説明

パターン形成方法

【課題】低誘電体材料等の基板に与える影響を抑えつつ、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜を容易に除去できるパターン形成方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明は(a)カリックスアレーン系化合物を含むレジスト下層膜形成用組成物を用い被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成する工程と、(b)レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成する工程と、(c)レジストパターンをマスクとした少なくともレジスト下層膜及び被加工基板のエッチングにより被加工基板にパターンを形成する工程と、(d)被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去する工程とをこの順に有し、(d)工程の前にレジスト下層膜を加熱又は酸処理する工程をさらに有し、カリックスアレーン系化合物の芳香環又はヘテロ芳香環の少なくとも一部に下記式(i)で表される基が結合しているパターン形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層レジストプロセスによるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子等の製造においては、加工サイズの微細化に対応し、多層レジストプロセスを用いるパターン形成方法が広まりつつある。この多層レジストプロセスは、一般的には、レジスト下層膜形成用組成物の被加工基板の上面側への塗布によりレジスト下層膜を形成し、その上面側へのレジスト組成物の塗布によりレジスト被膜を形成する。次いで、縮小投影露光装置(ステッパー)等を用いた放射線の照射によりレジスト被膜にマスクパターンを転写し、適当な現像液を用いた現像によりレジストパターンを得る。引き続きドライエッチングによりこのレジストパターンをレジスト下層膜に転写する。最後にドライエッチングによりレジスト下層膜パターンを被加工基板に転写することにより所望のパターン付き基板を得ることができる。なお、レジスト下層膜の上面側に中間層を更に設ける3層以上の多層レジストプロセスが採用される場合もある。また、レジストパターンを形成する際に、例えばナノインプリント法など、レジスト組成物を用いる方法以外の方法も用いられている。
【0003】
一般的に、被加工基板直上のレジスト下層膜には炭素含有量の多い材料が用いられる。このように炭素含有量が多いと被加工基板加工時のエッチング選択性が向上し、より正確なパターン転写が可能となる。このような下層膜の材料としては、特に熱硬化フェノールノボラック樹脂がよく知られている。また、アセナフチレン系の重合体を含有する組成物が下層膜として良好な特性を示すことが知られている(特開2000−143937号公報及び特開2001−40293号公報参照)。
【0004】
上述のレジスト下層膜は、エッチングによるパターン形成後は不要となるため、アッシング等により除去される。アッシングとは、通常、酸素プラズマを発生させてプラズマ中の酸素ラジカルで、レジスト下層膜中の有機成分を燃焼させる方法である。しかし、半導体基板に用いられる低誘電体材料に対してアッシングを行うと、低誘電体(Low−k)材料は耐性が弱いため、容易に表面が劣化したり、誘電率が増加してしまうという不都合がある。このような中、溶液を用いてレジスト下層膜を剥離する技術は提案されているものの(特開2004−177668号公報参照)、この技術では、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜を剥離する場合には剥離性が低いという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−143937号公報
【特許文献2】特開2001−40293号公報
【特許文献3】特開2004−177668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、低誘電体材料等の基板に与える影響を抑えつつ、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜を容易に除去することができるパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定構造を有するカリックスアレーン系化合物から形成されたレジスト下層膜が優れた耐熱性、有機溶媒に対する溶解耐性及びエッチング耐性に加え、塩基性溶液に対する適度な溶解性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
(a)カリックスアレーン系化合物を含むレジスト下層膜形成用組成物を用い、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成する工程と、
(b)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成する工程と、
(c)上記レジストパターンをマスクとした少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板のエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程と、
(d)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去する工程と
をこの順に有し、
上記(d)工程の前に、レジスト下層膜を加熱又は酸処理する工程をさらに有し、
上記カリックスアレーン系化合物の芳香環又はヘテロ芳香環の少なくとも一部に下記式(i)で表される基(以下、「特定基(i)」ともいう)が結合しているパターン形成方法である。
【化1】

(式(i)中、Rは、加熱又は酸の作用により酸性官能基を生じる基である。)
【0009】
本発明のパターン形成方法は、上記各工程を有し、かつレジスト下層膜形成用組成物として、上記特定基(i)が芳香環又はヘテロ芳香環の少なくとも一部に結合しているカリックスアレーン系化合物(以下、「特定カリックスアレーン系化合物」ともいう)を含む組成物を用いる。上記特定基(i)は、加熱又は酸の作用により酸性官能基を生じる基Rを含んでいる。上記特定カリックスアレーン系化合物を含む組成物を用いて形成されたレジスト下層膜は、優れた耐熱性を有するので、比較的高い温度に加熱することができ、(d)工程より前の加熱又は酸処理する工程により、上記Rが酸性官能基を生じることで、塩基性溶液に容易に溶解させることができる。その結果、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜をアッシングを用いず、塩基性溶液を用いる処理によって除去することができる。従って、当該パターン形成方法によれば、低誘電体材料等の基板に与える影響を抑えつつ、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜を容易に除去することができる。
