説明

パチンコ機

【課題】 遊技領域の上部に大入賞口を配設する構成において、発射装置から発射された遊技球の速度を減速させ、該遊技球を大入賞口方向へ誘導することができるパチンコ機を提供する。
【解決手段】 遊技領域2の下部に図柄表示装置3を配設し、図柄表示装置3の上側に始動入賞口6を配設し、始動入賞口6の上側に大入賞口7を配設する。大入賞口7の左右両部の上側に調整釘20a〜20c、21a〜21cを植設する。最も中心寄りの調整釘20cと21cの間であり、且つ、調整釘20c、21cよりも上側で、さらに遊技領域2に打ち込まれた遊技球が遊技領域2に設けられている他の部材に衝突することなく、直接衝突し得る位置に減速誘導部材9を設ける。減速誘導部材9は遊技球よりも弾性率の小さいゴム材により構成する。減速誘導部材9との衝突により遊技球の速度を減速させ、減速誘導部材9により形成される傾斜面によって遊技球を調整釘方向へ誘導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発射装置から発射された遊技球の速度を減速させ、該遊技球を所定の領域に誘導するための減速誘導部材を設けたパチンコ機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、遊技領域の略中央部には液晶表示器からなる図柄表示装置を備え、また遊技領域の下部には所定の条件が成立すると一定時間、開放状態となる大入賞口を備えたパチンコ機はよく知られている。また、そのような構成を有するパチンコ機も含め、発射装置から遊技領域に打ち込まれた遊技球の速度を減速させる手段として、遊技領域の上部右端に返しゴムを設けたパチンコ機が知られている。この返しゴムは、勢いよく遊技領域に打ち込まれた遊技球を、遊技領域内の一定方向(主に遊技領域の中央部)に跳ね返して、無駄球を減少させる機能を有する部材である。
【0003】
しかし、この返しゴムは、発射装置から勢いよく遊技領域の右端まで打ち出された遊技球を跳ね返すためにのみ機能するものであった。また、遊技球が勢いよく衝突するため、長期に亘って使用した場合には返しゴムの位置決め部材が破損する可能性が高いという虞もあった。そこで返しゴムの位置決め部材の破損の虞を解消するものとして特許文献1には、返しゴムの形状や取付孔等に改良を加えたものが開示されている。図5は、特許文献1に開示されたパチンコ機の一形態を示す図である。パチンコ機51は従来の一般的なパチンコ機と同様に、遊技領域52の略中央部に図柄表示装置54を備え、図柄表示装置54の下側であって遊技領域52の下部に大入賞口55を備えた構成を有している。そして、直方体形状からなり、左右の中心線上に略同径の複数の取付孔を有した返しゴム53を、飾り部材56の上端縁に突設された各取付孔よりも大径の位置決めピンに返しゴム53の各取付孔を挿通させた状態で設置している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−90003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明は、返しゴムの位置決め部材の破損を防止する構成としては有効であったが、返しゴムとして機能する点については従来と相違するところはなく、発射装置から勢いよく遊技領域の右端まで打ち出された遊技球を跳ね返すためにのみ機能するものであった。従って、遊技者が通常の遊技状態で遊技球の到達位置としてよく狙う、いわゆる天釘周辺へ打ち込まれる遊技球に対しては、返しゴムが作用することはなく、これらの遊技球の速度を減速させる手段として機能することはなかった。このような天釘周辺へ打ち込まれる遊技球に対して速度を減速させる手段として機能しないことは、特許文献1にも開示される、図5に示すような構成を有するパチンコ機、即ち、遊技領域52の略中央部に図柄表示装置54を備え、図柄表示装置54の下側であって遊技領域52の下部に大入賞口55を備えたパチンコ機では、大入賞口55が下部に配設されており遊技領域52を流下する遊技球は流下途中で他の部材と衝突および接触し、大入賞口55の近傍に達したときには遊技球の流下速度が十分減速されるため、遊技球の誘導は容易であり特に問題となることはなかった。しかし、例えば、遊技領域の上部に大入賞口が配設される構成のパチンコ機では、大入賞口の近傍に達したときの遊技球の流下速度は十分に減速されないため、天釘周辺へ打ち込まれる遊技球に対して速度を減速させる手段として機能しないことは、遊技球を大入賞口方向へ誘導することができないという不具合があった。
【0006】
