説明

パイプハンドル保持機構

【課題】ホルダにバーハンドルを保持するための力を抑制し、ホルダによってバーハンドルを保持する保持性能を高め、ホルダに対するバーハンドルの着脱頻度が多い場合でもバーハンドル及びホルダを適切な状態で維持する。
【解決手段】パイプハンドル保持機構20は、丸パイプ状のバーハンドル17と、このバーハンドルの外周面を保持するホルダ50とからなる。ホルダは、バーハンドルの外周面を挟み込んでパイプ径方向へ弾性変形させることが可能な、複数の挟み込み部72L,72Rを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丸パイプ状のバーハンドルをホルダによって保持する、パイプハンドル保持機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業機においては、機体にバーハンドルをボルト止めや溶接によって固定する構造が一般に採用されている。これに対し、近年は、機体にバーハンドルを取り外し可能に取付ける技術が多用されてきており、その一例として、パイプハンドル保持機構がある。パイプハンドル保持機構は、作業者がバーハンドルを握って作業をする作業機に、多く採用されている。このようなパイプハンドル保持機構としては、例えば下記の特許文献1に記載された技術が知られている。
【0003】
特許文献1のパイプハンドル保持機構は、丸パイプ状のバーハンドルの外周面をホルダによって保持するものである。つまり、バーハンドルは、作業機の機体に設けられたホルダによって、保持される。詳しく述べると、ホルダは、半割り状に二分割された一対の分割体からなる。一対の分割体は、丸パイプ状のバーハンドルの外周面に被せるための、溝を有する。溝にバーハンドルを嵌め込み、一対の分割体を互いに組み合わせて締め付けることによって、一対の分割体はバーハンドルの外周面を挟み込む。このように、溝の内周面とバーハンドルの外周面との間の、摩擦力を利用して、ホルダでバーハンドルを保持することができる。
【0004】
このような特許文献1のパイプハンドル保持機構では、ホルダに対してバーハンドルがスリップしないように、大きい締め付け力を必要とする。このため、工具を用いて締め付けボルトを強く締め付けることになる。ホルダに対してバーハンドルを着脱する頻度が少ない場合には、これでも十分である。
【0005】
しかし、ホルダに対してバーハンドルを着脱する頻度が多い場合には、着脱作業が面倒であり、改良の余地がある。ホルダに対してバーハンドルを着脱する頻度が多い場合の、一例として、作業機の作業内容の変更に伴って、ホルダに対するバーハンドルの保持角度を変更する場合が挙げられる。また、作業機の使用状態と保管状態とで、ホルダに対するバーハンドルの保持角度を変更する場合が挙げられる。
【0006】
これに対し、双方間のスリップを防止するために、溝の内周面とバーハンドルの外周面の両方に、セレーション等の凹凸を設けることが考えられる。凹凸による組み合わせ構造なので、締め付けボルトによる締め付け力は、比較的小さくてすむ。しかし、ホルダに対してバーハンドルを着脱する頻度が多い場合には、凹凸の耐久性を確保するために、更なる改良の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−218813公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ホルダにバーハンドルを保持するための力を抑制し、ホルダによってバーハンドルを保持する保持性能を高め、ホルダに対するバーハンドルの着脱頻度が多い場合でもバーハンドル及びホルダを適切な状態で維持する、ことができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明では、丸パイプ状のバーハンドルと、このバーハンドルの外周面を保持するホルダとからなるパイプハンドル保持機構において、前記ホルダは、前記バーハンドルの外周面を挟み込んでパイプ径方向へ弾性変形させることが可能な、複数の挟み込み部を有したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明では、前記ホルダは、半割り状に二分割された一対の分割体からなり、この一対の分割体は、互いに対向し合う対向面から反対側へ窪んだ溝を、それぞれ有しており、これらの溝は、前記一対の分割体が互いに組み合わされたときに、1つの貫通孔を構成するものであり、この貫通孔は、前記バーハンドルが通るハンドル挿通孔を成し、前記複数の挟み込み部は、前記ハンドル挿通孔の内周面に、内周方向に所定の間隔で位置しており、組み合わされた前記一対の分割体同士を、人力でノブ付き締め付け部材によって締め付けたときに、その締め付け力に応じて、前記バーハンドルをパイプ径方向へ弾性変形させる構成であることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明では、前記ハンドル挿通孔の内周面は、前記複数の挟み込み部が位置していない、残りの部分をパイプ外方変形許容部とし、このパイプ外方変形許容部は、前記複数の挟み込み部によって前記バーハンドルを挟んでパイプの径内方へ弾性変形させる場合に、前記バーハンドルの挟み込まれていない部分が径外方へ弾性変形することを、許容するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明では、前記ホルダは、半割り状に二分割された一対の分割体からなり、この一対の分割体は、互いに対向し合う対向面から反対側へ向かって先細りとなる、略テーパ状断面の溝を、それぞれ有しており、これらの溝は、前記一対の分割体が互いに組み合わされたときに、1つの貫通孔を構成するものであり、この貫通孔は、前記バーハンドルが通るハンドル挿通孔を成し、前記各溝を形成するための各々の傾斜した溝面は、前記複数の挟み込み部を成し、これら複数の挟み込み部は、組み合わされた前記一対の分割体同士を、人力でノブ付き締め付け部材によって締め付けたときに、その締め付け力に応じて、前記バーハンドルをパイプ径方向へ弾性変形させる構成であることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明では、前記一対の分割体は、前記バーハンドルの外周面を挟み込んだ状態において、前記対向面同士が隙間を有して離間し、一端部同士がヒンジ機構によって連結されるとともに、他端部同士が前記ノブ付き締め付け部材によって連結される構成であり、このノブ付き締め付け部材は、頭部に前記ノブを有したボルトから成り、前記一対の分割体の一方は、前記頭部における押付け面によって前記一対の分割体の他方へ向かって押される、座面を有し、この座面は、前記一対の分割体により前記バーハンドルの外周面を挟み込んだ状態において、前記押付け面に対し傾斜面となる構成であり、この傾斜面は、前記ヒンジ機構から離れるにつれて、前記押付け面に接近するように傾斜する構成であることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明では、前記バーハンドル及び前記ホルダは、アルミニウム合金等の軽量合金から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、複数の挟み込み部によって、丸パイプ状のバーハンドルにおける外周面を挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるものである。