説明

バーチャルコンカチネーションの切り替え方法、切り替え装置、およびプログラム

【課題】伝送網の構成を大きく変更することなく、従来のアーキテクチャを継承した状態で、SDHパスの切り替えに伴う伝送路の瞬断時間を短縮することができるVCTの切り替え方法、切り替え装置、およびプログラムを提供する。
【解決手段】バーチャルコンカチネーションの切り替え要求に応じたSDH伝送路の切り替えの実行を保留し、切り替え要求に関する情報を保持する第1のモードと、第1のモードによって保持された1または複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、SDH伝送路の切り替えを実行する第2のモードと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時分割多重伝送システムにおけるVCT(Virtual Concatenation:バーチャルコンカチネーション:仮想連結)の切り替え方法、切り替え装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
イーサネット(登録商標)などの通信網における伝送速度を高速にするため、伝送するデータの信号を時間的に分割し、その分割した信号を多重して伝送する時分割多重伝送システムが知られている。この時分割多重伝送システムでは、例えば、SDH(Synchronous Digiral Hierarchy:同期デジタルハイアラーキ)によって伝送するデータなどの情報をSDH信号にマッピングしている。また、このSDH信号を、VCTによって仮想的に連結した伝送網を介して伝送している。また、このVCT伝送網においては、必要に応じてVCTの接続を切り替えることによって、SDH信号の伝送効率を向上させている。また、VCTの接続の切り替えは、VCTによる伝送網にエラーが発生した場合にも行われる(特許文献1参照)。
【0003】
この時分割多重伝送システムにおけるVCTの切り替え制御は、SDH単位で行われている。このため、例えば、VCT伝送網内の伝送路にエラーが多発した場合には、その都度VCTの切り替えが発生していた。この切り替えによって、切り替えを行う伝送路の数、すなわち、SDHパスの数に相当する回数の伝送路の瞬断が起こっていた。このため、VCTで仮想連結した伝送網における伝送時間に、切り替えにおけるオーバーヘッドの時間が多く発生し、伝送効率が低下していた。
【0004】
このVCTの切り替えによる伝送効率の低下を軽減するため、特許文献2では、データ用の伝送路に切り替え制御用の伝送路をグルーピングし、伝送路に発生した障害によってデータの伝送に影響がある場合には、切り替え制御用の伝送路を介してVCTの切り替え制御を行うことによって、VCTの切り替えにおけるオーバーヘッドの時間を短縮する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−349860号公報
【特許文献2】特開2000−78153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の技術では、新たに切り替え制御用の伝送路を含む伝送路のグループを定義している。この新たな伝送路のグループを構成するためには、伝送網の構成を大きく変更する必要がある。このため、すでに構築されている伝送網に対して特許文献2で開示された新たな伝送路のグループを適用することは困難であるという問題がある。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術は、VCTの切り替えにおけるオーバーヘッドの時間を短縮する技術を提供するものではない。
【0008】
本発明は、上記の課題認識に基づいてなされたものであり、伝送網の構成を大きく変更することなく、従来のアーキテクチャを継承した状態で、SDHパスの切り替えに伴う伝送路の瞬断時間を短縮することができるVCTの切り替え方法、切り替え装置、およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のバーチャルコンカチネーションの切り替え方法は、バーチャルコンカチネーションにより仮想連結したSDH伝送路を介して伝送信号を伝送する時分割多重伝送システムにおけるバーチャルコンカチネーションの切り替え方法において、前記バーチャルコンカチネーションの切り替え要求に応じた前記SDH伝送路の切り替えの実行を保留し、前記切り替え要求に関する情報を保持する第1のモードと、前記第1のモードによって保持された1または複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、前記SDH伝送路の切り替えを実行する第2のモードと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の前記第2のモードは、前記バーチャルコンカチネーションの一括切り替えの実行を要求する切り替え実行要求に応じて