説明

パッケージング用途のためのホットメルト接着剤

【課題】低塗布温度接着剤と共に使用でき、耐熱性を犠牲にしない、合理的な価格でパラフィンワックス及び天然のワックスに置き換わる材料を提供すること。
【解決手段】ベースポリマー、粘着性付与剤、主要又はソールワックス成分としての飽和脂肪酸及び晶癖変性剤として超微細沈降炭酸カルシウムなどを含む、低粘度で高融点でオープン時間の長いホットメルト接着剤が開示されている。この接着剤はパッケージング用途のために使用されうる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は飽和脂肪酸を含む低い塗布温度のホットメルト接着剤に関する。
発明の背景
ホットメルト接着剤は溶融して基材に塗布され、その後第2の基材と接触させる。この接着剤を冷却して硬化させるとこれらの基材の間に結合が形成される。ホットメルトは製品組立、パッケージングなどの産業上の接着剤用途に広く使用されている。後者としては、ケース及びカートンのシーリングなどが挙げられる。
【0002】
ケース及びカートンのシーリングなどのパッケージング用途のためのホットメルトは、代表的にはポリマー、希釈剤(通常、粘着性付与剤)及びワックスからなる。ワックスはいくつかの機能をもたらす。それは低分子量なので、粘度を低減する。低粘度であることは低い塗布温度に寄与し、より清潔な加工工程、さらに良好な基材への濡れを与える。さらには、ワックスは速やかに結晶化してその材料が迅速に硬化又は固化することを助ける。速い固化速度は高速生産にとって重要である。最後に、ワックスはその高い融点に起因する最終的な接着に対する温度抵抗性を与える。
【0003】
慣用のパッケージング接着剤はパラフィン及びミクロクリスタリンワックスなどの石油誘導ワックスを使用する。パラフィンワックスの低分子量は低い塗布温度の接着剤のための第一の選択肢となる。
【0004】
最近、パラフィンワックスの限定的な供給に起因して、天然ワックスの使用が注目されてきている。天然ワックスの中でも、最もコストが低い材料は高水素化トリグリセリド類(Borsinger et al., US 6,890,982)に基づくものである。パラフィン近くに融点を上げるためには高レベルの水素化(低ヨウ素化)が必要である。残念なことに、これらの材料では十分に高い融点と適切な固化速度を有する接着剤を達成することが困難である。さらに、トリグリセリド類は、パラフィンよりもずっと高い分子量を有している(純粋なグリセリンのトリステアレートで約890Da。これに対して代表的なパラフィンワックスは430Da)。高水素化トリグリセリド類を使用すると、より高い粘度とより低い耐熱性がもたらされる。
【0005】
飽和脂肪酸を使用することが従来提案されており、脂肪酸の誘導体(例えば、アミド類)もさらに使用されている。例えば、水分感受性用途(水分散性又は生分解性接着剤)の高極性ポリマーを有する接着剤配合物におけるワックス成分としての使用である。これら高極性ポリマーはビニルアセテート/ポリエチレンオキサイドグラフトコポリマー(Ray-Chaudhuri et al., US 3,891,584; Brady et al., EP 0 512 250 B1)、ポリ(アルキルオキサゾリン) (Flanagan, EP 0 212 135 B1; Sheldon et al. US 4,522,967)、でんぷんエステル類 (Riswick, EP 0 705 895 A1)、ポリ(ビニルピロリドン)及び酢酸ビニルとのそのコポリマー(Colon et al., US 4,331,576 and 4,325,851)、スルホネート化ポリエステル類(Blumenthal et al., US 5,750,605)、及び生分解性ポリエーテルエステル類 (Sharak et al., 5,583,187)である。不飽和脂肪酸は、種々の接着剤配合物においてオイルに置き換わるものとして提案されている(Doody et al., W0 1999/013016)。しかし、飽和脂肪酸は、慣用のエチレン又はプロピレンコポリマー及び粘着性付与剤を有するベースワックスとして使用されていない。
