説明

パイル布帛のプリント方法、及びパイル布帛のプリント設備

【課題】 パイル布帛の捺染工程における生産性の向上と、生産コストの削減とを同時に
図ることができ、また、色のにじみやムラがなく均一にしかも短時間で捺染剤を生地に浸
透させることができるパイル布帛のプリント設備を提供すること。
【解決手段】 パイル布帛の捺染を行う設備であって、パイル布帛1に捺染剤を印捺する
印捺処理手段20と、印捺後のパイル布帛1を挟圧する挟圧処理手段40と、挟圧後のパ
イル布帛1に付着浸透している捺染剤を固着させる固着処理手段60と、印捺後のパイル
布帛1を挟圧処理手段40に連続的に搬送する搬送手段30とを含んで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパイル布帛のプリント方法、及びパイル布帛のプリント設備に関し、より詳細
には毛布やカーペットなどのパイル布帛の捺染工程における生産性の向上と、生産コスト
の削減とを図ることのできるパイル布帛のプリント方法、及びパイル布帛のプリント設備
に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、毛布やカーペットなどのパイル布帛への捺染(プリント)は、オートスクリ
ーン型捺染機などを用いて行われていた。このような捺染機を用いた捺染工程では、パイ
ル布帛への捺染剤(以下、色糊とも言う)の浸透性を高めるために、従来から以下のイ〜
ホの工夫が施されていた。
イ)印捺回数を増やす、ロ)印捺速度を遅くする、ハ)色糊の粘度を低くする、ニ)印
捺に使用するロールの径を大きくする、ホ)色糊に加える浸透剤や助剤を多くする。
【0003】
毛布やカーペットなどのパイル布帛では、その目付量、パイル長、糸の太さ(デニール
)を変えることにより風合いの異なる様々な形態の生地を作り出すことが可能であるが、
その目付量、パイル長、糸の太さによって、捺染に用いる色糊の生地に対する浸透性が異
なってくることが知られている。特に、目付量が多い(パイルの密度が高い)程、パイル
の長さが長い程、また糸の太さが細い程、色糊の生地に対する浸透が悪くなる傾向にあり
、実際には、上記したイ〜ホの工夫を適宜組み合わせた方法で捺染機による印捺処理を実
施している。
【0004】
一般に、合わせ毛布(目付量400〜550g/m2、パイル長10〜20mm、糸の
太さ0.8〜3.0d(デニール))の場合は、上記したイ〜ホの工夫を適宜組み合わせ
た上で、捺染機による2回の印捺処理を実施している。また、ニューマイヤー毛布(目付
量550〜720g/m2、パイル長2〜15mm、糸の太さ0.8〜3.0d)の場合
は、裏面を起毛して両面パイル毛布とするため、色糊の生地に対する浸透が悪いと、裏面
の柄がぼやけたものとなってしまい商品価値が低下してしまう。そのため、合わせ毛布以
上に色糊の生地に対する浸透性を高めることが要求されており、合わせ毛布の時よりも印
捺速度を落して2回の印捺処理を実施したり、又は合わせ毛布の時よりも印捺回数を増や
し、例えば4回程度の印捺処理を実施している。
【0005】
従来の捺染機のみを用いた捺染工程では、パイル布帛に対して色糊を所望の状態まで浸
透させるために複数回以上の印捺処理を施したり、印捺速度を低くする必要があったため
、捺染工程に長時間を要してしまい、生産性を高めることが難しく、また、生産のために
必要な蒸気量、電気量、水量なども減らすことが難しく、生産コストも高く付いてしまう
という問題があり、上記したイ〜ホの工夫を施す方法だけでは、捺染工程における生産性
の向上、及び生産コストの削減に対する効果を十分に得ることが難しかった。
【0006】
そこで、捺染工程における生産性の向上、及び生産コストの削減を図るために、パイル
布帛に対する捺染剤の浸透を早めるためのさらなる工夫が必要となった。下記の特許文献
1には、染料濃厚溶液を定量ポンプで立毛布帛の幅に均一に流下させ、その後、2組から
5組の間からなる上下のプレスロールで前記立毛布帛を加圧圧縮して、立毛繊維の先端部
分に付着している染料濃厚溶液を流動化せしめ、立毛繊維の先端から根元まで染料の付着
を均一化させ、その後、電磁波で繊維表面に糊着し、蒸気の熱により繊維内部に拡散させ
て着色する技術が開示されている。パイル布帛に印捺された色糊の浸透を良くするために
は、印捺されたパイル布帛に物理的な力を加えることが効果的であることが推測された。
【0007】
しかしながら、スクリーン型捺染機にプレスロールを組み合わせようとした場合、以下
のような問題が生じた。すなわち、スクリーン型捺染機による印捺処理はレピート単位で
行われる間欠運動であるため、印捺時には生地が停止した状態となり、該停止状態の時に
、プレスロールで生地を挟んだ加圧状態のままにすると、生地の加圧されている部分だけ
特に浸透度が強くなり、プリント柄がにじんだりして均一な浸透を行うことができない。
また、前記間欠運動に連動させてプレスロールのいずれかを上げ下げして加圧状態を一時
的に開放させようとする場合、プレスロールを上げ下げするタイミングの制御が難しいと
いう問題が生じた。
【0008】
また、パイル布帛をスクリーン型捺染機による印捺処理後にプレスロールによる加圧を
行うと、プレスロールに色糊が付着してしまう。プレスロールの表面を常に清浄な状態に
しておかないと、プレスロールに付着した色糊が生地に付着してしまい、色柄の品質を低
下させてしまうという問題が生じた。
【0009】
また、マイヤー毛布のようなタテ編機により編成されたパイル布帛では、幅方向の両側
部分における生地の張り具合(テンション)が微妙に異なる場合が多いため、プレスロー
ルで挟圧する際に、パイル布帛の両側部分にシワが寄った状態で挟圧され、色糊を均一に
