説明

パッキン形成部材及び換気パッキン

【課題】モルタル等の流入を規制しつつ、柱等の突出部周囲であっても設置可能な換気パッキンを形成するパッキン形成部材及び換気パッキンを提供することを目的とする。
【解決手段】基礎1の上部にて並べて配置されることにより、基礎1と上部構造3との間に介装される換気パッキン5を形成するパッキン形成部材6,7であって、上部構造3を受ける平板部6a,7aと、平板部6a,7aの下面側に換気路Rを形成する換気部6b,7bと、を備え、平板部6a,7aには、強度が他の部分よりも弱く、且つ上部構造3から基礎1に向けて突出する柱部材3aを避ける切欠部Cを形成するための開口ガイド部11が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の上部構造と基礎との間に介装される換気パッキンを形成するパッキン形成部材及び換気パッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の上部構造と基礎との間に換気パッキンを介装し、このパッキン材に設けられた通気孔により、上部構造の下方であって基礎で包囲された床下空間の換気を行うことを可能とした工法が知られている。かかる工法に用いられる換気パッキンとして、例えば特許文献1には、建造物の基礎と土台との間に介装されるパッキン材であって、該パッキン材の長手板状の本体部には、上下方向に亙り貫通する複数の開口部が所定間隔で設けられている一方、この本体部の上面側は平板状に成形され、かつ、この上面側からは、凹凸壁が所定間隔で鉛直下方に櫛歯状に垂設されており、これら隣り合う凹凸壁の間には、幅方向に貫通する複数の換気孔が連続して形成されているとともに、これら凹凸壁の突出部が本体部における長辺の側部にそれぞれ突出している構成が開示されている。該土台パッキン材においては、土台の外側面に板状の外壁下地材が立設されるとき、この外壁下地材の下端部をパッキン材の凹凸壁の突出部の上面に載置可能であって、かつ、この外壁下地材には、胴縁を介して外壁外装材が設けられており、この外壁下地材と外壁外装材との隙間において、パッキン材の突出部間から上方に通気可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−215809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示の土台パッキンにおいては、上下を貫通する開口部が形成されているため、当該土台パッキンを基礎上に設置すると共に当該土台パッキン上に外壁パネルと床パネルとを設置し、これら外壁パネル、床パネル及び基礎の間をモルタルにより埋める工法に採用すると、開口部を通じて土台パッキン内にモルタルが流入してしまうこととなり、土台パッキンとしての通気機能が著しく損なわれてしまうという問題があった。かかる問題を解決すべく、開口部を単に塞ぐことが考えられるが、この場合、上部構造から突出して基礎に締結される柱等が存在する工法においては、開口部に柱を挿通することができないため、当該柱周囲に土台パッキンを設置することができなくなってしまうという問題を解決できない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、モルタル等の流入を規制しつつ、柱等の突出部周囲であっても設置可能な換気パッキンを形成するパッキン形成部材及び換気パッキンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明の構成は、基礎の上部にて並べて配置されることにより、基礎と上部構造との間に介装される換気パッキンを形成するパッキン形成部材であって、上部構造を受ける平板部と、平板部の下面側に換気路を形成する換気部と、を備え、平板部には、強度が他の部分よりも弱く、且つ上部構造から基礎に向けて突出する突出部を避ける切欠部を形成するための開口ガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るパッキン形成部材を、例えば、上部構造からの突出部に対向しない位置に設置する際には、平板部は塞がれているので、モルタル等が通気部に流れ込む虞はなく、通気部の通気機能を良好に発揮させることができる。また、上部構造の突出部に対応する位置に設置される場合には、開口ガイド部に沿って平板部の一部を切除などして当該平板部に切欠部を形成することで容易に突出部を避けることができ、従って、突出部の周囲に換気パッキンを配置することが可能となる。その結果として、本発明によれば、例えば、換気パッキン上に載置される外壁や床部材の間にモルタル等を流し込む施工に用いても当該モルタル等の換気部への流入を規制しつつ、柱等の突出部周囲であっても設置可能な換気パッキンを形成することができる。