【0006】
低塗布温度接着剤と共に使用でき、耐熱性を犠牲にしない、合理的な価格でパラフィンワックス及び天然のワックスに置き換わる材料が求められている。本発明はこの需要を満たす。
【0007】
発明の概要
脂肪酸、特に飽和脂肪酸は、ホットメルト接着剤、特に低塗布温度ホットメルト接着剤を配合する際におけるベースワックス成分として使用できることが見出された。慣用の接着性ポリマー及び粘着性付与剤と共に適切に配合すると、飽和脂肪酸、例えばステアリン酸は、低粘度、長期オープン時間(long open time)、及び高い耐熱性を有する接着剤を調製することができる。
【0008】
驚くべきことに、ステアリン酸及びより高い融点の飽和脂肪酸、例えばベヘン酸が慣用の粘着性付与剤及びポリマーに基づくパッケージング用配合物におけるソールワックス(sole wax)として機能できることが見出された。
【0009】
本発明の1つの態様は、約10〜約60重量%、より好ましくは約20〜約40重量%のベースポリマー、約10〜約60重量%、より好ましくは約20〜約40重量%の粘着性付与剤、約15〜約55重量%、より好ましくは約30〜約50重量%の飽和脂肪酸を含むホットメルト接着剤に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、約10〜約60重量%のベースポリマー、約10〜約60重量%の粘着性付与剤、約15〜約55重量%の飽和脂肪酸、及び0〜約10重量%の晶癖変性剤を含み、350Fで2000cps未満の粘度、55℃を超えるTm、及び35℃を超え55℃未満のTcを有するホットメルト接着剤に関する。
【0011】
本発明の更なる態様は、約10〜約60重量%のベースポリマー、約10〜約60重量%の粘着性付与剤、約15〜約55重量%の飽和脂肪酸、及び0〜約10重量%の晶癖変性剤を含み、250Fで2000cps未満の粘度、60℃を超えるTm、及び40℃を超え55℃未満のTcを有するホットメルト接着剤に関する。
【0012】
本発明の接着剤のいくつかの態様はまた、約10重量%以下の晶癖変性剤を含む。好ましい晶癖変性剤は脂肪酸でコートした超微細沈降炭酸カルシウムである。本発明を実施する際に使用するベースポリマーは、エチレン及びプロピレンのコポリマー類であり、エチレンのコポリマー類、例えば、エチレン酢酸ビニルコポリマーが特に好ましい。粘着性付与剤としては、例えば、変性テルペン樹脂が挙げられるが、これに限定されない。テルペンフェノール粘着性付与剤が特に好ましい。本発明を実施する際に使用することができる飽和脂肪酸の例はステアリン酸である。
【0013】
本発明の接着剤はパッケージング用接着剤として特に有用であり、本発明によれば、本発明の接着剤を使用して製造されるケース類、カートン類、トレイ類などが提供される。
発明の詳細な記述
本明細書において引用される全ての参考文献は、その参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0014】
パッケージング用ホットメルト類は、ワックス成分により粘度を低減し、迅速な固化を可能にしている(ワックスの固化(再結晶)による)。ワックスはまた、耐熱性を与える(C. W. Paul, Hot Melt Adhesives, in Adhesion Science and Engineering - 2, Surfaces, Chemistry and Applications, M. Chaudhury and S.V. Pocius, eds., Elsevier, New York, 2002の712頁参照)が、耐熱性を効果的に向上させるためにはワックスとポリマーとの間の相互作用が重要である(同文献の745頁参照)。ワックスは充填材を超えるものとして作用しなければならない。にもかかわらず、ワックスの融点は接着剤から得られる可能な耐熱性の上限を固定する。極性ワックス(パラフィンとは異なる)を使用すると、ワックスの融点はその配合に高く依存する。厳しい融点の低下は、ワックスと他の成分との強力な相互作用又は急速な冷却(ケース及びカートンのシーリング操作における通常の状況である)によってもたらされ得る。