浸透させることが難しいという問題があった。
【特許文献1】特開2002−88638号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、パイル布帛の捺染工程における生産性
の向上と、生産コストの削減とを同時に図ることができ、また、色のにじみやムラがなく
均一にしかも短時間で捺染剤を生地に浸透させることができるパイル布帛のプリント方法
、及びパイル布帛のプリント設備を提供することを目的としている。
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係るパイル布帛のプリント方法(1)は、パイル布
帛に捺染剤を印捺する印捺処理ステップと、印捺後の前記パイル布帛を挟圧手段に連続的
に搬送する搬送ステップと、搬送されてきた前記パイル布帛を前記挟圧手段で挟圧する挟
圧処理ステップと、挟圧後の前記パイル布帛に付着浸透している捺染剤を固着させる固着
処理ステップとを含むことを特徴としている。
【0012】
上記パイル布帛のプリント方法(1)によれば、前記印捺処理ステップと前記挟圧処理
ステップとが組み合わされ、しかも前記搬送ステップにより、印捺後の前記パイル布帛を
前記挟圧手段に連続的に搬送するので、前記挟圧手段による前記パイル布帛の挟圧処理を
、前記印捺処理の動作状態に関わらず連続的に行うことができ、該連続的に行われる挟圧
処理により前記パイル布帛に印捺された捺染剤を均一かつ速やかに浸透させることができ
る。したがって、前記印捺処理ステップによる印捺処理を従来よりも少ない回数で、又は
早い速度で行うことができ、その結果、捺染工程に要する時間を大幅に短縮することが可
能となり、生産性を向上させることができる。さらに生産性の向上に伴い、パイル布帛の
単位長さ当たりの生産に必要な燃料代、電力代、水代、及び人件費などの生産コストも大
幅に削減することができる。
【0013】
また本発明に係るパイル布帛のプリント方法(2)は、上記パイル布帛のプリント方法
(1)において、前記印捺処理ステップにおける印捺処理をスクリーン型捺染機で行い、
前記搬送ステップにおいて、前記スクリーン型捺染機から間欠的に送り出される印捺後の
前記パイル布帛を前記挟圧手段に連続的に供給するように搬送状態を調整し、前記挟圧処
理ステップにおける挟圧処理を連続的に行うことを特徴としている。
【0014】
上記パイル布帛のプリント方法(2)によれば、前記搬送ステップにおいて、前記スク
リーン型捺染機から間欠的に送り出される印捺後の前記パイル布帛を前記挟圧手段に連続
的に供給するように搬送状態を調整し、前記挟圧処理ステップにおける挟圧処理を連続的
に行うので、前記スクリーン型捺染機から印捺後の前記パイル布帛がたとえ間欠的に送り
出されても、前記挟圧手段での挟圧処理を連続的に行うことができ、該連続的に行われる
挟圧処理により前記パイル布帛に印捺された捺染剤を均一かつ速やかに浸透させることが
でき、上記パイル布帛のプリント方法(1)により得られる効果をより確実なものとする
ことができる。
【0015】
また本発明に係るパイル布帛のプリント方法(3)は、上記パイル布帛のプリント方法
(1)又は(2)において、前記挟圧処理ステップの前に、印捺後の前記パイル布帛に一
定の張力を付与する張力付与ステップをさらに含むことを特徴としている。
【0016】
上記パイル布帛のプリント方法(3)によれば、前記挟圧処理ステップの前に、印捺後
の前記パイル布帛に一定の張力を付与する張力付与ステップをさらに含んでいるので、前
記パイル布帛自体の張り具合(テンション)にばらつきがあったとしても、印捺後の前記
パイル布帛に張りを持たせた状態(張力を作用させた状態)で前記挟圧手段に供給するこ
とができ、該挟圧手段による挟圧時に、前記テンションのばらつきに起因するシワが生じ
たり、該シワが生じたまま挟圧して、前記捺染剤の浸透ムラなどが生じてしまうといった
品質を低下させる現象を防止することができる。
【0017】
また本発明に係るパイル布帛のプリント設備(1)は、パイル布帛に捺染剤を印捺する
印捺処理手段と、印捺後の前記パイル布帛を挟圧する挟圧処理手段と、挟圧後の前記パイ
ル布帛に付着浸透している捺染剤を固着させる固着処理手段と、印捺後の前記パイル布帛
を前記挟圧処理手段に連続的に搬送する搬送手段とを含んで構成されていることを特徴と
している。
【0018】
上記パイル布帛のプリント設備(1)によれば、前記印捺処理手段と前記挟圧処理手段
とが組み合わされ、しかも前記搬送手段により、印捺後の前記パイル布帛が前記挟圧処理
手段に連続的に搬送されるので、前記挟圧処理手段による前記パイル布帛の挟圧処理を、
前記印捺処理の動作状態に関わらず連続的に行うことができ、該連続的に行われる挟圧処
理により前記パイル布帛に印捺された捺染剤を均一かつ速やかに浸透させることができる
。したがって、前記印捺処理手段による印捺処理を従来よりも少ない回数で、又は早い速
度で行うことができ、その結果、捺染工程に要する時間を大幅に短縮することが可能とな
り、生産性を向上させることができる。さらに生産性の向上に伴い、パイル布帛の単位長
さ当たりの生産に必要な燃料代、電力代、水代、及び人件費などの生産コストも大幅に削
減することができる。
【0019】
また本発明に係るパイル布帛のプリント設備(2)は、上記パイル布帛のプリント設備
(1)において、前記印捺処理手段が、スクリーン型捺染機を含んで構成され、前記搬送
手段が、前記パイル布帛の搬送ラインを形成するものであり、前記スクリーン型捺染機か
ら間欠的に送り出される印捺後の前記パイル布帛を前記挟圧処理手段に連続的に供給する
ように搬送状態を調整する搬送状態調整手段を含んで構成されていることを特徴としてい
