パターン反射投影物品及びその製造方法
【課題】 反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、模様や文字等が虹色のように多色に分光してスクリーンに投影されるパターン反射投影物品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 パターン反射投影物品1は、背面側に厚肉のパターン2a,2bが形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分に凹状の歪パターン4a,4bが形成されており、かつ、少なくとも上記歪パターンの表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されている。背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却することにより、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差により、厚肉のパターンに対応する部分の表面に、上記凹状の歪パターンが形成される。上記回折現象を呈する微細な凹凸状表面は、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により形成される。
【解決手段】 パターン反射投影物品1は、背面側に厚肉のパターン2a,2bが形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分に凹状の歪パターン4a,4bが形成されており、かつ、少なくとも上記歪パターンの表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されている。背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却することにより、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差により、厚肉のパターンに対応する部分の表面に、上記凹状の歪パターンが形成される。上記回折現象を呈する微細な凹凸状表面は、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉眼では凹凸が認められない普通の平滑な鏡面でありながら、太陽光線のような平行光を当てると、反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、模様や文字等が虹色のように多色に分光してスクリーンに投影されるパターン反射投影物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂、魔鏡は、外観は普通の鋳造鏡と変わりがないが、鏡面に太陽光線を当てて、反射光をスクリーンや白壁に投影すると、鏡背面に造形されている仏像や文字等が明るく映し出されるという現象を呈する鏡である。この現象は、鏡面は全体的に凸面鏡になっていて光が散乱するが、鏡背面に造形されている厚肉模様の表面側に凹部が存在し、この凹部によって光の集束が起こることによって、背面に造形されている厚肉模様と同じ模様に明るく映し出されるために生ずる。この凹部は、古来、鏡面研磨仕上げによって形成されている。即ち、鏡面は全体的に凸面鏡になっているため、研磨工程で上方から圧力を加えると撓みが生じる。この撓み量(即ち、逃げ)が厚肉部よりも薄肉部で大きいため、結果的に厚肉部での研磨量が薄肉部よりも多くなり、この部分の研磨面に凹部を生じる。この研磨工程には、極めて熟練した技術が必要であり、また製作に長期間を要し、量産が不可能であるという問題があった。
【0003】
そこで、近年、魔鏡を工業的に製作する技術が開発されている。例えば、金属板の表面にプレス、鋳造、鍛造、ダイキャスト等の機械加工又はエッチング等の化学処理を施すことによって凹凸を形成し、該凹凸形成面を研磨することによって、段差が1.0〜10μm程度の微小凹凸を有する金属表面を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、他の魔鏡の製造方法としては、鏡面の裏面にマスキングを施し、裏面にサンドブラストを施すことにより、裏面に凹凸部を形成すると同時にそれに対応した凹凸部を鏡面に形成する方法(特許文献2参照)、あるいは、鏡板の表面に、レーザー光線や電子ビーム等の高エネルギー密度熱源を用いて高エネルギー線を照射し、魔鏡現象として投影する反射光の集束又は反射を起こさせるための歪を形成させた後、仕上げ研磨する方法(特許文献3参照)が開発されている。
【0004】
前記した方法は、いずれも、鏡面を形成した後、鏡面に凹凸部を加工する方法、あるいは凹凸部を形成した後、仕上げ研磨する方法であって、2次成形法であるため、製造コストが高くなるという問題がある。また、魔鏡現象を発現するためには、加工前に鏡面研磨するか、あるいは加工後に仕上げ研磨するか、いずれかの段階で鏡面仕上げすることが必要不可欠であり、生産性の低下やコスト増大の要因となっている。
さらに、鏡面仕上げのため、反射像は入射光と同じ波長の光であり、分光することなく単一反射像しか得られない。そのため、従来、虹色に分光して像を映し出すタイプの魔鏡は実現されていない。また、従来の単一像型の魔鏡については、鏡やキーホルダー等の意匠物品としての使用例しかなく、利用分野が狭かった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−313009号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−106994号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平6−148411号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、肉眼では凹凸が認められない普通の平滑な鏡面でありながら、太陽光線のような平行光を当てると、反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、模様や文字等が虹色のように多色に分光してスクリーンに投影されるパターン反射投影物品を提供することにある。
さらに本発明の目的は、鏡面仕上げが不要であり、生産性良くかつ比較的低コストで上記のようなパターン反射投影物品を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、背面側に厚肉のパターンが形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分の表面に凹状の歪パターンが形成されており、かつ、少なくとも上記歪パターンの表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されていることを特徴とするパターン反射投影物品が提供される。
【0008】
好適な態様においては、前記物品は、50〜100%の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金からなる。あるいは、合成樹脂から成形された物品であり、表面側の前記歪パターンを含む表面にメッキ層を有する態様でもよい。
また、前記物品は、好適には、ファスニング製品の構成部品(スライドファスナーのスライダー、引手等の構成部品、連結具のバックル、コキ、ナス管等の構成部品など)である。
【0009】
