説明

パターン位相差フィルムの製造方法

【課題】パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムを容易かつ大量に作製することができるパターン位相差フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】右目用透過光に対応する第1の位相差を与えるために、液晶が配向されて第1の膜厚(t1)を有する右目用領域(A)と、左目用透過光に対応する第2の位相差を与えるために、液晶が配向されて第2の膜厚(t2)を有する左目用領域(B)とが、帯状に交互にパターンニングされたパターン位相差フィルムの製造方法であって、フィルム基材(2)上に塗布された賦型用樹脂(3)に、帯状に交互にパターンニングされた凹凸部を転写する凹凸転写工程(#102)と、前記賦型用樹脂の凹凸部に液晶材料(4)をコートする液晶コート工程(#105)と、前記液晶材料の凹凸部に1方向を向いた微小キズを転写する微小キズ転写工程(#106)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットパネルディスプレイは、2次元表示のものが主流であった。しかし、近年、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集めており、一部市販もされている。そして、今後のフラットパネルディスプレイは、3次元表示可能であることが当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを、それぞれ選択的に視聴者の右目及び左目に提供することが必要である。右目用の映像と左目用の映像とを選択的に提供する方法としては、例えば、パッシブ方式が知られている。
【0004】
このパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図23は、液晶表示パネルを使用したパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。この図23の例では、垂直方向に連続する液晶表示パネルの画素を、順次交互に、右目用及び左目用に割り当て、それぞれ右目用及び左目用の画像データで駆動し、これにより右目用の映像と左目用の映像とを同時に表示する。また、液晶表示パネルのパネル面にパターン位相差フィルムを配置し、右目用及び左目用の画素からの直線偏光による出射光を、右目用及び左目用で方向の異なる円偏光に変換する。これにより、パッシブ方式では、対応する偏光フィルタを備えるメガネを装着して、右目用の映像と左目用の映像とをそれぞれ選択的に視聴者の右目及び左目に提供する。
【0005】
このパッシブ方式は、応答速度の低い液晶表示装置でも適用することができ、さらにパターン位相差フィルムと円偏光メガネとを用いた簡易な構成で3次元表示することができる。このようなことから、パッシブ方式の液晶表示装置は、今後の3次元表示装置の中心的存在となるものとして非常に注目されている。
【0006】
ところで、パッシブ方式に係るパターン位相差フィルムは、画素の割り当てに対応して透過光に位相差を与えるパターン状の位相差層が必要である。このパターン位相差フィルムは、まだ広く研究、開発が行われておらず、標準的な技術としても確立されているものがないのが現状である。
【0007】
このパターン位相差フィルムに関して、特許文献1には、配向規制力を制御した光配向膜をガラス基板上に形成し、この光配向膜により液晶の配列をパターニングする製造方法が開示されている。しかし、この特許文献1に開示の方法は、ガラス基板を使用することが必要であることから、パターン位相差フィルムが高価になり、大面積のものを大量生産し難い問題がある。
【0008】
また、パターン位相差フィルムに関して、特許文献2には、レーザーの照射によりロール版の周囲に微細な凹凸形状を形成し、この凹凸形状を転写してパターン状に配向規制力を制御した光配向膜を作製する方法が開示されている。この特許文献2に開示の方法では、レーザーの走査によりロール版の全周に漏れ無くレーザーを照射することが必要である。従って、ロール版の作製に時間を要する問題がある。また、高価なレーザー加工装置を使用しなければならない問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−49865号公報