る。
【0020】
上記パイル布帛のプリント設備(2)によれば、前記スクリーン型捺染機から印捺後の
前記パイル布帛がたとえ間欠的に送り出されてきても、前記搬送状態調整手段により、印
捺後のパイル布帛を前記挟圧処理手段に連続的に供給するように搬送状態が調整されるの
で、前記挟圧処理手段での挟圧処理を連続的に行うことができ、該連続的に行われる挟圧
処理により前記パイル布帛に印捺された捺染剤を均一かつ速やかに浸透させることができ
、品質のばらつきが少ない捺染を行うことができる。
【0021】
また本発明に係るパイル布帛のプリント設備(3)は、上記パイル布帛のプリント設備
(1)又は(2)において、前記挟圧処理手段が、印捺後の前記パイル布帛を挟圧するプ
レスロール手段と、該プレスロール手段の表面を清掃する清掃手段とを含んで構成されて
いることを特徴としている。
【0022】
上記パイル布帛のプリント設備(3)によれば、前記プレスロール手段により、印捺後
の前記パイル布帛が挟圧され、前記清掃手段によって、前記プレスロール手段の表面が清
掃されるので、前記パイル布帛を挟圧した後の前記プレスロール手段の表面に付着した捺
染剤や微塵などの付着物を取り除くことができ、前記プレスロール手段の表面を清浄な状
態に保ちながら挟圧処理を連続的に行うことができる。その結果、前記プレスロール手段
に付着した捺染剤が前記パイル布帛に付着して色ムラが生じるといった現象を防止するこ
とができ、品質のばらつきが少ない捺染を行うことができ、また、前記プレスロール手段
を作動させながら、その表面を清掃することができるので、清掃のために設備を一時停止
させる必要もなく、生産性の向上に寄与することができる。
【0023】
また本発明に係るパイル布帛のプリント設備(4)は、上記パイル布帛のプリント設備
(3)において、前記清掃手段が、前記プレスロール手段の上部プレスロールを清掃する
上部ロール清掃手段を含んで構成され、該上部ロール清掃手段が、前記パイル布帛を挟圧
した後の前記上部プレスロールの表面をブラッシングするブラッシング手段と、該ブラッ
シングされた後の前記上部プレスロールの表面に向けて洗浄水を噴射する第1の洗浄水噴
射手段と、該洗浄水が噴射された後の前記上部プレスロールの表面に当接させた状態で配
設される第1のドクターブレードと、該第1のドクターブレードにより前記上部プレスロ
ールの表面から取り除かれた付着物を回収する付着物回収手段と、該第1のドクターブレ
ードを通過した後の前記上部プレスロールの表面を拭き取る拭き取り手段と、該拭き取ら
れた後の前記上部プレスロールの表面に当接させた状態で配設される第2のドクターブレ
ードとを含んで構成されていることを特徴としている。
【0024】
上記パイル布帛のプリント設備(4)によれば、前記上部ロール清掃手段を構成する上
記した要素を組み合わせることにより、前記上部プレスロール表面に付着した捺染剤や微
塵などの付着物を確実に取り除くことができ、前記上部プレスロール表面の清浄度を高め
ることができ、常に清浄な状態とした後に前記パイル布帛を挟圧することができる。した
がって、前記パイル布帛を挟圧したときに、前記上部プレスロールに付着した付着物が、
前記パイル布帛に付着して、色ムラなどが生じるといった現象を防止する効果を高めるこ
とができ、品質のばらつきが少ない捺染を行う効果を一層高めることができる。
【0025】
また本発明に係るパイル布帛のプリント設備(5)は、上記パイル布帛のプリント設備
(3)又は(4)において、前記清掃手段が、前記プレスロール手段の下部プレスロール
を清掃する下部ロール清掃手段を含んで構成され、該下部ロール清掃手段が、前記パイル
布帛を挟圧した後の前記下部プレスロールの表面に洗浄水を噴射する第2の洗浄水噴射手
段と、該洗浄水が噴射された後の前記下部プレスロールの表面に当接させた状態で配設さ
れる第3のドクターブレードとを含んで構成されていることを特徴としている。
【0026】
上記パイル布帛のプリント設備(5)によれば、前記下部ロール清掃手段を構成する上
記した要素を組み合わせることにより、前記下部プレスロール表面に付着した微塵などの
付着物を確実に取り除くことができ、前記下部プレスロール表面の清浄度を高めることが
でき、常に清浄な状態とした後に前記パイル布帛を挟圧することができる。したがって、
前記パイル布帛を挟圧したときに、前記下部プレスロールに付着した付着物が、前記パイ
ル布帛に付着して、汚れなどが生じるといった現象を防止する効果を高めることができ、
品質のばらつきが少ない捺染を行う効果を一層高めることができる。
【0027】
また本発明に係るパイル布帛のプリント設備(6)は、上記パイル布帛のプリント設備
(1)〜(5)において、前記挟圧処理手段の前に、印捺後の前記パイル布帛に一定の張
力を付与する張力付与手段を備えていることを特徴としている。
【0028】
上記パイル布帛のプリント設備(6)によれば、前記挟圧処理手段の前に、印捺後の前
記パイル布帛に一定の張力を付与する張力付与手段を備えているので、前記パイル布帛自
体の張り(テンション)にばらつきがあったとしても、印捺後の前記パイル布帛に張りを
持たせた状態(張力を作用させた状態)で前記挟圧処理手段に供給することができ、該挟
圧処理手段による挟圧時に、前記テンションのばらつきに起因するシワが生じたり、該シ
ワが生じたまま挟圧して、前記捺染剤の浸透ムラなどが生じてしまうといった品質を低下
させる現象を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るパイル布帛のプリント方法、及びパイル布帛のプリント設備の実施
の形態を図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備