【0008】
さらに、平板部は、換気部に連結されると共にその換気部と一体となって上部構造を支持する厚肉部と、厚肉部に連結された薄肉部とを有し、開口ガイド部は、薄肉部に設けられていると好適である。開口ガイド部を平板部の薄肉部に形成することで開口ガイド部に沿って平板部の一部を切り離し易い構成を実現できる。さらには、平板部は、換気部と対応する位置が厚肉部として形成されるため、その厚肉部と換気部とが一体となって強度を発揮することとなる。その結果、上部構造と基礎の間に配置された際の当該上部構造からの荷重にも充分に耐える構成を実現し易くなる。
【0009】
さらに、平板部の下面側には、基礎の梁部分の上部に配置された際に梁部分の一方の側部側から他方の側部側に向けて延在する補強部が形成されており、補強部には、並んで配置される他のパッキン形成部材との間で平板部同士を突き合わせた状態で着脱自在に連結される連結部が設けられていると好適である。この構成によれば、平板部の薄肉部の一部に補強部が延在することとなるので、パッキン形成部材の強度向上に有効であり、更に、一対のパッキン形成部材を連結して形成される換気パッキンの更なる強度向上に有効である。
また、パッキン形成部材の補強部同士を連結部により連結することで換気パッキンを容易に形成することができる。また、このようにして形成される換気パッキンは、平板部同士を突き合わされた状態で連結されるので上面の平坦さは維持されることとなり、換気パッキン上面に不陸が生じることを防止することができるものとなっている。
【0010】
さらに補強部は、少なくとも平板部の長手方向の両方の端寄りの位置にそれぞれに設けられており、開口ガイド部は、平板部の長手方向の端部から平板部の側部に亘って厚肉部及び補強部に沿って延在していると好適である。この構成に係る開口ガイド部は、パッキン形成部材のうち強度が高い部分に添って形成されていると共に、開口ガイド部の端が開放されている平板部の端部または側部に形成されているため、開口ガイド部に沿ってハサミ等の切断器具を挿入しやすく、従って、開口ガイド部を切除して切欠部を形成し易いものなっている。また、平板部の側部と端部との連絡部位である頂部が開口ガイド部に包囲されることとなり、その頂部が平板部の長手方向から見ても或いは長手方向に垂直な方向から見ても片持ち梁状となっているため、端部力を加えやすく、さらには、その頂部に力を付与することで平板部を開口ガイド部に沿って折り曲げて容易に切欠部を形成することができる。
【0011】
さらに換気部は、平板部の長手方向の一方の端部から他方の端部に亘って等間隔で突出する複数枚の板片を備えていると好適である。この構成によれば、換気部の強度を平板部の長手方向に亘って均質に維持した状態で、長手方向に亘って均質な性能を有する換気路を形成することができる。
【0012】
複数枚の板片は、平板部の縁に沿って配置され、換気部には、平板部の縁から張り出し、且つ先端側で平板部の下面側に突き出すことで複数枚の板片を覆う水切り部が設けられていると好適である。この構成によれば、換気部内部に向けての雨水の浸入を防止することができる。また、換気部の板片が水切り部で覆われることとなるので、複数の板片が水切り部によって隠されることとなり、意匠性の向上が図られることはもちろん、板片の間に物を詰め込む等の悪戯の防止も図ることができる。
【0013】
さらに、水切り部には、上部構造を受ける面側に平板部の長手方向に沿った溝が形成されていると好適である。この構成によれば、上部構造から水切り部上面に伝ってくる水分は、毛管現象等によりそのまま上部構造とパッキン形成部材との間を伝って室内内部に流れ込む経路が生じると考えられるが、上記構成によれば、その経路を横切るように溝が形成されることとなり、経路を通る水分は、溝に受け止められることとなり、それ室内側にまで水が伝わってしまうことを著しく抑制することができる。
【0014】
また、本発明は、基礎の上部に配置され、基礎と上部構造との間に介装される換気パッキンであって、上部構造を受ける平板部と、平板部の下面側に換気路を形成する換気部と、を備え、平板部には、強度が他の部分よりも弱く、且つ上部構造から基礎に向けて突出する突出部を避ける切欠部を形成するための開口ガイド部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る換気パッキンを、例えば、上部構造からの突出部に対向しない位置に設置する際には、平板部は塞がれているので、モルタル等が通気部に流れ込む虞はなく、通気部の通気機能を良好に発揮させることができる。また、上部構造の突出部に対応する位置に設置される場合には、開口ガイド部を切除などして平板部に切欠部を形成することで容易に突出部を避けることができ、従って、突出部の周囲にも配置することが可能となる。その結果として、本発明によれば、モルタル等の流入を防ぎつつ、柱等の突出部周囲であっても設置することができる。