バーハンドルの外周面が挟み込み部によって挟み込まれたときに、その挟み込み力に応じて、バーハンドルにおける丸パイプ状断面は、若干歪な形状に変形する(以下「弾性変形状態」と言う。)。その後、挟み込みが解除されたときには、バーハンドルにおける丸パイプ状断面は、元の形状に復帰する。丸パイプ状断面の弾性変形状態においては、バーハンドルの外周面における弾性変形した部分を、挟み込み部によって挟み込んだ状態を維持することができる。このため、挟み込み部に対して、バーハンドルの外周面がスリップすることはない。この結果、ホルダによってバーハンドルを常に確実に保持することができるので、ホルダによる保持性能を高めるとともに、保持の信頼性を十分に維持することができる。
【0016】
従来のパイプハンドル保持機構において、ホルダの内面に対しバーハンドルの外周面を摩擦力によって保持する場合には、大きい締め付け力が必要であった。
これに対して、請求項1では、複数の挟み込み部によってバーハンドルの外周面を挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるだけなので、ホルダにバーハンドルを保持するための力は、比較的小さくてすむ。
さらにまた、複数の挟み込み部によってバーハンドルの外周面を挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるだけなので、ホルダに対するバーハンドルの着脱作業を、頻繁に繰り返した場合であっても、バーハンドル及びホルダを常に適切な状態で維持することができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ホルダは、半割り状に二分割された一対の分割体によって構成されている。これら一対の分割体は、互いに対向し合う対向面から反対側へ向かって窪んだ溝を有している。
一対の分割体を組み合わせたときに、溝同士が対向し合う。これらの溝同士が対向し合うことによって、ホルダには貫通孔(バーハンドルが通るハンドル挿通孔)が形成される。この貫通孔の内周面には、内周方向に所定の間隔で、複数の挟み込み部が位置している。貫通孔を貫通しているバーハンドルは、複数の挟み込み部によって挟み込まれる。つまり、組み合わせた分割体同士を、人力によりノブ付き締め付け部材で締め付けたときに、バーハンドルの外周面は、挟み込み部により挟み込まれる。この結果、複数の挟み込み部は、締め付け部材の締め付け力に応じて、バーハンドルをパイプ径方向へ弾性変形させることができる。
このように、一対の分割体にそれぞれ溝を形成しただけの、簡単な構成のホルダによって、バーハンドルを確実に保持することができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、ハンドル挿通孔の内周面において、複数の挟み込み部が位置していない、残りの部分をパイプ外方変形許容部としている。
一般に、バーハンドルがパイプの径内方へ弾性変形しても、パイプ外周長さは、変形前の元の長さと変わらない。このため、複数の挟み込み部によってバーハンドルを挟んで、パイプの径内方へ弾性変形させた場合に、挟み込まれていない部分はパイプの径外方へ広がろうとする。つまり、ハンドル挿通孔の内周面よりもパイプの径外方へ、弾性変形しようとする(突き出ようとする)。
【0019】
これに対して、請求項3に係る発明では、ハンドル挿通孔の内周面よりも径外方へ、突き出ようとした部分を受け入れるように、ハンドル挿通孔の内周面にパイプ外方変形許容部を設けた。このため、複数の挟み込み部によって挟み込まれていない部分は、ハンドル挿通孔によって規制されることなく、パイプの径外方へ突き出ることができる。従って、バーハンドルを複数の挟み込み部によって挟んで、パイプ径方向に一層容易に弾性変形させることができる。
【0020】
請求項4に係る発明では、ホルダは、半割り状に二分割された一対の分割体によって構成されている。これら一対の分割体は、互いに対向し合う対向面から反対側へ向かって先細りとなる、略テーパ状断面の溝、つまり略V字状の溝を有している。これらの溝を形成するための各々の傾斜した溝面は、複数の挟み込み部を成す。
一対の分割体を組み合わせたときに、略V字状の溝同士が対向し合う。これらの溝同士が対向し合うことによって、ホルダには略四辺形断面の貫通孔(バーハンドルが通るハンドル挿通孔)が形成される。この貫通孔を貫通しているバーハンドルは、四辺形断面の貫通孔における四辺(挟み込み部)によって、挟み込まれる。つまり、組み合わせた分割体同士を、人力によりノブ付き締め付け部材で締め付けたときに、バーハンドルの外周面は、パイプ周方向の4点において、挟み込み部により挟み込まれる。この結果、4つの挟み込み部は、締め付け部材の締め付け力に応じて、バーハンドルをパイプ径方向へ弾性変形させることができる。
このように、一対の分割体にそれぞれ略テーパ状断面の溝を形成しただけの、簡単な構成のホルダによって、バーハンドルを確実に保持することができる。
【0021】
請求項5に係る発明では、各分割体の一端部同士は、ヒンジ機構によって連結される。このため、一方の分割体は、ヒンジ機構によって連結されている一端部をスイング基端として、他方の分割体に対しスイング可能である。
各分割体の他端部同士は、ノブ付き締め付け部材(頭部にノブを有したボルト)によって連結される。一対の分割体によりバーハンドルの外周面を挟み込んだ状態において、ボルトを締め込むと、頭部の押付け面は、一方の分割体における座面を、他方の分割体へ向かって押し付ける。
【0022】
このときに、一方の分割体における力のつり合いは、いわゆる、片持ち梁における力のつり合いと、同様である。ヒンジ機構によって連結されている一端部から、バーハンドルの外周面を挟み込む位置までの「第1の距離」に対して、上記一端部から、頭部の押付け面によって押し付けられる位置(ボルトの中心)までの「第2の距離」は大きい。このため、ボルトを締め込む力が小さくても、一対の分割体によってバーハンドルの外周面を挟み込む力は大きい。つまり、複数の挟み込み部によってバーハンドルの外周面を挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるために、ノブを回す力は、比較的小さくてすむ。従って、作業者の負担を軽減することができる。
