説明

パイプを密封閉鎖する栓

【課題】パイプを密封閉鎖するための栓と、密封閉鎖する方法を開示する。
【解決手段】パイプを密封閉鎖する栓は、スリーブと、圧力管路の接続部が設けられた円筒状の主要本体部とを有する。スリーブは円筒状の主要本体部に連結されており、スリーブおよび円筒状の主要本体部は、外側に密封状態の被加圧領域を形成し、被加圧領域は接続部と連絡状態にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプを密封封鎖する栓であって、栓が円筒状の主要本体部を備えるものに関連している。
【背景技術】
【0002】
パイプを閉鎖するのに栓を利用し、栓が弾性材を含んでいるとともに、栓の外径がパイプの内径よりも僅かに大きいものを利用することは従来公知であり、栓は圧入によりパイプ内に固定される。この結果として、パイプは密封閉鎖されるが、パイプ内が低圧である場合にのみ好適である。更に、内側ネジと外側ネジにより栓をパイプにネジ留めすることも従来公知である。基本的に、密封封鎖するのに、少なくとも1個の、Oリングなどのような封鎖部材も設けられる。更に、好適な栓は、封鎖部を形成するためにパイプに溶接されることもある。
【0003】
産業的に利用するための熱交換器、例えば、発電所において冷却または予熱を行うための熱交換器においては、パイプは長さが13.5メートルまでのものが使用される。このようなパイプは、取付完了後に一部を閉鎖する必要がある。適用例しだいでは、パイプは軸線方向の両端部で閉鎖されなければならない場合もあれば、軸線方向の両端部から離隔した位置で閉鎖する必要がある場合もある。更に、この種のパイプ内にはかなりの高圧が行き渡るため、必然的に、パイプの壁を出来るだけ無傷なままにしておくのが好ましいことがある。
【0004】
パイプ、配管、または、その両方を閉鎖する栓は米国特許第2,130,030A号公報から知られている。このような栓は、主要本体部と、この主要本体部の周囲に取付けられる変形可能なスリーブとを備えており、栓は、その内圧が主要本体部側に付与されるためにパイプ壁を弾性的に押圧し、これにより、その作用を受けたパイプの閉鎖が達成される。この場合は、とりわけ、パイプを密封閉鎖するのに弾性スリーブに内圧が継続して付与される必要がある点が欠点となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第2,130,030A号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の目的は、パイプを密封閉鎖するための栓と密封閉鎖する方法を開示することであり、斯かる栓により、作用を受けるパイプは簡単に密封封鎖され、特に、パイプ内が高圧である場合でも閉鎖部が封鎖される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的を達成するにあたり、添付の特許請求の範囲の請求項1に記載の特徴を有する栓が利用されるとともに、その従属項に記載の特徴を有しているパイプを密封閉鎖する方法が利用される。斯かる特徴を有利に変更したものが特許請求の範囲の各独立項の主題である。
【0008】
栓は変形可能なスリーブと、圧力管路用の接続部が設けられた円筒状の主要本体部とを備えている。スリーブは円筒状の主要本体部に連結されて、スリーブおよび円筒状の主要本体部は外側が封鎖される被加圧領域を形成し、この被加圧領域は、前記接続部と連絡状態になっている。
【0009】
パイプを密封閉鎖するために、栓はパイプに挿入され、圧力が円筒状の主要本体部の接続部に加えられ、従って、スリーブが被加圧領域において拡張することでパイプを密封状態に閉鎖するような態様で、プラグの被加圧領域に圧力が加えられる。圧力は、使用される素材の降伏点を越えてスリーブが変形するのに十分な高さになるように選択されるため、スリーブは、変形後は圧力が加えられなくても、恒久的に変形したままである。このために必要な圧力は、例えば好適な試験台などで、使用される素材の関数として実験的に確かめることができる。
【0010】
栓は、適切な長さの圧力管路により任意の距離だけパイプの中に容易に挿入することができるようにするとともに、圧力を加えることによりパイプの任意の点で封鎖部を形成するように栓を固定することができるようにするのが有利である。加えて、この栓はパイプを処理せずに済ますことができるが、それは、圧入が起こった結果として栓がパイプを封鎖するからである。更に、被加圧領域に加えられる圧力は、パイプ内に極度の圧力が存在する場合でも栓がパイプを密封状態に閉鎖するのに十分な高さになるように選択される。例えば、被加圧領域に加えられた圧力は、拡張するスリーブがパイプを変形させるのに十分な高さに選択されることにより、スリーブとパイプの間に、圧入に加えて形状一致が生じる。