【0010】
(a)工程と(b)工程との間に、
(a’)上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成する工程
を含み、(c)工程において、さらに中間層をエッチングすることが好ましい。
【0011】
当該パターン形成方法によれば、レジスト下層膜とレジスト膜との間に中間層を形成することにより、より多層のレジストプロセスを行うことができ、その結果、より良好な形状のより微細なパターンを得ることができる。
【0012】
ここで、「カリックスアレーン系化合物」とは、ヒドロキシ基が結合する芳香環又はヒドロキシ基が結合するヘテロ芳香環が炭化水素基を介して複数個環状に結合した環状オリゴマー、又はこのヒドロキシ基、芳香環、ヘテロ芳香環及び鎖状炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部が置換されたものをいう。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のパターン形成方法によれば、基板に与える影響を抑えつつ、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜を容易に除去することができる。従って、本発明のパターン形成方法は、半導体基板に用いられる低誘電体材料に対しても好適に用いることができ、高品質のパターン形成基板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のパターン形成方法について、詳説する。
【0015】
<パターン形成方法>
当該パターン形成方法は、
(a)特定カリックスアレーン系化合物を含むレジスト下層膜形成用組成物を用い、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成する工程と、
(b)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成する工程と、
(c)上記レジストパターンをマスクとした少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板のエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程と、
(d)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去する工程と
をこの順に有し、
上記(d)工程の前に、レジスト下層膜を加熱又は酸処理する工程をさらに有する。
【0016】
なお、(a)工程と(b)工程との間に、(a’)上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成する工程を含み、(c)工程において、さらに中間層をエッチングしてもよい。以下、各工程について、詳説する。
【0017】
<(a)工程>
(a)工程においては、特定カリックスアレーン系化合物を含むレジスト下層膜形成用組成物を用い、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成する。このレジスト下層膜形成用組成物については後述する。
【0018】
上記被加工基板としては、例えば、シリコンウェハー、アルミニウムで被覆したウェハー等を使用することができる。
【0019】
また、被加工基板へのレジスト下層膜形成用組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の方法で実施することができる。
【0020】
また、通常、被加工基板へのレジスト下層膜形成用組成物の塗布後、塗膜の乾燥等を目的として加熱を行う。
【0021】
この(a)工程で形成されるレジスト下層膜の膜厚は、通常、10nm〜5μmであり、好ましくは、30nm〜0.5μmである。
【0022】
<(a’)工程>
この工程にて形成される中間層は、レジストパターン形成において、レジスト下層膜及び/又はレジスト被膜が有する機能を補ったり、これらが有していない機能を得るためにこれらの機能が付与された層のことである。例えば、反射防止膜を中間層として形成した場合、レジスト下層膜の反射防止機能を補うことができる。
【0023】
この中間層は、有機化合物や無機酸化物により形成することができる。この有機化合物としては、例えば、Brewer Science製の「DUV−42」、「DUV−44」、「ARC−28」、「ARC−29」等の商品名で市販されている材料や、ローム アンド ハース製の「AR−3」、「AR−19」等の商品名で市販されている材料等を用いることができる。また、上記無機酸化物としては、例えば、JSR製の「NFC SOG」シリーズ等の商品名で市販されている材料やCVD法により形成されるポリシロキサン、酸化チタン、酸化アルミナ、酸化タングステン等を用いることができる。
【0024】
中間層を形成するための方法は特に限定されないが、例えば、塗布法やCVD法等を用いることができる。これらのなかでも、塗布法が好ましい。塗布法を用いた場合、レジスト下層膜を形成後、中間層を連続して形成することができる。
【0025】
また、中間層の膜厚は特に限定されず、中間層に求められる機能に応じて適宜選択されるが、10nm〜3μmが好ましく、さらに好ましくは20nm〜300nmである。
【0026】
<(b)工程>
(b)工程においては、上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成する。この工程としては、例えば、フォトリソグラフィを用いる工程等が挙げられる。以下、具体的に説明する。
【0027】
フォトリソグラフィを用いる工程は、例えば
(b−1)上記レジスト下層膜上に、レジスト組成物を用い、レジスト被膜を形成する工程と、
(b−2)上記レジスト被膜に、選択的に放射線を照射して、このレジスト被膜を露光する工程と、
(b−3)上記露光されたレジスト被膜を現像して、レジストパターンを形成する工程とを有する。
【0028】
上記(b−1)工程では、レジスト組成物を用い、レジスト下層膜上にレジスト被膜を形成する。具体的には、得られるレジスト被膜が所定の膜厚となるようにレジスト組成物を塗布した後、プレベークすることによって塗膜中の溶媒を揮発させ、レジスト被膜が形成される。
【0029】
レジスト組成物としては、例えば、光酸発生剤を含有するポジ型又はネガ型の化学増幅型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド系感光剤とからなるポジ型レジスト組成物、アルカリ可溶性樹脂と架橋剤とからなるネガ型レジスト組成物等が挙げられる。
【0030】
上記レジスト組成物は、固形分濃度が、通常、5〜50質量%程度であり、一般に、例えば、孔径0.2μm程度のフィルターでろ過して、レジスト被膜の形成に供される。尚、この工程では、市販のレジスト組成物をそのまま使用することもできる。
