説明

パターンの形成方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本願の発明は、半導体装置を製造する際のパターンの形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体装置を微細化するためには、微細なパターンを形成する必要がある。しかし、パターンを形成するためのエッチングにおけるマスク層としては、リソグラフィによってパターニングされたレジストが一般に用いられるので、リソグラフィをそのまま利用するだけでは、パターンの微細度もリソグラフィの解像度の限界によって決定される。
【0003】そこで、リソグラフィの限界の解像度でパターニングされたレジストを加熱して軟化・変形させることによってレジストの開口部の幅を狭め、この変形させたレジストをマスクにしてエッチングを行うことによって、リソグラフィの限界の解像度よりも狭い間隔のパターンを形成する従来例が考えられている(例えば、特開平4−364021号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の従来例でも、レジストの開口部の幅は狭められるものの、レジストの被覆部の幅が逆に広げられて、エッチングで残される部分の幅が広げられる。このため、ラインアンドスペースのパターンのピッチは変わらず、全体としてはリソグラフィの限界の解像度よりも高い解像度でパターンを形成することができなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1のパターンの形成方法は、第1の幅の被覆部と第2の幅の開口部とが同一の方向へ順次に繰り返されている第1のマスク層を下地上に形成する工程と、前記第1のマスク層を軟化・変形させて、前記被覆部の幅を前記第1の幅よりも広い第3の幅にすると共に、前記開口部の幅を前記第2の幅よりも狭い第4の幅にする工程と、前記第3の幅の被覆部と前記第4の幅の開口部とを有する前記第1のマスク層をマスクにして、前記下地に対して第1のエッチングを行う工程と、前記第1のエッチングの後に、前記第1のマスク層を侵食して、前記被覆部の幅を前記第1の幅よりも狭い第5の幅にすると共に、前記開口部の幅を前記第2の幅よりも広い第6の幅にする工程と、前記侵食の後に、前記開口部から露出している前記下地を覆う第2のマスク層をこの下地に対して自己整合的に形成する工程と、前記第2のマスク層を形成した後に前記第1のマスク層を除去する工程と、前記第1のマスク層を除去した後に、前記第2のマスク層をマスクにして前記下地に対する第2のエッチングを行う工程とを具備することを特徴としている。
【0006】請求項2のパターンの形成方法は、請求項1のパターンの形成方法において、レジストを前記第1のマスク層として用い、前記下地の露出部を酸化させて形成した酸化膜を前記第2のマスク層として用いることを特徴としている。
【0007】請求項3のパターンの形成方法は、請求項1のパターンの形成方法において、前記第1及び第2のエッチングが等方性エッチングであることを特徴としている。
【0008】請求項4のパターンの形成方法は、請求項1のパターンの形成方法において、前記第1及び第2のエッチングが異方性エッチングであることを特徴としている。
【0009】請求項5のパターンの形成方法は、請求項1のパターンの形成方法において、前記第1及び第2のエッチングの一方が等方性エッチングであり、他方が異方性エッチングであることを特徴としている。
【0010】請求項6のパターンの形成方法は、請求項1のパターンの形成方法において、前記第2のエッチングの後に前記第2のマスク層を除去する工程と、前記第2のマスク層を除去した後に、前記下地の被エッチング部を絶縁膜で埋める工程と、前記被エッチング部を前記絶縁膜で埋めた後に、前記第1のマスク層の形成から前記第2のエッチングまでとは前記被覆部と前記開口部との繰り返し方向を異ならせて、これら第1のマスク層の形成から第2のエッチングまでを再度行う工程とを具備することを特徴としている。
【0011】請求項7のパターンの形成方法は、請求項6のパターンの形成方法において、レジストを前記第1のマスク層として用い、前記下地の露出部を酸化させて形成した酸化膜を前記第2のマスク層として用いることを特徴としている。
【0012】請求項8のパターンの形成方法は、請求項6のパターンの形成方法において、前記第1及び第2のエッチングが等方性エッチングであることを特徴としている。