、前記第1のモードによって保持された複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、複数の前記SDH伝送路の切り替えを同時に実行する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のバーチャルコンカチネーションの切り替え装置は、バーチャルコンカチネーションにより仮想連結したSDH伝送路を介して伝送信号を伝送する時分割多重伝送システムにおけるバーチャルコンカチネーションの切り替え装置において、前記バーチャルコンカチネーションの切り替え要求に応じた前記SDH伝送路の切り替えの実行を保留し、前記切り替え要求に関する情報を保持する第1の手段と、前記第1の手段によって保持された1または複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、前記SDH伝送路の切り替えを実行する第2の手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明のプログラムは、バーチャルコンカチネーションにより仮想連結したSDH伝送路を介して伝送信号を伝送する時分割多重伝送システムのコンピュータに、前記バーチャルコンカチネーションの切り替え要求に応じた前記SDH伝送路の切り替えの実行を保留し、前記切り替え要求に関する情報を保持する第1のステップと、前記第1のステップによって保持された1または複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、前記SDH伝送路の切り替えを実行する第2のステップと、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伝送網の構成を大きく変更することなく、従来のアーキテクチャを継承した状態で、SDHパスの切り替えに伴う伝送路の瞬断時間を短縮してVCTの切り替えをすることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による時分割多重伝送システムの概略構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施形態の時分割多重伝送システムにおけるVCTの切り替え処理の流れを示したシーケンス図である。
【図3】本発明の実施形態におけるVCTの切り替えのモード遷移を示した遷移図である。
【図4】本発明の実施形態によるVCTの切り替えを説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態による時分割多重伝送システムの概略構成を示したブロック図である。図1において、時分割多重伝送システム1は、サーバ10とNE(Network Element:ネットワークエレメント)20から構成される。また、本実施形態の時分割多重伝送システム1において、サーバ10とNE20とは、イーサネット(登録商標)などの通信手段であるネットワーク30によって接続されている。また、NE20は、SDH伝送網40を介してデータなどの情報(以下、「SDH信号」という)を伝送している。また、NE20は、イーサネット(登録商標)などのネットワーク50を介してデータなどの情報(以下、「イーサネット(登録商標)信号」という)を伝送している。
【0016】
サーバ10は、本実施形態の時分割多重伝送システム1におけるSDH信号の伝送を管理する。サーバ10には、OSS(Operation Support Syatem:オペレーションサポートシステム)101が備えられている。サーバ10は、OSS101におけるVCTの切り替え制御コマンド(指示コマンド)を、ネットワーク30を介してNE20に送信する。なお、サーバ10におけるVCTの切り替え処理、およびサーバ10がNE20に送信するVCTの切り替え制御コマンドに関しては、後述する。
【0017】
NE20は、SDH伝送網40内のSDHパスによって伝送されるSDH信号とネットワーク50によって伝送されるイーサネット(登録商標)信号との中継を行う。NE20は、SC(System Controller:システムコントローラ)201、SDH−IF(インタフェース)202−1〜202−4(以下、まとめて表すときには、「SDH−IF202」という)、MUX(マルチプレクサ)203、EoS(Ethernet(登録商標) over SDH)−IF204から構成される。また、NE20は、SDH伝送網40内のSDHパスに障害が発生した場合にサーバ10からネットワーク30を介して送信されてくるVCTの切り替え制御コマンドを受信し、受信したVCTの切り替え制御コマンドに従ってSDHパスの切り替えを行う。なお、サーバ10から送信されたVCTの切り替え制御コマンドに従ったNE20の動作に関しては、後述する。
【0018】
