説明

パターン修正方法およびパターン修正装置

【課題】10μm前後の細線で電極断線部などを修正することができ、かつ、欠陥部周辺のダメージや汚染が小さなパターン修正方法を提供する。
【解決手段】このパターン修正方法では、レーザ光が欠陥部13aに照射されない状態で低粘着フィルム41にレーザ光を照射して孔40aの開いたマスク40を形成し、マスク40を基板14に密着させ、マスク40を基板14に押圧した後、孔40aを介して欠陥部13aに修正液20を塗布する。したがって、レーザ光によって欠陥部13a周辺がダメージを受けるのを防止することができ、修正液20がマスク40と基板14の隙間に侵入するのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパターン修正方法およびパターン修正装置に関し、特に、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正方法およびパターン修正装置に関する。より特定的には、この発明は、フラットパネルディスプレイの製造工程において発生する電極のオープン欠陥を修正するパターン修正方法およびパターン修正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの大型化、高精細化に伴い、ガラス基板上に形成された電極や液晶カラーフィルタなどに欠陥が存在する確率が高くなっており、歩留まりの向上を図るため欠陥を修正する方法が提案されている。
【0003】
たとえば、液晶ディスプレイのガラス基板の表面には電極が形成されている。この電極が断線している場合、塗布針先端に付着させた導電性の修正ペースト(修正液)を断線部に塗布し、電極の長さ方向に塗布位置をずらしながら複数回塗布して電極を修正する(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、欠陥部を覆うようにフィルムを設け、欠陥部とフィルムとをレーザ光を用いて略同時に除去し、除去した部分にフィルムをマスクとしてインク(修正液)を塗布し、その後、フィルムを剥離除去する方法がある(たとえば、特許文献2,3参照)。
【特許文献1】特開平8−292442号公報
【特許文献2】特開平11−125895号公報
【特許文献3】特開2005−95971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電極を修正する方法では、塗布針先端に導電性の修正ペーストを付着させ、断線部に修正ペーストを転写するため、その塗布径は塗布針先端の平坦面の寸法で決まり、10μm前後の塗布径を実現するのは困難であり、これを用いた細線形成も同様に難しかった。
【0006】
一方、フィルムをマスクとして使用する方法では、10μm前後の細線で電極断線部などを修正することが可能であるが、フィルムと欠陥部をレーザ光で略同時に除去するので、大きなレーザパワーが必要となり、欠陥部の周辺にダメージを与えるという問題がある。また、欠陥部に密着したフィルム上部にレーザアブレーションにより孔を形成するため、そのときに発生する異物(ごみ)がフィルムと基板の隙間に侵入し、欠陥部近傍を汚染することも想定される。
【0007】
さらに、フィルムに開けた孔の周りと欠陥部との密着性を良くしないと、修正ペーストを孔に塗布した時点で、フィルムと基板との隙間に毛細管現象で修正ペースト、あるいは、その溶媒が吸い込まれ、基板を汚染することも考えられる。
【0008】
それゆえに、この発明の主たる目的は、10μm前後の細線で電極断線部などを修正することができ、かつ、欠陥部周辺のダメージや汚染が小さなパターン修正方法およびパターン修正装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るパターン修正方法は、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正方法であって、レーザ光が欠陥部に照射されない状態で、基材と該基材の表面に形成された低粘着層とを含むフィルムにレーザ光を照射して欠陥部に応じた形状の孔をフィルムに開ける第1のステップと、フィルムの孔を欠陥部に位置合わせしてフィルムの低粘着層を基板の表面に密着させる第2のステップと、フィルムの孔を含み、該孔よりも広い範囲でフィルムを基板に押圧する第3のステップと、フィルムの孔を介して欠陥部に修正液を充填する第4のステップと、欠陥部に充填された修正液を硬化させる第5のステップと、フィルムを基板から剥離する第6のステップとを含む。