【0015】
より高い融点の飽和脂肪酸が慣用の粘着性付与剤及びポリマーに基づくパッケージングの配合においてソールワックスとして機能できることが見出された。本発明の接着剤は接着性ベースポリマー成分、粘着性付与剤成分及びワックス成分を含む。他の慣用のワックス(上述したPaul参考文献の725頁を参照)又はワックス様材料が、接着剤に添加される一方、飽和脂肪酸が配合物において第一位且つ主要なワックスである。最も好ましい飽和脂肪酸はソールワックス成分であるが、存在する場合には晶癖変性剤を排除する。使用に好ましいものはステアリン酸である。
【0016】
本発明の接着剤は飽和脂肪酸成分を含む。脂肪酸が飽和であることは分子鎖中のオレフィン性二重結合が最小であることであり、高くて鋭い融点を生成するために必要である。不飽和のレベルは、通常、ヨウ素価によって特徴付けられる。好適な値は25未満、より好ましくは、10未満、最も好ましくは、5未満である。脂肪酸はトリグリセリドの加水分解から得られ、通常、低いヨウ素価を達成するためにその後水素化に供される。
【0017】
飽和脂肪酸はC4〜C22の鎖の長さの範囲を有する。最も一般的にはC18及びC16の酸類である。C18の酸類はより高い融点を有するので好ましい。60℃を超える融点は使用の際の適切な耐熱性に関して好ましい。純粋なC16脂肪酸(パルミチン酸)は62.9℃で溶融し、純粋なC18ステアリン酸は69.6℃で溶融する。12−ヒドロキシステアリン酸(水素化リシノール酸)は約80℃で溶融するが、ステアリン酸よりもずっと高価であり、結晶化速度の厳しい遅延を起こしやすい(低い結晶化温度、Tc)。
【0018】
融点はまた、脂肪酸の純度による。純度の増加はより完全な結晶を生成し、融点は特定の酸の純度と共に増加する。融点はまた、接着剤組成物への配合処理によって実質的に低下する傾向にある。ステアリン酸が最も好ましいが、その理由は、配合処理後であっても約60℃を超える融点が得られるようにするために、わずかな不純物材料を使用することができるからである(即ち、コストが比較的低い)。ステアリン酸はパラフィンよりも高い融点を有し(約70℃対約64℃)、より低い分子量を有する(280Da対約430Da)。
【0019】
飽和脂肪酸成分は代表的には約10〜約60重量%、より好ましくは約15〜約55重量%、更により好ましくは約30〜約50重量%の量で存在する。
本発明のホットメルト接着剤の配合に使用するポリマーはエチレン及びプロピレンのホモ−及びコ−ポリマー並びにそれらの混合物である。使用に好ましいものはエチレンコポリマーである。例えば、ビニルアセテート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ブテン、オクテン、アクリル酸、及びメタクリル酸とのエチレンコポリマーが挙げられる。アタクチックプロピレンなどのアモルファスポリαオレフィン類並びにエチレン、ブテン、ヘキセン及びオクテンとのプロピレンコポリマーも有用である。酢酸ビニルなどの極性コモノマーを5〜40重量%有するエチレンのコポリマーも好ましい。約28%の酢酸ビニルのものが最も好ましい。
【0020】
本発明の接着剤組成物は好ましくは粘着性である。粘着性付与剤成分は、通常約10重量%〜約60重量%、より好ましくは約20重量%〜約50重量%、更により好ましくは約20重量%〜約40重量%の量で存在する。種々の慣用の粘着性付与剤が本発明の実施に使用されることができ、それらはC. W. Paul, Hot Melt Adhesives, in Adhesion Science and Engineering - 2, Surfaces, Chemistry and Applications, M. Chaudhury and S.V. Pocius, eds., Elsevier, New York, 2002, p.711に記載されている。これらには天然及び合成の樹脂が含まれる。天然の樹脂としては、例えば、ロジン、ロジンエステル類、ポリテルペン類などが挙げられる。合成樹脂としては、例えば、C5環式及び非環式樹脂、芳香族樹脂、C9樹脂、純粋なモノマー樹脂などが挙げられ、具体的には、例えば、αメチルスチレンに基づくもの、上記のモノマーとそれぞれ他のもの及び/又はフェノールとのコポリマー樹脂などが挙げられる。Arizona Chemicalから入手できるものなどのテルペンフェノール樹脂が最も好ましい。
