説明

パターン修正装置およびパターン修正方法

【課題】より低出力で短いサイクルタイムでパターンを修正することが可能なパターン修正装置、およびパターン修正方法を提供する。
【解決手段】本発明のパターン修正装置は、基板の表面上に形成されたパターンの欠陥部24aを修正するパターン修正装置である。基材の一方の主表面上に、パターンを形成する第1の金属膜と加熱により溶融して合金層を形成して固着することが可能な第2の金属膜27が少なくとも1層形成された転写部材15と、第2の金属膜27を、欠陥部24aに対峙する転写部材供給手段9と、第2の金属膜27を欠陥部24aに密着するために、転写部材15の、第2の金属膜27が形成された一方の主表面に対向する他方の主表面側から転写部材15を基板に向けて押圧する押圧手段10とを備えている。上記押圧手段10は、第2の金属膜27が欠陥部24aに密着された状態で、転写部材15に対して超音波振動を与え第2の金属膜27を加熱する超音波振動子10aを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン修正装置およびパターン修正方法に関し、特に、フラットパネルディスプレイなどのパターンに発生する欠陥部を修正するパターン修正装置およびその修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイの大型化、高精細化に伴い、ガラス基板の表面上に形成されたパターン、たとえば配線に、欠損などの欠陥部が形成される確率が高くなっている。そこで、歩留まりの向上を図るため欠陥部を修正する方法が提案されている。
【0003】
たとえば、液晶ディスプレイのガラス基板の表面上には微細なパターン、たとえば配線が形成されている。この配線の一部が欠損により断線している場合、以下のような方法で修正が行なわれている。たとえば、導電性の修正ペースト(修正液)を欠損により断線している欠陥部に塗布してから焼成する方法がある。また、レーザCVD装置を用いてレーザ光を照射された位置に、材料ガス中に含まれる金属を析出させることにより欠陥部を修正する方法がある。あるいは、レーザ光を透過可能な透明基材の一方の主表面上に金属膜を形成した転写部材を欠陥部に対向させた状態で、レーザ光を照射することにより、金属膜の一部を昇華させて欠陥部にスパッタ転写して修正する方法がある。
【0004】
その他たとえば、転写部材である透明基材の、一方の主表面上に形成された金属膜を、欠陥部に密着させた状態で、当該密着された金属膜にレーザ光を照射して加熱することにより、転写部材の金属膜と、配線の金属膜との合金層を形成し、当該合金層を欠陥部に転写することにより修正するパターン修正方法もある。
【0005】
上述した、導電性の修正ペースト(修正液)を欠損により断線している欠陥部に塗布してから焼成する方法では、たとえば、特開平8−203898号公報(特許文献1)に開示されているように、有機金属溶液をディスペンサで配線の欠陥部に滴下した後で、レーザ光を照射させることにより焼成する。このことにより、有機金属化合物を分解し、配線の欠陥部に金属膜を析出させて、欠陥部を修正させる。
【0006】
また、レーザCVD装置(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)による欠陥部の修正方法では、たとえば、特開2002−131888号公報(特許文献2)に開示されているように、金属原料ガスにレーザ光を照射することにより金属原料ガスを分解して、生成した金属(タングステン)を、配線の欠陥部に被着させる。
【0007】
転写による修正では、たとえば、特開2000−31013号公報(特許文献3)に開示されているように、導電性の金属膜を一方の主表面上に形成させた転写板を欠陥部と対向するように重ね合わせ、転写板の背後からレーザ光を照射して導電性の金属膜を欠陥部にスパッタ転写することにより、欠陥部を修正させる。
【0008】
あるいは、特開2007−19105号公報(特許文献4)に示すように、基材と熱溶融層と微粒金属層(たとえば金、銀、アルミ、パラジウムなどのナノサイズ微粒子を含むペーストを塗布して、溶媒成分を揮発させた金属層)からなる積層材にレーザ光を照射して、熱溶融層および微粒金属層を断線している欠陥部に転写する。その後、熱溶融層に再度レーザ光を照射して熱分解除去し、さらに微粒金属層にレーザ光を照射して溶融焼成することで、欠陥部の導通を確保する。
【0009】
さらに特開2009−251121号公報(特許文献5)に開示されるパターン修正装置は、以下の構成を備えている。転写部材は、耐熱性があり加熱用レーザ光を透過可能な、たとえばポリイミドフィルムからなる基材の一方の主表面上に、加熱により溶融して配線材料(たとえばアルミニウム−ネオジム、アルミニウム−銅などのアルミ合金)と合金層を形成することが容易な金属膜が形成された構成である。この金属膜はたとえば亜鉛、鉛、亜鉛アルミ合金、金錫合金などからなる群から選択される層が1層ないし複数積層された構造である。当該金属膜は、転写部材の一方の主表面上に形成された状態においても導電性を有する。転写部材は、配線の欠陥部を有する基板に対して相対移動したり、当該基板の主表面に対して交差する方向(たとえば上下方向)に位置決めする、位置決め制御機構に支持される。転写部材の金属膜が、パターンの欠陥部に密着した状態で、当該欠陥部に密着した金属膜をレーザ光で加熱する。このようにして当該金属膜を溶融させて合金層を形成することにより、当該欠陥部にパターンが転写される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−203898号公報
【特許文献2】特開2002−131888号公報
【特許文献3】特開2000−31013号公報
【特許文献4】特開2007−19105号公報