【0013】請求項9のパターンの形成方法は、請求項6のパターンの形成方法において、前記第1及び第2のエッチングが異方性エッチングであることを特徴としている。
【0014】請求項10のパターンの形成方法は、請求項6のパターンの形成方法において、前記第1及び第2のエッチングの一方が等方性エッチングであり、他方が異方性エッチングであることを特徴としている。
【0015】請求項1、2のパターンの形成方法では、第1のマスク層の開口部が当初に有していた第2の幅よりも狭い第4の幅で下地がエッチングされる。また、第1のマスク層の被覆部が当初に有していた第1の幅よりも狭い第5の幅で下地がエッチングされる。従って、第1のマスク層の一つのピッチ内の互いに分離された二つの領域において下地をエッチングすることができる。
【0016】請求項3のパターンの形成方法では、矩形の断面が一つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされる。
【0017】請求項4のパターンの形成方法では、谷状の断面が一つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされる。
【0018】請求項5のパターンの形成方法では、矩形の断面と谷状の断面とが交互に一つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされる。
【0019】請求項6、7のパターンの形成方法では、第1のマスク層の被覆部及び開口部の互いに異なる繰り返し方向の各々のピッチ内における互いに分離された二つの領域において下地をエッチングすることができる。
【0020】請求項8のパターンの形成方法では、矩形の断面が二つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされる。
【0021】請求項9のパターンの形成方法では、谷状の断面が二つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされる。
【0022】請求項10のパターンの形成方法では、矩形の断面と谷状の断面とが交互に二つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、ラインアンドスペースのパターンの形成に適用した本願の発明の第1〜第3実施形態、及びドットのパターンの形成に適用した本願の発明の第4実施形態を、図1〜5を参照しながら説明する。
【0024】図1、2が、第1実施形態を示している。この第1実施形態では、図1(a)に示す様に、Si基体11上に、幅aの被覆部12aと幅bの開口部12bとが同一の方向へ順次に繰り返されているレジスト12を、g線やi線やエキシマレーザ等を用いる通常のリソグラフィによって形成する。
【0025】次に、熱処理でレジスト12を軟化・変形させることによって、図1(b)に示す様に、被覆部12aの幅をjに広げると共に開口部12bの幅をkに狭める。そして、レジスト12をマスクにしてCF4 等のガスでSi基体11を異方性エッチングすることによって、図1(c)に示す様に、断面が矩形の溝13をSi基体11に形成する。
【0026】次に、レジスト12を途中まで灰化することによって、図1(d)に示す様に、被覆部12aの幅をlに狭めると共に開口部12bの幅をmに広げる。その後、図2(a)に示す様に、レジスト12に覆われていないSi基体11の露出部にのみ、膜厚が1〜3nm程度の自然酸化膜14を形成する。
【0027】なお、自然酸化膜14を形成する代わりに、レジスト12が変形しない程度の温度の熱酸化によって、レジスト12に覆われていないSi基体11の露出部にのみSiO2 膜を形成してもよい。その後、図2(b)に示す様に、レジスト12を除去して、幅がlの開口部14aを自然酸化膜14に形成する。
【0028】次に、自然酸化膜14をマスクにしてSF6 +N2 等のガスでSi基体11を異方性エッチングすることによって、図2(c)に示す様に、断面が矩形の溝15をSi基体11に形成する。そして、図2(d)に示す様に、フッ酸等で自然酸化膜14を除去して、ラインアンドスペースのパターンをSi基体11に形成する。