【0011】
有利な設計では、被加圧領域は円筒状の主要本体部において、圧力源により接続部と連絡状態になる。圧力源には2個の開口が設けられており、その一方は円筒状の主要本体部の軸線方向に延び、もう一方は円筒状の主要本体部の半径方向に延びるようにするのが好ましい。半径方向に延びる開口は、その軸線方向の両端部のうちの一方端で被加圧領域に導通しているか、自由作業容積部に導通しているか、または、その両方に導通しており、更に軸線方向の両端部のうちの他方端で軸線方向に延びる開口部に導通している。これに較べて、軸線方向に延びる開口は半径方向に延びる開口から離隔する方向を向いている端部で接続部と導通するのが好ましい。これにより、被加圧領域と接続部の間、自由作業容積部と接続部の間、または、被加圧領域および自由作業容積部と接続部との間を特に容易に連絡状態にすることができる。
【0012】
更に有利な設計では、弁は圧力源に取付けられている。弁は逆止弁であり、この弁により、圧力管路を通る圧力が減少した場合、圧力管路が接続部から取外された場合、または、その両方の場合に被加圧領域内で圧力が散逸するのを回避することができるのが好ましい。これに代えて、または、これに加えて、過剰圧力弁が圧力源に取付けられており、これにより、被加圧領域において過剰圧力を散逸させることができる。
【0013】
更に有利な設計では、被加圧領域における円筒状の主要本体部の外径は、少なくともその一部がスリーブの内径よりも小さい。このようにして、自由作業容積部が被加圧領域に形成される。これは、自由作業容積部の領域においてスリーブを外側に好適に膨張させるのに寄与する。
【0014】
更に有利な設計では、スリーブはその軸線方向の両端部で円筒状の主要本体部に連結されている。これは、スリーブを円筒状の主要本体部に特に容易に連結するのに寄与する。
【0015】
更に有利な設計では、スリーブは円筒状の主要本体部に溶接されている。これにより、円筒状の主要本体部をスリーブに容易に密封状態に連結することができる。
【0016】
更に有利な設計では、円筒状の主要本体部には第1軸線方向部分を有し、この第1軸線方向部分は、スリーブによって放射方向に包囲されている。更に、円筒状の主要本体部は第2軸線方向部分を有し、この第2軸線方向部分は接続部を備え、斯かる接続部はスリーブの軸線方向外側に存在している。これにより、1個以上の装置を第1軸線方向部分に取付けることができるようになり、斯かる複数の装置は栓の周辺部と連絡状態になる。例えば、弁が、また特に過剰圧力弁が第1軸線方向部分に取付けられ、これにより、過剰圧力が生じた場合にスリーブの外側に圧力を散逸させることができる。
【0017】
或る有利な設計では、スリーブの肉壁はスリーブの内径よりもかなり小さい。これは、スリーブが所定の圧力で十分に外側に膨張し、圧力のために、スリーブ、円筒状の主要本体部、または、その両方が損傷することがないようにするのに寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】栓が負荷を加えられていない状態にあるのを例示した概略図である。
【図2】図1の栓が負荷を受けている状態でパイプに取付けられているのを例示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を、添付の図面に例示されている2つの具体的な実施例に基づいて後段でより詳細に説明してゆく。
【0020】
同じ構成の部材または同じ機能の部材を同定するのに、図1および図2の両方において同じ参照番号を使っている。
【0021】
図1は、栓2が本質的に円筒状の主要本体部4を備えることを示している。円筒状の主要本体部4は、第1軸線方向部分(第1軸線方向セクション)6、および、第2軸線方向部分(第2軸線方向セクション)8を含んでいる。これに代わる例として、円筒状の主要本体部4は軸線方向に単一部材しか含んでいなくてもよいし、または、2区分を超える個数の軸線方向部分を含んでいてもよい。円筒状の主要本体部4は、第2軸線方向部分8の領域がスリーブ10によって放射方向に包囲されている。スリーブ10は、第2軸線方向部分8の少なくとも軸線方向の両端領域を押圧するのが好ましい。このような軸線方向の両端領域においては、スリーブ10は円筒状の主要本体部4を封鎖しながらそこに連結されており、その連結手段としては、例えば、円筒状の主要本体部4の周囲に延びる2個の円形溶接継ぎ目12が介在する。これに加えて、封鎖部材はスリーブ10と第2軸線方向部分8との間に設けられるようにするとよい。更に、スリーブ10および円筒状の主要本体部4は、溶接継ぎ目12とは異なる接続手段により、互いに封鎖しながら連結されるようにしてもよい。
