説明

パック電池

【課題】素電池の一端面上に保護回路基板および安全素子を備えたパック電池において、セル占有率を高めるとともにパック電池を組み立てる工程を簡素にする。
【解決手段】素電池10の封口蓋12上に、保護回路基板20などが配され、これらを埋め込むように樹脂モールド部50が形成されてパック電池が構成されている。
保護回路基板20は、1対のプリント回路板21,22が、絶縁層23を介して対向配置されて多層配線構造となっている。そして絶縁層23内に、保護IC素子51、FET素子52、PTC素子53、機種判別用抵抗素子54が埋設されて構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素電池、保護素子を含む保護回路基板、およびPTC素子などの安全素子が内蔵されているパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機などモバイル機器の電源として、リチウム電池をはじめとする素電池と、保護回路基板と、PTC素子などの安全素子が内蔵されているパック電池が多く用いられるようになっている。
従来例に係るパック電池の構成について説明する。
図5は、特許文献1に開示されたパック電池の構成を示す断面図である。
【0003】
本図に示すように、扁平角形の素電池103の上端面103Aに、負極端子104が設けられ、当該一端面を覆うように保護回路基板105が配設されている。保護回路基板105の上面には外部機器に出力するための出力端子106が設けられている。またこの保護回路基板105には、素電池103と外部機器との間の電力流通制御を行う保護回路素子が実装されることもある。
【0004】
そして、素電池103と保護回路基板105との間には、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子などの安全素子101、リード102,111などが介挿されている。安全素子101は、その一方の素子電極が、リード102によって素電池103の負極端子104に接続され、他方の素子電極が、保護回路基板105の端子に接続され、温度を検知して電流を制御する機能を有する。
【0005】
素電池103における上端面103Aと保護回路基板105の正極端子とは、リード111で接続されている。
このようなコアパックに、インサート成形(低温成形)によって樹脂成型部(モールディング)109が形成されてなるパック電池は、樹脂成型部内に部品が収納され、比較的簡素な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−346945号公報
【特許文献2】特開2007−323949号公報
【特許文献3】特開2000−311667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなパック電池において、素電池の占める体積の割合(セル占有率)を高めることが望まれる。そのために、保護回路基板と素電池との間隙を小さくすればよいが、上記のように保護回路基板と素電池との間にPTC素子を配設する場合、保護回路基板と素電池との間にその分の間隙を確保する必要があるので当該間隙を小さくするにも限界がある。
【0008】
また、パック電池を製造するコスト低減するために、組み立て時に用いる部品点数を少なくして、パック電池を組み立てる工程をできるだけ簡素にすることが望まれる。
しかし、上記のようなパック電池を組み立てるときに、素電池103における上端面103Aと保護回路基板105の正極端子とを、リード111を介して接続する工程、安全素子101を保護回路基板105の端子と接続する工程、リード102を介して安全素子101と負極端子104とを接続する工程などが必要となる。
【0009】
また、電池パックを構成する部品と、上端面103Aとを絶縁するために絶縁板を配設する必要が生じたり、電池の上端面103Aに安全弁が設けられている場合、インサート成形で樹脂成型部109を形成する工程において、安全弁がインサート樹脂から高圧力を受けないように、安全弁上に遮蔽板を配設する必要が生じることもある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、素電池に保護回路基板及び安全素子が設けされたパック電池において、セル占有率を高めること、並びにパック電池を組み立てる際の部品点数を低減して組み立て工程を簡素にすることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、一端面に電極端子が設けられた素電池を備え、保護回路素子を含む保護回路基板及び安全素子が、電極端子に接続されているパック電池において、保護回路基板に、多層配線構造を設け、安全素子及び保護回路素子を、当該多層配線の層間に埋設した状態で実装し、この保護回路基板を、上記素電池の一端面上に配設することとした。