【0023】
さらに、請求項5に係る発明では、座面は、ヒンジ機構から離れるにつれて押付け面に接近するように、傾斜している。このため、頭部の押付け面が座面を押し付ける位置は、ヒンジ機構から一層離れた位置になる。ここで、ボルトの中心から、頭部の押付け面が座面を押し付ける位置までの距離を「第3の距離」とする。上記一端部から、頭部の押付け面によって押し付けられる位置までの距離は、「第2の距離」に「第3の距離」を加えた大きさになり、一層大きくなる。従って、ノブを回す力は、より一層小さくてすむので、作業者の負担を一層軽減することができる。
【0024】
請求項6に係る発明では、バーハンドル及びホルダを、アルミニウム合金等の軽量合金によって構成している。このため、バーハンドルをパイプ径方向へ所定量だけ弾性変形させるための力は、鋼材製のバーハンドルを採用した場合に比べて、小さくてすむ。
さらには、複数の挟み込み部によってバーハンドルの外周面を挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させる構成のパイプハンドル保持機構なので、軽量化のためにバーハンドル及びホルダを、アルミニウム合金等の軽量合金によって構成したにもかかわらず、従来の摩擦力を利用したパイプハンドル保持機構や、セレーション等の凹凸を設けたパイプハンドル保持機構に比べて、耐久性が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るパイプハンドル保持機構を採用した刈払機の斜視図である。
【図2】図1に示す刈払機を保管する状態にセットした作用図である。
【図3】図1に示されたパイプハンドル保持機構の斜視図である。
【図4】図3の4−4線断面図である。
【図5】図4に示されたパイプハンドル保持機構の分解図である。
【図6】図4に示すハンドル挿通孔及びバーハンドルの拡大図である。
【図7】図6に示すハンドル挿通孔及びバーハンドルの分解図である。
【図8】図6に示すハンドル挿通孔からバーハンドルを外した状態を示す説明図である。
【図9】図8に示すハンドル挿通孔の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明を実施するための形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0027】
実施例に係るパイプハンドル保持機構について、図1〜図9に基づき説明する。なお、本発明のパイプハンドル保持機構を、刈払機に採用した実施例について説明する。
図1は本発明に係るパイプハンドル保持機構を採用した刈払機の斜視図である。図2は図1に示す刈払機を保管する状態にセットした作用図である。
【0028】
図1に示すように、刈払機10は、丸パイプ状の操作杆11に回転軸12を通し、この回転軸12を操作杆11の一端11aに設けた原動機13で駆動することにより、操作杆11の他端11bに設けた刈刃14を回転させるようにしたものである。原動機13はエンジンから成る。操作杆11は、刈刃14の後半部を覆うカバー15と、肩掛けバンド用フック16と、バーハンドル17とを備えている。肩掛けバンド用フック16は、作業者の肩に掛けるための肩掛けバンドを取付けるものである。
【0029】
バーハンドル17、つまりバー状のハンドル17は操作ハンドルの一種であり、細長い操作杆11の長手途中から左右へ延びている。このバーハンドル17は、操作杆11から左右へ延びるのでハンドル幅が大きい。このため、バーハンドル17を用いた刈払機10は、平坦地や畦道など種々の地形で刈り払い作業をするのに好適であり、多く用いられている。
【0030】
詳しく説明すると、バーハンドル17は、アルミニウム合金等の軽量合金から成る1本の丸パイプによって、正面視略U字状に形成されている。このU字状のバーハンドル17における中央部17aは、操作杆11の長手途中に、パイプハンドル保持機構20によって取り付けられている。図1において、操作杆11に対し、中央部17aは上方にオフセット(偏心)している。バーハンドル17において、中央部17aから左右に延びた部分の先端には、それぞれグリップ17b,17cが取り付けられている。
【0031】
作業者は、身体の腰に沿わせた操作杆11を斜め前方へ延ばすようにして、一方の肩に刈払機10を吊り下げ、バーハンドル17のグリップ17b,17cを両手で握って、上下左右に振ることにより、刈刃14によって雑草を刈ることができる。
【0032】
上述のように、バーハンドル17を備えた刈払機10は、細長い操作杆11に対して、バーハンドル17が略直交する方向に延びている。このため、刈払機10を保管するときに、バーハンドル17が左右へ延びている分、保管スペースが余分に必要である。また、刈払機10による作業効率を高めるためには、作業者の体型や刈払機10による作業状況に応じて、操作杆11に対するバーハンドル17の取付け角を変更できることが好ましい。
【0033】
これに対して、本発明では、操作杆11に対するバーハンドル17の取付け角を変更できる、パイプハンドル保持機構20を採用したことを特徴とする。このため、例えば、刈払機10を使用するときには、図1に示すように、操作杆11に対してバーハンドル17を略直交させてセットすることが可能である。一方、刈払機10を保管するときには、図2に示すように、操作杆11に対してバーハンドル17を略平行にセットすることが可能である。
【0034】
以下、パイプハンドル保持機構20について詳細に説明する。図3は図1に示されたパイプハンドル保持機構の斜視図である。図4は図3の4−4線断面図である。図5は図4に示されたパイプハンドル保持機構の分解図である。
【0035】
図3〜図5に示すように、パイプハンドル保持機構20は、操作杆11に固定する取付ベース30と、バーハンドル17を保持するホルダ50と、取付ベース30にホルダ50を固定するロックボルト90とから成る。ロックボルト90は頭部91にノブ92を有している、ノブ付き締め付け部材である。取付ベース30及びホルダ50は、アルミニウム合金等の軽量合金のダイカスト品から成る。このように、バーハンドル17、取付ベース30及びホルダ50を軽量合金によって構成することにより、刈払機10の軽量化を図ることができる。
【0036】
取付ベース30は、半割り状に二分割された一対の分割体31,41(ベース半体31,41)からなる。一対のベース半体31,41は、互いに対向し合う対向面32,42から反対側へ窪んだ溝33,43を、それぞれ有している。これらの溝33,43は、一対のベース半体31,41が互いに組み合わされたときに、1つの貫通孔44を構成するものである。この貫通孔44は、操作杆11が通る操作杆挿通孔を成す。
