説明

パウチ用注出口栓およびこれを用いたパウチ

【課題】機械による高速キャッピングが可能で、内容物の漏出を防止した注出口栓を提供する。
【解決手段】包装容器に取り付けられる注出口栓であって、一方の開口部を含む一部が包装容器に固定され、他の一部に雄ネジが形成された筒形状のスパウトと、雄ネジと、スパウトの雄ネジと螺合する雌ネジと、スパウトの内径より小さい内径を有する注出口とを有する、筒形状の下キャップと、下キャップの雄ネジに螺合する雌ネジを有するカップ形状の上キャップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、粉体あるいは粒体等を内容物とする注出口栓付きパウチに関する。
【背景技術】
【0002】
液体等の流動性のある内容物の包装容器として、注出口栓を設けたパウチが広く使用されている。このようなパウチにおいては、内容物を注入する際の迅速化と、内容物を注出する際の注出量制御の容易化が求められている。
【0003】
図7は、特許文献1が開示するパウチ用注出口栓500の側面および断面を示す図である。注出口栓500は、パウチの開口部に固定されるスパウト501と、スパウト501の開口部に嵌合する中栓502と、スパウト501の側壁に形成された雄ネジ503に螺合するキャップ504とからなる。注出口栓500では、中栓502を嵌合していない状態のスパウト501を通じて、内容物の注入を行うことで、注入の迅速化を図るとともに、中栓502を嵌合した状態のスパウト501を通じて内容物の注出を行うことで、注出速度を抑制し、注出量の制御を容易化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−197030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
注出口栓500においては、中栓502を嵌合したスパウト501に、キャップ504をキャッピング機械により高速で螺合すると、キャップ504の回転がキャップ504内部のプラグ505を通じて中栓502のノズル部506に伝わることにより、中栓502がスパウト501から外れたり、嵌合位置からずれたりした状態で螺合するおそれがあった。このため、機械を用いてキャップ504の取り付けを高速に行うことが困難であった。
【0006】
また、注出口栓500は、中栓502に形成された環状溝507に、スパウト501の環状リブ508を引っ掛けることによって、中栓502をスパウト501に嵌合しているため、内容物の注出時にパウチを強く押したり、キャップ504を外した状態でパウチを落下させたりすると、中栓502が外れてスパウト501の開口部から内容物が漏出したり、中栓502が緩んでスパウト501との隙間から内容物が漏出するおそれがあった。
【0007】
それ故に、本発明の目的は、機械による高速キャッピングが可能で、内容物の漏出を防止した注出口栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、包装容器に取り付けられる注出口栓であって、一方の開口部を含む一部が包装容器に固定され、他の一部に雄ネジが形成された筒形状のスパウトと、雄ネジと、スパウトの雄ネジと螺合する雌ネジと、スパウトの内径より小さい内径を有する注出口とを有する、筒形状の下キャップと、下キャップの雄ネジに螺合する雌ネジを有するカップ形状の上キャップとを備える、注出口栓である。。また、本発明は、このような注出口栓が取り付けられたパウチ等の包装容器にも向けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、機械による高速キャッピングが可能で、内容物の漏出を防止した注出口栓を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る注出口栓付きパウチの正面図
【図2】本発明の一実施形態に係る注出口栓の上面図および分解状態の正面図
【図3】本発明の一実施形態に係る注出口栓の組立状態の断面図
【図4】本発明の一実施形態に係る上キャップの断面図
【図5】本発明の一実施形態に係る注出口栓のスパウトおよび下キャップの正面図および側面図
【図6】本発明の一実施形態に係る注出口栓のスパウトおよび下キャップの平面図および底面図
【図7】従来の注出口栓の側面および断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係る注出口栓100および注出口栓100を取り付けたパウチ101の正面図である。また、図2は、注出口栓100の上面図および分解状態の正面図である。また、図3は、図1のA−A´線に沿った、注出口栓100の組立状態の断面図である。以下に、図2および図3を参照して、注出口栓100について説明する。
【0012】
図2および図3に示すように、注出口栓100は、スパウト201、下キャップ301および上キャップ401とから構成される。スパウト201は、パウチの包装材に挟まれてシールされる基部202と、基部202に接続する筒状の第1の側壁部203とからなる。第1の側壁部203の、基部202との接続部分近傍にはフランジ204が設けられている。第1の側壁部203には、下キャップ301を螺合するための雄ネジ205が設けられている。
【0013】
図2に示すように、上キャップ401の天面410は、周縁部にテーパーを設け、掴みやすさを向上している。また、上キャップ401の側面411は、すべり防止用のローレット412が形成された部分と、回転トルク受け用の平坦面413が形成された部分とを有し、開栓しやすさを向上している。
【0014】
