説明

パイプ曲げ加工機およびこのパイプ曲げ加工機を使用した渦巻き型パイプの曲げ加工方法

【課題】渦巻き型パイプの曲げ加工ができるパイプ曲げ加工機の提供と、このパイプ曲げ加工機を使用した渦巻き型パイプの曲げ径の曲げ加工方法を提供する。
【解決手段】パイプ曲げ加工機は、前後方向へ移動するY軸移動手段と、左右方向へ移動するX軸移動手段Fと、を有するXYスライド機構Gと、XYスライド機構Gに載置された上面の回転テーブル31を回転させる回転テーブル装置と、この回転テーブルに31に載置され、ウォームホイールに固定された円筒軸47が回動自在に支持された曲げ加工装置40と、円筒軸47の穴に挿通され、下端部が底面に固定された中心軸42aと、支持ローラ42の中心Oを回動中心にして回動自在の円筒軸47の上面に設けられ、支持ローラ42と隣接して配置された曲げローラ43と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプ曲げ加工機およびこのパイプ曲げ加工機を使用した渦巻き型パイプの曲げ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の元凶とするCOの削減の対策として燃焼のないヒートポンプ方式の給湯器(エコキュート)の設置が産業界、一般家庭に普及してきている。また、ガスか
ら水素を取り出して発電する新しいエネルギーシステムである燃料電池(東京ガス:エネファーム)も登場している。これらの新しい給湯器においては、冷水から温水への熱交換が必要となり、一般的には図8の(a)に示すような蛇行型形状の銅パイプを使用した熱交換器が知られている。
【0003】
図10に示すように、従来のパイプ曲げ装置90は、パイプが挿通可能な半円状の溝が形成された支持ローラ92と、支持ローラ92の中心Oを回転中心として回転可能に支持された外周面に半円状の溝が形成された曲げローラ93と、パイプを押さえるチャック94とが設けられ、支持ローラ92と曲げローラ93との間の2つの半円状の溝が形成する隙間にパイプが挿通され、曲げローラ93を、支持ローラ92の中心Oを回動中心に回動することにより、曲げ径は支持ローラ92の径と同じにしてパイプを曲げることができる(例えば、特許文献1参照)。
図8の(a)に示すように、従来の蛇行型の熱交換器用パイプの特徴は、パイプの曲げ径がφDの一種類に統一されている点にある。したがって、従来型のパイプ曲げ装置90では、パイプの曲げ径がφDの一種類しか曲げ加工ができないため、これまでの熱交換器用パイプは広く蛇行型が採用されてきた。
【0004】
しかしながら、このような蛇行型の熱交換器用パイプでは、ある程度の設置スペースが必要であり、さらに一定の熱交換率を確保するためには設置スペースは大型化せざるを得ないという問題があった。また、将来、給湯器等の商品の進むべき方向として、小型・軽量化やダウンサイジングの方向にあり、これらの小型化とは逆行するという問題があった。
【0005】
図8の(b)は、渦巻き型の熱交換器用パイプの形状を示す正面図である。従来の蛇行型の熱交換器用パイプと比較して、渦巻き型の熱交換器用パイプは、同じパイプ長さで比較すると、収容スペースが約1/3にできる。つまり、同じスペースであれば、3倍の熱交換容量を確保することができ、これからのエコキュートの小型化やダウンサイジングに対応できる。
【0006】
しかしながら、従来のパイプ曲げ装置では、図8の(b)に示すように、螺旋型パイプ、または、渦巻き型パイプを曲げ加工する場合、一巻きごとに曲げの直径がD<D<D…<Dnと拡大するため、その都度、支持ローラ92を交換しなければならず、連続したパイプ曲げ加工ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−53432号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたもので、これまでにない構成で、曲げ径が拡大しても対応でき、一巻きごとに曲げ径が拡大する渦巻き型パイプの曲げ加工が連続してできるパイプ曲げ加工機と、このパイプ曲げ加工機を使用した渦巻き型パイプの曲げ加