説明

パターン形成方法

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
この発明は、半導体素子などの作製における微細加工法に係り、フオトリソグラフイにおけるパターン形成に関するものである。
〔従来の技術〕
半導体素子の集積度の向上と共にパターンの微細化も進んでいる。そこでは依然として光を光源とした光リソグラフイが使われている。そして現在では、その高解像性と優れたアライメント精度ゆえ、縮小投影露光法が主流である。光リソグラフイで一層レジスト法にて微細パターンを形成する際の課題は、基板段差によるレジスト膜厚の局所的変動によるパターン寸法の変化(バルク効果)、基板段差側壁等からの散乱光によるレジストの局所的過剰露光によるパターン寸法の細り(ノツチング効果)、更には縮小投影露光は屈接光学系を使うので、単色光を光源として用いる。従つてこの単色光を用いることによつて生じる問題点、即ち、レジストへの入射光、レジスト表面からの反射光、レジスト/基板界面から反射光の相互間で、干渉が生じ、レジスト膜厚のわずかな変動に伴なつてレジスト中へ吸収される実効的光量の変動がλ/2n(λ:露光波長,n:レジストの屈折率)の周期で生じ、レジストパターン寸法に変動が生じたり(膜内多重反射効果)、レジストの厚さ方向に周期的な光強度の分布が生じ、現像後のレジストパターン断面にそれに対応した波打ち形状が生じる(定在波効果)。これらはいづれもレジストパターン寸法の変動や解像不良の原因となる。
これら、従来の一層レジスト法の問題点を解決する方法として、多層レジスト法やARC法、ARCOR法などが提案されている。しかし、多層レジスト法は、レジスト層を三層または二層形成し、その後パターン転写を行つてマスクとなるレジストパターンを形成するため、工程数が多くスループツトが低いという問題がある。ARC法はレジスト下部に形成した反射防止膜を現像によりウエツトエツチングする為、サイドエツチ量が多く、このことによる寸法精度の低下が大きいという問題がある。ARCOR法とはレジスト膜の上に一層及び多層の干渉型反射防止膜を塗布して、レジスト膜中での多重反射を抑える方法だが、やはり工程数、使用材料が増加するという問題がある。なお、多層レジストに関しては特開昭第51−10775号などに記載されている。またARC法としては特開昭第59−93448号に、ARCOR法は特開昭第62−62520号に記載されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
これら従来の一層レジスト法の問題点のうち、前述の定在波効果を抑制して、レジストパターン断面形状をスムーズ化し、かつ現像後の残渣不良をなくす方法として従来から露光後現像前ベーク法がある(本方法はIEEE Transactions on Electron Devices,Vol.ED−22,No.7,July 1975のp464〜466に記載されている。)。この方向は1工程が増加するだけで、なおかつ連続処理が可能な優れた方法であるが、SPIE Prceeding Vol.469 Advances in Resiot Technology(1984)のp65〜71にも記載されているように従来、以下の欠点を有していた。即ち、マスク寸法通りのレジストパターン寸法を得るのに要する露光量(E0)が増大し、レジストの種類によつては、未露光部の膜減りが生じる。そして、定在波効果、即ちレジストパターン断面形状の波打ちをスムーズ化する以外は、前記の従来の一層レジスト法の問題点を解決することは殆んどできない。
この発明は、上記のような従来一層レジスト法の問題点を解消するためになされたもので、従来の露光後現像前ベークに加えて、レジスト塗布後露光前にレジスト表面をアルカリ溶液に浸し、乾燥する工程を追加するだけで従来の露光後現像前ベーク法の欠点を補い、かつ、従来法以上の性能、即ち感度の低下、及び膜減りの増大なしに、前記の定在波効果の抑制のみならず、バルク効果を大巾に減少させ、膜内多重反射効果を間接的に抑制し、更に解像力、焦点深度を改善する方法を得ることを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性ノボラック樹脂とからなるポジ型フォトレジストを基板上に塗布しプレベークする工程と、プレベークしたポジ型のフォトレジスト膜の表面をアルカリ性溶液に浸しその後乾燥する工程と、アルカリ性溶液に浸しその後乾燥したポジ型フォトレジスト膜に選択的に紫外線を照射する工程と、選択的に紫外線照射されたポジ型フォトレジスト膜を加熱処理する工程と、加熱処理した前記ポジ型フォトレジスト膜を現像してレジストパターンを形成する工程とを備える。