【特許文献2】特開2010−152296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムを容易かつ大量に作製することができるパターン位相差フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、右目用透過光に対応する第1の位相差を与えるために、液晶が配向されて第1の膜厚(t1)を有する右目用領域(A)と、左目用透過光に対応する第2の位相差を与えるために、液晶が配向されて第2の膜厚(t2)を有する左目用領域(B)とが、帯状に交互にパターンニングされたパターン位相差フィルムの製造方法であって、フィルム基材(2)上に塗布された賦型用樹脂(3)に、帯状に交互にパターンニングされた凹凸部を転写する凹凸転写工程(#102)と、前記賦型用樹脂の凹凸部に液晶材料(4)をコートする液晶コート工程(#105)と、前記液晶材料の凹凸部に1方向を向いた微小キズを転写する微小キズ転写工程(#106)と、を備えたパターン位相差フィルムの製造方法を提供する。
請求項2の発明は、右目用透過光に対応する第1の位相差を与えるために、液晶が配向されて第1の膜厚(t1)を有する右目用領域(A)と、左目用透過光に対応する第2の位相差を与えるために、液晶が配向されて第2の膜厚(t2)を有する左目用領域(B)とが、帯状に交互にパターンニングされたパターン位相差フィルムの製造方法であって、フィルム基材(2)上に塗布された賦型用樹脂に、1方向を向いた微小キズを転写する微小キズ転写工程(#202)と、前記賦型用樹脂の微小キズに液晶材料(4)をコートする液晶コート工程(#205)と、前記液晶材料の微小キズに、帯状に交互にパターンニングされた凹凸部を転写する凹凸転写工程(#206)と、を備えたパターン位相差フィルムの製造方法を提供する。
請求項3の発明は、右目用透過光に対応する第1の位相差を与えるために、液晶が配向されて第1の膜厚(t1)を有する右目用領域(A)と、左目用透過光に対応する第2の位相差を与えるために、液晶が配向されて第2の膜厚(t2)を有する左目用領域(B)とが、帯状に交互にパターンニングされたパターン位相差フィルムの製造方法であって、フィルム基材(2)上に塗布された賦型用樹脂(3)に、帯状に交互にパターンニングされ、1方向を向いた微小キズが形成された微小キズ付き凹凸部を転写する微小キズ付き凹凸転写工程(#303)と、前記賦型用樹脂の微小キズ付き凹凸部に液晶材料(4)をコートする液晶コート工程(#305)と、前記液晶材料の上にベタ版を転写するベタ版転写工程(#306)と、を備えたパターン位相差フィルムの製造方法を提供する。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のパターン位相差フィルムの製造方法において、前記第1の膜厚(t1)と前記第2の膜厚(t2)とは、一方が他方の略3倍であること、を特徴とするパターン位相差フィルムの製造方法を提供する。
以上、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明したが、これに限定されるものではない。なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成に代替してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、パッシブ方式による3次元画像表示に適用するパターン位相差フィルムを容易かつ大量に作製することができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】本発明の第1実施形態に係るパターン位相差フィルムを示す図である。
【図1B】本発明の第2実施形態に係るパターン位相差フィルムを示す図である。
【図2】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(賦型用樹脂塗布工程#101)を示す模式図である。
【図3】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(凹凸転写工程#102、UV硬化工程#103)を示す模式図である。
【図4】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(離型工程#104)を示す模式図である。
【図5】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(液晶コート工程#105、液晶硬化工程#106)を示す模式図である。
【図6】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(微小キズ転写工程#106)を示す模式図である。
【図7】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(微小キズ転写工程#106、液晶硬化工程#107)を示す模式図である。
【図8】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(離型工程#108)を示す模式図である。
【図9】第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造装置を示す略線図である。
