説明

パッチ転写媒体の製造方法、及びパッチ転写媒体

【課題】 繊維質素材へ転写でき、転写後でも柔軟性を阻害せず、かつ、耐洗濯性に優れるパッチ転写媒体の製造方法、及びパッチ転写媒体を提供する。
【解決手段】 (1)透明基材11へホログラム層15、反射層17及び印刷層18を設ける転写材準備工程と、(2)支持基材31へ、熱硬化樹脂層を熱で硬化させ離型層13を設ける支持材準備工程と、(3)離型層13面へ剥離可能なハードコート層14を設けるハードコート層形成工程と、(4)ハードコート層14面と印刷層18面とをドライラミネーション法で積層する積層工程と、(5)積層体の透明基材11面へ接着層19を設ける接着層形成工程と、(6)転写部部分のみを、所望の形状にパッチ21とするハーフカット処理工程と、からなる支持基材31の離型層13面へ所望の形状のパッチ21となるように、剥離可能に積層されてなるパッチ転写媒体の製造方法を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチ転写媒体の製造方法に関し、さらに詳しくは、印刷層を耐擦傷性に優れるハードコート層と基材とで保護してなるパッチを繊維質基材へ転写性よく転写できるパッチ転写媒体の製造方法、及びパッチ転写媒体に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「ドライラミネーション」は「DLM」の略語、同意語、機能的表現、通称、又は業界用語である。また、「ホログラム」は「ホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。さらに、電離放射線硬化性樹脂は電離放射線の照射で硬化して電離放射線硬化樹脂となる。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)近年、個人の好みが多様化し個性化が進み、多くの個人向け商品は多品種小ロット生産の傾向が高まっている。ステーショナリーやアパレル製品では、1個人に1つのオンリーワン製品までが要望されている。しかしながら、従来の布や紙などの繊維質素材、例えばTシャツへの装飾の形成は直接スクリーン印刷するか、転写紙へオフセットやスクリーン印刷法で印刷した後に、Tシャツへ転写する方法のために、転写後には装飾がが最表面となって耐久性に劣るという問題点があった。また、装飾面へ、熱転写性樹脂層を有するハードコート層熱転写フィルムを重ね合わせ、アイロンや加熱ロール等を用いて、透明性を有する熱転写性樹脂層を転写させ、装飾上に保護層を形成することが行われている。しかしながら、上記の保護層はアイロン又は熱ロールによる転写時に、部分的に転写する必要があることから、箔切れ性を有する必要がある。この場合、保護層を数ミクロン程度の厚さの樹脂膜にせざるを得ないことから、強靱な耐擦傷性、耐薬品性等の耐久性を持たせることが出来ないという欠点があった。さらに、PETやOPPフィルムと共に転写するタイプもあるが、該フィルムは特に鋭利なものによる耐擦傷性に劣り、傷付き易く、また、フィルムや転写部が厚いと、繊維質素材の柔軟性を阻害し、着衣であれば運動性を低下させ、バッグであれば、質感を損なうという問題点があった。さらにまた、繊維質素材へ転写した場合に繊維質素材と透明基材との間に、印刷層や反射層などの脆弱な層があると、洗濯時に浸漬侵食されて破壊され、脱落したり、また、繊維質素材へ転写する際にアイロンを用いる場合には温度管理が難しく、例えば、200℃以上になると離型層があっても、高熱で軟化又は溶融して剥がれにくくなったり、するという問題点もあった。
従って、布や紙などの繊維質素材への装飾は、意匠性に優れる印刷やホログラムを有するパッチ転写媒体をアイロン等で加熱加圧することで誰でも容易に転写でき、かつ、転写後でも柔軟性を阻害せず、着衣であれば運動性を低下させず、バッグであれば、質感を損なわず、かつまた、洗濯時にも破壊されたり、脱落したりせず、低コストで製造できるパッチ転写媒体の製造方法がが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−9134号公報
【特許文献2】特開2002−274060号公報
【特許文献3】特開2004−284096号公報
【特許文献4】特開2010−5887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(先行技術)従来、本出願人は基材、剥離性樹脂層、保護機能を兼ねたホログラム層、反射層及び接着層を設けてなるホログラム転写箔が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、転写時には部分的な転写であり、箔切れ性をよくするために、ホログラム層を数ミクロン程度の厚さの樹脂膜にせざるを得ず、媒体の表面へ転写されて最表面となり、多数回の繰り返し使用されると、強靱な耐擦傷性や耐溶剤性などの耐久性に欠けるという欠点がある。
また、本出願人は樹脂層を設けたシート基材と、ホログラム形成層と受容層を設けた透明シートが積層され、ホログラム形成層及び受容層を含めて透明シート部にハーフカット処理が施され、樹脂層と透明シートの間で剥離する中間転写記録媒体を開示している(例えば、特許文献2〜3参照。)。しかしながら、受容層が必須で、該受容層へ印画して再転写するもので、媒体へ印画された画像の耐擦傷性や耐溶剤性などの耐久性を付与することについては言及していないという欠点がある。
さらに、本出願人は、ハードコート層14/接着剤層29/透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18/接着層19からなる転写部23をハーフカット処理したパッチ21を設けたパッチ転写媒体の製造方法を開示され(例えば、特許文献4参照。)。