〔作用〕
この発明において、従来一層レジスト法の欠点の原因のうち、バルク効果、膜内多重反射効果、定在波効果のいづれもが、レジスト膜内の光吸収及び光干渉に起因した未露光感光剤のレジスト膜厚さ方向の濃度分布によつて、現像時の露光部レジストのレジスト厚さ方向の溶解スピードが変動することによること、及び露光後現像前ベークによつて、未露光感光剤が拡散及びその他の副反応を示すことに着目した。そして、露光前にレジスト表面をアルカリ溶液に浸して、レジスト表面から深さ方向に濃度傾斜をもつたアルカリの分布をレジスト材料中に形成し、その後、露光によるレジスト中の感光剤の分解、露光後現像前ベークによる未露光(未分解)感光剤の拡散及び以上の各工程での副反応を通して、レジストの露光部及び未露光部の現像時溶解速度のレジスト内空間分布を最適化することにより、本発明の性能が発現された。
〔発明の実施例〕
以下、この発明の実施例を図について説明する。第1図R>図(1)において、1はシリコン結晶基板、このシリコン結晶基板上にポジ型フオトレジストMCPR2000H(三菱化成製商品名)を回転塗布し、1.16μm厚のレジスト層2を形成した。次にこの試料をホツトプレート3上で80℃〜100℃の温度で60秒間プリベークした〔第1図(2)〕。引き続きこの試料の表面を1.5%〜2.38%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)のアルカリ水溶液4に10〜50秒間浸し、その後純水でリンス洗浄し、回転乾燥させた〔第1図(3)〕。次に第1図1図(4)に示すように波長436nmの光を用いてNA=0.42のレンズを搭載した縮小投影露光装置(ステツパー)で選択的にフオトレジストを露光した。その後第1図(5)に示すようにホツトプレート上で100℃〜120℃の温度で60秒間ベーク処理した。次に第1図(6)に示すようにTMAH2.38%の水溶液で現像し、シリコン基板上にレジストパターン2′を形成した。この方法でマスクパターン寸法通りレジストパターン寸法が仕上る露光量(E0)は、従来のレジスト塗布、プリベーク、露光、現像の順に処理する一層レジスト法と同じ150mJ/cm2が得られ、感度の低下は見られなかつた。アルカリ表面処理と露光後現像前ベークとによつて未露光部表面の難溶化が進むため、現像限界の0.6μmパターン迄残しパターンの膜減りは全然発生せず、かつ定在波効果によるレジストパターン断面形状の波うちもスムーズになり、ほぼ垂直なレジストパターン断面形状が、解像限界の0.6μmパターンまで得られた。又、解像が困難なスペースパターンの解像能力は従来一層レジストプロセスが0.7μmなのに対し、本実施例では0.6μmが大きなパターンサイズと同様のほぼ垂直な断面形状で解像され、解像力で大きな改善が得られた。更に焦点深度についても従来一層レジストプロセスに比べ約50%から100%の大巾な改が得られた。更にレジスト膜厚を1.16μm前後で変化させて、第2図に示すバルク効果によるレジストパターン寸法変化量(A)と、膜内多重反射効果による寸法変化量(B)とについて従来一層レジスト法に比べ大巾に減少し著しい改善が得られた。
以上の実施例で、露光後現像前のベークを省略すると、上記性能項目のうち、焦点深度、バルク効果、及び膜内多重反射による寸法変化量、パターン断面形状について改善が殆んど見られなかつた。
また、以上の実施例では、露光波長として436nmのg線の場合について記したが、勿論、i線(365nm)、Xe−Clエキシマレーザー光(308nm)、KrFエキシマレーザー光(248nm)、ArFエキシマレーザー光(193nm)、更には多波長光源の場合にも本発明は有効である。
また、本実施例ではアルカリ溶液として有機アルカリの水溶液で、ポジ型フオトレジスト用の現像液の1種であるTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)の水溶液を使たが、他の有機アルカリの水溶液、KOH等の無機アルカリの水溶液、更には他のアルカリ性有機溶液でも、本発明の方法は有効であつた。