SC201は、サーバ10からネットワーク30を介して送信されてきたVCTの切り替え制御コマンドを受信する。この受信したVCTの切り替え制御コマンドに基づいて、VCTの切り替えモードが変更される。また、SC201は、VCTの切り替えモードに基づいて、VCTの切り替えを制御するための制御信号を、SDH−IF202、MUX203、およびEoS−IF204に出力する。なお、サーバ10から送信されたVCTの切り替え制御コマンドによって変更されるVCTの切り替えモードの遷移に関しては、後述する。また、本発明においては、VCTの切り替えモードの遷移に応じてSDH−IF202、MUX203、およびEoS−IF204に出力される、VCTの切り替えを制御するための制御信号に関しては、規定しない。
【0019】
SDH−IF202は、NE20が中継を行う複数のSDHパスをまとめたSDHパス群である。SDH−IF202は、SDH信号の伝送を行うときに主として用いられる現用のSDH−IFと、現用のSDH−IFと同じ情報が伝送される予備のSDH−IFとの対で1つの伝送経路を構成している。図1では、SDH−IF202−1とSDH−IF202−2とを対とし、SDH−IF202−3とSDH−IF202−4とを対とした例を示している。また、図1においては、SDH−IF202−1とSDH−IF202−3とを現用のSDH−IFとし、SDH−IF202−2とSDH−IF202−4とをそれぞれの予備のSDH−IFとしている。
【0020】
MUX203は、SC201から入力された制御信号に基づいて、SDHパスの切り替えを行う。MUX203には、SDHパスの切り替えを行うためのPPS(Pass Protection Switch:パスプロテクションスイッチ)2031−1〜2031−6(以下、まとめて表すときには、「PPS2031」という)が、それぞれのSDHパス毎に備えられている。これにより、SDH信号の切り替えをSDH−IF202単位ではなく、SDHパス毎に行うことができる。例えば、ネットワーク50によって伝送されてきたイーサネット(登録商標)信号を中継して、現用のSDH−IF202−3に伝送するときに、現用のSDH−IF202−3内のSDHパスに障害がある場合は、SC201から入力された制御信号に基づいて、現用のSDH−IF202−3内の障害があるSDHパスに伝送するSDH信号を、現用のSDH−IF202−3の予備のSDH−IFであるSDH−IF202−4内のSDHパスに切り替えて伝送する。
【0021】
PPS2031は、SC201から入力された制御信号に基づいて、SDHパスの切り替えを行う。PPS2031には、現用のSDH−IF内のSDHパスと、その現用のSDH−IFに対応し、同じ情報が伝送される予備のSDH−IF内のSDHパスとが接続される。PPS2031は、SDH伝送網40からNE20にSDH信号が入力される場合、切り替えたSDHパスを介して伝送されてきたSDH信号をEoS−IF204に出力する。また、NE20からSDH伝送網40にSDH信号を出力する場合、EoS−IF204から入力されたSDH信号を、切り替えたSDHパスに出力する。
【0022】
EoS−IF204は、SDHパスとイーサネット(登録商標)との関連付けを行う。EoS−IF204は、SC201から入力された制御信号に基づいて、入力されたSDH信号をイーサネット(登録商標)信号に変換する。また、EoS−IF204は、イーサネット(登録商標)信号をVCTの仮想連結に関連付ける。また、EoS−IF204は、VCTの仮想連結に関連付けられたイーサネット(登録商標)信号をSDH信号に変換して出力する。EoS−IF204には、MUX203内のPPS2031のそれぞれに対応したAU(Administrative Unit)2041−1〜2041−6(以下、まとめて表すときには、「AU2041」という)および仮想連結の情報を含むVCT2042が備えられている。
【0023】
AU2041は、SDHパスのSDH信号をVCTにおけるイーサネット(登録商標)信号に変換する。また、イーサネット(登録商標)信号をSDH信号に変換してSDHパスに出力する。
【0024】
VCT2042は、仮想連結の情報を記憶し、SC201から入力された制御信号に基づいて、記憶している仮想連結の情報を更新する。
【0025】
次に、VCTの切り替え処理について説明する。図2は、本実施形態の時分割多重伝送システムにおけるVCTの切り替え処理の流れを示したシーケンス図である。
【0026】
まず、サーバ10が障害のあるSDHパスの情報を取得すると、OSS101は、SDHパスの切り替えモードを切り替え保留モードに変更する切り替え制御コマンド(切り替え保留コマンド)をNE20に送信する(ステップS10)。なお、本発明においては、障害のあるSDHパスの情報の取得方法に関しての規定はしない。
【0027】