【0016】
さらに、平板部は、換気部に連結されると共にその換気部と一体となって上部構造を支持する厚肉部と、厚肉部に連結された薄肉部とを有し、開口ガイド部は、薄肉部に設けられていると好適である。開口ガイド部を平板部の薄肉部に形成することで開口ガイドに沿って平板部の一部を切り離し易い構成を実現できる。さらには、平板部は、換気部と対応する位置が厚肉部として形成されるため、その厚肉部と換気部とが一体となって強度を発揮することとなる。その結果、上部構造と基礎の間に配置された際の挟持力にも充分に耐える構成を実現し易くなる。
【0017】
さらに、平板部の下面側には、基礎の梁部分の上部に配置された際に基礎の一方の側部側から他方の側部側に向けて延在する補強部が形成されており、補強部は、少なくとも平板部の長手方向の両方の端寄りの位置にそれぞれに設けられており、開口ガイド部は、平板部の長手方向の端部から平板部の側部に亘って厚肉部及び補強部に沿って延在していると好適である。この構成によれば、平板部の薄肉部の一部に補強部が延在することとなるので、強度向上に有効である。また、開口ガイド部は、換気パッキンのうち強度が高い部分に添って形成されていると共に、開口ガイド部の端が開放されている平板部の端部または側部に形成されているため、開口ガイド部に沿ってハサミ等の切断器具を挿入しやすく、従って、開口ガイド部を切除して切欠部を形成し易いものなっている。また、平板部の側部から端部に連絡される頂部が開口ガイド部に包囲されることとなり、その頂部が平板部の長手方向から見ても或いは長手方向に垂直な方向から見ても片持ち梁状となっているため、端部力を加えやすく、さらには、その頂部に力を付与することで平板部を開口ガイド部に沿って折り曲げて容易に切欠部を形成することができる。
【0018】
さらに換気部は、平板部の長手方向の一方の端部から他方の端部にわたって等間隔で突出する複数枚の板片を備えていると好適である。この構成によれば、換気部の強度を平板部の長手方向に亘って均質に維持した状態で、長手方向に亘って均質な性能を有する換気路を形成することができる。
【0019】
さらに複数枚の板片は、平板部の縁に沿って配置され、換気部には、平板部の縁から張り出し、且つ先端側で平板部の下面側に突き出すことで複数枚の板片を覆う水切り部が設けられていると好適である。この構成によれば、換気部内部に向けての雨水の浸入を防止することができる。また、換気部の板片が水切り部で覆われることとなるので、複数の板片が水切り部によって隠されることとなり、意匠性の向上が図られることはもちろん、板片の間に物を詰め込む等の悪戯の防止も図ることができる。
【0020】
さらに水切り部には、上部構造を受ける面側に平板部の長手方向に沿った溝が形成されていると好適である。この構成によれば、上部構造から水切り部上面に伝ってくる水分は、毛管現象等によりそのまま上部構造とパッキン形成部材との間を伝って室内内部に流れ込む経路が生じると考えられるが、上記構成によれば、その経路を横切るように溝が形成されることとなり、経路を通る水分は、溝に受け止められることとなり、それ室内側にまで水が伝わってしまうことを著しく抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、モルタル等の流入を規制しつつ、柱等の突出部周囲であっても設置可能な換気パッキンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】建物の基礎の一例を示す平面図である。
【図2】基礎の上に突出部が立設され、更に突出部を避けて換気パッキンが形成された状態を示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】本実施形態に係る一対のパッキン形成部材を示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係る一対のパッキン形成部材を部分破断して示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
木造住宅などの上部構造の重量が比較的軽い躯体を基礎で受ける場合には、柱から伝達された力を基礎へ伝える土台と基礎と間に換気パッキンを介装することで換気路が形成される。一方で、鉄骨造の建物などでは、上部構造の重量が重いために柱部材などを直接、基礎で受ける必要がある。そのため、この種の建物では、柱部材を避けるようにして換気パッキンが基礎の上端と上部構造との間に介装されて換気路が形成される。本実施形態に係る換気パッキンは、鉄骨造の建物などで利用される。