しかしながら、ハードコート層14/接着剤層29/透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18/接着層19からなる転写部23が直接繊維質素材101へ転写されており、意匠性を有するホログラム層15/反射層17/印刷層18の保護性が充分ではなく、洗濯時には若干破壊されたり、脱落したりするという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、繊維質素材へアイロン等で加熱加圧することで誰でも容易に転写でき、かつ、転写後でも柔軟性を阻害せず、着衣であれば運動性を低下させず、バッグであれば、質感を損なわず、かつまた、洗濯時にも破壊されたり、脱落したりせず、低コストで製造できるパッチ転写媒体の製造方法、及びパッチ転写媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係わるパッチ転写媒体の製造方法は、支持基材31の離型層13面へ所望の形状にハーフカットされた転写部23がパッチ21となるように、剥離可能に積層されてなるパッチ転写媒体の製造方法であって、(1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面へホログラム層15、反射層17及び印刷層18を設けてなる転写材10を準備する転写材準備工程と、(2)支持基材31と、該支持基材31の一方の面へ、熱硬化樹脂を主成分とする樹脂層を熱で硬化することで前記離型層13を設ける支持材30を準備する支持材準備工程と、(3)前記支持材30の前記離型層13面へ電離放射線硬化樹脂を主成分とする樹脂層を電離放射線で硬化させて剥離可能なハードコート層14を設けるハードコート層形成工程と、(4)前記支持材30の前記ハードコート層14面と前記転写材10の前記印刷層18面とをドライラミネーション法で接着剤層29を介して積層体とする積層工程と、(5)前記積層体の露出している前記透明基材11面へホットメルトからなる接着層19を設ける接着層形成工程と、(6)前記転写部23となる前記ハードコート層14、前記接着剤層29、前記印刷層18、前記反射層17、前記ホログラム層15、前記透明基材11及び前記接着層19からなる層構成部分のみを、所望の形状にハーフカット処理を施してパッチ21とするハーフカット処理工程と、からなることを特徴とするパッチ転写媒体の製造方法である。
請求項2の発明に係わるパッチ転写媒体の製造方法は、請求項1において、前記ホログラム層15及び前記反射層17を設けないことをを特徴とするパッチ転写媒体の製造方法である。
請求項3の発明に係わるパッチ転写媒体20は、請求項1又は2に記載のパッチ転写媒体の製造方法で製造されたパッチ転写媒体20であって、前記ハードコート層14、前記接着剤層29、前記印刷層18、前記反射層17、前記ホログラム層15、前記透明基材11及び前記接着層19、又は前記ハードコート層14、前記接着剤層29、前記印刷層18、前記透明基材11及び前記接着層19、から構成される転写部23をハーフカット処理を施してパッチ21とし、該パッチ21が前記支持基材31の前記離型層13面へ剥離可能に積層されていることを特徴とするパッチ転写媒体である。
請求項4の発明に係わるパッチ転写繊維質素材は、請求項3に記載のパッチ転写媒体20の前記接着層19面と繊維質素材101からなる被転写体とを重ね合わせて、アイロンで加熱加圧した後に、前記支持基材31及び離型層13とを剥離し除去することで、前記パッチ21が前記被転写体101へ転写されてなり、最表面がハードコート層14となることを特徴とするパッチ転写繊維質素材である。
請求項5の発明に係わるパッチ転写繊維質素材は、請求項4において、
前記ハードコート層14の厚さが3〜7μmで、前記接着剤層29の厚さが3〜7μmで、前記透明基材11の厚さが12〜25μmであることをを特徴とするパッチ転写繊維質素材である。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の本発明によれば、意匠性に優れる前記印刷層18/前記反射層17/前記ホログラム層15が前記ハードコート層14と前記透明基材11との間に保護されているので、転写後でも柔軟性を阻害せず、着衣であれば運動性を低下させず、バッグであれば、質感を損なわず、かつまた、洗濯時にも破壊されたり、脱落したりせず、低コストで製造できる効果を奏する。
請求項2の本発明によれば、意匠性に優れる前記印刷層18が前記ハードコート層14と前記透明基材11との間に保護されているので、転写後でも柔軟性で、良質感で、かつ、洗濯時にも破壊や脱落がなく、低コストで製造できる効果を奏する。
請求項3の本発明によれば、アイロン等で加熱加圧することで誰でも容易に転写でき、かつ、低コストで製造できる効果を奏する。
請求項4の本発明によれば、意匠性に優れる印刷やホログラムが繊維質素材へ転写で装飾され、かつ、転写後でも柔軟性を持ち、着衣であれば運動性がよく、良質感であり、かつまた、洗濯時にも破壊や脱落しないパッチ転写繊維質素材が得られる効果を奏する。
請求項5の本発明によれば、転写後でも柔軟性を失わないので、着衣であれば運動性を低下させず、バッグであれば、質感を損なわず、かつまた、洗濯時にも破壊されたり、脱落したりしないパッチ転写繊維質素材が得られる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のパッチ転写媒体の製造方法を示すステップ図である。
【図2】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ1の転写材準備工程で準備する転写材の断面図である。
【図3】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ2の支持材準備工程で準備する支持材の断面図である。
【図4】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ3のハードコート層形成工程後の断面図である。
【図5】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ4の積層工程の説明と、積層工程後の積層体の断面図である。
【図6】本発明のパッチ転写媒体の製造方法のステップ5の接着層形成工程後の断面図である。
【図7】本発明の1実施例を示すパッチ転写媒体の断面図である。
【図8】本発明のパッチ転写媒体を用いて繊維質基材への転写を説明する説明図である。
【図9】本発明のパッチ転写媒体を用いて転写した本発明の1実施例を示すパッチ転写繊維質素材の断面図である。
【図10】ホログラム層及び反射層を設けない場合のパッチ転写媒体を用いて繊維質基材への転写を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0011】