の概略構成を模式的に示した部分断面側面図である。
【0030】
プリント設備10は、印捺処理手段20、搬送手段30、挟圧処理手段40、及び固着
処理手段60を含んで構成されている。
印捺処理手段20は、染料や顔料などの着色剤に樹脂や糊などを加えた捺染剤をパイル
布帛1に印捺するスクリーン型捺染機21を含んで構成されている。スクリーン型捺染機
21は、所定のレピート(送り)単位でパイル布帛1に印捺を行い、印捺後、レピート単
位で生地の送り出しを行う、すなわち、間欠的に生地を送り出す構成となっており、ここ
ではオートスクリーン型の捺染機が採用されているが、他の形式の捺染機を適用すること
もできる。なお、実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備10は、パイルの長さが2
〜30mm、幅が100〜2200mm、目付量が0.4〜0.8kg/m2程度のパイ
ル布帛のプリントに好適な構成となっている。
【0031】
搬送手段30は、スクリーン型捺染機21で印捺処理されたパイル布帛1を挟圧処理手
段40を介して固着処理手段60まで搬送するための搬送ラインを構成するものであり、
モータM1、M2、モータM1とチェーン等の連結具31を介して連結された駆動ロール
R1、R2、モータM2とチェーン等の連結具32を介して連結された駆動ロールR3、
その他の複数の補助ロールR4〜Rn(nは任意の整数)、パイル布帛1の検出装置70
、及びモータM1、M2の駆動等を制御する制御部(図示せず)を含んで構成されている

【0032】
駆動ロールR1、R2は、スクリーン型捺染機21で印捺されたパイル布帛1を進行方
向にあるパイル布帛1の弛み部71に搬送するための駆動力をパイル布帛1に与えるため
のロールであり、モータM1により駆動されるようになっている。パイル布帛1を所定の
速度や張力で弛み部71に搬送させるためには、少なくとも2つ以上の駆動ロールを設け
ることが好ましい。
【0033】
また、駆動ロールR3は、弛み部71に搬送されてきたパイル布帛1を進行方向にある
挟圧処理手段40に連続的に移送するための駆動力をパイル布帛1に与えるためのロール
であり、モータM2により駆動されるようになっている。
【0034】
また、駆動ロールR2と駆動ロールR3との間に形成されたパイル布帛1の弛み部71
は、スクリーン型捺染機21から間欠的(レピート単位の印捺終了毎)に送り出されてく
る印捺後のパイル布帛1を挟圧処理手段40に連続的に供給するためのバッファの役割を
果たすものであり、弛み部71を設けることによって、スクリーン型捺染機21からパイ
ル布帛1の送り出しが停止している状態(印捺処理中)であっても、挟圧処理手段40に
パイル布帛1を一定の速度で連続的に供給することが可能となっている。
【0035】
弛み部71には、パイル布帛1の在否を検出するための検出装置70が配設されている
。パイル布帛1の検出装置70は、光電管を備える発光部70aと受光部70bとを含ん
で構成されており、発光部70aから光を照射し、受光部70bで受光することによって
、その位置におけるパイル布帛1の存否を検出するものであり、検出信号が制御部に送出
されるようになっている。制御部では、検出装置70から得られた検出信号に基づいて、
モータM1、M2の駆動状態を制御し、パイル布帛1の搬送状態を制御することにより、
弛み量を所定の範囲に維持することが可能となっている。
【0036】
挟圧処理手段40は、印捺後のパイル布帛1を挟んで加圧するプレスロール41と、プ
レスロール41の表面を清掃する清掃手段50(図2〜4参照)とを含んで構成されてい
る。プレスロール41は、搬送されてくるパイル布帛1の上面(印捺処理面)側に位置す
るステンレス製ロール41aと、パイル布帛1の下面側に位置するゴム製ロール41bと
、ステンレス製ロール41aの上げ下げや加圧力を調整するためのエアシリンダ42とを
含んで構成されている。また、ゴム製ロール41bが、モータM2と連結具33を介して
連結されており、モータM2の駆動によりゴム製ロール41bが回転し、ゴム製ロール4
1bの回転に連動してステンレス製ロール41aも回転するようになっている。なお、清
掃手段50については、後ほど詳しく説明する。
【0037】
固着処理手段60は、パイル布帛1に付着浸透した捺染剤を固着させるための手段であ
り、通常の染色に採用されている飽和水蒸気によるスチーム処理装置61を用いることが
できる。パイル布帛1のスチーム処理装置61内の滞在時間は、パイル布帛1が連続的に
スチーム処理されるように、所定時間が設定されている。
【0038】
また、挟圧処理手段40と固着処理手段60との間には、パイル布帛1の弛み部81が
形成されており、この弛み部81は、スチーム処理装置61の入口付近での搬送速度のず
れを補うために設けられるものである。このような弛み部81を設けることにより、スチ
ーム処理との連動がスムーズに行え、搬送状態をより安定化させることができる。
【0039】
弛み部81には、発光部80aと受光部80bとを有するパイル布帛1の検出装置80
が配設されており、その位置におけるパイル布帛1の存否を検出し、その検出信号をスチ
ーム処理装置61に送出するようになっている。スチーム処理装置61では、検出装置8
0から得られた検出信号に基づいて、スチーム駆動ロールRsの駆動状態を制御し、パイ
ル布帛1の搬送速度を調整することにより、弛み量を所定の範囲に維持することが可能と
なっている。
【0040】
上記した印捺処理手段20、搬送手段30、挟圧処理手段40、及び固着処理手段60
は、プリント設備10を構成する主要な構成要素であるが、これらの他に重要な構成とし