【特許文献5】特開2009−251121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示されている、有機金属溶液をディスペンサで配線の欠陥部に滴下した後で、レーザ光を照射させることにより焼成する修正方法では、配線が微細になると、先端が数μmの内径とされたディスペンサを用いる必要がある。この場合、ディスペンサの先端が詰まりやすく、微細な配線を描画するための制御が難しくなる。また、有機金属溶液を塗布した後で焼成すると、修正部の膜厚は1/10程度まで収縮して非常に薄くなるため、欠陥部の段差部でクラックを生じやすく、低抵抗を得るのが難しい。
【0012】
特許文献2に開示されている、レーザCVD装置を用いた修正方法では、複数の原料ガスを配線の欠陥部が含まれる局所空間に供給し、また、排出を行なう手段が必要となり、装置構成が複雑で装置価格が高価となっている。また、修正材料として使用されるタングステンは、融点が3422℃と高いため、配線材料と合金を作り難く、配線材料との接触抵抗が大きくなって修正した部分の電気抵抗が高くなる傾向がある。このため、電気抵抗を低くするためには、使用ガスの濃度を濃くしたり、レーザ走査の速度を遅くしたり、あるいは、複数回積層させて膜厚を厚くする必要がある。
【0013】
特許文献3に開示されている、転写部材の金属膜にレーザ光を照射して、金属膜を溶融飛散(レーザスパッタリング)させて断線している欠陥部に転写させる修正方法では、1回の修正で得られる膜厚は非常に薄いため、修正抵抗を低くするためには、転写部材の位置を変えながら同一の欠陥部に対して複数回繰り返し転写を行なって金属膜を積層して膜厚を増やす必要がある。
【0014】
また、特許文献4に開示されている、基材と熱溶融層と微粒金属層からなる積層材にレーザ光を照射して、熱溶融層および微粒金属層を断線している欠陥部に転写後、熱溶融層にレーザ光を照射して熱分解除去し、さらに微粒金属層にレーザ光を照射して溶融焼成する修正方法では、以下の問題がある。すなわち、欠陥部に転写する工程だけでなく、欠陥部に一緒に転写された熱溶融層を除去する工程と、微粒金属層を溶融焼成する工程とが必要なため、修正工程が煩雑で修正時間が長くなることが想定される。
【0015】
特許文献5に開示されるパターン修正装置は、1回の処理にて断線しているパターン(配線)の欠陥部に対して均一な膜厚の金属薄膜の修正層を短時間に形成することができる。しかし当該パターン修正装置は、転写部材や、転写部材の金属膜と欠陥部とを密着させる押圧部材を透過するように(転写部材や押圧部材の上側から)レーザ光が照射される。このため転写部材を構成する基材や押圧部材は、レーザ光を透過する必要がある。このため基材や押圧部材の材質の選択肢や厚みの範囲が制限される。
【0016】
また特許文献5の装置のようにレーザ光を用いる場合、修正するパターンの材質に応じて、レーザ光の出力を調整する必要がある場合がある。パターンを転写する領域(幅)を広くする場合、照射するレーザの平面視における径を大きくする必要がある。しかし当該径を2倍にするためには、レーザ光の出力を4倍にする必要があるため、レーザ光の照射能力を高める必要がある。また当該径を変更せずに照射する領域を広くする場合には、レーザ光を移動させ、スキャン回数を増やす必要がある。この場合、当該処理のサイクルタイムが長くなる。
【0017】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものである。その目的は、より低出力で短いサイクルタイムでパターンを修正することが可能なパターン修正装置、およびパターン修正方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るパターン修正装置は、基板の表面上に形成されたパターンの欠陥部を修正するパターン修正装置である。基材の一方の主表面上に、パターンを形成する第1の金属膜と加熱により溶融して合金層を形成して固着することが可能な第2の金属膜が少なくとも1層形成された転写部材と、第2の金属膜を、欠陥部に対峙する転写部材供給手段と、第2の金属膜を欠陥部に密着するために、転写部材の、第2の金属膜が形成された一方の主表面に対向する他方の主表面側から転写部材を基板に向けて押圧する押圧手段とを備えている。上記押圧手段は、第2の金属膜が欠陥部に密着された状態で、転写部材に対して超音波振動を与え第2の金属膜を加熱する超音波振動子を含む。
【0019】
ここで主表面とは、表面のうちもっとも面積の大きい主要な面をいう。上記パターン修正装置は、元々のパターンを形成する第1の金属膜が断線している欠陥部に対して、転写部材に形成された第2の金属膜を、押圧手段を用いて密着する。この状態で、欠陥部に密着された第2の金属膜を超音波振動により加熱する。そして第1の金属膜と第2の金属膜との密着境界部(密着境界面)でそれらの金属が溶融した合金層を形成する。この合金層がパターンの欠陥部を充填することにより、基板の表面上に形成されたパターンが修正(パターン転写)される。
【0020】
本発明のパターン修正装置ではレーザ光の代わりに超音波振動を用いるため、上記(加熱のために用いる)レーザ光を調整する複雑な光学系が備えられる必要がない。超音波振動子が含まれていれば十分である。このため当該パターン修正装置の設備構成を簡略化することができる。またパターン転写の処理に必要な出力を低減することもできる。したがって当該設備のコストを下げることができる。
【0021】
また、転写部材を構成する基材や押圧部材がレーザ光を透過する必要がない。このため基材に用いる材料の選択肢を広くすることができる。
【0022】
また超音波振動を用いて第2の金属膜を加熱溶融すれば、レーザ光を用いて第2の金属膜を加熱溶融する場合に比べ、1回の処理により加熱溶融される第2の金属膜の範囲が広くなる。このためレーザ光を用いた処理に比べて、さらに1回の処理でパターン転写できる領域が広くなる。つまり処理のサイクルタイムをより短縮することができる。
【0023】
上記のパターン修正装置において、押圧手段の、転写部材と対向する端部の形状は、転写部材の主表面に沿うように延在する平面形状であることが好ましい。このようにすれば、押圧手段の当該端部が転写部材と接触する面積が広くなる。このため1回の処理によりパターン転写することができる領域を広くすることができる。つまりサイクルタイムの更なる短縮に繋がる。