【0010】
好ましくは、フィルムは、さらに、低粘着層を保護する保護材を含み、第1のステップでは、孔は基材および低粘着層を貫通し、保護材を貫通しないように形成され、第2のステップでは、保護材を低粘着層から剥離して除去した後に、フィルムの孔を欠陥部に位置合わせする。
【0011】
また、この発明に係るパターン修正装置は、基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、レーザ光が欠陥部に照射されない状態で、基材と該基材の表面に形成された低粘着層とを含むフィルムにレーザ光を照射して欠陥部に応じた形状の孔を開けるレーザ光照射手段と、フィルムの孔を欠陥部に位置合わせしてフィルムの低粘着層を基板の表面に密着させるフィルム配置手段と、フィルムの孔を含み、該孔よりも広い範囲でフィルムを基板に押圧する押圧手段と、フィルムの孔を介して欠陥部に修正液を充填する修正液充填手段と、欠陥部に塗布した修正液を硬化させる修正液硬化手段と、フィルムを基板から剥離するフィルム剥離手段とを備える。
【0012】
好ましくは、フィルムは、さらに、低粘着層を保護する保護材を含み、レーザ光照射手段は、孔が基材および低粘着層を貫通し、保護材を貫通しないようにして孔を形成し、フィルム配置手段は、保護材が除去されたフィルムの低粘着層を基板の表面に密着させる。
【0013】
また好ましくは、押圧手段は、押圧力を所定値以下に制限する制限手段を含む。
また好ましくは、押圧手段は、押圧面が球面の押圧部材を含む。
【0014】
また好ましくは、押圧手段は、回転自在に支持されたローラでフィルムの表面を擦ることにより、フィルムを基板に押圧する。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係るパターン修正方法およびパターン修正装置では、孔を開けたフィルムをマスクとして用いるので、10μm前後の細線で電極断線部などを修正することができる。また、基材とその表面に形成された低粘着層とを含むフィルムを使用し、低粘着層を基板に密着させ、さらにフィルムを基板に押圧するので、修正液がフィルムと基板の隙間に侵入することによって基板が汚染されるのを防止することができる。また、レーザ光が欠陥部に照射されない状態で、フィルムにレーザ光を照射して孔を開けるので、レーザ光によって欠陥部周辺がダメージを受けたり、発生した異物によって基板が汚染されるのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるパターン修正装置1の全体構成を示す図である。図1において、パターン修正装置1は、基板の表面を観察する観察光学系2と、観察された画像を映し出すモニタ3と、観察光学系2を介してレーザ光を照射し不要部をカットするカット用レーザ部4と、欠陥修正用の修正材料を数μm以下の微粒子にして溶媒中に分散させた修正液を霧状にして欠陥部に噴出し、微粒子を欠陥部に堆積させる微粒子堆積装置5と、欠陥部を加熱して霧状の修正液中の溶媒を気化させる基板加熱部6と、欠陥部を認識する画像処理部7と、装置全体を制御するホストコンピュータ8と、装置機構部の動作を制御する制御用コンピュータ9とを備える。さらに、その他に欠陥部を持つ基板をXY方向(水平方向)に移動させるXYステージ10と、XYステージ10上で基板を保持するチャック部11と、観察光学系2や微粒子堆積装置5をZ方向(垂直方向)に移動させるZステージ12などが設けられている。
【0017】
図2は、図1に示したパターン修正装置の要部を示す断面図である。修正する欠陥は、基板上に形成された微細パターンの欠陥部、たとえば基板14上に形成された電極13のオープン欠陥部13aである。図2において、基板14の表面に、低粘着フィルムで形成されたマスク40が貼り付けられている。マスク40の孔40aは、電極13のオープン欠陥部13aに位置合わせされている。基板14はチャック部11に固定され、そのチャック部11はXYステージ10によりXY方向に移動される。
【0018】
なお、基板14全体を加熱するヒータをチャック部11に内蔵して、基板14の上側から欠陥部13aを含む範囲を部分加熱可能な基板加熱部6と併用することも可能である。基板14が大型になる場合には、チャック部11内にヒータを内蔵して基板14全体を加熱することは大掛かりになるため、このような場合には基板加熱部6のみの構成にする方が好ましい。基板加熱部6としては、LD光源やCOレーザなどを用いることが可能である。基板加熱部6のパワーは、熱によってマスク40(フィルム)にダメージを与えない範囲内に設定される。また、上記以外の加熱源を用いてもよい。
