説明

パターン形成用フィルム及び金属薄膜パターンの形成方法

【課題】金属色のパターンを装飾することのできるインサート成形用の加飾フィルム、包装用フィルム、透明電極作製用のフィルムなどとして有用なパターン形成用フィルムを提供すること。
【解決手段】基材上に、少なくとも、金属薄膜層及びパターン印刷層を有するパターン形成用フィルムであって、該パターン印刷層は金属薄膜層と接し、かつ該パターン印刷層を構成する樹脂が、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、及び塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該樹脂の平均酸価が7mgKOH/g以上であることを特徴とするパターン形成用フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成用フィルムに関し、詳しくは、金属パターン又は金属色の模様を付与するパターン形成用フィルム、及び金属薄膜パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属光沢感を付与する目的又はガスバリア性を付与する目的などで、プラスチックフィルム上に真空蒸着法やスパッタリング法などによって金属薄膜層を形成することが行われており、このようにして製造された材料は、包装用フィルムや化粧シートなどに用いられている。
また、包装用フィルムでは、内容物の視認性などを付与する目的で、金属薄膜層を透明化させた透明なバリアフィルムが提案されており(特許文献1参照)、化粧シートでは、金属光沢、美観、各種耐久性を付与することを目的とした部分蒸着化粧シートが提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
上記特許文献1では、真空蒸着時に酸素ガスを特定条件下で供給することで金属蒸着膜を透明化する手法が取られているが、こういった手法では、一様な透明金属蒸着膜は得られるものの、部分的に透明化された金属蒸着膜を得ることはできない。
一方、上記特許文献2では、フィルム上に形成された金属蒸着膜上に、所望のレジストパターン層を形成し、エッチング法により金属蒸着膜をエッチングすることで、パターニングされた金属蒸着膜を得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−330915号公報
【特許文献2】特開平5−39583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような、エッチング法は金属蒸着膜をパターニングする方法としては有効であるが、レジスト層の形成工程、エッチング工程、必要に応じて行われるレジスト層の除去工程など、多数の工程が必要となるため、工程が煩雑であるとともに、工程増によるコストアップの一因となっていた。
そこで、本発明は、金属薄膜を有する包装用フィルム、インサート成形用加飾フィルムなどの化粧シート、透明電極作製用のフィルムなど、広範な用途に使用が可能であり、かつ簡便な方法で製造が可能である、金属薄膜層のパターン形成フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、金属薄膜層及びパターン印刷層を有するパターン形成フィルムであって、パターン印刷層に特定の酸価を有する樹脂を用いることにより、前記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、基材上に、少なくとも、金属薄膜層及びパターン印刷層を有するパターン形成用フィルムであって、該パターン印刷層は金属薄膜層と接し、かつ該パターン印刷層を構成する樹脂が、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、及び塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該樹脂の平均酸価が7mgKOH/g以上であることを特徴とするパターン形成用フィルム、並びに、該パターン形成用フィルムを用いる金属薄膜パターンの形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、金属色のパターンを装飾することのできるインサート成形用の加飾フィルム、包装用フィルム、透明電極作製用のフィルムなどとして有用なパターン形成用フィルム及び金属薄膜パターンを効果的にかつ簡便に形成する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のパターン形成用フィルムの1つの態様を示す断面図である。
【図2】本発明のパターン形成用フィルムの他の態様を示す断面図である。
【図3】本発明のパターン形成用フィルムを用いた三次元成形加飾フィルムを示す断面図である。
【図4】本発明のパターン形成用フィルムを用いた三次元成形加飾フィルムを示す断面図である。
【図5】本発明のパターン形成用フィルムを用いた三次元成形加飾フィルムを示す断面図である。
