説明

パターン付枚葉状基材、パターン付枚葉状基材セット、及びパターン付ロール状基材

【課題】搬送される環境にかかわらず、寸法変化が極めて小さいパターンが形成されたパターン付枚葉状基材、パターン付枚葉状基材セット、及びパターン付ロール状基材を提供すること。
【解決手段】枚葉状の基材1上に所定のパターン2が設けられてなるパターン付枚葉状基材であって、前記枚葉状の基材1を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において当該積層体の最上面及び最下面に位置しない枚葉状の基材の含水率が、常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分には、前記所定パターンが形成されていないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン付枚葉状基材、パターン付枚葉状基材セット、及びパターン付ロール状基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子の薄型軽量化および耐衝撃性の向上等が目指されており、カラーフィルタ、TFTアレイ等を構成する基材として、従来使用されてきたある程度の厚さを有する基材、例えばガラス基材の代わりに、可撓性を有する薄厚の基材、例えば、枚葉状のフィルム基材や、連続するフィルム基材が巻芯に巻回されてなるロール状基材を用いる試みがなされている。これらの基材は、所定のパターンを形成したのち枚葉状の基材は積層された状態で搬送され、ロール状基材は巻回された状態で搬送されるのが一般的である。
【0003】
このようなフィルム基材の搬送については、各種の提案がなされており、例えば、特許文献1には、搬送中のフィルムのキズやシワを防止するため粘着層と保護フィルムがラミネートされたロールフィルムについての開示がされている。また、特許文献2には、搬送中にカラーフィルタのキズが生ずることを防止することを目的として、積層した基板の間にクッションシートを挿入した輸送方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−157592号公報
【特許文献2】特許第4494056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に提案がされている方法で輸送等が行われた場合であっても、基板の材料として薄厚のフィルムなどを用いた場合は、搬送中に、枚葉状の基材においてはその端部、また、ロール状の基材においては、巻回方向と平行な端部及び巻回した際に最表面に位置する部分は、搬送中の水分の影響により形成時の寸法からのずれが生じることとなる。例えば、高温高湿の雰囲気で搬送された場合には水分を吸収してフィルムが伸び、一方、低温低湿の雰囲気で搬送された場合には、水分を放出しフィルムが縮むこととなる。
【0006】
そうすると、形成されたパターンも同様に寸法にずれが生じ、納入先等に搬送後、納入先にて高精細なパターニング加工や高精度な貼合ができない問題が生じうる。現在のところ、この問題を考慮したパターン付フィルムは存在していない。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みなされたものであり、パターン付枚葉状基材や、パターン付枚葉状基材セット、及びパターン付ロール状基材を提供するにあたり、搬送される環境にかかわらず、寸法変化の極めて小さいパターンが形成されたパターン付枚葉状基材、パターン付枚葉状基材セット、及びパターン付ロール状基材を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、枚葉状の基材上に所定のパターンが設けられてなるパターン付枚葉状基材であって、前記枚葉状の基材を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において当該積層体の最上面及び最下面に位置しない枚葉状の基材の含水率が、常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分には、前記所定パターンが形成されていないことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するための本発明は、パターン付枚葉状基材セットであって、上記の特徴を有するパターン付枚葉状基材を複数枚重ねてなるパターン付枚葉状基材の積層体と、当該積層体の上下面に設けられる保護層とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、上記課題を解決するための本発明は、連続する基材上に所定のパターンが設けられ、これが巻芯に巻回されてなるパターン付ロール状基材であって、(1)前記連続する基材を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において当該積層体の最上面及び最下面に位置しない連続する基材の含水率が常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分、及び(2)前記連続する基材を巻芯に巻回した際に最表面に位置する部分、には、前記所定パターンが形成されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送される環境にかかわらず、寸法変化が極めて小さいパターンが形成されたパターン付枚葉状基材、パターン付枚葉状基材セット、及びパターン付ロール状基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のパターン付枚葉状基材の一例を示す正面図である。