さらに本発明によれば、前記のようなパターン反射投影物品の製造方法も提供され、その基本的な態様は、背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却することにより、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差を利用して上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状の歪パターンを形成させることを特徴としている。前記回折現象を呈する微細な凹凸状表面は、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により形成させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパターン反射投影物品の表面には、肉眼では確認できないような、反射光の集束を生じる凹状の歪パターンが形成されており、かつ、上記歪パターン面あるいはさらに該歪パターン面以外の表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されているため、係るパターン反射投影物品に太陽光線のような平行光を照射した場合、上記凹状の歪パターンによって反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、上記微細な凹凸状面での回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、模様や文字等のパターンが、虹色のように多色に分光した像(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫色の像)としてスクリーンに投影される。
【0011】
本発明のパターン反射投影物品による上記現象は、ファスニング製品の構成部品など、本発明を適用する各種製品の真贋判定に好適に利用することができる。即ち、背面側に形成された厚肉のパターンを隠蔽し、太陽光線のような平行光を当て、その実像又は投影像を確認するだけで、予め形成された隠蔽されている像(例えば、ロゴマークなど)を読み取ることができるので、従来のように製品の真贋判定の判断に別の機器を用いる必要がなく、製品の真贋を簡便に判定することが可能となる。また、魔鏡現象を生じる凹状の歪パターンと、回折分光現象を生じる微細な凹凸状(回折格子)の形状を様々に組み合わせることによって、何通りもの分光像を反射投影する物品を作製することが可能である。
【0012】
さらに、本発明の方法によれば、背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却するという工程だけで、前記パターン反射投影物品を製造することができる。即ち、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差を利用して上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状の歪パターンを形成でき、また、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により前記回折現象を呈する微細な凹凸状表面を形成できる。従って、鏡面仕上げが不要であり、生産性良くかつ比較的低コストで前記のようなパターン反射投影物品を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
前記したように、本発明のパターン反射投影物品は、背面側に厚肉のパターンが形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分の表面に、肉眼では確認できないような、反射光の集束を生じる凹状の歪パターンが形成されており、かつ、上記歪パターン面あるいはさらに該歪パターン面以外の表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されていることを特徴としている。そのため、係るパターン反射投影物品に太陽光線のような平行光を照射した場合、上記凹状の歪パターンによって反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、上記微細な凹凸状面での回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、背面部に形成されている模様や文字等のパターンが、虹色のように多色に分光した像(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫色の像)としてスクリーンに投影される。
【0014】
前記歪パターンの窪み深さは0.5〜2μmであることが好ましく、回折現象を呈する微細な凹凸状の溝部(又は山部)の深さ(又は高さ)は0.5〜1μm、幅は0.5〜1μmであることが好ましい。魔鏡現象を得るための歪パターンのサイズと、回折分光現象を生じる微細な凹凸状(回折格子)の溝部(又は山部)のサイズを上記範囲内に設定することによって、より鮮明な魔鏡現象と回折分光現象が得られる。歪パターンの窪み深さが0.5μm未満になるとぼやけた反射像となり、一方、2μmを超えると肉眼で窪みが判別でき、魔鏡とはいえなくなってしまう。また、微細な凹凸状(回折格子)の溝部(又は山部)の深さ(又は高さ)と幅が0.5μm未満になると、単純反射となり、分光しなくなるので好ましくない。一方、1μmを超えて大きくなると、分光が不鮮明となってしまうので好ましくない。
【0015】
本発明の方法においては、前記したように、反射光の集束を生じる凹状の歪パターン形成に、凝固収縮を利用している。即ち、背面側に、パターン状の厚肉部分と、薄肉部分とを設けることによって、その肉厚による凝固収縮の差、いわゆる引けを利用して、上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状(なだらかな湾曲状)の歪パターンを形成することが可能となる。このとき、上記物品製造に転写性の高い材料、例えば非晶質合金を使用すれば、金型内面の微細な凹凸状表面の一回の転写で、即ち背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却するという工程だけで、魔鏡現象を得るための鏡面と、凹状の歪パターンと、回折現象を呈する微細な凹凸状表面を同時に形成することが可能となる。このように材料の成形時の凝固収縮及び金型内面の転写を利用することによって、従来のような表面研磨仕上げは不要となり、前記のようなパターン反射投影物品を生産性良くかつ比較的低コストで製造できる。
【0016】
前述したように、本発明の方法は、前記凹状の歪パターン形成に凝固収縮を利用しているため、成形時に凝固収縮を起こす材料を用いる必要がある。また、前記回折現象を呈する微細な凹凸状表面を、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により形成させるためには、転写性の良好な材料であることが好ましい。これらの点において、本発明のパターン反射投影物品の材料としては、50〜100%の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金であることが好ましい。
【0017】
本発明のように魔鏡現象を得るための凹状の歪パターンと回折現象を呈する微細な凹凸状表面を得るためには、従来の魔鏡の製造方法のように、凹状の歪パターンを形成させるため、又は表面を鏡面にするために、表面を研磨仕上げすることはできない。研磨してしまうと、回折現象を呈する微細な凹凸状表面を得ることはできない。仮に、研磨した後に回折現象を呈する微細な凹凸状表面を形成しようとしても、実際的に不可能である。表面が平坦な鏡面でれば、微小バイトを利用して切り欠いたり、押圧して作製することは可能ではあるかもしれないが、歪パターンは凹状に窪んだ面であるため、この凹状面に沿って、回折現象を呈するような1μm以下の微細な整列した凹凸を形成することは現実的ではない。本発明によれば、非晶質合金を用いて成形することにより、その高い転写性を利用して、金型内面の微細な凹凸状表面が転写されるので、回折現象を呈する微細な凹凸状表面を有する成形品を簡単に得ることができる。
【0018】
また、本発明のパターン反射投影物品を得るためには、前記した成形時の凝固収縮性と転写性を有する限り、非晶質合金以外の各種材料、例えば、合成樹脂等を用いることができる。この場合、まず樹脂材料の成形によって、魔鏡現象を得るための凹状の歪パターンと回折現象を呈する微細な凹凸状表面が形成された成形品を得、その後、この表面に光反射性を付与するために、メッキ処理(イオンプレーティング、電鋳メッキ、無電解メッキなど)を施すことによって、非晶質合金の成形品と同じような効果を有するパターン反射投影物品を製造できる。