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載されたパイプ曲げ加工機(100)は、支持ローラ(42)と曲げローラ(43)との間にパイプ(W)を供給し、前記曲げローラ(43)の回動角に連動して前記支持ローラ(42)の中心(O)位置を変えながら、前記支持ローラ(42)の径(D)よりも大きな曲げ径(D,D…Dn)の曲げ加工を連続して行うパイプ曲げ加工機(100)であって、前記フレーム(1)に載置され、Y軸(前後)方向へ移動するY軸移動手段(E)と、X軸(左右)方向へ移動するX軸移動手段(F)と、を有するXYスライド機構(G)と、前記XYスライド機構(G)に載置され、上面の回転テーブル(31)を回転させる回転テーブル装置(30)と、前記回転テーブル(31)に載置され、垂直方向の円筒軸(47)が回動自在に支持された曲げ加工装置(40)と、前記円筒軸(47)の穴に挿通され、下端部が底面に固定された中心軸(42a)と、前記中心軸(42a)の上端部に支持された前記支持ローラ(42)と、前記支持ローラ(42)の中心(O)を回動中心にして回動自在の前記円筒軸(47)の上面に設けられ、前記支持ローラ(42)と隣接して配置された前記曲げローラ(43)と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載されたパイプ曲げ加工機(100)を使用し、支持ローラ(42)の径(D)を使用して前記支持ローラ(42)の径(D)より大きな渦巻き型パイプの曲げ径(D,D…Dn)を連続して曲げ加工する曲げ加工方法であって、前記支持ローラ(42)の径(D)が仮想で曲げ径(Dn)と同じサイズにサイズアップさせるために、前記Y軸移動手段(E)によるY軸移動と、前記X軸移動手段(F)によるX軸移動による移動(X軸、Y軸)指令により前記支持ローラ(42)を移動させ、この支持ローラ(42)の中心(O)の軌跡が2つの直径差(Dn−D)を直径とする太鼓橋状の円弧を描くこの動きと連動して、前記回転テーブル装置(30)の回転(C2軸)指令により分割された所定角度で前記曲げ加工装置(40)を回動させるとともに、さらに、前記曲げ加工装置(40)の回転(C1軸)指令により前記曲げローラ(43)を分割された所定角度または所定の円弧長さを前進・後退させて回動し、前記回転テーブル装置(30)による前記曲げローラ(43)の回動角と、前記曲げ加工装置(40)による前記曲げローラ(43)の回動角の差により、所定の曲げ径(Dn)の大きさにパイプを曲げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、前後方向へ移動するY軸移動手段と左右方向へ移動するX軸移動手段が設けられたXYスライド機構と、上面の回転テーブルを回転させる回転テーブルと、前記回転テーブルに載置され、円筒軸を回転させる曲げ加工装置と、円筒軸の穴に挿通された中心軸の下端部が底面に固定され、この中心軸の上端部に支持された支持ローラと、この支持ローラの中心を回動中心にして回動自在の円筒軸の上面に設けられ、支持ローラと隣接して配置された曲げローラと、を備え、支持ローラの径よりも大きな曲げ径の曲げ加工は、支持ローラの中心の位置を変えるXYスライド機構により行い、支持ローラを使用して大きな曲げ径の曲げ加工は、回転テーブル装置による曲げ加工装置の回動角と、曲げ加工装置に設けられた曲げローラの回動角の差により曲げ加工を行うことができため、従来まで曲げ加工が連続してできなかった一巻きごとに曲げ径が拡大する渦巻き型パイプの曲げ加工が連続してできる。また、給湯器の小型化やダウンサイジングに対応できるパイプ曲げ加工機の提供ができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載されたパイプ曲げ加工機を使用し、支持ローラの径を使用して支持ローラの径より大きな渦巻き型パイプの曲げ径を連続して曲げ加工するために、支持ローラの中心の軌跡が2つの直径差を直径とする太鼓橋状の円弧を描くこの動きと連動して、回転テーブル装置の回転指令により分割された所定角度で前記曲げ加工装置を回動させるとともに、曲げ加工装置の回転指令により前記曲げローラを分割された所定角度または所定の円弧長さを前進・後退させて回動し、回転テーブル装置による曲げローラの回動角と、曲げ加工装置による曲げローラの回動角の差により、所定の曲げ径の大きさにパイプを曲げることができたことにより、従来まで加工できなかった一巻きごとに曲げサイズが拡大する渦巻き型パイプ加工できる曲げ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のパイプ曲げ加工機を含めた全体のシステムを示す構成図である。