【0031】
レジスト組成物の塗布方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法等により実施することができる。
【0032】
また、プレベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、30℃〜200℃程度、好ましくは50℃〜150℃である。
【0033】
上記(b−2)工程では、得られたレジスト被膜の所定領域に放射線が照射され、選択的に露光が行われる。
【0034】
露光に用いられる放射線としては、レジスト組成物に使用される光酸発生剤の種類に応じて、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、電子線、γ線、分子線、イオンビーム等から適切に選択されるが、遠紫外線であることが好ましく、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、Fエキシマレーザー光(波長157nm)、Krエキシマレーザー光(波長147nm)、ArKrエキシマレーザー光(波長134nm)、極紫外線(波長13nm等)が好ましく、ArFエキシマレーザー光がさらに好ましい。
【0035】
上記(b−3)工程では、露光後のレジスト被膜を現像液で現像することで、レジストパターンが形成される。
【0036】
この工程で用いられる現像液としては、使用されるレジスト組成物の種類に応じて適宜選択される。具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性水溶液等が挙げられる。なお、(a’)工程を行い中間層を形成しておくと、これらのアルカリ性水溶液のレジスト下層膜に対する影響を抑制することができる。
【0037】
これらのアルカリ性水溶液には、水溶性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加することもできる。
【0038】
また、現像液としては、有機溶媒を含有する現像液を用いることもできる。この有機溶媒としては、例えば、エステル類、ケトン類、エーテル類、アルコール類、アミド類、炭化水素類等が挙げられる。有機溶媒現像は、レジスト下層膜に対する影響が小さい。
【0039】
また、上記現像液での現像後、洗浄し、乾燥することによって、所定のレジストパターンが形成される。
【0040】
なお、この工程では、解像度、パターンプロファイル、現像性等を向上させるため、現像前の上記露光後((b−2)工程の後、(b−3)工程の前)に、ポストベークを行うことができる。このポストベークの温度は、使用されるレジスト組成物の種類等に応じて適宜調整されるが、通常、50℃〜200℃程度、好ましくは70℃〜150℃である。
【0041】
<(c)工程>
(c)工程においては、上記レジストパターンをマスクとした少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板のエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する。なお、中間層を形成した場合は、さらに中間層もエッチングする。上記エッチングとしては、ドライエッチング及びウエットエッチングのいずれも採用できるが、ドライエッチングが好ましい。
【0042】
上記ドライエッチングは、公知のドライエッチング装置を用いて行うことができる。また、ドライエッチング時のソースガスとしては、被エッチング物の元素組成にもよるが、O、CO、CO等の酸素原子を含むガス、He、N、Ar等の不活性ガス、Cl、BCl等の塩素系ガス、CHF、CF等のフッ素系ガス、H、NHのガス等を使用することができる。なお、これらのガスは混合して用いることもできる。
【0043】
<レジスト下層膜を加熱又は酸処理する工程>
当該パターン形成方法においては、上記(d)工程の前に、レジスト下層膜を加熱又は酸処理する工程をさらに有し、特定カリックスアレーン系化合物の特定基(i)が有するRの一部又は全部を解離して酸性官能基を生じさせる。このように、特定カリックスアレーン系化合物が有する上記Rを解離して酸性官能基を生じさせることで、形成されるレジスト下層膜は塩基性溶液で容易に除去することができる。
【0044】
上記Rの一部又は全部を解離する方法としては、レジスト下層膜を加熱する方法が好ましい。この際の加熱温度としては、好ましくは100℃〜330℃であり、より好ましくは200℃〜320℃であり、さらに好ましくは240℃〜300℃である。また、この際の加熱時間としては30秒〜600秒であり、好ましくは45秒〜240秒である。さらに、この加熱時の酸素濃度は5容量%以上であることが好ましく、20容量%以上であることが更に好ましい。
【0045】
なお、熱酸発生剤等をレジスト下層膜形成用組成物に含む場合には、この熱酸発生剤等から加熱により生じた酸によって、上記R一部又は全部を解離することができる。その結果、上記Rの解離をより低い温度で行うことができる。
【0046】
上記Rの一部又は全部を解離する方法として、上記加熱する方法以外にも、レジスト下層膜を酸処理する方法も挙げられる。レジスト下層膜を酸処理する方法としては、酸を用いて洗浄する方法、光酸発生剤等をレジスト下層膜形成用組成物に含む場合に、レジスト下層膜に光を照射する方法等が挙げられる。
【0047】
上記レジスト下層膜を加熱又は酸処理する工程を行う時点としては、当該パターン形成方法における(d)工程より前であれば特に限定されず、例えば、(a)工程と(b)工程の間、((a)工程と(a’)工程との間若しくは(a’)工程と(b)工程との間)、(b)工程と(c)工程との間、(c)工程の後、又は(a)工程、(b)工程若しくは(c)工程と同時のうちのいずれか1つ又は2つ以上等が挙げられる。これらの中で、(a)工程と同時、すなわち、レジスト下層膜を形成する際の加熱等として行うこと、又は(c)工程の後、すなわち、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜に対して行うことが簡便性の観点から好ましい。
【0048】
<(d)工程>
(d)工程においては、上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去する。
【0049】
この工程に用いる塩基性溶液としては、塩基性である限り特に限定されないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン等の塩基性水溶液を用いることができる。これらの中で、TMAH水溶液が好ましい。また、これらの塩基性水溶液は、水溶性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類や、界面活性剤を適量添加したものであってもよい。また、塩基性溶液であれば、水以外の有機溶媒を含む溶液であってもよい。
【0050】