【実施例】
【0019】
以下、添付図面に示す実施例を説明しつつ、本発明についてさらに具体的に説明する。
まず、図1〜図3は本発明のパターン反射投影物品の一実施例を示しており、図1は表面側から見た斜視図、図2は背面側から見た斜視図、図3は図1のIII−III線から見た断面図を示している。この実施例のプレート状のパターン反射投影物品1は、背面側に、中央部の文字「Y」2aと周囲の円形輪郭2bの厚肉のパターンが形成されており、それ以外の部分は薄肉部3となっている。また、表面側の上記厚肉パターン2a,2bに対応する部分の表面に、肉眼では確認できないような、反射光の集束を生じる凹状(断面がなだらかな湾曲状)の歪パターン4a,4bが形成されており、かつ、表面全体は、図1及び図3に概略的に示すように、回折現象を呈する微細な凹凸状表面5に形成されている。この凹状の歪パターン4a,4bの窪み深さは、前記したように0.5〜2μmの範囲内にあり、また、凹凸状表面5の溝部6(又は山部7)の深さ(又は高さ)は0.5〜1μm、幅は0.5〜1μmの範囲内にある。なお、厚肉のパターン及びそれに対応する凹状の歪パターンは、図示の例に限定されるものではなく、任意の模様、図柄、文字等とすることができることは言うまでもない。また、凹状の歪パターン4a,4bが形成された表面は、図示のように全体的に平坦面の場合だけでなく、後述する図13に示すように、全体的に凸状の湾曲面でもあってもよい。
【0020】
上記パターン反射投影物品1の表面側に太陽光線のような平行光を照射した場合、図3に示されるように、凹状の歪パターン4a,4b以外の平坦面に平行光が当たると、Aで示されるように平行に反射されるが、凹状の歪パターン4a,4bに当たると、Bのように集束するように反射し、この反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と同時に、上記微細な凹凸状表面5での回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、背面に形成された厚肉のパターン、即ち周囲の円形輪郭2bとその中央部の文字「Y」2aと同じ像が、虹色のように多色に分光した像(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫色の像)としてスクリーンに投影される。なお、凹状の歪パターン4a,4b形成面だけでなく、それ以外の平坦面も凹凸状表面5であるため、これらの部分での反射光も回折光となっているが、これらの部分での反射光が多色に分光した像を形成することはない。
【0021】
図4は、本発明に係る上記図1〜3に示すパターン反射投影物品1の製造工程を示している。
製造においては、図4(A)に示されるような上型11と下型12とからなる金型10を用いるが、下型12の内面14は、上記パターン反射投影物品1の凹凸状表面5と対応する凹凸状表面15となっている。金型10は、銅、銅合金、超硬合金その他の金属材料から作製することができるが、キャビティ内に注入された溶湯の冷却速度を速くするために、熱容量が大きくかつ熱伝導率の高い材料、例えば銅製、銅合金製等とすることが好ましい。また、金型には冷却水、冷媒ガス等の冷却媒体を流通させる流路を配設することもできる。なお、溶湯の酸化皮膜形成を防止するために、装置全体を真空中又はArガス等の不活性ガス雰囲気中に配置することが好ましい。
【0022】
まず、図4(B)に示されるように、上型11と下型12を組み合わせた状態で、上型11に形成された湯口13から、非晶質合金を生ずる溶融状態の合金材料17を射出する。射出された合金材料17は、キャビティ16内に注入、加圧され、急速に凝固される。この際、射出温度、射出速度等を適宜設定することにより、103K/s以上の冷却速度を得ることができる。その後、上型11と下型12を分離し、図4(C)に示されるような形状の鋳造品18を取り出す。鋳造品18の中央部の文字「Y」2aと周囲の円形輪郭2bの厚肉のパターンに対応する部分の表面には、冷却・凝固時の凝固収縮により、肉眼では確認できないような凹状(断面がなだらかな湾曲状)の歪パターン4a,4bが形成されている。なお、上記厚肉パターンの背面側の面にも、同様に凝固収縮により凹状の歪パターンが形成されている。その後、鋳造品18から湯道部分19を切断・分離し、その切断面を研磨することにより、図4(D)に示されるようなパターン反射投影物品1(図1〜3参照)が得られる。
【0023】
前記非晶質合金としては、本発明の方法を適用できる材料であれば全て使用可能であり、特定の材料に限定されるものではないが、下記一般式(1)〜(6)のいずれか1つで示される組成を有する非晶質合金を好適に使用できる。
【0024】
一般式(1):M1aM2bLncM3dM4eM5f
但し、M1はZr及びHfから選ばれる1種又は2種の元素、M2はNi、Cu、Fe、Co、Mn、Nb、Ti、V、Cr、Zn、Al及びGaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、LnはY、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Yb及びMm(希土類元素の集合体であるミッシュメタル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はBe、B、C、N及びOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はTa、W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はAu、Pt、Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a、b、c、d、e及びfはそれぞれ原子%で、25≦a≦85、15≦b≦75、0≦c≦30、0≦d≦30、0≦e≦15、0≦f≦15である。
【0025】
一般式(2):Al100-g-h-iLngM6hM3i
但し、LnはY、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Yb及びMmよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M6はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はBe、B、C、N及びOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、g、h及びiはそれぞれ原子%で、30≦g≦90、0<h≦55、0≦i≦10である。
【0026】
一般式(3):Mg100-pM7p
但し、M7はCu、Ni、Sn及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、pは原子%で5≦p≦60である。
この非晶質合金は、混合エンタルピーが負で大きく、アモルファス形成能が良い。
【0027】
一般式(4):Mg100-q-rM7qM8r
但し、M7はCu、Ni、Sn及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M8はAl、Si及びCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、q及びrはそれぞれ原子%で、1≦q≦35、1≦r≦25である。
この非晶質合金のように、前記一般式(3)の合金において原子半径の小さな元素M8(Al,Si,Ca)でアモルファス構造中の隙間を埋めることによって、その構造が安定化し、アモルファス形成能が向上する。
【0028】
一般式(5):Mg100-q-sM7qM9s
一般式(6):Mg100-q-r-sM7qM8rM9s
但し、M7はCu、Ni、Sn及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M8はAl、Si及びCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M9はY、La、Ce、Nd、Sm及びMmよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、q、r及びsはそれぞれ原子%で、1≦q≦35、1≦r≦25、3≦s≦25である。