【0024】
上記のパターン修正装置において、転写部材と対向する端部の形状は、転写部材側に凸の曲面形状であってもよい。つまり当該端部がたとえば球面形状をなしていてもよい。
【0025】
この場合、当該端部が転写部材を押圧する、単位面積あたりの圧力が大きくなる。このため押圧手段が転写部材を押圧する力が小さくても、押圧手段として転写部材(第2の金属膜)と欠陥部とを密着する力を十分に与えることができる。つまり当該装置の駆動に用いる出力を小さくすることができる。
【0026】
上記のパターン修正装置において、超音波振動子は、転写部材の主表面に交差する方向に振動することが好ましい。ただし上記超音波振動子は、転写部材の主表面に沿う方向に振動してもよい。
【0027】
上記の主表面に交差する方向とは転写部材の主表面に略垂直な方向を意味し、上記の主表面に沿う方向とは転写部材の主表面に略平行な方向を意味する。
【0028】
上記の振動方向が略垂直な方向である場合には、比較的微細な面積に対して、より小さい力でパターン転写を行なうことができる。また振動方向が略平行な方向である場合には、1回の処理でより広い面積に対してパターン転写することができる。
【0029】
本発明に係るパターン修正方法は、基板の表面上に形成されたパターンの欠陥部を修正するパターン修正方法である。基材の一方の主表面上に、パターンを形成する第1の金属膜と加熱により溶融して合金層を形成して固着することが可能な第2の金属膜が少なくとも1層形成された転写部材を欠陥部に対峙する工程と、第2の金属膜を欠陥部に密着する工程と、第2の金属膜が第1の金属膜を含む欠陥部に密着された状態で、欠陥部と密着した第2の金属膜に振動を与える工程とを備える。上記振動を与える工程では、振動により第2の金属膜と第1の金属膜との密着境界部で、第2の金属膜と第1の金属膜とを溶融して第2の金属膜と第1の金属膜との合金層が形成されることにより固着される。上記振動とはたとえば超音波振動である。たとえば上記のパターン修正装置を用いて当該パターン修正方法が用いられる。
【発明の効果】
【0030】
上記のように、本発明の超音波振動を利用して金属材料を溶融させるパターン修正装置を用いれば、レーザ光を用いて金属材料を溶融させるパターン修正装置に比べて、簡素な設備で広い範囲を1度にパターン転写できる。このため設備のコストを低減することができる。超音波振動子の端部の形状や、超音波振動子の振動する方向を変化させることにより、より広い範囲を1度に処理することができたり、より小さい力で押圧することができるなどの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のパターン修正装置の概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る、図1に示すパターン修正装置の主要部分の内部構成および、水平方向に振動する振動子を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る、図1に示すパターン修正装置の主要部分の内部構成および、垂直方向に振動する振動子を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るパターン修正方法の各工程の手順を示すフローチャートである。
【図5】パターンの一部が欠損により断線している欠陥部を有するパターン部品を示す概略図である。
【図6】(A)押圧部材および転写部材を、パターン部品の欠陥部を含む範囲に対峙させた状態を示す概略図である。(B)押圧部材を下降させて転写部材をその下方に押圧して、転写部材をパターン部品の欠陥部を含む範囲に密着させた状態を示す概略図である。(C)欠陥部の修正を終えた後のパターンの状態を示す概略図である。
【図7】パターンの欠陥部に、転写部材の表面に形成された第2の金属膜と第1の金属膜との合金層である修正層が転写された状態のパターン部品を示す概略図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る転写部材を、基材の第2の金属膜が形成されていない主表面上から見た状態を示す概略図である。
【図9】図8の線分IX−IXにおける断面模式図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る、図1に示すパターン修正装置の主要部分の内部構成および、垂直方向に振動する振動子を示す概略図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る、図1に示すパターン修正装置の主要部分の内部構成および、水平方向に振動する振動子を示す概略図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る転写部材の一例の、図9と同様の断面模式図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る転写部材の、図12とは異なる例の、図9と同様の断面模式図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る転写部材の、図12および図13とはさらに異なる例の、図9と同様の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態が説明される。なお、各実施の形態において、同一の機能を果たす部位には同一の参照符号が付されており、その説明は、特に必要がなければ、繰り返さない。
【0033】
(実施の形態1)
最初に本発明における、基板の一方の主表面上に形成されたパターン、たとえば配線の欠陥部を修正するパターン修正装置について説明する。図1に示すパターン修正装置1は、欠陥部の修正が必要なパターン部品2を搭載するXYステージ3と、Zステージ4と、パターン部品2の表面を観察する観察光学系5と、観察された画像を映し出すモニタ6とを備える。レーザ光源としては、観察光学系5を介してレーザ光を照射し不要部をカット、あるいはレーザアブレーションするレーザ光源7を備える。