この塩基性溶液のpHとしては、例えば7.5以上が好ましく、8以上がさらに好ましい。pHが7.5未満の場合は、レジスト下層膜が十分に除去されないおそれがある。
【0051】
この塩基性溶液によるレジスト下層膜の除去方法としては、レジスト下層膜と塩基性溶液とが一定時間接触できる方法であれば特に限定されず、例えば、パターンが形成された被加工基板を塩基性溶液に浸漬する方法、塩基性溶液を吹き付ける方法、塩基性溶液を塗布する方法などが挙げられる。なお、この浸漬する方法における浸漬時間としては例えば0.2分〜30分程度とすることができる。これらの各方法の後、被加工基板を水洗し、乾燥させるとよい。
【0052】
当該パターン形成方法によれば、このように被加工基板にエッチングによりパターンを形成した後において、レジスト下層膜を塩基性溶液によって除去するため、基板の影響を抑えつつ、容易にレジスト下層膜を除去することができる。特に当該パターン形成方法によれば、アッシング等によって影響を受けやすい低誘電材料を基板に用いた場合においても、影響を抑えてレジスト下層膜を除去することができる。
【0053】
[レジスト下層膜形成用組成物]
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト下層膜形成用組成物は、[A]特定カリックスアレーン系化合物(以下、「[A]化合物」ともいう)を含み、[B]溶媒、その他の成分等を含んでいてもよい。以下、各成分について詳述する。
【0054】
[[A]化合物]
[A]化合物は、カリックスアレーン系化合物であって、その芳香環又はヘテロ芳香環の少なくとも一部に上記式(i)で表される基が結合する。
【0055】
上記式(i)中、Rは、加熱又は酸の作用により酸性官能基を生じる基である。
【0056】
[A]化合物が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等が挙げられる。また、[A]化合物が有するヘテロ芳香環としては、例えば、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ホスホール環、ピラゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環等が挙げられる。これらの中で、芳香環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0057】
[A]化合物の芳香環又はヘテロ芳香環同士を結合する炭化水素基としては、例えば炭素数1〜8の鎖状炭化水素基が挙げられる。この中で、炭素数1〜8の飽和炭化水素基が好ましく、炭素数1〜6の飽和炭化水素基がより好ましい。
【0058】
上記Rから加熱または酸の作用により生じる酸性官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、カルボキシ基、スルホ基等を挙げることができ、フェノール性水酸基又はカルボキシ基であることが好ましい。
【0059】
また、上記Rで表される基としては、例えば、−CR(式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式炭化水素基である。また、R及びRは互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基を形成してもよい。)で表される基、t−ブトキシカルボニルメチル基、2−アルキル−2−アダマンチルオキシカルボニルメチル基等のt−(シクロ)アルキルオキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニル基等のt−アルコキシカルボニル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシ置換メチル基等が挙げられる。これらの中で、t−(シクロ)アルキルオキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニル基、アルコキシ置換メチル基が好ましく、t−(シクロ)アルキルオキシカルボニルメチル基がより好ましく、2−エチル−2−アダマンチルオキシカルボニルメチル基、t−ブトキシカルボニルメチル基がさらに好ましい。
【0060】
上記R〜Rが示す炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、1−メチルプロピル基、t−ブチル基等が挙げられる。上記R〜Rが示す炭素数4〜20の脂環式炭化水素基、R及びRが互いに結合してそれぞれが結合している炭素原子と共に形成してもよい炭素数4〜20の2価の脂環式炭化水素基としては、例えばアダマンタン骨格、ノルボルナン骨格、トリシクロデカン骨格、テトラシクロドデカン骨格等の有橋式骨格を有する基;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の単環のシクロアルカン骨格を有する基;これらの基を、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基等の炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基の1種以上で置換した基等が挙げられる。
【0061】
[A]化合物の芳香環又はヘテロ芳香環には、特定カリックスアレーン系化合物の環同士を結合する炭化水素基以外にも、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、または炭素数1〜30の1価の有機基等の基(以下、「基(a)」ともいう)が結合していてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、炭素数1〜30の1価の有機基としては、例えば、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数3〜30のシクロアルキル基、炭素数3〜30のシクロアルケニル基、炭素数8〜30のシクロアルキニル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基、炭素数3〜30の複素環式基等が挙げられる。これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アラルキル基及び複素環式基の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、炭素数7〜15のアラルキル基、炭素数3〜15の複素環式基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールカルボキシ基、アリールオキシカルボニル基、アミド基、アルキルアミド基、アリールアミド基等が挙げられる。
【0062】
上記炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、直鎖状又は分岐状のプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、イコシル基等が挙げられる。
