説明

パイプベンダー、パイプ敷設装置及びパイプ敷設工法

【課題】地表面の建築物・構築物や地盤内の他の埋設物などの障害物によって導入側の立坑を十分な長さで形成できない場合でも、直線状のパイプを敷設孔に容易に導入できるようにする。
【解決手段】長手方向で湾曲する弧状フレーム2に、弧状フレーム2の一端側から他端側へパイプPを曲げながら送り可能に支持する複数のパイプホルダ3を備える。このパイプホルダ3によって直線状のパイプPを湾曲状態で支持しながら弧状フレーム2の一端側から他端側へ容易に送ることができる。弧状フレーム2を敷設孔に臨ませて設置すれば、立坑を長尺化しなくてもパイプPの曲げによって地表面と敷設孔との導入段差を容易に解消することができ、作業性良くパイプPを敷設できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス管、水道管、通信ケーブル管など各種用途に用いるパイプを地盤へ敷設する技術に関し、特に直線状のパイプを地盤へ敷設するのに用いるパイプベンダー及びパイプ敷設装置並びにパイプ敷設工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤にガス管、水道管、通信ケーブル管など各種用途に用いるパイプ、特に樹脂製のパイプを敷設する工法として、パイプの敷設長にわたって地盤を開削する開削工法が知られている。しかし地盤を開削するのは作業効率やコスト面での負担が過大であることから、代替技術として非開削工法が広く行われている。それは例えば、敷設長の両端に立坑を形成するとともに立坑間を通じる敷設孔を形成し、敷設孔にパイプを引き込んで敷設するという工法である(一例として特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−190190号公報
【0003】
この非開削工法では、直線状又は曲線状の敷設孔にパイプを引き込んで敷設する。そして敷設孔が直線状又は曲線状の何れであっても直線状のパイプが敷設され、予め所定の曲率に曲がっているパイプを使用することは殆ど無い。したがって地表面よりも低い段差のある敷設孔に直線状のパイプを導入する際には、直線状のパイプを地表面から自然な可撓性をもって緩やかに撓ませつつその導入段差を解消し、敷設孔へ導くことができるようにする。具体的には、導入側の立坑を敷設方向に沿って長尺化することで、つまり比較的長めの導入段差解消用のアプローチを取るようにして立坑を形成するのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが工事現場によっては、地表面の建築物・構築物や地盤内の他の埋設物などの障害物が制約となって、導入側の立坑を必ずしも十分な長さで形成できないことが多々ある。こうした場合には導入段差を解消するために、作業員による力業でパイプを曲げて導入するように対処せざるを得ない。しかしながら、狭い立坑内でパイプを敷設孔に向けて曲げること、曲げたパイプを軸を合わせて敷設孔へ導入すること、パイプの曲げと軸合わせとを維持しながらパイプを敷設孔へ送り続けることは、事実上不可能であるか、可能だとしても大変手間と時間とが掛かり過大な負担を強いられる作業である。
【0005】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的は直線状のパイプを敷設孔に容易に導入できるパイプベンダーと、パイプ敷設装置と、パイプ敷設工法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下のように構成される。
【0007】
本発明は、地盤に敷設する直線状のパイプを地盤内へ曲げながら送るパイプベンダーであって、長手方向で湾曲する弧状フレームの端部間に、弧状フレームの一端側から他端側へパイプを曲げながら送り可能に支持する複数のガイド部材を備えるパイプベンダーを提供する。
【0008】
これによれば、長手方向で湾曲する弧状フレームの端部間に、弧状フレームの一端側から他端側へパイプを曲げながら送り可能に支持する複数のガイド部材を備える。このため直線状のパイプをガイド部材によって湾曲状態で支持しつつ弧状フレームの一端側から他端側へ容易に送ることができる。したがって、弧状フレームの他端側を敷設孔に臨ませて設置することで、立坑を長尺化しなくてもパイプの曲げによって導入段差を容易に解消することができ、作業性良くパイプを敷設することができる。
