等の誘電体セラミック材料と、B2O3,SiO2,Al2O3,ZnO等のガラス材料とからなり、800〜1200℃程度の比較的低い温度で焼成が可能なガラス−セラミック材料が好適に用いられる。また、誘電体層11の厚みとしては、例えば0.01〜0.1mm程度に設定される。
【0075】
前述した各種の電極および貫通導体の材質としては、例えば、Ag,Ag−Pd,Ag−Pt等のAg合金を主成分とする導電材料やCu系,W系,Mo系,Pd系導電材料等が好適に用いられる。各種の電極の厚みは、例えば0.001〜0.2mmに設定される。
【0076】
本発明のバンドパスフィルタは、例えば次のようにして作製することができる。まず、セラミック原料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して泥漿を作製するとともに、ドクターブレード法によってセラミックグリーンシートを形成する。次に、得られたセラミックグリーンシートにパンチングマシーン等を用いて貫通導体を形成するための貫通孔を形成し、Ag,Ag−Pd,Au,Cu等の導体を含む導体ペーストを充填するとともにセラミックグリーンシートの表面に印刷法を用いて前述したのと同様の導体ペーストを塗布して導体ペースト付きセラミックグリーンシートを作製する。次に、これらの導体ペースト付きセラミックグリーンシートを積層し、ホットプレス装置を用いて圧着し、800℃〜1050℃程度のピーク温度で焼成することにより作製される。
【0077】
(変形例)
本発明は前述した実施の形態の第1〜第5の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0078】
例えば、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、入力端子電極60aおよび出力端子電極60bを備えた例を示したが、モジュール基板の中の一領域にバンドパスフィルタが形成されるような場合には入力端子電極60aおよび出力端子電極60bは必ずしも必要なく、モジュール基板内の外部回路からの配線導体が、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bに直接接続するようにしても構わない。この場合は、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bと配線導体との接続点が、第1の入力結合電極40aの電気信号入力点45aおよび第1の出力結合電極40bの電気信号出力点45bとなる。また、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bを備える場合には、外部回路からの配線導体が入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bに直接接続するようにしても構わない。
【0079】
またさらに、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、積層体10の下面に第1の接地電極21を配置し、積層体10の上面に第2の接地電極22を配置した例を示したが、例えば、第1の接地電極21の下にさらに誘電体層を配置しても構わないし、第2の接地電極22の上にさらに誘電体層を配置しても構わない。
【0080】
さらにまた、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、4つの単一共振電極30a,30b,30c,30dを備え、単一共振電極群が4個の共振電極で構成された例を示したが、単一共振電極群が4以上の偶数個の共振電極で構成されるという条件を満たす範囲内であれば、単一共振電極および単一共振電極群を構成する共振電極の数を自由に設定することができる。例えば、単一共振電極が6個あり、その6個全てによって単一共振電極群が構成されるようにしても構わない。また、単一共振電極が6個有り、そのうちの任意の隣り合う4個の共振電極によって単一共振電極群が構成されるようにしても構わない。但し、共振電極の数が増えすぎると大型化や通過帯域内における損失の増加が生じるので、単一共振電極の数については、10個程度以下に設定されるのが望ましく、複合共振電極の数については、5個程度以下に設定されるのが望ましい。
【0081】
またさらに、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、単一共振電極30a,30b,30c,30dおよび複合共振電極29a,29bの両方において、それぞれ共振電極の一方端(接地端)が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合された例を示したが、単一共振電極30a,30cが互いにコムライン型に電磁界結合され、単一共振電極30b,30dが互いにコムライン型に電磁界結合され、単一共振電極30c,30dが互いにインターデジタル型に電磁界結合されるようにしてもよく、このような構成を備えるバンドパスフィルタにおいても、2つの通過帯域それぞれの両側に減衰極を有して通過域から阻止域にかけて急激に減衰量が変化する優れた通過特性を有するバンドパスフィルタを得ることができる。この形態におけるメカニズムはまだ完全に解明できてはいないが、単一共振電極群の最前段の共振器と最後段の共振器との隣り合う共振電極を介した結合が全体的に容量性の結合である必要があると考えられる。
【0082】
さらにまた、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、単一共振電極結合導体71の両端が単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍の第1の環状接地電極23に貫通導体50を介してそれぞれ接続された例を示し、前述した実施の形態の第1の例においては、複合共振電極結合導体72の両端が複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍の第2の環状接地電極24に貫通導体50を介してそれぞれ接続される構成を示したが、例えば、単一共振電極結合導体71の両端が貫通導体50を介して第1の接地電極21に接続され、複合共振電極結合導体72の両端が貫通導体50を介して第2の接地電極22に接続されるようにしても構わない。また、例えば、単一共振電極結合導体71および複合共振電極結合導体72の周囲に環状接地導体を配置して、これらに単一共振電極結合導体71および複合共振電極結合導体72の両端を接続するようにしても構わない。但し、通過帯域の両側に発生する減衰極を通過帯域に近づけたい場合には、これらの方法はあまり好ましくない。
【0083】
またさらに、前述した実施の形態の例においては、積層体10が1つの積層体で構成された例を示したが、それぞれの積層体の積層方向に重ねて配置された複数の積層体によって積層体10が構成されるようにしても構わない。例えば、前述した実施の形態の第1の例のバンドパスフィルタにおいて、積層体10は第1の積層体およびその上に配置された第2の積層体によって構成されており、第1の層間および第4の層間は第1の積層体中の層間であり、第2の層間および第5の層間は第1の積層体の上に配置された第2の積層体中の層間であり、第3の層間は第1の積層体と第2の積層体との間の層間であるようにしても構わない。
【0084】
またさらに、UWBに用いられるバンドパスフィルタを例示してこれまで説明を行なってきたが、広帯域を要求される他の用途においても本発明のバンドパスフィルタが有効であることは言うまでもない。
【実施例】
【0085】
次に、本発明のバンドパスフィルタの具体例について説明する。
【0086】
図13〜図14に示した実施の形態の第4の例のバンドパスフィルタの電気特性を有限要素法を用いたシミュレーションによって算出した。
【0087】
算出条件としては、第1の共振電極30a,30b,30c,30dは幅が0.175mmで長さが4.05mmの矩形状とした。第1の共振電極30aと第1の共振電極30cとの間隔および第1の共振電極30dと第1の共振電極30bとの間隔はそれぞれ0.08mmとし、第1の共振電極30cと第1の共振電極30dとの間隔は0.091mmとした。入力段の複合共振電極29aは、幅が0.64mmで長さが0.65mmの矩形状の基部27の他方端に幅が0.25mmで長さが1.5mmの矩形状の入力段の突起部28aおよび幅が0.25mmで長さが2.75mmの矩形状の出力段の突起部28bが0.14mmの間隔を隔てて配置される構造とした。出力段の複合共振電極29bは、幅が0.64mmで長さが0.65mmの矩形状の基部27の他方端に幅が0.25mmで長さが2.75mmの矩形状の入力段の突起部28aおよび幅が0.25mmで長さが1.5mmの矩形状の出力段の突起部28bが0.14mmの間隔を隔てて配置される構造とした。また、入力段の複合共振電極29aと出力段の複合共振電極29bとの間隔は0.13mmとした。共振補助電極32a,32bはぞれぞれ第1の共振電極30a,30bの他方端から0.2mm離れた場所に配置した幅が0.2mmで長さが0.11mmの矩形と、それから第1の共振電極30a,30bに向かう幅が0.2mmで長さが0.4mmの矩形とを接合した形状とした。共振補助電極32c,32dはぞれぞれ第1の共振電極30c,30dの他方端から0.2mm離れた場所に配置した幅が0.29mmで長さが0.3mmの矩形と、それから第1の共振電極30c,30dに向かう幅が0.2mmで長さが0.4mmの矩形とを接合した形状とした。第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bは、幅が0.15mmで長さが3.7mmの矩形状とした。第2の入力結合電極41aは幅が0.25mmで長さが0.5mmの矩形状とし、入力側接続導体43aを介して第1の入力結合電極40aの第1の共振電極30aとの対向部の中央から電気信号入力点45aと反対側へ0.58mmの位置に接続した。第2の出力結合電極41bは幅が0.25mmで長さが0.5mmの矩形状とし、出力側接続導体43bを介して第1の出力結合電極40bの第1の共振電極30bとの対向部の中央から電気信号出力点45bと反対側へ0.58mmの位置に接続した。入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bは、幅が0.15mmで長さが0.9mmの矩形状とした。入力端子電極60aおよび出力端子電極60bはそれぞれ一辺が0.2mmの正方形とした。前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bは幅が0.1mmで長さが1.65mmの矩形状とし、接続領域71cは幅が0.1mmで長さが1.3mmの平行四辺形状とした。第1の容量結合電極73aは、第1の共振器30a,30dとそれぞれ対向する幅が0.175mmで長さが0.6mmの2つの矩形を幅が0.1mmの矩形で接続した形状とした。第2の容量結合電極73bは、第1の共振器30b,30cとそれぞれ対向する幅が0.175mmで長さが0.6mmの2つの矩形を幅が0.1mmの矩形で接続した形状とした。第1の接地電極21,第2の接地電極22,第1の環状接地電極23および第2の環状接地電極24の外形は幅が4mmで長さが5mmの矩形状とし、第1の環状接地電極23の開口部は幅が3.6mmで長さが4.2mmの矩形状とし、第2の環状接地電極24の開口部は幅が3.55mmで長さが4.2mmの矩形状とした。バンドパスフィルタ全体の形状は幅が4mmで長さが5mmで厚みが0.51mmの直方体状とした。積層体10の下面と層間Aとの間隔を0.165mmとし、層間Aと第1の層間との間隔,第1の層間と第3の層間との間隔,第3の層間と層間Bとの間隔,層間Bと層間Cとの間隔および層間Cと第2の層間との間隔をそれぞれ0.015mmとし、第2の層間と積層体10の上面との間隔を0.19mmとした。各種電極の厚みは0.01mmとし、入力側接続導体43a,出力側接続導体43bおよび貫通導体50の直径は0.1mmとした。誘電体層11の比誘電率は7.5とした。
【0088】
図16はそのシミュレーション結果を示すグラフであり、図17は図13〜図14に示した実施の形態の第4の例のバンドパスフィルタから単一共振電極結合導体71を除いた構造を備える比較例のバンドパスフィルタの電気特性のシミュレーション結果を示すグラフである。それぞれのグラフにおいて、横軸は周波数,縦軸は減衰量を表しており、バンドパスフィルタの通過特性(S21)および反射特性(S11)を示している。図16に示すグラフによれば、積層体10の厚みが0.51mmと非常に薄いにもかかわらず、2つの非常に広い通過帯域の全体に渡って良好にインピーダンスが整合されて平坦で低損失な優れた通過特性が得られている。また、低周波側の通過帯域の両側近傍に減衰極が形成されており、図17に示す比較例のバンドパスフィルタのシミュレーション結果と比較すると、通過帯域近傍の阻止域における減衰量が大きく改善されていることがわかる。この結果により、本発明のバンドパスフィルタによれば、非常に薄い形状であっても、2つの通過帯域のそれぞれにおいて広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失であり、且つ通過帯域から阻止域にかけて減衰量が急激に増加して通過帯域近傍の減衰量が充分に確保された優れた通過特性が得られることがわかり、本発明の有効性が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第1の例を模式的に示す外観斜視図である。
【図2】図1に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。
【図3】図1に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図4】図1に示すバンドパスフィルタの例のP−P’線断面図である。
【図5】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第2の例を模式的に示す外観斜視図である。
【図6】図5に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。