【図10】第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(賦型用樹脂塗布工程#201)を示す模式図である。
【図11】第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(微小キズ転写工程#202、UV硬化工程#203)を示す模式図である。
【図12】第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(離型工程#204)を示す模式図である。
【図13】第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(液晶コート工程#205)を示す模式図である。
【図14】第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(凹凸転写工程#206)を示す模式図である。
【図15】第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(凹凸転写工程#206、液晶硬化工程#207)を示す模式図である。
【図16】第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(離型工程#208)を示す模式図である。
【図17】第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(賦型用樹脂塗布工程#301)を示す模式図である。
【図18】第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(微小キズ付き凹凸転写工程#302、UV硬化工程#303)を示す模式図である。
【図19】第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(離型工程#304)を示す模式図である。
【図20】第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(液晶コート工程#305)を示す模式図である。
【図21】第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(ベタ版転写工程#306、液晶硬化工程#307)を示す模式図である。
【図22】第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法(離型工程#308)を示す模式図である
【図23】液晶表示パネルを使用したパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(パターン位相差フィルムの第1実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態について、さらに詳しく説明する。
図1Aは、本発明の第1実施形態に係るパターン位相差フィルムを示す図である。
第1実施形態のパターン位相差フィルム1は、液晶の膜厚で位相差を制御しようというものであり、透明フィルムによる基材2に賦型樹脂層3、位相差層4が順次積層されている。
このパターン位相差フィルム1は、位相差層4が液晶材料により形成され、この液晶材料の配向を賦型樹脂層3のパターン状の微小キズ付き凹凸部3aの配向規制力により規制し、賦型樹脂層3の凹凸部に対応した位相差層4の厚みt1,t2により、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差を付与する。このパターン位相差フィルム1は、上記パターニングにより、液晶表示パネルにおける画素の割り当てに対応して、一定の幅により、右目用領域Aと、左目用領域Bとが順次交互に帯状にパターンニングされ、右目用及び左目用の画素からの出射光にそれぞれ対応する位相差を与える。
【0015】
(パターン位相差フィルムの第2実施形態)
図1Bは、本発明の第2実施形態に係るパターン位相差フィルムを示す図である。
第2実施形態のパターン位相差フィルム1Aは、透明フィルムによる基材2に微小キズ付き樹脂層3A、凹凸賦型位相差層4Aが順次積層されている。
このパターン位相差フィルム1Aは、賦型位相差層4Aが液晶材料により形成され、この液晶材料の配向を微小キズ付き樹脂層3Aの配向規制力により規制し、賦型位相差層4Aのパターン状の凹凸部4bに対応した賦型位相差層4の厚みt1,t2により、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差を付与する。
【0016】
(パターン位相差フィルムの製造方法の第1実施形態)
図2〜図8は、第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法を示す模式図である。