【図2】本発明のパイプ曲げ加工機の斜視図の拡大図である。
【図3】本発明のパイプ曲げ加工機を示し、(a)は上面カバーを破断した平面図、(b)は(a)に示すA−A線の断面図である。
【図4】曲げ加工装置を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図5】渦巻き型パイプの大径の曲げ加工方法を示し、(a)から(d)は第1工程〜第4工程である。
【図6】本発明のパイプ曲げ加工機の曲げ加工の原理を示す説明図である。
【図7】従来の技術による大径の曲げ加工方法を示す説明図である。
【図8】(a)は、従来の蛇行型の熱交換器用パイプの形状を示す平面図、(b)は、渦巻き型の熱交換器用パイプの形状を示す平面図である。
【図9】本発明の変形例のパイプ曲げ加工機を示し、(a)は上面カバーを破断した平面図、(b)は(a)に示すB−B線の断面図である。
【図10】従来のパイプ曲げ装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るパイプ曲げ加工機およびパイプ曲げ加工機を使用した渦巻き型パイプの曲げ加工方法について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、数値制御機械の座標系及び運動の記号についてはJISB6310に規定されている。このパイプ曲げ加工機へのJISB6310の適用では、第1回転テーブルの支持ロールの円筒軸をZ軸とすれば、このZ軸に直交する横軸をX軸、縦軸をY軸とし、曲げ加工装置の回転はC1軸、回転テーブル装置の回転はC2軸とする。
【0015】
図1に示すように、右側から順に、コイルスタンド80に装着された金属パイプのコイル81と、曲がりを矯正して直線状にする直線機70と、渦巻き型パイプの曲げ径を連続して曲げ加工するパイプ曲げ加工機100が設置されている。
【0016】
図2に示すように、本発明のパイプ曲げ加工機100は全長が4m、幅が1.2m、高さが0.9mであり、本発明のパイプ曲げ加工機100の本体は先端部に内設されているので、この機構の構成を中心に詳細に説明する。
前記した直線機70によって直線状に整えられた、例えば、銅パイプ(以下、パイプWという)は、チャック装置60のコレットチャック61に挿通され、パイプ曲げ加工機100へ供給される。
チャック装置60は、先端部にコレットチャック61または三つ爪チャックが装着されており、図示しないエアシリンダによる押し引きによってチャックのクランプ、アンクランプを行う。
チャック装置60の移動(前進・後退)は、チャック装置60の下端部に移動する全長に亘り、図示しない直動ガイドが設けられ、サーボモータとボールねじによる駆動方式となっているが、その他の駆動方式であっても構わない。チャック装置60によるパイプWの供給は、チャックのクランプ状態でチャック装置60の前進により行い、後退する時は、チャックがアンクランプ状態となって後退する。
【0017】
<パイプ曲げ加工機の構成>
図3(a)、(b)に示すように、パイプ曲げ加工機100は、架台のフレーム1と、
Y軸(前後)方向へ移動するY軸移動手段Eと、X軸(左右)方向へ移動するX軸移動手段Fと、を有するXYスライド機構Gと、このXYスライド機構Gに載置された、上面の回転テーブル31を回転させる回転テーブル装置30と、この回転テーブル31に載置された、垂直方向の円筒軸47が回動自在に支持された曲げ加工装置40とから構成され、曲げ加工装置40の中心にはパイプ曲げ用の支持ローラ42が配置され、支持ローラ42の中心Oを回動する曲げローラ42が配置されている。
【0018】
<架台のフレームの構成>