【0009】
本発明は前記パイプベンダーについて、弧状フレームに対する遠近方向でのガイド部材の移動を許容する可動部を備える。
【0010】
これによれば、各ガイド部材の弧状フレームからの離間距離をそれぞれの可動部によって調整することで、湾曲状態で送るパイプの曲がり加減を任意に変えることができる。したがってパイプの可撓性の程度や敷設現場の近くにある障害物の状況などに応じて、任意の曲がり状態でパイプを曲げながら送ることができる。
【0011】
本発明は、前記パイプベンダーについて、弧状フレームにガイド部材の支持体を備えており、該支持体が、弧状フレームに取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲内側面を送り可能に支持する内側ガイド部材を取付けた内側支持部と、内側支持部に対し回動により開閉可能として取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲外側面を送り可能に支持する外側ガイド部材を取付けた外側支持部と、を備える。
【0012】
これによれば、パイプを中心として対向する内側・外側のガイド部材によって、湾曲内側面(曲げ応力の圧縮が作用する面)と湾曲外側面(曲げ応力の引っ張りが作用する面)との両側からパイプをガイドできる。このためパイプを曲げながら円滑に送ることができる。また、外側支持部を内側支持部に対し回動により開閉可能として取付けている。このため外側支持部を開いた状態とし、パイプを内側ガイド部材に引き寄せることで、直線状のパイプを容易に曲げることができる。そして外側支持部を回動して閉じることで、引き寄せて曲げたパイプを確実に保持することができる。
【0013】
本発明は前記パイプベンダーについて、弧状フレームにガイド部材の支持体を備えており、該支持体が、弧状フレームに取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲内側面を送り可能に支持する内側ガイド部材を取付けた内側支持部と、内側支持部に対し着脱可能として取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲外側面を送り可能に支持する外側ガイド部材を取付けた外側支持部と、を備える。
【0014】
これによれば、パイプを中心として対向する内側・外側のガイド部材によって、湾曲内側面と湾曲外側面との両側からパイプをガイドできる。このためパイプを曲げながら円滑に送ることができる。また、外側支持部を内側支持部に対して着脱可能に取付けている。このため外側支持部を取り外した状態とし、パイプを内側ガイド部材に引き寄せることで、直線状のパイプを容易に曲げることができる。そして外側支持部を内側支持部へ取付けることで、引き寄せて曲げたパイプを確実に保持することができる。さらに外側支持部が着脱可能であるため、外側支持部を長さ等の構造要素が異なる他の外側支持部材へと容易に交換することができる。
【0015】
本発明は前記パイプベンダーについて、弧状フレームに対し着脱可能として取付けられるとともに弧状フレームの長手方向で隣接するガイド部材間でのパイプの送りをガイドする補助ガイド部材を備える。
【0016】
これによれば、隣接するガイド部材どうしの間の部分でも、補助ガイド部材によってパイプを曲げながら送ることができる。このため例えば、前述の本発明のようにパイプを内側ガイド部材に引き寄せる作業を行わなくとも、パイプを容易にパイプベンダーに導入することができる。
【0017】
以上述べてきた各本発明におけるガイド部材は、パイプと摺動接触しつつ送り可能に支持する板状又はブロック状の摺動受け部材として、またパイプを送り可能に回転支持する回転体として構成することができる。このうち回転体については円柱状のローラや球体として構成することができる。そしてこれらによれば、小さな力で円滑にパイプを送ることができる。
【0018】