(パッチ転写媒体の製造方法)本発明のパッチ転写媒体の製造方法について説明する。本発明のパッチ転写媒体の製造方法は、図1に示すように、ステップ1S1の(1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面へホログラム層15、反射層17及び印刷層18を設けてなる転写材10を準備する転写材準備工程と、ステップ2S2の(2)支持基材31と、該支持基材31の一方の面へ、熱硬化樹脂を主成分とする樹脂層を熱で硬化することで前記離型層13を設ける支持材30を準備する支持材準備工程と、ステップ3S3の(3)前記支持材30の前記離型層13面へ電離放射線硬化樹脂を主成分とする樹脂層を電離放射線で硬化させて剥離可能なハードコート層14を設けるハードコート層形成工程と、ステップ4S4の(4)前記支持材30の前記ハードコート層14面と前記転写材10の前記印刷層18面とをドライラミネーション法で接着剤層29を介して積層体とする積層工程と、ステップ5S5の(5)前記積層体の露出している前記透明基材11面へホットメルトからなる接着層19を設ける接着層形成工程と、ステップ6S6の(6)前記転写部23となる前記ハードコート層14、前記接着剤層29、前記印刷層18、前記反射層17、前記ホログラム層15、前記透明基材11及び前記接着層19からなる層構成部分のみを、所望の形状にハーフカット処理を施してパッチ21とするハーフカット処理工程と、からなる。即ち、製造されたパッチ転写媒体20は、支持基材31の離型層13面へ所望の形状にハーフカットされた転写部23がパッチ21となるように、剥離可能に積層されている。
【0012】
(ホログラムなし)また、本発明では、図10に示すように、ホログラム層15及び反射層17を設けなくてもよく、この場合には、ステップ1S1の(1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面へ印刷層18を設けてなる転写材10を準備する転写材準備工程となり、ステップ6S6の(6)前記転写部23となる前記ハードコート層14、前記接着剤層29、前記印刷層18、前記透明基材11及び前記接着層19からなる層構成部分のみを、所望の形状にハーフカット処理を施してパッチ21とするハーフカット処理工程とすればよい。
【0013】
(ステップ1)ステップ1S1はステップ1S1の(1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面へホログラム層15、反射層17及び印刷層18を設けてなる転写材10を準備する。転写材10は図2に示すように、透明基材11と、該透明基材11の一方の面へホログラム層15、反射層17及び印刷層18からなっている。
【0014】
(透明基材)透明基材11としては、ハーフカット処理された部分を境界にして、ハードコート層14、接着剤層29、印刷層18、反射層17、ホログラム層15、透明基材11及び接着層19からなる層構成を転写部23とし、該転写部23の1部として切断され、被転写体である繊維質基材101へ転写される。透明性と、耐候性、耐摩擦性、耐薬品性等の耐久性を有するものであれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどが例示できる。該透明基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該透明基材11は、延伸又は未延伸のフィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。厚さは、通常2.5〜50μm程度が適用できるが、転写後でも柔軟性を失わず、着衣であれば運動性を低下させず、バッグであれば、質感を損なわず、かつまた、洗濯時にも破壊されたり、脱落したりしないために、12〜25μmが好適である。該透明基材11は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えてもよい。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートのフィルムが、耐熱性、機械的強度がよいため好適に使用される。
【0015】
(ホログラム層)ホログラム層15としては、電離放射線硬化樹脂を主成分とし、必要に応じてシリコーンやフィラーなどの添加物を含ませてもよい。
【0016】
該電離放射線硬化性樹脂としては、好ましくは、(1)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(2)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(3)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を用い、好ましくはポリエチレンワックスを含ませて、塗布し乾燥して電離放射線で硬化させて、電離放射線硬化樹脂とすればよい。
【0017】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂(本明細書では電離放射線硬化性樹脂組成物Mと呼称する)は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂の硬化物、具体的には、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂などが例示できる。具体的には、MHX405ニス(ザ・インクテック(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)、ユピマーUV・V3031(三菱化学(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)が例示できる。
【0018】
(ホログラム層の形成)ホログラム層15の形成は、上記の電離放射線硬化性樹脂を主成分とし、必要に応じてシリコーンやフィラー、光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、ホログラム(レリーフ)を賦型後に電離放射線で反応(硬化)させればよい。ホログラム層15の厚さは、通常、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μmである。
【0019】
(ホログラム)次に、ホログラム層15の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定の微細な凹凸(レリーフ構造)を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0020】
ホログラム層15面へ、レリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0021】