【0037】
以下、一対のベース半体31,41については、ホルダ50を連結する方のベース半体31のことを「第1ベース半体31」と言い、第1ベース半体31に重ね合わせる方のベース半体41のことを「第2ベース半体41」と言う。
【0038】
第1ベース半体31は、対向面32の方向から見たときに略円形状を呈した、平盤から成り、溝33とナット34(図4参照)と菊座35とを有している。ナット34は、ロックボルト90をねじ込むものであって、第1ベース半体31にインサート成形されている。
【0039】
菊座35は、第1ベース半体31において対向面32とは反対側の面36(ホルダ取付け面36)に形成されており、ナット34に対して同心に位置する。この菊座35は、ナット34の中心を基準として、同一面上に放射状に形成された、多数の歯35aの集合から成る。これらの歯35aは、略台形の歯形に形成されている。このように、多数の歯35aが平坦な面に放射状に形成された構成は、菊の花に似ていることから、一般に菊座と言われている。
【0040】
第2ベース半体41は、第1ベース半体31に対して概ね同じ形状を呈した平盤であり、溝43を有している。溝43は、第1ベース半体31の溝33に対して同じ構成である。第1及び第2ベース半体31,41を重ね合わせることにより、溝33,43に操作杆11を挟み込み、その後に、第1及び第2ベース半体31,41同士をボルト45,45によって締め込むことにより、操作杆11に取付ベース30を摩擦力で取付けることができる。
【0041】
ホルダ50は、半割り状に二分割された一対の分割体51,61(ホルダ半体51,61)からなる。この一対のホルダ半体51,61は、互いに対向し合う対向面52,62から反対側へ窪んだ溝53,63を、それぞれ有している。これらの溝53,63は、一対のホルダ半体51,61が互いに組み合わされたときに、1つの貫通孔70を構成するものである。この貫通孔70は、バーハンドル17が通るハンドル挿通孔を成す。以下、この貫通孔70のことを適宜「ハンドル挿通孔70」と言うことにする。
【0042】
さらに、図4に示すように、一対の分割体51,61は、バーハンドル17の外周面を挟み込んだ状態において、対向面52,62同士が隙間C1を有して離間している。そして、ハンドル挿通孔70の中心CH(図4参照)を基準として、一対の分割体51,61における一端部54,64同士がヒンジ機構80によって連結されるとともに、一対の分割体51,61における他端部55,65同士がロックボルト90によって連結されている。
【0043】
以下、一対のホルダ半体51,61については、第1ベース半体31に連結される方のホルダ半体51のことを「第1ホルダ半体51」と言い、第1ホルダ半体51に重ね合わせる方のホルダ半体61のことを「第2ホルダ半体61」と言う。
【0044】
第1ホルダ半体51は、対向面52の方向から見たときに略矩形状を呈した、平盤から成り、溝53と掛け止め凸部56,56とボルト孔57と菊座58とを有している。2つの掛け止め凸部56,56は第1ホルダ半体51の一端部54に位置し、ボルト孔57及び菊座58は第1ホルダ半体51の他端部55に位置する。
【0045】
詳しく述べると、ボルト孔57は、第1ベース半体31のナット34に対して同心に位置する。このボルト孔57は、対向面52に対して直交する方向に貫通しており、ロックボルト90を通すものである。
【0046】
菊座58は、第1ベース半体31の菊座35に噛み合うものである。この菊座58は、第1ホルダ半体51において対向面52とは反対側の面59(ベース取付け面59)に形成されており、ボルト孔57に対して同心に位置する。第1ベース半体31の菊座35に対して、上述した第1ホルダ半体51の菊座58は同じ構成である。第1ベース半体31のホルダ取付け面36に、第1ホルダ半体51のベース取付け面59を重ね合わせるとともに、菊座35,58同士の中心を合致させたときに、これらの菊座35,58における歯35a,58a(図5参照)同士が噛み合う。
【0047】
第2ホルダ半体61は、第1ホルダ半体51に対して概ね同じ形状を呈した平盤であり、溝63と掛け止めアーム66,66とボルト孔67とを有している。溝63は、第1ホルダ半体51の溝53に対して、実質的に同じ構成である。2つの掛け止めアーム66,66は第2ホルダ半体61の一端部64に位置し、ボルト孔67は第2ホルダ半体61の他端部65に位置する。
【0048】
2つの掛け止めアーム66,66は、第2ホルダ半体61の対向面62から第1ホルダ半体51の対向面52へ向かって延びており、その先端の爪66a,66aを各掛け止め凸部56,56に引っ掛けるものである。掛け止め凸部56,56と爪66a,66aの組み合わせ構造は、ヒンジ機構80(図3参照)を成す。このように、ヒンジ機構80は、第1・第2ホルダ半体51,61における各一端部54,64を、互いに引っ掛け合うことによって係止する構成である。掛け止め凸部56,56に対する爪66a,66aの掛け止め位置をスイング中心Q1とし、第1ホルダ半体51に対して第2ホルダ半体61が開閉可能である。つまり、第2ホルダ半体61は、ヒンジ機構80によって連結されている一端部64をスイング基端として、第1ホルダ半体51に対しスイング可能である。
【0049】
ボルト孔67は、第1ホルダ半体51のボルト孔57と同じ構成であって、このボルト孔57に対して同心に位置している。このボルト孔67は、対向面62に対して直交する方向に貫通しており、ロックボルト90を通すものである。
【0050】
ところで、図4に示すように、第2ホルダ半体61(一対の分割体51,61の一方61)は、ロックボルト90の頭部91における押付け面91aによって、第1ホルダ半体51(一対の分割体51,61の他方51)へ向かって押される面68(座面68)を有している。この座面68は、第2ホルダ半体61において、対向面62とは反対側の面69に形成されている。頭部91の押付け面91aと座面68との間には、皿ワッシャ101及び平ワッシャ102が介在している。
【0051】
さらに、図4に示すように、座面68は、一対の分割体51,61によりバーハンドル17の外周面を挟み込んだ状態において、押付け面91aに対し傾斜面となる構成である。この座面68(傾斜面68)は、ヒンジ機構80から離れるにつれて、頭部91の押付け面91aに接近するように、傾斜角Spだけ傾斜する構成である。
【0052】