本発明は、前記何れかの本発明によるパイプベンダーと、パイプベンダーにより曲げながら送られるパイプを地盤へ敷設する推進機と、を備えるパイプ敷設装置を提供する。
【0019】
これによれば、本発明のパイプベンダーによる作用・効果を奏することに加えて、パイプベンダーにより曲げながら送られるパイプを推進機によって容易且つ効率的に地盤に敷設することができる。こうした本発明のパイプ敷設装置は、例えば、パイプベンダーと推進機に取付部を設け、パイプベンダーを取付部を介して推進機に一体化して備えるものとして構成することができる。また、敷設孔の一端側に設置するパイプベンダーと、敷設孔の他端側に設置する引き込み推進機とを備えるものとして構成することができる。
【0020】
本発明は、地盤にパイプの敷設孔を削孔する工程と、敷設孔の一端側に、長手方向で湾曲する弧状フレームの端部間にその一端側から他端側へ直線状のパイプを曲げながら送り可能に支持する複数のガイド部材を備えるパイプベンダーを設置し、パイプベンダーにより曲げながら送られてくるパイプを敷設孔に導入して敷設する工程と、を含むパイプ敷設工法を提供する。
【0021】
これによれば、パイプベンダーによって敷設孔の一端側の手前側でパイプを曲げながら送るので、地表面と敷設孔との導入段差を、立坑の長尺化に依存することなく、パイプの曲げによって解消することが可能である。このため地表面の建築物・構築物や地盤内の他の埋設物などの障害物が近くにあっても、パイプを容易に作業性良く敷設することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のパイプベンダー、パイプ敷設装置及びパイプ敷設工法によれば、導入側の立坑を敷設方向に沿って長尺化しなくても、パイプベンダーによって敷設孔の手前でパイプを曲げることで、地表面と敷設孔との導入段差を容易に解消することが可能である。このため地表面の建築物・構築物や地盤内の他の埋設物などが隣接する敷設現場であっても、パイプを容易に作業性良く敷設することができる。よって非開削工法を適用可能な作業現場を大幅に拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明のパイプベンダー、パイプ敷設装置及びパイプ敷設工法の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0024】
パイプベンダーの構成〔図1〜図5〕
パイプベンダー1は、弧状フレーム2と複数(本実施形態では5つ)のパイプホルダ3を備えて構成される(図1)。弧状フレーム2は断面コ字状で剛性のある金属材で形成されており(図3〜図5)、長手方向に沿って略1/4円に相当する円弧形状となっている。弧状フレーム2の端部の両側面部2aにはL字状の反力板2bが取付けられている。なお、本実施形態のパイプベンダー1は高さ(図1の上下方向)と幅(図1の横方向)がそれぞれ約160cm、幅(図3の横方向)が約22cmであり、外径で89mm〜216mm程度のパイプ、特に樹脂パイプへの適用を想定しているが、もちろん大きさや剛性向上等の適宜の変更を加えて、上記以外の外径や材質のパイプに適用できるようにすることも可能である。
【0025】
パイプホルダ3は断面コ字状の支持枠4(「支持体」)を備えている(図3〜図5)。支持枠4は弧状フレーム2の側面部2aに溶接した内側支持部4aと、これに取付ける外側支持部4bとで構成される。内側支持部4aと外側支持部4bとはヒンジ5にて連結されている(図3)。外側支持部4bはこのヒンジ5を中心として回動して開閉可能となっている(図5)。外側支持部4bの閉状態を固定するには留め具6を利用する。すなわち、内側支持部4aに設けたバックル6aを外側支持部4bの係止金具6bに引っ掛けて固定する(図2,図3)。
【0026】
内側支持部4aには、パイプPの支持位置が変わらない、フリー回転可能な固定ローラ7(「ガイド部材」及び「内側ガイド部材」)が取付けられている。他方、外側支持部4bには、パイプPを挟んだ固定ローラ7との対向位置に、外側支持部4bの長手方向でパイプPの支持位置を変えることのできる、フリー回転可能な可動ローラ8(「ガイド部材」及び「外側ガイド部材」)が取付けられている(図4)。これらの固定ローラ7と可動ローラ8は、何れも回転軸方向で外側から中央にかけて外径が小さくなる断面円弧状の周面形状とされており、これによりパイプPの外周面にフィットさせることができるようになっている。そして直線状のパイプPを、小さな力で強制的に曲げながら送ることができるようになっている。
