説明

パチンコ遊技機の球発射装置

【課題】良好な遊技球の発射性能を確保することができるパチンコ遊技機の球発射装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ベース板11上の発射口部材12には、遊技球を発射杆により発射する発射通路12aが設けられ、発射通路12aの側壁部に発射レール13が設けられる。発射杆15は、金属本体が略L字形に形成されてその角部に回動軸14aが軸着され、先端に合成樹脂製の打球部16が設けられ、反打球部側の片部に回動範囲制限部15aが設けられる。回動範囲制限部15aが待機位置に回動したとき、当接する第2ストッパ部18が発射口部材12に設けられる。発射杆15が発射側に回動されて打球を行なった際、回動範囲制限部15aが当接する位置のベース板11に第1ストッパ部17が設けられる。発射口部材12上の第2ストッパ部18に隣接した位置に、待機位置の回動範囲制限部15aの先端部に対向して永久磁石19が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機の球発射装置に関し、特に発射杆の打球部を合成樹脂により形成した球発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパチンコ遊技機の球発射装置における発射杆は、一般に、例えば下記特許文献1に記載されるように、金属によりレバー状に形成され、発射杆の先端にコイルばね製の弾発槌が取り付けられて構成される。発射杆はその元部をロータリソレノイドの回動軸に固定され、発射レールの下端部に遊技球が保持された状態で、発射杆が回動軸を軸に回動して、発射杆の先端の弾発槌が遊技球を打撃し、遊技領域に向けて発射する。
【0003】
この種の球発射装置の発射杆は、その製造時、金属製の発射杆の先端にコイルばねを溶接などにより固定しているが、発射杆の先端は細く狭いため、コイルばねを正確な位置に固定することが難しく、製造時の作業工数が増大し、コイルばねの取付位置にばらつきが生じやすいという課題があった。
【0004】
そこで、従来、発射杆の先端に円柱状或いは円錐形の槌本体を突設し、その槌本体にコイルばねを被せるように取り付け、コイルばねの先端に合成樹脂製の槌先を取り付けた構造の発射装置が、下記特許文献2などにより提案されている。また、発射杆の先端に突設された円柱状の槌部材に、鞘部材を軸方向に移動可能に被せた構造の発射装置が、下記特許文献3などにより提案されている。
【特許文献1】特開平4−256766号公報
【特許文献2】実開平4−58283号公報
【特許文献3】特開2003−220197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献2,3に記載される発射杆は、何れも打球時の弾性力を保持しつつ、組付けの作業性を改善しようとするものであるが、前者のものは、コイルばねを使用するため、部品点数が増加すると共にコイルばねの位置決めが難しく、後者のものは、槌部材の周囲に螺旋溝を形成するため、部品点数の増加と共にやはり加工工数が多いという課題があった。
【0006】
本発明は、良好な遊技球の発射性能を確保することができるパチンコ遊技機の球発射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1の球発射装置は、先端に打球部を有した発射杆が回動軸を軸に往復回動動作して、該打球部を遊技球に打ち当て、遊技球を遊技領域に向けて発射するパチンコ遊技機の球発射装置において、ベース板に発射口部材が固定され、発射口部材には、遊技球を発射杆により発射する発射通路が設けられると共に、該発射通路の側壁部に発射レールが設けられ、該発射杆は、金属本体が略L字形に形成されてその角部に該回動軸が軸着され、先端に合成樹脂製の打球部が設けられると共に、反打球部側の片部に回動範囲制限部が設けられ、該回動範囲制限部が待機位置に回動したとき、当接する第2ストッパ部が該発射口部材に設けられ、該発射杆が発射側に回動されて打球を行なった際、該回動範囲制限部が当接する位置の該ベース板に第1ストッパ部が設けられ、該発射口部材上の該第2ストッパ部に隣接した位置に、待機位置の該回動範囲制限部の先端部に対向して永久磁石が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のパチンコ遊技機の球発射装置によれば、第2ストッパ部に隣接して回動範囲制限部の先端部に対向した位置に永久磁石が配設されるので、発射杆が待機位置に戻り、第2ストッパ部に当って停止する際、永久磁石の磁力を受ける。待機位置の発射杆は、この永久磁石による磁力を受けるので、遊技球を安定して一定の発射方向に一定の飛距離で発射することができ、良好な発射性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1はパチンコ遊技機の発射装置10の正面図を示し、図2はその右側面図を、図3はその分解斜視図を示している。発射装置10は、金属板などにより矩形に形成されたベース板11上に、発射口部材12、ロータリソレノイド14、第1・第2ストッパ部17,18などを取り付けて構成される。ベース板11の中央右寄りに軸孔が穿設され、その軸孔から回動軸14aを突き出すように、ロータリソレノイド14がベース板11の裏面に固定ねじなどで固定される。