これらの非晶質合金のように、前記一般式(3)及び(4)の合金に希土類元素を添加することによりアモルファスの熱的安定性が向上する。
【0029】
前記した非晶質合金の中でも、ガラス遷移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)の温度差が極めて広いZr−TM−Al系及びHf−TM−Al系(TM:遷移金属)非晶質合金は、高強度、高耐食性であると共に、過冷却液体温度領域(ガラス遷移領域)ΔTx=Tx−Tgが30K以上、特にZr−TM−Al系非晶質合金は60K以上と極めて広く、この温度領域では粘性流動により数10MPa以下の低応力でも非常に良好な加工性を示す。例えば、Zr60Al15Co2.5Ni7.5Cu15合金(Tg:652K、Tx:768K)のΔTxは116Kと極めて広い。
【0030】
一般に、非晶質合金はガラス遷移領域まで加熱すると長時間の保持によって結晶化が始まるが、本合金のようにΔTxが広い合金は非晶質相が安定であり、ΔTx内の温度を適当に選べば2時間程度までは結晶が発生せず、成形工程において結晶化を懸念する必要はない。
また、本合金は溶湯からの凝固においてもこの特性を如何なく発揮する。一般に非晶質合金の製造には急速な冷却が必要とされるが、本合金は冷却速度10K/s程度の冷却で溶湯から容易に非晶質単相からなるバルク材を得ることができるなど、非常に安定で製造し易い特徴を持っている。その凝固表面はやはり極めて平滑であり、金型表面のミクロンオーダーの微細な凹凸状でさえも忠実に再現する転写性を持っている。従って、金型10内面の微細な凹凸状表面15を上記非晶質合金からなる鋳造品18の表面に極めて精度良く転写できる。
【0031】
図5は、本発明のパターン反射投影物品を合成樹脂材料から作製した実施例を示している。
この場合、まず、樹脂材料を射出成形して前記図1〜3に示すような射出成形品を得る。合成樹脂材料も、厚肉部と薄肉部で凝固収縮性に差があるので、前記図4に示す方法と同様の方法により、魔鏡現象を得るための凹状の歪パターンと回折現象を呈する微細な凹凸状表面が形成された成形品を得ることができる。但し、合成樹脂材料の場合には、光反射性に乏しい。そこで、射出成形後、成形品のの表面にメッキ処理(イオンプレーティング、電鋳メッキ、無電解メッキなど)を施す。それによって、図5に示すように、樹脂20の表面にメッキ層21が形成され、非晶質合金の成形品と同じような効果を有するパターン反射投影物品を製造できる。
【0032】
図6は、本発明のパターン反射投影物品の微細な凹凸状表面のパターン(回折パターン)の変形例を示している。
図6(A)は平行な溝状に形成されたパターン5a、図6(B)は角柱状の突部が2つ割りされて対向する三角柱状に形成されたパターン5bを示している。本発明のパターン反射投影物品の微細な凹凸状パターンは、これらの例に限定されるものではなく、回折効果による分光現象を発現し得るパターンであれば全て採用できる。
【0033】
本発明のパターン反射投影物品は、ファスニング製品等に適用することにより、意匠性にも優れた真贋判定可能な製品として利用することができる。基本的には、背面に形成された厚肉部を隠蔽したプレート状のものを作製し、スライドファスナーのスライダーの引手の一部に利用したり、バックルの表面に埋め込んだり、スナップボタンの表面に形成させたりすることが可能である。また、ファスニング製品に限定されることなく、本発明を適用したプレートを様々な製品(車のエンブレム、電化製品等の社名ロゴ等)に利用することができ、意匠性の高い真贋判定可能な製品を提供することができる。
以下、本発明の利用形態の幾つかの例を、図面を参照して説明する。
【0034】
図7は、本発明のパターン反射投影物品1aを、スライドファスナーのスライダー30の引手31の一部に利用した使用例を示している。
一方、図8は、本発明のパターン反射投影物品1bを、ソケット33とプラグ34で紐35を締結する紐締具32の、プラグ34の頭部として利用した使用例を示している。また、図9は、紐締具のソケット33の底部に本発明のパターン反射投影物品1cを螺合する使用例を示している。
【0035】
図10及び図11は、本発明のパターン反射投影物品1dを、ベルト36のバックル37に形成された穴部38に、その弾性を利用して嵌着して利用した使用例を示している。一方、図12は、本発明のパターン反射投影物品1eを、ソケット39とプラグ40からなるバックルの、ソケット39に形成された穴部38に嵌着して利用した使用例を示している。
また、図13は、他の紐取付具41に本発明のパターン反射投影物品1fを嵌着した使用例を示している。
【0036】
最後に、図14及び図15は、本発明のパターン反射投影物品1gを、雌係脱具43と雄係脱具44を備えるテープ付きスナップボタン42の、雌係脱具43の非係合部側の表面に形成された凹陥部45にスナップ係合して装着した使用例を示している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、魔鏡の製造や、背面に形成されたり、隠蔽されたりしている各種パターンを反射投影する光装飾を利用した各種製品の製造の他、ファスニング製品の構成部品(スライドファスナーのスライダー、引手等の構成部品、連結具のバックル、コキ、ナス管等の構成部品など)等の各種製品に適用して、その真贋判定に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のパターン反射投影物品の一実施例の表面側から見た概略斜視図である。
【図2】図1に示すパターン反射投影物品の背面側から見た概略斜視図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1に示すパターン反射投影物品の製造工程を示す概略説明図である。
【図5】本発明のパターン反射投影物品の他の実施例の概略部分断面図である
【図6】本発明のパターン反射投影物品の微細な凹凸状パターン(回折パターン)の変形例を示す概略部分斜視図である。
【図7】本発明のパターン反射投影物品の一使用例を示す概略斜視図である。
【図8】本発明のパターン反射投影物品の他の使用例を示す概略部分破断斜視図である。
【図9】本発明のパターン反射投影物品のさらに他の使用例を示す概略部分破断斜視図である。
【図10】本発明のパターン反射投影物品の別の使用例を示す概略部分斜視図である。
【図11】図10に示すパターン反射投影物品の別の使用例の概略部分断面図である。
【図12】本発明のパターン反射投影物品のさらに別の使用例を示す概略部分斜視図である。
【図13】本発明のパターン反射投影物品のさらに他の使用例を示す概略断面図である。
【図14】本発明のパターン反射投影物品のさらに別の使用例を示す概略部分斜視図である。
【図15】図14に示すパターン反射投影物品のさらに別の使用例の概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1a〜1g パターン反射投影物品
2a 文字「Y」の厚肉パターン
2a 円形輪郭の厚肉パターン
3 薄肉部
4a,4b 凹状の歪パターン
5 凹凸状表面
10 金型
11 上型
12 下型
13 湯口
15 凹凸状表面
16 キャビティ
17 非晶質合金材料
18 鋳造品