また、ホログラム層15に形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。ホログラム層15は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、紫外線や電子線などの電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(微細な凹凸=レリーフ構造=ホログラム)となる。
【0022】
(反射層)反射層17は、所定のレリーフ構造を設けたホログラム層15面のレリーフ面へ、反射層17へ設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、ホログラム層15の反射率のより高れば、特に限定されない。該反射層17としては、真空薄膜法などによる金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層は部分的に設け、透明反射層は被転写体へ形成されている画像の面へ転写しても、画像が観察できるので好ましい。透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が例示できる。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0023】
(印刷層)印刷層18としては、特に限定されず、グラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの公知の印刷法で、印刷すればよい。印刷図柄の色も特に限定されず、カラー、単色、複色、メタリックなどいずれでもよく、画像のパターンも特に限定されず、文字、記号、数字、イラスト、写真などいずれでもよい。図柄は転写されてハードコート層14面から観察されるので、正常に観察できるように印刷すればよい。これを用いて、例えばTシャツへ転写すれば、好みに応じたホログラムと図柄を有するTシャツができる。
【0024】
(ステップ2)ステップ2S2は(2)支持基材31と、該支持基材31の一方の面へ、熱硬化樹脂を主成分とする樹脂層を熱で硬化することで離型層13を設ける支持材30を準備する。支持材30は図3に示すように、支持基材31へ離型層13が設けられている。
【0025】
(支持基材)支持基材31としては、特に限定されず、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、またはサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、コート紙、合成樹脂またはエマルジョン含浸紙、あるいは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、アクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレートなどのエンジニアリング樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン系樹脂、セロファンなどのセルロース系フィルムなどのフィルムが例示できる。上記の支持基材31上に後述さる剥離性樹脂層33を設ける際に、接着性を向上させるために、支持基材31表面をコロナ放電処理したり、プライマー層を設けてもよい。
【0026】
支持材30は10μm〜100μmの厚みのものが好ましく、シート基材が薄すぎると得られるパッチ転写媒体20のいわゆるコシがなくなり、熱転写プリンターで搬送できなかったり、アイロン転写ではパッチ転写媒体20にカールやシワが発生したりする。一方、支持材30が厚すぎると、得られるパッチ転写媒体20が厚くなりすぎ、熱転写プリンタで搬送駆動させる力が大きくなりすぎて、熱転写プリンタに故障が生じたり、正常に搬送できなかったりする。
【0027】
(離型層)離型層13しては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、好ましくはメラミン系樹脂を用い、後述するハードコート層14と組合わせることで、離型層13との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。離型層13の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0028】
(耐熱滑性層)パッチ転写媒体20では、必要に応じて、支持基材31の剥離性樹脂層33面と反対面に耐熱滑性層を設けてもよい。パッチ転写媒体20を用いて被転写体101へ再転写は、アイロン、サーマルヘッドやヒートロール等の熱転写プリンタが用いるので、その熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層を設けてもよい。耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0029】
また、耐熱滑性層に添加、又は上塗りする滑り性付与剤としては、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。耐熱滑性層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、支持基材31の背面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等で塗布し乾燥して形成すればよい。
【0030】
(ステップ3)ステップ3S3は(3)支持材30の離型層13面へ電離放射線硬化樹脂を主成分とする樹脂層を電離放射線で硬化させて剥離可能なハードコート層14を設ける。図4に示す構成となる。
【0031】
(ハードコート層)ハードコート層14としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂を主成分とし、必要に応じてフィラーを含むようにする。硬化前の電離放射線硬化性樹脂としては、(イ)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(ロ)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(ハ)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで、電離放射線硬化性を有するウレタン変性アクリレート樹脂である。好ましいウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの詳細は、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂が好ましい。具体的には、MHX405ニス(ザ・インクテック(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)、ユピマーUV・V3031(三菱化学(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)が例示できる。