第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法は、賦型用樹脂コート工程#101と、凹凸転写工程#102と、賦型用樹脂硬化工程#103と、離型工程#104と、液晶コート工程#105と、微小キズ転写工程#106と、液晶硬化工程#107、離型工程#108などとを備えている。
【0017】
賦型用樹脂コート工程#101は、図2に示すように、TAC等の透明フィルムからなる基材2に、硬化してないアクリル系などのUV硬化型の賦型用樹脂3を塗布する工程である。
【0018】
凹凸転写工程#102は、図2に示すように、成形型5によって、基材2にコートされた賦型用樹脂3に、凹凸部3aを賦型する工程である。この成形型5は、右目用透過光に対応する位相差を与える右目用領域5Aと、左目用透過光に対応する位相差を与える左目用領域5Bとが、帯状の凹凸部5aとして交互に形成されたものである。成形型5は、凹凸部5aが形成されているのは、液晶の膜厚を変えるための段差を賦型用樹脂3に付与するためである。この実施形態では、成形型5の凹凸部の段差は、2μmとしてある。
【0019】
賦型用樹脂硬化工程#103は、図3に示すように、成形型5で、未硬化のUV硬化型の賦型樹脂3に型押ししながら、UV(紫外線)を照射して硬化させる工程である。
【0020】
離型工程#104は、成形型5を離型する工程であり、図4に示すように、賦型樹脂層3には、賦型用樹脂に賦型された凹凸部3aが形成される。
【0021】
液晶コート工程#105は、賦型樹脂層3の凹凸部3aに、液晶材料をコートする工程である。コーティング方法は、ダイコート、グラビア、スピンコート、バーコート等を用いることができる。
【0022】
微小キズ転写工程#106は、成形型6により、液晶材料4の凹凸部4aに液晶を配向するための、1方向(凹凸部4aの長手方向から45度の方向)を向いた微小キズ6aを転写する工程である。成形型6は、図6に示すように、微小キズ6aがラビング又は研磨により、ほぼ5nm〜500μmの範囲内でランダムに形成されている。
【0023】
液晶硬化工程#107は、UVの照射により、液晶材料を硬化させる工程である。
離型工程#108は、成形型5を離型する工程であり、図8に示すように、パターン位相差フィルム1は、基材2に賦型樹脂層3、位相差層4が順次積層されており、液晶表面から凹部の底部までの液晶の膜厚t1と、液晶表面から凸部の頂部までの液晶の膜厚t2によって、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差が付与されている。
【0024】
以上説明したように、第1実施形態によれば、成形型5は、2μmの段差のある凹凸部3aが形成されている。また、成形型6は、その表面にラビング等で微小キズ6aを付けてあり、この微小キズ6aの方向(配向方向)は、1方向に揃っている。
この成形型5により、賦型層3に凹凸部3aを賦型し、そこに液晶材料をコートする。ついで、成形型6で液晶材料に微小キズ6aを転写することにより、液晶が配向された位相差層4は、液晶表面から凹部の底部までの液晶の膜厚t1と、液晶表面から凸部の頂部までの液晶の膜厚t2によって、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差を付与する。この液晶表面は、凸部の頂部から1μmの厚さに均一に形成されている。
右目用領域Aは、膜厚t1=3μmで、厚み方向のリタデーション値Re1=375nmとなり、偏光の振動方向が3λ/4となる。
左目用領域Bは、膜厚t2=1μmで、厚み方向のリタデーション値Re2=125nmとなり、偏光の振動方向がλ/4となる。
従って、右目用領域Aと左目用領域Bで、λ/2の位相差が付与される。
このように、膜厚を一方が他方の3倍となるようにすれば、厚みに比例したリタデーション値を付与できる。これは、液晶の性質であり、材料に関係なく3倍の厚み差があれば、それに比例したリタデーション値が得られる。
【0025】
図9は、第1実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造装置を示す略線図である。
第1実施形態の製造装置10は、基材2がロールにより提供され、この基材2を供給リール11から供給する。この製造装置10は、ダイ12によりこの基材2にUV硬化型の賦型用樹脂3Aをコートする(賦型用樹脂コート工程#101)。
【0026】
この製造装置10において、ロール版13は、図2で説明した成形型5と同様な型が周囲に形成された円筒形状の金型である。製造装置10は、賦型用樹脂が塗布された基材2を加圧ローラ14によりロール版13に押圧し(凹凸転写工程#102)、紫外線照射装置15による紫外線の照射により賦型用樹脂を硬化させる(UV硬化工程#103)。