【0029】図3が、第2実施形態を示している。図3(a)は、第1実施形態の図2(c)の工程における異方性エッチングの代わりに等方性エッチングを行って、断面が谷状の溝15を形成した場合である。また、図3(b)は、第1実施形態の図1(c)の工程における異方性エッチングの代わりに等方性エッチングを行って断面が谷状の溝13を形成した場合であり、図3(a)とは半周期だけずれたパターンを得ている。
【0030】図4が、第3実施形態を示している。この第3実施形態では、第1実施形態の図1(c)及び図2(c)の両方の工程における異方性エッチングの代わりに等方性エッチングを行って、断面が谷状の溝13、15を形成している。
【0031】図5が、第4実施形態を示している。この第4実施形態でも、図2(d)に示した様に溝13、15から成る断面が矩形のパターンをSi基体11の表面に形成するまでは、上述の第1実施形態と実質的に同様の工程を実行する。しかし、この第4実施形態では、その後、図5(a)に示す様に、TEOS等を原料とするCVD法でSi基体11上にSiO2 膜16を堆積させ、溝13、15のみを埋めるまでSiO2 膜16を研磨する。
【0032】そして、今度は、上述の第1実施形態におけるレジスト12とは被覆部と開口部との繰り返し方向が直交しているレジスト(図示せず)をSi基体11及びSiO2 膜16上でパターニングし、第1実施形態における図1(a)〜図2(d)の工程を再び実行する。この結果、図5(b)に示す様に、行列状に並んでいるドットのパターンがSi基体11から形成される。
【0033】以上の様な第1〜第4実施形態では、図2(d)からも明らかな様に、リソグラフィによって形成したレジスト12の当初のピッチa+b内に、互いに分離された二つの溝13、15を形成することができる。従って、レジスト12のピッチa+bがリソグラフィの限界の解像度であれば、リソグラフィの限界の解像度の2倍の解像度でラインアンドスペースやドットを形成することができる。
【0034】つまり、現状におけるリソグラフィの限界の解像度では例えば0.2μm/0.2μmのラインアンドスペースしか形成することができなくても、0.1μm/0.1μm程度のラインアンドスペースやドットを形成することができ、2世代先の技術に相当するパターンを容易に得ることができる。
【0035】なお、図5に示した第4実施形態においても、断面が矩形の溝13、15のみならず、図3、4に示した第2及び第3実施形態と同様に、断面が谷状の溝13、15を形成してもよい。また、以上の第1〜第4実施形態の何れにおいても、Si基体11を用いているが、Si基体11の代わりに化合物半導体基体等を用いることもできる。
【0036】
【発明の効果】請求項1、2のパターンの形成方法では、第1のマスク層の一つのピッチ内の互いに分離された二つの領域において下地をエッチングすることができるので、第1のマスク層の半分のピッチを有する線状のパターンを形成することができる。従って、第1のマスク層のピッチがリソグラフィの限界の解像度であれば、リソグラフィの限界の解像度の2倍の解像度で線状のパターンを形成することができる。
【0037】請求項3〜5のパターンの形成方法では、矩形の断面や谷状の断面や矩形の断面と谷状の断面とが交互に一つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされるので、矩形や三角形の断面形状を有する線状のパターンをリソグラフィの限界の解像度の2倍の解像度で形成することができる。
【0038】請求項6、7のパターンの形成方法では、第1のマスク層の被覆部及び開口部の互いに異なる繰り返し方向の各々のピッチ内における互いに分離された二つの領域において下地をエッチングすることができるので、第1のマスク層の半分のピッチを有する点状のパターンを形成することができる。従って、第1のマスク層のピッチがリソグラフィの限界の解像度であれば、リソグラフィの限界の解像度の2倍の解像度で点状のパターンを形成することができる。
【0039】請求項8〜10のパターンの形成方法では、矩形の断面や谷状の断面や矩形の断面と谷状の断面とが交互に二つの方向に繰り返されているパターンに下地がエッチングされるので、矩形や三角形の断面形状を有する点状のパターンをリソグラフィの限界の解像度の2倍の解像度で形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の発明の第1実施形態の前半を工程順に示す側断面図である。
【図2】第1実施形態の後半を工程順に示す側断面図である。