【0019】
微粒子堆積装置5は、修正に用いる修正材料を数μm以下の微粒子にし、それを溶媒中に均一に分散して液状化した修正液を霧状にする噴霧部15と、霧状にされた修正液の流れの圧力を減じる減圧部16と、減圧された霧状の修正液を加熱する加熱部17と、加熱された霧状の修正液を収束して欠陥部13aに噴出し、欠陥部13aに微粒子を堆積するヘッド部18とを含む。
【0020】
噴霧部15の容器19内には修正液20が注入されている。電極13のオープン欠陥部13aを修正する場合には、修正液20として、金、銀などの金属ナノ粒子を用いた金ペースト、銀ペーストなどの金属ナノペースト、あるいは透明電極材料の微粒子を溶媒中に分散したものが使用される。また、修正液20として、金属錯体溶液や金属コロイド溶液を用いてもよい。
【0021】
容器19の中央には噴霧ノズル21が設けられている。噴霧ノズル21の下部は修正液20に浸けられている。容器19の外部から噴霧ノズル21にアトマイズガス(たとえば窒素ガス)を供給すると、噴霧ノズル21上部の噴出口21aにおけるアトマイズガスの流速が速くなって周囲よりも気圧が下がるため、噴霧ノズル21下端の吸入口21bから修正液20が吸い上げられ、アトマイズガスが噴出口21aから噴出するときに修正液20も噴出口21aの周囲に飛び散り霧化される。この原理は普通の霧吹きの原理と同じでありベルヌーイの原理を応用したものである。大きな霧粒子は容器19内に落下、あるいは、容器19の内壁面に衝突して容器19内に留まり、微細な霧粒子だけが減圧部16に送られる。
【0022】
なお、アトマイズガスとしては、修正液20が酸化しないように窒素ガスのような不活性ガスを用いることが好ましいが、酸化しない修正液20であれば空気でも構わない。また、修正液20を霧状するためにアトマイズガスを用いたが、修正液20中の修正材料がサブミクロンのような超微粒子であれば、超音波による噴霧装置を用いても構わない。
【0023】
また、修正液20中の修正材料の微粒子が時間の経過により沈殿し易い場合には、撹拌子を容器19内に入れ、容器19の底にマグネチックスターラを設置して修正液20を常時撹拌してもよい。
【0024】
減圧部16は、一般的に知られているバーチャルインパクタと同じものであり、修正液20の霧粒子を分級するものである。小さな霧粒子はここで除去され、霧粒子の流れの圧力が減じられる。減圧部16は、ノズル部22と集気部23と排気管24と外管25から構成される。ノズル部22と集気部23とは一定の隙間26を保って対峙している。ノズル部22から噴出された霧粒子のうちの流速が速い霧粒子や重い霧粒子は集気部23を介して次段に供給されるが、流速が遅い霧粒子や軽い霧粒子などは排気管24を介して排気ポンプ(図示せず)により排出される。
【0025】
加熱部17は、集気部23と次段を結ぶパイプ27を含む。パイプ27の外周部にはヒータ28と温度センサ29が取り付けられ、パイプ27が設定温度になるように制御され、霧粒子を加熱する機能を持つ。霧粒子を加熱することで、欠陥部13aに霧粒子が付着した時の流れや飛散を抑制する。なお、ヒータ28の周りは断熱部材(図示せず)で覆われている。また、修正液20によっては、加熱部17を省略することも可能である。
【0026】
ヘッド部18は、霧粒子の周りをシースガス(たとえば窒素ガス)で覆いこみ、霧粒子の流れを収束させてヘッド部18下端の塗布ノズル30から欠陥部13aに向けて霧粒子を噴出する。塗布ノズル30の噴出口の内径は100〜200μm程度であり、シースガスによって噴出口の内径の1/10程度まで霧粒子の流れを収束させることが可能である。
【0027】
シャッタ31は、欠陥修正を行なう前に基板14などの上に霧粒子が噴出されないように塗布ノズル30から噴出される霧粒子を受けるものである。修正開始時にシャッタ31を開放して欠陥修正を行ない、修正完了と同時にシャッタ31を塗布ノズル30の先端と基板14の間に移動させ、シャッタ31で霧粒子を受ける。また、Zステージ12には、微粒子堆積装置5と基板加熱部6を搭載したステージ32も搭載されている。ステージ32は、修正時に微粒子堆積装置5と基板加熱部6を欠陥部13aに沿って水平方向に微少量移動させる。なお、XYステージ10の移動によって欠陥修正を行なう場合は、ステージ32を省略して、微粒子堆積装置5と基板加熱部6をZステージ12に搭載する。