【0022】
被加圧領域14が、第2部分8とスリーブ10の間に放射方向に形成される。被加圧領域14は圧力源18を介して接続部16と連絡状態にあり、斯かる接続部は第1軸線方向部分6の軸線方向の両端領域のうち、スリーブ10とは反対方向に面している一方に実装されているのが好ましい。圧力源18には1個の開口が設けられているか、または、少なくとも2個の開口が設けられているのが好ましく、例えば、軸線方向に細長い開口であるのが特に好ましいが、斯かる開口が一方側では接続部16の中に導通しており、他方側では半径方向の開口に導通しており、斯かる半径方向の第1部分6の両端領域のうちのもう一方側で被加圧領域14に導通している。
【0023】
少なくとも1個の弁17が圧力源18に取付けられるのが好ましい。弁17は逆止弁として実装されるのがよいが、例えば、圧力管路を通る圧力が減少した場合には、または、圧力管路が接続部16から取外された場合には、斯かる逆支弁が被加圧領域において圧力が散逸するのを防止する。これに代わる例として、または、これに加えて、圧力源18に過剰な圧力が生じた場合に開いて栓2の損傷を防ぐ過剰圧力弁を設けるようにしてもよい。
【0024】
第2軸線方向部分8の外径は、少なくとも一部がスリーブ10の内径よりも小さくされて、被加圧領域14に自由作業容積部が形成されるようにするのが好ましい。スリーブ10は自由作業容積部のおかげで、例えば粘着力が原因で第2軸線方向部分8に強く粘着し過ぎることを回避している。これは、圧力が被加圧領域14に加えられると、意図したとおりにスリーブを外側に膨張させるのに簡単な態様で寄与している。
【0025】
図2は、栓2がパイプ20に取付けられていることを示している。栓2は、特に、スリーブ10は、外径がパイプ20と一致するように実装されて、栓2はパイプ20に容易に挿入することはでき、但し、パイプ20の密封閉鎖が、もはや行えなくなるほどの遊びがスリーブ10とパイプ20の内径との間に存在しないようにするのが好ましい。例えば、スリーブ10の外径は、栓2が、依然として、パイプ20の内部で容易に前後動を行える程度に選択されるとよい。
【0026】
栓2を使用したい場合には、栓2は接続部16で高圧管路に接続される。高圧管路は、圧力印加の用途の他にも、栓2を任意の距離だけパイプ20に挿入するために使用することができる。栓2がパイプ20の意図した部位にくると同時に、圧力管路と圧力源18により圧力が自由作業容積部に加えられる。圧力は、具体例として、4000バールにもなることがある。しかし、圧力はスリーブ10の寸法および素材の関数として選択されて、圧力が原因で変形することはできても損傷を被ることがないようにするのが好ましい。更に、スリーブ10の素材および圧力は、栓2がパイプ20を閉鎖した後でパイプ20の内部に行き渡る圧力値でも十分にパイプを密封するように選択される。
【0027】
この状態で圧力が被加圧領域14に加えられると、スリーブ10は外側に膨張し、従って、圧入によりパイプ20に密封状態に固定される。これに加えて、圧力は、スリーブ10の拡張によってパイプ20をスリーブ10の領域で変形させるのに十分な高さになるように選択され、圧入させるのみならず、栓2とパイプ20の間で形状がぴったり合うようにしてもよい。栓とパイプの十分な形状一致を強化し、スリーブ10の十分な変形を高め、または、その両方を実施することで、逆止弁は無くても済ませることができるが、これは、被加圧領域に圧力を加えなくともスリーブ10の変形が十分ならば密封閉鎖を確実に行えるからである。圧力は、スリーブ10が恒久的に変形したままになるのに十分な高さになるように選択されるのが好ましい。特に、スリーブ10は、素材がその降伏点を越えるまで引張られることで、変形後に圧力を緩めても変形したままであり、従って、恒久的にパイプ20を閉鎖する。スリーブ10を変形させるために利用される圧力は、例えば好適な試験台などで、使用される素材の関数として実験的に確かめておくのが好ましい。
【0028】
本発明は開示された具体的な実施例に限定されるものではない。例えば、円筒状の主要本体部4は軸線方向部分6、8がもっと数多くあってもよいし、または、もっと数が少なくてもよい。更に、1個の栓2につき、2本以上のスリーブ10が設けられてもよい。
【0029】