【0027】
固定ローラ7の両側面から突出する取付軸7aは、内側支持部4aに固定されている。したがって、前述のように固定ローラ7についてはパイプPの支持位置を変えることができない。他方、可動ローラ8の取付軸8aは、外側支持部4bの各長手側面に開口する長孔9を通じてL字形状の可動ブラケット10a(「可動部」)にそれぞれ固定されている。可動ブラケット10aはボルト11(「可動部」)と螺合しており、ボルト11を回すことで可動ブラケット10aが移動し、可動ローラ8による支持位置を任意に変えることができる(図4)。ボルト11の他端側は固定ブラケット10bの透孔に挿通されており、その頭部11aとナットNとで固定ブラケット10bを挟み込むようにしている。したがってパイプベンダー1は、可動ローラ8を任意の支持位置に調整することで、様々な外径のパイプPにフィットさせて支持したり、後述するように湾曲状態で送るパイプPの曲がり加減を任意に変更できるようになっている(図7)。
【0028】
パイプベンダーへのパイプの導入手順〔図6〕
以上のようなパイプベンダー1に直線状のパイプPを導入するには、図6で示すように以下の[手順1]〜[手順5]によって行うことができる。
[手順1] 送出側のパイプホルダ3にパイプPの送り側端部を通しておき、その他のパイプホルダ3については留め具6を外して外側支持部4bを内側支持部4aに対して開かせておく。
[手順2] パイプPに留め輪12を取付け、これにピアノ線などによる引寄せ用線材13を結びつける。
[手順3] 引寄せ用線材13を、導入側のパイプホルダ3の固定ローラ7に掛け回してから送出側の弧状フレーム2に設けた留め孔2cに固定する。
[手順4] 固定ローラ7と留め孔2cとの間にリール、ウィンチ、ジャッキなどの引張装置14を介在させて、パイプPが実質的にすべての固定ローラ7と接触するまで引寄せ用線材13を引っ張る。これによって直線状のパイプPが弧状フレーム2の一端側から他端側に沿って曲げられることになる。
[手順5] 最後に、開かせているすべての外側支持部4bを留め具6を使って内側支持部4aに対して閉じて固定する。こうした一連の手順を経ることで、図1の二点鎖線で示すように、パイプベンダー1によってパイプPを湾曲状態で保持することができる。
【0029】
以上は導入手順の一例であり、各手順を次のように変更しても良い。例えば[手順3]では、引寄せ用線材13を弧状フレーム2の留め孔2cに固定する例を説明したが、留め孔2cに固定せず、引張装置14に直接導入して引っ張るようにしてもよい。また[手順4]で使用する引張装置14は動力源を有するものでも動力源の無いものでもよい。あるいはそれ自体使用せず人力で引寄せ用線材13を引き寄せることで、パイプPを曲げてもよい。
【0030】
パイプベンダーで保持するパイプの曲がり加減の任意調整〔図7〕
以上のようにしてパイプPを湾曲状態で保持する際に、本実施形態のパイプベンダー1では、可動ローラ8によるパイプPの支持位置を変更することで、湾曲状態で送るパイプPの曲がり加減を任意に調整することができる。例えば図7では、導入側から3,4,5番目のパイプホルダ3の可動ローラ8について図1の支持位置と同位置としているが、1番目のパイプホルダ3の可動ローラ8については弧状フレーム2から最も遠い支持位置に設定し、2番目のパイプホルダ3については1番目と3,4,5番目の略中間に可動ローラ8の支持位置を設定している。このように可動ローラ8の支持位置を変更することで、パイプPの可撓性の程度や敷設現場の近くにある障害物の状況などに応じて、任意の曲がり状態でパイプを曲げながら送ることができる。なお、固定ローラ7と可動ローラ8は、常時、パイプPを支持するものでなければならない訳ではない。例えば図7では導入側から1番目と2番目の固定ローラ7がパイプPと接触せずに遊んでしまうが、固定ローラ7や可動ローラ8としては、そのようにパイプPの湾曲状況に応じて接触せずに遊んでしまうことがあっても構わない。