【図2】枚葉状の基材を積層した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明のパターン付枚葉状基材セットの一例を示す断面図である。
【図4】本発明のパターン付ロール状基材の一例を示す斜視図である。
【図5】連続する基材を積層した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<<パターン付枚葉状基材>>
以下、本発明のパターン付枚葉状基材について図1、図2を用いて具体的に説明する。なお、図1は、本発明のパターン付枚葉状基材の一例を示す正面図であり、図2は、枚葉状の基材を積層した状態を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、本発明のパターン付枚葉状基材10は、枚葉状の基材1の表面に所定のパターン2が設けられてなる構成をとっている。そして、本発明のパターン付枚葉状基材10は、枚葉状の基材1を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において当該積層体の最表面及び裏面に位置しない枚葉状の基材1の含水率が、常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分1Aには、所定パターン2が形成されていないことを特徴とする。
【0015】
本発明のパターン付枚葉状基材1は、複数枚が積層された積層体として搬送されるパターン付枚葉状基材1であって、搬送時に、積層体の最上面、及び最下面以外に位置するパターン付枚葉状基材を想定してなされたものである。
【0016】
したがって、本発明においては、図2に示すように枚葉状の基材1を3枚以上重ねてなる積層体3を準備し、当該積層体3の最上面及び最下面に位置しない枚葉状の基材1の保管前後の含水率の変化量に基づいて所定パターンが形成される。具体的には、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において当該積層体3の最上面及び最下面に位置しない枚葉状の基材1の含水率が、常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分には、所定パターンが形成されていないことを特徴とするものである。なお、本発明において、常温常湿雰囲気とは、23±2℃、45±5%RHをいう。また、本発明では、重力方向を下とし、重力方向と反対方向を上として定義している。したがって、積層体3の最上面に位置する枚葉状の基材とは、積層体3を構成する枚葉状の基材のうち最も上方向に位置する枚葉状の基材をいい、積層体3の最下面に位置する枚葉状の基材とは、積層体3を構成する枚葉状の基材のうち最も下方向に位置する枚葉状の基材をいう。
【0017】
常温常湿雰囲気中で測定される枚葉状の基材1の含水率とは、常温常湿雰囲気下で枚葉状の基材1の全ての表面における含水率が一定化された状態で測定される含水率である。含水率を一定にする方法について特に限定はないが、枚葉状の基材1を常温常湿雰囲気中に長期保管することで含水率を一定化することができる。
【0018】
枚葉状の基材1を3枚以上重ねた積層体3としているのは、該積層体3のうち最上面、最下面に位置する枚葉状の基材1は、その表面全面から吸湿をすることから、端部からの吸湿による含水率の変化を正確に再現できないためである。したがって、本発明においては、最上面、最下面に位置しない枚葉状の基材1によって含水率の変化量が測定され、これに基づいて所定パターンを形成しない部分を決定する。具体的には、この積層体3を温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管し、保管後、積層体3の最上面、最下面に位置しない枚葉状の基材1を抜き取り、この枚葉状の基材1の含水率を測定する。保管後の含水率の測定は、その含水率の測定における信頼性を考慮すると、全ての測定を30分以内に行うことが好ましい。
【0019】
また本発明において、含水率とは、「基材1が有する水分量/基材1の質量」で定義される含水率である。この含水率の測定方法としては、赤外分光法を用いて、基材1を脱水・吸水させて基材1の吸光度を測定するとともに基材1の質量を測定し、その変化量から基材1が有する水分量を算出する。そして、基材1の質量と基材1が有する水分量から含水率を算出し吸光度と含水率の検量線を作成する。そして、実際に含水率を測定したい基材1の吸光度を測定し、測定された吸光度と検量線とから含水率が測定することができる。例えば、本発明において含水率の測定には、クラボウ社製の水分計(品名:RX−100、透過型)、マイクロ波オンライン水分計(マルカム製)、電気抵抗式水分計((株)山崎精機研究所製)等を用いて測定を行うことができる。
【0020】
本発明において含水率の測定は、枚葉状の基材1において所定パターンを形成する位置において測定すればよいが、枚葉状の基材1の表面全面を所定領域に仮想分割し、この領域毎に含水率の測定を行うことが好ましい。仮想分割される所定領域は、枚葉状の基材1の形状、大きさ等によって適宜設定することができ特に限定はない。例えば、30cm角の基材を用いる場合にあっては、1cm角に仮想分割し、1cm角の900個の領域について含水率の測定を行うことができる。
【0021】
特に枚葉状の基材1は、その端部に近いほど、含水率の変化量は大きくなる傾向となることから、含水率の測定を行う場合にあっては、端部近傍の領域については小さな領域で、一方、中心に近づくほど大きな領域で仮想分割することが好ましい。例えば、上記の30cm角の基材を用いる場合にあっては、端部からの距離が5cmまでは1cm角の領域とし、端部から6cm〜15cmまでは2cm角の領域とすることもできる。