図3(a)、(b)に示すように、架台のフレーム1は、角パイプを主要な骨組にした架台であり、各部材は溶接された剛性の高いフレーム構造になっている。なお、この角パイプ構造に限定されることなく、他の材料を使用することは可能である。例えば、H形鋼、I形鋼、溝形鋼、山形鋼等の鋼材を使用してもよいし、鋳物によるベッド構造としてもよい。
【0019】
<XYスライド機構の構成>
XYスライド機構Gは、Y軸(前後)方向へ移動するY軸移動手段Eと、X軸(左右)方向へ移動するX軸移動手段Fとからなる。図3(a)、(b)に示すように、ここでは、Y軸移動手段Eを下にし、X軸移動手段Fを上に配置したが、Y軸移動手段Eを上にし、X軸移動手段Fを下に配置してもよく、Y軸移動手段EとX軸移動手段Fはどちらが上でどちらが下であっても構わない、
なお、説明の都合上、以下、Y軸移動手段EはY軸スライド装置10として説明し、X軸移動手段FはX軸スライド装置20として説明する。つまり、この2つをセットにしたのが、XYスライド機構Gということになる。
【0020】
<Y軸スライド装置の構成>
Y軸スライド装置10は、直動ナット10eの上面に載置された板状のY軸スライド11を前後方向へ移動させるY軸制御のスライド装置である。Y軸スライド装置10は、フレーム1上に、前後方向に載置され、固定されている。
図3(a)、(b)に示すように、Y軸スライド装置10は、平面視で矩形のベース10aと、ベース10aの中央に配置されたY軸用ボールねじ10bと、このY軸用ボールねじ10bに螺入したナット10nと、Y軸用ボールねじ10bの軸端がカップリング10cによって連結されたY軸用サーボモータ10mとからなるY軸移動手段Eが構成されている。
また、Y軸スライド装置10は、左右の両側にY軸方向の移動をガイドする直動ガイド10d,10dが設けられ、この直動ガイド10dには,1本に2個ずつ、移動自在の直動ナット10e,10eが嵌入されている。この合計4個の直動ナット10e,10eの上面には板状のY軸スライド11が載置され、このY軸スライド11の下面にはナット10nが接続されており、Y軸用サーボモータ10mの回転が、このナット10nにより直線運動に変換されてY軸スライド11をY軸方向へ移動させる。
【0021】
<X軸スライド装置の構成>
X軸スライド装置20は、直動ナット20eの上面に載置された板状のX軸スライド21を左右方向へ移動させるX軸制御のスライド装置である。
図3(a)、(b)に示すように、X軸スライド装置20は、Y軸スライド装置10のY軸スライド11の上に載置されている。
X軸スライド装置20は、平面視で矩形のベース20aと、ベース20aの中央に配置されたX軸用ボールねじ20bと、このX軸用ボールねじ20bに螺入したナット20nと、X軸用ボールねじ20bの軸端がカップリング20cによって連結されたX軸用サーボモータ20mとからなるX軸移動手段Fが構成されている。
また、X軸スライド装置20は、前後の両側にX軸方向の移動をガイドする直動ガイド20d,20dが設けられ、この直動ガイド20dには,1本に2個ずつ、移動自在の直動ナット20e,20eが嵌入されている。この合計4個の直動ナット20e,20eの上面には板状のX軸スライド21が載置され、このX軸スライド21の下面にはナット20nが接続されており、X軸用サーボモータ20mの回転が、このナット20nにより直線運動に変換されてX軸スライド21をX軸方向へ移動させる。
【0022】
<回転テーブル装置の構成>
回転テーブル装置30は、X軸スライド装置20のX軸スライド21に載置され、テーブル31を回転させるC2軸制御の回転テーブルである。
回転テーブル装置30は、後記する曲げ加工装置40と同様に、ウォームとウォームホイールとの組合せた減速装置が内蔵されている。サーボモータ30mの回転は、ウォームホイールにより直立する円筒軸の回転に変換され、円筒軸の上端部に固定されたテーブル31を回動させる。なお、ウォームギアの代わりに、平歯車の大小の組み合わせやプーリによる回転駆動であっても構わない。
【0023】
<曲げ加工装置の構成>
図4(b)に示すように、曲げ加工装置40は、回転テーブル装置30のテーブル31に位置決めピン48aによって同芯に載置され、位置ロケータ48によってテーブル31に固定されている。