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉眼では凹凸が認められない普通の平滑な鏡面でありながら、太陽光線のような平行光を当てると、反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、模様や文字等が虹色のように多色に分光してスクリーンに投影されるパターン反射投影物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂、魔鏡は、外観は普通の鋳造鏡と変わりがないが、鏡面に太陽光線を当てて、反射光をスクリーンや白壁に投影すると、鏡背面に造形されている仏像や文字等が明るく映し出されるという現象を呈する鏡である。この現象は、鏡面は全体的に凸面鏡になっていて光が散乱するが、鏡背面に造形されている厚肉模様の表面側に凹部が存在し、この凹部によって光の集束が起こることによって、背面に造形されている厚肉模様と同じ模様に明るく映し出されるために生ずる。この凹部は、古来、鏡面研磨仕上げによって形成されている。即ち、鏡面は全体的に凸面鏡になっているため、研磨工程で上方から圧力を加えると撓みが生じる。この撓み量(即ち、逃げ)が厚肉部よりも薄肉部で大きいため、結果的に厚肉部での研磨量が薄肉部よりも多くなり、この部分の研磨面に凹部を生じる。この研磨工程には、極めて熟練した技術が必要であり、また製作に長期間を要し、量産が不可能であるという問題があった。
【0003】
そこで、近年、魔鏡を工業的に製作する技術が開発されている。例えば、金属板の表面にプレス、鋳造、鍛造、ダイキャスト等の機械加工又はエッチング等の化学処理を施すことによって凹凸を形成し、該凹凸形成面を研磨することによって、段差が1.0〜10μm程度の微小凹凸を有する金属表面を形成する方法が提案されている(特許文献1参照)。また、他の魔鏡の製造方法としては、鏡面の裏面にマスキングを施し、裏面にサンドブラストを施すことにより、裏面に凹凸部を形成すると同時にそれに対応した凹凸部を鏡面に形成する方法(特許文献2参照)、あるいは、鏡板の表面に、レーザー光線や電子ビーム等の高エネルギー密度熱源を用いて高エネルギー線を照射し、魔鏡現象として投影する反射光の集束又は反射を起こさせるための歪を形成させた後、仕上げ研磨する方法(特許文献3参照)が開発されている。
【0004】
前記した方法は、いずれも、鏡面を形成した後、鏡面に凹凸部を加工する方法、あるいは凹凸部を形成した後、仕上げ研磨する方法であって、2次成形法であるため、製造コストが高くなるという問題がある。また、魔鏡現象を発現するためには、加工前に鏡面研磨するか、あるいは加工後に仕上げ研磨するか、いずれかの段階で鏡面仕上げすることが必要不可欠であり、生産性の低下やコスト増大の要因となっている。
さらに、鏡面仕上げのため、反射像は入射光と同じ波長の光であり、分光することなく単一反射像しか得られない。そのため、従来、虹色に分光して像を映し出すタイプの魔鏡は実現されていない。また、従来の単一像型の魔鏡については、鏡やキーホルダー等の意匠物品としての使用例しかなく、利用分野が狭かった。
【0005】
【特許文献1】特開平1−313009号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2000−106994号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平6−148411号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、肉眼では凹凸が認められない普通の平滑な鏡面でありながら、太陽光線のような平行光を当てると、反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、模様や文字等が虹色のように多色に分光してスクリーンに投影されるパターン反射投影物品を提供することにある。
さらに本発明の目的は、鏡面仕上げが不要であり、生産性良くかつ比較的低コストで上記のようなパターン反射投影物品を製造できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明によれば、背面側に厚肉のパターンが形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分の表面に凹状の歪パターンが形成されており、かつ、少なくとも上記歪パターンの表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されていることを特徴とするパターン反射投影物品が提供される。
【0008】
好適な態様においては、前記物品は、50〜100%の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金からなる。あるいは、合成樹脂から成形された物品であり、表面側の前記歪パターンを含む表面にメッキ層を有する態様でもよい。
また、前記物品は、好適には、ファスニング製品の構成部品(スライドファスナーのスライダー、引手等の構成部品、連結具のバックル、コキ、ナス管等の構成部品など)である。
【0009】
さらに本発明によれば、前記のようなパターン反射投影物品の製造方法も提供され、その基本的な態様は、背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却することにより、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差を利用して上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状の歪パターンを形成させることを特徴としている。前記回折現象を呈する微細な凹凸状表面は、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により形成させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のパターン反射投影物品の表面には、肉眼では確認できないような、反射光の集束を生じる凹状の歪パターンが形成されており、かつ、上記歪パターン面あるいはさらに該歪パターン面以外の表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されているため、係るパターン反射投影物品に太陽光線のような平行光を照射した場合、上記凹状の歪パターンによって反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、上記微細な凹凸状面での回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、模様や文字等のパターンが、虹色のように多色に分光した像(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫色の像)としてスクリーンに投影される。
【0011】
本発明のパターン反射投影物品による上記現象は、ファスニング製品の構成部品など、本発明を適用する各種製品の真贋判定に好適に利用することができる。即ち、背面側に形成された厚肉のパターンを隠蔽し、太陽光線のような平行光を当て、その実像又は投影像を確認するだけで、予め形成された隠蔽されている像(例えば、ロゴマークなど)を読み取ることができるので、従来のように製品の真贋判定の判断に別の機器を用いる必要がなく、製品の真贋を簡便に判定することが可能となる。また、魔鏡現象を生じる凹状の歪パターンと、回折分光現象を生じる微細な凹凸状(回折格子)の形状を様々に組み合わせることによって、何通りもの分光像を反射投影する物品を作製することが可能である。
【0012】
さらに、本発明の方法によれば、背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却するという工程だけで、前記パターン反射投影物品を製造することができる。即ち、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差を利用して上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状の歪パターンを形成でき、また、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により前記回折現象を呈する微細な凹凸状表面を形成できる。従って、鏡面仕上げが不要であり、生産性良くかつ比較的低コストで前記のようなパターン反射投影物品を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