【図6】本発明のパターン形成用フィルムを用いた三次元成形加飾フィルムを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のパターン形成用フィルムは、基材上に、少なくとも、金属薄膜層及びパターン印刷層を有し、パターン印刷層と金属薄膜層が接していることが特徴である。
その態様の一つとしては、図1に示すように、基材11上に、金属薄膜層12、及びパターン印刷層13をこの順に積層してなるパターン形成用フィルム10である。また、もう一つの態様としては、図2に示すように、基材11上に、パターン印刷層13、及び金属薄膜層12をこの順に積層してなるパターン形成用フィルム10である。
【0010】
また、図3〜図6は、本発明のパターン形成用フィルムの好ましい態様である三次元成形加飾フィルムに用いた例であり、図3及び図4はラミネートタイプの三次元成形加飾フィルム20を示しており、図5及び図6は転写タイプの三次元成形加飾フィルム30を示している。
図3に示す三次元成形加飾フィルム(ラミネートタイプ)では、基材11上に金属薄膜層12、パターン印刷層13をこの順に有し、所望により、ベタ印刷層14を設けてもよい。また、基材11における金属薄膜層12の反対側(以下、「基材の裏面側」と称する場合がある。)にプライマー層15、及び表面保護層16を有している。
次に、図4に示す三次元成形加飾フィルム(ラミネートタイプ)では基材11上にパターン印刷層13、金属薄膜層12をこの順に有し、所望により、ベタ印刷層14を設けてもよい。また基材11における基材の裏面側にプライマー層15、及び表面保護層16を有している。
一方、図5に示す三次元成形加飾フィルム(転写タイプ)では、基材11に表面保護層16及びプライマー層15を積層し、その後に金属薄膜層12を蒸着法等により積層する。その上にパターン印刷層13及び必要に応じて、ベタ印刷層14をグラビア印刷等により設けるものである。また、図6に示す三次元成形加飾フィルム(転写タイプ)では、基材11上に表面保護層16、プライマー層15、パターン印刷層13を積層し、その後に金属薄膜層12を蒸着法等により積層する。その上に必要に応じてベタ印刷層14をグラビア印刷等により設けるものである。
以下、図面を参照しつつ、本発明のパターン形成用フィルムについて説明する。
【0011】
(基材)
本発明のパターン形成用フィルムに用いられる基材11としては、特に制限はなく、用途に応じて、プラスチックフィルム、ガラス基板などが用いられる。加飾フィルムや包装用フィルムなどにおいて好適なプラスチックフィルムとしては、例えば、アクリル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、エチレン−プロピレン系共重合体樹脂、エチレン−プロピレン−ブテン系共重合体樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;アクリル変性ウレタン系樹脂、ポリエステル変性ウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体変性ウレタン系樹脂等のポリウレタン系樹脂;ポリスチレン系樹脂;塩化ビニル系樹脂;酢酸ビニル系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体樹脂等を挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
中でも、密着性およびコストの点で、ポリエステル系樹脂が好ましく、易接着処理したポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
なお、該基材には、必要に応じて、着色剤、減摩剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、帯電防止剤、抗菌剤、難燃剤などを加えてもよい。
【0012】
基材の厚みはコスト、成形性、意匠性等の観点から適宜選ばれるが、通常10〜250μmであり、25〜100μmがより好ましい。また、用いる基材には、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などのいわゆる易接着性処理がなされたものであってもよく、また、基材の表面にアンカー層などの易接着層が設けられたものであってもよい。
【0013】
[金属薄膜層]
本発明にかかる金属薄膜層12は、基材11に設けられる層であり、加飾フィルムや包装用フィルムなどにおいては、金属表面と同様な高輝性を与え、意匠性を付与するものである。また透明電極作製用のフィルムおいては、電極を形成するためのものである。
本発明では、パターン印刷層13と金属薄膜層12とが接している。そして、本発明のパターン形成用フィルムは、例えば、加飾フィルムにおいては、真空成形などのフィルムの加工工程で加熱され、また射出樹脂と接触してラミネート又は転写される工程、その他後述するバッカー層とのラミネート工程等において加熱されるが、これらの加熱工程において、金属薄膜層12におけるパターン印刷層13との接触部分が酸化され、金属色が変化又は透明化(以下「透明化」と記載することがある。)することによって、パターン形成用フィルム又は該パターン形成用フィルムを用いた樹脂成形品に、特異の意匠性を付与するものである。