【図3】本願の発明の第2実施形態で形成したパターンの側断面図であり、(a)と(b)とは互いに半周期だけずれたパターンである。
【図4】本願の発明の第3実施形態で形成したパターンの側断面図である。
【図5】本願の発明の第4実施形態を示しており、(a)は途中の工程における側断面図、(b)は工程終了後における平面図である。
【符号の説明】
11 Si基体(下地)
12 レジスト(第1のマスク層)
12a 被覆部
12b 開口部
14 自然酸化膜(第2のマスク層)
16 SiO2 膜(絶縁膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の幅の被覆部と第2の幅の開口部とが同一の方向へ順次に繰り返されている第1のマスク層を下地上に形成する工程と、前記第1のマスク層を軟化・変形させて、前記被覆部の幅を前記第1の幅よりも広い第3の幅にすると共に、前記開口部の幅を前記第2の幅よりも狭い第4の幅にする工程と、前記第3の幅の被覆部と前記第4の幅の開口部とを有する前記第1のマスク層をマスクにして、前記下地に対して第1のエッチングを行う工程と、前記第1のエッチングの後に、前記第1のマスク層を侵食して、前記被覆部の幅を前記第1の幅よりも狭い第5の幅にすると共に、前記開口部の幅を前記第2の幅よりも広い第6の幅にする工程と、前記侵食の後に、前記開口部から露出している前記下地を覆う第2のマスク層をこの下地に対して自己整合的に形成する工程と、前記第2のマスク層を形成した後に前記第1のマスク層を除去する工程と、前記第1のマスク層を除去した後に、前記第2のマスク層をマスクにして前記下地に対する第2のエッチングを行う工程とを具備することを特徴とするパターンの形成方法。
【請求項2】 レジストを前記第1のマスク層として用い、前記下地の露出部を酸化させて形成した酸化膜を前記第2のマスク層として用いることを特徴とする請求項1記載のパターンの形成方法。
【請求項3】 前記第1及び第2のエッチングが等方性エッチングであることを特徴とする請求項1記載のパターンの形成方法。
【請求項4】 前記第1及び第2のエッチングが異方性エッチングであることを特徴とする請求項1記載のパターンの形成方法。
【請求項5】 前記第1及び第2のエッチングの一方が等方性エッチングであり、他方が異方性エッチングであることを特徴とする請求項1記載のパターンの形成方法。
【請求項6】 前記第2のエッチングの後に前記第2のマスク層を除去する工程と、前記第2のマスク層を除去した後に、前記下地の被エッチング部を絶縁膜で埋める工程と、前記被エッチング部を前記絶縁膜で埋めた後に、前記第1のマスク層の形成から前記第2のエッチングまでとは前記被覆部と前記開口部との繰り返し方向を異ならせて、これら第1のマスク層の形成から第2のエッチングまでを再度行う工程とを具備することを特徴とする請求項1記載のパターンの形成方法。
【請求項7】 レジストを前記第1のマスク層として用い、前記下地の露出部を酸化させて形成した酸化膜を前記第2のマスク層として用いることを特徴とする請求項6記載のパターンの形成方法。
【請求項8】 前記第1及び第2のエッチングが等方性エッチングであることを特徴とする請求項6記載のパターンの形成方法。
【請求項9】 前記第1及び第2のエッチングが異方性エッチングであることを特徴とする請求項6記載のパターンの形成方法。
【請求項10】 前記第1及び第2のエッチングの一方が等方性エッチングであり、他方が異方性エッチングであることを特徴とする請求項6記載のパターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3393286号(P3393286)
【登録日】平成15年1月31日(2003.1.31)
【発行日】平成15年4月7日(2003.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−122179
【出願日】平成8年4月19日(1996.4.19)
【公開番号】特開平9−134874
【公開日】平成9年5月20日(1997.5.20)
【審査請求日】平成13年6月5日(2001.6.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【参考文献】
【文献】特開 平1−307228(JP,A)
【文献】特開 平4−364021(JP,A)
【文献】特開 平7−321225(JP,A)