【0022】
枚葉状の基材1について特に限定はなく、基材の材質としては、例えば、可撓性を有する樹脂基材であることが好ましく、より具体的には、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、セルローストリアセテート(CTA)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサルフォン(PSF)、ポリアミドイミド(PAI)、ノルボルネン系樹脂、アリルエステル樹脂等の合成樹脂を挙げることができ、中でも、PEN、PETが好ましい。また、これら合成樹脂ではなく、各種無機膜を用いることも可能である。
【0023】
なお、本発明に用いられる枚葉状の基材1は、単一層からなる構成であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであっても良い。
【0024】
また、本発明に用いられる基材の湿度膨張係数としては、2×10-5/%RH以下であることが好ましく、1×10-5/%RH以下であることがより好ましく、5×10-6/%RH以下であることがさらに好ましい。基材自体の湿度変化による寸法変化量は少なく、取り扱いが容易となるからである。
【0025】
本発明に用いられる基材の線膨張係数としては、2×10-5/℃以下であることが好ましく、1×10-5/℃以下であることがより好ましく、5×10-6/℃以下であることがさらに好ましい。前記湿度膨張係数と同様、温度変化による寸法変化量が少なく、取り扱いが容易だからである。
【0026】
所定パターンは任意のパターンであり、例えば、液晶表示装置用の画像表示素子に用いられる光学機能層や画像表示素子全体、より具体的には、カラーフィルタや各種配線パターン、さらにはハードコート層、アンチグレア層、アンチリフレクション層、偏光層などを挙げることができる。
【0027】
以上説明した本発明のパターン付枚葉状基材10によれば、搬送時に寸法変化によるパターン不良となりうる部分に所定パターンが形成されていないことから、搬送される環境にかかわらず、寸法変化が極めて小さい信頼性の高いパターンが形成されたパターン付枚葉状基材を提供することができる。具体的には、搬送される環境にかかわらず100mmあたりの寸法変化が3.3μm以下のパターンが形成されたパターン付枚葉状基材を提供することができる。さらに、パターン不良となりうる部分には、所定パターンを形成しないことから製造コストを低減することができる。
【0028】
<<パターン付枚葉状基材セット>>
次に、本発明のパターン付枚葉状基材セットについて図3を用いて説明する。なお、図3は、本発明のパターン付枚葉状基材セットの一例を示す断面図である。図3に示すように、本発明のパターン付枚葉状基材セット100は、上記で説明した本発明のパターン付枚葉状基材10を複数枚重ねてなるパターン付枚葉状基材10の積層体101と、この積層体101の上下面に設けられる保護層102とを備えることを特徴とする。
【0029】
上記で説明したように、本発明のパターン付枚葉状基材10によれば、このパターン付枚葉状基材10を複数枚積層した積層体として搬送した際に、最上面と最下面に位置するパターン付枚葉状基材10以外のパターン付枚葉状基材10に、搬送される環境にかかわらず、寸法変化が極めて小さいパターンが形成されたパターン付枚葉状基材を提供することができる。一方で、この積層体101のうち最上面と最下面に位置するパターン付枚葉状基材10は、その表面の全面が外部環境に晒されることから、寸法の変化は大きく、形成されたパターンの寸法精度は大きく低下する。
【0030】
そこで、本発明においては、積層体101の全てのパターン付枚葉状基材10、特に、積層体101の最上面、及び最下面に位置するパターン付枚葉状基材10についても、搬送される環境にかかわらず、寸法変化が極めて小さいパターンを形成するために、該積層体101の上下面に保護層102を設けた構成をとる。
【0031】
図3に示すように、積層体101の上下面に保護層102を設けた本発明のパターン付枚葉状基材セット100によれば、積層体101を構成する全てのパターン付枚葉状基材10に、高い寸法精度を付与することができる。具体的には、搬送される環境にかかわらず、積層体101を構成する全てのパターン付枚葉状基材10に形成されたパターンの寸法変化を、100mmあたり3.3μm以下とすることができる。
【0032】
保護層102は、積層体101の上下面に設け、積層体101の最上面、及び最下面に位置するパターン付枚葉状基材10の表面が外部環境に晒されることを防止するために設けられる。したがって、少なくとも、積層体の上下面を覆うとの条件をみたせば、その材料等について特に限定されることはないが、防水性やガスバリア性を有しているものを特に好ましく用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムなどを用いることができる。
【0033】
また、本発明においては、保護層102として、パターン形成前の枚葉状の基材を用いることもできる。
【0034】