また、包装用フィルムでは、該フィルムを直接熱処理する工程、該フィルムを用いて包装する際のヒートシール工程、又は後述するフィルム層とのラミネート工程等で熱処理されることによって、上記透明化が進行する。なお、熱処理温度としては、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されないが、通常100℃以上であり、好ましくは100〜250℃の範囲である。
【0014】
本発明で使用できる金属としては、本発明の効果を奏する範囲で特に制限はなく、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、スズ、真鍮、インジウム、クロム、亜鉛などが挙げられ、これらの金属は、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
これらの金属のうち、透明化の観点、及び伸展性に富むとの観点から、スズ及びインジウムが好ましい。なお、伸展性が良好な材料は、例えば、加飾フィルムとして用いるケースでは、3次元成形した際に伸ばされてもクラックが発生しないという利点を有する。
【0015】
本発明の金属薄膜層の形成方法としては、種々の方法があるが、上記金属を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの蒸着法を用いることが、あらゆる素材に処理可能であり、装飾性に優れた被膜を施せる点から好ましい。
本発明では、特に真空蒸着法が低コスト、基材へのダメージが少ないという点で好ましく、その蒸着条件としては、用いる金属の溶融温度又は蒸発温度に応じて適宜設定されるが、通常、真空度が10-3〜10-4Pa、温度1000〜1100℃の条件が好ましい。
【0016】
当該金属薄膜層の厚さとしては、伸展性の点から、光学濃度O.D値が0.5〜3程度が好ましく、0.8〜1.5程度がより好ましい。
なお、基材11に真空蒸着等により金属薄膜を形成する際に、密着性を高めるため、上述のように、基材をコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理などのいわゆる易接着性処理を施してから、金属薄膜を形成することも好ましい態様である。
【0017】
[パターン印刷層]
本発明におけるパターン印刷層13は、上記金属薄膜層12と接し、該接する部分において、金属を酸化して金属薄膜層をパターン状に透明化するものである。したがって、意匠としては、光輝性のベタ印刷に対して模様が抜けたように見える特異な意匠を発現させることができる。
また、金属薄膜層12とパターン印刷層13の層間又はパターン印刷層13の上に着色層を設けておけば(図示せず)、該着色層の色が光輝性のベタ印刷上に浮き出る意匠が得られる。
パターン印刷層を構成する樹脂は、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、又は塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂(以下、これらを総称して「ビニル系樹脂」と称する場合がある。)であり、該樹脂の平均酸価が7mgKOH/g以上であることが必須である。
パターン印刷層を構成する樹脂は、上述のように、平均酸価が7mgKOH/g以上のビニル系樹脂であり、該平均酸価の上限は特にないが、製造上の点から、ビニル系樹脂の平均酸価は、10.5mgKOH/g以下であることが好ましい。
また、該樹脂の数平均分子量は、1万〜10万であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が70〜90℃であることが好ましい。
【0018】
本発明のパターン形成用フィルムは、上述の基材、金属薄膜層、及びパターン印刷層を必須の構成要件とするが、これを三次元加飾フィルムとして使用する場合には、さらに種々の構成要素を有することが好ましい。
まず、本発明のパターン形成用フィルムを、射出成形同時加飾用フィルムとして用いる場合には、上記必須の構成要件からなるフィルムをそのまま用いることができ、パターン印刷層が射出樹脂に接触するようにして、樹脂成形品を得ることができる。
一方、本発明のパターン形成用フィルムをインサート成形用として用いる場合には、パターン印刷層側にバッカー層を熱ラミネートすることによって、インサート成形用シートとすることもできるし、後述するベタ印刷層14を設け、バッカー層にドライラミネートすることもできる。
【0019】
[ベタ印刷層]
図1に示す態様では、一様均一なベタ印刷層14を、パターン印刷層13の上に設けている。ここで、ベタ印刷層14は、基材に設けられた金属薄膜層と射出成形樹脂、バッカー層などとの接着性を高めるとともに、金属薄膜層の安定化を図る接着層としての機能をも果たすものである。該ベタ印刷層を構成する樹脂としては、平均酸価7mgKOH/g以上の、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、又は塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂のいずれでもないものを選択する。これらのビニル系樹脂は、金属薄膜層を透明化し、パターン印刷層の効果を打ち消すものとなるからである。