【0021】
慣用のワックスに比較して脂肪酸の極性及び非対称性が多くの利点(長期オープン時間、強力な接着性、調節可能な溶融性、及び再結晶挙動)をもたらすことがわかっている。しかし、それらの独特な構造はまた、冷却速度が独立しているようにこれらの材料が結晶化することをより困難にする。迅速な冷却試料は低い溶融構造に固定され得る。これらの低い溶融構造は多くの脂肪酸に固有の高い融点が得られないようにする。本明細書において「晶癖変性剤」として言及されるいくつかの材料が少量添加されたときには、この問題が最小化又は解消されることが現在わかっている。そのメカニズムが理解されていない一方で、その効果はワックスの結晶構造が変化してそれが急激に冷却されたときでさえも高く鋭い融点を保持するようになる。この機能をもたらす添加剤は、ある一定の添加剤、例えば、脂肪酸でコートした超微細沈降炭酸カルシウム(Winnofil SPM、Solvayから)、ジブロックコポリマー(ひとつのブロックがAB-1などのポリエチレンであり、第二のブロックがアモルファスポリオレフィンである。AB-1は、D. Schwahn et al., Macromolecules, vol. 35, 2002, p. 861に記載されるような材料のクラスである。これらの材料は、「毛に似た板状体」( “hairy platelet” )のエチレン性結晶である。第2のブロックはまたポリエチレンオキサイド、例えば、Unithox 380(Baker-Petroliteから入手可能)でもよいことがわかっている。驚くべきことに、Milliken Chemicalsからの、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸ジナトリウム塩(1R,2R,3S,4S)-REL-に基づくポリプロピレン用核剤、Hyperform HPN-68Lも効果的である。代表的な炭化水素ワックス又はステアリン酸塩は、それらは迅速に結晶化するにもかかわらず、ステアリン酸結晶を核化(nucleating)することにおいて効果的ではなく、それらが高い完全性(融点)のものであることを保証する。好ましい晶癖変性剤は、脂肪酸でコートされた超微細(0.1ミクロン未満の一次粒子)沈降炭酸カルシウムである。この材料は他の全ての材料と同様に効果的であると共にコストが最も低いので好ましい。使用する場合、晶癖変性剤は約10重量%以下の量で存在させる。
【0022】
本発明の接着剤はまた、安定化剤又は酸化防止剤を含むことが好ましい。これらの化合物は添加されると、熱、光又は粘着性樹脂などの原料からの残留触媒などにより誘起される酸素と反応することによって引き起こされる劣化から接着剤を保護する。使用できる慣用の酸化防止剤は、ヒンダードフェノール類、フォスファイト類、芳香族アミン類、チオエステル類、スルフィド類などが挙げられる。本発明の接着剤は代表的には0〜約3重量%の酸化防止剤を含む。
【0023】
接着剤の意図される末端用途に応じて、ホットメルト添加剤に慣用的に添加される可塑剤、顔料、染料などの他の添加剤を含めることができる。
添加剤は代表的にはそして望ましくは低温で塗布、即ち、約300°Fから約200°Fまで、より好ましくは約250°Fまでの温度で塗布することができる配合処方とする。
【0024】
本発明の接着剤は、低い再結晶温度によって特徴付けられるように、粘度が低く、高い融点と長いオープン時間を有する。適切な固化速度は40℃を超える再結晶温度を維持することによって保証される。