また、レジスト表面のアルカリ溶液処理の直後に70℃〜110℃のホツトプレートによる加熱処理を行なつても上記と同様な性能が得られた。また、レジスト塗布から現像迄の工程中にある最大3回の加熱処理を、使用するポジ型フオトレジストの材料組成に対応させて、1回以上真空中で加熱処理しても、上記のこの発明の優れた性能を維持した上で、現像後のレジストパターンの断面形状が制御がより容易になつた。
一方、反射率の高い下地基板(例えば、Al薄膜)上に、微細レジストパターンを形成する際に、基板からの反射の影響を抑える為に、吸光剤を加えたポジ型フオトレジストを用いてパターン形成するが、本発明の方法はそのような場合でも有効である。
またこの発明の方法を三層レジスト法の上層レジストのパターン形成に適用しても、上層レジストと中間層との界面からの僅かな反射による膜内多重反射によるパターン寸法変動を抑制すると共に、レジストパターン断面形状の改善更には焦点深度の拡大の面でも有効である。PCM二層レジスト法や、Si含有型ノボラツク−ナフトキノンジアジド系ポジ型フオトレジストを上層レジストとして使うSi系二層レジスト法の上層レジストのパターン形成に、この発明の方法を導入しても効果がある。
下地基板とポジ型フオトレジストの間に、吸光度の高い吸収型反射防止膜や、屈折率及び膜厚を制御した干渉型反射防止膜を形成して、レジストパターン形成を行う反射防止膜(ARC)法においても、更に、ポジ型フオトレジストの上に、屈折率及び膜厚を制御した干渉型の一層又は多層の反射防止膜を被覆してパターン形成を行なうパターン形成方法においても本発明の方法は有効である。
ポジ型フオトレジストの上に、露光波長の光に対して光退色性を示す成分を主成分とする材料(CEL材料)を塗布した後に露光してパターン形成を行なうコントラストエンハンスリソグラフイ法(CEL法;Polym、Eng.Sci,23,p947,1983年に詳細記載されている。)においても本発明の方法は有効である。
〔発明の効果〕
以上のように、この発明のパターン形成方法によれば、フォトレジスト膜の表面をアルカリ性溶液に浸し、その後乾燥する工程と、選択的に紫外線照射されたポジ型フォトレジスト膜を加熱する工程を備えているので、(1)レジスト感度の低下、および膜減りの増大なしに、定在波効果を抑制することができる、(2)解像力焦点深度の改善ができる、(3)レジストパターンの断面形状の制御を容易にすることができる、というような多層レジスト並みのレジストパターンが、極めて簡単で高価装置及び材料を必要とせずに形成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
第1図はこの発明の一実施例を示す工程図である。第2図R>図従来法の問題点を説明する図である。
1……Si結晶基板、2……ポジ型フオトレジスト、3……ホツトプレート、4……アルカリ水溶液、2′……現像後のレジストパターン、5……紫外線(波長436nm)。
尚、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下記工程を含むパターン形成方法。
(1)キノンジアジド系感光剤とアルカリ可溶性ノボラック樹脂とからなるポジ型フォトレジストを基板上に塗布し、プレベークする工程。
(2)プレベークした上記ポジ型フォトレジスト膜の表面をアルカリ性溶液に浸し、その後乾燥する工程。
(3)アルカリ性溶液に浸し、その後乾燥した上記ポジ型フォトレジスト膜に選択的に紫外線(波長範囲180nm〜450nm)を照射する工程。
(4)選択的に紫外線照射された上記ポジ型フォトレジスト膜を加熱処理する工程。
(5)加熱処理した上記ポジ型フォトレジスト膜を現像して、レジストパターンを形成する工程。

【第1図】
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【第2図】
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【特許番号】第2560773号
【登録日】平成8年(1996)9月19日
【発行日】平成8年(1996)12月4日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−45142
【出願日】昭和63年(1988)2月26日
【公開番号】特開平1−219740
【公開日】平成1年(1989)9月1日
【出願人】(999999999)三菱電機株式会社
【参考文献】
【文献】 特開 昭61−219952(JP,A)
【文献】 特開 昭59−84426(JP,A)
【文献】 特開 昭59−155921(JP,A)
【文献】 特開 昭63−177518(JP,A)