前記したように、本発明のパターン反射投影物品は、背面側に厚肉のパターンが形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分の表面に、肉眼では確認できないような、反射光の集束を生じる凹状の歪パターンが形成されており、かつ、上記歪パターン面あるいはさらに該歪パターン面以外の表面が回折現象を呈する微細な凹凸状に形成されていることを特徴としている。そのため、係るパターン反射投影物品に太陽光線のような平行光を照射した場合、上記凹状の歪パターンによって反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と、上記微細な凹凸状面での回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、背面部に形成されている模様や文字等のパターンが、虹色のように多色に分光した像(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫色の像)としてスクリーンに投影される。
【0014】
前記歪パターンの窪み深さは0.5〜2μmであることが好ましく、回折現象を呈する微細な凹凸状の溝部(又は山部)の深さ(又は高さ)は0.5〜1μm、幅は0.5〜1μmであることが好ましい。魔鏡現象を得るための歪パターンのサイズと、回折分光現象を生じる微細な凹凸状(回折格子)の溝部(又は山部)のサイズを上記範囲内に設定することによって、より鮮明な魔鏡現象と回折分光現象が得られる。歪パターンの窪み深さが0.5μm未満になるとぼやけた反射像となり、一方、2μmを超えると肉眼で窪みが判別でき、魔鏡とはいえなくなってしまう。また、微細な凹凸状(回折格子)の溝部(又は山部)の深さ(又は高さ)と幅が0.5μm未満になると、単純反射となり、分光しなくなるので好ましくない。一方、1μmを超えて大きくなると、分光が不鮮明となってしまうので好ましくない。
【0015】
本発明の方法においては、前記したように、反射光の集束を生じる凹状の歪パターン形成に、凝固収縮を利用している。即ち、背面側に、パターン状の厚肉部分と、薄肉部分とを設けることによって、その肉厚による凝固収縮の差、いわゆる引けを利用して、上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状(なだらかな湾曲状)の歪パターンを形成することが可能となる。このとき、上記物品製造に転写性の高い材料、例えば非晶質合金を使用すれば、金型内面の微細な凹凸状表面の一回の転写で、即ち背面側に厚肉のパターンを有する物品を金型内で熱成形し、冷却するという工程だけで、魔鏡現象を得るための鏡面と、凹状の歪パターンと、回折現象を呈する微細な凹凸状表面を同時に形成することが可能となる。このように材料の成形時の凝固収縮及び金型内面の転写を利用することによって、従来のような表面研磨仕上げは不要となり、前記のようなパターン反射投影物品を生産性良くかつ比較的低コストで製造できる。
【0016】
前述したように、本発明の方法は、前記凹状の歪パターン形成に凝固収縮を利用しているため、成形時に凝固収縮を起こす材料を用いる必要がある。また、前記回折現象を呈する微細な凹凸状表面を、金型内面の微細な凹凸状表面の転写により形成させるためには、転写性の良好な材料であることが好ましい。これらの点において、本発明のパターン反射投影物品の材料としては、50〜100%の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金であることが好ましい。
【0017】
本発明のように魔鏡現象を得るための凹状の歪パターンと回折現象を呈する微細な凹凸状表面を得るためには、従来の魔鏡の製造方法のように、凹状の歪パターンを形成させるため、又は表面を鏡面にするために、表面を研磨仕上げすることはできない。研磨してしまうと、回折現象を呈する微細な凹凸状表面を得ることはできない。仮に、研磨した後に回折現象を呈する微細な凹凸状表面を形成しようとしても、実際的に不可能である。表面が平坦な鏡面でれば、微小バイトを利用して切り欠いたり、押圧して作製することは可能ではあるかもしれないが、歪パターンは凹状に窪んだ面であるため、この凹状面に沿って、回折現象を呈するような1μm以下の微細な整列した凹凸を形成することは現実的ではない。本発明によれば、非晶質合金を用いて成形することにより、その高い転写性を利用して、金型内面の微細な凹凸状表面が転写されるので、回折現象を呈する微細な凹凸状表面を有する成形品を簡単に得ることができる。
【0018】
また、本発明のパターン反射投影物品を得るためには、前記した成形時の凝固収縮性と転写性を有する限り、非晶質合金以外の各種材料、例えば、合成樹脂等を用いることができる。この場合、まず樹脂材料の成形によって、魔鏡現象を得るための凹状の歪パターンと回折現象を呈する微細な凹凸状表面が形成された成形品を得、その後、この表面に光反射性を付与するために、メッキ処理(イオンプレーティング、電鋳メッキ、無電解メッキなど)を施すことによって、非晶質合金の成形品と同じような効果を有するパターン反射投影物品を製造できる。
【実施例】
【0019】
以下、添付図面に示す実施例を説明しつつ、本発明についてさらに具体的に説明する。
まず、図1〜図3は本発明のパターン反射投影物品の一実施例を示しており、図1は表面側から見た斜視図、図2は背面側から見た斜視図、図3は図1のIII−III線から見た断面図を示している。この実施例のプレート状のパターン反射投影物品1は、背面側に、中央部の文字「Y」2aと周囲の円形輪郭2bの厚肉のパターンが形成されており、それ以外の部分は薄肉部3となっている。また、表面側の上記厚肉パターン2a,2bに対応する部分の表面に、肉眼では確認できないような、反射光の集束を生じる凹状(断面がなだらかな湾曲状)の歪パターン4a,4bが形成されており、かつ、表面全体は、図1及び図3に概略的に示すように、回折現象を呈する微細な凹凸状表面5に形成されている。この凹状の歪パターン4a,4bの窪み深さは、前記したように0.5〜2μmの範囲内にあり、また、凹凸状表面5の溝部6(又は山部7)の深さ(又は高さ)は0.5〜1μm、幅は0.5〜1μmの範囲内にある。なお、厚肉のパターン及びそれに対応する凹状の歪パターンは、図示の例に限定されるものではなく、任意の模様、図柄、文字等とすることができることは言うまでもない。また、凹状の歪パターン4a,4bが形成された表面は、図示のように全体的に平坦面の場合だけでなく、後述する図13に示すように、全体的に凸状の湾曲面でもあってもよい。
【0020】
上記パターン反射投影物品1の表面側に太陽光線のような平行光を照射した場合、図3に示されるように、凹状の歪パターン4a,4b以外の平坦面に平行光が当たると、Aで示されるように平行に反射されるが、凹状の歪パターン4a,4bに当たると、Bのように集束するように反射し、この反射光が明暗の模様としてスクリーンに投影される現象(魔鏡現象)と同時に、上記微細な凹凸状表面5での回折効果による分光現象が組み合わされて発現し、背面に形成された厚肉のパターン、即ち周囲の円形輪郭2bとその中央部の文字「Y」2aと同じ像が、虹色のように多色に分光した像(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫色の像)としてスクリーンに投影される。なお、凹状の歪パターン4a,4b形成面だけでなく、それ以外の平坦面も凹凸状表面5であるため、これらの部分での反射光も回折光となっているが、これらの部分での反射光が多色に分光した像を形成することはない。
【0021】
図4は、本発明に係る上記図1〜3に示すパターン反射投影物品1の製造工程を示している。
製造においては、図4(A)に示されるような上型11と下型12とからなる金型10を用いるが、下型12の内面14は、上記パターン反射投影物品1の凹凸状表面5と対応する凹凸状表面15となっている。金型10は、銅、銅合金、超硬合金その他の金属材料から作製することができるが、キャビティ内に注入された溶湯の冷却速度を速くするために、熱容量が大きくかつ熱伝導率の高い材料、例えば銅製、銅合金製等とすることが好ましい。また、金型には冷却水、冷媒ガス等の冷却媒体を流通させる流路を配設することもできる。なお、溶湯の酸化皮膜形成を防止するために、装置全体を真空中又はArガス等の不活性ガス雰囲気中に配置することが好ましい。