このことについて、より詳しく説明する。図4は、掛け止め凸部56,56に爪66a,66aが掛けられるとともに、一対の分割体51,61によりバーハンドル17の外周面を挟み込んだ状態を示している。この状態において、第2ホルダ半体61の対向面62は、第1ホルダ半体51の対向面52に対し、若干の傾斜角βを有して傾斜するように、構成されている。この傾斜角βは、対向面52,62間の隙間C1を、一端部64側よりも他端部65側で広くするように設定される。このような傾斜角βは、ハンドル挿通孔70の径に対する、バーハンドル17のパイプ径の大きさに応じて決まる。好ましくは、傾斜角βは、一対の分割体51,61により、バーハンドル17の外周面を挟み込んで、パイプ径方向へ一定量だけ弾性変形させたときに、第1ホルダ半体51の対向面52に対し、第2ホルダ半体61の対向面62が概ね平行になるように設定される。
【0053】
座面68は、第2ホルダ半体61の対向面62に対して、平行となるように設定される。この結果、座面68は、押付け面91aに対して、一端部64側よりも他端部65側が接近するように、傾斜角Spだけ傾斜する。
【0054】
または、座面68は、第2ホルダ半体61の対向面62に対して、若干傾斜させてもよい。その場合の座面68は、対向面62に対して、一端部64側よりも他端部65側が高くなるように設定される。この結果、座面68は、押付け面91aに対して、一端部64側よりも他端部65側が接近するように、傾斜角Spだけ傾斜する。
【0055】
操作杆11に取り付けられている取付ベース30に対して、ホルダ50及びバーハンドル17を取付ける手順は、例えば次の通りである(図4及び図5参照)。
先ず、第1ホルダ半体51の溝53にバーハンドル17の中央部17aを嵌め込む。
次に、掛け止め凸部56,56に掛け止めアーム66,66を引っ掛け、この互いに掛けた部分をヒンジとし、第2ホルダ半体61をスイングさせて、第1・第2ホルダ半体51,61の対向面52,62同士を互いに、向かい合わせる。この結果、第1・第2ホルダ半体51,61の溝53,63にバーハンドル17の中央部17aが挟み込まれる。
次に、第1ベース半体31の菊座35に、第1ホルダ半体51の菊座58を位置合わせしながら噛み合わせる。
次に、ロックボルト90をボルト孔67,57に通して、ナット34(図4参照)にねじ込む。作業者は、ノブ92を手で摘んで回すことによってロックボルト90をねじ込み又は緩めることができる。これで、ホルダ50及びバーハンドル17の取付け作業を完了する。
【0056】
操作杆11に対してバーハンドル17の取付け角を変更する手順は、例えば次の通りである(図4及び図5参照)。
先ず、ロックボルト90を緩める。
次に、第1ベース半体31の菊座35に対する第1ホルダ半体51の菊座58の噛み合わせが外れる方向に、ホルダ50を移動させる。
次に、操作杆11に対してバーハンドル17の取付け角を任意に変更する。
次に、第1ベース半体31の菊座35に対して、第1ホルダ半体51の菊座58を噛み合わせる。
次に、ロックボルト90を締め付ける。これで、取付け角の変更作業を完了する。
【0057】
次に、ハンドル挿通孔70について詳細に説明する。図6は図4に示すハンドル挿通孔及びバーハンドルの拡大図である。図7は図6に示すハンドル挿通孔及びバーハンドルの分解図である。図8は図6に示すハンドル挿通孔からバーハンドルを外した状態を示す説明図である。
【0058】
図7に示すように、第1ホルダ半体51の対向面52において、第1ホルダ半体51の一端部54側は、ハンドル挿通孔70の中心CHよりも第2ホルダ半体61側へ、第1の距離Xb1だけ突出している。一方、第1ホルダ半体51の対向面52において、第1ホルダ半体51の他端部55側は、中心CHに対して、溝53の底側へ第2の距離Xb2だけ後退している。
【0059】
第1ホルダ半体51の溝53は、略半円状断面に形成されており、想像線によって示す基準円Liを基本的な形状とした、内面53aから成る。この基準円Liは、ハンドル挿通孔70の中心CHを基準とした、半径R2の真円である。略真円状の丸パイプから成るバーハンドル17の、パイプ径をdiとしたときに、半径R2は、パイプ径diの1/2よりも若干大きい(R2>di/2)。好ましくは、半径R2はdi/2よりも0.1〜0.2mm大きい値である。
【0060】
より具体的には、溝53の内面53aは、基準円Liよりも径外方に位置している底面71と、基準円Li上に位置している左右の側面72L,72Rと、基準円Liよりも径外方に位置している左右の縁面73L,73Rとが、連続したものである。
【0061】
底面71は、溝53における最も深い位置に有る円形状の面であって、中心CBを基準とした半径R1の円形に形成されている。半径R1は、パイプ径diの1/2よりも若干小さい(R1<di/2)。好ましくは、半径R1はdi/2よりも1〜2mm小さい値である。このように、「R2>di/2>R1」の関係にある。基準円Liと底面71との間には所定の隙間C2を有する。この隙間C2の大きさδは、最も大きい部分で0.1〜0.5mmに設定される。このため、ハンドル挿通孔70の中心CH(半径R2の基準となる中心CH)に対して、半径R1の基準となる中心CBは、底面71側に距離Xoだけオフセットしている。底面71の範囲(左右両端の点P1,P1間の範囲)は、ハンドル挿通孔70の中心CHを基準として、角度θ1である。
【0062】
左右一対の側面72L,72Rは、底面71における左右両端の点P1,P1から対向面52へ向かう、円形状の面であって、ハンドル挿通孔70の中心CHを基準とした半径R2の円形に形成されている。中心CHを基準として、左の側面72L及び右の側面72Rの範囲(点P1から点P2までの範囲)は角度θ2である。
【0063】
左右一対の縁面73L,73Rは、左右の側面72L,72Rにおける左右両端の点P2,P2から対向面52までにわたって形成された平坦面であり、基準円Liに対して径外方へ開いている。一対の縁面73L,73Rがなす開き角αは鋭角であり、例えば60°〜70°に設定される。中心CHを基準として、左の縁面73Lの範囲(点P2から対向面52までの範囲)は角度θ3Lであり、右の縁面73Rの範囲(点P2から対向面52までの範囲)は角度θ3Rである。
【0064】
また、図7に示すように、第2ホルダ半体61の対向面62において、第2ホルダ半体61の一端部64側は、中心CHに対して、溝63の底側へ第3の距離Xb3だけ後退している。一方、第2ホルダ半体61の対向面62において、第2ホルダ半体61の他端部65側は、中心CHに対して、溝63の底側へ第4の距離Xb4だけ後退している。第3の距離Xb3に対して第4の距離Xb4は大きい(Xb3<Xb4)。
【0065】