【0025】
図1〜図3に示されるように、基礎1は、例えば、鉄筋コンクリート製或いは鉄骨梁を架設して形成される布基礎やべた基礎などであり、基礎梁(梁部分)1aや基礎スラブなどを備えている。上部構造3は、柱部材3a、床部材3b(図3参照)、外壁受けプレート3c、外壁3d、モルタル3e、及び外壁受けプレートを支持する支持部材3fなどを備えて構成されている。上部構造3から基礎1に向けて突出された柱部材(突出部)3aは、基礎1の柱脚や基礎梁1aの上部に立設される。基礎梁1aの上端には、柱部材3aを避けるようにして複数の換気パッキン5が並べて配置され、上部構造3との間で介装されている。複数の換気パッキン5は、柱部材3aを避け、且つ包囲するように効率よく配置されるので、換気パッキン5と柱部材3aとの間に生じる隙間は小さく、従って換気パッキン5の内部へのモルタル3eの流入は規制される。
【0026】
なお、本実施形態に係る柱部材3aの下端部には、柱脚カバー4aが巻装されており、その柱脚カバー4aを介して柱部材3aの周囲を換気パッキン5が包囲するものとなり、柱脚カバー4aによって柱部材3aの柱脚部と該柱脚部の周囲を包囲して設けられる換気パッキン5との間に生じる虞がある隙間が略完全に塞がれるものとなる。また、支持部材3fも上部構造3から突出して基礎1に固定されており、その支持部材3fには換気パッキン5の上面となる位置に対応させてモルタル受けプレート4bが設置されており、そのモルタル受けプレート4bによって支持部材3fと換気パッキン5との間に生じる虞がある隙間が略完全に塞がれるのとなる。この状態で、換気パッキン5の上方の隙間にモルタル3eが充填され、そのモルタル3e内に柱部材3aの柱脚や取付部材が埋設されるものとなる。
【0027】
基礎梁1aと上部構造3との間に形成される換気路(「基礎天換気口」ともいう)Rは、モジュール化された複数の換気パッキン5によって形成される。換気パッキン5は、基礎梁1aの内側の側部(一方の側部)1cから外側の側部(他方の側部)1dに向けて並べて配置される一対のパッキン形成部材6,7を組み合わせることで形成される。一対のパッキン形成部材6,7は、射出成形などで形成される樹脂製の部材である。以下、説明の便宜上、内側に配置されるパッキン形成部材6を内パッキン部材といい、外側に配置されるパッキン形成部材7を外パッキン部材という。
(内パッキン部材)
【0028】
図4〜図6に示されるように、内パッキン部材6は、上部構造3を受ける平板部6aと、平板部6aの下面側に換気路Rを形成する換気部6bと、を備えている。平板部6aは略矩形状であり、長手方向Lに沿って延在する境界段差6cを挟んで連結側と開放側とに分かれている。連結側、すなわち外パッキン部材7に連結される側の板厚は開放側の板厚に比べて板厚が薄くなっている。板厚の薄い連結側の領域は薄肉部6d(図6参照)であり、板厚の厚い開放側の領域は厚肉部6eである。薄肉部6dと厚肉部6eとは境界段差6cを介して一体的に連結され、また、厚肉部6eは換気部6bと一体となって上部構造3を支持する。
【0029】
換気部6bは、平板部6aの下面側に突出された複数枚の板片6f,6gを備えている。複数枚の板片の先端は基礎梁1aの上端面に当接し、平板部6aで受けた荷重を基礎梁1aに伝達する。複数枚の板片6f,6gは、厚肉部6eで一列に並んで設けられた複数の板片(出入口側板片)6fと、薄厚部で一列に並んで設けられた複数の板片(連絡口側板片)6gと、に分けられる。出入口側板片6fは、平板部6aの厚肉部6e側の縁Eaに沿って長手方向Lの一方の端部から他方の端部に亘って等間隔で突出している。また、連絡口側板片6gは、平板部6aの薄肉部6d側の縁Ebに沿って長手方向Lの一方の端部から他方の端部に亘って等間隔で突出している。
【0030】
出入口側板片6fは、板面の向き(法線方向)が平板部6aの長手方向Lに沿った方向を向くように形成され、複数の出入口側板片6fは、同じ方向を向いて略平行に並んでいる。従って、出入口側板片6fの板面に沿った方向は、平板部6aの長手方向Lに直交する方向(直交方向)となり、隣接する出入口側板片6f同士の間には直交方向で通気される換気路Rが形成される。
【0031】
なお、厚肉部6eの下面側には複数の柱体6hが突出して設けられている。複数の柱体6hは、出入口側板片6fよりも奥側で、且つ出入口側板片6fに対して平面視で千鳥状となるように配置されている。具体的には、柱体6hの径は、隣り合う出入口側板片6f同士の間の幅寸法よりも小さく、この幅寸法の真中付近で、且つ奥側にずれて設けられている。従って、柱体6hと出入口側板片6fとの間には隙間があり、この隙間を通って換気用の気体が流動する。一方で、出入口側板片6f同士の間の真中に柱体6hが設置されているので、柱体6hは、昆虫や小動物などの生き物が換気パッキン5内に入り込むのを防ぐ邪魔部材として機能する。