【0032】
(フィラー)フィラーとしてはマイクロシリカやポリエチレンワックスなどが例示でき、ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。転写後にはハードコート層14が最表面層となり、含まれるフィラーは、機械的な摩擦、及び摩耗から媒体を保護し、後述する画像などの固有情報も保護する。
【0033】
(1)ポリエチレンワックスを含ませることで、転写後にはハードコート層14が最表面層となるが、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から被転写体を保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。(2)ハードコート層14はメラミン系樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂層を熱で硬化させた離型層13と界面を接しているので、ハードコート層14と離型層13との間で剥離し、安定した剥離性となる。また、熱硬化樹脂である離型層13と電離放射線硬化樹脂であるハードコート層14との間で、即ち、双方が架橋硬化樹脂間で剥離させることで、例え、アイロン転写で200℃以上の高温になったとしても、いずれの層も熱で軟化及び/又は溶融することがなく、安定して剥離することができる。
【0034】
また、電離放射線硬化樹脂とフィラーを含むハードコート層14に、ポリエステル系樹脂を含ませることが好ましく、ポリエステル樹脂としては、数平均分子量が13000〜30000で、1分子当たり2〜10個の水酸基を有するポリエステルポリオールが柔軟性及び硬化時の低収縮性の点で好ましい。該ポリエステル樹脂としては、例えば、バイロン−200、バイロン−103、バイロン−600(以上、東洋紡績社製商品名)、アロンメルトPES310−S30(東亞合成化学工業社製商品名)などが例示でき、エリーテルUE3400シリーズ、UE3500シリーズ、UE3600シリーズ(以上、ユニチカ社製商品名)などの熱可塑性飽和共重合ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0035】
電離放射線硬化性樹脂に対するポリエステル樹脂の配合割合は質量基準で、電離放射線硬化性樹脂:ポリエステル樹脂=100:10〜40が好ましく、この範囲未満では硬化後のハードコート層14の柔軟性が不足し、かつ、硬化時の収縮性が大きく反ったりし、この範囲を超えるとハードコート性が不足する。
【0036】
(ハードコート層の形成)まず、未硬化なハードコート層を形成し、電離放射線を照射して硬化すればよい。上記の電離放射線硬化性樹脂にポリエチレンワックス、必要に応じて、ポリエステル系樹脂、光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、未硬化なハードコート層を形成する。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV−A、UV−B、UV−C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、電子線(EB)、ガンマー線、X線、紫外線(UV)、又は可視光線などが適用できるが、EB又はUVが好ましく、取扱い性やコスト面からUVがより好ましい。
【0037】
(ハードコート層の厚味)本発明では、極めて過酷な環境での使用、使用期限がなかったり、長期にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤や機械的な摩擦及び摩耗、特に引掻きから保護し、傷付きにくい耐久性を付与するために、ハードコート層14の厚さは1〜25μm程度、好ましくは、転写後でも柔軟性を失わず、着衣であれば運動性を低下させず、バッグであれば、質感を損なわず、かつまた、洗濯時にも破壊されたり、脱落したりしないために、3〜7μmが好適である。
【0038】
(ステップ4)ステップ4S4は(4)支持材30のハードコート層14面と転写材10の印刷層18面とをドライラミネーション法で接着剤層29を介して積層体50とし、図5に示すような構成となる。
【0039】
(積層工程)支持材30の離型層13面へ設けたハードコート層14面と、転写材10の印刷層18面とを、接着剤19を介してのドライラミネーション法で積層する。ドライラミネーション法とは、溶媒へ分散または溶解した接着剤を塗布し乾燥させて、貼り合せ基材を重ねて積層した後に、常温〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤を硬化させることで、2種の材料を積層させる方法である。
【0040】
(接着剤)ドライラミネーション法で用いる接着剤層29の接着剤として、熱、または紫外線・電子線などの電離放射線で硬化する接着剤が適用できる。熱硬化接着剤としては、具体的には、例えば、多官能イソシアネートとヒドロキシル基含有化合物との反応により得られるポリマー、具体的には、例えば、トリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、あるいは、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート等の多官能イソシアネートと、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリアクリレートポリオール等のヒドロキシル基含有化合物との反応により得られる2液硬化型ウレタン系接着剤の他、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エボキシ系接着剤などが適用できるが、2液硬化型ウレタン系接着剤が好適である。
【0041】