【0020】
ベタ印刷層を構成する樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂などが挙げられ、また、前記ビニル系樹脂であれば、該樹脂の平均酸価が1〜6mgKOH/gであるもの(以下「低酸価ビニル系樹脂」と称することがある。)が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの樹脂のうち、特に上記低酸価ビニル系樹脂及びアクリル樹脂が、十分な接着性が得られるとともに、透明性も高く、取り扱いが容易であるため好ましい。
上記ビニル系樹脂に関しては、その平均酸価が1〜6mgKOH/gである。該ビニル系樹脂の平均酸価が1mgKOH/g以上であると、金属薄膜層と射出成形樹脂、バッカー層など、他の樹脂等との十分な接着性が得られるため好ましい。一方、6mgKOH/g以下であると、金属薄膜層が透明化することがなく、パターン印刷層の効果を打ち消すことがない。以上の観点から、該ビニル系樹脂の平均酸価は、2〜5mgKOH/gであることがより好ましい。
なお、ビニル系樹脂の平均酸価は、平均酸価が既知のビニル系樹脂を複数混合して調製することで、制御することができる。
また、ベタ印刷層を構成する樹脂の酸価は、直接測定することもできるし、樹脂が複数の樹脂の混合物である場合には、構成樹脂の酸価から、次の式により求めることができる。
酸価=樹脂1の酸価×樹脂1の重量+樹脂2の酸価×樹脂2の重量+…/全樹脂の重量
【0021】
また、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びセルロース系樹脂に関しては、酸価に依ることなく、金属薄膜層を透明化することはない。
なお、上記ベタ印刷層を構成する樹脂のうち、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂が接着性の観点から最も好ましい。
また、ベタ印刷層を構成する樹脂の数平均分子量は、1万〜10万であることが好ましく、ガラス転移温度(Tg)が70〜90℃であることが好ましい。
【0022】
ベタ印刷層は、上記のような樹脂あるいは2種以上混合した樹脂に、必要に応じて、溶剤を加えてワニスを調製し、金属薄膜層及び/又はパターン印刷層の上に、グラビアコート、ロールコート、キスコートなど公知の塗工方法により塗工し、通常40〜60℃、1〜2分程度、熱風乾燥させることで形成できる。
また、ベタ印刷層の膜厚としては、通常1〜2μm程度である。
【0023】
[表面保護層]
図3及び図4に示す態様では、基材11の裏面側に表面保護層16を有する。表面保護層は、基材の表面を保護し、耐摩耗性や耐擦傷性、耐薬品性などを付与する機能を有する。
該表面保護層は、基材の裏面に直接又は他の層を介して、硬化性樹脂を含有する樹脂組成物を塗工し、これを架橋硬化したもので構成される。架橋硬化された硬化性樹脂からなる表面保護層を有することで、パターン形成用フィルムの表面特性を向上させることができる。
【0024】
ここで用いられる硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂や2液硬化性樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられ、これらを複数用いる、例えば、電離放射線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を併用する、いわゆるハイブリッドタイプであってもよい。
これらのうち、表面保護層を形成する樹脂の架橋密度を高め、表面の耐摩耗性や耐擦傷性を向上させ得るとの観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ましく、また、無溶媒で塗工することができ、取り扱いが容易との観点から、電子線硬化性樹脂がさらに好ましい。
【0025】
(電離放射線硬化性樹脂)
電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0027】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートなどとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
なお、電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。
【0029】
(熱硬化性樹脂)
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、水酸基官能性アクリル樹脂、カルボキシル官能性アクリル樹脂、アミド官能性共重合体、ウレタン樹脂などが挙げられる。
熱硬化性樹脂の中では、2液硬化型樹脂が好ましく、ポリオールとイソシアネートとの2液硬化性の樹脂が好ましい。2液硬化性の樹脂については、後にプライマー層で詳述するものと同様のものを用いることができる。
【0030】
(添加剤)
本発明のパターン形成用フィルムの表面保護層を構成する樹脂組成物中には、その性能を阻害しない範囲で、上記以外の各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