OSS101からの切り替え保留コマンドを受信したNE20内のSC201は、受信した切り替え保留コマンドに従い、SDHパスの切り替えモードを切り替え保留モードに変更する。ここで、NE20内のSC201の現在の動作モードが通常モードであった場合は、切り替えモードを切り替え保留モードに変更し、正常に切り替え保留モードに変更したことを示す正常応答をOSS101に返信する(ステップS20)。また、NE20内のSC201の現在の動作モードが切り替え実行モード、または切り替え保留モードであった場合は、現在の動作モードを維持し、切り替え保留モードに変更できないことを示すエラー応答をOSS101に返信する(ステップS21)。なお、NE20からエラー応答を受信したOSS101は、例えば、予め定められた時間が経過した後に、再度ステップS10を実行することもできる。
【0028】
NE20から正常応答を受信したOSS101は、切り替えを行うSDHパス毎に、SDHパスの切り替えを行うための切り替え制御コマンド(切り替えコマンド)をNE20に送信する(ステップS30)。
なお、OSS101がNE20に送信するSDHパス毎の切り替えコマンドに代えて、切り替えを行う全てのSDHパスを示す識別情報をNE20に送信することもできる。
【0029】
OSS101からSDHパスの切り替えコマンドを受信したNE20内のSC201は、指定されたSDHパスの切り替えを行うことが可能であるか否かを示す切り替え可否応答をOSS101に返信する。ここで、NE20内のSC201の現在の動作モードが切り替え保留モードであった場合は、指定されたSDHパスの切り替え動作を保留するとともに、指定されたSDHパスの切り替えを行うことが可能であることを示す正常応答をOSS101に返信する。また、NE20内のSC201の現在の動作モードが通常モード、または切り替え実行モードであった場合は、指定されたSDHパスの切り替えを行うことが不可能であることを示すエラー応答をOSS101に返信する(ステップS40)。なお、OSS101によるNE20への切り替えコマンドの送信(ステップS30)と、NE20によるOSS101への切り替え可否応答の返信(ステップS40)は、切り替えを行うSDHパスの数に相当する回数繰り返される。また、OSS101から複数の切り替えコマンドを受信したNE20は、OSS101からSDHパスの切り替えコマンドを受信する毎に、切り替え可否応答を返信する。なお、NE20内のSC201によってSDHパスの切り替え動作を保留する方法は、例えば、OSS101から受信したSDHパスの切り替えコマンド自体を保持する方法や、切り替え動作を行うSDHパスの識別情報を保持する方法などがあるが、本発明においては、NE20内のSC201によってSDHパスの切り替え動作を保留する方法に関しては規定しない。
なお、SDHパス毎の切り替えコマンドに代えて、切り替えを行う全てのSDHパスを示す識別情報をOSS101から受信した場合は、指定された全てのSDHパスに対して、SDHパス毎に切り替えを行うことが可能であるか否かを示す切り替え可否情報をOSS101に返信することもできる。
【0030】
NE20から正常応答を受信したOSS101は、正常応答を受信した各SDHパスの切り替えを実行するための切り替え制御コマンド(切り替え実行コマンド)をNE20に送信する。そして、OSS101からの切り替え実行コマンドを受信したNE20内のSC201は、受信した切り替え実行コマンドに従い、SDHパスの切り替えモードを現在の切り替え保留モードから切り替え実行モードに変更する(ステップS50)。これにより、SDHパスの切り替え動作が行われる。なお、ここで行われるSDHパスの切り替え動作では、ステップS40において保持したSDHパスの切り替えコマンドや、切り替え動作を行うSDHパスの識別情報に従って、複数のSDHパスの切り替えが同時に行われる。なお、OSS101からNE20に切り替え実行コマンドを送信するタイミングは、例えば、予め定められた時間が経過したときや、予め定められた数のSDHパスの切り替えが発生したときに切り替え実行コマンドを送信することができるが、本発明においては、OSS101からNE20に切り替え実行コマンドを送信するタイミングに関しては規定しない。
【0031】
OSS101からの切り替え実行コマンドに従ってSDHパスの切り替えを実行したNE20内のSC201は、SDHパスの切り替えが完了した後に、指定されたSDHパスの切り替えが完了したことを示す正常応答をOSS101に返信する(ステップS60)。また、NE20内のSC201は、SDHパスの切り替えが完了した切り替え番号を示す切り替え番号通知をOSS101に返信する(ステップS70)。
【0032】
NE20から正常応答および切り替え番号通知を受信したOSS101は、SDHパスの切り替え動作を完了する。
【0033】
次に、VCTの切り替え処理におけるモード遷移について説明する。図3は、本実施形態の時分割多重伝送システムにおけるNE20内のSC201のモード遷移を示した遷移図である。また、図3の説明においては、図2に示したシーケンス図を参照する。
【0034】