【0010】
ベース板11上には、合成樹脂製の発射口部材12が固定ねじなどにより固定されている。発射口部材12は、その略中央に発射通路12aが斜め上方に傾斜して形成され、その発射通路12aに向かって左側の側壁部に発射レール13が取り付けられている。
【0011】
また、発射口部材12の発射通路12aは、後述の遊技盤2上の外レール3の下端部と内レール4間に斜め下方に傾斜して設けられた導入口5に向けて、傾斜して形成される。さらに、発射通路12a内の下端部には、側壁をせりだして通路を狭搾するように、球保持部12bが形成され、図示しない球送り機構から送られた1個の遊技球がこの球保持部12に保持される。
【0012】
発射通路12aの下側の側壁部を形成する発射レール13は、コ字状に曲折した金属板の接触面を略V字型に曲折して形成され、発射レール13の長さは遊技球の直径の略2倍の長さに形成されている。この発射レール13は遊技球の発射時のガイドとなるものであるが、発射レール13の傾斜角度より、少し大きい発射角度で遊技球を外レールの下端の導入口に向けて発射することにより、発射レールとの接触を少なくし、発射レール13の長さを従来のものより短縮している。
【0013】
発射杆15は、概略的には、略L字型に形成され、その角部に回動軸を嵌着されるための軸孔が形成される。また、発射杆15の先端部には、遊技球を打撃するための打球部16が形成され、反打球部側の片部には、後述の第1・第2ストッパ部17,18に当接するための回動範囲制限部15aが形成されている。また、この発射杆15は、図3〜図5に示すように、金属インサート(金属本体)15bの周囲に高反発弾性の合成樹脂を被覆するようにインサート成形して、合成樹脂の被覆層15cがその周囲に被覆・形成され、そのインサート成形時に先端の打球部16が一体に成形されるものである。
【0014】
発射杆15の金属本体となる金属インサート15bは、図4に示すように、例えば鋼板を略L字型に裁断して形成され、その角部には軸孔15dが穿設され、先端部にはインサート保持用ピンを挿入するためのピン孔15eが穿設される。このような形状の金属インサート15bは、製造時、所定のインサート成形型内にセットされ、その周囲に合成樹脂材料を射出してインサート成形が行なわれる。合成樹脂材料としては、一般的なゴムとプラスチックの間の中間的な柔らかさを有し、高い耐衝撃性と反発弾性を有した熱可塑性エラストマーを使用することが好ましく、熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルエラストマーの使用が好ましい。
【0015】
発射杆15は、このようなインサート成形により、図5のような形状に成形され、金属インサート15bの外周には、略全体を覆うように合成樹脂の被覆層15cが被覆・形成され、回動範囲制限部15aの被覆層15cと共に、発射杆15の先端部の左側端面に、遊技球を打球する打球部16が一体に成形される。この打球部16は、高反発弾性を有する合成樹脂材料により成形され、単純に突起部として形成して良好な反発弾性を付与することができるが、ここでは、横方向に貫通孔16aを形成することにより、さらに高い反発弾性が打球部16に生じるようにしている。
【0016】
なお、発射杆15の打球部は、高反発弾性を生じさせるために、貫通孔16aのほか、図8に示すように、複数の溝26aを打球部26の両側面に形成して、高反発弾性を確保することもできる。また、溝に代えて凹部とすることもできる。
【0017】
さらに、打球部16の打撃面は、図5に示すように、遊技球の半径より幅広の矩形に形成され、楕円形とすることもできる。遊技球の半径は5.5mmであり、打撃面の横幅は、例えば6mmとするとことができる。このように、打球部16の打撃面を遊技球の半径より幅広の矩形または楕円形に形成することにより、遊技球と打球部16の位置関係が微妙にずれたときでも、安定した発射を行なうことができる。よって、発射杆15が一定の回動力で回動する際、遊技球の発射方向と飛距離のばらつきを少なくし、一定した打球を行なうことができる。
【0018】