【0031】
パイプベンダーの変形例〔図8〜図11〕
図1〜図7で示すパイプベンダー1は、例えば以下のような変形例として構成することもできる。
【0032】
図8は、外側支持部4bを長尺化して長孔9をさらに長くする構成例である。これによって可動ローラ8によるパイプPの支持位置の自由度を高めることができる。
【0033】
図9は、ヒンジ5に代えて留め具6を使用し、内側支持部4aに対して外側支持部4bを完全に分離できるようにする構成例である。これによれば、パイプPの可撓性の程度や敷設現場の近くにある障害物の状況に応じて、長孔9の長さが異なる外側支持部4bを自由に付け替えることができる。
【0034】
図10と図11は、弧状フレーム2の長手方向で隣接するパイプホルダ3どうしの間に中間ガイド15(「補助ガイド部材」)を取付ける構成例である。中間ガイド15は断面コ字状の支持枠16を備えており、この支持枠16はパイプホルダ3と同様に内側支持部17と外側支持部18とで構成されている。内側支持部17は締結ボルト19によって弧状フレーム2の取付孔2dに対して着脱可能に取付けることができる(図11)。外側支持部18には円弧形状のガイドプレート20が取付けられている。この外側支持部18は内側支持部17に対して遠近させることが可能であり、これによって弧状フレーム2に対するガイドプレート20の遠近位置を調整することができる。そのための構成として可動部21が設けられている。可動部21は内側支持部17と外側支持部18にそれぞれ設けたブラケット21aと、それらを繋ぐボルト21bとで構成されており、このボルト21bを回すことで、前述のボルト11による送りねじ機構と同様に、外側支持部18を内側支持部17に対して遠近させて、ガイドプレート20によるパイプPのガイド位置を任意の位置に調整できるようになっている。
【0035】
そして以上のような中間ガイド15を備えることで、図6で図解して説明したようなパイプPを導入する[手順1]〜[手順5]によらなくても、パイプPをパイプベンダー1に導入できるようになる。すなわち、隣接するパイプホルダ3どうしの間では、パイプPがガイドプレート20と接触して曲げられながら滑るように送られていく。したがって、すべてのパイプホルダ3の内側支持部4aと外側支持部4bをはじめから閉じておき、直線状のパイプ1をパイプベンダ1の導入側から導入していけば、パイプPが自動的に曲げられながら送られていく。したがって容易に直線状のパイプPを曲げながら送ることができる。
【0036】
前述の実施形態では支持枠4の内側支持部4aを弧状フレーム2の側面部2aに溶接により取付ける例を示したが、ボルト・ナットのような締結具によって取付けるものとして構成することもできる。また、弧状フレーム2の側面部2aの部分として内側支持部4aに相当する「内側支持部」としての突片部を形成し、この突片部に外側支持部4bを取付ける構成としてもよい。
【0037】
前述の実施形態では回転可能な固定ローラ7と可動ローラ8を「ガイド部材」の一例として説明したが、それらに代えて摩擦係数の低い樹脂材などで形成される回転不能な板状又はブロック状の摺動受け部材を用いることもできる。また、決まった回転軸を持たないボールベアリングをリテーナで保持し、これを支持枠4に取付ける構成としても実施できる。
【0038】
パイプ敷設装置及びパイプ敷設工法〔図12〜図15〕
次にパイプ敷設工法の一実施形態について説明する。ここでは図12で示すように、階段のある傾斜面の下にパイプPを斜めに敷設する例を説明するが、平坦な地表面と平行に直線状に敷設したり、地盤内に直線状及び曲線状に敷設する等、敷設の形態は任意である。また、ここでは図1〜図7で示すパイプベンダー1を用いて行う例を説明する。本実施形態で使用する機器はパイプベンダー1と推進機22と推進ロッド23である(図12)。これらは「パイプ敷設装置」の一実施形態を構成する。
【0039】