【0032】
連絡口側板片6gは、板面の向き(法線方向)が平板部6aの長手方向Lに沿った方向を向くように形成され、複数の連絡口側板片6gは、同じ方向を向いて略平行に並んでいる。従って、連絡口側板片6gの板面に沿った方向は、平板部6aの長手方向Lに直交する方向(直交方向)となり、隣接する出入口側板片6f同士の間には直交方向で通気される換気路Rが形成される。
【0033】
薄肉部6dの下面側には、連絡口側板片6gに略平行に並んで複数枚(本実施形態では四枚)の補強板片(補強部)6iが突出して形成されている。補強板片6iの先端は、連絡口側板片6gや出入口側板片6fと同様に基礎梁1aの上端に当接し、平板部6aで受けた荷重を基礎梁1aに伝達する。
【0034】
補強板片6iは、換気路R内の気体の通過を阻害しないように、連絡口側板片6gや出入口側板片6fと同様に平板部6aの長手方向Lに直交する方向(直交方向)に沿って延在する。その結果、補強板片6iは、内パッキン部材6が外パッキン部材7と連結されて換気パッキン5となり、基礎梁1aの上部に配置された際に、基礎梁1aの一方の側部1c側から他方の側部1d側に向けて延在する構成を具現化するものとなる。なお、本実施形態に係る補強板片6iは、平板部6aの薄肉部6d側の縁Ebから薄肉部6dを直交方向に横切って境界段差6cの手前で途切れているが、補強板片6iが厚肉部6eまで到達するように設けてもよい。また、平板部6aの補強板片6iを設ける領域を厚肉部6eと同程度に厚肉形成する構成を採用しても良い。
【0035】
複数枚の補強板片6iは、同数ずつが平板部6aの中央を挟むように配置されている。具体的には、四枚の補強板片6iが二枚ずつに分かれて対向配置されている。四枚の補強板片6iのうち、中央寄りの二枚の補強板片6iには、外パッキン部材7に連結される連結部9a,9bが設けられている。例えば、一方の補強板片6iには、補強板片6iから突き出すように設けられたが係止片9aが設けられており、他方の補強板片6iには、係止片9aの先端に設けられた爪に当接して引っ掛かる係合孔9bが設けられている。内パッキン部材6の平板部6aは、外パッキン部材7の平板部6aに突き合わされる。その際に、内パッキン部材6の係止片9aの爪が外パッキン部材7の係合孔9bに嵌り込むことで着脱自在に連結され、また、内パッキン部材6の係合孔9bが外パッキン部材7の係止片9aの凸部に係り合うことで着脱自在に連結される。
【0036】
薄肉部6dには、開口ガイド部11が設けられている。開口ガイド部11は、内パッキン部材6を基礎梁1aの上部に設置する際に、上部構造3から突き出た柱部材(突出部)3aを避ける切欠部Cの形成を容易に行えるようにした部分である。開口ガイド部11は、例えば、所定の切除ラインに沿った切り欠き溝であったり、ミシン目のような複数のスリットを形成したりして切除し易くした構成からなり、少なくとも、強度が薄肉部6dの他の部分よりも弱くなっている。
【0037】
開口ガイド部11は、平板部6aの長手方向Lの端部から薄肉部6d側の側部に亘って略L字状に形成されており、平板部6aの長手方向Lの両方の端寄りの位置に設けられた外側の補強板片6iに沿った第1の直線部11aと、厚肉部6eと薄肉部6dとを区画する境界段差6cに沿った第2の直線部11bとを備えている。
【0038】
本実施形態に係る開口ガイド部11は、強度の高い厚肉部6eに沿って形成され、開放されている平板部6aの端部または側部に端が形成されているため、開口ガイド部11に沿ってハサミ等の切断器具を挿入し易く、従って、開口ガイド部11を切除して切欠部Cを形成し易いものなっている。また、平板部6aの側部と端部との連絡部位である頂部6jが開口ガイド部11に包囲されることとなり、その頂部6jが平板部6aの長手方向Lから見ても或いは長手方向Lに垂直な方向から見ても片持ち梁状となっているため、端部力を加えやすく、さらには、その頂部6jに力を付与することで平板部6aを開口ガイド部11に沿って折り曲げて容易に切欠部Cを形成することができる。
【0039】
なお、本実施形態に係る開口ガイド部11は、中央寄りの補強板片6iに沿った第3の直線部11cと、第2の直線部11bに延長して第3の直線部11cに連絡する第4の直線部11dとを更に備えている。第3の直線部11cや第4の直線部11dも、第1の直線部11aや第2の直線部11bと同様に所定の溝やスリットによって形成されている。第1の直線部11aの代わりに第3の直線部11cで平板部6aを切除して切欠部Cを形成することで、第1の直線部11aに沿って形成される切欠部Cよりも広い切欠部Cを形成することができる。本実施形態に係る開口ガイド部11のように、複数の直線部11a〜11dによって異なる形状の切欠部Cを形成できる態様であると、種々の形状や寸法の柱部材(突出部)3aや、外壁受けプレート3cを基礎1に連結支持させるための取り付け部材に対応して内パッキン部材6を配置することができ、モジュール化し易くなって標準化にも有利であり、製造面での利便性の向上を期待できる。