上述のように、発射杆15のL字形本体の角部に軸孔が穿設され、その軸孔にロータリソレノイド14の回動軸14aの先端が嵌入され、固定ナット14bにより締め付け固定されるが、図3、図5に示すように、軸孔15dの周囲は、金属面を露出させており、固定ナット14bによる発射杆15の締め付け固定が強固に行なわれるようにしている。
【0019】
ロータリソレノイド14は、図3に示すように、ベース板11の中央右寄りに形成された孔から回動軸14aを突き出すように、ベース板11の裏面に固定され、その回動軸14aの先端に発射杆15が固定ナット14bにより締め付け固定される。このとき、発射杆15の打球部16は、図7に示すように、発射杆15が正面視で略6時位置から略8時位置に向けて時計方向に回動したとき、球保持部12bの遊技球を打撃して、これを所定の発射方向に発射させるように形成されている。
【0020】
さらに、発射杆15の反打球部側の片部には、回動範囲を制限するための回動範囲制限部15aが形成され、この回動範囲制限部15aに対向して、第1ストッパ部17、第2ストッパ部18が当接可能にベース板11上に固定されている。
【0021】
第1ストッパ部17は、発射杆15が発射側に回動されて打球を行なった際、回動範囲制限部15aが当接する位置のベース板11上に固定される。また、第2ストッパ部18は、発射杆15が打球動作後に待機位置に戻った際、回動範囲制限部15aが当接する位置のベース板11上に固定される。第1ストッパ部17及び第2ストッパ部18における、発射杆15の回動範囲制限部15aが当接する部分には、合成樹脂製の取付部に対してゴム状弾性を有する高分子エラストマーなどのゴム状弾性体を取り付け、ストッパ部に発射杆15が当った際の衝撃を緩衝させるようにしている。
【0022】
このように、発射杆15には、その回動範囲を制限する回動範囲制限部15aと遊技球を打撃する打球部16が設けられるところ、上記のように、金属インサート15aをインサートとして高反発弾性の合成樹脂のインサート成形を行なうことにより、回動範囲制限部15aの被覆層15cと打球部16を1つの成形工程で同時に形成することができ、発射杆15の生産効率を大きく向上させることができる。
【0023】
なお、発射杆15は、ロータリソレノイド14の回転駆動により発射方向(図7の時計方向)に駆動され、発射後は、その自重と発射口部材12に設けた永久磁石19の磁力により、図7の位置から図1の位置まで、反時計方向に回動して待機位置に戻るように構成されている。また、図2に示すように、発射装置10の前面には、その発射杆15などを覆うように、透明カバー10aが取り付けられ、遊技球が誤って球保持部12b以外の箇所に侵入することを防止している。
【0024】
このように構成された発射装置10は、図6に示すように、遊技機の前面枠1内における遊技盤2の下側中央位置に取り付けられる。遊技盤2は、前面枠1の中央部に着脱可能に取り付けられ、遊技盤2上には中央の遊技領域を囲うように外レール3と内レール4が配設されている。なお、図面上では、遊技盤2上に打設される障害釘、各種役物、表示装置、入賞口などは省略されている。
【0025】
遊技盤2の正面視において、左下側の外レール3の下端部と内レール4の間に、発射された遊技球を導入するための導入口5が形成されている。この導入口5は左端部から遊技盤2の下側の中央部、つまり斜め下方の中央部に向けて開口して形成され、発射装置10がその遊技盤2の下側の略中央位置に設置される。
【0026】
発射装置10のロータリソレノイド14は、図示しない発射制御回路に接続される。発射制御回路は、遊技者の図示しない発射レバーへの接触を検出すると共に、発射レバーの回動時の回転量(回転角)を検出し、球送り機構(図示を省略)を動作させて、受け皿より送られた遊技球を1個づつ発射装置10の球保持部12bに送ると共に、ロータリソレノイド14を発射レバーの回転角に応じたトルクで回転駆動し、遊技球の発射動作を制御するように構成されている。
【0027】
次に、上記構成の球発射装置の動作を説明する。遊技者が発射レバーを操作すると、図示しない球送り機構が動作して遊技球を1個づつ発射装置10の球保持部12bに送ると共に、ロータリソレノイド14が駆動して発射杆15が図1の待機位置から図7の発射位置に向けて正面視で時計方向に回転駆動される。このとき、発射杆15の回動により、その先端の打球部16が球保持部12bの遊技球を打撃し、遊技球は発射通路12aを通り外レール3の下端部の導入口5に向けて発射される。
【0028】
打球部16は、被覆層15cと一体に同一の合成樹脂で成形されているが、高反発弾性を有する熱可塑性エラストマー(例えばポリエステルエラストマー)が使用されるため、良好なばね状弾性により、遊技球を安定して一定の発射方向に一定の飛距離で発射することができる。