【0028】
図3は、マスク40を作成するための低粘着フィルム41の構成を示す断面図である。図3において、低粘着フィルム41は、基材41aと、基材41aの一方面に形成された低粘着層41bと、低粘着層41bを保護する保護フィルム41cの3層構造を成す。基材41aは、たとえば、薄膜のポリイミドフィルムである。また、粘着層41bは、たとえば、シリコン系粘着剤である。低粘着フィルム41は、マスク40として使用するのに十分な幅があればよく、たとえば、5mm〜10mm程度にスリットしたロール状フィルムを使用する。
【0029】
図4は、マスク40の作成方法を示す断面図である。図4において、レーザ部4は、観察光学系2の下端に固定した対物レンズ2aを介して基材41a側から低粘着フィルム41にレーザ光を照射し、低粘着フィルム41に穴41dを形成する。この穴41dは、マスク40の孔40aとなる。穴41dの大きさは、たとえばレーザ部4に内蔵される可変スリット(図示せず)により決定され、穴41dの形状は対物レンズ2aによって集光されたレーザ光のスポット形状になる。レーザ部4としては、YAG第3高調波レーザやYAG第4高調波レーザ、あるいはエキシマレーザなどのパルスレーザを用いる。
【0030】
図4では、保護フィルム41cが付いた状態でレーザ部4による穴41dの加工を行なっており、穴41dの底が粘着層41bを貫通して保護フィルム41cに到達するまでレーザ光が照射される。保護フィルム41cが付いた状態で保護フィルム41cを貫通する手前までレーザ加工を行なうので、レーザ加工時に発生する加工ごみが下方に落下することはない。下方に加工ごみが落下しても構わない場合には、穴41dが保護フィルム41cを貫通しても構わない。
【0031】
低粘着フィルム41に穴41dを開ける場合、欠陥部13aにレーザ光が照射されないように、欠陥部13aの位置から離れた位置で開けてもよいし、あるいは、たとえば低粘着フィルム41と基板14の間にレーザ光を遮蔽する遮蔽板42を挿入してよい。このように、本実施の形態1では、欠陥部13aにフィルム41を密着させた状態でレーザ加工を行わないので、レーザ光によって欠陥部13aやその近傍の電極、絶縁膜などを損傷することはない。
【0032】
さらに、レーザ光を用いて低粘着フィルム41に穴41dを開ける場合、穴41dの長さは、欠陥部13aの両端に位置する正常な電極13にも修正液20を塗布できるように、欠陥部13aよりも長く加工する。これにより、欠陥部13aに塗布された修正液20からなる修正層の抵抗値を低減化することができるとともに、修正層の密着性を高めることができる。
【0033】
穴41dの形成が終了した時点では、穴41d周りの基材41a上面には、基材41aが除去(レーザアブレーション)された際に発生したごみが飛散しており、ごみの除去のため、穴41dを中心としたその周りの広い範囲を弱いパワーでレーザ照射する工程を設けてもよい。このとき、YAG第2高調波レーザに切り替えて、弱いレーザパワーで穴41dを中心とする広い範囲を照射すれば、加工ごみのみを除去することも可能であり、新たにごみが発生することを防止することができる。
【0034】
穴41dの加工が終了した時点で、保護フィルム41cは粘着層41bから剥離され、図5に示すように、基材41aと低粘着層41bと孔40aからなるマスク40が形成される。次に、画像処理結果に基づいて基板14とマスク40とを相対移動させ、マスク40の孔40aを欠陥部13aの上方に位置決めする。次に、マスク40を下降させて、マスク40の低粘着層41bを基板14の表面に密着させる。
【0035】
図6(a)は基板14の表面にマスク40が密着された状態を示す平面図であり、図6(b)は図6(a)のVIB−VIB線断面図である。マスク40の孔40aは、電極13と略同じ幅で欠陥部13aよりも長い長方形に形成されており、欠陥部13aとその両側の電極13の正常部13bが孔40aから露出している。マスク40は、長方形の孔40aの中心が電極13の欠陥部13aの中心に位置し、孔40aの長さ方向が電極13の延在方向に一致するようにして基板14上に配置される。
【0036】