【0063】
上記炭素数2〜30のアルケニル基としては、エテニル基、直鎖状又は分岐状のプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。
【0064】
上記炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、直鎖状又は分岐状のプロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ドデシニル基、テトラデシニル基、ヘキサデシニル基、イコシニル基等が挙げられる。
【0065】
上記炭素数3〜30のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロイコシル基等の単環式基、ジシクロペンチル基、ジシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等の多環式基が挙げられる。
【0066】
上記炭素数3〜30のシクロアルケニル基としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロイコセニル基等の単環式基;ジシクロペンテニル基、ジシクロヘキセニル基、ノルボルネニル基、トリシクロデシニル基、テトラシクロドデカニル基等の多環式基が挙げられる。
【0067】
上記炭素数8〜30のシクロアルキニル基としては、シクロオクチニル基、シクロデシニル基、シクロイコシニル基等の単環式基;テトラシクロドデシニル基等の多環式基が挙げられる。
【0068】
上記炭素数6〜30のアリール基としてはフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−エチルフェニル基、m−エチルフェニル基、p−エチルフェニル基、キシリル基、クミル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0069】
上記炭素数7〜30のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0070】
上記炭素数3〜30の複素環式基としては、フラニル基、フルフリル基、イソベンゾフラニル基、ピロリル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、チオフェニル基、ホスホリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、キノリニル基、ピラニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾホスホリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾイソオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基等のヘテロアリール基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロフルフリル基、テトラヒドロピラニル基、ピラニルメチル基、テトラヒドロピラニルメチル基、テトラヒドロチオフェニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基等の非ヘテロ芳香族系複素環式基等が挙げられる。
【0071】
これらの基(a)の中で、得られるレジスト下層膜の曲がり耐性及びエッチング耐性が向上する観点から、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアラルキル基及び炭素数3〜30の複素環式基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数6〜30のアリール基及び置換基を有していてもよい炭素数3〜30のヘテロアリール基がより好ましく、[A]化合物の合成容易性の観点から、フェニル基、トリル基、ナフチル基、チオフェニル基がさらに好ましい。また、基(a)としては、[A]化合物の塩基性溶液に対する溶解性を高める観点、及び[A]化合物の合成容易性の観点から、ヒドロキシ基が好ましい。
【0072】
[A]化合物の芳香環又はヘテロ芳香環に結合する上記特定基(i)の数としては、環1個あたり、0.1個以上が好ましく、0.5個以上がより好ましく、0.5〜5個がさらに好ましく、0.5〜2個が特に好ましい。
[A]化合物の芳香環又はヘテロ芳香環に結合する基(a)の数としては、環1個あたり、0〜5個が好ましく、0.1〜5個がより好ましく、0.5〜5個がさらに好ましく、0.5〜2個が特に好ましい。
【0073】
[A]化合物としては、下記式(1)で表される部分構造を有する化合物が好ましい。
【0074】
【化2】

【0075】
(式(1)中、Qは、芳香環又はヘテロ芳香環である。n0は、1以上の整数である。Rは、上記式(i)と同義である。Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、または炭素数1〜30の1価の有機基である。m0は、0以上の整数である。R及びRがそれぞれ複数の場合、複数のR及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0076】
n0としては、1〜5の整数が好ましく、1又は2がより好ましい。
m0としては、0〜5の整数が好ましく、0〜3の整数がより好ましく、1〜3の整数がさらに好ましい。
【0077】
上記式(1)で表される部分構造における芳香環及びヘテロ芳香環は、この部分構造以外の他の部分構造と共有結合を形成していてもよいし、他の部分構造中のベンゼン環又はヘテロ芳香環等と縮環していてもよい。
【0078】
[A]化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化合物と、下記式(3)で表される化合物とを縮合反応させてカリックスアレーン系化合物を得て、得られたカリックスアレーン系化合物が有するフェノール性水酸基の水素原子の少なくとも一部を上記Rと置換することで得られる化合物を挙げることができる。フェノール性水酸基の水素原子の上記Rとの置換は、通常知られている方法で行うことができる。
【0079】
【化3】

(式(2)中、Yは炭素数1〜10の炭化水素基である。qは0〜4の整数である。)
【0080】
【化4】

(式(3)中、Xは、炭素数1〜8のp価の炭化水素基又は水素原子である。pは、1又は2である。)
【0081】
上記式(2)で表される化合物と、上記式(3)で表される化合物との縮合反応の条件(方法)としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、酸触媒等の触媒の存在下、60〜90℃で6〜72時間脱水縮合させる方法等を挙げることができる。
【0082】