そこで、本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、遊技領域の上部に大入賞口を配設する構成を有し、発射装置から発射された遊技球の速度を減速させ、該遊技球を大入賞口方向へ誘導することができるパチンコ機の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に係るパチンコ機の発明は、発射装置から打出された遊技球を誘導する略円弧状のレールによって形成された遊技盤上の遊技領域に、少なくとも始動入賞口と図柄表示装置と大入賞口とを備え、前記始動入賞口への遊技球の入賞に基づいて前記図柄表示装置に図柄の変動表示および停止表示を行ない、停止表示された図柄の組み合わせが予め定められた特定の組み合わせ図柄であるときに、前記大入賞口の開閉扉を所定時間連続して遊技球の入賞し易い開放状態とし、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させるパチンコ機において、前記遊技領域の下部に前記図柄表示装置を配設し、該図柄表示装置の上側に前記始動入賞口を配設すると共に、該始動入賞口の上側に前記大入賞口を配設し、該大入賞口の開閉扉の上側に、遊技球の流下方向を最終的に前記大入賞口または大入賞口以外の方向へ分流する複数本の調整釘を植設し、前記複数本の調整釘のうち、前記大入賞口の開閉扉の最も中心寄りに植設されている調整釘よりもさらに中心寄りであり、且つ、該調整釘よりも上側に、前記発射装置から発射された遊技球の速度を衝突によって減速させると共に、該遊技球を前記調整釘の方向へ誘導する減速誘導部材を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項2に係るパチンコ機の発明は、請求項1に記載の発明において、前記複数本の調整釘は、前記大入賞口の開閉扉の左右両部の上側に植設され、前記減速誘導部材は、前記左右の複数本の調整釘のうち、前記大入賞口の開閉扉の最も中心寄りに植設されている調整釘と調整釘との間であり、且つ、該調整釘よりも上側に設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
また、請求項3に係るパチンコ機の発明は、請求項1に記載の発明において、前記減速誘導部材は、左下がり傾斜面と右下がり傾斜面から構成されることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項4に係るパチンコ機の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の発明において、前記減速誘導部材は、遊技球よりも弾性率の小さいゴム材からなることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項5に係るパチンコ機の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の発明において、前記減速誘導部材は、発射装置から発射された遊技球が、遊技領域に設けられた他の部材に衝突することなく、直接衝突可能な位置に配設されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るパチンコ機によれば、発射装置から発射された遊技球を誘導部材に衝突させることにより遊技球の速度を減速させることができると共に、その遊技球を大入賞口の左右の上側に植設されている調整釘方向に流下させることができ、遊技領域の上部に大入賞口が配設される構成においても、大入賞口への遊技球の入賞確率を左右する前記調整釘の釘調整を容易に行なうことができる。また、図柄表示装置、大入賞口等の従来にない遊技領域上の配置により、遊技者の興趣を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るパチンコ機の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、パチンコ機に取り付けられる遊技盤の一形態を示す正面図である。
この遊技盤1は、遊技領域2の下部にいわゆる役物として図柄(数字や絵柄等)を変動表示および停止表示させる図柄表示装置3を備えた第1種のパチンコ機の遊技盤1である。ハンドルグリップの回転操作に伴ない発射装置から発射された遊技球が、所定入賞口へ入賞すると、その入賞に基づき変動パターンの抽選が行なわれ、選択された変動パターンの図柄が図柄表示装置2に所定時間変動表示される。また、抽選によって選択された図柄が、前記所定時間の変動表示後に停止表示される。そして、停止表示された図柄が予め定められた特定の組み合わせ図柄の場合に、大入賞口7の開閉扉が一定時間連続して開放し遊技球の入賞し易い状態となって短時間で多くの賞球を得ることが可能となり、遊技者に有利な特別遊技状態(大当たり状態)が発生する。