先ず図12で示すように下側立坑24と上側立坑25を削孔し、上側立坑25に推進機22を設置する。次に推進機22に推進ロッド23を取付け、下側立坑24に到達するまで地盤内を推進させてパイプPの敷設孔26を形成する。なお、推進ロッド23は複数本の短い延長ロッド23aを継ぎ足して構成され、その最先端には地盤の掘削端となる掘削ロッド23bが連結されている。
【0040】
推進ロッド23が下側立坑24に到達したならば、予め地上側でパイプPを導入しておいたパイプベンダー1を、図13で示すように下側立坑24の内部に設置する。パイプベンダー1は、下側立坑24の内部に設置された土留め矢板等の取付構造材27に対し、反力板2bを図外のボルト・ナットにより締結することで設置される。このときパイプベンダー1は起立姿勢で設置してもよいが、図14で示すように斜めに傾けた傾斜姿勢で設置することも可能である。こうすることでパイプPの可撓性の程度や敷設現場近くの障害物の状況に応じて、パイプベンダー1の導入側から後方に延長するパイプPの後続部分を、無理に屈曲させることなく地表面に待機させておくことができる。そして推進ロッド23の掘削ロッド23bを取り外してから、延長ロッド23aとパイプPのそれぞれにチャック28を取付けてそれらを相互に連結する。
【0041】
次に図15で示すように、推進機22によって推進ロッド23を徐々に引き戻していく。するとパイプPは、パイプベンダー1によって曲げながら送られて、敷設孔26の孔内へと敷設されることになる。
【0042】
以上のようなパイプ敷設工法によれば、図12で示す地表面と敷設孔26との導入段差Dを、下側立坑24の長さL1の増長によって解消する必要がなくなる。例えば、下側立坑24の長さL1を維持したままでパイプベンダー1を使わない場合には、狭い下側立坑24の内部でパイプPを敷設孔26に向けて曲げること、曲げたパイプPを軸を合わせて敷設孔26に導入すること、パイプPの曲げと軸合わせとを維持しつつパイプPを敷設孔26へ送り続けることは、大変手間と時間とが掛かる大変な作業であって不可能であるか又は極めて困難である。このため図13で二点鎖線で示すように、パイプPの可撓性をもって導入段差Dを解消できる長さL2を余分に設定して、下側立坑Dの長さL1を増長しなければならない。とりわけ本実施形態のように水平な地表面に対して上向き傾斜でパイプPを敷設する場合には、パイプPが下側立坑24の底面に向かう下向きに凸の放物線を描くようにして地表面に導かれるので、その分余計に導入段差Dの解消長さL2を長く設定しなければならない。したがって、地表面の建築物・構築物や地盤内の他の埋設物などの障害物が敷設現場の近くにあるときには増長できないこととなる。
【0043】
しかしながら本実施形態のパイプ敷設工法ならば、パイプベンダー1によってパイプPを曲げながら送るため、下側立坑24の増長に依存することなく導入段差Dを容易に解消することが可能となる。したがって、地表面の建築物・構築物や地盤内の他の埋設物などが隣接する敷設現場であっても、パイプPを容易に作業性良く地盤に敷設することができ、非開削工法を適用可能な作業現場を大幅に拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一実施形態によるパイプベンダーの側面図。
【図2】図1で示すパイプホルダの拡大側面図。
【図3】分図(A)は図1のSA-SA線に沿うパイプホルダの拡大正面図、分図(B)は分図(A)におけるSB部の部分拡大図。
【図4】図3の分図(A)に相当するパイプホルダの動作説明図。
【図5】図1で示すパイプホルダに対するパイプの取付けを示す外観斜視図。
【図6】図1のパイプベンダーへのパイプの取付手順を示す説明図。
【図7】図1のパイプベンダーによるパイプの取付状態を示す説明図。
【図8】図3の分図(A)に相当するパイプホルダの変形例を示す拡大正面図。
【図9】図3の分図(A)に相当するパイプホルダの他の変形例を示す拡大正面図。
【図10】図1で示すパイプベンダーの変形例を示す拡大正面図。
【図11】図10のパイプベンダーにおける弧状フレームへの中間ガイドの取付けを示す外観斜視図。
【図12】パイプ敷設工法の工程説明図。
【図13】図12に続くパイプ敷設工法の工程説明図。
【図14】立坑へのパイプベンダーの取付状態説明図。
【図15】図13に続くパイプ敷設工法の工程説明図。