これにより、製造装置10は、ロール版13に形成された凹凸部を基材2に塗布された賦型用樹脂に転写する。その後、剥離ローラ16によりロール版13から基材2を剥離し(離型工程#104)、ダイ19により液晶材料4Aを塗布する(液晶コート工程#105)。
【0027】
次に、この製造装置10において、ロール版13Aは、図6で説明した成形型6と同様な微小キズ6aが形成された型が周囲に形成された円筒形状の金型である。製造装置10は、液晶材料が塗布された基材2を加圧ローラ14Aによりロール版13Aに押圧し(微小キズ転写工程#106)、紫外線照射装置15Aによる紫外線の照射により液晶材料を硬化させる(UV硬化工程#107)。
これにより、製造装置10は、ロール版13Aに形成された微小キズ6aを基材2に塗布された液晶材料に転写する。その後、剥離ローラ16Aによりロール版13から基材2を剥離し(離型工程#108)、さらに、その後巻き取りリール18に巻き取る。
【0028】
パターン位相差フィルム1は、この巻き取りリール18に巻き取ったフィルム材に、必要に応じて粘着層、反射防止層等を形成した後、所望の大きさに切断して作製される。これにより、パターン位相差フィルム1は、ロール版13、13Aを用いた凹凸部3a及び微小キズ4aの転写により、ロールにより提供される基材2を連続して処理して効率よく製造される。
【0029】
(パターン位相差フィルムの製造方法の第2実施形態)
図10〜図16は、第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法を示す模式図である。
以下の各実施形態では、前述した第1実施形態と同様な機能を果たす部分には、同一の符号を付して、重複する記載や図面を適宜省略する。
第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法は、賦型用樹脂コート工程#201と、微小キズ転写工程#202と、賦型用樹脂硬化工程#203と、離型工程#204と、液晶コート工程#205と、凹凸転写工程#206と、液晶硬化工程#207、離型工程#208などとを備えている。
【0030】
賦型用樹脂塗布工程#201は、図10に示すように、TAC等の透明フィルムからなる基材2に、硬化してないアクリル系などのUV硬化型の賦型用樹脂3を塗布する工程である。
【0031】
微小キズ転写工程#202は、成形型6により、賦型用樹脂3に液晶を配向するための、1方向(後述する凹凸部4bの長手方向から45度の方向)を向いた微小キズ6aを転写する工程である。成形型6は、図10に示すように、微小キズ6aがラビング又は研磨により、ほぼ5nm〜500μmの範囲内でランダムに形成されている。
【0032】
賦型用樹脂硬化工程#203は、図11に示すように、成形型6で、未硬化のUV硬化型の賦型樹脂3に型押ししながら、UV(紫外線)を照射して硬化させる工程である。
【0033】
離型工程#204は、成形型6を離型する工程であり、図12に示すように、賦型樹脂層3には、賦型用樹脂に賦型された微小キズ3bが形成される。
【0034】
液晶コート工程#205は、賦型樹脂層3の微小キズ3bに、液晶材料をコートする工程である。コーティング方法は、ダイコート、グラビア、スピンコート、バーコート等を用いることができる。
【0035】
凹凸転写工程#206は、図14に示すように、成形型5によって、微小キズ3b上にコートされた液晶材料に、凹凸部4bを賦型する工程である。この成形型5は、右目用透過光に対応する位相差を与える右目用領域5Aと、左目用透過光に対応する位相差を与える左目用領域5Bとが、帯状の凹凸部5aとして交互に形成されたものである。成形型5は、凹凸部5aが形成されているのは、液晶の膜厚を変えるための段差を賦型用樹脂3に付与するためである。この実施形態では、成形型5の凹凸部の段差は、2μmとしてある。
【0036】
液晶硬化工程#207は、UVの照射により、液晶材料を硬化させる工程である。
離型工程#208は、成形型5を離型する工程であり、図16に示すように、パターン位相差フィルム1Aは、基材2に賦型樹脂層3A、位相差層4Aが順次積層されており、液晶底面から凸部の頂部までの液晶の膜厚t1と、液晶底面から凹部の底部までの液晶の膜厚t2によって、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差が付与されている。
【0037】
以上説明したように、第2実施形態によれば、成形型6は、その表面にラビング等で微小キズ6aを付けてあり、この微小キズ6aの方向(配向方向)は、1方向に揃っている。また、成形型5は、2μmの段差のある凹凸部5aが形成されている。