【図7】図5に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図8】図5に示すバンドパスフィルタの例のQ−Q’線断面図である。
【図9】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第3の例を模式的に示す外観斜視図である。
【図10】図9に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。
【図11】図9に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図12】図9に示すバンドパスフィルタの例のR−R’線断面図である。
【図13】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第4の例を模式的に示す分解斜視図である。
【図14】図13に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図15】本発明のバンドパスフィルタを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器の構成例を示すブロック図である。
【図16】本発明のバンドパスフィルタの電気特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図17】比較例のバンドパスフィルタの電気特性のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10:積層体
11:誘電体層
21:第1の接地電極
22:第2の接地電極
27:基部
28a,28b:突起部
29a,29b:複合共振電極
30a,30b,30c,30d:単一共振電極
40a:第1の入力結合電極
40b:第1の出力結合電極
41a:第2の入力結合電極
41b:第2の出力結合電極
43a:入力側接続導体
43b:出力側接続導体
45a:電気信号入力点
45b:電気信号出力点
71:単一共振電極結合導体
71a:単一前段側結合領域
71b:単一後段側結合領域
71c:単一接続領域
72:複合共振電極結合導体
72a:第2の前段側結合領域
72b:第2の後段側結合領域
72c:第2の接続領域
80:無線通信モジュール
81:ベースバンド部
82:RF部
84:アンテナ
85:無線通信機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器に関するものであり、特にUWB(Ultra Wide Band)に好適に使用可能な非常に広い2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい通信手段としてUWBが着目されている。UWBは10m程度の短い距離において広い周波数帯域を使用して大容量のデータ転送を実現するものである。
【0003】
このようなUWBに使用可能な超広帯域のフィルタに関する研究は近年盛んに行なわれており、例えば、方向性結合器の原理を応用したバンドパスフィルタによって、通過帯域幅が比帯域(帯域幅/中心周波数)で100%を超える広帯域な特性が得られたとの報告がある(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0004】
一方、従来よく使用されるフィルタとして、複数の1/4波長ストリップライン共振器を併設して相互に結合させて構成したバンドパスフィルタが知られている(例えば、特許文献1を参照。)。
【非特許文献1】「マイクロストリップ−CPWブロードサイド結合構造を用いた超広帯域バンドパスフィルタ」2005年3月電子情報通信学会総合大会講演論文集 C-2-114 p.147
【特許文献1】特開2004−180032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1および特許文献1にて提案されたバンドパスフィルタはそれぞれ問題点を有しており、特にUWB用のバンドパスフィルタには適さないものであった。
【0006】
例えば、非特許文献1にて提案されたバンドパスフィルタは通過帯域幅が広すぎるという問題があった。すなわち、UWBは基本的には3.1GHz〜10.6GHzの周波数帯域を使用するが、国際電気通信連合無線通信部門では、IEEE802.11.aで使用する5.3GHzを避ける形で3.1〜4.7GHz程度の帯域を使用するLow Band(ローバンド)と6GHz〜10.6GHz程度の帯域を使用するHigh Band(ハイバンド)とに分割した企画が立案されている。よって、UWBのLow BandおよびHigh Bandに使用されるフィルタには、それぞれ比帯域で40%〜50%程度の通過帯域幅と5.3GHzにおける減衰が同時に要求されるため、通過帯域幅が比帯域で100%を超えるような特性を有する非特許文献1にて提案されたバンドパスフィルタは通過帯域幅が広すぎて使えないものであった。
【0007】
また、従来の1/4波長共振器を使用したバンドパスフィルタの通過帯域幅は狭すぎ、広帯域化を図った特許文献1に記載のバンドパスフィルタの通過帯域幅であっても比帯域で10%にも満たないものであった。よって、比帯域で40%〜50%に相当する広い通過帯域幅を要求されるUWB用のバンドパスフィルタとして使えるものではなかった。
【0008】
そこで、本願の発明者は特願2007-222976において、UWBのLow Band用フィルタおよびHigh Band用フィルタを1つのフィルタでまかなうことが可能な、非常に広い2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタを提案したが、さらに薄型化するとLow Band用の通過帯域を形成する共振器とHigh Band用の通過帯域を形成する共振器との間の電磁気的な結合が強くなり過ぎて良好なフィルタ特性を得るのが困難になる場合があるという問題を有していた。また、フィルタの通過特性において、通過帯域近傍の阻止域における減衰量に改善の余地があった。
【0009】
本発明はこのような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、非常に広い2つの通過帯域近傍の阻止域における充分な減衰量を有するとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性を得ることができるバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のバンドパスフィルタは、複数の誘電体層が積層されてなる積層体と、該積層体の下面に配置された第1の接地電極および上面に配置された第2の接地電極と、前記積層体の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合する帯状の4個以上の単一共振電極と、一方端が接地される基部および該基部の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに配置された帯状の複数の突起部によって前記基部の前記一方端が一方端となり前記突起部の他方端が他方端となるように構成され、前記一方端が接地されることによって、前記基部および前記突起部を合わせた全体が前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する共振器として機能するとともに、前記突起部が前記第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する共振器として機能する、前記積層体の第1の層間とは異なる第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された複数の複合共振電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち入力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が入力される電気信号入力点を有する帯状の第1の入力結合電極と、前記積層体の前記第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち出力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が出力される電気信号出力点を有する帯状の第1の出力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち入力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの入力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の入力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち出力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの出力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の出力結合電極と、前記積層体の前記第1の層間を間に挟んで前記第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の前記単一共振電極からなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極の前記一方端の近傍で一方端が接地され、前記単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極の前記一方端の近傍で他方端が接地されており、前記最前段の単一共振電極および前記最後段の単一共振電極の前記一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体とを備え、前記単一共振電極と前記複合共振電極における前記突起部とは前記積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されており、前記第2の入力結合電極は前記第1の入力結合電極の前記入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号入力点から遠い側に接続されて前記第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるとともに、前記第2の出力結合電極は前記第1の出力結合電極の前記出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号出力点から遠い側に接続されて前記第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のバンドパスフィルタは、上記構成において、前記単一共振電極結合導体は、前記最前段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の前段側結合領域と、前記最後段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の後段側結合領域と、前記前段側結合領域および前記後段側結合領域をこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域とから構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記入力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されており、前記第2の出力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記出力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されていることを特徴とするものである。
【0013】
またさらに、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の入力結合電極と一体化しており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の出力結合電極と一体化していることを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、本発明のバンドパスフィルタは、上記各構成において、前記第2の入力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して前記第1の入力結合電極に接続されており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して前記第1の出力結合電極に接続されていることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の無線通信モジュールは、上記各構成のいずれかの本発明のバンドパスフィルタを備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の無線通信機器は、上記各構成のいずれかの本発明のバンドパスフィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部と、前記RF部に接続されたアンテナとを備えることを特徴とするものである。
【0017】
なお、第1の入力結合電極の電気信号入力点は第1の入力結合電極に対して電気信号が入力されるところであり、第1の出力結合電極の電気信号出力点は第1の出力結合電極から電気信号が出力されるところである。また、第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側とは、入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央を境界にして第1の入力結合電極を長さ方向に2つの領域に分けたときに、電気信号入力点を含まない側の領域のことを意味する。同様に、第1の出力結合電極の出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点から遠い側とは、出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央を境界にして第1の出力結合電極を長さ方向に2つの領域に分けたときに、電気信号出力点を含まない側の領域のことを意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバンドパスフィルタによれば、複数の単一共振電極と複数の複合共振電極における複数の突起部とは積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されていることから、積層体の厚みが薄くて複数の単一共振電極と複数の複合共振電極とが近接する場合においても、複数の単一共振電極と複数の複合共振電極における複数の突起部との間に生じる電磁界結合を最小限にすることができるので、複数の単一共振電極と複数の複合共振電極との間の電磁界結合が強くなりすぎることによる通過帯域における通過特性の悪化を防止することができる。