【0011】
ここで、「保護回路素子」は、素電池に過充電、過放電あるいは過電流が生じたときにそれを検知して、外部に供給する電力を遮断する回路を備えた素子であって、一般に保護ICとして市販されている。
また、「安全素子」は、PTC素子、NTC(Negative Temperature Coefficient)素子、温度ヒューズ素子などの感熱素子をはじめとして、電池制御に用いられる種々の安全素子を指している。
【0012】
上記本発明において、保護回路基板に、絶縁層を介して対向配置された1対のプリント配線板を設け、保護回路素子及び安全素子を、1対のプリント配線板で挟んで、絶縁層中に埋設することが好ましい。
上記素電池の電極端子が、一端面から突出している場合、保護回路基板を、その一端面上において、電極端子と並んで配置することが好ましい。
【0013】
上記保護回路基板の外面側に、外部機器と接続するための外部端子を設けてもよい。
上記保護回路基板の表面には、少なくとも一端面と対向する部分に、レジスト膜を配設することが好ましい。
上記本発明において、素電池の一端面に安全弁が設けられていてモールド樹脂を成形する場合、保護回路基板を、当該安全弁を覆うように配し、当該保護回路基板を覆うようにモールド樹脂を成形することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記本発明にかかるパック電池によれば、保護回路基板が多層配線構造を有し、保護回路素子と安全素子とが、その多層配線の層間に埋設されているので、保護回路基板を、素電池の一端面上に配設するときに、保護回路基板と素電池との間にPTC素子を配設するための間隙を確保する必要がない。従って、保護回路基板を、素電池の一端面に近接して配置できるので、パック電池の外形サイズが同じでも素電池の高さを大きくでき、セル占有率を高めることができる。
【0015】
また、PTC素子が保護回路基板の中に組み込まれているので、パック電池を組み立てるときに、保護回路基板を素電池に装着すると、PTC素子も自動的に装着される。従って、パック電池の組み立て時に、組み込む部品点数が少なくなり、組み立て工程も簡素となる。
また、保護回路基板を多層配線構造にすることで、保護回路基板内に保護回路素子および安全素子を配置する形態の自由度が大きくなり、保護回路基板のサイズも小さくできる。
【0016】
特に、上記素電池の電極端子が、一端面から突出している場合、保護回路基板を、その一端面上において、電極端子と並んで配置すれば、セル占有率を高める上で有利である。
また本発明によれば、上記のように保護回路基板を、素電池の一端面に近接して配置することができるのに加えて、保護回路基板内において、PTC素子が熱伝導性の良好な多層配線で囲まれるので、PTC素子と素電池との熱カップリングがより良好となり、素電池の温度をPTC素子で正確に検知できる。
【0017】
上記本発明において、特に、保護回路基板に、絶縁層を介して対向配置された1対のプリント配線板を設け、保護回路素子及び安全素子を、1対のプリント配線板に挟んで、絶縁層中に埋設させれば、保護回路基板が簡素な構成となる。
上記保護回路基板の表面において、少なくとも素電池の一端面と対向する部分にレジスト膜を配設しておけば、別途に絶縁板を設けなくても、保護回路基板と素電池などとの間を絶縁できるので、組み立て時の部品点数の低減及びセル占有率の増加に寄与する。
【0018】
また、素電池の一端面に安全弁が設けられていてモールド樹脂を成形する場合、保護回路基板を、当該安全弁を覆うように配し、当該保護回路基板を覆うようにモールド樹脂を成形すれば、インサート成型で樹脂モールド部を形成するときに、保護回路基板が、インサート樹脂によって安全弁に加わる圧力を軽減する遮蔽板として機能する。従って、安全弁に別個に遮蔽板を配設しなくても、安全弁に高圧力がかかるのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態にかかるパック電池の外観斜視図である。
【図2】上記パック電池の分解斜視図である。
【図3】パック電池本体の構成を示す分解斜視図である。
【図4】保護回路基板20の内部構成を示す断面図である。
【図5】従来技術にかかるパック電池の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、実施の形態にかかるパック電池の外観を示す斜視図である。
図2は、パック電池1の構成を示す斜視図である。