通常モードは、NE20がSDH伝送網40内のSDHパスによって伝送されるSDH信号を中継する動作を行っている動作モードである。NE20は、この通常モードのときにSDH伝送路40からSDH−IF202を介して入力されたSDH信号を、他のSDH−IF202を介してSDH伝送路40に伝送する。また、通常モードにおいては、OSS101から送信されてきたSDHパスの切り替えコマンドによる切り替え動作を行わない。
【0035】
切り替え保留モードは、SDHパスの切り替えを保留する動作を行うモードである。図2のステップS10〜ステップS20におけるOSS101からの切り替え保留コマンドに従って、通常モードから切り替え保留モードにモード遷移する(処理1)。
また、切り替え保留モードのときは、図2のステップS30〜ステップS40のように、OSS101からの切り替えコマンドを受け付ける。ただし、受け付けた切り替えコマンドの実行は保留される(処理2)。
また、OSS101から送信されてきたSDHパスの切り替えモードを通常モードに変更する切り替え制御コマンドを受信することによって通常モードにモード遷移する(処理3)。また、NE20内で異常処理が行われた場合には、通常モードに自動的にモード遷移する(処理3)。なお、通常モードにモード遷移するときのNE20内の異常処理は、例えば、MUX203やSC201の動作異常、切り替え保留モードにモード遷移してから予め設定した時間が経過したことによるタイムアウト処理などがあるが、本発明においては、この通常モードにモード遷移するNE20内の異常処理に関しては規定しない。また、切り替え保留モードにおいて、処理3によって通常モードに遷移した場合、NE20は、OSS101にエラー応答を返信する。
【0036】
切り替え実行モードは、切り替え保留モードで保留されたSDHパスの切り替えコマンドを同時に実行するモードである。図2のステップS50のように、OSS101からの切り替え実行コマンドに従って、切り替え保留モードから切り替え実行モードにモード遷移する(処理4)。
また、切り替え実行モードにおいて、SDHパスの切り替えが完了すると、図2のステップS60〜ステップS70のように、SDHパスの切り替えが完了したことを示す正常応答および切り替え番号通知をOSS101に行って、通常モードに自動的にモード遷移する(処理5)。
【0037】
上記に述べたとおり、本実施形態による時分割多重伝送システム1によれば、切り替え保留モードによって保留されていたSDHパスの切り替え動作が、切り替え実行モードによって同時(一括)に行われる。すなわち、従来、障害があるSDHパスの情報に基づいて逐次SDHパスの切り替えを行うことによって伝送路に起こっていた複数の瞬断が、複数のSDHパスを同時に切り替えることによって同時に起こるようになる。これにより、伝送路が瞬断している合計の時間(延べの瞬断時間)を短い時間とすることができる。
【0038】
ここで、VCTの切り替え動作の一例について説明する。図4は、本実施形態の時分割多重伝送システムにおけるVCTの切り替えを説明するブロック図である。図4では、EoS−IF204によってイーサネット(登録商標)信号がVCTの仮想連結に関連付けられ、さらに変換されたSDH信号を、現用のSDH−IFであるSDH−IF202−3と予備のSDH−IFであるSDH−IF202−4とからなる経路2のSDHパスに伝送する場合の例を示している。なお、図4において、図4(a)は、VCTの切り替え前の状態、図4(b)は、VCTの切り替え後の状態の例を示している。なお、図4においては、NE20の構成において、SDH信号の伝送に関係する内部ブロックのみを示している。
【0039】
図4(a)において、SDHパス3−1とSDHパス3−2とに障害がある場合、変換されたSDH信号をSDH−IF202−3のSDHパスに伝送することができない。このように、変換されたSDH信号を経路2に伝送できない場合、障害があるSDHパス3−1とSDHパス3−2とに接続されているPPS2031−4とPPS2031−5とが一括切り替えの対象のPPS2031となる。SC201は、OSS101から送信された障害があるSDHパスの切り替えコマンドに基づいて、PPS2031−4とPPS2031−5とに接続されたSDHパスの切り替えを制御するための制御信号をPPS2031−4とPPS2031−5とに出力する。これにより、PPS2031−4とPPS2031−5とに接続されたSDHパスが同時に切り替えられ、図4(b)に示すように、変換されたSDH信号をSDH−IF202−4のSDHパスに伝送することができる。このことによって、VCTの切り替えを行うことができ、EoS−IF204によって変換されたSDH信号の経路2への伝送が可能となる。
【0040】
VCTが図4(b)に示すように切り替えられた後、NE20は、VCTが切り替えられたSDH−IF202−4を現用のSDH−IFとする。
【0041】