ドライラミネーション法では、これらを主成分とする接着剤層29組成物を有機溶媒へ溶解または分散し、これを、例えば、ロールコーティング、グラビアコーティングなどの公知のコーティング法で、支持材30のハードコート層14面へ塗布し乾燥して接着剤層29を形成し、直ちに転写材10の印刷層18面とを重ね合せた後に、常温〜120℃で数時間〜数日間エージングすることで、接着剤を硬化させることで接着する。接着剤層29組成物を塗布する面はこの逆でもよい。また、支持材30のハードコート層14面、及び/又は転写材10の印刷層18面へ、接着促進のために、易接着処理やプライマ層を設けてもよい。
該接着剤層29の膜厚としては、0.1〜20μm(乾燥状態)程度、好ましくは、転写後でも柔軟性を失わず、着衣であれば運動性を低下させず、バッグであれば、質感を損なわず、かつまた、洗濯時にも破壊されたり、脱落したりしないために、3〜7μmが好適で、かつ、柔軟性を失わせないために、常温で時間をかけてエージング(硬化)させることが好適である。
【0042】
(ステップ5)ステップ5S5は(5)積層体50の露出している透明基材11面へホットメルトからなる接着層19を設ける接着層形成工程であり、図6に示すような構成となる。
【0043】
(接着層)接着層19としては、常温または常圧では接着性がなく、加熱または加圧した時にのみ接着力を発揮する感熱または感圧接着剤であれば特に限定されないが、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の比較的低融点の樹脂が好ましい。上記のような樹脂を熱で熔融させて液状とし、ロールコート、コンマコートや、ホットマルトアプリケーター法で、塗布し冷却すればよい。また、接着層19には白色顔料、体質顔料、蛍光増白剤を含有させてもよく、これらは転写後の白色度を向上させたり、繊維質基材101の色を隠蔽することができる。
被転写体がポーラスな繊維質基材101で浸透するので、厚味は15〜150μm程度、柔軟性を損なわないために15〜50μmが好ましい。
【0044】
(ステップ6)ステップ6S6は(6)転写部23となるハードコート層14、接着剤層29、印刷層18、反射層17、ホログラム層15、透明基材11及び接着層19からなる層構成部分のみを、所望の形状にハーフカット処理を施してパッチ21とし、該パッチ21が支持材30の離型層13面へ剥離可能に積層されているようにするハーフカット処理工程である。
【0045】
(ハーフカット工程)ハーフカット処理法としては、カッター刃を取り付けた上型と台座の間に、カット前の積層状態のパッチ転写媒体20を挿入して、上型を上下動させる方法や、シリンダータイプのロータリーカッター方法、レーザー加工手段により熱処理加工方法等、ハーフカットできる方法であれば特に制限はない。パッチ21部分とそれ以外部分を除去しなくてもよいが、図7に示すパッチ転写媒体20の断面のように、ハーフカットしてパッチ21部分のみを残して、それ以外部分を予め剥離し除去しておく(当業者はカス取りという)のが好ましい。被転写体へパッチ21を転写する際に、ハーフカット処理された部分で透明基材11部が切断されることがなく、確実に転写することができる。
【0046】
なお、ハーフカットは、一般的には、パッチ21の回り一周分単位で連続的にカットを施す、四隅等の部分的にアンカット(全くカットがない)部分、ミシン目部分を設けたりして、熱転写プリンター搬送中等取扱で、ハーフカットの部分が剥離するトラブルを防ぐことができる。なお、支持材30の少なくとも1部はカットされず連続状にしておく。ハーフカット処理で切断の深さが深過ぎると、支持基材31まで切断されて、プリンター搬送中にハーフカット加工部で切断され、搬送トラブルが発生しやすくなる。
【0047】
パッチ21の形状としては、特に限定されないが、例えば矩形、楕円形、丸形、ドーナッツ形などが例示できる。ハーフカット処理されたパッチ21部分が被転写体の転写される全面の大きさよりも小さくてもよく、また、パッチ21部分が、被転写体に対して、部分的に抜けている部分があってもよく、さらに、パッチ転写媒体20の全幅が、被転写体の転写される面の幅よりも広くてもよい。
【0048】
(パッチ転写媒体)パッチ転写媒体20の転写部23はハーフカットされてパッチ21となり、支持材30の離型層13面へ剥離可能に積層されている。このように本発明のパッチ転写媒体の製造方法で製造された本発明のパッチ転写媒体20は、支持基材31/離型層13からなる離型層13面に、ハードコート層14/接着剤層29/印刷層18/反射層17/ホログラム層15/透明基材11/接着層19からなる転写部23をハーフカット処理したパッチ21が、剥離可能に積層されている。
【0049】
(パッチ転写繊維質基材)図8に示すように、本発明のパッチ転写媒体20の接着層19面と繊維質素材101からなる被転写体とを重ね合わせて、アイロンなどで加熱加圧した後に、支持基材31/離型層13を剥離し除去することで、前記パッチ21が繊維質素材101へ転写され、図9のパッチ転写繊維質素材100となる。
【0050】
(被転写体)繊維質素材101が被転写体となるが、繊維質の素材であれば特に限定されず、紙パルプ、天然又は合成樹脂繊維、ガラス繊維などの繊維を、抄紙、織物、不織布などが例示できる。形態としても特に限定されず、例えば、ノート及びカタログなどの紙類、Tシャツ、エプロン、帽子などの衣類、靴類などが例示できる。また、繊維質素材101の媒体はその少なくとも1部に着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよい。
【0051】
(転写方法)被転写体への転写する転写方法としては、公知の転写法でよく、アイロンを例示したが、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。また、パッチ21の形状に合わせて加熱し転写してもよい。
【0052】
(耐久性)転写によって、離型層13とハードコート層14の界面で剥離し、パッチ転写繊維質素材100の表面にはハードコート層14/接着剤層29/印刷層18/反射層17/ホログラム層15/透明基材11/接着層19からなるパッチ21が転写される。即ち、ハードコート層14面が表面となり、透明基材11が裏面となって挟み込んで、意匠性に優れる印刷層18/反射層17/ホログラム層15の3層、又は印刷層18の1層を強固に保護するのである。多数回の繰り返し使用でも、パッチ転写繊維質素材100の表面は保護され、機械的化学的な損傷から長期間にわたって維持できる。特にハードコート層14は、鋭利なものによる引掻きに対しても強靱な耐擦傷性に優れている。また、ハードコート層14がポリエステル樹脂を含んだ電離放射線硬化樹脂の場合には、強靱な耐擦傷性に優れると共に柔軟性があり、パッチ転写繊維質素材100の屈曲にも耐え、かつ、硬化時の収縮性が少なく反りもないので、転写性が安定している。さらにまた、フィルム状の透明基材11により耐熱性、耐溶剤性などの物理的科学的な耐久性にも優れる。さらに、ホログラム層15のホログラム及び印刷層18の図柄は意匠性とセキュリティ性に優れる。