【0029】
また、発射杆15は、このような発射動作時、その回動範囲制限部15aの一側が第1ストッパ部17に当接して停止する。ロータリソレノイド14の回転駆動を行なう駆動電流は、短い時間幅のパルス状電流であって、パルス状に供給され、これによって打球部16が遊技球に向けて回動して打撃し、回動範囲制限部15aが第1ストッパ部17に当接した時点で、駆動パルス電流は消失し、回転トルクはゼロとなる。このため、発射杆15は、打撃動作後、その自重により図7の反時計方向に回動し、図1の待機位置に戻ったとき、回動範囲制限部15aの他側が第2ストッパ部18に当接して停止する。
【0030】
このように、ロータリソレノイド14の駆動により、発射杆15が所定の角度範囲で往復回動動作を繰り返し、発射杆15先端の打球部16が時計方向に回動して、球保持部12bに保持された遊技球を打撃することにより、遊技球は良好に発射される。打球部16は、被覆層15cと同じ熱可塑性エラストマーにより一体成形されるため、良好な高反発弾性と高い耐衝撃性により、打球時の衝撃を良好に緩和し、打球部16の摩耗も最少に抑えることができる。
【0031】
図9は他の実施形態の発射杆35を示し、この例では、金属本体35bの打球部側の先端部のみに被覆層35cが被覆形成され、その被覆層35cと一体に打球部36が形成されている。この被覆層35cは上記と同様に、熱可塑性エラストマーを材料としてインサート成形により成形されるが、このように、金属本体35bの先端部近傍のみに被覆層35cを設けることによっても、打球部36の形成は容易に行なうことができる。
【0032】
図10は他の実施形態の発射杆45を示している。この例では、金属本体45bの打球部側の先端部のみに被覆層45cが被覆され、固定ねじ45dにより被覆層45cが固定される。被覆層45cには打球部46が一体に形成され、この被覆層45cは上記と同様に、熱可塑性エラストマーを材料として成形される。このように、金属本体45bの打球部側の先端部のみに被覆層45cを設けることによっても、その被覆層45cに打球部46を一体成形すれば、打球部46の形成は容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態を示す発射装置の正面図である。
【図2】同発射装置の右側面図である。
【図3】発射装置の分解斜視図である。
【図4】発射杆の金属インサートの正面図である。
【図5】(a)は発射杆の正面図、(b)はその左側面図である。
【図6】パチンコ遊技機の前面枠の正面図である。
【図7】発射動作時の発射杆の正面図である。
【図8】他の実施形態の発射杆の正面図である。
【図9】さらに他の実施形態の発射杆の正面図である。
【図10】さらに他の実施形態の発射杆の正面図である。
【符号の説明】
【0034】
10−発射装置
12b−球保持部
13-発射レール
14−ロータリソレノイド
15-発射杆
15a-回動範囲制限部
15b−金属インサート
15c−被覆層
16−打球部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に打球部を有した発射杆が回動軸を軸に往復回動動作して、該打球部を遊技球に打ち当て、遊技球を遊技領域に向けて発射するパチンコ遊技機の球発射装置において、
ベース板に発射口部材が固定され、該発射口部材には、遊技球を発射杆により発射する発射通路が設けられると共に、該発射通路の側壁部に発射レールが設けられ、該発射杆は、金属本体が略L字形に形成されてその角部に該回動軸が軸着され、先端に合成樹脂製の該打球部が設けられると共に、反打球部側の片部に回動範囲制限部が設けられ、該回動範囲制限部が待機位置に回動したとき、当接する第2ストッパ部が該発射口部材に設けられ、該発射杆が発射側に回動されて打球を行なった際、該回動範囲制限部が当接する位置の該ベース板に第1ストッパ部が設けられ、該発射口部材上の該第2ストッパ部に隣接した位置に、待機位置の該回動範囲制限部の先端部に対向して永久磁石が設けられたことを特徴とするパチンコ遊技機の球発射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−11859(P2009−11859A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269749(P2008−269749)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【分割の表示】特願2004−334577(P2004−334577)の分割
【原出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】