【0034】
さらに、パターン部品2の欠陥部の修正に使用する転写部材15をパターン部品2上でXY方向に相対移動あるいは、Z軸方向に移動可能な転写部材供給手段9、転写部材15をパターン部品2の欠陥部に押圧する押圧手段10とを備える。
【0035】
また、欠陥部を認識する画像処理部11と、装置全体を制御するホストコンピュータ12と、装置機構部の動作を制御する制御用コンピュータ13とを備える。なお、転写部材供給手段9には、図1に示さない小型のXYZステージが内蔵され、たとえば、Zステージ4を固定する部材に固定される。
【0036】
図2に示すように、パターン、たとえば配線24の一部に欠損により断線している欠陥部24aが存在するパターン部品2は、チャック14に固定され、そのチャック14はXYステージ3によりXY方向に沿った方向に移動可能とされる。なお、パターン部品2が大型になる場合には、X軸とY軸とを重ねたXYステージ3の構成に代えて、X軸とY軸とがそれぞれ独立駆動可能なガントリタイプのステージを採用して小スペース化が図られる。
【0037】
なお、ここでX軸の方向とは、図1に示すパターン修正装置1の左右に延びる方向を指し、Y軸の方向とは、図1に示すパターン修正装置1の手前から奥に延びる奥行き方向を指す。したがって、XY方向とは、図1に示すパターン修正装置1の水平面の方向に沿った方向を指す。
【0038】
レーザ光源7としては、YAGパルス発振レーザ、たとえば第1、第2、第3高調波の切り替えが可能なレーザ光を照射可能な光源が、図2に示すように、観察光学系5の上部に搭載される。
【0039】
レーザ光源7から発射されたレーザ光は、図2に示す観察光学系の内部のビームスプリッタ、スリット機構、ビームスプリッタ、結像レンズ、ビームスプリッタ、対物レンズを通過し、パターン部品2または転写部材15上に照射される。なお図2に示すように、押圧手段10は、転写部材15をパターン部品2の欠陥部に対して押圧した状態で振動を与える振動子10aと、転写部材15に接触しながら転写部材15とパターン部品2とを密着するための力を与える端部10bとからなる。
【0040】
端部10bの先端部(図2における最下部)の形状は、転写部材15の主表面に沿うように延在する平面形状となっている。また振動子10aが転写部材15やパターン部品2に与える振動は、たとえば超音波の振動である。
【0041】
なお図2に示すように、振動子10a(超音波振動子)が転写部材15やパターン部品2に与える振動は、図2の左右方向すなわち転写部材の主表面に沿う方向(水平方向)であることが好ましい。あるいは図3に示すように、振動子10a(超音波振動子)が転写部材15やパターン部品2に与える振動は、図3の上下方向すなわち転写部材の主表面に交差する方向(垂直方向)であってもよい。
【0042】
ここで、本実施の形態におけるパターン修正装置を用いた、修正方法について説明する。
【0043】
図4は、基板の表面上に形成された、たとえば配線24(図2参照)などのパターンの欠陥部24aを修正する方法を示すフローチャートである。図4に示すようにまず、修正が必要な基板の、欠陥部を観察する工程(S10)で、修正範囲(転写範囲)を決定する。その後、欠陥部上に転写部材を配置する工程(S20)、欠陥部に密着する工程(S30)、振動を与える工程(S40)を経て最後に、転写部材を除去する工程(S50)を行なえば、欠陥部の修正が完了する。以下、上述した各工程について、より詳細に説明する。
【0044】
まず、欠陥部を観察する工程(S10)を実施する。具体的には、パターン、たとえば配線24(図2参照)の欠陥部の位置情報を元に、欠陥部の位置に移動させた観察光学系5を用いて欠陥を観察、確認する工程である。この工程で、修正に必要な転写範囲を決定する。また、必要があれば、修正が容易になるように、加工用のレーザ光源7等を用いてレーザアブレーションあるいはカットすることにより、欠陥部の整形を行なってもよい。
【0045】
図5に示すパターン部品2は、基板23とその表面上に形成されたパターンである、配線24から構成される。図5に示すように、配線24には、その一部が欠損により断線して途切れている領域である欠陥部24aが存在する。パターン部品2は、たとえば液晶パネルのTFT基板である。この場合、基板23はガラス、配線24は、第1の金属膜、たとえばAl−NdやAl−Cuなどのアルミ合金からなる金属薄膜を微細線状に形成させたものとなる。なお配線24はたとえばシグナル(データ)線やゲート線などである。
【0046】
パターン部品2がTFT基板の場合、配線24の上部に絶縁膜が形成されるため、絶縁膜を付ける前の状態で欠陥部24aの修正を行なう。なお、配線24を形成後、時間と共に配線24の表面が酸化する場合も想定されるが、その場合には、欠陥部24aを含む配線24の表面をレーザアブレーションすることにより、酸化された層を除去してもよい。
欠陥部24aの導通を確保するためには、欠陥部24aを含み、その両端の正常な配線24にも重なるように導電性を有する修正部材を固着させる修正が必要となる。そのための準備として次に、転写部材を配置する工程(S20)を実施する。具体的には、転写部材15を欠陥部24a上に対峙するように重ね合わせる工程である。
【0047】
後に詳述するが、転写部材15は基材26と、その一方の主表面上に形成された第2の金属膜27とから構成される。ここで第2の金属膜27とは、配線24を形成する第1の金属膜と加熱により溶融して合金層を形成して固着することが可能な金属材料からなる薄膜である。
【0048】
図6(A)に示すように、転写部材15の基材26の一方の主表面上に形成させた第2の金属膜27を、パターン部品2の基板23の表面上に形成された配線24上に発生した、欠陥部24aを含む範囲に対峙させる。ここで転写部材15の第2の金属膜27を基板23の欠陥部24aに正しく対峙するために、図2や図3に示す転写部材供給手段9による位置あわせがなされる。転写部材15は位置あわせがなされたところでその位置を固定される。
【0049】