【0053】
転写されるパッチ21の厚さが厚過ぎると、繊維質素材101の柔軟性を阻害し、転写後には柔軟性を失って、着衣であれば運動性が低下し、バッグであれば質感を損い、かつまた、洗濯時にもゴワゴワで、折り目や断面が破壊したり、脱落したりする欠点がある。しかしながら、特に、ハードコート層の厚さが3〜7μmで、接着剤層29の厚さが3〜7μmで、透明基材11の厚さが12〜25μmであれば、強固に保護されると共に、転写後でも柔軟性を持ち、着衣であれば運動性がよく、良質感であり、かつまた、洗濯時にも破壊や脱落し難い。さらに、ハードコート層14が3〜7μm、接着剤層29が3〜7μm、印刷層18が0〜6μm、反射層17が0.02〜1μm、ホログラム層15が2〜5μm、透明基材11が12〜25μm、接着層19が15〜50μmであり、パッチ21の総厚さとしては35〜101μm程度が好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。
【0055】
(実施例1)
(S1)透明基材11と、該透明基材11の一方の面へホログラム層15、反射層17及び印刷層18を設けてなる転写材10を準備する転写材準備工程
透明基材11として厚さ16μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、下記のホログラム層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが3μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
・<ホログラム層組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名)100部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−1602) 0.5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 2部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5部
溶媒(メチルエチルケトン:酢酸エチル=1:1) 300部
次に、該層面へ、2光束干渉法による回折格子から2P法で複製した擬似連続絵柄としたプレス型を複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、ホログラム層15を形成した。
該ホログラム層15のレリーフ面へ、厚さ50nmの酸化チタンを真空蒸着法で形成して、透明な反射層17とした。該反射層17面へ、ポリエステル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂の等量混合体からなるプライマ層を介して、シルクスクリーン印刷法で小さなハート形を散りばめた図柄を透明ピンクインキで印刷し乾燥して印刷層18を設け、透明基材11/ホログラム層15/反射層17/印刷層18の層構成からなる転写材10を得た。
(S2)支持基材31と、該支持基材31の一方の面へ、熱硬化樹脂を主成分とする樹脂層を熱で硬化することで前記離型層13を設ける支持材30を準備する支持材準備工程
支持基材31として、厚さ50μmのPETフィルムを用い、一方の面へ公知のポリイミド系樹脂からなる耐熱滑性層組成物を乾燥後の塗布量が2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて耐熱滑性層を形成し、他方の面へ、グラビアコート法で下記の離型層樹脂組成物(塗工液)を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成し、耐熱滑性層/支持基材31/離型層13から構成される支持材30を得た。
・<離型層の樹脂組成物>
TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名) 25部
溶媒(MEK:トルエン=1:1) 75部
(S3)前記支持材30の前記離型層13面へ電離放射線硬化樹脂を主成分とする樹脂層を電離放射線で硬化させて剥離可能なハードコート層14を設けるハードコート層形成工程
前記支持材30の離型層13面へ、下記のハードコート層組成物ををグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた後に、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射し硬化させて、ハードコート層14を設けた。
・<ハードコート層組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名) 100部
エリーテル3520EA(ユニチカ社製、共重合ポリエステル樹脂商品名)20部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 5部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5部
溶媒(メチルエチルケトン:酢酸エチル=1:1) 300部
(S4)前記支持材30の前記ハードコート層14面と前記転写材10の前記印刷層18面とをドライラミネーション法で接着剤層29を介して積層体とする積層工程
前記のハードコート層面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の厚さが0.5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させてプライマ層を形成した。該プライマ層面へ、下記の接着剤層組成物をグラビアリバースコーターで厚さが5μmになるように塗工し、直ちに前記転写材10の印刷層18面とを加圧して積層し、常温で3日間硬化させて、積層体50とした。
・<プライマ層組成物>