【0014】
遊技盤1には、発射装置から打出された遊技球を誘導する略円弧状の外レール8a及び内レール8bが設けられ、この二つのレール8aと8bによって囲まれた部分が遊技領域2を形成している。レールによって誘導された遊技球は、遊技領域2に達し流下する。また、流下する遊技球が遊技領域2に設けられている入賞口に入賞する等の所定の条件を満たすと賞球が払い出される。遊技領域2の下部には図柄表示装置3が設けられており、この図柄表示装置3には、抽選によって選択された変動パターンの図柄が変動表示される可変表示部5が設けられている。また、可変表示部5は、左表示部5a、中表示部5b、右表示部5cの3つの表示部から構成されており、それぞれの表示部には、抽選によって選択された図柄が停止表示される。
【0015】
図柄表示装置3の上側には始動入賞口6が設けられており、この始動入賞口6への遊技球の入賞に基づいて可変表示部5に図柄の変動表示動作が開始される。始動入賞口6には開閉動作を行なう羽根6a、6bが設けられており、始動入賞口6の左右上方向に設けられた通過ゲート10a、10bへの遊技球の通過に基づいて、羽根6a、6bが所定時間だけ開放状態となり始動入賞口6へ遊技球が入賞し易い状態となる。
【0016】
始動入賞口6の上側には、可変表示部5a〜5cに特定の図柄が停止表示したとき、例えば、「7」、「7」、「7」のように同じ図柄が3つ停止表示して、いわゆる大当たり状態が発生したときに一定時間継続して開放状態となる大入賞口7が設けられている。大入賞口7の配設される位置は、遊技領域2内において少なくとも図柄表示装置3および始動入賞口6よりも上側であることが必要とされる。さらに限定するならば、遊技領域2の上部であること、例えば、遊技領域2の上半分の領域のいずれかの位置、あるいは遊技領域2の上3分の1の領域のいずれかの位置に配設される。また、大入賞口7の内部にはV入賞ゾーンが設けられており、大当り遊技のラウンド中に大入賞口7へ入賞した遊技球がこのV入賞ゾーンを通過すると、そのラウンドの終了後、一端、閉状態となった大入賞口7が再度開放状態となり次のラウンドが開始される。尚、図1における大入賞口7は、遊技球の入賞できない閉鎖状態が示されている。
【0017】
また、大入賞口7の下部には、大入賞口7が閉鎖状態になっているときに大入賞口7の前面側を流下する遊技球の流下速度を減速させ、その遊技球を始動入賞口6方向へ誘導する傘状の誘導部材11が設けられている。流下してくる遊技球を誘導部材11の傾斜面で受けて遊技球の速度を減速させる。傾斜面は傘状に真中部分を高くして左右に傾斜しており、この傾斜面に沿って遊技球を左右両側方向へ誘導した後に、釘間を流下させることで始動入賞口6方向へ遊技球を誘導している。
【0018】
大入賞口7の上側には、発射装置から発射された遊技球の速度を減速させると共に、その減速させた遊技球を所定の方向へ誘導するための減速誘導部材9が設けられている。減速誘導部材9は、遊技領域2に固定されるベース部材と、ベース部材に取り付けられた弾性部材から構成されている。弾性部材は遊技球よりも弾性率の低い部材からなるため、発射装置から遊技領域2に打ち込まれた遊技球が弾性部材に衝突すると遊技球の速度は減速する。減速誘導部材9の構成については後述する。
【0019】
また、始動入賞口6の左右両側、および大入賞口7の左右両側には、遊技球の流下方向変更部材としての風車12、13が設けられている。また、図柄表示装置3の下側には、遊技領域2を流下していずれの入賞口にも入賞しなかった遊技球、いわゆる外れ球が排出されるアウト口14が設けられている。さらに、遊技領域2全体には、遊技球の流下速度を減速させると共に、遊技球を所定の方向へ誘導するための釘15が植設されている。
【0020】
図2は、減速誘導部材9の周辺部を示す部分拡大図である。尚、減速誘導部材9の下側に設けられている大入賞口7は開閉扉7aが開放されている時の状態を示している。
大入賞口7の左右両部の上側には、調整釘20a、20b、20c、21a、21b、21cが植設されている。ここにいう調整釘とは、遊技球の流下方向を最終的に大入賞口7または大入賞口7以外の方向(例えば、図中の矢印L方向または矢印M方向)へ分類する釘のこと、即ち、遊技球を大入賞口7の方向に流下させるか、あるいは大入賞口7以外の方向に流下させるかを直接的に決定する釘のことをいう。調整釘は複数本ずつ植設されており、この調整釘の傾き具合、開き具合、締め具合の調整によって、開放状態となったときの大入賞口7へ入賞する遊技球の確率(入賞率)が左右される。
【0021】