【0031】
また、表面保護層には、耐候性を高めるための耐候性改善剤、耐摩耗性を高めるための耐摩耗性向上剤、その他の添加剤を配合することができる。
このような耐候性改善剤としては、後に詳述する紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。また、耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とすることが好ましい。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
【0032】
(表面保護層の形成方法)
表面保護層の形成は上述の表面保護層形成用樹脂組成物を含有する塗工液を調製し、これを塗布し、架橋硬化することで得ることができる。なお、塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、基材の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよく、特に制限はない。
本発明においては、調製された塗工液を、基材の表面に、あるいは、後述するプライマー層の表面上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
次いで、上記のようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜100kGy(1〜10Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0033】
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
【0034】
また、表面保護層は、凹部を有していてもよい。表面保護層に凹部を施す方法については特に制限はなく、例えばエンボス加工により施される。エンボス加工は、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用する通常の方法により行えばよい。
【0035】
[プライマー層]
また、表面保護層を設ける際には、基材と表面保護層の間にプライマー層15を設けることが好ましい。プライマー層は、接着性を向上させる機能を有し、さらには、成形性を向上させ、かつ耐候密着性を向上させるという作用効果も発揮する層である。すなわち、表面保護層に対する応力緩和層としても機能し、表面保護層の延伸部に微細な割れや白化を生じにくくする効果を有する。
【0036】
プライマー層を構成する樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等の1液型の樹脂や、以下に示すような2液型の樹脂が用いられるが、これらのうち、2液型のものが密着性の点で好ましい。
2液型の樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートやポリエステル系ウレタンアクリレート、あるいはポリカーボネート系ウレタンアクリレートとアクリルポリオールとからなる樹脂を用いて形成することが好ましく、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート系のものがより好ましい。これらの樹脂を用いてプライマー層を形成することで、基材と表面保護層の密着性の良好なパターン形成用フィルムが得られる。
【0037】
ポリカーボネート系ウレタンアクリレートのアクリル成分とウレタン成分との質量比は、特に制限されないが、耐候性、密着性の点で、ウレタン成分:アクリル成分の質量比を80:20〜20:80の範囲とすることが好ましく、70:30〜30:70の範囲とすることがより好ましい。
【0038】
前記ポリカーボネート系ウレタンアクリレートとアクリルポリオールとの質量比は、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート単独の100:0から10:90の範囲が好ましく、より好ましくは100:0〜30:70の範囲である。
【0039】
上記プライマー層15には、耐候性を向上させるため、紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤(HALS)などの耐候性改善剤、有色の外観を与えるための着色剤、およびその他の添加剤を含有させることができる。
紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。
【0040】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤などが好ましく挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に反応性基を有する紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0041】
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料などが用いられる。
【0042】