【0040】
また、平板部6aの長手方向Lの両端には、隣接して並ぶ他の内パッキン部材6に着脱自在に連結される結合部12が設けられている。結合部12は、例えば、L字状のフック部であったり、フック部に当接して引っ掛かる枠部であったりし、他の内パッキン部材6のフック部に対応した位置には枠部が設けられ、他の内パッキン部材6の枠部に対応した位置にはフック部が設けられている。なお、温度変化による内パッキン部材6自体の伸び縮みを吸収可能とするため、結合部12は、隣接する内パッキン部材6同士の間に所定の遊びを確保して調整可能となるように構成されている。
(外パッキン部材)
【0041】
次に、図3〜図5を参照して、外パッキン部材7について説明する。なお、外パッキン部材7は、実質的に内パッキン部材6と同様の要素や部材などを備えており、これらの要素や部材などについては、内パッキン部材6と同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0042】
外パッキン部材7は、上部構造3を受ける平板部7aと、平板部7aの下面側に換気路Rを形成する換気部7bと、を備えている。平板部7aは、境界段差7cを挟んで連結側と反対側とに分かれている。連結側、すなわち内パッキン部材6に連結される側の領域は薄肉部7dであり、反対側の領域は厚肉部7eである。
【0043】
換気部7bは、平板部7aの下面側に突出された複数枚の出入口側板片6fと、複数枚の連絡口側板片6gと、複数の柱体6hとを備えており、複数枚の出入口側板片6fと複数の柱体6hとは厚肉部7eの下面側に設けられ、複数枚の連絡口側板片6gは薄肉部7dの下面側に設けられている。
【0044】
薄肉部6dの下面側には、連絡口側板片6gに略平行に並んで複数枚の補強板片(補強部)6iが突出して形成されている。補強板片6iには、内パッキン部材6の連結部9a,9bと着脱自在に連結される連結部9b,9aが設けられている。
【0045】
薄肉部6dには、開口ガイド部11が設けられている。開口ガイド部11は、内パッキン部材6を基礎梁1aの上部に設置する際に、上部構造3から突き出た柱部材(突出部)3aを避ける切欠部Cの形成を容易に行えるようにした部分である。開口ガイド部11は、例えば、所定の切除ラインに沿った溝を切ったり、ミシン目のような複数のスリットを形成したりして切除し易くした構成からなり、少なくとも、強度が薄肉部6dの他の部分よりも弱くなっている。
【0046】
開口ガイド部11は、第1の直線部11a、第2の直線部11b、第3の直線部11c、及び第4の直線部11dを有している。開口ガイド部11に沿って平板部7aを切除することにより、略矩形の板片が取り除かれて切欠部Cが形成される。この切欠部Cは、内パッキン部材6に形成される切欠部C、及び他の換気パッキン5に形成される切欠部Cと協働して柱部材3aなどの突出部の周囲を取り囲むような開口となる。
【0047】
外パッキン部材7は、内パッキン部材6よりも建物の外側に配置されるため、外パッキン部材7には、雨水の浸入を防ぐ水切り部13が設けられている。水切り部13は、断面略L字状になっており(図6参照)、平板部7aの厚肉部6eの縁Eaから張り出すように設けられた、ひさし部13aと、ひさし部13aの前方端から下方(平板部7aの下面側)に向けて突き出すように設けられた覆い部13bとを備えている。
【0048】
また、水切り部13は、平板部7aと一体成形された本体部13cと、本体部の外表面に形成された耐火部13dとを備えている。本体部13cの外表面側には層状の耐火部13dを形成するための凹部が形成されており、この凹部に2mm以下の金属製メッシュや金属板などを嵌め込むように装着することで耐火部13dが形成される。
【0049】
外パッキン部材7に水切り部13を設けることで、換気部7bの内部に向けての雨水の浸入を防止することができる。また、換気部7bの出入口側板片6fが水切り部13で覆われることとなるので、複数の出入口側板片6fが水切り部13によって隠されることとなり、意匠性の向上が図られることはもちろん、出入口側板片6fの間に物を詰め込む等の悪戯の防止も図ることができる。
【0050】