図2に示す形態では、調整釘20a、20b、20c、調整釘21a、21b、21cのうち、それぞれ大入賞口7の中央部寄りの調整釘20cと21cが開閉扉7aの上側に植設され、次に中央部寄りの調整釘20bと21bが開閉扉7aの左右両側端部の上側に植設され、最も中央寄りでない調整釘20aと21aが大入賞口7の左右両側端部の上側に植設されている。但し、調整釘20a、20b、20c、調整釘21a、21b、21cの植設される位置はこの形態に限定されるものではなく、少なくとも大入賞口7の中央部寄りの調整釘20cと21cが開閉扉7aの上側に植設されていればよい。従って、例えば、調整釘20a、20b、調整釘21a、21bも開閉扉7aの上側に植設する形態であっても、また、調整釘20a、20b、調整釘21a、21bを開閉扉7aよりも外側あるいは大入賞口7よりも外側に植設する形態であってもよい。
【0022】
尚、図2に示す形態では、調整釘20a、20b、20c、および調整釘21a、21b、21cの配置は、大入賞口が遊技領域の下部に配設される従来の構成のパチンコ機の、大入賞口の左右両部の上側に植設される調整釘の配置と同じ配置になっている。これにより、調整釘付近を流下する遊技球の流下速度を減速誘導部材9によって減速させて、従来の大入賞口が遊技領域の下部に配設される構成の大入賞口付近を流下する遊技球の速度と同等にすることで、調整釘の調整を従来の釘調整と同じように行なうことができる。
【0023】
また、上記調整釘は、必ずしも大入賞口7の左右両部の上側に植設されていなければならないわけではなく、例えば、図2において左側の調整釘20a、20b、20cのみが植設される形態であっても、また右側の調整釘21a、21b、21cのみが植設される形態であってもよい。この形態の場合であっても、少なくとも大入賞口7の中央部寄りの調整釘が開閉扉7aの上側に植設されるようにする。
【0024】
減速誘導部材9は、大入賞口7の左右両部の上側に植設された複数本の調整釘のうちの最も中心寄りに植設されている調整釘20cと21cとの間であって、且つ、調整釘20c、21cの位置よりも上側に設けられている。さらに、減速誘導部材9は、発射装置から遊技領域2に打ち込まれた遊技球が、遊技領域2に設けられている他の部材に衝突あるいは接触することなく、減速誘導部材9に直接衝突し得る位置に設けられている。減速誘導部材9を構成するベース部材9aは、ビス等の固定部材によって遊技領域2の基板となっている遊技盤1に固定されている。また、減速誘導部材9を構成する弾性部材9bと9cは、左下がり傾斜面と右下がり傾斜面を形成した状態でベース部材9aに取り付けられている。発射装置から発射された遊技球が減速誘導部材9に、正確には減速誘導部材9を構成する弾性部材9b、9cに衝突することによって、遊技球の速度は減速する。そしてその減速した遊技球を弾性部材9bおよび9cが形成する傾斜面によって調整釘20a、20b、20c、および調整釘21a、21b、21c方向へ誘導し流下させる。
【0025】
但し、上記図2において左側の調整釘20a、20b、20cのみが植設される形態、または右側の調整釘21a、21b、21cのみが植設される形態の場合には、減速誘導部材9に2つの弾性部材9bと9cを設ける必要はなく、先の形態では左下がり傾斜面を形成する弾性部材9bのみを設ければよく、後に形態では、右下がり傾斜面を形成する弾性部材9cのみを設ければよい。また、減速誘導部材9は、複数本の調整釘(20a、20b、20cまたは21a、21b、21c)のうち、大入賞口7の開閉扉7aの最も中心寄りに植設されている調整釘20cまたは21cよりもさらに中心寄りであり、且つ、その調整釘よりも上側に設けられる。
【0026】
減速誘導部材9の右上側には、いわゆる天釘22が植設されている。また、減速誘導部材9の上側には釘23が植設されており、天釘22aと釘23によって、遊技者が遊技球を打ち込む領域として最もよく狙う領域、この形態では天枠22a−23という、を形成している。遊技球の流下経路の一形態を遊技球Aと遊技球B、およびそれに付した矢印によって示す。遊技球Aの流下経路は、発射装置から発射された遊技球を直接、弾性部材9aに衝突させたときの経路である。弾性部材9aに衝突した遊技球は減速し、弾性部材9aの形成する左下がり傾斜面によって調整釘20a〜20c方向へ誘導され、調整釘20aと20b間あるいは調整釘20bと20c間を通過し、調整釘20aと20b間を通過した場合には大入賞口7に入賞し、調整釘20bと20c間を通過した場合には大入賞口7には入賞せずに、さらに遊技領域2を流下する。
【0027】