次に欠陥部に密着する工程(S30)を実施する。具体的には、先のパターン修正装置1に備えられ、押圧手段10を用いて、転写部材15の基材26の一方の主表面上に形成させた第2の金属膜27に対向する他方の主表面の方向から、パターン部品2側に押圧することにより、第2の金属膜27が配線24の欠陥部24aに密着される工程である。
【0050】
具体的には、図6(B)に示すように押圧手段10の端部10bを、たとえば転写部材15の基材26の上方から下降させる。つまり押圧手段10が転写部材15に圧力を与える方向は、図2や図3における上側から下側へ向かう方向である。
【0051】
すると、端部10bが転写部材15をパターン部品2側に押圧し、第2の金属膜27と、欠陥部24aを含む配線24とを密着することができる。このとき、修正部に気泡が入らないように完全に密着させる方が好ましい。そのためには、押圧手段10(端部10b)の面圧を最適に調整する。
【0052】
通常、欠陥部24aの長さは数十μmと微小であるため、押圧する範囲は必要最低限の範囲にするのがよく、実際に第2の金属膜27が欠陥部24aを含む配線24に密着する領域は直径50μm以上200μm以下、あるいは50μm角以上200μm角以下であることが好ましい。また押圧手段10の端部10bの振動方向(水平方向または垂直方向)や振幅などを考慮して、端部10bの先端部の平面形状のサイズを、たとえば直径数十μm以上数百μm以下の円形状とすることが好ましい。
【0053】
次に振動を与える工程(S40)を実施する。具体的には図6(B)に示すように、図2や図3の矢印に示す押圧方向に一定荷重を与えることにより、端部10bの先端部を用いて転写部材15の第2の金属膜27を欠陥部24aに密着した状態で、超音波振動を行なう。すなわち押圧手段10の振動子10aから、転写部材15と欠陥部24aとの密着している領域に超音波振動を与える。この振動周波数は、一例として25kHz程度とすることができる。
【0054】
このようにすれば、押圧手段10から転写部材15の基材26に加わる摩擦力や変形によって、転写部材15と配線24(欠陥部24aを含む)との密着している領域が発熱する。この発熱により、配線24の第1の金属膜(欠陥部24aを含む)と、第2の金属膜27との密着している領域において、これらの金属膜が溶融して合金層を形成することにより、第1の金属膜と第2の金属膜27とが固着する。
【0055】
以上のようにして第2の金属膜27が欠陥部24aに転写され、パターン修正がなされる。
【0056】
なお、断線している欠陥部24aは、配線24を形成する第1の金属膜が欠落していて、その下部に位置する領域、たとえば基板23を構成するガラスやシリコンオキサイドが露出した状態にある場合もある。この場合、ガラスまたはシリコンオキサイドと転写部材15との密着境界部(密着境界面)で、その密着境界面(配線24の下部に位置するガラスやシリコンオキサイドの表面)に含まれるSi−OHと、転写部材15に形成されている押圧密着させた第2の金属膜27との間で界面反応、たとえばシラノール結合が起こって化学的に強固に固着する。この場合、転写部材15のベースとなる基材26の一方の主表面上に形成される第2の金属膜27の材料として、たとえば亜鉛、亜鉛合金(たとえば亜鉛アルミ合金)、錫、錫合金(たとえば金錫合金)などの低融点金属を用いることが好ましい。なお、シラノール結合の他、界面反応には、たとえば密着境界面の凹凸部にそれぞれの材料が入り込んで固着するアンカー効果も含まれる。
【0057】
したがって、たとえ断線している欠陥部24aが、配線24を形成する第1の金属膜を含まず、基板23が露出した状態であったとしても、基板23を形成する材料と、転写部材15の第2の金属膜27との間でシラノール結合で固着させることにより欠陥部24a内にも第2の金属膜27を転写固着することができる。上述したとおり、基板23の表面層と転写部材15の第2の金属膜27との間での固着の効果は、基板23の表面層がガラスやシリコンオキサイドで形成されている場合に、特に顕著になる。
【0058】
最後に、転写部材を除去する工程(S50)により、パターン部品2に密着した状態の転写部材15を除去する工程を実施する。工程(S50)に係る概略図が図6(C)である。押圧手段10による押圧を解除してから、転写部材15をパターン部品2から上方に剥離退避する。すると図6(C)に示すように、超音波振動により合金層が形成され、金属膜同士が固着された領域に限定して転写部材15の第2の金属膜27が欠陥部24aに転写され、修正層27dが残る。修正層27dは、第2の金属膜27とほぼ同じ膜厚で転写されるので、図6(C)に示すようにたとえ欠陥部24aに段差部が存在しても、修正層27dの膜厚は均一であり、転写と同時に低い電気抵抗で導通が確保される。
【0059】
以上のように、本実施の形態におけるパターン修正装置1を用いれば、転写部材15の基材26の一方の主表面に形成された第2の金属膜27は、欠陥部24aを含む配線24と密着した状態で超音波振動により加熱され、配線24(欠陥部24a)と第2の金属膜27との密着境界面で溶融固着させるか、あるいはシラノール結合により強固に固着させて欠陥修正を行なうことができる。したがって、1回の転写工程でも均一な膜厚の修正層27dを形成して、電気的抵抗をより低くすることが可能である。
一般的には、図7に示す、パターン転写(パターン修正)がなされたパターン部品2が示すように、修正層27dの幅は配線24の幅とほぼ同じ幅となるよう、修正層27dを形成させる。なお、配線24の幅からのはみ出しが許容される場合には、配線24の幅より太くなってもよい。また、配線24の幅より細くなってもよいが、この場合は、修正後の配線24の電気抵抗が設計値以下となるように設定することが好ましい。なお、修正層27dの形状は、転写後、先述したレーザ光源7を用いて整形してもよい。
【0060】
ここで、以上に述べたパターン修正に用いる、基材の一方の主表面上に第2の金属膜が蒸着等により形成された転写部材15について説明する。
【0061】