て、挟圧処理手段40の前段に、パイル布帛1に一定の張力を付与した状態で挟圧処理手
段40にパイル布帛1を供給するための張力調整手段90が設けられている。なお、張力
調整手段90については、後ほど詳しく説明する。
【0041】
以上述べた設備構成が本実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備10の全体構成で
ある。次に、本実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備10に特徴的な構成要素であ
る挟圧処理手段40と、張力調整手段90とについて、さらに具体的に説明する。
【0042】
図2は、挟圧処理手段40の要部構成を模式的に示した正面図(印捺処理手段20側か
ら見た図)であり、図3は、挟圧処理手段40の要部構成を模式的に示した背面図(固着
処理手段60側から見た図)であり、図4は、挟圧処理手段40の要部構成を模式的に示
した断面側面図である。
【0043】
挟圧処理手段40の構成要素であるプレスロール41は、搬送されてくるパイル布帛1
の上面側に位置するステンレス製ロール41aと、パイル布帛1の下面側に位置するゴム
製ロール41bとを含んで構成されており、ステンレス製ロール41aはエアシリンダ4
2(図1参照)と連結されており、エアシリンダ42によってステンレス製ロール41a
の上げ下げや加圧力を調整することができるようになっている。
【0044】
プレスロール41の表面を清掃する清掃手段50は、ステンレス製ロール41aの表面
を清掃する上部ロール清掃手段50aと、ゴム製ロール41bの表面を清掃する下部ロー
ル清掃手段50bとを含んで構成されている。
【0045】
上部ロール清掃手段50aは、ブラッシング手段51、洗浄水噴射手段52、第1のド
クターブレード53、付着物回収手段54、拭き取り手段55、及び第2のドクターブレ
ード56を含んで構成され、これらがステンレス製ロール41aの最上部付近に、ステン
レス製ロール41aの回転方向に沿って順に配設されている。
【0046】
ブラッシング手段51は、パイル布帛1を挟圧した後のステンレス製ロール41aの表
面を全幅にわたってブラッシングして、表面に付着している捺染剤や微塵を掻き除くもの
であり、ステンレス製ロール41aの幅と同程度の幅を有する基部51aと、基部51a
に、所定の長さの毛の束が所定の間隔を設けて複数列(各列が交互に4列程度)埴毛され
た毛部51bとを含んで構成されており、ステンレス製ロール41aの最上部の少し手前
側(固着処理手段60側)に毛先を表面に当接させた状態で配設されている。
【0047】
洗浄水噴射手段52は、洗浄水供給管52aと、洗浄水供給管52aに所定の間隔を設
けて形成された複数の噴射孔52bとを含んで構成されており、洗浄水供給管52aは、
図示していない給水管等に接続されている。洗浄水供給管52aは、ステンレス製ロール
41aの最上部上方に配設され、ステンレス製ロール41aの表面に向けて洗浄水を噴射
する噴射孔52bは、ステンレス製ロール41aの回転方向に少し傾けた角度で設置され
ており、ブラッシング手段51によりブラッシングされた後のステンレス製ロール41a
表面の全幅にわたって洗浄水を均一に噴射することができるとともに、噴射孔52bから
噴射された洗浄水が、ステンレス製ロール41aの回転方向とは逆方向(ブラッシング手
段51側)に流れ落ちないようになっている。
【0048】
第1のドクターブレード53は、洗浄水が噴射された後のステンレス製ロール41a表
面に先端部を当接させた状態で配設されており、洗浄水とともに付着物を表面から剥離除
去するためのものであって、ステンレス製ロール41aの幅と同程度の幅を有するプラス
チック製のドクターブレードから構成されている。
【0049】
付着物回収手段54は、第1のドクターブレード53でステンレス製ロール41a表面
から剥離除去された付着物を回収するためのものであり、付着物を通過させない程度の目
の細かいステンレス製のネット部材で構成されている。
【0050】
拭き取り手段55は、第1のドクターブレード53を通過した後のステンレス製ロール
41aの表面を拭き取るためのものであり、ステンレス製ロール41aの幅と同程度の幅
を有するスポンジ部材で構成されている。拭き取り手段55により、第1のドクターブレ
ード53では剥離されずに表面に残った付着物を拭き取ることができるようになっている

【0051】
第2のドクターブレード56は、ステンレス製ロール41aの表面から洗浄水を最終的
に除去するためのものであり、ステンレス製ロール41aとの密着度が高くなるように、
ゴム製のドクターブレードで構成されている。第2のドクターブレードで堰き止められた
洗浄水は、第2のドクターブレード56の両側に向けて流れ、第2のドクターブレード5
6の両側下方位置に配設された水受け部59aに流れ落ちて回収されるようになっている
。上部ロール清掃手段50aにより、第2のドクターブレード56を通過したステンレス
製ロール41aの表面が清浄な状態に保たれるように構成されている。
【0052】
下部ロール清掃手段50bは、洗浄水噴射手段57と、第3のドクターブレード58と
を含んで構成され、これらがゴム製ロール41bの回転方向に沿って順に配設されている

【0053】
洗浄水噴射手段57は、洗浄水供給管57aと、洗浄水供給管57aに所定の間隔を設
けて形成された複数の水噴射孔57bとを含んで構成されており、洗浄水供給管57aは
、図示していない給水管等に接続されている。洗浄水供給管57aは、ゴム製ロール41
bの最上部と最下部との中間部分に配設され、噴射孔57bが、ゴム製ロール41bの表
面に向けて配設されており、挟圧後のゴム製ロール41b表面の全幅にわたって洗浄水を