【0019】
ここで、比帯域で10%を超える非常に広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失な通過特性を得るためには、入力段の共振電極と入力結合電極との電磁界結合および出力段の共振電極と出力結合電極との電磁界結合を非常に強いものにする必要がある。ところが、単純に、入力段の単一共振電極に対向して電磁界結合する第1の入力結合電極と入力段の複合共振電極における入力段の突起部に対向して電磁界結合する第2の入力結合電極とを接続し、出力段の単一共振電極に対向して電磁界結合する第1の出力結合電極と出力段の複合共振電極における出力段の突起部に対向して電磁界結合する第2の出力結合電極とを接続しただけでは、入力段の単一共振電極と第1の入力結合電極との電磁界結合および出力段の単一共振電極と第1の出力結合電極との電磁界結合が不足してしまい、複数の単一共振電極によって形成される通過帯域において良好な通過特性が全く得られないことが本願の発明者の検討によって判明した。
【0020】
そこで、本願の発明者は種々の検討を重ねた結果、第1の入力結合電極に電気信号が入力される電気信号入力点を設け、第2の入力結合電極は第1の入力結合電極に接続されて第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるようにするとともに、第2の入力結合電極が第1の入力結合電極に接続される位置を第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側にすることにより、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合を充分に強いものにすることができることを見出した。このような効果が得られる理由は、第2の入力結合電極が第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側に接続されて第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるようにすることにより、第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部を流れる電流を充分に確保できるためではないかと考えられる。
【0021】
同様に、第1の出力結合電極に電気信号が出力される電気信号出力点を設け、第2の出力結合電極は第1の出力結合電極に接続されて第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されるようにするとともに、第2の出力結合電極が第1の出力結合電極に接続される位置を第1の出力結合電極の出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点から遠い側にすることにより、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合を充分に強いものにすることができる。
【0022】
すなわち、本発明のバンドパスフィルタによれば、第1の入力結合電極は誘電体層を介して入力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合し、第1の出力結合電極は誘電体層を介して出力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、第2の入力結合電極は第1の入力結合電極の入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点から遠い側に接続されて第1の入力結合電極を介して電気信号が入力され、第2の出力結合電極は第1の出力結合電極の出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点から遠い側に接続されて第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されることから、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合および第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合を充分に強いものにすることができるので、複数の単一共振電極により形成される広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失な優れた通過特性を有するバンドパスフィルタを得ることができる。
【0023】
また、本発明のバンドパスフィルタによれば、積層体の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の単一共振電極からなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極の一方端の近傍で一方端が接地され、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極の一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の単一共振電極および最後段の単一共振電極の一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体とを備えることから、バンドパスフィルタの通過特性において、単一共振電極によって形成される通過帯域の両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。このメカニズムは次のように考えられる。すなわち、単一共振電極結合導体によって、隣り合う4以上の偶数個の単一共振電極からなる単一共振電極群の最前段の単一共振電極と最後段の単一共振電極との間に誘導性の結合が生じる。また、隣り合う単一共振電極同士はインターデジタル型に結合しており、磁界による結合と電界による結合とが加算されて強く結合しているが、全体としては容量性の結合になっている。このため、隣り合う4以上の偶数個の単一共振電極からなる単一共振電極群の最前段の単一共振電極と最後段の単一共振電極との間で、単一共振電極結合導体を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う単一共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。この現象をバンドパスフィルタの通過帯域の両側近傍で生じさせることができるため、バンドパスフィルタの通過特性において、単一共振電極によって形成される通過帯域の両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。
【0024】
なお、単一共振電極群を構成する単一共振電極の数については、4以上の偶数個であることが上記効果を奏する上で必要である。例えば、単一共振電極群を構成する単一共振電極の数が奇数個の場合には、最前段の単一共振電極と最後段の単一共振電極との間に単一共振電極結合導体による誘導性の結合を生じさせたとしても、単一共振電極結合導体を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う単一共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象がバンドパスフィルタの通過帯域よりも高周波側でしか生じないため、バンドパスフィルタの通過特性において、通過帯域の両側近傍に減衰極を形成することはできない。また、単一共振電極群を構成する単一共振電極の数が2個の場合には、単一共振電極間を単一共振電極結合導体で接続したとしても、単一共振電極間に誘導性の結合と容量性の結合とによるLC並列共振回路が形成されるに過ぎないため、減衰極は一つしか形成されず、通過帯域の両側近傍に減衰極を形成することはできない。
【0025】
さらに、本発明のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極結合導体が、最前段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の前段側結合領域と、最後段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の後段側結合領域と、前段側結合領域および後段側結合領域をこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域とから構成されているときには、前段側結合領域と最前段の単一共振電極との磁界による結合および後段側結合領域と最後段の単一共振電極との磁界による結合を強めることができるとともに、最前段の単一共振電極および最後段の単一共振電極ならびにその間に位置する単一共振電極と接続領域との磁界による結合を最小限に抑えることができるので、接続領域を介した意図しない単一共振電極同士の電磁界結合による電気特性の悪化を最小限に抑えることができる。
【0026】
またさらに、本発明のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極は積層体の積層方向から見て入力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも一方端側と交わるように配置されており、第2の出力結合電極は、積層体の積層方向から見て出力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも一方端側と交わるように配置されているときには、第2の入力結合電極と入力段の単一共振電極との間の電界による結合を小さくするとともに、第2の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電界による結合を小さくすることができるので、第2の入力結合電極と入力段の単一共振電極との間および第2の出力結合電極と出力段の単一共振電極との間の不要な電磁界結合が大きくなることに起因するフィルタ特性の悪化を防止することができる。
【0027】
さらにまた、本発明のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極は第3の層間に配置されて第1の入力結合電極と一体化しており、第2の出力結合電極は第3の層間に配置されて第1の出力結合電極と一体化しているときには、第1の入力結合電極と第2の入力結合電極とを接続する接続導体および第1の出力結合電極と第2の出力結合電極とを接続する接続導体が不要であるため、接続導体による損失をなくすことができるとともに単純な構造を備える薄型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0028】
またさらに、本発明のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極が第3の層間よりも第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して第1の入力結合電極に接続されているときには、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との間隔および第2の入力結合電極と入力段の複合共振電極との間隔を維持したままで、入力段の単一共振電極と入力段の複合共振電極との間隔を広げることが可能になるため、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の入力結合電極と入力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることなく、入力段の単一共振電極と入力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の入力結合電極と入力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の入力結合電極と入力段の複合共振電極との電磁界結合をさらに強めることができる。同様に、第2の出力結合電極が第3の層間よりも第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して第1の出力結合電極に接続されているときには、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との間隔および第2の出力結合電極と出力段の複合共振電極との間隔を維持したままで、出力段の単一共振電極と出力段の複合共振電極との間隔を広げることが可能になるため、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の出力結合電極と出力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることなく、出力段の単一共振電極と出力段の複合共振電極との電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の出力結合電極と出力段の単一共振電極との電磁界結合および第2の出力結合電極と出力段の複合共振電極との電磁界結合をさらに強めることができる。
【0029】