このパック電池1は、パック電池本体2の表面上にラベル3が貼り付けられて構成されている。
1.パック電池本体2の構成
図3は、パック電池本体2の構成を示す分解斜視図である。説明上、図中において矢印Xが示す方向を上方、矢印Yが示す方向を右方、矢印Zが示す方向を前方とする。
【0021】
パック電池本体2の構成について、図3を参照しながら説明する。
図3に示すように、パック電池本体2は、扁平角形の素電池10を備え、この素電池10の封口蓋12上に、保護回路基板20、正極リード31、負極リード32、コネクタ40などが配され、これらを埋め込むように樹脂モールド部50が形成され、素電池10の底面上に底カバー60が装着されて構成されている。
【0022】
素電池10は、リチウムイオン二次電池であって、Al合金からなる扁平直方体形状の外装缶11に電極体、電解液が充填され、外装缶11の開口部が封口蓋12で封口されて形成されている。
封口蓋12は、左右に伸長する長尺板状であって、封口蓋12の上面には、中央部に負極端子13が凸設され、その左側に安全弁14が設けられ、左端部にはクラッド板である正極端子15が設けられている。
【0023】
保護回路基板20は、保護回路を形成するための素子が内蔵された板状部品であって、封口蓋12の表面上における負極端子13の左側領域に、安全弁14の領域を覆うように両面テープ25を介して配設されている。
封口蓋12上の正極端子15には、正極リード31が接続されている。この正極リード31は、L字状に折り曲げられ、折曲部分31aが、保護回路基板20の左端部に設けられた端子(図3,4に示される貫通ビア222a)に挿入されて接続されている。
【0024】
負極端子13には、Ni板からなる負極リード32が接続され、保護回路基板20の右端部に設けられた端子(図4に示される配線部211hの導電ランド)に接続されている。
コネクタ40は、開口部41a,41b,41cが形成された樹脂製部材を備え、保護回路基板20の上面に接合されている。コネクタ40において、各開口部41a,41b,41cの内部には金属製出力端子を備え、各出力端子は、保護回路基板20の外部端子24a,24b,24cと接続されている。
【0025】
樹脂モールド部50は、低温インサート成形(低温成形)により形成されたものであって、保護回路基板20を覆うように形成されている。また、樹脂モールド部50は、コネクタ40の側部も覆っているが、コネクタ40の開口部41a,41b,41cは外部に露出している。
2.保護回路基板20の構成
図4は、保護回路基板20の内部構成を示す断面図である。なお当図において、回路パターン配線、貫通ビアなどは、代表的なものだけを表示している。
【0026】
図4に示すように、保護回路基板20は、1対のプリント回路板21,22が、絶縁層23を介して対向配置され、この絶縁層23内に、保護IC素子51、FET素子52、PTC素子53、機種判別用抵抗素子54が埋設されて構成されている。
プリント回路板21は、基材に絶縁性樹脂を含浸してなる基板210に対して、その表面に導電体(銅箔)で回路パターン配線が形成され、貫通ビア212a〜212cも形成されて構成されている。上記回路パターンとして、図4に示すように基板210の内面上には配線部211a〜211dが、外面上には配線部211e〜211hが形成されている。上記貫通ビア212a〜212cは、内面側の配線部211a,211b,211dと、外面側の配線部211f,211g,211hとを接続している。
【0027】
プリント回路板22も同様に、基板220に対して、回路パターン配線(配線部221a〜221c)が形成されて構成されている。
さらに、保護回路基板20においては、基板210と絶縁層23と基板220とを貫通するように、貫通ビア222a,222bも設けられている。この貫通ビア222aは、配線部211eと配線部221aとを接続し、貫通ビア222bは、配線部211cと配線部221bとを接続している。
【0028】
そして、プリント回路板21とプリント回路板22の対向面上に、保護IC素子51、FET素子52、PTC素子53、機種判別用抵抗素子54が実装されている。
保護IC素子51は、過充電、過放電、過電流が生じたときに、それを検出するために電圧検出器などが内蔵されている素子である。PTC素子53は、正の温度特性 (温度が上昇すると抵抗が増加する) を持つ材料、例えばBaTiO3に微量の希土類を添加した材料を、ブロック状に成形してなる素子である。
【0029】
図4に示す例では、保護IC素子51はプリント回路板22上に、FET素子52をプリント回路板21上に実装され、PTC素子53はプリント回路板21とプリント回路板22とにまたがって実装されている。