曲げ加工装置40は、一番上段に位置し、径Dの支持ローラ42の軸心0を中心に曲げローラ43を回動させるC1軸制御の曲げ加工装置40である。
曲げ加工装置40には、ウォーム45とウォームホイール46とが噛み合う減速装置が内蔵され、ウォームホイール46に固定された垂直の円筒軸47はベアリング44によって回転自在に支持されている。このウォームギアの採用により、厚みを薄くできる。
また、円筒軸47の貫通穴47aには中心軸42aが挿通され、下部のフランジ部42bはボディ41の底面に設けられた窪みに嵌合されて固定されている。また、中心軸42aの上部は一段縮径された縮径軸42cに針状コロ42dを介して支持ローラ42が装着され、支持ローラ42は回転可能に支持されている。支持ローラ42には外周にパイプWが挿通し、係合可能な半円状の溝が形成されている。
曲げローラ43は、円筒軸47の上端面に設けられたねじ穴にねじ込まれ、円筒軸47に固定されている。曲げローラ43の上部も支持ローラ42と同様に回転可能になっている。
曲げローラ43にもまた外周にパイプWが挿通し、係合可能な半円状の溝が形成されている。
支持ローラ42の直径Dは、例えば、φ20mm、曲げローラ43の直径はφ14mmが好適である。
円筒軸47の回動、つまり、曲げローラ43の回動は、サーボモータ40m(図3(a)参照)の回転により行う。C1軸のNC指令により、任意の角度で曲げローラ43を回動させる。
なお、図4の(a)、(b)に示すパイプ押さえ49は、パイプの振れを抑えるもので、ここでは、空圧アキュチュエータにより出し入れする。
【0024】
渦巻き型パイプWの曲げ径Dnの曲げ加工方法を説明する。
渦巻き型パイプWの曲げ径Dnの最初は、曲げ径Dであるため、曲げ径Dの場合を詳細に説明する。
ここで、図5(a)〜(d)と、図6の拡大図を参照し、小径である径Dの支持ローラ42を使用して、支持ローラ42の径Dより大径である渦巻き型パイプWの曲げ径Dを曲げ加工する曲げ加工方法の手順と原理とを説明する。
図5(a)に示すように、第1工程は、図示しないチャック60の前進によりパイプWを前方に供給する。
図5(b)に示すように、第2工程は、第1回転テーブル40の回転(C1軸)駆動により径Dの支持ローラ42の回りを曲げローラ43が180度回動し、パイプWを小径Dの大きさに曲げ加工する。
図5(c)に示すように、第3工程は、図示しないチャック60の前進によりパイプWを前方に供給する。
図5(d)に示すように、第4工程は、支持ローラ42の軸心OがX軸、Y軸方向へ移動して、支持ローラの径Dが曲げ径Dと同等のサイズに仮想サイズアップするとともに、かつ曲げローラ43との協働で、パイプWの曲げ加工する内周面を渦巻き型パイプの曲げ径Dのサイズに曲げ加工する。
【0025】
図6は、図5(d)に示すa部を拡大した展開図、図7は、従来の曲げ加工方法を説明した説明図である。
図7に示すように、従来の曲げ加工方法は、径Dの支持ローラ42を大径の曲げ径Dの支持ローラ42と交換し、あとは、第2工程の手順に従って、曲げローラ43を180度回動すればよい。しかしながら、この従来の曲げ加工方法では支持ローラ42の種類数が増大し、その交換作業も発生するため、渦巻き型パイプWの連続した曲げ加工は困難である。
そこで、本発明は、図6に示すように、渦巻き型パイプWの大径の曲げ径Dnを、小径の径Dの支持ローラ42一つで曲げ加工する。
その原理を説明する。
径Dの支持ローラ42が仮想の曲げ径Dnと同じサイズにサイズアップさせるためにY軸方向へ移動自在のY軸スライド装置10と、X軸方向へ移動自在のX軸スライド装置20を設け、支持ローラ42の中心Oが、直径差(Dn−D)を直径とする、直交座標の第1象限で太鼓橋状に、180度の円弧の軌跡を描くように、所定の移動量で移動させる。
【0026】
例えば、支持ローラ42の径Dをφ20、渦巻き型パイプWの曲げ径Dnの最初の曲げ径Dがφ36mmであるとする。
直径差(D−D)は、φ36mm−φ20mm=16mmであり、これを直径とする円弧の軌跡を、太鼓橋状に描くようするために、Y軸スライド装置10とX軸スライド装置20とを移動させることにより、径Dの支持ローラ42の外周面が曲げ径Dnの輪郭を描きながら移動させさせることができることから、仮想で曲げ径Dnの同じサイズにサイズアップさせたことになる。