【0025】
好ましい接着剤は、350F(177℃)で1500cP未満の粘度を有する。より高い温度では安定性が損なわれるので、粘度は、好ましくは300F(149℃)で、より好ましくは250F(121℃)で、1500cP未満である。
【0026】
良好な耐熱性を有する接着剤が、トラックや鉄道で輸送されるコンテナ類(ケース類、カートン類など)を密封するために必要である。密封されたコンテナ類はトラックや鉄道車内で輸送及び/又は貯蔵され、夏には非常に高温(145°F以上にもなる)に曝される。よって現実的な条件下で冷却した後に高い融点を有することが望ましい。DSCで20℃/minの冷却速度及び同じ加熱速度を使用して(以下に示す)融点(最大吸熱温度)が約55℃を超えることが望ましく、より好ましくは約60℃を超える。
【0027】
遅い再結晶速度は低い塗布温度でさえも長いオープン時間を与える。しかし、再結晶温度(20℃/minでの冷却の際の最大吸熱温度)は室温(約20℃)を超える温度で良好でなければならないが、より望ましくは35℃を超える温度で、最も好ましくは40℃を超える温度で良好であるが、55℃未満である。
【0028】
本発明のホットメルト接着剤は、パッケージング及びカバーリング産業において特に有用である。この接着剤に関しては特に、ケース、カートン及びトレイ成形としての用途、及び密封用接着剤としての用途が見出されている。本発明が包含するものにはコンテナ類、例えば、カートン類、ケース類、ボックス類、バッグ類、トレイ類などがある。
【0029】
実施例
試験方法
粘度はBrookfieldからのカップアンドボブサーモセル粘度計(cup and bob Thermosel viscometer)を使用して測定した。#27スピンドルを使用した。
【0030】
示差走査熱量分析(DSC)を8〜12mgの試料について2920 MDSC unit(TA instrumentsから)を使用して行った。試料はアルミニウムパン内にクリンプ(crimp)された。サンプリングされた全ての場合において、20℃/minで加熱及び冷却された。試料は120℃に加熱されて、20℃/minで−10℃まで冷却され、その間、再結晶ピークが記録され、その後20℃/minで120℃まで加熱され、この間に融点が記録された。
【0031】
接着性は、接着剤の薄いビードとダブルフルートされた波形のカードボードを接着し、接着した試料を所望の条件で少なくとも24時間平衡化し、その接合部を手で引っ張ることによって評価した。繊維の引き裂きの有無を接着面積の%として記録した。
【0032】
耐熱性は、ダブルフルートされた波形の重複接合部を調製することによって測定した。接合部の底部側は支持体にクランプされる。上部側はカンチレバー構造の端部に位置する接着線で支持体からぶら下がる。オーバーハングしている上部側の離れた端部に100gの重りを置き、この重りによって接合部に開裂応力が付与される。接合試験片は決まった温度でオーブン中に置いた。その接合部が24時間保持された場合、試験に合格したとする。3つの試験片の平均を結果として報告する。
【0033】
材料
接着剤試料は以下の原料を使用して調製した。
ガムロジン(PDM Inc.から得られる、軟化点:75℃及び酸価:160 mgKOH/g)
Sylvares TP96(テルペンフェノール樹脂、軟化点:95℃及びおよそのヒドロキシル価:65 mg KOH/gを有する、Arizona Chemicalから入手可能)
Sylvares TP2040(テルペンフェノール樹脂、軟化点:118℃及びおよそのヒドロキシル価:140を有する、Arizona Chemicalから入手可能)
Ultrathene UE 665-67(エチレン酢酸ビニルコポリマー、28重量%の酢酸ビニル含有、メルトインデックス:800を有する、Equistar Chemicals LPから入手可能)
Prifrac 2981(純度98%のステアリン酸、Uniqemaから入手可能)
Prifrac 2979(純度92%のステアリン酸、Uniqemaから入手可能)