具体的には、保護IC素子51は、プリント回路板22の内面(プリント回路板21に対向する面)上に実装され、保護IC素子51の正側端子が配線部221aに接合され負側端子が配線部221bに接合されている。また、FET素子52は、プリント回路板21の内面(プリント回路板22に対向する面)上に実装され、そのドレイン端子及びソース端子が、配線部211b及び配線部211cに接合されている。
【0030】
なお、保護IC素子51からFET素子52のゲート端子には、不図示の配線を通して開閉信号が送られるようになっている。
PTC素子53は、その上面がプリント回路板21の配線部211dに、下面がプリント回路板22の配線部221cに接合されている。機種判別用抵抗素子54は、プリント回路板21の内面上に実装され、機種判別用抵抗素子54の一端子が配線部211aに接合され、他端子が配線部211bに接合されている。
【0031】
保護回路基板20の最上面には、コネクタ40を介して外部機器と接続するために、3つの外部端子(プラス端子24a,機種判別端子24b,マイナス端子24cが設けられている。この外部端子24a,24b,24cは、プリント回路板21の外面側において、配線部211e,211f,211g上に積層して配置されている。
また、保護回路基板20における最上面にはレジスト膜213が、最下表面にはレジスト膜223が配されている。
【0032】
レジスト膜213は、基板210の外側表面及び配線部211e,211f,211g,211hを全体的に覆うように配されているが、外部端子24a,24b,24c及び配線部211hの導電ランドが存在する領域にはレジスト膜213は存在せず、外部に露出している。
一方、レジスト膜223は、基板220の外側表面全体を覆うように配されている。
【0033】
このような保護回路基板20において、素電池10の負極端子13,正極端子15、外部端子24a,24b,24cとの間は、保護IC素子51,PTC素子53,FET素子52を介して以下のように接続されている。
素電池10の正極端子15は、正極リード31及び配線部211eを介して外部端子24aと接続されている。
【0034】
一方、負極端子13は、負極リード32、配線部211h,貫通ビア212c,配線部211d、PTC素子53,配線部221c,貫通ビア222b、配線部211c,FET素子52,配線部211b,貫通ビア212b,配線部211gを順に介して、外部端子24cと接続されている。すなわち、素電池10の負極端子13と外部端子24cとの間は、直列接続されたPTC素子53及びFET素子52を介して接続されている。
【0035】
また、保護IC素子51は、正側端子が、配線部221a、貫通ビア222a,正極リード31を介して正極端子15に接続され、負側端子が、配線部221bなどを介して負極端子13に接続されている。
また機種判別用抵抗素子54は、配線部211f,貫通ビア212a及び貫通ビア212b,配線部211gを介して、外部端子24bと外部端子24cとの間に接続されている。なお、ここでは機種判別用抵抗素子54を用いるが、代わりに温度測定用のサーミスタを用いることもできる。
【0036】
以上のように接続された保護回路基板20によって、素電池10に過充電、過放電あるいは過電流が生じたときには、保護IC素子51がそれを検知してFET素子52を遮断することによって、負極端子13と外部端子24cとの間の電流路が遮断されるので素電池10が保護される。また、素電池10の温度が異常に上昇した場合にも、PTC素子53の抵抗が上昇し、負極端子13と外部端子24cとの間の電流路が遮断されるので素電池10が保護される。
【0037】
3.パック電池1の製造方法
上記保護回路基板20は、例えば以下のようにして作製することができる。
基板210及び基板220に、配線パターン並びに貫通ビア212a〜212cを形成して、プリント回路板21及びプリント回路板22を作製する。
プリント回路板21上に、FET素子52、機種判別用抵抗素子54を実装し、プリント回路板22上に保護IC素子51を実装する。
【0038】
プリント回路板21及びプリント回路板22を対向配置するとともに、両プリント回路板21,22の間にPTC素子53を実装し、両プリント回路板21,22の間隙に絶縁用樹脂を充填することによって絶縁層23を形成することによって、絶縁層23を介してプリント回路板21,22が積層された積層体を作製する。
作製した積層体に対して、貫通ビア222a,222bを形成する。そして、積層体の表面にレジスト膜213,223を形成する。
【0039】
配線部211e,211f、211g上に外部端子24a,24b,24cを形成する。