その移動量(X軸、Y軸)を表1に示す。縦は所定の10°ごとに分割された所定角度を示す。なお、曲げ径Dの場合の所定の分割は、ここでは10°とするが、曲げ径Dnがより大きなものとなる場合は、角度は5°,4°,3°…と縮小させた角度の分割にしてもよいし、円弧長さで分割してもよい。
【0027】
はφ20mm、Dはφ36mmの場合を示す。
C2軸は、曲げ加工装置40全体を回動する回動角を示す。
C1軸は、曲げ加工装置40の曲げローラ43がC2軸の回動角より前進させる回動角を示す。
【0028】
<表1>


【0029】
また、前記したX軸、Y軸との動きと連動して、表1のC2軸の回動角を示すように、回転テーブル装置30も、C2軸制御により、分割された所定角度の10°ごとに、滑らかに回動する(図6参照)。
この回転テーブル30の回動の動きと連動して、さらに、表1のC1軸の回動角を示すように、曲げ加工装置40のC1軸制御により、表1ではC2軸の回動角より10°前進させて、両者の回動角の差が10°を確保しながら、回動、また、戻り、これを繰り返しながら進行して所定の曲げ径DのサイズにパイプWを曲げる。
つまり、回転テーブル装置30による曲げローラ43の回動角(C2)、例えば10°と、曲げ加工装置40による曲げローラ43の回動角、例えば20°との差である10°
の曲げローラ43の回動により、所定の曲げ径Dnの大きさにパイプを曲げる。
なお、曲げローラ43の回動角は、10°に限らず、曲げ径Dnのサイズにより、2°〜20°が好適である。または、回動距離の円弧長さにして5mm〜20mmが好適である。これらは曲げ径Dnのサイズに合わせて適宜変更すればよい。
【0030】
この後は、第3工程と同様に、図示しないチャック60の前進によりさらにパイプWを前方に供給する。続いて、図8の(b)に示すように、渦巻き型パイプWの大径の曲げ径Dの次は、曲げ径Dに変わるため、第4工程と同様に曲げ径Dのサイズに曲げ加工をする。
曲げ径D以後の大径の曲げ径D、D、D…Dnのパイプ曲げ加工方法は、前記した第3工程と第4工程の曲げ加工方法を繰り返すことにより、渦巻き型パイプの曲げ径Dnの曲げ加工が容易に連続した加工ができる。以下、曲げ径Dの説明は、重複する説明になるので省略する。
なお、実施例の説明では、一例としてコイルスタンド80に装着された金属パイプの連続したコイル81として紹介したが、所定の長さに切断した直管を直接パイプ曲げ加工機100にかけて加工しても構わない。
【0031】
支持ローラ42の径(D)よりも大きな曲げ径(D,D…Dn)に拡大するのは、支持ローラ42の中心Oの位置を変えるXYスライド機構Gにより行う。これにより、曲げ径(D,D…Dn)が拡大しても自在に設定が可能であるため、連続加工ができる。
支持ローラ42を使用して大きな曲げ径(Dn)の曲げ加工は、回転テーブル装置30による曲げ加工装置40の回動角で行う。
そして、より精度の高い曲げ径(Dn)への仕上げは、曲げ加工装置40に設けられた曲げローラ43の回動角の差により曲げ加工を行うものである。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態に限定されることなく、適宜変更して実施することができる。例えば、図9に示すように、各装置の積み重ねの順番を変え、組み直してもよい。図3で示した構成と図9との相違点を説明する。
図3では、2段目がX軸スライド装置20、3段目が回転テーブル装置30となっている。この両者を組み変えて、図9に示すように、2段目を回転テーブル装置30、3段目をX軸スライド装置20、としてもよい。
さらに、図2に示すように、チャック装置60を別置型とし、このチャック装置60にX軸スライド装置20を移し替えても構わない。
また、チャック装置60の移動(前進・後退)は、サーボモータとボールねじによる駆動方式以外であってもよいとしたが、例えば、サーボモータとタイミングベルト方式であってもよい。つまり、ボールねじの代わりにタイミングベルトを配置し、タイミングベルトはサーボモータのモータ軸に装着されたプーリと噛合い、タイミングベルトを介してチャック装置60の前進・後退を行う。なお、このベルト方式の代わりに、その他の方式としても構わない。