縮合反応に用いる上記式(2)で表される化合物と上記式(3)で表される化合物との割合は特に制限はないが、収率を向上させる観点から、上記式(3)で表される化合物1molに対して、上記式(2)で表される化合物が1〜8molであることが好ましく、2〜6molであることが更に好ましく、3〜5molであることが特に好ましい。上記割合の範囲外であると、目的とするフェノール性化合物の収率が低下する場合がある。
【0083】
縮合反応は、通常、上記式(2)で表される化合物と上記式(3)で表される化合物を適当な反応溶媒に溶解した反応溶液中で行う。反応溶媒としては有機溶媒が好ましく、アルコール系溶媒が更に好ましい。アルコール系溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−ブタノール、イソプロピルアルコール等を挙げることができる。なかでも、収率向上の観点からは、メチルアルコール、エチルアルコールが好ましい。
【0084】
縮合反応の工程(縮合反応工程)における、反応溶液中の基質濃度(上記式(2)で表される化合物と上記式(3)で表される化合物との合計の濃度)は、特に限定されないが、収率向上の観点からは、2mol/L以上であることが好ましく、4mol/L以上であることが更に好ましく、4〜10mol/Lであることが特に好ましい。基質濃度が2mol/L未満であると、目的とするフェノール性化合物の収率が低下する場合がある。
【0085】
縮合反応は、通常、触媒の存在下で行う。触媒としては酸触媒が好ましい。酸触媒の具体例としては、塩酸、塩化水素、パラトルエンスルホン酸、蓚酸、硫酸等を挙げることができる。なかでも、収率向上の観点からは塩酸が好ましい。
【0086】
縮合反応が終了すると、フェノール性化合物を縮合物(沈殿物)として得ることができる。得られた縮合物(沈殿物)を、(1)水、(2)有機溶媒、又は(3)水と有機溶媒との混合溶媒、で洗浄して精製することが好ましい。有機溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロペンタノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン等のケトン類;メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジメチロール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;フェノール、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド等を挙げることができる。なかでも、メチルアルコール、エチルアルコール、ジエチルエーテルが好ましい。また、水及びエーテル系溶媒を含有する有機溶媒の少なくともいずれかで洗浄して精製することが好ましい。なお、これらの有機溶媒は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、得られた縮合物(沈殿物)を有機溶媒に溶解させ、溶解させた有機溶媒を水で洗浄することにより、残存する原料や副生成物を除去することも好ましい。
【0087】
上記フェノール性水酸基の水素原子を上記Rと置換する割合としては、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%がさらに好ましい。置換する割合を上記範囲とすることで、[A]化合物を含むレジスト下層膜の塩基性溶液に対する溶解性と、エッチング耐性とを高いレベルで併立させることができる。
【0088】
[A]化合物としては、具体的には、下記式(4)で表される化合物、下記式(5)で表される化合物、下記式(6)で表される化合物等を挙げることができる。
【0089】
【化5】

(上記式(4)中、Rは、水素原子または熱または酸により酸性官能基を生じる基である。Xは式(3)中のXと同義である。Y及びqは式(2)中のY及びqと同義である。)
なお、式(4)中のRで表される熱または酸により酸性官能基を生じる基は、式(1)中のRで表される熱または酸により酸性官能基を生じる基と同義である。
【0090】
【化6】

(上記式(5)中、Rは、水素原子または熱または酸により酸性官能基を生じる基である。Xは式(3)中のXと同義である。Y及びqは式(2)中のY及びqと同義である。nは2又は3である。)
なお、式(5)中のRで表される熱または酸により酸性官能基を生じる基は、式(1)中のRで表される熱または酸により酸性官能基を生じる基と同義である。
【0091】
【化7】


(上記式(6)中、Rは、水素原子または熱または酸により酸性官能基を生じる基である。Xは上記式(3)におけるpが1の場合のXと同義である。Y及びqは式(2)中のY及びqと同義である。mは4〜8の整数である。)
なお、式(6)中のRで表される熱または酸により酸性官能基を生じる基は、式(1)中のRで表される熱または酸により酸性官能基を生じる基と同義である。
【0092】
上記レジスト下層膜形成用組成物は、[A]化合物を1種又は2種以上含有していてもよい。また、上記レジスト下層膜形成用組成物は、[A]化合物以外のカリックスアレーン系化合物を含有していてもよい。
【0093】
[[B]溶媒]
上記レジスト下層膜形成用組成物は、通常、上記[A]化合物を溶解する[B]溶媒を含む液状の組成物である。
【0094】
[B]溶媒としては、上記[A]化合物を溶解しうるものであれば特に限定されないが、例えば、特開2004−168748号公報における段落[0070]〜[0073]に記載のもの等を用いることができる。
【0095】
これらの溶媒のなかでも、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール部分エーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルアセテート;乳酸エチル、酢酸n−ブチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のカルボン酸エステル;2−ヘプタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトンが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートがより好ましい。
【0096】
なお、この溶媒は、1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。[B]溶媒の含有量としては、得られる組成物の固形分濃度が、通常1〜80質量%となる範囲であり、好ましくは3〜40質量%、さらに好ましくは5〜30質量%となる範囲である。
【0097】
[その他の成分]
上記レジスト下層膜形成用組成物は、樹脂([A]化合物を除く)、界面活性剤、保存安定剤、消泡剤等のその他の成分を含んでいてもよい。上記樹脂としては、例えば、ノボラック系樹脂、レゾール系樹脂、アセナフチレン系樹脂、ポリアリーレン系樹脂等が挙げられる。
【0098】