ひさし部13aの上面側、すなわち上部構造3を受ける面側には、平板部7aの長手方向Lに沿った溝13eが形成されている。上部構造3から水切り部13上面に伝ってくる水分は、毛管現象等によりそのまま上部構造3と外パッキン部材7との間を伝って室内内部に流れ込む経路が生じると考えられる。ここで、本実施形態では、その経路を横切るように溝13eが形成されることとなるので、経路を通る水分は、溝13eに受け止められることとなり、室内側にまで水が伝わってしまうことを著しく抑制することができる。
【0051】
換気パッキン5は、上述の内パッキン部材6の平板部6aと外パッキン部材7の平板部7aとを突き合わせ、互いの連結部9a,9b同士を連結することで一体化される。換気パッキン5を基礎梁1aの上部に配置して基礎梁1aと上部構造3との間に介装する際には、換気パッキン5の開口ガイド部11を切り欠くことで柱部材3aに対応した切欠部Cを形成し、その切欠部Cを柱部材3aに突き当てるように設置される。
【0052】
上述の内パッキン部材6と外パッキン部材7を、例えば、上部構造3からの柱部材3aに対向しない位置に設置する際には、平板部7aは塞がれているので、モルタル3e等が換気路Rに流れ込む虞はなく、換気路Rの通気機能を良好に発揮させることができる。また、上部構造3の柱部材Rに対応する位置に設置される場合には、開口ガイド部11を切除などして平板部7aに切欠部Cを形成することで容易に柱部材3aを避けることができ、従って、柱部材3aの周囲に換気パッキン5を配置することが可能となる。その結果として、本実施形態によれば、モルタル3e等の流入を規制しつつ、柱部材3a等の突出部周囲であっても設置可能な換気パッキン5を形成することができる。
【0053】
さらに本実施形態では、同一形状からなる複数の内パッキン部材6と同一形状からなる複数の外パッキン部材7とを適宜に組み合わせて配置することで基礎1全体での換気路Rの主要部分を形成できる。従って、換気路Rを形成するための換気パッキン5を準備するに当たって、内パッキン部材用と外パッキン部材用との二つの金型を準備しておけば足りるため、結果的に少ない金型で多様な基礎1の形状に対応させることができてコスト面でも有利である。
【0054】
さらに、開口ガイド部11は薄肉部6dに形成されているので、開口ガイド部11に沿って平板部7aの一部を切り離し易い構成を実現できる。さらには、平板部7aは、換気部7bと対応する位置が厚肉部6eとして形成されるため、その厚肉部6eと換気部7bとが一体となって強度を発揮することとなる。その結果、上部構造3と基礎梁1aの間に配置された際の挟持力にも充分に耐える構成を実現し易くなる。
【0055】
さらに、平板部7aの薄肉部6dの下面側には補強板片6i(補強部)が設けられているので内パッキン部材6または外パッキン部材7の強度向上に有効である。また、補強板片6iには、連結部9a,9bが設けられており、平板部7aの薄肉部6dの少なくとも一部に補強板片6iが延在することとなるので、内パッキン部材6と外パッキン部材7とを連結して形成される換気パッキン5の更なる強度向上に有効である。
【0056】
また、内パッキン部材6と外パッキン部材7との補強板片6i同士を連結部9a,9bにより連結することで換気パッキン5を容易に形成することができる。また、このようにして形成される換気パッキン5は、平板部7a同士を突き合わされた状態で連結されるので上面の平坦さは維持されることとなり、換気パッキン5の上面に不陸が生じることを防止することができるものとなっている。
【0057】
さらに本実施形態に係る換気部7bは、平板部7aの長手方向Lの一方の端部から他方の端部に亘って等間隔で突出する複数枚の板片6f,6gを備えている。その結果、換気部7bの強度を平板部7aの長手方向Lに亘って均質に維持した状態で、長手方向Lに亘って均質な性能を有する換気路Rを形成することができる。
【0058】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、換気パッキンを形成する一対のパッキン形成部材は連結部を除いて全く同じ形状とすることもできる。また、上記のパッキン形成部材を連結した換気パッキンを当初から1部材の換気パッキンとして形成する構成を採用することももちろん可能である。さらには、鉄筋コンクリート製の基礎梁に換えて鉄骨等の鋼材からなる基礎梁を採用する場合も、本発明と同様の効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0059】
1…基礎、1a…基礎梁、1c…基礎梁の一方の側部(基礎の一方の側部)、1d…基礎梁の他方の側部(基礎の他方の側部)、3…上部構造、3a…柱部材(突出部)、5…換気パッキン、6…内パッキン部材(パッキン形成部材)、7…外パッキン部材(パッキン形成部材)、6a,7a…平板部、6b,7b…換気部、6e,7e…厚肉部、6d,7d…薄肉部、6f…出入口側板片、6g…連絡口側板片、6i…補強板片(補強部)、9a,9b…連結部、11…開口ガイド部、13…水切り部、13e…溝、R…換気路、C…切欠部、L…平板部の長手方向、Ea…平板部の縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎の上部にて並べて配置されることにより、前記基礎と上部構造との間に介装される換気パッキンを形成するパッキン形成部材であって、