転写部材15の一例として、たとえば図8および図9を参照して、転写部材15aの基材26の、一方の主表面上の一部の領域のみに第2の金属膜27が形成された構成が考えられる。つまり、基材26の一方の主表面上に形成された第2の金属膜27は、修正に必要な大きさの第2の金属膜27Pを残すように、その周囲の第2の金属膜27を除去して空隙35を形成する。このように第2の金属膜27を部分的に除去することにより、周囲の領域とは空隙35を介して独立した金属膜領域が形成されている。
【0062】
このような構造の転写部材15aを用いる場合、たとえば上記の欠陥部に密着する工程(S30)において少なくとも第2の金属膜27Pが欠陥部24aに密着された状態とすることが好ましい。
【0063】
このように、修正される欠陥部24aの形状に合わせて第2の金属膜27Pが既に形成されており、第2の金属膜27Pの形状がそのまま欠陥部24aに転写される。このため、図7に示す修正層27dの幅が均一となり、修正層27dの品質が向上される。
【0064】
また第2の金属膜27Pは、欠陥部24aを修正する形状に合わせて既に形成されているため、基材26からの剥離性も良好である。このため、修正したパターン部品2(図7参照)の品質および信頼性を向上させることができる。
【0065】
ここで空隙35は、たとえば、YAG第2高調波パルスレーザで第2の金属膜27をレーザアブレーションして除去すれば形成可能である。なお、空隙35の幅は、第2の金属膜27Pを加熱する際に、空隙35の外周にある第2の金属膜27が一緒に加熱されない程度となるように設定されればよい。あるいは第2の金属膜27Pは、たとえば、マスクを介して真空蒸着またはスパッタリング処理を行う方法、あるいは、第2の金属膜27を基材26の一方の主表面上の全面に形成した後で露光、現像処理する方法により形成されてもよい。
【0066】
ところで図9において第2の金属膜27、27Pはたとえば図2や図3、図6のように1層のみからなる構成ではなく、2層構造となっている。具体的にはたとえば、基材26の一方の主表面上から、転写させる金属材料の母材膜27aとなる亜鉛アルミ合金の層(薄膜)と、その酸化防止用金属膜27bとなる金錫合金の層(薄膜)とが、それぞれ真空蒸着法やスパッタリング法などにより積層形成される。
【0067】
酸化防止用金属膜27bとした最表面の薄膜である金錫合金の融点は、母材膜27aとした亜鉛アルミ合金の融点よりも低い。このため、転写時には始めに金錫合金が溶融して、配線24の欠陥部24aとの密着境界面で溶融固着し易くなるので、転写性が良くなって好都合である。
【0068】
次に転写部材15aを構成する基材26および第2の金属膜27、27Pについて詳述する。
【0069】
基材26は450℃程度の耐熱性がある材料からなり、たとえばポリイミド、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂であるシリコーンシートからなるフィルムや、もしくはガラス板などが使用される。
【0070】
基材26の一方の主表面上には、パターン部品2(基板23)の配線24を形成する第1の金属膜(たとえばアルミ合金)と、加熱により容易に溶融して合金を形成することが可能な第2の金属膜27が形成されているが、第2の金属膜27の融点は、基材26の耐熱温度以下であることが好ましい。たとえば、第2の金属膜27の母材膜27aの材料としては比較的融点の低い、亜鉛(融点420℃)、亜鉛合金(例:亜鉛アルミ合金、融点350℃〜400℃)、金合金(例:金錫合金、融点280℃前後)、錫(融点450℃)などの金属材料を用いる。
【0071】
亜鉛合金の一つである亜鉛アルミ合金を母材膜27aとした場合、アルミの含有率などによって溶融温度は異なるが、350℃〜400℃程度のものを使用する。
【0072】
母材膜27aは、一般的に広く使用されている真空蒸着法やスパッタリング法を用いて基材26の一方の主表面上に薄膜形成されるため、薄膜の状態で導電性を有し、低い電気抵抗を示す。母材膜27aは、配線24の欠陥部24aを均一な膜厚の修正層27dとなるように修正することが可能である。修正層27dの電気抵抗をより小さくするためには、母材膜27aの厚みをより厚くすることが好ましい。たとえば、欠陥部24aの修正を行なう対象であるパターン部品2が液晶パネルに使用されるTFT基板の場合には、配線24の厚みはたとえば0.4μmである。この場合、母材膜27aの厚みは0.1μm以上0.5μm以下に設定することが好ましい。なお、欠陥部24aが凹凸面を含む場合には、凹凸面の形状に従って隙間なく母材膜27aを転写するために、母材膜27aの厚みはより薄く、0.1μm以上0.3μm以下に設定することが好ましい。ただし使用環境に応じて母材膜27aの厚みを制御することが好ましい。
【0073】
これに対して酸化防止用金属膜27bは、下部に位置する層である亜鉛アルミ合金の層(母材膜27a)が酸化することを防止する機能を有する。特に、亜鉛アルミ合金は酸化しやすい金属であり、酸化するとシラノール結合が難しくなって、転写性が低下する。このため、酸化防止用金属膜27bが必要となる。酸化防止用金属膜27bとして、たとえば、金、白金、イリジウム、金合金、白金合金、イリジウム合金などが使用できる。したがってたとえば金錫合金を酸化防止用金属膜27bとして用いる。
【0074】
ここでは酸化防止用金属膜27bは、母材膜27aの酸化を抑制させることを主目的にしている。このため、その厚みは母材膜27a(亜鉛アルミ合金)の酸化を抑制させることができる厚みがあればよく、母材膜27aの厚みよりも薄いことが好ましい。具体的にはたとえば0.01μm以上0.03μm以下の膜厚に設定される。
【0075】
また酸化防止用金属膜27bとなる金錫合金の層(薄膜)は、たとえば真空蒸着法やスパッタリング法などにより形成されることが好ましい。
【0076】
次に、本実施の形態の作用効果について説明する。
以上に述べたように、転写部材15と欠陥部24aとの密着している領域を加熱して金属層を溶融させ、合金層を形成して固着転写する手段として、レーザ光の照射の代わりに超音波振動を利用することにより、パターン修正装置1の構成を簡略化することができる。