均一に噴射することができるようになっている。ゴム製ロール41bの表面に向けて噴射
された洗浄水は、ゴム製ロール41bの下部に配設された水受け部59bで回収されるよ
うになっている。
【0054】
第3のドクターブレード58は、ゴム製ロール41bの表面から洗浄水を最終的に除去
するためのものであり、ゴム製ロール41bとの密着度が高くなるように、ゴム製のドク
ターブレードで構成されている。第3のドクターブレード58で堰き止められた洗浄水は
、ゴム製ロール41bの下部に配設された水受け部59bに流れ落ちるようになっている
。下部ロール清掃手段50bにより、第3のドクターブレード58を通過したゴム製ロー
ル41bの表面が清浄な状態に保たれるように構成されている。
【0055】
図5は、本実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備10の構成要素である張力調整
手段90の要部を模式的に示した図であり、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【0056】
張力調整手段90は、パイル布帛1の幅方向に向けて載置される直径10mm前後の丸
棒91と、丸棒91の両端部を上下方向に昇降自在に支持するための平面視略コの字形状
をした支持枠92とを含んで構成されている。なお、丸棒91の両端部には、支持枠92
との摩擦が小さくなるようにベアリング等を設けることが好ましい。
【0057】
マイヤー毛布のようなタテ編機により編成されたパイル布帛1では、幅方向の両側部分
における生地の張り具合(テンション)が微妙に異なる場合が多いため、そのままプレス
ロール41で挟圧すると、パイル布帛1の両側部分にシワが寄った状態で挟圧される可能
性があるが、プレスロール41の手前のパイル布帛1上に丸棒91を載せることにより、
パイル布帛1自体の張り(テンション)にばらつきがあったとしても、丸棒91の自重に
よって、印捺後のパイル布帛1に一定の張りを持たせた状態(一定の張力を作用させた状
態)で挟圧処理手段40に供給することが可能となる。
【0058】
また、丸棒91が、直径10mm前後の小径の金属製の棒部材で構成されているので、
印捺後のパイル布帛1上に載せたままにしておいても、丸棒91に色糊などが付着するこ
とがなく、パイル布帛1の印捺面を汚すことのないものとなっている。
【0059】
図6は、次に実施の形態に係るパイル布帛1のプリント方法の開始手順を示した工程図
である。まず、スクリーン型捺染機21にパイル布帛1をセットする(ステップS1)。
ここで、予めスクリーン型捺染機21から固着処理手段60の間に通されている導布(図
示省略)の端部とパイル布帛1の端部とを縫合し、その後、スクリーン型捺染機21によ
るパイル布帛1への印捺処理を開始する(ステップS2)。
【0060】
その後、スクリーン型捺染機21に設けられた光電管(図示せず)により、印捺された
パイル布帛1が1レピート分送り出されたことが検知されると(ステップS3)、モータ
M1の駆動を開始して、モータM1と連結具31を介して連結された駆動ロールR1、R
2を回転させて、印捺後のパイル布帛1を1レピート分前方に搬送し、駆動ロールR2、
R3の間の弛み部71にパイル布帛1のループ1を形成し、その後、モータM1の駆動を
停止する(ステップS4)。
【0061】
弛み部71にパイル布帛1のループ1が形成され、検出装置70によってパイル布帛1
が検出されると(ステップS5)、モータM2の駆動を開始して、モータM2と連結具3
2、33を介して連結された駆動ロールR3、ゴム製ロール41bを回転させて、弛み部
71にあるパイル布帛1を一定の速度で搬送を開始するとともに、搬送されてくるパイル
布帛1をプレスロール41で挟圧する処理を開始し、プレスロール41で挟圧処理された
パイル布帛1を弛み部81に搬送する(ステップS6)。
【0062】
弛み部81にパイル布帛1のループ3が形成され、検出装置80によってパイル布帛1
が検出されると(ステップS7)、スチーム処理装置61のスチーム駆動ロールRsの回
転を開始して、弛み部81にあるパイル布帛1を、一定の速度でスチーム処理装置61に
搬送し、固着処理を開始する。
【0063】
その後は、スクリーン型捺染機21から間欠的に印捺後のパイル布帛1が送り出され、
弛み部71にパイル布帛1のループ1を形成しながら、プレスロール41での挟圧処理が
連続的に行われるようになっている。
【0064】
補足すると、モータM2を駆動させて、弛み部71にあるパイル布帛1をプレスロール
41に搬送する処理を開始すると、弛み部71に形成されているループ1が除々に小さく
なっていくが、検出装置70でパイル布帛1の検出ができなくなるループ2の状態になる
前に、スクリーン型捺染機21で印捺された次の1レピート分のパイル布帛1が弛み部7
1に搬送されるように、モータM2の駆動速度(すなわち、弛み部71にあるパイル布帛
1をプレスロール41に搬送する速度)が設定されている。したがって、スクリーン型捺
染機21から間欠的にパイル布帛1が送り出される構成であっても、プレスロール41に
よる挟圧処理を途中で停止させることなく連続的に行うことが可能となっている。
【0065】
また、スクリーン型捺染機21による印捺処理の中断や停止等により、弛み部71への
パイル布帛1の搬送が停止された場合や、搬送速度のずれ等により弛み部71にあるパイ
ル布帛1がループ2の状態になると、検出装置70でパイル布帛1の弛みが小さくなった
ことが検出され、その後、モータ2の駆動を停止させて、パイル布帛1の搬送とゴム製ロ
ール41bの回転とを停止させるとともに、プレスロール41のエアシリンダ42を作動