【0022】
まず、図4(B)に示されるように、上型11と下型12を組み合わせた状態で、上型11に形成された湯口13から、非晶質合金を生ずる溶融状態の合金材料17を射出する。射出された合金材料17は、キャビティ16内に注入、加圧され、急速に凝固される。この際、射出温度、射出速度等を適宜設定することにより、103K/s以上の冷却速度を得ることができる。その後、上型11と下型12を分離し、図4(C)に示されるような形状の鋳造品18を取り出す。鋳造品18の中央部の文字「Y」2aと周囲の円形輪郭2bの厚肉のパターンに対応する部分の表面には、冷却・凝固時の凝固収縮により、肉眼では確認できないような凹状(断面がなだらかな湾曲状)の歪パターン4a,4bが形成されている。なお、上記厚肉パターンの背面側の面にも、同様に凝固収縮により凹状の歪パターンが形成されている。その後、鋳造品18から湯道部分19を切断・分離し、その切断面を研磨することにより、図4(D)に示されるようなパターン反射投影物品1(図1〜3参照)が得られる。
【0023】
前記非晶質合金としては、本発明の方法を適用できる材料であれば全て使用可能であり、特定の材料に限定されるものではないが、下記一般式(1)〜(6)のいずれか1つで示される組成を有する非晶質合金を好適に使用できる。
【0024】
一般式(1):M1aM2bLncM3dM4eM5f
但し、M1はZr及びHfから選ばれる1種又は2種の元素、M2はNi、Cu、Fe、Co、Mn、Nb、Ti、V、Cr、Zn、Al及びGaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、LnはY、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Yb及びMm(希土類元素の集合体であるミッシュメタル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はBe、B、C、N及びOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はTa、W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はAu、Pt、Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a、b、c、d、e及びfはそれぞれ原子%で、25≦a≦85、15≦b≦75、0≦c≦30、0≦d≦30、0≦e≦15、0≦f≦15である。
【0025】
一般式(2):Al100-g-h-iLngM6hM3i
但し、LnはY、La、Ce、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Yb及びMmよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M6はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta及びWよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はBe、B、C、N及びOよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、g、h及びiはそれぞれ原子%で、30≦g≦90、0<h≦55、0≦i≦10である。
【0026】
一般式(3):Mg100-pM7p
但し、M7はCu、Ni、Sn及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、pは原子%で5≦p≦60である。
この非晶質合金は、混合エンタルピーが負で大きく、アモルファス形成能が良い。
【0027】
一般式(4):Mg100-q-rM7qM8r
但し、M7はCu、Ni、Sn及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M8はAl、Si及びCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、q及びrはそれぞれ原子%で、1≦q≦35、1≦r≦25である。
この非晶質合金のように、前記一般式(3)の合金において原子半径の小さな元素M8(Al,Si,Ca)でアモルファス構造中の隙間を埋めることによって、その構造が安定化し、アモルファス形成能が向上する。
【0028】
一般式(5):Mg100-q-sM7qM9s
一般式(6):Mg100-q-r-sM7qM8rM9s
但し、M7はCu、Ni、Sn及びZnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M8はAl、Si及びCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M9はY、La、Ce、Nd、Sm及びMmよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、q、r及びsはそれぞれ原子%で、1≦q≦35、1≦r≦25、3≦s≦25である。
これらの非晶質合金のように、前記一般式(3)及び(4)の合金に希土類元素を添加することによりアモルファスの熱的安定性が向上する。
【0029】
前記した非晶質合金の中でも、ガラス遷移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)の温度差が極めて広いZr−TM−Al系及びHf−TM−Al系(TM:遷移金属)非晶質合金は、高強度、高耐食性であると共に、過冷却液体温度領域(ガラス遷移領域)ΔTx=Tx−Tgが30K以上、特にZr−TM−Al系非晶質合金は60K以上と極めて広く、この温度領域では粘性流動により数10MPa以下の低応力でも非常に良好な加工性を示す。例えば、Zr60Al15Co2.5Ni7.5Cu15合金(Tg:652K、Tx:768K)のΔTxは116Kと極めて広い。
【0030】
一般に、非晶質合金はガラス遷移領域まで加熱すると長時間の保持によって結晶化が始まるが、本合金のようにΔTxが広い合金は非晶質相が安定であり、ΔTx内の温度を適当に選べば2時間程度までは結晶が発生せず、成形工程において結晶化を懸念する必要はない。
また、本合金は溶湯からの凝固においてもこの特性を如何なく発揮する。一般に非晶質合金の製造には急速な冷却が必要とされるが、本合金は冷却速度10K/s程度の冷却で溶湯から容易に非晶質単相からなるバルク材を得ることができるなど、非常に安定で製造し易い特徴を持っている。その凝固表面はやはり極めて平滑であり、金型表面のミクロンオーダーの微細な凹凸状でさえも忠実に再現する転写性を持っている。従って、金型10内面の微細な凹凸状表面15を上記非晶質合金からなる鋳造品18の表面に極めて精度良く転写できる。
【0031】
図5は、本発明のパターン反射投影物品を合成樹脂材料から作製した実施例を示している。
この場合、まず、樹脂材料を射出成形して前記図1〜3に示すような射出成形品を得る。合成樹脂材料も、厚肉部と薄肉部で凝固収縮性に差があるので、前記図4に示す方法と同様の方法により、魔鏡現象を得るための凹状の歪パターンと回折現象を呈する微細な凹凸状表面が形成された成形品を得ることができる。但し、合成樹脂材料の場合には、光反射性に乏しい。そこで、射出成形後、成形品のの表面にメッキ処理(イオンプレーティング、電鋳メッキ、無電解メッキなど)を施す。それによって、図5に示すように、樹脂20の表面にメッキ層21が形成され、非晶質合金の成形品と同じような効果を有するパターン反射投影物品を製造できる。
【0032】
図6は、本発明のパターン反射投影物品の微細な凹凸状表面のパターン(回折パターン)の変形例を示している。
図6(A)は平行な溝状に形成されたパターン5a、図6(B)は角柱状の突部が2つ割りされて対向する三角柱状に形成されたパターン5bを示している。本発明のパターン反射投影物品の微細な凹凸状パターンは、これらの例に限定されるものではなく、回折効果による分光現象を発現し得るパターンであれば全て採用できる。