AB-1(ジブロックコポリマー、一つのブロックがポリエチレンであり、他のブロックが非晶質ポリオレフィンブロックである)
SasolWax H4(Fischer-Tropschプロセスによって製造された合成パラフィンワックス、Sasolwax Americasから入手可能、この材料は93℃及び105℃の二つの融点を示し、96℃のTcを有する。
【0034】
NAT155(高度水素化大豆油、ヨウ素価:≦2を有する、Marcus Oil and Chemical Co.から入手可能)
Cool 250(慣用のワックスに基づく低塗布温度パッケージング接着剤、National Starch and Chemical Co.から入手可能)
実施例1
接着剤試料1〜10及び比較試料Aを、300°Fに加熱した単一ブレードミキサー中で表1に示す成分を混合物が均質になるまで一緒に混合することによって調製した。
【0035】
実施例2(粘着性付与剤の選択による効果)
普通、より高い軟化点の粘着性付与剤はより高い耐熱性を与えるが、しばしば、接着性を犠牲にする。試料1及び2からわかるように、ステアリン酸をワックスとして使用すると、より高い軟化点のテルペンフェノール(95℃、Sylvares TP96)をより低い軟化点のロジン(75℃、ガムロジン)と置き換えることができ、耐熱性も接着性も共に改善することがわかった。より高い軟化点の粘着性付与剤を使用すると、配合物中のワックスの融点が58℃から63℃に上昇した。
【0036】
実施例3(晶癖変性剤の効果)
幾つかの材料がワックスの結晶構造を変えて、その結果、ワックスが急激に冷却されたとしても高く鋭い融点を保持することが予想外に見出された。一つのそのような材料は一端がポリエチレンであるジブロックコポリマーである。
【0037】
晶癖変性剤、AB-1は試料3の配合物に使用した。AB-1なしでは(試料2及び図1参照。)急速に冷却すると(20℃/min)より低い溶融ショルダーが生成した。試料2の図1のDSCスキャンは加熱、冷却、及び再加熱のサイクルを示す。アズメイド(as-made)試料は、100gコンテナの接着剤だったので、非常にゆっくりと冷却した。よって初期の融点は非常に高い(約66℃)。20℃/minで冷却すると、再結晶ピークは42℃に見られる。20℃/minで再加熱すると、その材料が55℃と約63℃に二つの溶融ピークを有することが観測された。表2に示したデータから、AB-1晶癖変性剤の添加(試料3及び図2)は、耐熱性及び接着性の両方を増加させることを見出すことができる。試料3の接着剤の図2のDSCスキャンは、バルクでゆっくりと冷却されても20℃/minで冷却されても、単一の高い融点(66℃)を示す。再結晶温度は(42℃から45℃へと)やや増加した。
【0038】
試料2の接着剤の一部を波形の接着剤(corrugated bond)から切り出した。接着した試料についてDSCスキャンの結果を図3に示すが、その結果は接着が急速な冷却プロセスであることを示す急速に冷却された材料と同様であった。より低い融点は、それゆえに接着構造において現実的な問題である。
【0039】
実施例4(均一な鎖の長さの重要性)
より高い耐熱性はより純度の高いステアリン酸を使用して得られる(試料3(純度98%)及び試料4(純度92%)を比較)。使用する粘着性付与剤の一部の軟化点及びフェノール含量を上昇させることで、低純度のステアリン酸を使用したときも、耐熱性を補償し回復させることができた(試料5)。より低い純度はステアリン酸のコストを低減する。
【0040】
実施例5(晶癖変性剤)
ケース類及びカートン類の輸送の際の温度は、米国の温暖な地域を経由して材料が輸送されるときには、60℃をやや上回る温度に達し、その温度は数時間にまでわたる(International Safe Transit Association Temperature Study, July 2002を参照(www.ista.org で参照可能)。)ために、多くの材料が、迅速に冷却されたときに有意な低溶融材料を回避する潜在的能力を求められている。