させてステンレス製ロール41aを上昇させる動作が行われるようになっている。
【0066】
また、スクリーン型捺染機21による印捺処理の中断や停止等により、弛み部81への
パイル布帛1の搬送が停止された場合や、搬送速度のずれ等により弛み部81にあるパイ
ル布帛1がループ4の状態になると、検出装置80でパイル布帛1の弛みが小さくなった
ことが検出され、その後、スチーム処理装置61のスチーム駆動ロールRsの駆動が停止
されて、スチーム処理が停止されるようになっている。
また、スチーム処理装置61による捺染剤の固着処理が終了した後は、水洗、柔軟剤の
含浸、脱水、乾燥などの仕上げ処理が行われるようになっている。
【0067】
上記実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備10によれば、印捺処理手段20と挟
圧処理手段40とが組み合わされ、しかも搬送手段30により、スクリーン型捺染機21
から印捺後のパイル布帛1が間欠的に送り出されてきても、印捺後のパイル布帛1を挟圧
処理手段40に連続的に供給するように搬送状態が調整されているので、挟圧処理手段4
0での挟圧処理を連続的に行うことができ、該連続的に行われる挟圧処理によりパイル布
帛1に印捺された捺染剤を均一かつ速やかに浸透させることができる。
したがって、印捺処理手段20による印捺処理を従来よりも少ない回数で、又は早い速
度で行うことができ、その結果、捺染工程に要する時間を大幅に短縮することが可能とな
り、生産性を向上させることができる。さらに生産性の向上に伴い、パイル布帛の単位長
さ当たりの生産に必要な燃料代、電力代、水代、及び人件費などの生産コストも大幅に削
減することができる。
【0068】
より具体的には、一般の合わせ毛布では、従来、スクリーン型捺染機21で2回印捺し
ていたものが、本実施の形態に係るプリント設備10を適用することで、1回の印捺で済
み、しかも、2回印捺と同等以上の浸透度の良いプリントが可能となり、生産効率を高め
ることができる。
【0069】
例えば、1レピートが235cmの場合、従来の2回印捺時には、1時間あたり約65
0mの印捺処理が行えていたが、1回印捺で済ませることが可能となることにより、1時
間あたり約940mの印捺処理が実施可能となり、従来の方法よりも生産効率を約45%
も向上させることができた。
【0070】
また、ニューマイヤー毛布では、従来、スクリーン型捺染機21で4回印捺していたも
のが、本実施の形態に係るプリント設備10を適用することで、2回印捺で済み、しかも
4回印捺と同等以上の浸透度の良いプリントが可能となり、上記同様に生産効率を高める
ことができる。
【0071】
例えば、1レピートが235cmの場合、従来の4回印捺時には、1時間あたり約40
0mの印捺処理が行えていたが、2回印捺で済ませることが可能となることにより、1時
間あたり約650mの印捺処理が実施可能となり、従来の方法よりも生産効率を約60%
も向上させることができた。
【0072】
また、単位時間あたりに必要となる蒸気量、電力量、水量、人件費は、従来の方法で行
っていた時と、殆ど変わらないため、布帛の単位長さあたりの生産に必要な燃料代、電力
代、水代、人件費を大幅に削減することができる。また、本発明を実施するには、捺染剤
に加える染料の濃度を20%〜40%程度高める必要があるが、印捺回数を少なくするこ
とができるので、結果的に染料の使用量も約20%程度削減することができる。
【0073】
また、プレスロール41により、印捺後のパイル布帛1が挟圧され、清掃手段50によ
って、プレスロール41の表面が清掃されるので、パイル布帛1を挟圧した後のプレスロ
ール41の表面に付着した捺染剤や微塵などの付着物を取り除くことができ、プレスロー
ル41の表面を清浄な状態に保ちながら挟圧処理を連続的に行うことができる。その結果
、プレスロール41に付着した捺染剤がパイル布帛1に付着して色ムラが生じるといった
現象を防止することができ、品質のばらつきが少ない捺染を行うことができ、また、プレ
スロール41を作動させながら、その表面を清掃することができるので、清掃のために設
備を一時停止させる必要もなく、生産性の向上に寄与することができる。
【0074】
また、清掃手段50を構成する上部ロール清掃手段50aを上記した構成要素51〜5
6を組み合わせたものとすることにより、ステンレス製ロール41a表面に付着した捺染
剤や微塵などの付着物を確実に取り除くことができ、ステンレス製ロール41a表面の清
浄度を高めることができ、常に清浄な状態とした後にパイル布帛1を挟圧することができ
る。
【0075】
また、下部ロール清掃手段50bを上記した構成要素57、58を組み合わせたものと
することにより、ゴム製ロール41b表面に付着した微塵などの付着物を確実に取り除く
ことができ、ゴム製ロール41b表面の清浄度を高めることができ、常に清浄な状態とし
た後にパイル布帛1を挟圧することができる。
【0076】
したがって、パイル布帛1を挟圧したときに、ステンレス製ロール41aやゴム製ロー
ル41bに付着した付着物が、パイル布帛1に付着して、色ムラや汚れなどが生じるとい
った現象を防止する効果を高めることができ、品質のばらつきが少ない捺染を行うことが
できる。
【0077】
また、挟圧処理手段40の前に、印捺後のパイル布帛1に一定の張力を付与する張力付
与手段90を備えているので、パイル布帛1自体の張り(テンション)にばらつきがあっ
たとしても、印捺後のパイル布帛1に張りを持たせた状態(張力を作用させた状態)で挟
圧処理手段40に供給することができ、挟圧処理手段40による挟圧時に、テンションの
ばらつきに起因するシワが生じたり、該シワが生じたまま挟圧して、捺染剤の浸透ムラな