【0033】
本発明のパターン反射投影物品は、ファスニング製品等に適用することにより、意匠性にも優れた真贋判定可能な製品として利用することができる。基本的には、背面に形成された厚肉部を隠蔽したプレート状のものを作製し、スライドファスナーのスライダーの引手の一部に利用したり、バックルの表面に埋め込んだり、スナップボタンの表面に形成させたりすることが可能である。また、ファスニング製品に限定されることなく、本発明を適用したプレートを様々な製品(車のエンブレム、電化製品等の社名ロゴ等)に利用することができ、意匠性の高い真贋判定可能な製品を提供することができる。
以下、本発明の利用形態の幾つかの例を、図面を参照して説明する。
【0034】
図7は、本発明のパターン反射投影物品1aを、スライドファスナーのスライダー30の引手31の一部に利用した使用例を示している。
一方、図8は、本発明のパターン反射投影物品1bを、ソケット33とプラグ34で紐35を締結する紐締具32の、プラグ34の頭部として利用した使用例を示している。また、図9は、紐締具のソケット33の底部に本発明のパターン反射投影物品1cを螺合する使用例を示している。
【0035】
図10及び図11は、本発明のパターン反射投影物品1dを、ベルト36のバックル37に形成された穴部38に、その弾性を利用して嵌着して利用した使用例を示している。一方、図12は、本発明のパターン反射投影物品1eを、ソケット39とプラグ40からなるバックルの、ソケット39に形成された穴部38に嵌着して利用した使用例を示している。
また、図13は、他の紐取付具41に本発明のパターン反射投影物品1fを嵌着した使用例を示している。
【0036】
最後に、図14及び図15は、本発明のパターン反射投影物品1gを、雌係脱具43と雄係脱具44を備えるテープ付きスナップボタン42の、雌係脱具43の非係合部側の表面に形成された凹陥部45にスナップ係合して装着した使用例を示している。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、魔鏡の製造や、背面に形成されたり、隠蔽されたりしている各種パターンを反射投影する光装飾を利用した各種製品の製造の他、ファスニング製品の構成部品(スライドファスナーのスライダー、引手等の構成部品、連結具のバックル、コキ、ナス管等の構成部品など)等の各種製品に適用して、その真贋判定に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明のパターン反射投影物品の一実施例の表面側から見た概略斜視図である。
【図2】図1に示すパターン反射投影物品の背面側から見た概略斜視図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1に示すパターン反射投影物品の製造工程を示す概略説明図である。
【図5】本発明のパターン反射投影物品の他の実施例の概略部分断面図である
【図6】本発明のパターン反射投影物品の微細な凹凸状パターン(回折パターン)の変形例を示す概略部分斜視図である。
【図7】本発明のパターン反射投影物品の一使用例を示す概略斜視図である。
【図8】本発明のパターン反射投影物品の他の使用例を示す概略部分破断斜視図である。
【図9】本発明のパターン反射投影物品のさらに他の使用例を示す概略部分破断斜視図である。
【図10】本発明のパターン反射投影物品の別の使用例を示す概略部分斜視図である。
【図11】図10に示すパターン反射投影物品の別の使用例の概略部分断面図である。
【図12】本発明のパターン反射投影物品のさらに別の使用例を示す概略部分斜視図である。
【図13】本発明のパターン反射投影物品のさらに他の使用例を示す概略断面図である。
【図14】本発明のパターン反射投影物品のさらに別の使用例を示す概略部分斜視図である。
【図15】図14に示すパターン反射投影物品のさらに別の使用例の概略部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1,1a〜1g パターン反射投影物品
2a 文字「Y」の厚肉パターン
2a 円形輪郭の厚肉パターン
3 薄肉部
4a,4b 凹状の歪パターン
5 凹凸状表面
10 金型
11 上型
12 下型
13 湯口
15 凹凸状表面
16 キャビティ
17 非晶質合金材料
18 鋳造品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面側に厚肉のパターン(2a,2b)が形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分に凹状の歪パターン(4a,4b)が形成されており、かつ、少なくとも上記歪パターンの表面が回折現象を呈する微細な凹凸状(5)に形成されていることを特徴とするパターン反射投影物品。
【請求項2】
前記物品が、50〜100%の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金からなることを特徴とする請求項1に記載のパターン反射投影物品。
【請求項3】
前記物品が、合成樹脂から成形された物品であり、表面側の前記歪パターンを含む表面にメッキ層を有することを特徴とする請求項1に記載のパターン反射投影物品。
【請求項4】
ファスニング製品の構成部品であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパターン反射投影物品。
【請求項5】
背面側に厚肉のパターン(2a,2b)を有する物品(18)を金型(10)内で熱成形し、冷却することにより、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差を利用して上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状の歪パターン(4a,4b)を形成させることを特徴とするパターン反射投影物品の製造方法。
【請求項6】
前記金型内面の微細な凹凸状表面(15)の転写により、回折現象を呈する微細な凹凸状表面(5)を形成させることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項1】
背面側に厚肉のパターン(2a,2b)が形成されていると共に、表面側の上記パターンに対応する部分に凹状の歪パターン(4a,4b)が形成されており、かつ、少なくとも上記歪パターンの表面が回折現象を呈する微細な凹凸状(5)に形成されていることを特徴とするパターン反射投影物品。
【請求項2】
前記物品が、50〜100%の非晶質相を含む実質的に非晶質の合金からなることを特徴とする請求項1に記載のパターン反射投影物品。
【請求項3】
前記物品が、合成樹脂から成形された物品であり、表面側の前記歪パターンを含む表面にメッキ層を有することを特徴とする請求項1に記載のパターン反射投影物品。
【請求項4】
ファスニング製品の構成部品であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のパターン反射投影物品。
【請求項5】
背面側に厚肉のパターン(2a,2b)を有する物品(18)を金型(10)内で熱成形し、冷却することにより、厚肉部と薄肉部の凝固収縮率の差を利用して上記厚肉のパターンに対応する部分の表面に、凹状の歪パターン(4a,4b)を形成させることを特徴とするパターン反射投影物品の製造方法。
【請求項6】
前記金型内面の微細な凹凸状表面(15)の転写により、回折現象を呈する微細な凹凸状表面(5)を形成させることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−23567(P2006−23567A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201983(P2004−201983)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】
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