プライマー層15の厚さについては、本発明の効果を奏する範囲で特に限定されないが、十分な接着性と応力緩和性を得るとの観点から、0.5〜4μmの範囲が好ましく、さらには1〜2μmの範囲が好ましい。
また、プライマー層15の形成は、上記樹脂組成物をそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態のものを用い、公知の印刷方法、塗布方法などによって、基材に塗布し、乾燥、硬化することによって行うことができる。また、該プライマー層を完全に硬化していない状態にとどめ、その後、前記表面保護層を塗布し、両者を硬化するようにしてもよい。
また、このプライマー層を基材上に形成する際に、基材に対して、コロナ放電処理やプラズマ処理などの易接着処理を施し、基材との接着性を高めるようにすることもできる。
【0043】
[フィルム層]
本発明のパターン形成用フィルムは、必要に応じて設けられるベタ印刷層14上に、さらに必要に応じてフィルム層を設けてもよい。
ここでフィルム層とは、本発明のパターン形成用フィルムの用途に応じて種々の呼称で呼ばれるものであり、例えば、本発明のパターン形成用フィルムをインサート成形用加飾フィルムとして用いる場合であれば、いわゆるバッカー層と呼ばれる層となる。また、包装用フィルムとして用いる場合には、例えば食品などの内容物と接触可能なフィルム層となる。
当該フィルム層として使用し得る材料としては、前記基材に用いられるものと同様のもの、特にプラスチックフィルムが好適に用いられる。また、その厚さも用途に応じて、適宜設定される。
【0044】
本発明のパターン形成用フィルムをインサート成形用として用いる場合には、ベタ印刷層14上にバッカー層が積層され、一体化されることが好ましい(図示せず)。このバッカー層は、加飾成形体との密着性を高める機能を有する。バッカー層に用いる樹脂としては、成形される樹脂に応じて選択されるが、一般に、ABS系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体樹脂)、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等を好ましく挙げることができ、これらのうち1種又は2種以上を組み合せて用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂が好ましい。
バッカー層に用いられる樹脂としては、これらの樹脂の内、ABS系樹脂、ポリプロピレン樹脂を含むことが特に好ましく、ABS系樹脂を含むことが最も好ましい。
その厚さとしては、100〜500μm程度が好ましく、250〜400μm程度がより好ましい。
【0045】
また、本発明のパターン形成用フィルムを包装用フィルムとして用いる場合には、充填される内容物などに応じて、フィルム層に好適な材料を適宜選択すればよい。その厚さとしては、20〜200μm程度である。
【0046】
[本発明のパターン形成用フィルムの加飾フィルムとしての他の態様]
図5及び6は、上記図3及び4に示すもの以外の本発明のパターン形成用フィルムの態様であり、上述のように、転写タイプの加飾フィルム(パターン形成用フィルム)を示すものである。このような転写タイプとすることにより、基材11が剥離されるために、該基材として低コストの材料を用いたもの、厚さの薄いものを使用することができ、また非成形性材料を用いることができる点など有利である。
【0047】
[加飾成形品の製造方法]
本発明のパターン形成用フィルムは、バッカー層を必須としない射出成形同時加飾法にも使用できるが、バッカー層を必須とするインサート成形用として好適であり、真空成形工程、トリミング工程、及び樹脂射出工程からなるインサート成形法に好適に用いられる。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明のパターン形成用フィルムを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形フィルムを得る。この成形フィルムを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面にパターン形成用フィルムを一体化させ、加飾成形品を製造する。
また、射出成形同時加飾法では、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載されるように、加飾フィルムを射出成形の雌雄両型間に配置した後、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、樹脂成形物の成形と同時にその表面に加飾フィルムを積層することで、樹脂成形物を加飾して加飾成形品を製造する。
【0048】
射出樹脂は用途に応じた樹脂が使用され、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が代表的である。また、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等も用途に応じ用いることができる。
以上のようにして製造された加飾成形体は、表面保護層を有するものでは、特に、表面保護層に成形過程でクラックが入ることがなく、その表面は高い耐摩耗性や耐擦傷性を有する。