図3に示すように、下キャップ301は、筒状の第2の側壁部302とノズル部303と第1のインナーリング308とからなる。第2の側壁部302は、内面にスパウト201の第1の側壁部203と螺合する雌ネジ304が形成され、外面上部に上キャップ401と螺合する雄ネジ305が形成されている。
【0015】
ノズル部303は、湾曲部306とストレート部307とからなる。湾曲部306は、第2の側壁部302の上端から内側に向かって接続され、断面の一部は、第2の側壁部302の内方に対して凸となる曲線の形状を有している。ストレート部307は、湾曲部306に接続され、垂直方向に延びる筒状の形状を有している。ストレート部307の内径は第2の側壁部302の内径より小さく、ストレート部307の端部が、注出口を構成する。
【0016】
第1のインナーリング308は、湾曲部306と第2の側壁部302との接続箇所にに接続され、筒状に形成されている。第1のインナーリング308の外径は、第2の側壁部302の内径より小さく設定され、第1のインナーリング308と第2の側壁部302との間には隙間が形成されている。スパウト201に、下キャップ301を螺合したとき、スパウト201の第1の側壁部203の開口側端部は、この隙間に嵌め込まれる。下キャップ301を、スパウト201に完全に螺合させると、第2の側壁部302と第1のインナーリング308との接続部分に設けられた第1のコンタクトリング309が、スパウト201の第1の側壁部203の開口側の端面に当接する。第1のコンタクトリング309を、所定の接触圧で、スパウト201の第1の側壁部203の開口側の端面と接触させることによって、スパウト201と下キャップ301との間での密封性を確保している。図5の(a)および(b)に、互いに螺合した状態のスパウト201および下キャップ301の正面図および側面図を示す。また、図6の(a)および(b)に、同様の状態のスパウト201および下キャップ301の平面図および底面図を示す。
【0017】
上キャップ401の側面411の内側には、下キャップ301上部の雄ネジ305と螺合する雌ネジ402が形成されている。下キャップ301の雄ネジ305および上キャップ401の雌ネジ402として、それぞれ2条ネジを形成するネジ山が2分の1回転分ほど設けられている。また、天面410の内側に、第2のインナーリング403およびアウターリング404が形成されている。第2のインナーリング403の外径は、アウターリング404の内径より小さく設定され、第2のインナーリング403とアウターリング404との間には隙間が形成されている。下キャップ301に上キャップ401を完全に螺合したとき、下キャップ301のストレート部307の開口側の端面は、この隙間に嵌め込まれる。このとき、天面410内側のうち、第2のインナーリング403とアウターリング404とに挟まれた領域に設けられた第2のコンタクトリング405が、下キャップ301のストレート部307の開口側の端面に当接する。そのため、ストレート部307は、第2のコンタクトリング405から、第2の側壁部302の内方に押し込む向きの力を受ける。この力が湾曲部306に伝わり、湾曲部306を撓ませ、ストレート部307は、第2の側壁部302の内方にわずかに移動する。このとき、湾曲部306の撓みに対する復元力により、ストレート部307と第2のコンタクトリング405との間には、所定の接触圧が維持される。これにより、下キャップ301と上キャップ401との間での密封性が確保される。
【0018】
また、スパウト201の第1の側壁部203には、ツメ206が設けられており、下キャップ301の第2の側壁部302には、凹部310が設けられている。スパウト201に下キャップ301を完全に螺合したとき、ツメ206が凹部310に嵌合して、ラチェット機構として機能し、下キャップ301の緩みを防止する。
【0019】
また、図2に示すように、下キャップ301の雄ネジ305のネジ山のスパウト側終端近傍には、リブ311が設けられている。図4は、上キャップ401の断面図である。雌ネジ402の導入側の端部近傍には、リブの幅と略等しい距離だけネジ山を形成しないことによって切欠406が設けられている。下キャップ301に上キャップ401を完全に螺合したとき、雌ネジ402の導入側の端部がリブ311を乗り越え、リブ311が切欠406に嵌合して、ロックアップ機構として機能し、上キャップ401の緩みを防止する。また、このロックアップ機構によって螺合完了時の感触変化によるロック感が発生し、螺合完了の目安となるため、使用者による上キャップ401の締め過ぎを防止できる。
【0020】
以下に、パウチに内容物を注入し、注出口栓100を閉栓する手順を説明する。まず、スパウト201に下キャップ301および上キャップ401を螺合していない状態で、スパウト201の開口部から、内容物を注入する。スパウト201の開口部の口径は、下キャップ301のストレート部307の開口部の口径より大きいため、内容物の注入を迅速に行うことができる。次に、上キャップ401と下キャップ301とを完全に螺合して、切欠406およびリブ311によるロックアップ機構によって螺合状態を固定する。次に、上キャップ401と螺合した下キャップ301を、スパウト201に完全に螺合して、ツメ206および凹部310によるラチェット機構によって螺合状態を固定する。下キャップ301は、予め上キャップ401と完全螺合して外れにくくした後、スパウト201と螺合するため、単にスパウトに嵌合した後、上キャップをスパウトに螺合する場合に比べ、高速キャッピングしても、位置がずれたり外れたりする可能性が低く、キャッピング機械の高速動作が可能となる。
【0021】