保護層102の厚さについて特に限定されることはないが、その厚さは500μm以上であることが好ましい。これは、厚さが約125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを枚葉状に30枚積層した場合に、最上面に位置するポリエチレンテレフタレートフィルムから下方向に向かって4枚目まで、及び最下面から上方向に向かって4枚目までのポリエチレンテレフタレートフィルムには、最上面及び最下面に位置するポリエチレンテレフタレートフィルムからの吸湿に起因する寸法変化が生ずるが、5枚目以降のポリエチレンテレフタレートフィルムには、吸湿に起因する寸法変化が生じないためである。したがって、125μm×4枚、すなわち500μm以上の保護層102を、積層体101の上下面に設けることで、積層体の上下面に位置するパターン付枚葉状基材に対する表面からの吸湿を完全に防止することができる。
【0035】
また、保護層102は、その透湿度が、13g/m2・day未満のものを使用することが好ましい。上記保護層102の好ましい厚みの算出に用いたポリエチレンテレフタレートフィルムの透湿度は、50g/m2・dayであることから、これを4枚積層したときの全体の透湿度は、50g/m2・day/4枚=約13/m2・dayとなる。上記で説明したように、最上面から下方向に向かって、及び最下面から上方向に向かって5枚目以降のポリエチレンテレフタレートフィルムには、上下面に位置するポリエチレンテレフタレートフィルムからの吸湿に起因する寸法変化が生じない。したがって、積層体101の上下面に透湿度が13/m2・day未満の保護層102を設けることで、積層体101の上下面に位置するパターン付枚葉状基材に対する表面からの吸湿を完全に防止することができる。
【0036】
<<パターン付ロール状基材>>
次に本発明のパターン付ロール状基材について図4を用いて具体的に説明する。なお、図4は、本発明のパターン付ロール状基材の概略展開図である。
【0037】
図4に示すように、本発明のパターン付ロール状基材200は、連続する基材201上に所定のパターン2が設けられ、これが巻芯202に巻回されてなるパターン付ロール状基材200であって、(1)前記連続する基材を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において積層体の最上面及び最下面に位置しない連続する基材の含水率が常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分201A、及び(2)前記連続する基材を巻芯に巻回した際に最表面に位置する部分201Bには、所定パターン2が形成されていないことを特徴とする。
【0038】
本発明のパターン付ロール状基材200は、ロール状で搬送されることを想定してなされたものである。したがって、本発明のパターン付ロール状フィルム200は、搬送中に幅方向の端部近傍、及び最表面に位置する部分は外部環境の水分の影響を受け寸法変化が生ずる。そこで、本発明は、連続する基材201において、巻芯202に巻回した際に、最表面に位置する部分201Bにはパターンが形成されていない。さらに、含水率が3%以上変化する部分201Aにもパターンが形成されていない。ここで、本発明においては、連続する基材を巻回した状態で搬送する際の含水率の変化量を再現するため、連続する基材を積層させた積層体を用い、この積層体の含水率の変化に応じてパターンを形成しない領域を決定している。つまり、連続する基材を積層させた積層体によって、連続する基材を巻回した状態を再現している。なお、連続する基材を巻回した状態ではなく、積層させた状態としているのは、端部からの吸水以外による含水率が変化する要因を除外するためである。具体的には、巻回した状態で含水率を測定した場合には、ロール巻内と巻外で含水率が異なっている可能性が高く、端部からの吸水による含水率の変化を正確に再現できない可能性がある。したがって、本発明では、前記連続する基材を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において積層体の最上面及び最下面に位置しない連続する基材の含水率が常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分にもパターンが形成されていないこととしている。
【0039】
つまり本発明のパターン付ロール状フィルムは、連続する基材201において、搬送中に水分の影響を受け寸法変化が生ずる部分にはあらかじめパターンを形成していないことを特徴とするものである。
【0040】
なお、本発明において、連続する基材を積層させた積層体とは、巻芯に巻き回される連続する基材そのものであってもよいが、この連続する基材が数十mオーダー以上の場合には、連続する基材を重ね合わせた積層体とし、含水率を測定することは実際に困難である。この場合、連続する基材を所定の長さに切り出した模式的な基材を準備し、この模式的な基材を3枚以上重ねてなる積層体を別途準備して含水率を測定することとしてもよい。模式的な基材を用いた場合には、連続する基材を切り出すことにより、巻芯に巻回す方向と平行な端部、及びこの平行な端部と直行する端部、すなわち切り出し切断部が存在することとなるが、パターンを形成しない領域を決定するにあたっては、巻芯に巻回す方向と平行な端部の含水率にのみ着目して行えばよい。
【0041】
常温常湿雰囲気中で測定される連続する基材201の含水率とは、常温常湿雰囲気によって、連続する基材201の全ての表面における含水率が一定化された状態で測定される含水率である。含水率を一定にする方法について特に限定はないが、連続する基材201を巻回す前に常温常湿雰囲気中に長期保管することで含水率を一定化することができる。
【0042】