【0077】
またレーザ光の照射により転写部材15の第2の金属膜27を加熱するわけではないため、基材26がレーザ光を透過する材料からなる必要がない。このため、基材26に用いる材料の選択の幅を広げることができる。
【0078】
また、たとえば図2のように押圧手段10(端部10b)が水平方向に振動する場合には、上記転写部材を配置する工程(S20)において転写部材15の位置を精密に制御したとしても、振動を与える工程(S40)において転写部材15が位置ずれしやすい。しかし端部10bの先端部が平面形状になっているため、端部10bと転写部材15(基材26)との摩擦による発熱が起こりやすくなる。この発熱が転写部材15と欠陥部24aとの密着している領域に伝わることにより、金属膜の転写が容易に行なわれる。
【0079】
たとえば図2のように押圧手段10(端部10b)が水平方向に振動する場合には、押圧手段10が水平方向に変位するため、転写部材15の主表面に沿った1回の処理により、たとえば平面上において数百μm角の、比較的広い領域に対してパターン転写をすることができる。このように広い領域に対してパターン転写をすることができるため、欠陥部全体を修正する処理に要する時間を短縮することができる。
【0080】
これに対して、たとえば図3のように押圧手段10(端部10b)が垂直方向に振動する方法は上記水平方向に振動する場合に比べて比較的微細な面積に対してパターン転写を行なうことができる。また押圧手段10(端部10b)を垂直方向に振動させる方法においては、押圧手段10の押圧方向に対する力が小さくても、端部10bと転写部材15との接触する単位面積あたりの圧力が比較的大きくなる。このため転写部材15と欠陥部24aとを容易に密着させることができる。このためより小さい力の印加によりパターンを容易に転写することができ、パターン修正装置1の駆動に用いる出力を小さくすることができる。
【0081】
ただし上記垂直方向に振動する方法を用いる場合においても、たとえばレーザ光を用いてパターンを転写する場合に比べれば1回の処理で転写できる範囲は広い。つまり垂直方向に振動する方法を用いた場合、パターン修正を行なう領域が広い場合にはパターン転写の処理を複数回行なう必要があるが、パターン修正を行なう領域が比較的狭い場合には1回のパターン転写の処理によりパターン修正が完了する場合もある。このため超音波振動子を用いたパターン転写は、レーザ光による発熱を利用したパターン転写に比べて処理のサイクルタイムを短縮することができる。
【0082】
さらに垂直方向に振動するパターン修正装置1は、水平方向に振動するパターン修正装置1に比べて、その構造を簡単にすることもできる。
【0083】
(実施の形態2)
本実施の形態は、実施の形態1に対して、端部10bの先端部の形状において異なる。具体的には、図10に示すように、上記先端部の形状が転写部材15側に凸の曲面形状、たとえば球面形状となっている。ただし上記先端部は球面形状に限らず、たとえばラグビー球のような、断面が楕円形状である曲面形状であってもよい。
【0084】
本実施の形態は、上記の点においてのみ、実施の形態1と異なる。つまり本実施の形態のパターン修正装置は、上記の点以外はすべて実施の形態1と同様である。
【0085】
特に図10に示すように、押圧手段10(端部10b)が垂直方向に振動する場合には、端部10bが球面形状となっており、転写部材15と接触する面積が小さくなる。このため押圧手段10が転写部材15に加える力が小さくても、単位面積あたりの圧力は比較的大きくなるため、転写部材15の基材26が容易に変形する。つまり押圧手段10が転写部材15に加える力が小さくても、基材26の変形により、第2の金属膜27が欠陥部24aに容易に密着される。つまりパターン修正装置1の駆動に必要な出力を低減することができる。
【0086】
球面形状を有する端部10bを用いれば、転写部材15を用いたパターン修正作業(欠陥部に密着する工程(S30)および振動を与える工程(S40))の際に転写部材15が位置ずれを起こすことが抑制される。つまり端部10bの先端部が球面になった場合において容易にパターン転写ができる程度に微細なパターンの修正作業には、本実施の形態のような球面形状を有する端部10bを用いることが好ましい。
【0087】
なお、上記の図10のように端部10bが垂直方向に振動する場合に限らず、図11のように端部10bが水平方向に振動する場合においても、端部10bの先端部が球面形状であってもよい。
【0088】
ただし端部10bが水平方向に振動する場合は、特に先端部の球面形状の半径が小さければ(曲率が大きければ)、当該先端部が基材26を構成する樹脂材料(フィルム)を過剰に変形させ、その変形した箇所に当該先端部がめり込む可能性がある。この状態で先端部(端部10b)が水平方向に振動した際に転写部材15が水平方向に沿って移動し、転写部材15が位置ずれを起こす可能性がある。このような現象を抑制するために、端部10bが水平方向に振動する場合は、先端部の球面形状の半径が大きい(曲率が小さい)ほうが好ましい。したがって、特にパターン修正を行なう形状が、上記球面形状の半径を小さくする必要がある程度に幅が狭い場合は、図10のように端部10bを垂直方向に振動させることが好ましい。
【0089】
本実施の形態は、以上に述べた点においてのみ、実施の形態1と異なる。つまり本実施の形態に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて実施の形態1に順ずる。
【0090】
(実施の形態3)
本実施の形態は、実施の形態1に対して、転写部材の主表面上に形成される第2の金属膜の構成において異なる。具体的には、たとえば図12に示す転写部材15bのように基材26の、一方の主表面上の全面に第2の金属膜27が形成されている。
【0091】
図12における第2の金属膜27は、図9における母材膜27aと同様の、比較的融点の低い、亜鉛(融点420℃)、亜鉛合金(例:亜鉛アルミ合金、融点350℃〜400℃)、金合金(例:金錫合金、融点280℃前後)、錫(融点450℃)などの金属材料からなるものであることが好ましい。