第2ホルダ半体61の溝63は、第1ホルダ半体51の溝53と同様に、略半円状断面に形成されており、想像線によって示す基準円Liを基本的な形状とした、内面63aから成る。この溝63の内面63aは、基準円Liよりも径外方に位置している底面71と、基準円Li上に位置している左右の側面72L,72Rと、基準円Liよりも径外方に位置している左右の縁面73L,73Rとが、連続したものである。
【0066】
底面71は、上記第1ホルダ半体51における底面71と同じ構成である。左右一対の側面72L,72Rは、上記第1ホルダ半体51における左右の側面72L,72Rと同じ構成である。左右一対の縁面73L,73Rは、上記第1ホルダ半体51における左右の縁面73L,73Rと実質的に同じ構成である。但し、中心CHを基準として、左の縁面73Lの範囲(点P2から対向面62までの範囲)は角度θ4Lであり、右の縁面73Rの範囲(点P2から対向面62までの範囲)は角度θ4Rである。左の角度θ4Lに対して右の角度θ4Rは小さい(θ4L>θ4R)。
【0067】
ここで、底面71及び左右一対の縁面73L,73Rのことを、適宜「パイプ外方変形許容部71,73L,73R」と言い、左右一対の側面72L,72Rのことを、適宜「挟み込み部72L,72R」と言うことにする。
【0068】
図8に示すように、ホルダ50は、ハンドル挿通孔70の内周面70a(溝53,63の内面53a,63a)に、複数の挟み込み部72L,72Rと複数のパイプ外方変形許容部71,73L,73Rとを有している。
【0069】
図6〜図8に示すように、複数の挟み込み部72L,72Rは、丸パイプ状のバーハンドル17における外周面17dを挟み込んで、パイプの径方向(パイプ径方向)へ弾性変形させることが可能な部分である。より具体的には、複数の挟み込み部72L,72Rは、第1・第2ホルダ半体51,61同士を、人力でロックボルト90(図4参照)によって締め付けたときに、その締め付け力に応じて、バーハンドル17をパイプ径方向(例えば、ハンドル挿通孔70の中心CH方向)へ弾性変形させる構成である。
【0070】
上述のように、第1ホルダ半体51の溝53の内面53aにおいて、左の挟み込み部72Lと右の挟み込み部72Rとは、間にパイプ外方変形許容部71を介して(角度θ1だけ間隔を開けて)位置している。また、第2ホルダ半体61の溝63の内面63aにおいて、左の挟み込み部72Lと右の挟み込み部72Rとは、間にパイプ外方変形許容部71を介して(角度θ1だけ間隔を開けて)位置している。従って、複数の挟み込み部72L,72Rは、ハンドル挿通孔70の内周面70aに、内周方向に所定の間隔、つまり角度θ1だけ間隔を開けて位置していることになる。
【0071】
パイプ外方変形許容部71,73L,73Rは、ハンドル挿通孔70の内周面70aにおいて、複数の挟み込み部72L,72Rが位置していない、残りの部分である。つまり、パイプ外方変形許容部71,73L,73Rは、複数の挟み込み部72L,72Rによってバーハンドル17を挟んでパイプの径内方へ弾性変形させる場合に、バーハンドル17の挟み込まれていない部分17e(図6参照)が径外方へ弾性変形することを、許容するように形成されている部分である。
【0072】
上記構成による作用は次の通りである。
図8に示すように、本実施例では、第1・第2ホルダ半体51,61を組み合わせたときに、溝53,63同士が対向し合う。これらの溝53,63同士が対向し合うことによって、ホルダ50にはハンドル挿通孔70が形成される。このハンドル挿通孔70の内周面70aには、内周方向に所定の間隔(図7に示す角度θ1)で、複数の挟み込み部72L,72Rが位置している。ハンドル挿通孔70を貫通しているバーハンドル17(図6参照)は、複数の挟み込み部72L,72Rによって挟み込まれる。つまり、組み合わせた第1・第2ホルダ半体51,61同士を、人力によりロックボルト90(図4参照)で締め付けたときに、図6に示すように、バーハンドル17の外周面17dは、挟み込み部72L,72Rにより挟み込まれる。このときの挟み込み力はfcである。この結果、複数の挟み込み部72L,72Rは、ロックボルト90の締め付け力に応じて、バーハンドル17をパイプ径方向へ弾性変形させることができる。このように、第1・第2ホルダ半体51,61にそれぞれ溝53,63を形成しただけの、簡単な構成のホルダ50によって、バーハンドル17を確実に保持することができる。
【0073】
以上の説明から明らかなように、本実施例は、複数の挟み込み部72L,72Rによって、丸パイプ状のバーハンドル17における外周面17dを挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるものである。バーハンドル17の外周面17dが挟み込み部72L,72Rによって挟み込まれたときに、その挟み込み力fcに応じて、バーハンドル17における丸パイプ状断面は、若干歪な形状に変形する(以下「弾性変形状態」と言う。)。その後、挟み込みが解除されたときには、バーハンドル17における丸パイプ状断面は、元の形状に復帰する。丸パイプ状断面の弾性変形状態においては、バーハンドル17の外周面17dにおける弾性変形した部分を、挟み込み部72L,72Rによって挟み込んだ状態を維持することができる。このため、挟み込み部72L,72Rに対して、バーハンドル17の外周面17dがスリップすることはない。この結果、ホルダ50によってバーハンドル17を常に確実に保持することができるので、ホルダ50による保持性能を高めるとともに、保持の信頼性を十分に維持することができる。
【0074】
従来のパイプハンドル保持機構において、ホルダの内面に対しバーハンドルの外周面を摩擦力によって保持する場合には、大きい締め付け力が必要であった。
これに対して、本実施例では、複数の挟み込み部72L,72Rによってバーハンドル17の外周面17dを挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるだけなので、ホルダ50にバーハンドル17を保持するための力は、比較的小さくてすむ。
【0075】
しかも、本実施例は、複数の挟み込み部72L,72Rだけが、丸パイプ状のバーハンドル17の外周面17dに接する、いわゆる、多点接触の構成である。このため、丸パイプの真円度が低い(真円の度合いが低い)場合であっても、ホルダ50によりバーハンドル17を確実に且つ安定して保持することができる。
【0076】
さらにまた、複数の挟み込み部72L,72Rによってバーハンドル17の外周面17dを挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるだけなので、ホルダ50に対するバーハンドル17の着脱作業を、頻繁に繰り返した場合であっても、バーハンドル17及びホルダ50を常に適切な状態で維持することができる。
【0077】