上記に述べたとおり、本発明では、時分割多重伝送システムに、SDHパスの切り替え動作を保留する切り替え保留モードと、切り替え保留モードによって保留されていたSDHパスの切り替え動作を同時(一括)に実行する切り替え実行モードを設けた。また、本発明では、従来のアーキテクチャを継承した状態において、SDHパスの切り替え動作として、切り替え保留コマンドによるSDHパスの切り替え動作の保留→切り替えコマンドによる切り替えを行うSDHパスの通知→切り替え実行コマンドによるSDHパスの同時(一括)切り替えという手順を確立した。これにより、VCTの切り替え制御をSDH単位ではなく、指定した複数のSDHパスを同時(一括)に切り替えることができる。このことにより、従来のVCTの切り替え制御に比べて伝送路が瞬断する時間を短縮してVCTの切り替えをすることができる。
【0042】
なお、図2に示したOSS101とNE20の各処理ステップや図3に示したSC201の各モードの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、当該記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、時分割多重伝送システム1やSC201に係る上述した種々の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0043】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0044】
以上、本発明の実施形態について、図面を参照して説明してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においての種々の変更も含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1・・・時分割多重伝送システム
10・・・サーバ
101・・・OSS
20・・・NE
201・・・SC
202,202−1,202−2,202−3,202−4・・・SDH−IF
203・・・MUX
2031,2031−1,2031−2,2031−3,2031−4,2031−5,2031−6・・・PPS
204・・・EoS−IF
2041,2041−1,2041−2,2041−3,2041−4,2041−5,2041−6・・・AU
2042・・・VCT
30・・・ネットワーク
40・・・SDH伝送網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーチャルコンカチネーションにより仮想連結したSDH伝送路を介して伝送信号を伝送する時分割多重伝送システムにおけるバーチャルコンカチネーションの切り替え方法において、
前記バーチャルコンカチネーションの切り替え要求に応じた前記SDH伝送路の切り替えの実行を保留し、前記切り替え要求に関する情報を保持する第1のモードと、
前記第1のモードによって保持された1または複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、前記SDH伝送路の切り替えを実行する第2のモードと、
を含むことを特徴とするバーチャルコンカチネーションの切り替え方法。
【請求項2】
前記第2のモードは、
前記バーチャルコンカチネーションの一括切り替えの実行を要求する切り替え実行要求に応じて、前記第1のモードによって保持された複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、複数の前記SDH伝送路の切り替えを同時に実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載のバーチャルコンカチネーションの切り替え方法。
【請求項3】
バーチャルコンカチネーションにより仮想連結したSDH伝送路を介して伝送信号を伝送する時分割多重伝送システムにおけるバーチャルコンカチネーションの切り替え装置において、
前記バーチャルコンカチネーションの切り替え要求に応じた前記SDH伝送路の切り替えの実行を保留し、前記切り替え要求に関する情報を保持する第1の手段と、
前記第1の手段によって保持された1または複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、前記SDH伝送路の切り替えを実行する第2の手段と、
を含むことを特徴とするバーチャルコンカチネーションの切り替え装置。
【請求項4】
バーチャルコンカチネーションにより仮想連結したSDH伝送路を介して伝送信号を伝送する時分割多重伝送システムのコンピュータに、
前記バーチャルコンカチネーションの切り替え要求に応じた前記SDH伝送路の切り替えの実行を保留し、前記切り替え要求に関する情報を保持する第1のステップと、
前記第1のステップによって保持された1または複数の切り替え要求に関する情報に基づいて、前記SDH伝送路の切り替えを実行する第2のステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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