【0049】
[本発明のパターン形成用フィルムの他の態様]
本発明のパターン形成用フィルムは、上述のように、加飾フィルムとして有用であるが、その他にも包装用フィルム、透明電極作製用のフィルムなどとして有用である。
例えば、包装用フィルムであれば、金属薄膜層を部分的に透明化することで、内容物の視認性を付与しつつ、ガスバリアを有するフィルムとすることができる。また、金属色の模様が自由に描けるので斬新な意匠が提供できる。したがって、本発明のパターン形成用フィルムは、スナック菓子、半生菓子、高級菓子、商品寿命の長いガス充填包装菓子、脱酸素剤包装などの菓子類の包装用フィルム;コーヒー豆、インスタントコーヒー、紅茶、緑茶などの嗜好品の包装用フィルム;ボイル・レトルト食品、漬け物、佃煮、ハム、液タレ、カップフタ材、電子レンジ食品などの水物の包装用フィルム;凍結乾燥食品、ふりかけ、香辛料などの乾燥食品の包装用フィルムに好適である。
【0050】
また、本発明のパターン形成用フィルムは、透明金属薄膜層を構成する金属として、インジウム、スズ及び亜鉛を好適に用いることができる。インジウム及びスズの複合酸化物であるITOは透明電極として使用されるものであり、酸化亜鉛も同様に透明電極としての用途が期待される材料である。本発明ではこれらの金属に対して、高酸価ビニル系樹脂をパターン状に印刷し、接触させることで、これらの金属を酸化し、パターン状の酸化物膜を形成することができる。すなわち、種々の形状の透明電極を、印刷技術によって、自由にデザインすることを可能とするものである。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
(1)密着性
各実施例及び比較例で得られたパターン形成用フィルムのベタ印刷層に対して、碁盤目密着試験により、密着性を評価した。ベタ印刷層を100マスにカットして碁盤目を作成し、これに粘着テープ(ニチバン(株)製「セロテープ(登録商標)」)を貼付して、90度方向に剥離させ、剥がれた碁盤目の数で評価した。評価基準は以下とした。
○;100マスすべてが剥離しなかった。
△;100マス中95〜99マスが剥離しなかった。
×;100マス中5マス以上が剥離した。
(2)外観
各実施例及び比較例で得られたパターン形成用フィルムのベタ印刷層にエンボス機(100tプレス機、東邦マシナリー(株)製)を用いて、バッカー層を熱融着した。融着の温度は140℃、圧力は2000kPaとし、2時間プレスした。このようにして、バッカー層付きの加飾フィルムを得、該フィルム温度が170℃になるまで、40〜45秒程度の速度で昇温して、加熱し、外観を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○;金属色が一部透明化し、パターン印刷層の模様が浮かびあがり、高い意匠性が得られた。
×;パターン印刷層の模様が浮かびあがらなかった。
【0052】
実施例1
厚さ25μmのPETフィルムをプラズマ処理して易接着層を設け、その上に、スズを真空蒸着法により蒸着した。真空蒸着の条件としては、真空度10-3Pa、温度1000℃とした。このようにして得た金属薄膜層12の厚さは、光学濃度OD値0.7〜1.4であった。
次に、金属薄膜層12の上に平均酸価が7.0の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂をグラビア印刷により塗布して、パターン印刷層13を形成した。次いで、平均酸価が4.2の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂をグラビア印刷により塗布して、一様均一なベタ印刷層14を設けて、パターン形成用加飾フィルムを得た。該ベタ印刷層の50℃乾燥後の厚さを2μmとなるようにした。
該パターン形成用フィルムについて、上記方法にて評価した結果を第1表に示す。
なお、パターン印刷層を構成する 酸価が7.0の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂は、第2表に示す平均酸価7、数平均分子量70000、Tg78℃の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂Aをそのまま用い、ベタ印刷層を構成する酸価が4.2の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂は、第2表に示す平均酸価7、数平均分子量70000、Tg78℃の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂Aと、平均酸価0、数平均分子量50000、Tg75℃の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂Bを6:4(質量比)の比率で混合したものである。
【0053】
実施例2
実施例1において、金属薄膜層12とパターン印刷層13の形成順を入れ替えたこと以外は、実施例1と同様にしてパターン形成用加飾フィルムを作製した。実施例1と同様にして評価した結果を第1表に示す。
【0054】
比較例1