但し、このレジスト下層膜形成用組成物は、(d)工程にて塩基性溶液を用いて下層膜が除去されるため、実質的に架橋剤を含んでいないことが好ましい。この架橋剤の含有量としては、[A]化合物100質量部に対し、3質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がさらに好ましく、0質量部であることが特に好ましい。
【0099】
当該パターン形成方法において形成されるレジスト下層膜は、有機溶媒に難溶であり、かつ、塩基性溶液に可溶であるという特性を有する。
【0100】
上記レジスト下層膜については、上記パターン形成方法で説明しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0101】
なお、有機溶媒に難溶とは、成膜後のレジスト下層膜上に有機溶媒をまたは有機溶媒を含むレジスト溶液等を塗布した場合に、レジスト下層膜と塗布溶液が交じり合わないことである。具体的には、23℃のプロピレングリコールメチルエーテルアセテートに1分間接触させた前後におけるレジスト下層膜の残存膜厚率が99%以上であることをいう。
また、塩基性溶液に可溶であるとは、成膜後のレジスト下層膜上に塩基性溶液を塗布した場合に、塩基性溶液に溶解し、レジスト下層膜が除去されることである。具体的には、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に1分間接触させた後にレジスト下層膜の残存膜厚率が1%未満であることをいう。
【0102】
上記レジスト下層膜は有機溶媒に難溶であるため、上面に塗布等により積層される他の層の侵食を抑えることができ、層として機能する。また、当該レジスト下層膜は、塩基性溶液に可溶であるため、パターン形成後、塩基性溶液によって容易に、パターンへの影響を抑えつつ除去されることができる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」は、特に断らない限り質量基準である。また、実施例、比較例中の各種の測定は、下記の方法により行った。
【0104】
(合成例1)
(化合物(A−1)の合成)
レゾルシノール2.20g(20mmol)をエタノール4.5mLに溶解させ塩酸1.5mL加えた。この溶液を撹拌しながら5℃まで氷冷し、グルタルアルデヒドの50%水溶液0.40g(2mmol)をゆっくりと滴下した。その後、80℃で48時間加熱し、黄色の懸濁液が得られた。この懸濁液をメタノール中に注ぎ、沈殿物をろ過により取得後、メタノールで3回洗浄した。得られた固体は室温で24時間減圧乾燥した。その結果、粉末状の淡黄色固体(S)が得られた(収量:0.43g(収率:79%))。得られた淡黄色固体(S)の構造確認は、MALDI−TOF−MS(型番SHIMAZU/KRATOSマトリックス支援レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置 KOMPACT MALDI IV tDE、島津製作所製)、IR(型番FT−IR 420型、日本分光製)及びH−NMR(型番JNM−ECA−500型、日本電子製)で行った。これらの結果を以下に示す。
【0105】
MALDI−TOF−MS:分子量1705.86の化合物のみが得られたことが示された。
【0106】
IR(film法):(cm−1
3406(νOH);2931(νC−H);1621、1505、1436(νC=C(aromatic)
【0107】
H−NMR(500MHz、溶媒CDCl、内部標準TMS):δ(ppm)=0.86〜2.35(b,12.0H)、3.98〜4.22(m,4.0H)、6.09〜7.42(m,8.0H)、8.65〜9.56(m,8.0H)
【0108】
得られた上記淡黄色固体(S)3.5gを1−メチル−2−ピロリドン40gに加えた後、更にテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8gを加え、70℃で4時間攪拌し溶解させた。溶解後、炭酸カリウム3.3gを加え、70℃で1時間撹拌した。その後、予め1−メチル−2−ピロリドン20gに溶解させたブロモ酢酸2−メチル−2−アダマンチル6.9gを徐々に加え、70℃で6時間攪拌した。攪拌後、室温まで冷却し、水/塩化メチレンで抽出を行った。続いて、3%のシュウ酸水100mLで3回洗浄した後、水100mLで2回洗浄した。水層を廃棄した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、ヘキサン:酢酸エチル=1:4を溶出液としてシリカゲルカラムで精製して、下記式(A)で表される化合物として下記化合物(A−1)を3.2g得た。なお、H−NMR分析を行ったところ化合物(A−1)における保護率(化合物(A−1)中のフェノール性水酸基の水素原子が2−メチル−2−アダマンチルオキシカルボニルメチル基で置換された割合)は40%であった。
【0109】
【化8】

【0110】
H−NMR(500MHz、溶媒CDCl、内部標準TMS):δ(ppm)=0.82〜2.40(m,66.4H)、3.80〜4.52(m,10.4H)、6.08〜7.41(m,8.0H)、8.62〜9.54(m,3.2H)
【0111】
(合成例2)
(化合物(A−2)の合成)
ブロモ酢酸2−メチル−2−アダマンチル6.9gをブロモ酢酸tert−ブチル4.7gに変えたこと以外は合成例1と同様の方法を用いて、上記式(A)で表される化合物(A−2)を3.5g得た。なお、H−NMR分析を行ったところ化合物(A−2)における保護率(化合物(A−2)中のフェノール性水酸基の水素原子がtert−ブトキシカルボニルメチル基で置換された割合)は50%であった。
【0112】
(合成例3)
(樹脂(1)の合成)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、2,7−ナフタレンジオール/ホルムアルデヒド縮合物(ヒドロキシ基を有する樹脂)10部、パラトルエンスルホン酸20部、メチルイソブチルケトンを仕込み、攪拌しつつ50℃で6時間反応した。反応終了後、反応溶液を水冷により30℃以下に冷却した。この反応溶液を1質量%のシュウ酸、及び純水で順次洗浄し、得られた有機層を濃縮した後、得られた濃縮物を50℃にて17時間乾燥し、樹脂(1)を得た。
【0113】
(合成例4)
(樹脂(2)の合成)
温度計を備えたセパラブルフラスコに、2,7−ナフタレンジオール/ホルムアルデヒド縮合物(ヒドロキシ基を有する樹脂)10部、プロパルギルブロマイド10部、トリエチルアミン10部、及びテトラハイドロフラン40部を仕込み、攪拌しつつ50℃で12時間反応した。反応終了後、反応溶液を水冷により30℃以下に冷却した。冷却後、この反応溶液を多量のn−ヘプタンに投入した。その後、析出した固体をデカンテーション法により分離し、多量のn−ヘプタンにて洗浄した。続いて、固体をメチルイソブチルケトンに溶解させ、1質量%のシュウ酸、及び純水で順次洗浄し、残存するトリエチルアミンを除去した。その後、得られた有機層を濃縮した後、得られた濃縮物を50℃にて17時間乾燥し、樹脂(2)を得た。なお、樹脂(2)におけるプロパルギル基の導入率は、90%であった。
【0114】