【符号の説明】
【0045】
1 パイプベンダー(パイプ敷設装置)
2 弧状フレーム
2a 側面部
2b 反力板
2c 留め孔
2d 取付孔
3 パイプホルダ
4 支持枠(支持体)
4a 内側支持部
4b 外側支持部
5 ヒンジ
6 留め具
6a バックル
6b 係止金具
7 固定ローラ(ガイド部材、内側ガイド部材)
7a 取付軸
8 可動ローラ(ガイド部材、外側ガイド部材)
8a 取付軸
9 長孔
10a 可動ブラケット(可動部)
10b 固定ブラケット
11 ボルト(可動部)
12 留め輪
13 引寄せ用線材
14 引張装置
15 中間ガイド(補助ガイド部材)
16 支持枠
17 内側支持枠
18 外側支持枠
19 締結ボルト
20 ガイドプレート
21 可動部
21a ブラケット
21b ボルト
22 推進機(パイプ敷設装置)
23 推進ロッド(パイプ敷設装置)
23a 延長ロッド
23b 掘削ロッド
24 下側立坑
25 上側立坑
26 敷設孔
27 取付構造材
28 チャック
N ナット
P パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に敷設する直線状のパイプを地盤内へ曲げながら送るパイプベンダーであって、
長手方向で湾曲する弧状フレームの端部間に、弧状フレームの一端側から他端側へパイプを曲げながら送り可能に支持する複数のガイド部材を備えるパイプベンダー。
【請求項2】
弧状フレームに対する遠近方向でのガイド部材の移動を許容する可動部を備える請求項1記載のパイプベンダー。
【請求項3】
弧状フレームにガイド部材の支持体を備えており、該支持体は、
弧状フレームに取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲内側面を送り可能に支持する内側ガイド部材を取付けた内側支持部と、
内側支持部に対し回動により開閉可能として取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲外側面を送り可能に支持する外側ガイド部材を取付けた外側支持部と、を備える請求項1又は請求項2記載のパイプベンダー。
【請求項4】
弧状フレームにガイド部材の支持体を備えており、該支持体は、
弧状フレームに取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲内側面を送り可能に支持する内側ガイド部材を取付けた内側支持部と、
内側支持部に対し着脱可能として取付けられるとともにガイド部材としてパイプの湾曲外側面を送り可能に支持する外側ガイド部材を取付けた外側支持部と、を備える請求項1又は請求項2記載のパイプベンダー。
【請求項5】
弧状フレームに対し着脱可能として取付けられるとともに弧状フレームの長手方向で隣接するガイド部材間でのパイプの送りをガイドする補助ガイド部材を備える請求項1〜請求項4何れか1項記載のパイプベンダー。
【請求項6】
ガイド部材がパイプを送り可能に回転支持する回転体である請求項1〜請求項5何れか1項記載のパイプベンダー。
【請求項7】
請求項1〜請求項6何れか1項記載のパイプベンダーと、
パイプベンダーにより曲げながら送られるパイプを地盤へ敷設する推進機と、を備えるパイプ敷設装置。
【請求項8】
地盤にパイプの敷設孔を削孔する工程と、
敷設孔の一端側に、長手方向で湾曲する弧状フレームの端部間にその一端側から他端側へ直線状のパイプを曲げながら送り可能に支持する複数のガイド部材を備えるパイプベンダーを設置し、パイプベンダーにより曲げながら送られてくるパイプを敷設孔に導入して敷設する工程と、を含むパイプ敷設工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−285099(P2007−285099A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116935(P2006−116935)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(506136195)株式会社キャプティ (6)
【Fターム(参考)】