パイプWは、伝導率の高い金属パイプの銅製やアルミ製が好適であるが、この他であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 フレーム
10 Y軸スライド装置(Y)
20 X軸スライド装置(X)
30 回転テーブル装置(C2)
40 曲げ加工装置(C1)
42 支持ローラ
42a 中心軸
43 曲げローラ
60 チャック装置
100 パイプ曲げ加工機
径(支持ローラ)
,D,D…Dn 曲げ径
E Y軸移動手段
F X軸移動手段
G XYスライド機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持ローラ(42)と曲げローラ(43)との間にパイプ(W)を供給し、前記曲げローラ(43)の回動角に連動して前記支持ローラ(42)の中心(O)位置を変えながら、前記支持ローラ(42)の径(D)よりも大きな曲げ径(D,D…Dn)の曲げ加工を連続して行うパイプ曲げ加工機(100)であって、
前記フレーム(1)に載置され、Y軸(前後)方向へ移動するY軸移動手段(E)と、
X軸(左右)方向へ移動するX軸移動手段(F)と、を有するXYスライド機構(G)と、
前記XYスライド機構(G)に載置され、上面の回転テーブル(31)を回転させる回転テーブル装置(30)と、
前記回転テーブル(31)に載置され、垂直方向の円筒軸(47)が回動自在に支持された曲げ加工装置(40)と、
前記円筒軸(47)の穴に挿通され、下端部が底面に固定された中心軸(42a)と、
前記中心軸(42a)の上端部に支持された前記支持ローラ(42)と、
前記支持ローラ(42)の中心(O)を回動中心にして回動自在の前記円筒軸(47)の上面に設けられ、前記支持ローラ(42)と隣接して配置された前記曲げローラ(43)と、を備えたことを特徴とするパイプ曲げ加工機(100)。
【請求項2】
請求項1に記載されたパイプ曲げ加工機(100)を使用し、支持ローラ(42)の径(D)を使用して前記支持ローラ(42)の径(D)より大きな渦巻き型パイプの曲げ径(D,D…Dn)を連続して曲げ加工する曲げ加工方法であって、
前記支持ローラ(42)の径(D)が仮想で曲げ径(Dn)と同じサイズにサイズアップさせるために、前記Y軸移動手段(E)によるY軸移動と、前記X軸移動手段(F)によるX軸移動による移動(X軸、Y軸)指令により前記支持ローラ(42)を移動させ、この支持ローラ(42)の中心(O)の軌跡が2つの直径差(Dn−D)を直径とする太鼓橋状の円弧を描くこの動きと連動して、
前記回転テーブル装置(30)の回転(C2軸)指令により分割された所定角度で前記曲げ加工装置(40)を回動させるとともに、
さらに、前記曲げ加工装置(40)の回転(C1軸)指令により前記曲げローラ(43)を分割された所定角度または所定の円弧長さを前進・後退させて回動し、
前記回転テーブル装置(30)による前記曲げローラ(43)の回動角と、前記曲げ加工装置(40)による前記曲げローラ(43)の回動角の差により、所定の曲げ径(Dn)の大きさにパイプを曲げることを特徴とする渦巻き型パイプ(W)の曲げ径(Dn)の曲げ加工をする曲げ加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−251331(P2011−251331A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128522(P2010−128522)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【特許番号】特許第4653856号(P4653856)
【特許公報発行日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(598078746)武州工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】