実施例1において、パターン印刷層を構成する樹脂として、平均酸価5.6の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてパターン形成用フィルムを得た。なお、平均酸価5.6の塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂は、第2表に示す共重合体樹脂Aと共重合体樹脂Bを2:8(質量比)の比率で混合したものである。実施例1同様に評価した結果を第1表に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、金属色のパターンを装飾することのできるインサート成形用の加飾フィルム、包装用フィルム、透明電極作製用のフィルムなどとして有用なパターン形成用フィルムを提供することができる。特に三次元成形用加飾フィルムとして用いた場合には、従来にない意匠感を持ち、かつ、三次元加工に追従し、光輝性に優れる外観を与えることができるインサート成形用などの加飾フィルムとして特に有用なパターン形成用フィルムを提供することができる。このような加飾フィルムは、インモールド成形、インサート成形などに好適に用いることができ、特にインサート成形用として有用である。
【符号の説明】
【0058】
10 パターン形成用フィルム
11 基材
12 金属薄膜層
13 パターン印刷層
14 ベタ印刷層
15 プライマー層
16 表面保護層
20 パターン形成用フィルム(ラミネートタイプ)
30 パターン形成用フィルム(転写タイプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも、金属薄膜層及びパターン印刷層を有するパターン形成用フィルムであって、該パターン印刷層は金属薄膜層と接し、かつ該パターン印刷層を構成する樹脂が、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、及び塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該樹脂の平均酸価が7mgKOH/g以上であることを特徴とするパターン形成用フィルム。
【請求項2】
基材上に、金属薄膜層及びパターン印刷層をこの順に積層してなる請求項1に記載のパターン形成用フィルム。
【請求項3】
基材上に、パターン印刷層及び金属薄膜層をこの順に積層してなる請求項1に記載のパターン形成用フィルム。
【請求項4】
前記パターン印刷層を構成する樹脂の数平均分子量が1万〜10万であり、ガラス転移温度が70〜90℃である請求項1〜3のいずれか1項に記載のパターン形成用フィルム。
【請求項5】
前記金属薄膜層を構成する金属がスズ又はインジウムである請求項1〜4のいずれか1項に記載のパターン形成用フィルム。
【請求項6】
前記金属薄膜層が蒸着法により形成される請求項1〜5のいずれか1項に記載のパターン形成用フィルム。
【請求項7】
さらに、ベタ印刷層を有し、かつベタ印刷層を構成する樹脂が平均酸価7mgKOH/g以上の、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、又は塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂のいずれでもないことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のパターン形成用フィルム。
【請求項8】
基材上に、少なくとも、金属薄膜層及びパターン印刷層をこの順に積層するパターン形成用フィルムを用いる金属薄膜パターンの形成方法であって、該パターン印刷層は金属薄膜層と接し、かつ該パターン印刷層を構成する樹脂が、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、及び塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該樹脂の平均酸価が7mgKOH/g以上であり、該パターン形成用フィルムを100℃以上で熱処理することを特徴とする金属薄膜パターンの形成方法。
【請求項9】
基材上に、少なくとも、パターン印刷層及び金属薄膜層をこの順に積層するパターン形成用フィルムを用いる金属薄膜パターンの形成方法であって、該パターン印刷層は金属薄膜層と接し、かつ該パターン印刷層を構成する樹脂が、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、及び塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、該樹脂の平均酸価が7mgKOH/g以上であり、該パターン形成用フィルムを100℃以上で熱処理することを特徴とする金属薄膜パターンの形成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−96392(P2012−96392A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244292(P2010−244292)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】