この成形型6で賦型樹脂に微小キズ6aを転写し、そこに液晶材料をコートする。ついで、成形型5により、液晶材料に凹凸部4bを賦型することにより、液晶が配向された位相差層4は、液晶底面から凸部の頂部までの液晶の膜厚t1と、液晶底面から凹部の底部までの液晶の膜厚t2によって、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差を付与する。この液晶表面は、凸部の頂部から1μmの厚さに均一に形成されている。
右目用領域Aは、膜厚t1=3μmで、厚み方向のリタデーション値Re1=375nmとなり、偏光の振動方向が3λ/4となる。
左目用領域Bは、膜厚t2=1μmで、厚み方向のリタデーション値Re2=125nmとなり、偏光の振動方向がλ/4となる。
従って、右目用領域Aと左目用領域Bで、λ/2の位相差が付与される。
【0038】
第2実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造装置においては、ロール版13は、図10で説明した成形型6と同様な微小キズ6aが形成された型が周囲に形成された円筒形状の金型であり、ロール版13Aは、図14で説明した成形型5と同様な凹凸部5aが周囲に形成された円筒形状の金型である以外は、図9の装置と同様であるので、説明は省略する。
【0039】
(パターン位相差フィルムの製造方法の第3実施形態)
図17〜図22は、第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法を示す模式図である。
本実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造方法は、賦型用樹脂コート工程#301と、微小キズ付き凹凸転写工程#302と、賦型用樹脂硬化工程#303と、離型工程#304と、液晶コート工程#305と、ベタ版転写工程#306と、液晶硬化工程#307と、離型工程#308などとを備えている。
【0040】
賦型用樹脂塗布工程#301は、図17に示すように、TAC等の透明フィルムからなる基材2に、硬化してないアクリル系などのUV硬化型の賦型用樹脂を塗布する工程である。
【0041】
微小キズ付き凹凸転写工程#302は、図17に示すように、成形型20によって、基材2にコートされた賦型用樹脂3に、微小キズ付き凹凸部3cを賦型する工程である。この成形型20は、右目用透過光に対応する位相差を与える右目用領域20Aと、左目用透過光に対応する位相差を与える左目用領域20Bとが、帯状の凹凸部21として交互に形成され、凹凸部21の表面に、研磨又はラビング等で配向用の微小キズ22が同一方向(凹凸部4aの長手方向から45度の方向)に形成されものである。成形型20は、凹凸部21が形成されているのは、液晶の膜厚を変えるための段差を賦型用樹脂3に付与するためである。この実施形態では、成形型20の凹凸部の段差は、2μmとしてある。また、微小キズ22は、ほぼ5nm〜500μmの範囲内でランダムに形成されている。
【0042】
賦型用樹脂硬化工程#303は、図18に示すように、成形型10で、未硬化のUV硬化型の賦型樹脂3に型押ししながら、UV(紫外線)を照射して硬化させる工程である。
【0043】
離型工程#304は、成形型10を離型する工程であり、図19に示すように、賦型樹脂層3には、賦型用樹脂に賦型された微小キズ付き凹凸部3cが形成される。
【0044】
液晶コート工程#305は、賦型樹脂層3の微小キズ付き凹凸部3cに、液晶材料をコートする工程である。コーティング方法は、ダイコート、グラビア、スピンコート、バーコート等を用いることができる。
ベタ版転写工程#306は、液晶材料の上にベタ版を転写する工程である。成形型30は、図20に示すように、版面が鏡面仕上げされたベタ版であり、液晶材料の上面を平坦化されるためのものである。
液晶硬化工程#307は、UVの照射により、液晶材料を硬化させる工程である。
離型工程#308は、成形型30を離型する工程であり、図22に示すように、パターン位相差フィルム1は、基材2に賦型樹脂層3、位相差層4が順次積層されており、液晶表面から凹部の底部までの液晶の膜厚t1と、液晶表面から凸部の頂部までの液晶の膜厚t2によって、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差が付与されている。
【0045】
以上説明したように、第3実施形態によれば、成形型20は、2μmの段差のある凹凸部21の表面にラビング等で微小キズ22を付けている。この微小キズ22の方向(配向方向)は、1方向に揃っている。また、成形型30は、ベタ版である。
この成形型20で、賦型層3にキズ付き凹凸部を賦型し、そこに液晶材料をコートすることにより、液晶が配向された位相差層4は、液晶表面から凹部の底部までの液晶の膜厚t1と、液晶表面から凸部の頂部までの液晶の膜厚t2によって、右目用領域Aと左目用領域Bの位相差を付与する。この液晶表面は、成形型30によって平滑化されるので、頂部から1μmの厚さに均一に形成されている。