次に、この保護回路基板20を用いて、以下のようにパック電池を組み立てることができる。
保護回路基板20における配線部211hの導電ランドに負極リード32の一端を溶接し、保護回路基板20にコネクタ40を接着する。
【0040】
素電池10の正極端子15に、正極リード31を溶接する。そして、正極リード31の折曲部分31aを、保護回路基板20の貫通ビア222aに挿入しながら、封口蓋12上に、保護回路基板20とコネクタ40を装着する。
また、負極リード32を、保護回路基板20及び素電池10の負極端子13に溶接することによってコアパックが出来上がる。
【0041】
そして、このコアパックに対して、低温インサート成形(低温成形)を施すことによって樹脂モールド部50を形成する。すなわち、コアパックおよび樹脂モールド部50に相当する空間を有する金型に、コアパックを載置し、溶融した樹脂を注入する。樹脂モールド部50をインサート成形する樹脂材料としては、アクリルニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ウレタン系樹脂などを用いることができる。
【0042】
注入されたインサート樹脂は、保護回路基板20の上下面及びコネクタ40の側部をカバーするように、封口蓋12上に充填され(図4参照)て、樹脂モールド部50が成形される。
一方、素電池10の底面上には底カバー60を装着する。
以上のように作成したパック電池本体2の周面を取り巻くようにラベル3を貼り付ける(図2参照)ことによって、パック電池1が完成する。
【0043】
4.パック電池1による効果
上記構成のパック電池1による効果について説明する。
パック電池1においては、保護IC素子51、FET素子52とともに、PTC素子53が、保護回路基板20の中に組み込まれているので、パック電池1を組み立てるときに、保護回路基板20を素電池10上に装着すると、PTC素子53も装着される。すなわち、パック電池1を組み立て時に、保護回路基板と別個にPTC素子を組み込む必要がないので、組み込む部品点数が少なく、組み立て工程も簡素である。
【0044】
また、従来技術のように、保護回路基板と素電池との間に安全素子が配置されている場合、保護回路基板と素電池との間に安全素子を配置する間隙を確保する必要があり、安全素子と素電池との間に絶縁板を介挿させる場合は、そのための間隙も確保する必要がある。
これに対して、本実施形態では、PTC素子53が、保護回路基板20の中に組み込まれているので、保護回路基板20と素電池10との間にPTC素子を配設するための間隙を確保する必要ない。また、保護回路基板20の下面はレジスト膜223で被覆されているので、保護回路基板20と素電池10との間に絶縁板を介挿させる必要もない。
【0045】
従って、素電池10の上面から保護回路基板20の上面までの距離を小さくすることができるので、パック電池の外形サイズが同じでも素電池10の高さを大きくできる。すなわちセル占有率を高めることができる。
また、保護回路基板20は、多層配線構造となっているので、保護IC素子51、FET素子52、PTC素子53を配置する形態の自由度が大きく、保護回路基板20のサイズ(左右長さ)も小さくしやすい。
【0046】
そして、保護回路基板20の左右長さを小さく設定して、上述したように封口蓋12の上面における負極端子13の左側領域に配置すれば、保護回路基板20が負極端子13の上には重ならず、図4に示すように、保護回路基板20の上面の高さを負極端子13の上面と同程度の高さに抑えることもできる。それによって、特にセル占有率を高める効果が得られる。
【0047】
実際、上記実施形態に基づいて作製したパック電池1において、保護回路基板20は厚み0.6mm程度に薄く作製でき、保護回路基板が負極端子を覆うように設けられた従来品と比べて、素電池の高さを1.1mm程度高くすることができた。
また、本実施形態のパック電池1においては、保護回路基板20が、封口蓋12の表面上に近接配置されており、さらに保護回路基板20内において、PTC素子53の周りに熱伝導性の良好なパターン配線(配線部221cなど)が形成されているので、PTC素子53と素電池10との熱カップリングが良好であり、素電池10の温度をPTC素子53で正確に検知できる。
【0048】
さらに、パック電池1においては、保護回路基板20が、安全弁14の領域を覆うように両面テープ25を介して配設されているので、インサート成型で樹脂モールド部50を形成するときに、この保護回路基板20が、インサート樹脂によって安全弁14に加わる圧力を軽減する遮蔽板として機能する。従って、安全弁14上に別個に遮蔽板を配設する必要がない。このように、保護回路基板20、両面テープ25により、インサート成型で樹脂モールド部50を形成するときに、溶融した樹脂が、安全弁14に進入することを防止することができる。