【0041】
試料10のマスターバッチに対して1〜5%の種々の材料が添加された。5%で効果があった場合、いくつかの材料ではまた1%も検討した。効果の基準は、(図1に好適な変性剤なしで見られるような)65℃未満に第2の極大値がないことであった。最も好ましいのは65℃未満に第2の極大値がないことと有意な低溶融テール(low melting tail)がないことである。有意なテールとは、急速に冷却した(20℃/min)試料をゆっくり冷却した(1℃/min)試料と比較した時に全体の15%より広い領域を有するものである。低溶融テールはゆっくりと冷却した試料のピークの領域の外側にある、ピークよりも下の溶融曲線の領域である。
【0042】
驚くほど多様な材料が効果的であり、無機粒子(試料11、分散助剤として脂肪酸でコートされたもの)、一端がポリエチレンで他端がアモルファスポリオレフィンであるブロックコポリマー(試料3及び5)又は結晶性エチレンオキサイド鎖(試料13)からポリプロピレンを核化(nucleate)するために設計された有機塩(試料12)までの範囲にわたる。驚くべきことに、より高い融点のステアレート塩(例えば、Ca及びZnのステアレートの共晶(eutectic)混合物−Synpro 1580、試料9参照)又は慣用の合成パラフィンワックスを添加することは、明白な低溶融相(試料6〜8及び図4a〜c参照)及び耐熱性の対応する低下(表2参照)をもたらした。特にステアリン酸を合成パラフィンと組み合わせたときに接着性も低下した(試料6〜8)。
【0043】
実施例6(トリグリセリドに基づくワックスとの比較)
試料5及び比較試料Aは、ワックスを変えた以外は同様の配合で比較するものである。ステアリン酸ベースの配合(試料5)は粘度が非常に低いだけではなく、非常に高い融点と(65℃対48℃)最適の範囲の再結晶化温度(40〜55℃)を示した。高い水素化トリグリセリドの融点は純粋な状態のステアリン酸に近く(例えば、受け取り時の(as-received )NAT155及びPrifrac 2979の融点は、それぞれ67.7℃及び71.4℃である。)、配合時及び/又は急速冷却時(20℃/min)にトリグリセリドは低溶融結晶を形成する。トリグリセリドワックスの溶融物は低温であり、非常に低い温度で再結晶するが、多くの製造工場に夏の数ヶ月間置かれるなどの暖かい環境では特にその固化速度は非常に遅くなる。
【0044】
実施例7(石油ワックスに基づく現存の低温接着剤との比較)
Cool250は高性能の低塗布温度接着剤である。接着剤は250°Fで塗布されるように設計される。Cool250は自動化された接合部形成及び試験機上で試料3と比較された。二つの接着剤はビードの形態で単一フルート状波状カードボードに250°Fで塗布された。同じ接着剤のアドオン(add-on)を使用して接着剤のオープン時間を比較した。オープン時間とは、接着剤を一つの表面に塗布した後第二の基材に接着する前に経過できる時間である。接着剤のオープン時間を超えると、接着不良となる(接着剤が完全に固化して波状カードボードの繊維の引き裂けがなくなる。)。オープン時間が長いと接着剤は接着前に結晶化を開始し、これが接着不良をもたらす。不適切な接着剤のオープン時間は低塗布温度接着剤で再発する問題である。その理由は、その接着剤を使用する場合基材がより十分に加熱されることがなく、再結晶の開始が速やかに起こるからである。市販の接着剤Cool250はこれらの条件下で4〜5秒のオープン時間を示す。試料3の配合に基づくステアリン酸は20〜25秒のオープン時間を示す。この長いオープン時間は低塗布温度であるにもかかわらず強固な塗布プロセスを与え、これは、Cool250中の石油誘導ワックスの再結晶温度(57℃)に対する試料3のステアリン酸の低い再結晶温度(45℃)に起因すると信じられる。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】接着剤試料2のDSCスキャンである。
【図2】接着剤試料3のDSCスキャンである。