このとき、基板14上には電極13などによる凹凸があるので、マスク40を下降させて基板14に付着させただけでは、マスク40と基板1の間に隙間が発生する可能性もある。そこで、図7に示すように、マスク40の孔40aを含み、孔40aよりも広い範囲を押圧部材43で押圧して、マスク40と基板14の密着性を高める。押圧部材43は、たとえば、図2のステージ32に搭載されたシリンダ44の駆動軸44aの下端に固定される。シリンダ44は、駆動軸44aを伸縮させて押圧部材43をマスク40に押圧する。シリンダ44が駆動軸44aを伸ばす力は所定値以下に制限されている。したがって、過大な力で押圧部材43がマスク40に押圧されてマスク40や基板14が破壊されることはない。なお、基板14の凹凸に合わせてマスク40が密着し易いように、押圧部材43のマスク40と接する面に弾性材料(たとえば、シリコンゴムなど)の層を形成してもよい。
【0037】
その後、図8に示すように、塗布ノズル30の先端を修正対象の電極13の延在方向に移動させながら塗布ノズル30の先端から霧状の修正液20を噴射し、マスク40の孔40aの一方側の縁から他方側の縁にかけて修正液20を堆積させる。この場合、欠陥部13aに付着した修正液20の膜厚が薄ければ、塗布動作を複数回実施すればよい。
【0038】
このとき、低粘着層41bによってマスク40と基板14は隙間なく密着しているので、修正液20やその溶媒がマスク40と基板14の隙間に侵入するのを防止することができ、欠陥部13aの周辺部が修正液20やその溶媒で汚染されるのを防止することができる。
【0039】
次に、欠陥部13aに塗布された修正液20には、修正液20の仕様に合わせて紫外線硬化処理、あるいは基板加熱部6による加熱硬化処理(または乾燥処理)を施し、その後でマスク40を基板1から剥離すれば、修正作業が終了する。なお、低粘着フィルム41の低粘着層41bは一般に知られる粘着フィルムよりも粘着力が小さく(たとえば、1/10以下)、剥離も容易である。また、低粘着フィルム41の基材41aや低粘着層41bが薄いものの方が穴41dを開ける際に加工し易く、修正液20を塗布する場合でも修正液20が孔40aに入り易い。たとえば、基材41aの膜厚は10〜25μmであり、低粘着層41bの膜厚は5〜10μmである。
【0040】
図9(a)は修正された電極13を示す平面図であり、図9(b)は図9(a)のIXB−IXB線断面図である。図9(a)(b)において、電極13の欠陥部13aを覆うようにして導電性の修正層45が形成され、図中において左右に分断されていた電極13が修正層45で接続される。なお、必要があれば、マスク40を剥離した状態で、修正層45を局所加熱してもよいし、あるいは、基板14全体を炉に入れて本焼成を行なってもよい。
【0041】
この実施の形態1では、低粘着フィルム41に穴41dを開けてマスク40を形成し、そのマスク40を用いて電極13のオープン欠陥部13aを修正するので、非常に細い電極13の欠陥部13aを修正することができる。たとえば、液晶ディスプレイのTFT(薄膜トランジスタ)パネルの電極のように10μm以下の電極の欠陥部も修正することができる。また、電極以外では、液晶カラーフィルタのブラックマトリックスは高精細化に伴い線幅が20μmを切っており、この修正にも適用可能である。
【0042】
なお、この実施の形態1では、修正液20を霧状にして欠陥部13aに噴出することにより修正液20を欠陥部13aに塗布したが、これに限るものではなく、図10(a)に示すように、塗布針46の先端に修正液20を付着させ、その塗布針46の先端をマスク40の孔40aおよびその縁に接触させることにより、修正液20を欠陥部13aに塗布してもよいし、図10(b)に示すように、マイクロディスペンサ47を用いて修正液20を孔40aに充填することにより修正液20を欠陥部13aに塗布してもよいし、図示しないが、インクジェットのようにノズルから修正液20の液滴を孔40aに飛ばすことにより修正液20を欠陥部13aに塗布してもよい。
【0043】
また、図11に示すように、球面の押圧面48aを有する押圧部材48でマスク40を基板14に押圧してもよい。この場合は、押圧面48aが調心性を持つので、押圧部材48の中心と孔40aの中心を一致させることができる。また、図12に示すように、回転自在に支持されたローラ49でマスク40の表面を擦るようにして、マスク40を基板14に押圧してもよい。また、基板14の凹凸に合わせてマスク40が密着し易いように、押圧面48aやローラ49の外周面のマスク40と接する面に弾性材料(たとえば、シリコンゴムなど)の層を形成してもよい。また、図10(a)で示した塗布針46を押圧部材として用いてもよい。この場合、先端面が孔40aよりも十分大きな塗布針46を使用し、修正液20を付着させずに先端面を孔40aを含む範囲に押圧する。また、図11で示したように、塗布針46の先端を球面に加工してもよい。