含水率の変化量を確認する方法としては、常温常湿雰囲気中における連続する基材201の含水率を測定後、図5に示すように、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に、該連続する基材201を3枚以上積層した積層体として保管する。なお、連続する基材201を3枚以上重ねた積層体203としているのは、上記で説明したように、積層体によって連続する基材201を巻回した状態を再現するためである。また、該積層体203のうち最上面、最下面に位置する連続する基材201は、表面全面から吸湿をすることから、ロール状に巻回した際の端部からの吸湿による含水率の変化を正確に再現できないこととなる。したがって、本発明においては、最上面、最下面に位置しない連続する基材201によって含水率の変化量が測定され、これに基づいて所定パターンを形成しない部分を決定する。具体的には、この積層体203を温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管し、保管後、積層体203の最上面、最下面に位置しない連続する基材201を抜き取り、この連続する基材201の含水率を測定する。保管後の含水率の測定は、その含水率の測定における信頼性を考慮すると、全ての測定を30分以内に行うことが好ましい。
【0043】
本発明において含水率の測定は、連続する基材201において所定パターンを形成する位置において測定すればよいが、連続する基材201の表面全面を所定領域に仮想分割し、この領域毎に含水率の測定を行うことが好ましい。仮想分割される所定領域は、連続する基材201の形状、大きさ等によって適宜設定することができ特に限定はないことは、上記で説明したパターン付枚葉状基材と同様でありここでの説明は省略する。
【0044】
連続する基材201の材質についても特に限定はなく、上記で説明した枚葉状の基材1と同様のものを用いることができる。
【0045】
本発明に用いられる連続する基材の厚さとしては、1μm〜1mmの範囲内であることが好ましく、10μm〜500μmの範囲内であることがより好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがさらに好ましい。基材の厚さが上記範囲よりも厚すぎると、フレキシブル性が損なわれ、ロール状基材の作製が困難になり、折れやすくなるからである。一方、上記範囲よりも薄すぎると、こしが無くなり、各工程における取り扱いが困難になるからである。
本発明に用いられる基材の幅としては、特に限定されるものではないが、例えば、100mm〜1000mmの範囲内であることが好ましく、150mm〜600mmの範囲内であることがより好ましい。
【0046】
なお、本発明に用いられる連続する基材201は、単一層からなる構成であっても良く、あるいは、複数の層が積層された構成を有するものであっても良い。
【0047】
以上説明した本発明のパターン付ロール状基材200によれば、搬送時に寸法変化によるパターン不良となりうる部分に所定パターンが形成されていないことから、搬送される環境にかかわらず、寸法変化が極めて小さいパターンが形成されたパターン付ロール状基材を提供することができる。具体的には、搬送される環境にかかわらず100mmあたりの寸法変化が3.3μm以下のパターンが形成されたパターン付ロール状基材を提供することができる。さらに、パターン不良となりうる部分には、所定パターンを形成しないことから製造コストを低減することができる。
【0048】
以上、本発明のパターン付枚葉状基材、パターン付枚葉状基材セット、及びパターン付ロール状基材について説明を行ったが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 枚葉状の基材
2 所定パターン
3 積層体
10 パターン付枚葉状基材
100 パターン付枚葉状基材セット
101 積層体
102 保護層
200 パターン付ロール状基材
201 連続する基材
202 巻芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉状の基材上に所定のパターンが設けられてなるパターン付枚葉状基材であって、
前記枚葉状の基材を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において当該積層体の最上面及び最下面に位置しない枚葉状の基材の含水率が、常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分には、前記所定パターンが形成されていないことを特徴とするパターン付枚葉状基材。
【請求項2】
パターン付枚葉状基材セットであって、
請求項1に記載のパターン付枚葉状基材を複数枚重ねてなるパターン付枚葉状基材の積層体と、
当該積層体の上下面に設けられる保護層と、
を備えることを特徴とするパターン付枚葉状基材セット。
【請求項3】
連続する基材上に所定のパターンが設けられ、これが巻芯に巻回されてなるパターン付ロール状基材であって、
(1)前記連続する基材を3枚以上重ねてなる積層体を、温度40℃、湿度90%RHの雰囲気中、又は温度5℃、湿度10%RHの雰囲気中に16時間保管した場合において当該積層体の最上面及び最下面に位置しない連続する基材の含水率が常温常湿雰囲気中で測定される含水率から3%以上変化する部分、及び
(2)前記連続する基材を巻芯に巻回した際に最表面に位置する部分、
には、前記所定パターンが形成されていないことを特徴とするパターン付ロール状基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−179743(P2012−179743A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42724(P2011−42724)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】