さらに、本実施例では、ハンドル挿通孔70の内周面70aにおいて、複数の挟み込み部72L,72Rが位置していない、残りの部分をパイプ外方変形許容部71,73L,73Rとしている。
一般に、バーハンドル17がパイプの径内方へ弾性変形しても、パイプ外周長さは、変形前の元の長さと変わらない。このため、複数の挟み込み部72L,72Rによってバーハンドル17を挟んで、パイプの径内方へ弾性変形させた場合に、挟み込まれていない部分17eはパイプの径外方へ広がろうとする。つまり、ハンドル挿通孔70の内周面70aよりもパイプの径外方へ、弾性変形しようとする(突き出ようとする)。
【0078】
これに対して、本実施例では、ハンドル挿通孔70の内周面70aよりも径外方へ、突き出ようとした部分を受け入れるように、ハンドル挿通孔70の内周面70aにパイプ外方変形許容部71,73L,73Rを設けた。このため、複数の挟み込み部72L,72Rによって挟み込まれていない部分17eは、ハンドル挿通孔70によって規制されることなく、パイプの径外方へ突き出ることができる。従って、バーハンドル17を複数の挟み込み部72L,72Rによって挟んで、パイプ径方向に一層容易に弾性変形させることができる。
【0079】
さらに、本実施例では、バーハンドル17及びホルダ50を、アルミニウム合金等の軽量合金によって構成している。このため、バーハンドル17をパイプ径方向へ所定量だけ弾性変形させるための力は、鋼材製のバーハンドルを採用した場合に比べて、小さくてすむ。さらには、複数の挟み込み部72L,72Rによってバーハンドル17の外周面17dを挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させる構成のパイプハンドル保持機構20なので、軽量化のためにバーハンドル17及びホルダ50を、アルミニウム合金等の軽量合金によって構成したにもかかわらず、従来の摩擦力を利用したパイプハンドル保持機構や、セレーション等の凹凸を設けたパイプハンドル保持機構に比べて、耐久性が大きい。
【0080】
ところで、図4に示すように、第1・第2ホルダ半体51,61の一端部54,64同士は、ヒンジ機構80によって連結される。このため、第2ホルダ半体61は、ヒンジ機構80によって連結されている一端部64をスイング基端として、第1ホルダ半体51に対しスイング可能である。
【0081】
第1・第2ホルダ半体51,61の他端部55,65同士は、ロックボルト90によって連結される。第1・第2ホルダ半体51,61によりバーハンドル17の外周面17d(図6参照)を挟み込んだ状態において、ロックボルト90を締め込むと、頭部91の押付け面91aは、第2ホルダ半体61における座面68を、第1ホルダ半体51へ向かって押し付ける。
【0082】
このときに、第2ホルダ半体61における力のつり合いに関しては、いわゆる、片持ち梁における力のつり合いと、同様のことが言える。上述のように、第2ホルダ半体61において、掛け止め凸部56に対する爪66aの掛け止め位置は、第2ホルダ半体61のスイング中心Q1である。このスイング中心Q1は、ヒンジ機構80に連結されている一端部64の位置でもある。
【0083】
スイング中心Q1(一端部54の位置の端)から、バーハンドル17の外周面17dを挟み込む位置(ハンドル挿通孔70の中心CH)までの、距離L1のことを「第1の距離L1」と言う。スイング中心Q1から、頭部91の押付け面91aによって座面68が押し付けられる位置Q2(ボルトの中心Q2)までの、距離L2のことを「第2の距離L2」と言う。第1の距離L1に対して、第2の距離L2は大きい。このため、ロックボルト90を締め込む力が小さくても、第1・第2ホルダ半体51,61によってバーハンドル17の外周面17dを挟み込む力は大きい。つまり、複数の挟み込み部72L,72Rによってバーハンドル17の外周面17dを挟み込んで、パイプ径方向へ弾性変形させるために、ノブ92を回す力は、比較的小さくてすむ。従って、作業者の負担を軽減することができる。
【0084】
さらに、座面68は、ヒンジ機構80から離れるにつれて、頭部91の押付け面91aに接近するように傾斜している。このため、頭部91の押付け面91aが座面68を押し付ける位置は、ヒンジ機構80から一層離れた位置になる。ここで、ロックボルト90の中心Q2から、頭部91の押付け面91aが座面68を押し付ける位置Q3までの、距離L3のことを「第3の距離L3」と言う。スイング中心Q1から、頭部91の押付け面91aによって押し付けられる位置Q3までの距離は、第2の距離L2に第3の距離L3を加えた大きさになり、一層大きくなる。従って、ノブ92を回す力は、より一層小さくてすむので、作業者の負担を一層軽減することができる。
【0085】
次に、ハンドル挿通孔70を成すための溝53,63を、別の観点から見てみる。上述のように、溝53,63は略半円状断面に形成されている。図9は図8に示すハンドル挿通孔の説明図であり、左の挟み込み部72Lに対する接線TL及び右の挟み込み部72Rに対する接線TRを、想像線によって示している。左右の接線TL,TRは、点P1と点P2の中間位置において、左右の挟み込み部72L,72Rにそれぞれ接していることが好ましい。
【0086】
これら左右の接線TL,TRは、互いに逆向きに傾くとともに、第1・第2ホルダ半体51,61の各対向面52,62に対して傾いている。この結果、左右の接線TL,TRは、第1・第2ホルダ半体51,61において、互いに対向し合う対向面52,62から反対側へ向かって先細りとなるテーパ状、つまり略V字状となるように位置する。左右の接線TL,TRがなす開き角ηは、略90°である。このように、溝53,63は、左右の挟み込み部72L,72Rに対し左右の接線TL,TRが接した、内面53a,63aを有している。従って、溝53,63は「互いに対向し合う対向面52,62から、反対側へ向かって先細りとなる、略テーパ状断面の溝の一種」である、ということができる。
【0087】
この点を踏まえて、溝53,63については、次に述べる変形例の構成にすることができる。図9に示すように、変形例の溝53,63における内面53a,63aは、左右の接線TL,TRに合致するように傾斜した面(溝面)から成る。左右の接線TL,TRに合致するように傾斜した内面53a,63aは、全体が、上記実施例における複数の挟み込み部72L,72Rの役割を果たす。つまり、各溝53,63を形成するための各々の傾斜した溝面は、複数の挟み込み部を成す。このように、変形例の溝53,63は、第1・第2ホルダ半体51,61において、互いに対向し合う対向面52,62から反対側の面59,69(図4参照)へ向かって先細りとなる、略テーパ状断面に形成された構成である。
【0088】
変形例についてまとめると、次の通りである。