本発明の無線通信モジュールおよび本発明の無線通信機器によれば、通信帯域の全域に渡って通過する信号の損失が小さくかつ通過帯域近傍に形成された減衰極によって阻止域の減衰量が充分に確保された本発明のバンドパスフィルタを送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタを通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるとともにノイズも減少するため、受信感度が向上し、また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。よって受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。さらに、1つのフィルタで2つの通信帯域をカバーすることができるとともに、薄型化しても良好なフィルタ特性が得られる本発明のバンドパスフィルタを用いることにより、小型で製造コストが低い無線通信モジュールおよび無線通信機器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明のバンドパスフィルタならびにそれを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器を添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0031】
(実施の形態の第1の例)
図1は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第1の例を模式的に示す外観斜視図である。図2は図1に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。図3は図1に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。図4は図1に示すバンドパスフィルタの例のP−P’線断面図である。
【0032】
本例のバンドパスフィルタは、図1〜図4に示すように、複数の誘電体層11が積層されてなる積層体10と、積層体10の下面に配置された第1の接地電極21および上面に配置された第2の接地電極22と、積層体10の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合する帯状の単一共振電極30a,30b,30c,30dと、一方端が接地される基部27および基部27の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに配置された帯状の突起部28a,28bによって基部27の一方端が一方端となり突起部28a,28bの他方端が他方端となるように構成され、一方端が接地されることによって、基部27および突起部28a,28bを合わせた全体が第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する共振器として機能するとともに、突起部28a,28bが第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する共振器として機能する、積層体10の第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された複合共振電極29a,29bと、を備えている。
【0033】
また、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間と第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、入力段の単一共振電極30aの長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が入力される電気信号入力点45aを有する帯状の第1の入力結合電極40aと、出力段の単一共振電極30bの長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が出力される電気信号出力点45bを有する帯状の第1の出力結合電極40bと、入力段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aと対向して電磁界結合する第2の入力結合電極41aと、出力段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bと対向して電磁界結合する第2の出力結合電極41bとを備えている。なお、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとは一体化されており、第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとは一体化されている。
【0034】
さらに、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間に単一共振電極30a,30b,30c,30dの周囲を取り囲むように環状に形成され、単一共振電極30a,30b,30c,30dの一方端が接続された、接地電位に接続される第1の環状接地電極23と、第2の層間に複合共振電極29a,29bの周囲を取り囲むように環状に形成され、複合共振電極29a,29bの一方端が接続された、接地電位に接続される第2の環状接地電極24とを備えている。
【0035】
またさらに、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4個の単一共振電極30a,30b,30c,30dからなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aの一方端の近傍で一方端が接地され、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体71と、積層体10の第2の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第5の層間に配置された、それぞれが2個の突起部28a,28bを備え、一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された隣り合う2個の複合共振電極29a,29bからなる複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端の近傍で一方端が接地され、複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する複合共振電極結合導体72とを備えている。
【0036】
そして、本例のバンドパスフィルタにおいて、単一共振電極結合導体71は、最前段の単一共振電極30aに対して平行に対向する帯状の前段側結合領域71aと、最後段の単一共振電極30bに対して平行に対向する帯状の後段側結合領域71bと、前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域71cとから構成されており、複合共振電極結合導体72は、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aに対して平行に対向する帯状の第2の前段側結合領域72aと、最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bに対して平行に対向する帯状の第2の後段側結合領域72bと、第2の前段側結合領域72aおよび第2の後段側結合領域72bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する第2の接続領域72cとから構成されている。なお、単一共振電極結合導体71の両端部は貫通導体50を介して第1の環状接地電極23にそれぞれ接続されており、複合共振電極結合導体72の両端部は貫通導体50を介して第2の環状接地電極24にそれぞれ接続されている。
【0037】
そして、本例のバンドパスフィルタにおいて、第1の入力結合電極40aは誘電体層11を貫通する貫通導体50を介して積層体10の上面に配置された入力端子電極60aに接続されており、第1の出力結合電極40bは誘電体層11を貫通する貫通導体50を介して積層体10の上面に配置された出力端子電極60bに接続されている。よって、第1の入力結合電極40aと貫通導体50との接続点が第1の入力結合電極40aにおける電気信号入力点45aになっており、第1の出力結合電極40bと貫通導体50との接続点が第1の出力結合電極40bにおける電気信号出力点45bになっている。
【0038】
このような構成を備える本例のバンドパスフィルタは、入力端子電極60aおよび貫通導体50を介して第1の入力結合電極40aに外部回路からの電気信号が入力されると、第1の入力結合電極40aと電磁界結合する入力段の単一共振電極30aが励振されることによって、相互に電磁界結合する単一共振電極30a,30b,30c,30dが共振し、出力段の単一共振電極30bと電磁界結合する第1の出力結合電極40bから貫通導体50および出力端子電極60bを介して外部回路に電気信号が出力される。このとき、単一共振電極30a,30b,30c,30dが共振する第1の周波数を含む第1周波数帯域の信号が選択的に通過するため、これによって第1の通過帯域が形成される。また、同時に、入力端子電極60a,貫通導体50および第1の入力結合電極40aを介して第2の入力結合電極41aにも外部回路からの電気信号が入力されるので、第2の入力結合電極41aと電磁界結合する入力段の複合共振電極29aが励振されることによって、相互に電磁界結合する複合共振電極29a,29bが共振し、出力段の複合共振電極29bと電磁界結合する第2の出力結合電極41bから第1の出力結合電極40b,貫通導体50および出力端子電極60bを介して外部回路に電気信号が出力される。このとき、複合共振電極29a,29bが共振する第2の周波数および第3の周波数を含む第2周波数帯域の信号が選択的に通過するため、これによって、第2の通過帯域が形成される。このようにして、本例のバンドパスフィルタは、周波数の異なる2つの通過帯域を有するバンドパスフィルタとして機能する。
【0039】
本例のバンドパスフィルタにおいて、帯状の単一共振電極30a,30b,30c,30dは、電気長が第1の周波数における波長の1/4程度に設定されており、それぞれ一方端が第1の環状接地電極23に接続されて接地されることによって1/4波長共振器として機能する。また、複合共振電極29a,29bは、一方端が接地される基部27および基部27の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに間隔を開けて配置された帯状の複数の突起部28a,28bによって基部27の一方端が一方端となり突起部28a,28bの他方端が他方端となるように構成されている。そして、一方端(すなわち基部27の一方端)が接地されることによって、基本的には、基部27および突起部28a,28bを合わせた全体が第2の周波数で共振する1/4波長共振器として機能するとともに、突起部28a,28bが第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する1/4波長共振器として機能する。よって、基部27と突起部28a,28bとを合わせた複合共振電極全体の長さは、第2の周波数における波長の1/4にほぼ等しく、突起部28a,28bの長さは第3の周波数における波長の1/4にほぼ等しい。突起部28aと突起部28bの長さは基本的には等しく設定するが、他の電極との結合状態等によって長さを若干異ならせた方がよい場合もある。また、突起部の本数を3本以上にしてもよいが、小型化のためには2本にした方がよい。
【0040】
また、本例のバンドパスフィルタにおいて、単一共振電極30a,30b,30c,30dは積層体10の第1の層間にそれぞれの一方端が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合しており、複合共振電極29a,29bは積層体10の第2の層間にそれぞれの一方端が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合している。このような磁界による結合と電界による結合とが加算されたインターデジタル型の強い結合によって、通過帯域を形成するそれぞれの共振モードの共振周波数の間隔を、比帯域で10%を超える非常に広い通過帯域幅を得るのに適度なものにすることが容易になる。横並びに配置されたそれぞれの共振電極同士の間隔は小さい方が強い結合が得られるが、間隔を小さくすると製造が困難になるので、例えば、0.05〜0.5mm程度に設定される。
【0041】
さらに、本例のバンドパスフィルタにおいて、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bの形状寸法は入力段の単一共振電極30aおよび出力段の単一共振電極30bと同程度に設定されるのが好ましい。また、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bと入力段の単一共振電極30aおよび出力段の単一共振電極30bとの間隔、ならびに第2の入力結合電極41aおよび第2の出力結合電極41bと入力段の複合共振電極29aおよび出力段の複合共振電極29bとの間隔については、小さくすると結合は強くなるが製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
【0042】
さらに、本例のバンドパスフィルタにおいて、第2の入力結合電極41aは帯状であり、入力段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aに沿って対向するように配置されており、第1の入力結合電極40aと交わるように第1の入力結合電極40aと一体化している。よって、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとが交わる部分は第1の入力結合電極40aとして機能するとともに第2の入力結合電極41aとしても機能する。また、第2の出力結合電極41bは帯状であり、出力段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bに沿って対向するように配置されており、第1の出力結合電極40bと交わるように第1の出力結合電極40bと一体化している。よって、第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとが交わる部分は第1の出力結合電極40bとして機能するとともに第2の出力結合電極41bとしても機能する。なお、第2の入力結合電極41a及び第2の出力結合電極41bの長さは必要な結合量に応じて適宜設定される。