【0044】
[実施の形態2]
図13は、この発明の実施の形態2によるパターン修正装置の構成を示す図である。図13において、このパターン修正装置では、XYステージは、Xステージ50とYステージ51とが分離して独立して移動するガントリー構造であり、基板14はチャック部11に固定される。また、Yステージ51と平行に移動可能な副Yステージ52がYステージ51に固定され、副Yステージ52上には上下方向に進退可能な副Zステージ53が搭載される。
【0045】
副Zステージ53には、低粘着フィルム54が巻回されたフィルム供給リール55と、低粘着フィルム54を巻き取る巻き取りリール56とが基板14を挟んで左右に配置される。低粘着フィルム54は、基材と、基材の表面に形成された低粘着層とからなり、低粘着層側を基板14に向けて配置される。低粘着フィルム54は、欠陥部13a近傍を覆う程度の幅があれば良く、たとえば10mm前後のものを使用する。
【0046】
副Yステージ52は、観察光学系2の直下に低粘着フィルム54を移動させたり、観察光学系2から低粘着フィルム54を遠ざける役目を持つ。副Zステージ53は、低粘着フィルム54を下降させて基板14の表面に密着させたり、低粘着フィルム54を上昇させて基板14の表面から剥離させる。また、ステージ52,53は、基板14の出し入れ時に低粘着フィルム54が干渉しないように、低粘着フィルム54を退避させる。
【0047】
低粘着フィルム54に孔54aを開ける場合は、リール55,56を制御して基板14の上方にフィルム54を張った状態でフィルム54の表面にレーザ光を焦点を合わせ、レーザ光を照射して孔54aを開ける。このとき、図4で示したようにフィルム54と基板14の間に遮蔽板42が挿入され、欠陥部13aにレーザ光が照射されることが防止される。また、欠陥部13aにレーザ光が照射されないように、基板14から離れた位置で孔54aを開けてもよい。
【0048】
低粘着フィルム54を基板14の表面に密着させる場合、まずフィルム54の孔54aの直下に欠陥部13aを位置決めする。次に、リール55,56を制御して、フィルム54が基板14に触れない程度にフィルム54をU字形状に垂らす。その状態で、副Zステージ53を下降させると、フィルム54が薄くて基板14にならう性質があるので、図14に示すように、フィルム54は欠陥部13aを含む範囲で基板14の表面に接触して付着する。フィルム54が基板14に接触して付着すれば、図7、図8および図9に示したように欠陥部13aの修正を行なうことができる。フィルム54を欠陥部13aから剥がす場合は、副Zステージ53を上昇させればよい。
【0049】
この実施の形態2でも、実施の形態1と同じ効果が得られる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の実施の形態1によるパターン修正装置の構成を示す図である。
【図2】図1に示したパターン修正装置の要部を示す断面図である。
【図3】図2に示したマスクを作成するための低粘着フィルムの構成を示す断面図である。
【図4】図3に示した低粘着フィルムに穴を開ける方法を示す図である。
【図5】図2に示したマスクの構成を示す断面図である。
【図6】図5に示したマスクが基板上に貼り付けられた状態を示す図である。
【図7】図6に示したマスクを基板に押圧する方法を示す図である。
【図8】図6に示したマスクを介して欠陥部に修正液を塗布する方法を示す図である。
【図9】欠陥部の修正が終了した状態を示す図である。
【図10】修正液の他の塗布方法を示す断面図である。
【図11】マスクを基板に押圧する他の方法を示す図である。
【図12】マスクを基板に押圧するさらに他の方法を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態2によるパターン修正装置の構成を示す図である。