第1・第2ホルダ半体51,61は、互いに対向し合う対向面52,62から反対側へ向かって先細りとなる、略テーパ状断面の溝53,63、つまり略V字状の溝53,63を有している。これらの溝53,63を形成するための各々の傾斜した溝面TL,TRは、複数の挟み込み部を成す。以下、変形例の溝53,63の内面53a,63aにおいて、左右の接線TL,TRに合致するように傾斜した溝面TL,TRのことを、「複数の挟み込み部TL,TR」と言い換える。
【0089】
第1・第2ホルダ半体51,61を組み合わせたときに、略V字状の溝53,63同士が対向し合う。これらの溝53,63同士が対向し合うことによって、ホルダ50には略四辺形断面の貫通孔70(図6に示すバーハンドル17が通るハンドル挿通孔70)が形成される。このハンドル挿通孔70を貫通しているバーハンドル17は、四辺形断面のハンドル挿通孔70における四辺TL,TR(挟み込み部TL,TR)によって、挟み込まれる。つまり、組み合わせた第1・第2ホルダ半体51,61同士を、人力によりロックボルト90(図4参照)で締め付けたときに、バーハンドル17の外周面17dは、パイプ周方向の4点において、挟み込み部TL,TRにより挟み込まれる。この結果、4つの挟み込み部TL,TRは、ロックボルト90の締め付け力に応じて、バーハンドル17をパイプ径方向へ弾性変形させることができる。
【0090】
このように、変形例においては、第1・第2ホルダ半体51,61にそれぞれ略テーパ状断面の溝53,63を形成しただけの、簡単な構成のホルダ50によって、バーハンドル17を確実に保持することができる。しかも、上記実施例と同様の作用、効果を発揮する。
【0091】
なお、本発明では、パイプハンドル保持機構20は、刈払機等の作業機におけるバーハンドルを保持する構成に限定されるものではなく、例えば一般的な車両にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明のパイプハンドル保持機構20は、刈払機10における操作杆11に対してバーハンドル17を取付けるのに好適である。
【符号の説明】
【0093】
10…刈払機(作業機)、17…バーハンドル、17d…バーハンドルの外周面、17e…バーハンドルにおいて挟み込まれていない部分、20…パイプハンドル保持機構、50…ホルダ、51,61…ホルダを成す一対の分割体(第1及び第2ホルダ半体)、52,62…対向面、53,63…溝、54,64…一端部、55,65…他端部、68…頭部によって押し付けられる面(座面)、70…貫通孔(ハンドル挿通孔)、70a…ハンドル挿通孔の内周面、71,73L,73R…パイプ外方変形許容部、72L,72R…挟み込み部、80…ヒンジ機構、90…ノブ付き締め付け部材(ロックボルト)、91…頭部、92…ノブ、CH…ハンドル挿通孔の中心、C2…隙間、Li…基準円、Sp…座面の傾斜角、TL…左の接線(挟み込み部)、TR…右の接線(挟み込み部)、θ1…所定の間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸パイプ状のバーハンドルと、このバーハンドルの外周面を保持するホルダとからなるパイプハンドル保持機構において、前記ホルダは、前記バーハンドルの外周面を挟み込んでパイプ径方向へ弾性変形させることが可能な、複数の挟み込み部を有したことを特徴とするパイプハンドル保持機構。
【請求項2】
前記ホルダは、半割り状に二分割された一対の分割体からなり、
この一対の分割体は、互いに対向し合う対向面から反対側へ窪んだ溝を、それぞれ有しており、
これらの溝は、前記一対の分割体が互いに組み合わされたときに、1つの貫通孔を構成するものであり、
この貫通孔は、前記バーハンドルが通るハンドル挿通孔を成し、
前記複数の挟み込み部は、前記ハンドル挿通孔の内周面に、内周方向に所定の間隔で位置しており、組み合わされた前記一対の分割体同士を、人力でノブ付き締め付け部材によって締め付けたときに、その締め付け力に応じて、前記バーハンドルをパイプ径方向へ弾性変形させる構成であることを特徴とした請求項1記載のパイプハンドル保持機構。
【請求項3】
前記ハンドル挿通孔の内周面は、前記複数の挟み込み部が位置していない、残りの部分をパイプ外方変形許容部とし、
このパイプ外方変形許容部は、前記複数の挟み込み部によって前記バーハンドルを挟んでパイプの径内方へ弾性変形させる場合に、前記バーハンドルの挟み込まれていない部分が径外方へ弾性変形することを、許容するように形成されていることを特徴とした請求項2記載のパイプハンドル保持機構。
【請求項4】
前記ホルダは、半割り状に二分割された一対の分割体からなり、
この一対の分割体は、互いに対向し合う対向面から反対側へ向かって先細りとなる、略テーパ状断面の溝を、それぞれ有しており、
これらの溝は、前記一対の分割体が互いに組み合わされたときに、1つの貫通孔を構成するものであり、
この貫通孔は、前記バーハンドルが通るハンドル挿通孔を成し、
前記各溝を形成するための各々の傾斜した溝面は、前記複数の挟み込み部を成し、
これら複数の挟み込み部は、組み合わされた前記一対の分割体同士を、人力でノブ付き締め付け部材によって締め付けたときに、その締め付け力に応じて、前記バーハンドルをパイプ径方向へ弾性変形させる構成であることを特徴とした請求項1記載のパイプハンドル保持機構。
【請求項5】
前記一対の分割体は、前記バーハンドルの外周面を挟み込んだ状態において、前記対向面同士が隙間を有して離間し、一端部同士がヒンジ機構によって連結されるとともに、他端部同士が前記ノブ付き締め付け部材によって連結される構成であり、
このノブ付き締め付け部材は、頭部に前記ノブを有したボルトから成り、
前記一対の分割体の一方は、前記頭部における押付け面によって前記一対の分割体の他方へ向かって押される、座面を有し、
この座面は、前記一対の分割体により前記バーハンドルの外周面を挟み込んだ状態において、前記押付け面に対し傾斜面となる構成であり、
この傾斜面は、前記ヒンジ機構から離れるにつれて、前記押付け面に接近するように傾斜する構成であることを特徴とした請求項2から請求項4までのいずれか1項記載のパイプハンドル保持機構。
【請求項6】
前記バーハンドル及び前記ホルダは、アルミニウム合金等の軽量合金から成ることを特徴とした請求項1から請求項5までのいずれか1項記載のパイプハンドル保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−154841(P2010−154841A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123355(P2009−123355)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】