【図3】接着剤試料2のDSCスキャンオーバーレイであり、バルク冷却した試料(実線)からのものと、コルゲート化ボンドからのものである。
【図4a】3%合成パラフィンを有する接着剤試料6のDSCスキャンである。
【図4b】6%合成パラフィンを有する接着剤試料7のDSCスキャンである。
【図4c】12%合成パラフィンを有する接着剤試料8のDSCスキャンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10〜約60重量%のエチレン又はプロピレンのホモポリマー又はコポリマー、約10〜約60重量%の粘着性付与剤、約15〜約55重量%の飽和脂肪酸、及び0〜約10重量%の晶癖変性剤を含むホットメルト接着剤。
【請求項2】
約20〜約40重量%のエチレン又はプロピレンのホモポリマー又はコポリマー、約20〜約40重量%の粘着性付与剤、約30〜約55重量%の飽和脂肪酸、及び約10重量%以下の晶癖変性剤を含む請求項1の接着剤。
【請求項3】
350Fで2000cps未満の粘度、55℃を超えるTm、及び35℃を超え55℃未満のTcを有する請求項1の接着剤。
【請求項4】
250Fで2000cps未満の粘度、60℃を超えるTm、及び40℃を超え55℃未満のTcを有する請求項1の接着剤。
【請求項5】
250Fで2000cps未満の粘度、60℃を超えるTm、及び40℃を超え55℃未満のTcを有する請求項2の接着剤。
【請求項6】
約20〜約40重量%のエチレンコポリマー、約20〜約40重量%のテルペンフェノール粘着性付与剤、及び30〜約50重量%のステアリン酸を含む請求項1の接着剤であって、250Fで2000cps未満の粘度、60℃を超えるTm、及び40℃を超え55℃未満のTcを有する請求項1の接着剤。
【請求項7】
約20〜約40重量%のエチレンコポリマー、約20〜約40重量%のテルペンフェノール粘着性付与剤、30〜約50重量%のステアリン酸、及び10重量%以下の晶癖変性剤を含む請求項2の接着剤であって、晶癖変性剤が超微細沈降炭酸カルシウム、少なくとも1のブロックがポリエチレンであるブロック又はグラフトコポリマー、又はポリプロピレン用の核剤であり、250Fで2000cps未満の粘度、60℃を超えるTm、及び40℃を超え55℃未満のTcを有する接着剤。
【請求項8】
約20〜約40重量%のエチレンコポリマー、約20〜約40重量%の粘着性付与剤、及び約30〜約50重量%のステアリン酸を含む請求項1の接着剤。
【請求項9】
250Fで2000cps未満の粘度、60℃を超えるTm、及び40℃を超え55℃未満のTcを有する請求項8の接着剤。
【請求項10】
約20〜約40重量%のエチレンコポリマー、約20〜約40重量%の粘着性付与剤、及び約30〜約50重量%のステアリン酸を含む請求項5の接着剤。
【請求項11】
請求項7の接着剤であって、晶癖変性剤が、脂肪酸でコートされた超微細沈降炭酸カルシウム、少なくとも1のブロックがポリエチレンで他がポリエチレンオキサイド又はアモルファスポリオレフィンであるジブロックコポリマー、又はビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸、ジナトリウム塩、(1R,2R,3S,4S)-REL-に基づく核剤であり、250Fで2000cps未満の粘度、60℃を超えるTm、及び40℃を超え55℃未満のTcを有する接着剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【公開番号】特開2007−297623(P2007−297623A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−110464(P2007−110464)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(590000824)ナショナル スターチ アンド ケミカル インベストメント ホールディング コーポレイション (112)
【Fターム(参考)】