遊技球Bの流下経路は、発射装置から発射された遊技球を天枠22a−23に打ち込むように狙った経路である。遊技球が天枠22a−23を通過して弾性部材9cに衝突すると、遊技球の速度は減速され、弾性部材9bの形成する右下がり傾斜面によって調整釘21a〜21c方向へ誘導され、調整釘21aと21b間あるいは調整釘21bと21c間を通過し、調整釘21aと21b間を通過した場合には大入賞口7に入賞し、調整釘21bと21c間を通過した場合には大入賞口7には入賞せずに、さらに遊技領域2を流下する。また、図示は省略するが、遊技球Bのように天枠22a−23に打ち込むように狙った遊技球が、天枠22a−23を通過しないで天釘22aあるいは釘23に衝突して左方向へ跳ね、弾性部材9bに衝突する経路では、弾性部材9bとの衝突によって遊技球の速度は減速し、弾性部材9bの形成する左下がり傾斜面によって遊技球は調整釘20a〜20c方向へ誘導され、その後は上記遊技球Aと同様の流下経路を通る。
【0028】
以上のことから、大入賞口7と減速誘導部材9との位置関係は、減速誘導部材9は、発射装置から発射された遊技球が遊技領域2に配置された他の部材に衝突することなく、直接、減速誘導部材9に衝突する位置に配設され、その誘導部材の真下に大入賞口7が設けられる。そして、大入賞口7は、遊技領域2内において少なくとも図柄表示装置3および始動入賞口6よりも上側に設置される。
【0029】
図3(a)は、減速誘導部材9の分解図であり、図3(b)は、ベース部材9aと弾性部材9b、9cの取り付け状態を示す図である。
図3(a)に示すように、ベース部材9aは概略三角形状を有している。その一辺には、減速誘導部材9の左下がり傾斜面を形成する弾性部材9bを取り付けるための取付部分9b'が形成され、他の一辺には、減速誘導部材9の右下がり傾斜面を形成する弾性部材9cを取り付けるための取付部分9c'が形成されている。また、ベース部材9aには、減速誘導部材9を遊技領域2に固定するための固定部分9dが形成されている。弾性部材9b、9cをベース部材9aに取り付ける手段としては、図(b)に示されるように、取付部分9b'、9c'に形成された円柱状のリブ30に弾性部材9b、9cに形成されたリブ合わせ部分31を嵌入させている。このとき弾性部材9b、9cに衝突した遊技球が取付部分9b'、9c'に接触しないように、取付部分9b'、9c'の厚さは2mm程度であることが望ましい。
【0030】
取付部材9b'、9c'を含むベース部材9aは、樹脂材によって形成されている。また、弾性部材9b、9cは、遊技球よりも弾性率の小さいゴム材によって形成されている。係るゴムとしては、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンとエチレンとブテンのゴム共重合体、ポリプロピレン等が使用される。衝突による遊技球の減速は、弾性部材9b、9cに使用されるゴムの種類、即ち、ゴムの弾性率によって決定される。従って、実際に遊技を行ない、弾性部材9b、9cの作用によって調整釘20a、20b、20c、および調整釘21a、21b、21c方向へ誘導される遊技球の速度から、使用するゴムの種類を決定する。使用するゴムの種類を決定する一形態としては、図2に示す遊技球Bの流下経路のように、天枠22a−23を狙って発射された遊技球が、天枠22a−23を通過せずに天釘22aまたは釘23に跳ね返った後、弾性部材9bに衝突し、弾性部材9bにより形成された傾斜面によって調整釘20a〜20c方向へ誘導されるときの、調整釘20a〜20c付近の遊技球の流下速度を基に弾性部材9bのゴムの種類を決定する。
【0031】
また、遊技球Bの流下経路のように、天枠22a−23を狙って発射された遊技球が、天枠22a−23を通過した後、弾性部材9cに衝突し、弾性部材9cにより形成された傾斜面によって調整釘21a〜21c方向へ誘導されるときの、調整釘21a〜21c付近の遊技球の流下速度を基に弾性部材9cのゴムの種類を決定する。あるいは、図2に示す遊技球Aの流下経路のように、遊技球を直接、弾性部材9bに衝突させた後、弾性部材9bにより形成された傾斜面によって調整釘20a〜20c方向へ誘導するときの、調整釘20a〜20c付近の遊技球の流下速度を基に弾性部材9bのゴムの種類を決定する。
【0032】
尚、ベース部材9aの形状はこの形態に示す三角形状に限定されるものではなく、弾性部材9b、9cを取り付けたときに弾性部材9b、9cによって遊技球を調整釘20a、20b、20c、および調整釘21a、21b、21cの方向へ誘導できる傾斜面を形成することができるものであればよい。
【0033】
図4は、大入賞口7の周辺部を示す拡大図であり、大入賞口7の開閉扉7aが閉鎖状態となっている時の、遊技球が流下する様子を示している。