【0043】
本例のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bにおける突起部28a,28bとは積層体10の積層方向から見て互いに直交するように配置されていることから、積層体10の厚みが薄くて単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bとが近接する場合においても、単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bにおける突起部28a,28bとの間に生じる電磁界結合を最小限にすることができるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dと複合共振電極29a,29bとの間の電磁界結合が強くなりすぎることによる通過帯域における通過特性の悪化を防止することができる。
【0044】
また、本例のバンドパスフィルタによれば、第1の入力結合電極40aは誘電体層11を介して入力段の単一共振電極30aの長さ方向の全体に渡る領域と対向して電磁界結合し、第1の出力結合電極40bは誘電体層11を介して出力段の単一共振電極30bの長さ方向の全体に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、第2の入力結合電極41aは第1の入力結合電極40aの入力段の単一共振電極30aとの対向部における長さ方向の中央よりも電気信号入力点45aから遠い側に接続されて第1の入力結合電極40aを介して電気信号が入力され、第2の出力結合電極41bは第1の出力結合電極40bの出力段の単一共振電極30bとの対向部における長さ方向の中央よりも電気信号出力点45bから遠い側に接続されて第1の出力結合電極40bを介して電気信号が出力されることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合を充分に強いものにすることができるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dにより形成される広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失な優れた通過特性を有するバンドパスフィルタを得ることができる。
【0045】
さらに、本例のバンドパスフィルタによれば、電気信号入力点45aは第1の入力結合電極40aの入力段の単一共振電極30aとの対向部における長さ方向の端部に位置しており、電気信号出力点45bは第1の出力結合電極40bの出力段の単一共振電極30bとの対向部における長さ方向の端部に位置していることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合をさらに強いものにすることができる。
【0046】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、電気信号入力点45aは第1の入力結合電極40aの入力段の単一共振電極30aとの対向部における長さ方向の中央よりも入力段の単一共振電極30aの一方端(接地端)から遠い側に位置しており、電気信号出力点45bは第1の出力結合電極40bの出力段の単一共振電極30bとの対向部における長さ方向の中央よりも出力段の単一共振電極30bの一方端(接地端)から遠い側に位置していることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとがインターデジタル型に電磁界結合し、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとがインターデジタル型に電磁界結合するので、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合をさらに強いものにすることができる。
【0047】
さらにまた、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aは入力段の単一共振電極30aの長さ方向の中央よりも一方端(接地端)側と対向するように配置されており、第2の出力結合電極41bは出力段の単一共振電極30bの長さ方向の中央よりも一方端(接地端)側と対向するように配置されているので、第2の入力結合電極41aと入力段の単一共振電極30aとの間の電界による結合を小さくするとともに、第2の出力結合電極41bと出力段の単一共振電極30bとの電界による結合を小さくすることができるので、第2の入力結合電極41aと入力段の単一共振電極30aとの間および第2の出力結合電極41bと出力段の単一共振電極30bとの間の不要な電磁界結合が大きくなることに起因するフィルタ特性の悪化を防止することができる。
【0048】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aは第3の層間に配置されて第1の入力結合電極40aと一体化しており、第2の出力結合電極41bは第3の層間に配置されて第1の出力結合電極40bと一体化しているので、第1の入力結合電極40aと第2の入力結合電極41aとを接続する接続導体および第1の出力結合電極40bと第2の出力結合電極41bとを接続する接続導体が不要であるため、接続導体による損失をなくすことができるとともに単純な構造を備える薄型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0049】
さらにまた、本例のバンドパスフィルタによれば、入力段の単一共振電極30aの一方端と出力段の単一共振電極30bの一方端とが互い違いになるように配置されているとともに、入力段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端と出力段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端とが互い違いになるように配置されていることから、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合が充分に強く、且つ対称性を有する構造および回路構成を備えたバンドパスフィルタを得ることができる。
【0050】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、複合共振電極29a,29bを用いて第2の通過帯域を形成していることから、複合共振電極29a,29bの長さおよび突起部28a,28bの長さに応じて第2の周波数および第3の周波数が決定されるので、第2の通過帯域の帯域幅を高い自由度で容易に設定することが可能なバンドパスフィルタを得ることができる。
【0051】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、積層体10の第1の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4個の単一共振電極30a,30b,30c,30dからなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aの一方端の近傍で一方端が接地され、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体71を備えることから、単一共振電極群の最前段の単一共振電極30aと最後段の単一共振電極30bとの間で、単一共振電極結合導体71を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う単一共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。それに加えて、積層体10の第2の層間を間に挟んで第3の層間と反対側に位置する第5の層間に配置された、それぞれが2個の突起部28a,28bを備え、一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された隣り合う2個の複合共振電極29a,29bからなる複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端の近傍で一方端が接地され、複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍で他方端が接地されており、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する複合共振電極結合導体72とを備えていることから、複合共振電極群の最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aと最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bとの間で、複合共振電極結合導体72を介した誘導性の結合により伝達された信号と、隣り合う複合共振電極同士の容量性の結合により伝達された信号との間に180°の位相差が生じて互いに打ち消し合う現象を生じさせることができる。これにより、バンドパスフィルタの通過特性において、単一共振電極および複合共振電極によって形成される2つの通過帯域のそれぞれの両側近傍において信号が殆ど伝達されない減衰極を形成することができる。
【0052】
またさらに、本例のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極結合導体71が、最前段の単一共振電極30aに対して平行に対向する帯状の前段側結合領域71aと、最後段の単一共振電極30bに対して平行に対向する帯状の後段側結合領域71bと、前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域71cとから構成されており、複合共振電極結合導体72が、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aに対して平行に対向する帯状の第2の前段側結合領域72aと、最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bに対して平行に対向する帯状の第2の後段側結合領域72bと、第2の前段側結合領域72aおよび第2の後段側結合領域72bをこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する第2の接続領域72cとから構成されていることから、次の効果を得ることができる。まず、前段側結合領域71aと最前段の単一共振電極30aとの磁界による結合、後段側結合領域71bと最後段の単一共振電極30bとの磁界による結合、第2の前段側結合領域72aと最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aとの磁界による結合および第2の後段側結合領域72bと最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bとの磁界による結合をそれぞれ強めることができる。また、最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bならびにその間に位置する単一共振電極と接続領域71cとの磁界による結合を最小限に抑えることができるので、接続領域71cを介した意図しない単一共振電極同士の電磁界結合による電気特性の悪化を最小限に抑えることができる。同様に、最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bならびにその間に位置する突起部と第2の接続領域72cとの磁界による結合を最小限に抑えることができるので、第2の接続領域72cを介した意図しない複合共振電極同士の電磁界結合による電気特性の悪化を最小限に抑えることができる。
【0053】
さらにまた、本例のバンドパスフィルタによれば、単一共振電極結合導体71は、単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aの一方端の近傍の第1の環状接地電極23に貫通導体50を介して一方端が接続されており、単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍の第1の環状接地電極23に貫通導体50を介して他方端が接続されていることから、単一共振電極結合導体71の両端を第1の接地電極21または第2の接地電極22に接続して接地する場合と比較すると、単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aと単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極30bとの単一共振電極結合導体71を介した電磁界結合をさらに強めることができるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dによって形成される通過帯域の両側に形成される減衰極を通過帯域の近傍にさらに近づけることができる。これにより通過帯域近傍の阻止域における減衰量をさらに増大させることができる。
【0054】
同様に、本例のバンドパスフィルタによれば、複合共振電極結合導体72は、複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aの一方端の近傍の第2の環状接地電極24に貫通導体50を介して一方端が接続されており、複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍の第2の環状接地電極24に貫通導体50を介して他方端が接続されていることから、複合共振電極結合導体72の両端を第1の接地電極21または第2の接地電極22に接続して接地する場合と比較すると、複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aと複合共振電極群を構成する最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bとの複合共振電極結合導体72を介した電磁界結合をさらに強めることができるので、複合共振電極29a,29bによって形成される通過帯域の両側に形成される減衰極を通過帯域の近傍にさらに近づけることができる。これにより通過帯域近傍の阻止域における減衰量をさらに増大させることができる。