【0092】
図9の転写部材15aにおいては、基材26の一方の主表面上の、一部の領域のみに第2の金属膜27が形成されている。しかしたとえば修正すべき欠陥部のサイズ(幅)が非常に大きい場合などは、図12のように基材26の主表面上の全面に第2の金属膜27(母材膜27a)が形成された構成を有する転写部材15bを用いてもよい。
【0093】
また、たとえば図9の転写部材15aのように、酸化防止用金属膜27bが形成されていれば、母材膜27aの酸化による転写性の低下が抑制される。しかし図12の転写部材15bのように、酸化防止用金属膜27bが形成されない転写部材15bを用いてパターン転写の処理を行なってもよい。あるいは図13のように、基材26の主表面上の全面に母材膜27aと酸化防止用金属膜27bとが1層ずつ形成された転写部材15cや、図14のように基材26の主表面上の全面に母材膜27aと、酸化防止用金属膜27bおよび酸化防止用金属膜27cの2層とが形成された転写部材15dが用いられてもよい。
【0094】
以上のように、修正しようとするパターンの欠陥部の幅などに適した転写部材を用いるとともに、転写部材15に圧力を与える押圧手段10の端部10bの先端部の形状が、たとえば角状や長方形状に変更されてもよい。このように転写部材に形成される第2の金属膜の構成や、押圧手段10の端部10bの先端部の形状を変更するだけで、パターン修正装置1の駆動に要する出力を変更することなく、パターン転写の処理の回数を減少することもできる。つまり、たとえば尖った先端部を有する端部10bを用いれば、パターン転写を2回繰り返す必要がある欠陥部の修正に対して、長方形状の(幅が広い)先端部を有する端部10bを用いることにより、1回のパターン転写により処理を完了することが可能になる場合がある。
【0095】
また、本実施の形態の各転写部材を用いて、実施の形態1に示す各振動方向(水平方向および垂直方向)に押圧手段10を振動することができる。
【0096】
本実施の形態は、以上に述べた点においてのみ、実施の形態1と異なる。つまり本実施の形態に関して、上述しなかった構成や条件、手順や効果などは、すべて実施の形態1に順ずる。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、TFT基板に形成された配線などのパターンの欠陥部を、より簡単に修正する技術として、特に優れている。
【符号の説明】
【0099】
1 パターン修正装置、2 パターン部品、3 XYステージ、4 Zステージ、5 観察光学系、6 モニタ、7 レーザ光源、9 転写部材供給手段、10 押圧手段、10a 振動子、10b 端部、11 画像処理部、12 ホストコンピュータ、13 制御用コンピュータ、14 チャック、15,15a,15b,15c,15d 転写部材、23 基板、24 配線、24a 欠陥部、26 基材、27,27P 第2の金属膜、27a 母材膜、27b、27c 酸化防止用金属膜、27d 修正層、35 空隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に形成されたパターンの欠陥部を修正するパターン修正装置であって、
基材の一方の主表面上に、前記パターンを形成する第1の金属膜と加熱により溶融して合金層を形成して固着することが可能な第2の金属膜が少なくとも1層形成された転写部材と、
前記第2の金属膜を、前記欠陥部に対峙する転写部材供給手段と、
前記第2の金属膜を前記欠陥部に密着するために、前記転写部材の、前記第2の金属膜が形成された前記一方の主表面に対向する他方の主表面側から前記転写部材を前記基板に向けて押圧する押圧手段とを備えており、
前記押圧手段は、前記第2の金属膜が前記欠陥部に密着された状態で、前記転写部材に対して超音波振動を与え前記第2の金属膜を加熱する超音波振動子を含む、パターン修正装置。
【請求項2】
前記押圧手段の、前記転写部材と対向する端部の形状は、前記転写部材の主表面に沿うように延在する平面形状である、請求項1に記載のパターン修正装置。
【請求項3】
前記押圧手段の、前記転写部材と対向する端部の形状は、前記転写部材側に凸の曲面形状である、請求項1に記載のパターン修正装置。
【請求項4】
前記超音波振動子は、前記転写部材の主表面に交差する方向に振動する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン修正装置。
【請求項5】
前記超音波振動子は、前記転写部材の主表面に沿う方向に振動する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン修正装置。
【請求項6】
基板の表面上に形成されたパターンの欠陥部を修正するパターン修正方法であり、
基材の一方の主表面上に、前記パターンを形成する第1の金属膜と加熱により溶融して合金層を形成して固着することが可能な第2の金属膜が少なくとも1層形成された転写部材を前記欠陥部に対峙する工程と、
前記第2の金属膜を前記欠陥部に密着する工程と、
前記第2の金属膜が前記第1の金属膜を含む前記欠陥部に密着された状態で、前記欠陥部と密着した前記第2の金属膜に振動を与える工程とを備え、
前記振動を与える工程では、前記振動により前記第2の金属膜と前記第1の金属膜との密着境界部で、前記第2の金属膜と前記第1の金属膜とを溶融して前記第2の金属膜と前記第1の金属膜との合金層が形成されることにより固着される、パターン修正方法。
【請求項7】
前記振動は超音波振動である、請求項6に記載のパターン修正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−209549(P2011−209549A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77847(P2010−77847)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】