高温および腐食に対して耐性がある金属のうちでも、特にステンレス鋼は栓2の円筒状の主要本体部4およびスリーブ10の好ましい素材と思われる。本発明の有利な実施例においては、栓2は、クロミウム・ニッケル鋼などのようなパイプ20と同じ種類の素材を含んでいることで、栓2とパイプ20の熱膨張率が互いに異なっている結果として恒久的な密封部が損傷するのを出来る限り回避することができる。本発明による栓2は、パイプ20において摂氏300度までの高い使用温度と100バールまでの高い作業圧力に好適なように設計されている。通例の閉鎖部は、このように高い使用温度および作業圧力には適していない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプ(20)を密封閉鎖する栓(2であって、前記栓は変形可能なスリーブ(10)と、圧力管路用の接続部(16)が設けられた円筒状の主要本体部(4)とを備え、前記スリーブ(10)は円筒状の前記主要本体部(4)に連結され、前記スリーブ(10)、および、前記円筒状の主要本体部(4)は外側が封鎖される被加圧領域(14)を形成し、前記被加圧領域は前記接続部(16)と連絡状態になっている栓(2)において、
前記スリーブ(10)は恒久的に変形可能な素材から形成され、前記スリーブ(10)は前記素材の降伏点を越えて変形した後も変形したままであり、したがって、前記パイプ(20)を恒久的に閉鎖するようにした、
ことを特徴とする栓(2)。
【請求項2】
前記被加圧領域(14)は、前記円筒状の前記主要本体部(4)において、圧力源(18)を介して接続部(16)と連絡していることを特徴とする、請求項1に記載の栓(2)。
【請求項3】
前記栓(17)は前記圧力源(18)に取付けられることを特徴とする、請求項2に記載の栓(2)。
【請求項4】
前記被加圧領域(14)における前記円筒状の前記主要本体部(4)の外径は、少なくとも一部が前記スリーブ(10)の内径よりも小さく、従って、前記被加圧領域(14)には自由作業容積部が形成されることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の栓(2)。
【請求項5】
前記スリーブ(10)は、その軸線方向の両端部において、前記円筒状の前記主要本体部(4)に連結されることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の栓(2)。
【請求項6】
前記スリーブ(10)は、前記円筒状の前記主要本体部(4)に溶接されることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の栓(2)。
【請求項7】
円筒状の前記主要本体部(4)は第1軸線方向部分(6)を有しており、前記第1軸線方向部分は接続部(16)を含み、前記接続部は前記スリーブ(10)の軸線方向外側に存在し、前記円筒状の前記主要本体部(4)は第2軸線方向部分(8)を有し、前記第2軸線方向部分は、前記スリーブ(10)によって放射方向に包囲されることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の栓(2)。
【請求項8】
前記スリーブ(10)の肉壁は、前記スリーブの内径よりも、かなり小さいことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の栓(2)。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の栓(2)を利用してパイプ(20)を閉鎖する方法において、前記栓(2)は前記パイプ(20)に挿入され、圧力が円筒状の前記主要本体部(4)の前記接続部(16)に加えられ、従って、前記被加圧領域(14)において前記スリーブ(10)が拡張する態様で圧力が、前記被加圧領域(14)に加えられ、或いは、前記自由作業容積部に加えられ、または、前記被加圧領域(14)及び前記自由作業容積部の両方に加えられることで、前記スリーブ(10)の素材が、その降伏点を越えて引張られ、従って、前記パイプ(20)を恒久的に密封状態に閉鎖するようにしたことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−96350(P2010−96350A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237007(P2009−237007)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【出願人】(509284624)バルケ−デュール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】