どが生じてしまうといった品質を低下させる現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備の概略構成を模式的に示した部分断面側面図である。
【図2】実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備を構成する挟圧処理手段の概略構成を模式的に示した正面図である。
【図3】実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備を構成する挟圧処理手段の概略構成を模式的に示した背面図である。
【図4】実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備を構成する挟圧処理手段の概略構成を模式的に示した断面側面図である。
【図5】(a)、(b)は、実施の形態に係るパイル布帛のプリント設備を構成する張力調整手段の概略構成を模式的に示した正面図及び平面図である。
【図6】実施の形態に係るパイル布帛のプリント方法の開始手順を示した工程図である。
【符号の説明】
【0079】
1 パイル布帛
10 プリント設備
20 印捺処理手段
30 搬送手段
40 挟圧処理手段
50 清掃手段
60 固着処理手段
71、81 弛み部
90 張力調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイル布帛に捺染剤を印捺する印捺処理ステップと、
印捺後の前記パイル布帛を挟圧手段に連続的に搬送する搬送ステップと、
搬送されてきた前記パイル布帛を前記挟圧手段で挟圧する挟圧処理ステップと、
挟圧後の前記パイル布帛に付着浸透している捺染剤を固着させる固着処理ステップとを
含むことを特徴とするパイル布帛のプリント方法。
【請求項2】
前記印捺処理ステップにおける印捺処理をスクリーン型捺染機で行い、
前記搬送ステップにおいて、前記スクリーン型捺染機から間欠的に送り出される印捺後
の前記パイル布帛を前記挟圧手段に連続的に供給するように搬送状態を調整し、
前記挟圧処理ステップにおける挟圧処理を連続的に行うことを特徴とする請求項1記載
のパイル布帛のプリント方法。
【請求項3】
前記挟圧処理ステップの前に、印捺後の前記パイル布帛に一定の張力を付与する張力付
与ステップをさらに含むことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパイル布帛のプリ
ント方法。
【請求項4】
パイル布帛に捺染剤を印捺する印捺処理手段と、
印捺後の前記パイル布帛を挟圧する挟圧処理手段と、
挟圧後の前記パイル布帛に付着浸透している捺染剤を固着させる固着処理手段と、
印捺後の前記パイル布帛を前記挟圧処理手段に連続的に搬送する搬送手段とを含んで構
成されていることを特徴とするパイル布帛のプリント設備。
【請求項5】
前記印捺処理手段が、スクリーン型捺染機を含んで構成され、
前記搬送手段が、前記パイル布帛の搬送ラインを形成するものであり、前記スクリーン
型捺染機から間欠的に送り出される印捺後の前記パイル布帛を前記挟圧処理手段に連続的
に供給するように搬送状態を調整する搬送状態調整手段を含んで構成されていることを特
徴とする請求項4記載のパイル布帛のプリント設備。
【請求項6】
前記挟圧処理手段が、印捺後の前記パイル布帛を挟圧するプレスロール手段と、
該プレスロール手段の表面を清掃する清掃手段とを含んで構成されていることを特徴と
する請求項4又は請求項5記載のパイル布帛のプリント設備。
【請求項7】
前記清掃手段が、前記プレスロール手段の上部プレスロールを清掃する上部ロール清掃
手段を含んで構成され、
該上部ロール清掃手段が、
前記パイル布帛を挟圧した後の前記上部プレスロールの表面をブラッシングするブラッ
シング手段と、
該ブラッシングされた後の前記上部プレスロールの表面に向けて洗浄水を噴射する第1
の洗浄水噴射手段と、
該洗浄水が噴射された後の前記上部プレスロールの表面に当接させた状態で配設される
第1のドクターブレードと、
該第1のドクターブレードにより前記上部プレスロールの表面から取り除かれた付着物
を回収する付着物回収手段と、
前記第1のドクターブレードを通過した後の前記上部プレスロールの表面を拭き取る拭
き取り手段と、
該拭き取られた後の前記上部プレスロールの表面に当接させた状態で配設される第2の
ドクターブレードとを含んで構成されていることを特徴とする請求項6記載のパイル布帛
のプリント設備。
【請求項8】
前記清掃手段が、前記プレスロール手段の下部プレスロールを清掃する下部ロール清掃
手段を含んで構成され、
該下部ロール清掃手段が、
前記パイル布帛を挟圧した後の前記下部プレスロールの表面に洗浄水を噴射する第2の
洗浄水噴射手段と、
該洗浄水が噴射された後の前記下部プレスロールの表面に当接させた状態で配設される
第3のドクターブレードとを含んで構成されていることを特徴とする請求項6又は請求項
7記載のパイル布帛のプリント設備。
【請求項9】
前記挟圧処理手段の前に、印捺後の前記パイル布帛に一定の張力を付与する張力付与手
段を備えていることを特徴とする請求項4〜8のいずれかの項に記載のパイル布帛のプリ
ント設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−266822(P2008−266822A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110001(P2007−110001)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(507129248)
【Fターム(参考)】