【0055】
(実施の形態の第2の例)
図5は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第2の例を模式的に示す外観斜視図である。図6は図5に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。図7は図5に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。図8は図5に示すバンドパスフィルタの例のQ−Q’線断面図である。なお、本例においては前述した第1の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0056】
本例のバンドパスフィルタにおいては、図5〜図8に示すように、積層体10の第1の層間と第4の層間との間に位置する層間Aに、第1の環状接地電極23に対向する領域と単一共振電極30c,30dに対向する領域とを有するように配置され、単一共振電極30c,30dに対向する領域が誘電体層11を貫通する貫通導体50によって単一共振電極30c,30dの他方端側にそれぞれ接続された共振補助電極32c,32dが、単一共振電極30c,30dに対応してそれぞれ配置されている。また、積層体10の第3の層間に、第1の環状接地電極23に対向する領域と単一共振電極30a,30bに対向する領域とを有するように配置され、単一共振電極30a,30bに対向する領域が誘電体層11を貫通する貫通導体50によって単一共振電極30a,30bの他方端側にそれぞれ接続された共振補助電極32a,32bが、単一共振電極30a,30bに対応してそれぞれ配置されている。
【0057】
また、本例のバンドパスフィルタは、積層体10の第2の層間に、共振補助電極32aに対向する領域と第1の入力結合電極40aに対向する領域とを有するように配置されるともに、第1の入力結合電極40aに対向する領域が貫通導体50によって第1の入力結合電極40aに接続され、共振補助電極32aに対向する領域が貫通導体50によって入力端子電極60aに接続された入力結合補助電極46aを備えている。そして、同じく第2の層間に、共振補助電極32bに対向する領域と第1の出力結合電極40bに対向する領域とを有するように配置されるともに、第1の出力結合電極40bに対向する領域が貫通導体50によって第1の出力結合電極40bに接続され、共振補助電極32bに対向する領域が貫通導体50を介して出力端子電極60bに接続された出力結合補助電極46bを備えている。
【0058】
さらに、本例のバンドパスフィルタにおいては、複合共振電極結合導体72が設けられておらず、単一共振電極結合導体71のみが設けられている。
【0059】
このような構造を備える本例のバンドパスフィルタによれば、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の環状接地電極23との間に生じる静電容量が、単一共振電極30a,30b,30c,30dと接地電位との間に生じる静電容量に加算されるため、単一共振電極30a,30b,30c,30dの長さを短縮することができるので、より小型のバンドパスフィルタを得ることができる。
【0060】
また、本例のバンドパスフィルタによれば、入力結合補助電極46aと共振補助電極32aとの電磁界結合が第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合に加算され、出力結合補助電極46bと共振補助電極32bとの電磁界結合が、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合に加算されるため、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合がさらに強まるので、単一共振電極30a,30b,30c,30dによって形成される通過帯域において、非常に広い通過帯域幅であっても、それぞれの共振モードの共振周波数の間に位置する周波数における挿入損失の増加がさらに低減された、広い通過帯域の全域に渡ってより平坦でより低損失な通過特性を得ることができる。
【0061】
さらに、本例のバンドパスフィルタによれば、複合共振電極結合導体72が設けられていないが、前述した実施の形態の第1の例と同様に単一共振電極結合導体71が設けられているため、前述した実施の形態の第1の例と同様に、単一共振電極30a,30b,30c,30dによって形成される通過帯域の低周波側と高周波側の両側近傍に減衰極を形成することができる。
【0062】
なお、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の環状接地電極23との対向部の面積は、必要な静電容量に応じて、例えば、0.01〜3mm2程度に設定される。また、共振補助電極32a,32b,32c,32dと第1の環状接地電極23との間隔は、小さい方が大きな静電容量を生じさせることができるが製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
【0063】
また、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bの幅は、例えば、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bと同程度に設定され、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bの長さは、例えば、共振補助電極32a,32bの長さよりも若干長めに設定される。入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bと共振補助電極32a,32bとの間の間隔は、小さい方が強い結合を生じさせる点で望ましいが製造上は難しくなるので、例えば、0.01〜0.5mm程度に設定される。
【0064】
(実施の形態の第3の例)
図9は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第3の例を模式的に示す外観斜視図である。図10は図9に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。図11は図9に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。図12は図9に示すバンドパスフィルタの例のR−R’線断面図である。なお、本例においては前述した第2の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0065】
本例のバンドパスフィルタにおいては、図9〜図12に示すように、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bが積層体10の第2の層間と第3の層間との間に位置する層間Bに配置されている。また、第2の入力結合電極41aおよび第2の出力結合電極41bが積層体10の第2の層間と層間Bとの間に位置する層間Cに配置されているとともに、第2の入力結合電極41aは入力側接続導体43aを介して第1の入力結合電極40aに接続されており、第2の出力結合電極41bは出力側接続導体43bを介して第1の出力結合電極40bに接続されている。
【0066】
このような構造を備える本例のバンドパスフィルタによれば、第2の入力結合電極41aが第3の層間よりも第2の層間に近い層間Cに配置されているので、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの間隔および第2の入力結合電極41aと入力段の複合共振電極29aとの間隔を維持したままで、入力段の単一共振電極30aと入力段の複合共振電極29aとの間隔を広げることが可能になるため、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第2の入力結合電極41aと入力段の複合共振電極29aとの電磁界結合を弱めることなく、入力段の単一共振電極30aと入力段の複合共振電極29aとの電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の入力結合電極40aと入力段の単一共振電極30aとの電磁界結合および第2の入力結合電極41aと入力段の複合共振電極29aとの電磁界結合をさらに強めることができる。
【0067】
また、本例のバンドパスフィルタによれば、第2の出力結合電極41bが第3の層間よりも第2の層間に近い層間Cに配置されているので、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの間隔および第2の出力結合電極41bと出力段の複合共振電極29bとの間隔を維持したままで、出力段の単一共振電極30bと出力段の複合共振電極29bとの間隔を広げることが可能になるため、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合および第2の出力結合電極41bと出力段の複合共振電極29bとの電磁界結合を弱めることなく、出力段の単一共振電極30bと出力段の複合共振電極29bとの電磁界結合を弱めることができ、これによって、第1の出力結合電極40bと出力段の単一共振電極30bとの電磁界結合および第2の出力結合電極41bと出力段の複合共振電極29bとの電磁界結合をさらに強めることができる。
【0068】
(実施の形態の第4の例)
図13は本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第4の例を模式的に示す分解斜視図である。図14は図13に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。なお、本例においては前述した第3の例と異なる点のみについて説明し、同様の構成要素については同一の参照符号を用いて重複する説明を省略する。
【0069】
本例のバンドパスフィルタにおいては、図13および図14に示すように、共振補助電極32a,32b,32c,32dの全てが積層体10の第3の層間に配置されている。また、積層体10の層間Aには、単一共振電極30aおよび30dの他方端とそれぞれ対向して両者を容量結合する第1の容量結合電極73aと、単一共振電極30bおよび30cの他方端とそれぞれ対向して両者を容量結合する第2の容量結合電極73bとを備えている。さらに、単一共振電極結合導体71において、接続領域71cが前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bと斜めに交わるようにして両者を接続している。
【0070】
このような構成を備える本例のバンドパスフィルタによれば、第1の容量結合電極73aおよび第2の容量結合電極73bを備えることから、共振電極間の結合状態の調整が容易になるので、フィルタの電気特性の調整が容易になる。
【0071】
(実施の形態の第5の例)
図15は本発明のバンドパスフィルタを用いた無線通信モジュール80および無線通信機器85の構成例を示すブロック図である。
【0072】
本発明の無線通信モジュール80は、例えば、ベースバンド信号が処理されるベースバンド部81と、ベースバンド部81に接続されベースバンド信号の変調後および復調前のRF信号が処理されるRF部82とを備えている。RF部82には前述の本発明のバンドパスフィルタ821が含まれており、ベースバンド信号が変調されてなるRF信号または受信したRF信号における通信帯域以外の信号をバンドパスフィルタ821によって減衰させている。具体的な構成としては、ベースバンド部81にはベースバンドIC 811が配置され、RF部82にはバンドパスフィルタ821とベースバンド部81との間にRF IC 822が配置されている。なお、これらの回路間には別の回路が介在していてもよい。そして、無線通信モジュール80のバンドパスフィルタ821にアンテナ84を接続することによってRF信号の送受信がなされる本発明の無線通信機器85が構成される。
【0073】
このような構成を有する本例の無線通信モジュール80および無線通信機器85によれば、通信に使用する周波数帯域の全域に渡って入力インピーダンスが良好に整合されて通過する信号の損失が小さくかつ通過帯域近傍に形成された減衰極によって阻止域の減衰量が充分に確保された本発明のバンドパスフィルタ821を送信信号および受信信号の濾波に用いることにより、バンドパスフィルタ821を通過する受信信号および送信信号の減衰が少なくなるとともにノイズも減少するため、受信感度が向上し、また、送信信号および受信信号の増幅度を小さくできるため増幅回路における消費電力が少なくなる。よって受信感度が高く消費電力が少ない高性能な無線通信モジュール80および無線通信機器85を得ることができる。
【0074】
本発明のバンドパスフィルタにおいて、誘電体層11の材質としては、例えばエポキシ樹脂等の樹脂や例えば誘電体セラミックス等のセラミックスを用いることができる。例えば、BaTiO3,Pb4Fe2Nb2O12,TiO2等の誘電体セラミック材料と、B2O3,SiO2,Al2O3,ZnO等のガラス材料とからなり、800〜1200℃程度の比較的低い温度で焼成が可能なガラス−セラミック材料が好適に用いられる。また、誘電体層11の厚みとしては、例えば0.01〜0.1mm程度に設定される。
【0075】
前述した各種の電極および貫通導体の材質としては、例えば、Ag,Ag−Pd,Ag−Pt等のAg合金を主成分とする導電材料やCu系,W系,Mo系,Pd系導電材料等が好適に用いられる。各種の電極の厚みは、例えば0.001〜0.2mmに設定される。
【0076】
本発明のバンドパスフィルタは、例えば次のようにして作製することができる。まず、セラミック原料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して泥漿を作製するとともに、ドクターブレード法によってセラミックグリーンシートを形成する。次に、得られたセラミックグリーンシートにパンチングマシーン等を用いて貫通導体を形成するための貫通孔を形成し、Ag,Ag−Pd,Au,Cu等の導体を含む導体ペーストを充填するとともにセラミックグリーンシートの表面に印刷法を用いて前述したのと同様の導体ペーストを塗布して導体ペースト付きセラミックグリーンシートを作製する。次に、これらの導体ペースト付きセラミックグリーンシートを積層し、ホットプレス装置を用いて圧着し、800℃〜1050℃程度のピーク温度で焼成することにより作製される。