【図14】図13に示したパターン修正装置の使用方法を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 パターン修正装置、2 観察光学系、3 モニタ、4 カット用レーザ部、5 微粒子堆積装置、6 基板加熱部、7 画像処理部、8 ホストコンピュータ、9 制御用コンピュータ、10 XYステージ、11 チャック部、12 Zステージ、13 電極、13a オープン欠陥部、13b 正常部、14 基板、15 噴霧部、16 減圧部、17 加熱部、18 ヘッド部、19 容器、20 修正液、21 噴霧ノズル、21a 噴出口、21b 吸入口、22 ノズル部、23 集気部、24 排気管、25 外管、26 隙間、27 パイプ、28 ヒータ、29 温度センサ、30 塗布ノズル、31 シャッタ、32 ステージ、40 マスク、40a 孔、41,54 低粘着フィルム、41a 基材、41b 低粘着層、41c 保護フィルム、41d 穴、42 遮蔽板、43,48 押圧部材、44 シリンダ、44a 駆動軸、45 修正層、46 塗布針、47 マイクロディスペンサ、49 ローラ、50 Xステージ、51 Yステージ、52 副Yステージ、53 副Zステージ、55 フィルム供給リール、56 巻き取りリール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正方法であって、
レーザ光が前記欠陥部に照射されない状態で、基材と該基材の表面に形成された低粘着層とを含むフィルムに前記レーザ光を照射して前記欠陥部に応じた形状の孔を前記フィルムに開ける第1のステップと、
前記フィルムの孔を前記欠陥部に位置合わせして前記フィルムの低粘着層を前記基板の表面に密着させる第2のステップと、
前記フィルムの孔を含み、該孔よりも広い範囲で前記フィルムを前記基板に押圧する第3のステップと、
前記フィルムの孔を介して前記欠陥部に修正液を充填する第4のステップと、
前記欠陥部に充填された修正液を硬化させる第5のステップと、
前記フィルムを前記基板から剥離する第6のステップとを含む、パターン修正方法。
【請求項2】
前記フィルムは、さらに、前記低粘着層を保護する保護材を含み、
前記第1のステップでは、前記孔は前記基材および前記低粘着層を貫通し、前記保護材を貫通しないように形成され、
前記第2のステップでは、前記保護材を前記低粘着層から剥離して除去した後に、前記フィルムの孔を前記欠陥部に位置合わせする、請求項1に記載のパターン修正方法。
【請求項3】
基板上に形成された微細パターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、
レーザ光が前記欠陥部に照射されない状態で、基材と該基材の表面に形成された低粘着層とを含むフィルムに前記レーザ光を照射して前記欠陥部に応じた形状の孔を開けるレーザ光照射手段と、
前記フィルムの孔を前記欠陥部に位置合わせして前記フィルムの低粘着層を前記基板の表面に密着させるフィルム配置手段と、
前記フィルムの孔を含み、該孔よりも広い範囲で前記フィルムを前記基板に押圧する押圧手段と、
前記フィルムの孔を介して前記欠陥部に修正液を充填する修正液充填手段と、
前記欠陥部に塗布した修正液を硬化させる修正液硬化手段と、
前記フィルムを前記基板から剥離するフィルム剥離手段とを備える、パターン修正装置。
【請求項4】
前記フィルムは、さらに、前記低粘着層を保護する保護材を含み、
前記レーザ光照射手段は、前記孔が前記基材および前記低粘着層を貫通し、前記保護材を貫通しないようにして前記孔を形成し、
前記フィルム配置手段は、前記保護材が除去された前記フィルムの低粘着層を前記基板の表面に密着させる、請求項3に記載のパターン修正装置。
【請求項5】
前記押圧手段は、押圧力を所定値以下に制限する制限手段を含む、請求項3または請求項4に記載のパターン修正装置。
【請求項6】
前記押圧手段は、押圧面が球面の押圧部材を含む、請求項3から請求項5までのいずれかに記載のパターン修正装置。
【請求項7】
前記押圧手段は、回転自在に支持されたローラで前記フィルムの表面を擦ることにより、前記フィルムを前記基板に押圧する、請求項3から請求項5までのいずれかに記載のパターン修正装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−333863(P2007−333863A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163456(P2006−163456)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】