右目用領域Aは、膜厚t1=3μmで、厚み方向のリタデーション値Re1=375nmとなり、偏光の振動方向が3λ/4となる。
左目用領域Bは、膜厚t2=1μmで、厚み方向のリタデーション値Re2=125nmとなり、偏光の振動方向がλ/4となる。
従って、右目用領域Aと左目用領域Bで、λ/2の位相差が付与される。
【0046】
第3実施形態に係るパターン位相差フィルムの製造装置においては、ロール版13は、図17で説明した成形型20と同様な微小キズ付き凹凸部3cが形成された型が周囲に形成された円筒形状の金型であり、ロール版13Aは、図20で説明した成形型30と同様なベタ版が周囲に形成された円筒形状の金型である以外は、図9の装置と同様であるので、説明は省略する。
【0047】
(変形形態)
以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)微小キズの方向は、45度に限らず、90度、135度、180度等であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1:パターン位相差フィルム,2:基材、3:賦型樹脂層、4:位相差層、
#101:賦型用樹脂コート工程、#102:賦型工程、#103:賦型用樹脂硬化工程、#104:離型工程、#105:液晶コート工程、#106:液晶硬化工程
#201:賦型用樹脂コート工程、#202:微小キズ転写工程、#203:賦型用樹脂硬化工程、#204:離型工程、#205:液晶コート工程、#206:凹凸転写工程、#207:液晶硬化工程、#208:離型工程、
#301:賦型用樹脂コート工程、#302:微小キズ付き凹凸転写工程、#303:賦型用樹脂硬化工程、#304:離型工程、#305:液晶コート工程、#306:ベタ版転写工程、#307:液晶硬化工程、#308:離型工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右目用透過光に対応する第1の位相差を与えるために、液晶が配向されて第1の膜厚を有する右目用領域と、左目用透過光に対応する第2の位相差を与えるために、液晶が配向されて第2の膜厚を有する左目用領域とが、帯状に交互にパターンニングされたパターン位相差フィルムの製造方法であって、
フィルム基材上に塗布された賦型用樹脂に、帯状に交互にパターンニングされた凹凸部を転写する凹凸転写工程と、
前記賦型用樹脂の凹凸部に液晶材料をコートする液晶コート工程と、
前記液晶材料の凹凸部に1方向を向いた微小キズを転写する微小キズ転写工程と、
を備えたパターン位相差フィルムの製造方法。
【請求項2】
右目用透過光に対応する第1の位相差を与えるために、液晶が配向されて第1の膜厚を有する右目用領域と、左目用透過光に対応する第2の位相差を与えるために、液晶が配向されて第2の膜厚を有する左目用領域とが、帯状に交互にパターンニングされたパターン位相差フィルムの製造方法であって、
フィルム基材上に塗布された賦型用樹脂に、1方向を向いた微小キズを転写する微小キズ転写工程と、
前記賦型用樹脂の微小キズに液晶材料をコートする液晶コート工程と、
前記液晶材料の微小キズに、帯状に交互にパターンニングされた凹凸部を転写する凹凸転写工程と、
を備えたパターン位相差フィルムの製造方法。
【請求項3】
右目用透過光に対応する第1の位相差を与えるために、液晶が配向されて第1の膜厚を有する右目用領域と、左目用透過光に対応する第2の位相差を与えるために、液晶が配向されて第2の膜厚を有する左目用領域とが、帯状に交互にパターンニングされたパターン位相差フィルムの製造方法であって、
フィルム基材上に塗布された賦型用樹脂に、帯状に交互にパターンニングされ、1方向を向いた微小キズが形成された微小キズ付き凹凸部を転写する微小キズ付き凹凸転写工程と、
前記賦型用樹脂の微小キズ付き凹凸部に液晶材料をコートする液晶コート工程と、
前記液晶材料の上にベタ版を転写するベタ版転写工程と、
を備えたパターン位相差フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のパターン位相差フィルムの製造方法において、
前記第1の膜厚と前記第2の膜厚とは、一方が他方の略3倍であること、
を特徴とするパターン位相差フィルムの製造方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2013−15754(P2013−15754A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149955(P2011−149955)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】