次に、注出口栓100を開栓し、内容物を注出する手順を説明する。まず、上キャップ401を外す。この際、ラチェット機構によって下キャップ301とスパウト201との螺合が緩むことが防止され、下キャップ301が上キャップ401とともにスパウト201から外れる可能性は低い。次に、下キャップ301がスパウト201に螺合した状態でパウチを押圧して、内容物を下キャップ301のストレート部307の開口部から注出する。当該開口部の口径は、スパウト201の開口部の口径より小さいため、注出速度を適度に抑制でき、注出量の制御を容易に行うことができる。
【0022】
また、下キャップ301はスパウト201と螺合している上、ラチェット機構により螺合状態が緩みにくくなっているため、パウチを強く押したり、上キャップ401を外した状態でパウチを落下させたりしても、下キャップ301がスパウト201から外れたり緩んだりせず、内容物が漏出しにくくなっている。また、第1のインナーリング308および第1のコンタクトリング309とにより、下キャップ301とスパウト201との密着性が高められており、内容物の漏出防止の効果が向上している。
【0023】
また、上キャップ401と下キャップ301とが完全に螺合している間は、ロックアップ機構により螺合状態が緩みにくくなっているため、パウチを振ったりした場合でも上キャップ401が不意に外れ内容物が漏出することを防止できる。また、第2のインナーリング403、アウターリング404および第2のコンタクトリング405とにより、上キャップ401と下キャップ301との螺合時の密着性が高められており、内容物の漏出防止の効果が向上している。
【0024】
このような注出口栓100を構成するスパウト201、下キャップ301、上キャップ401は、ポリプロピレンやポリエチレンなど熱可塑性樹脂を用いて、射出成形法により、それぞれ一体形成される。また、注出口栓100は、液体、粉体あるいは粒体の内容物を包装するものであれば、パウチだけでなく紙パック等の包装容器に取り付けて利用してもよい。
【0025】
また、下キャップ301とスパウト201との螺合状態を緩みにくくするという効果が得られる範囲内で、スパウト201の第1の側壁部203のツメ206と、下キャップ301の第2の側壁部302の凹部310との嵌合の度合いを浅くして、嵌合の解除が可能なものとしてもよい。この場合、下キャップ301をスパウト201から外して、内容物の再注入を行うことができ、パウチの再利用を行うことができる。
【0026】
本実施形態では、下キャップ301の雄ネジ305および上キャップ401の雌ネジ402は、2条ネジを形成するネジ山が2分の1回転分ほど設けられているものとしたが、確実に螺合可能であれば、1条ネジでも3条以上の多条ネジでもよく、ネジ山の巻き数も2分の1回転分でなくてもよい。スパウト201の雄ネジ205と下キャップの雌ネジ304についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、液体、粉体あるいは粒体等を内容物とするパウチ等に取り付けられる注出口栓の、内容物の漏れ防止等に有用である。
【符号の説明】
【0028】
100、500 注出口栓
101 パウチ
201、501 スパウト
202 基部
203 第1の側壁部
204 フランジ
205、305、503 雄ネジ
206 ツメ
301 下キャップ
302 第2の側壁部
303、506 ノズル部
304、402 雌ネジ
306 湾曲部
307 ストレート部
308 第1のインナーリング
309 第1のコンタクトリング
310 凹部
311 リブ
401 上キャップ
403 第2のインナーリング
404 アウターリング
405 第2のコンタクトリング
406 切欠
410 天面
411 側面
412 ローレット
413 平坦面
502 中栓
504 キャップ
505 プラグ
507 環状溝
508 環状リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装容器に取り付けられる注出口栓であって、
一方の開口部を含む一部が前記包装容器に固定され、他の一部に雄ネジが形成された筒形状のスパウトと、
雄ネジと、前記スパウトの雄ネジと螺合する雌ネジと、前記スパウトの内径より小さい内径を有する注出口とを有する、筒形状の下キャップと、
前記下キャップの雄ネジに螺合する雌ネジを有するカップ形状の上キャップとを備える、注出口栓。
【請求項2】
前記スパウトおよび前記下キャップには、当該スパウトおよび当該下キャップの螺合に伴って互いに嵌合し、その後、当該下キャップの螺合が緩む方向への回転を抑止するツメおよび凹部がそれぞれ形成されている、請求項1に記載の注出口栓。
【請求項3】
前記上キャップの雌ネジの導入側端部近傍には、ネジ山を設けないことにより切欠が形成されており、
前記下キャップの外面には、前記上キャップおよび当該下キャップの螺合に伴って前記切欠と嵌合し、その後、前記上キャップの螺合が緩む方向への回転に対して抵抗力を発生させるリブが形成されている、請求項1または2に記載の注出口栓。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の注出口栓を、軟包装材からなるパウチに取り付けた注出口栓付きパウチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−235956(P2011−235956A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111452(P2010−111452)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】