【0077】
(変形例)
本発明は前述した実施の形態の第1〜第5の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更,改良が可能である。
【0078】
例えば、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、入力端子電極60aおよび出力端子電極60bを備えた例を示したが、モジュール基板の中の一領域にバンドパスフィルタが形成されるような場合には入力端子電極60aおよび出力端子電極60bは必ずしも必要なく、モジュール基板内の外部回路からの配線導体が、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bに直接接続するようにしても構わない。この場合は、第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bと配線導体との接続点が、第1の入力結合電極40aの電気信号入力点45aおよび第1の出力結合電極40bの電気信号出力点45bとなる。また、入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bを備える場合には、外部回路からの配線導体が入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bに直接接続するようにしても構わない。
【0079】
またさらに、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、積層体10の下面に第1の接地電極21を配置し、積層体10の上面に第2の接地電極22を配置した例を示したが、例えば、第1の接地電極21の下にさらに誘電体層を配置しても構わないし、第2の接地電極22の上にさらに誘電体層を配置しても構わない。
【0080】
さらにまた、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、4つの単一共振電極30a,30b,30c,30dを備え、単一共振電極群が4個の共振電極で構成された例を示したが、単一共振電極群が4以上の偶数個の共振電極で構成されるという条件を満たす範囲内であれば、単一共振電極および単一共振電極群を構成する共振電極の数を自由に設定することができる。例えば、単一共振電極が6個あり、その6個全てによって単一共振電極群が構成されるようにしても構わない。また、単一共振電極が6個有り、そのうちの任意の隣り合う4個の共振電極によって単一共振電極群が構成されるようにしても構わない。但し、共振電極の数が増えすぎると大型化や通過帯域内における損失の増加が生じるので、単一共振電極の数については、10個程度以下に設定されるのが望ましく、複合共振電極の数については、5個程度以下に設定されるのが望ましい。
【0081】
またさらに、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、単一共振電極30a,30b,30c,30dおよび複合共振電極29a,29bの両方において、それぞれ共振電極の一方端(接地端)が互い違いになるように横並びに配置されてインターデジタル型に電磁界結合された例を示したが、単一共振電極30a,30cが互いにコムライン型に電磁界結合され、単一共振電極30b,30dが互いにコムライン型に電磁界結合され、単一共振電極30c,30dが互いにインターデジタル型に電磁界結合されるようにしてもよく、このような構成を備えるバンドパスフィルタにおいても、2つの通過帯域それぞれの両側に減衰極を有して通過域から阻止域にかけて急激に減衰量が変化する優れた通過特性を有するバンドパスフィルタを得ることができる。この形態におけるメカニズムはまだ完全に解明できてはいないが、単一共振電極群の最前段の共振器と最後段の共振器との隣り合う共振電極を介した結合が全体的に容量性の結合である必要があると考えられる。
【0082】
さらにまた、前述した実施の形態の第1〜第4の例においては、単一共振電極結合導体71の両端が単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極30aおよび最後段の単一共振電極30bの一方端の近傍の第1の環状接地電極23に貫通導体50を介してそれぞれ接続された例を示し、前述した実施の形態の第1の例においては、複合共振電極結合導体72の両端が複合共振電極群を構成する最前段の複合共振電極29aの入力段の突起部28aおよび最後段の複合共振電極29bの出力段の突起部28bの一方端の近傍の第2の環状接地電極24に貫通導体50を介してそれぞれ接続される構成を示したが、例えば、単一共振電極結合導体71の両端が貫通導体50を介して第1の接地電極21に接続され、複合共振電極結合導体72の両端が貫通導体50を介して第2の接地電極22に接続されるようにしても構わない。また、例えば、単一共振電極結合導体71および複合共振電極結合導体72の周囲に環状接地導体を配置して、これらに単一共振電極結合導体71および複合共振電極結合導体72の両端を接続するようにしても構わない。但し、通過帯域の両側に発生する減衰極を通過帯域に近づけたい場合には、これらの方法はあまり好ましくない。
【0083】
またさらに、前述した実施の形態の例においては、積層体10が1つの積層体で構成された例を示したが、それぞれの積層体の積層方向に重ねて配置された複数の積層体によって積層体10が構成されるようにしても構わない。例えば、前述した実施の形態の第1の例のバンドパスフィルタにおいて、積層体10は第1の積層体およびその上に配置された第2の積層体によって構成されており、第1の層間および第4の層間は第1の積層体中の層間であり、第2の層間および第5の層間は第1の積層体の上に配置された第2の積層体中の層間であり、第3の層間は第1の積層体と第2の積層体との間の層間であるようにしても構わない。
【0084】
またさらに、UWBに用いられるバンドパスフィルタを例示してこれまで説明を行なってきたが、広帯域を要求される他の用途においても本発明のバンドパスフィルタが有効であることは言うまでもない。
【実施例】
【0085】
次に、本発明のバンドパスフィルタの具体例について説明する。
【0086】
図13〜図14に示した実施の形態の第4の例のバンドパスフィルタの電気特性を有限要素法を用いたシミュレーションによって算出した。
【0087】
算出条件としては、第1の共振電極30a,30b,30c,30dは幅が0.175mmで長さが4.05mmの矩形状とした。第1の共振電極30aと第1の共振電極30cとの間隔および第1の共振電極30dと第1の共振電極30bとの間隔はそれぞれ0.08mmとし、第1の共振電極30cと第1の共振電極30dとの間隔は0.091mmとした。入力段の複合共振電極29aは、幅が0.64mmで長さが0.65mmの矩形状の基部27の他方端に幅が0.25mmで長さが1.5mmの矩形状の入力段の突起部28aおよび幅が0.25mmで長さが2.75mmの矩形状の出力段の突起部28bが0.14mmの間隔を隔てて配置される構造とした。出力段の複合共振電極29bは、幅が0.64mmで長さが0.65mmの矩形状の基部27の他方端に幅が0.25mmで長さが2.75mmの矩形状の入力段の突起部28aおよび幅が0.25mmで長さが1.5mmの矩形状の出力段の突起部28bが0.14mmの間隔を隔てて配置される構造とした。また、入力段の複合共振電極29aと出力段の複合共振電極29bとの間隔は0.13mmとした。共振補助電極32a,32bはぞれぞれ第1の共振電極30a,30bの他方端から0.2mm離れた場所に配置した幅が0.2mmで長さが0.11mmの矩形と、それから第1の共振電極30a,30bに向かう幅が0.2mmで長さが0.4mmの矩形とを接合した形状とした。共振補助電極32c,32dはぞれぞれ第1の共振電極30c,30dの他方端から0.2mm離れた場所に配置した幅が0.29mmで長さが0.3mmの矩形と、それから第1の共振電極30c,30dに向かう幅が0.2mmで長さが0.4mmの矩形とを接合した形状とした。第1の入力結合電極40aおよび第1の出力結合電極40bは、幅が0.15mmで長さが3.7mmの矩形状とした。第2の入力結合電極41aは幅が0.25mmで長さが0.5mmの矩形状とし、入力側接続導体43aを介して第1の入力結合電極40aの第1の共振電極30aとの対向部の中央から電気信号入力点45aと反対側へ0.58mmの位置に接続した。第2の出力結合電極41bは幅が0.25mmで長さが0.5mmの矩形状とし、出力側接続導体43bを介して第1の出力結合電極40bの第1の共振電極30bとの対向部の中央から電気信号出力点45bと反対側へ0.58mmの位置に接続した。入力結合補助電極46aおよび出力結合補助電極46bは、幅が0.15mmで長さが0.9mmの矩形状とした。入力端子電極60aおよび出力端子電極60bはそれぞれ一辺が0.2mmの正方形とした。前段側結合領域71aおよび後段側結合領域71bは幅が0.1mmで長さが1.65mmの矩形状とし、接続領域71cは幅が0.1mmで長さが1.3mmの平行四辺形状とした。第1の容量結合電極73aは、第1の共振器30a,30dとそれぞれ対向する幅が0.175mmで長さが0.6mmの2つの矩形を幅が0.1mmの矩形で接続した形状とした。第2の容量結合電極73bは、第1の共振器30b,30cとそれぞれ対向する幅が0.175mmで長さが0.6mmの2つの矩形を幅が0.1mmの矩形で接続した形状とした。第1の接地電極21,第2の接地電極22,第1の環状接地電極23および第2の環状接地電極24の外形は幅が4mmで長さが5mmの矩形状とし、第1の環状接地電極23の開口部は幅が3.6mmで長さが4.2mmの矩形状とし、第2の環状接地電極24の開口部は幅が3.55mmで長さが4.2mmの矩形状とした。バンドパスフィルタ全体の形状は幅が4mmで長さが5mmで厚みが0.51mmの直方体状とした。積層体10の下面と層間Aとの間隔を0.165mmとし、層間Aと第1の層間との間隔,第1の層間と第3の層間との間隔,第3の層間と層間Bとの間隔,層間Bと層間Cとの間隔および層間Cと第2の層間との間隔をそれぞれ0.015mmとし、第2の層間と積層体10の上面との間隔を0.19mmとした。各種電極の厚みは0.01mmとし、入力側接続導体43a,出力側接続導体43bおよび貫通導体50の直径は0.1mmとした。誘電体層11の比誘電率は7.5とした。
【0088】
図16はそのシミュレーション結果を示すグラフであり、図17は図13〜図14に示した実施の形態の第4の例のバンドパスフィルタから単一共振電極結合導体71を除いた構造を備える比較例のバンドパスフィルタの電気特性のシミュレーション結果を示すグラフである。それぞれのグラフにおいて、横軸は周波数,縦軸は減衰量を表しており、バンドパスフィルタの通過特性(S21)および反射特性(S11)を示している。図16に示すグラフによれば、積層体10の厚みが0.51mmと非常に薄いにもかかわらず、2つの非常に広い通過帯域の全体に渡って良好にインピーダンスが整合されて平坦で低損失な優れた通過特性が得られている。また、低周波側の通過帯域の両側近傍に減衰極が形成されており、図17に示す比較例のバンドパスフィルタのシミュレーション結果と比較すると、通過帯域近傍の阻止域における減衰量が大きく改善されていることがわかる。この結果により、本発明のバンドパスフィルタによれば、非常に薄い形状であっても、2つの通過帯域のそれぞれにおいて広い通過帯域の全体に渡って平坦で低損失であり、且つ通過帯域から阻止域にかけて減衰量が急激に増加して通過帯域近傍の減衰量が充分に確保された優れた通過特性が得られることがわかり、本発明の有効性が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第1の例を模式的に示す外観斜視図である。
【図2】図1に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。
【図3】図1に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図4】図1に示すバンドパスフィルタの例のP−P’線断面図である。
【図5】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第2の例を模式的に示す外観斜視図である。
【図6】図5に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。
【図7】図5に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図8】図5に示すバンドパスフィルタの例のQ−Q’線断面図である。
【図9】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第3の例を模式的に示す外観斜視図である。
【図10】図9に示すバンドパスフィルタの例の模式的な分解斜視図である。
【図11】図9に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図12】図9に示すバンドパスフィルタの例のR−R’線断面図である。
【図13】本発明のバンドパスフィルタの実施の形態の第4の例を模式的に示す分解斜視図である。
【図14】図13に示すバンドパスフィルタの例の上下面および層間を模式的に示す平面図である。
【図15】本発明のバンドパスフィルタを用いた無線通信モジュールおよび無線通信機器の構成例を示すブロック図である。
【図16】本発明のバンドパスフィルタの電気特性のシミュレーション結果を示す図である。
【図17】比較例のバンドパスフィルタの電気特性のシミュレーション結果を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
10:積層体
11:誘電体層
21:第1の接地電極
22:第2の接地電極
27:基部
28a,28b:突起部