前記上部構造を受ける平板部と、
前記平板部の下面側に換気路を形成する換気部と、を備え、
前記平板部には、強度が他の部分よりも弱く、且つ前記上部構造から前記基礎に向けて突出する突出部を避ける切欠部を形成するための開口ガイド部が設けられていることを特徴とするパッキン形成部材。
【請求項2】
前記平板部は、前記換気部に連結されると共に該換気部と一体となって上部構造を支持する厚肉部と、前記厚肉部に連結された薄肉部とを有し、
前記開口ガイド部は、前記薄肉部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のパッキン形成部材。
【請求項3】
前記平板部の下面側には、前記基礎の梁部分の上部に配置された際に前記梁部分の一方の側部側から他方の側部側に向けて延在する補強部が形成されており、
前記補強部には、並んで配置される他のパッキン形成部材との間で前記平板部同士を突き合わせた状態で着脱自在に連結される連結部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のパッキン形成部材。
【請求項4】
前記補強部は、少なくとも前記平板部の長手方向の両方の端寄りの位置にそれぞれに設けられており、
前記開口ガイド部は、前記平板部の長手方向の端部から前記平板部の側部に亘って前記厚肉部及び前記補強部に沿って延在していることを特徴とする請求項3に記載のパッキン形成部材。
【請求項5】
前記換気部は、前記平板部の長手方向の一方の端部から他方の端部に亘って等間隔で突出する複数枚の板片を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のパッキン形成部材。
【請求項6】
前記複数枚の板片は、前記平板部の縁に沿って配置され、
前記換気部には、前記平板部の縁から張り出し、且つ先端側で前記平板部の下面側に突き出すことで前記複数枚の板片を覆う水切り部が設けられていることを特徴とする請求項5記載のパッキン形成部材。
【請求項7】
前記水切り部には、前記上部構造を受ける面側に前記平板部の長手方向に沿った溝が形成されていることを特徴とする請求項6記載のパッキン形成部材。
【請求項8】
基礎の上部に配置され、前記基礎と上部構造との間に介装される換気パッキンであって、
前記上部構造を受ける平板部と、
前記平板部の下面側に換気路を形成する換気部と、を備え、
前記平板部には、強度が他の部分よりも弱く、且つ前記上部構造から前記基礎に向けて突出する突出部を避ける切欠部を形成するための開口ガイド部が設けられていることを特徴とする換気パッキン。
【請求項9】
前記平板部は、前記換気部に連結されると共に該換気部と一体となって上部構造を支持する厚肉部と、前記厚肉部に連結された薄肉部とを有し、
前記開口ガイド部は、前記薄肉部に設けられていることを特徴とする請求項8記載の換気パッキン。
【請求項10】
前記平板部の下面側には、前記基礎の梁部分の上部に配置された際に前記梁部分の一方の側部側から他方の側部側に向けて延在する補強部が形成されており、
前記補強部は、少なくとも前記平板部の長手方向の両方の端寄りの位置にそれぞれに設けられており、
前記開口ガイド部は、前記平板部の長手方向の端部から前記平板部の側部に亘って前記厚肉部及び補強部に沿って延在していることを特徴とする請求項9記載の換気パッキン。
【請求項11】
前記換気部は、前記平板部の長手方向の一方の端部から他方の端部にわたって等間隔で突出する複数枚の板片を備えていることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項記載の換気パッキン。
【請求項12】
前記複数枚の板片は、前記平板部の縁に沿って配置され、
前記換気部には、前記平板部の縁から張り出し、且つ先端側で前記平板部の下面側に突き出すことで前記複数枚の板片を覆う水切り部が設けられていることを特徴とする請求項11記載の換気パッキン。
【請求項13】
前記水切り部には、前記上部構造を受ける面側に前記平板部の長手方向に沿った溝が形成されていることを特徴とする請求項12記載の換気パッキン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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