開閉扉7aが閉鎖状態になっているときは,調整釘20bと20c間、あるいは調整釘21bと21c間を通過した遊技球も大入賞口7の前面側を流下可能な状態となり、例えば、図の矢印に示すような経路で流下する。大入賞口7の下部には、傘状に大入賞口7の中央から左右方向へ下り傾斜する面を有した誘導部材11が形成されている。誘導部材11は、大入賞口7の前面から前方向へ突出した傾斜面からなり、図の矢印の経路で流下した遊技球は、誘導部材11によって受けられる。また、誘導部材11は遊技球よりも弾性率の小さい部材から構成されているため、誘導部材11によって受けられた遊技球の速度は減速する。減速した遊技球はこの傾斜面に沿って大入賞口7の左右方向へ誘導された後、釘間を流下する。この誘導部材11によって遊技球の速度を減速させ、大入賞口7の左右方向へ誘導することにより、植設された釘によって流下する遊技球を大入賞口7の下側に配設されている始動入賞口6方向へ誘導し易くしている。
【0034】
尚、大入賞口7が開放している状態、即ち、図2に示す状態では、調整釘20bと20c間、あるいは調整釘21bと21c間を通過した遊技球は、大入賞口7の開閉扉7aによって受けられて大入賞口7内に入賞するため、大入賞口7の前面側を遊技球が流下することはない。但し、大入賞口7が開放している状態においても、遊技球は大入賞口7の左右方向から誘導部材11上に飛び込んでくるため、誘導部材11はそのような遊技球の速度を減速させ、誘導し、始動入賞口6方向へ誘導する部材としても機能する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るパチンコ機の遊技盤の正面図の一形態を示す図である。
【図2】図1に示すパチンコ機の減速誘導部材の周辺を示す部分拡大図である。
【図3】(a)は、減速誘導部材の分解図である。(b)は、減速誘導部材を構成するベース部材と弾性部材の取り付け状態を示す図である。
【図4】大入賞口に設けられた誘導部材の機能を示す図である。
【図5】従来のパチンコ機の一形態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
2 遊技領域
3 図柄表示装置
6 始動入賞口
7 大入賞口
9 減速誘導部材
9a ベース部材
9b、9c 弾性部材
20a〜20c、21a〜21c 調整釘


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射装置から打出された遊技球を誘導する略円弧状のレールによって形成された遊技盤上の遊技領域に、少なくとも始動入賞口と図柄表示装置と大入賞口とを備え、前記始動入賞口への遊技球の入賞に基づいて前記図柄表示装置に図柄の変動表示および停止表示を行ない、停止表示された図柄の組み合わせが予め定められた特定の組み合わせ図柄であるときに、前記大入賞口の開閉扉を所定時間連続して遊技球の入賞し易い開放状態とし、遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生させるパチンコ機において、
前記遊技領域の下部に前記図柄表示装置を配設し、該図柄表示装置の上側に前記始動入賞口を配設すると共に、該始動入賞口の上側に前記大入賞口を配設し、
該大入賞口の開閉扉の上側に、遊技球の流下方向を最終的に前記大入賞口または大入賞口以外の方向へ分流する複数本の調整釘を植設し、
前記複数本の調整釘のうち、前記大入賞口の開閉扉の最も中心寄りに植設されている調整釘よりもさらに中心寄りであり、且つ、該調整釘よりも上側に、前記発射装置から発射された遊技球の速度を衝突によって減速させると共に、該遊技球を前記調整釘の方向へ誘導する減速誘導部材を設けたことを特徴とするパチンコ機。
【請求項2】
前記複数本の調整釘は、前記大入賞口の開閉扉の左右両部の上側に植設され、前記減速誘導部材は、前記左右の複数本の調整釘のうち、前記大入賞口の開閉扉の最も中心寄りに植設されている調整釘と調整釘との間であり、且つ、該調整釘よりも上側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項3】
前記減速誘導部材は、左下がり傾斜面と右下がり傾斜面から構成されることを特徴とする請求項1に記載のパチンコ機。
【請求項4】
前記減速誘導部材は、遊技球よりも弾性率の小さいゴム材からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパチンコ機。
【請求項5】
前記減速誘導部材は、発射装置から発射された遊技球が、遊技領域に設けられた他の部材に衝突することなく、直接衝突可能な位置に配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパチンコ機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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