(調製例1)
(レジスト下層膜形成組成物(U−1)の調製)
合成例1で得られた化合物(A−1)10部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート([B]溶媒)90部に溶解させた溶液を得た。その後、この溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過してレジスト下層膜形成用組成物(U−1)を調製した。
【0115】
(調製例2)
(レジスト下層膜形成用組成物(U−2)の調製)
合成例2で得られた化合物(A−2)10部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート([B]溶媒)90部に溶解させた溶液を得た。その後、この溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過してレジスト下層膜形成用組成物(U−2)を調製した。
【0116】
(調製例3)
(レジスト下層膜形成用組成物(U−3)の調製)
合成例2で得られた化合物(A−2)2部、合成例3で得られた樹脂(1)4部、及び合成例4で得られた樹脂(2)4部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート([B]溶媒)90部に溶解させた溶液を得た。その後、この溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過してレジスト下層膜形成用組成物(U−3)を調製した。
【0117】
(調製例4)
(レジスト下層膜形成用組成物(U−4)の調製)
合成例2で得られた化合物(A−2)2.1部、合成例3で得られた樹脂(1)3.8部、及び合成例4で得られた樹脂(2)4.1部をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート([B]溶媒)90部に溶解させた溶液を得た。その後、この溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過してレジスト下層膜形成用組成物(U−4)を調製した。
【0118】
<レジスト下層膜の形成>
(実施例1〜12)
上記調製した下記表1に示す各レジスト下層膜形成用組成物をシリコンウェハ(被加工基板)上に、スピンコート法により塗布した。その後、大気雰囲気下にて、下記表1に示す温度(℃)及び時間(s)のハードベーク(HB)条件で焼成(ベーク)して、膜厚200nmのレジスト下層膜を形成し、被加工基板上にレジスト下層膜が形成された「レジスト下層膜付き基板」を得た。
【0119】
<評価>
上記形成したレジスト下層膜付き基板について、以下に示す方法で、レジスト下層膜の有機溶媒に対する耐性試験、レジスト下層膜のアルカリ現像液(TMAH 2.38%)に対する溶解性試験及びエッチング耐性の評価を行った。
【0120】
[レジスト下層膜の有機溶媒に対する耐性]
上記得られたレジスト下層膜付き基板をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(23℃)に1分間浸漬した。浸漬前後の膜厚を分光エリプソメーター「UV1280E」(KLA−TENCOR製)にて測定し、測定値から残存膜厚率を算出して評価した。評価基準は、残存膜厚率が99%以上の場合を「A」、99%未満の場合を「B」とした。
【0121】
[レジスト下層膜のアルカリ現像液(TMAH 2.38%)による溶解性試験]
上記得られたレジスト下層膜付き基板をアルカリ現像液(TMAH 2.38%)に1分間浸漬した。浸漬前後の膜厚を分光エリプソメーター「UV1280E」(KLA−TENCOR製)にて測定し、測定値から残存膜厚率を算出して評価した。評価基準は、残存膜厚率が1%未満の場合を「A」、1%以上の場合を「B」とした。
【0122】
[レジスト下層膜のエッチング耐性]
上記得られたレジスト下層膜付き基板のレジスト下層膜(膜厚200nm)を、エッチング装置(LAM research製、商品名「LAM etcher」)を使用して、C/Ar/O/N=6.5/240/6.5/25sccm(RFパワー:220W(Top), 1,500W(Bottom);処理時間:30秒;温度:15℃)でエッチング処理し、エッチング処理前後のレジスト下層膜の膜厚を測定して、エッチングレートを算出し、エッチング耐性を評価した。なお、このエッチング耐性の評価は、JSR製のレジスト下層膜形成用組成物(商品名「NFC HM8053」)によりレジスト下層膜を形成し、このレジスト下層膜を基準レジスト下層膜として行った。評価基準は、上記基準レジスト下層膜に比べてエッチングレートが、95%未満の場合を「A」、95%以上の場合を「B」とした。
【0123】
本実施例で形成されたレジスト下層膜の有機溶媒に対する耐性試験、アルカリ現像液(TMAH 2.38%)による溶解性試験及びエッチング耐性の評価結果を表1にまとめた。
【0124】
【表1】

【0125】
表1の結果から、[A]特定カリックスアレーン化合物と[B]溶媒とを含有するレジスト下層膜形成用組成物から形成されたレジスト下層膜は、良好な有機溶媒耐性及びアルカリ現像液(TMAH 2.38%)による剥離性を示し、かつ優れたエッチング耐性も有することが確認できた。また、[A]化合物と共に他の樹脂を含有するレジスト下層膜形成用組成物(U−3)及び(U−4)の適用により性能が低下することなくベーク時間の短縮も可能となることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のパターン形成方法によれば、基板に与える影響を抑えつつ、エッチング工程を経た後のレジスト下層膜を容易に除去することができる。従って、本発明のパターン形成方法は、半導体基板に用いられる低誘電体材料に対しても好適に用いることができ、高品質のパターン形成基板を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カリックスアレーン系化合物を含むレジスト下層膜形成用組成物を用い、被加工基板の上面側にレジスト下層膜を形成する工程と、
(b)上記レジスト下層膜の上面側にレジストパターンを形成する工程と、
(c)上記レジストパターンをマスクとした少なくとも上記レジスト下層膜及び被加工基板のエッチングにより、被加工基板にパターンを形成する工程と、
(d)上記被加工基板上のレジスト下層膜を塩基性溶液で除去する工程と
をこの順に有し、
上記(d)工程の前に、レジスト下層膜を加熱又は酸処理する工程をさらに有し、
上記カリックスアレーン系化合物の芳香環又はヘテロ芳香環の少なくとも一部に下記式(i)で表される基が結合しているパターン形成方法。
【化1】

(式(i)中、Rは、加熱又は酸の作用により酸性官能基を生じる基である。)
【請求項2】
(a)工程と(b)工程との間に、
(a’)上記レジスト下層膜の上面側に中間層を形成する工程
を含み、
(c)工程において、さらに中間層をエッチングする請求項1に記載のパターン形成方法。