【0049】
5.変形例など
パック電池1において、用いる素電池10の種類については、リチウムイオン二次電池に限定されず、ニッケルカドミウム二次電池やニッケル水素二次電池などにも適用できる。
上記パック電池1では、保護回路基板20を覆うように樹脂モールド部50を形成したが、保護回路基板20と同様にPTC素子を組み込んだ保護回路基板を、素電池と共に外装ケース内に組み込んでパック電池を構成することもできる。
【0050】
上記パック電池1では、PTC素子53が組み込まれた保護回路基板20を封口蓋12上に配設したが、外装缶11の側面上あるいは底面上に、PTC素子が組み込まれた保護回路基板を配設してもよく、同様の効果を奏する。
上記実施の形態では、素電池10として扁平角形のリチウムイオン二次電池を例にとって説明したが、例えば円筒形の素電池に対しても本発明を適用でき、円筒形外装缶の側面上あるいは底面上に、PTC素子を組み込んだ保護回路基板を配設することによって、同様の効果を奏する。
【0051】
上記実施の形態では、安全素子として、PTC素子53を用いたが、NTC素子や温度ヒューズ素子などの感熱素子をはじめ、種々の電池制御用安全素子を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば低コストのパック電池を実現することができ、モバイル機器の電源などとして有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 パック電池
2 パック電池本体
10 素電池
12 封口蓋
13 負極端子
14 安全弁
15 正極端子
20 保護回路基板
21,22 プリント回路板
23 絶縁層
24a,24b,24c 外部端子
31 正極リード
32 負極リード
40 コネクタ
41a,41b,41c 開口部
50 樹脂モールド部
51 保護IC素子
52 FET素子
53 PTC素子
54 機種判別用抵抗素子
110 基板
130 保護回路基板
210 基板
212a〜212c 貫通ビア
213,223 レジスト膜
220 基板
221a〜221c 配線部
222a,222b 貫通ビア
223 レジスト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端面に電極端子が設けられた素電池を備え、保護回路素子を含む保護回路基板及び安全素子が、前記電極端子に接続されているパック電池であって、
前記保護回路基板は、
多層配線構造を有し、
前記安全素子及び前記保護回路素子が、当該多層配線の層間に埋設された状態で実装されてなり、
前記一端面上に配設されていることを特徴とするパック電池。
【請求項2】
前記保護回路基板は、
絶縁層を介して対向配置された1対のプリント配線板を備え、
前記保護回路素子及び前記安全素子は、
前記1対のプリント配線板に挟まれて、前記絶縁層中に埋設されていることを特徴とする請求項1記載のパック電池。
【請求項3】
前記素電池の電極端子は、前記一端面から突出し、
前記保護回路基板は、
前記一端面上において、前記電極端子と並んで配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のパック電池。
【請求項4】
前記保護回路基板の外面側には、
外部機器と接続するための外部端子が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のパック電池。
【請求項5】
前記保護回路基板の表面において、
少なくとも前記一端面と対向する部分に、レジスト膜が配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のパック電池。
【請求項6】
前記素電池の一端面には、安全弁が設けられ、
前記保護回路基板は、当該安全弁を覆うように配され、
当該保護回路基板を覆うようにモールド樹脂が成形されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のパック電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−198769(P2010−198769A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39389(P2009−39389)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】