29a,29b:複合共振電極
30a,30b,30c,30d:単一共振電極
40a:第1の入力結合電極
40b:第1の出力結合電極
41a:第2の入力結合電極
41b:第2の出力結合電極
43a:入力側接続導体
43b:出力側接続導体
45a:電気信号入力点
45b:電気信号出力点
71:単一共振電極結合導体
71a:単一前段側結合領域
71b:単一後段側結合領域
71c:単一接続領域
72:複合共振電極結合導体
72a:第2の前段側結合領域
72b:第2の後段側結合領域
72c:第2の接続領域
80:無線通信モジュール
81:ベースバンド部
82:RF部
84:アンテナ
85:無線通信機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されてなる積層体と、
該積層体の下面に配置された第1の接地電極および上面に配置された第2の接地電極と、
前記積層体の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合する帯状の4個以上の単一共振電極と、
一方端が接地される基部および該基部の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに配置された帯状の複数の突起部によって前記基部の前記一方端が一方端となり前記突起部の他方端が他方端となるように構成され、前記一方端が接地されることによって、前記基部および前記突起部を合わせた全体が前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する共振器として機能するとともに、前記突起部が前記第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する共振器として機能する、前記積層体の第1の層間とは異なる第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された複数の複合共振電極と、
前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち入力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が入力される電気信号入力点を有する帯状の第1の入力結合電極と、
前記積層体の前記第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち出力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が出力される電気信号出力点を有する帯状の第1の出力結合電極と、
前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち入力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの入力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の入力結合電極と、
前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち出力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの出力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の出力結合電極と、
前記積層体の前記第1の層間を間に挟んで前記第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の前記単一共振電極からなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極の前記一方端の近傍で一方端が接地され、前記単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極の前記一方端の近傍で他方端が接地されており、前記最前段の単一共振電極および前記最後段の単一共振電極の前記一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体とを備え、
前記単一共振電極と前記複合共振電極における前記突起部とは前記積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されており、前記第2の入力結合電極は前記第1の入力結合電極の前記入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号入力点から遠い側に接続されて前記第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるとともに、前記第2の出力結合電極は前記第1の出力結合電極の前記出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号出力点から遠い側に接続されて前記第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記単一共振電極結合導体は、前記最前段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の前段側結合領域と、前記最後段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の後段側結合領域と、前記前段側結合領域および前記後段側結合領域をこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記第2の入力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記入力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されており、前記第2の出力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記出力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記第2の入力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の入力結合電極と一体化しており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の出力結合電極と一体化していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバンドパスフィルタ。
【請求項5】
前記第2の入力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して前記第1の入力結合電極に接続されており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して前記第1の出力結合電極に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバンドパスフィルタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のバンドパスフィルタを備えることを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のバンドパスフィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部と、前記RF部に接続されたアンテナとを備えることを特徴とする無線通信機器。
【請求項1】
複数の誘電体層が積層されてなる積層体と、
該積層体の下面に配置された第1の接地電極および上面に配置された第2の接地電極と、
前記積層体の第1の層間に一方端と他方端とが互い違いになるように横並びに配置された、それぞれ一方端が接地されて第1の周波数で共振するとともに相互に電磁界結合する帯状の4個以上の単一共振電極と、
一方端が接地される基部および該基部の他方端に各々の一方端が接続されて横並びに配置された帯状の複数の突起部によって前記基部の前記一方端が一方端となり前記突起部の他方端が他方端となるように構成され、前記一方端が接地されることによって、前記基部および前記突起部を合わせた全体が前記第1の周波数よりも高い第2の周波数で共振する共振器として機能するとともに、前記突起部が前記第2の周波数よりも高い第3の周波数で共振する共振器として機能する、前記積層体の第1の層間とは異なる第2の層間に相互に電磁界結合するように横並びに配置された複数の複合共振電極と、
前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち入力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が入力される電気信号入力点を有する帯状の第1の入力結合電極と、
前記積層体の前記第3の層間に配置された、前記4個以上の単一共振電極のうち出力段の単一共振電極の長さ方向の半分以上に渡る領域と対向して電磁界結合するとともに、電気信号が出力される電気信号出力点を有する帯状の第1の出力結合電極と、
前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち入力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの入力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の入力結合電極と、
前記積層体の前記第1の層間と前記第2の層間との間に位置する層間に配置された、前記複数の複合共振電極のうち出力段の複合共振電極における前記複数の突起部のうちの出力段の突起部と対向して電磁界結合する第2の出力結合電極と、
前記積層体の前記第1の層間を間に挟んで前記第3の層間と反対側に位置する第4の層間に配置された、隣り合う4以上の偶数個の前記単一共振電極からなる単一共振電極群を構成する最前段の単一共振電極の前記一方端の近傍で一方端が接地され、前記単一共振電極群を構成する最後段の単一共振電極の前記一方端の近傍で他方端が接地されており、前記最前段の単一共振電極および前記最後段の単一共振電極の前記一方端側にそれぞれ対向して電磁界結合する領域を有する単一共振電極結合導体とを備え、
前記単一共振電極と前記複合共振電極における前記突起部とは前記積層体の積層方向から見て互いに直交するように配置されており、前記第2の入力結合電極は前記第1の入力結合電極の前記入力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号入力点から遠い側に接続されて前記第1の入力結合電極を介して電気信号が入力されるとともに、前記第2の出力結合電極は前記第1の出力結合電極の前記出力段の単一共振電極との対向部における長さ方向の中央よりも前記電気信号出力点から遠い側に接続されて前記第1の出力結合電極を介して電気信号が出力されることを特徴とするバンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記単一共振電極結合導体は、前記最前段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の前段側結合領域と、前記最後段の単一共振電極に対して平行に対向する帯状の後段側結合領域と、前記前段側結合領域および前記後段側結合領域をこれらの領域に対してそれぞれ直交して接続する接続領域とから構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項3】
前記第2の入力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記入力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されており、前記第2の出力結合電極は前記積層体の積層方向から見て前記出力段の単一共振電極の長さ方向の中央よりも前記一方端側と交わるように配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記第2の入力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の入力結合電極と一体化しており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間に配置されて前記第1の出力結合電極と一体化していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバンドパスフィルタ。
【請求項5】
前記第2の入力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて入力側接続導体を介して前記第1の入力結合電極に接続されており、前記第2の出力結合電極は前記第3の層間よりも前記第2の層間に近い層間に配置されて出力側接続導体を介して前記第1の出力結合電極に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバンドパスフィルタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のバンドパスフィルタを備えることを特徴とする無線通信モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のバンドパスフィルタを含むRF部と、該RF部に接続されたベースバンド部と、前記RF部に接続されたアンテナとを備えることを特徴とする無線通信機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図6】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−11030(P2010−11030A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167416(P2008−167416)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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