バイロン300(東洋紡社製、商品名) 50部
塩化ビニル酢ビニル共重合樹脂 50部
溶媒(トルエン:酢酸エチル=1:1) 300部
・<接着剤層組成物>
タケラックA−310(武田薬品工業社製、商品名) 100部
イソシアネート硬化剤A−10(武田薬品工業社製、商品名) 5部
溶媒(トルエン:酢酸エチル=1:1) 200部
(S5)前記積層体の露出している前記透明基材11面へホットメルトからなる接着層19を設ける接着層形成工程
積層体50の透明基材11面面へ、下記のホットメルト組成物を厚さが30μmになるようにホットメルトアプリケーターを用いて150℃で熔融し塗布し冷却して、接着層19を得た
・<接着層組成物>
エリーテルUE−3700(ユニチカ社製、ホットメルト、商品名) 100部
(S6)前記転写部23となる前記ハードコート層14、前記接着剤層29、前記印刷層18、前記反射層17、前記ホログラム層15、前記透明基材11及び前記接着層19からなる層構成部分のみを、所望の形状にハーフカット処理を施してパッチ21とするハーフカット処理工程
上記の、角丸の矩形状のカッター刃を取り付けた上型と台座とのプレス方式のハーフカット処理とカス取りを行えるハーフカット部で、転写部23となるハードコート層14/接着剤層29/印刷層18/反射層17/ホログラム層15/透明基材11/接着層19からなる層構成部分を54mm×85mmで角丸形状(パッチ21となる)にハーフカット処理を施し、カス取りして、パッチ21が離型層13面から剥離可能に積層された連続巻取状の実施例1のパッチ転写媒体20を得た。
【0056】
図8に示すように、実施例1のパッチ転写媒体20の接着層19面と、繊維質基材101として、ポリエステル製のTシャツへ重ねて、パッチ転写媒体20面から加熱したアイロンを押し当てて転写した後に、耐熱滑性層/支持基材31/離型層13を剥離し除去して、パッチ21が転写されたTシャツ(パッチ転写繊維質素材100)を得た。パッチ転写媒体20は転写時の剥離性もよく、容易に安定して正常に転写することができた。
該Tシャツの表面はパッチ21(ハードコート層14/接着剤層29/印刷層18/反射層17/ホログラム層15/透明基材11/接着層19)で覆われて、ハードコート層14が最表面となったパッチ転写繊維質素材100が得られた。ハードコート層14面が表面となり、透明基材11が裏面となって挟み込んで、意匠性に優れる印刷層18/反射層17/ホログラム層15の3層を強固に保護している。
【0057】
多数回の繰り返し使用でも、パッチ転写繊維質素材100の表面と保護し、機械的化学的な損傷から長期間にわたって保護でき、特にハードコート層14は、鋭利なものによる引掻きに対しても強靱な耐擦傷性に優れている。さらに、フィルム状の透明基材11により耐熱性、耐溶剤性などの物理的科学的な耐久性にも優れていた。さらにまた、ホログラム層15のホログラム及び印刷層18の図柄は意匠性とセキュリティ性に優れていた。
【0058】
(洗濯試験)JIS L−0217 103法に準じ、洗濯40℃、12分、すすぎ40℃、2.5分の3回繰り返しで洗濯を実施したが、印刷やホログラムは洗濯時にも破壊されたり、脱落したりせず、柔軟性を保っていた。柔軟性が失われていないので、着用しても運動性は十分であった。
【0059】
(実施例2)ホログラム層15及び反射層17を設けない以外は、実施例1と同様にして、実施例2のパッチ転写媒体20を得た。
多数回の繰り返し使用でも、パッチ転写繊維質素材100の表面を保護し、機械的化学的な損傷から長期間にわたって保護でき、特にハードコート層14は、鋭利なものによる引掻きに対しても強靱な耐擦傷性に優れている。さらに、フィルム状の透明基材11により耐熱性、耐溶剤性などの物理的科学的な耐久性にも優れていた。さらにまた、ホログラム層15のホログラム及び印刷層18の図柄は意匠性とセキュリティ性に優れていた。JIS L−0217 103法に準じた洗濯試験でも、洗濯40℃、12分、すすぎ40℃、2.5分の3回繰り返しで洗濯を実施したが、印刷は洗濯時にも破壊されたり、脱落したりせず、柔軟性を保ち、着用しても運動性は十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
(産業上の利用可能性)本発明のパッチ転写媒体の製造方法、パッチ転写媒体を用いてパッチを転写してなるパッチ転写繊維質素材(媒体)の主なる用途としては、例えば、Tシャツなどの衣類、カートン、ケース、外装紙などの包装材類、バッグ類などの装身具、鑑賞券、グリーティングカード、封筒、タグ、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、ネームプレート、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、履物、靴などの類などがある。しかしながら、転写後にはハードコート層が最表面となって耐擦傷性に優れ、かつ意匠性に優れるホログラム又は印刷を有するパッチを低コストで製造でき、かつ、アイロン等で加熱加圧することで転写する用途であれば、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0061】
10:転写材
11:基材
13:離型層
14:ハードコート層
15:ホログラム層
17:反射層
18:印刷層
19:接着層
20:パッチ転写媒体
21:パッチ
23:転写部
29:接着剤層
30:支持材
31:支持基材
50:積層体
100:パッチ転写繊維質素材
101:繊維質素材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材の離型層面へ所望の形状にハーフカットされた転写部がパッチとなるように、剥離可能に積層されてなるパッチ転写媒体の製造方法であって、
(1)透明基材と、該透明基材の一方の面へホログラム層、反射層及び印刷層を設けてなる転写材を準備する転写材準備工程と、
(2)支持基材と、該支持基材の一方の面へ、熱硬化樹脂を主成分とする樹脂層を熱で硬化することで前記離型層を設ける支持材を準備する支持材準備工程と、
(3)前記支持材の前記離型層面へ電離放射線硬化樹脂を主成分とする樹脂層を電離放射線で硬化させて剥離可能なハードコート層を設けるハードコート層形成工程と、
(4)前記支持材の前記ハードコート層面と前記転写材の前記印刷層面とをドライラミネーション法で接着剤層を介して積層体とする積層工程と、
(5)前記積層体の露出している前記透明基材面へホットメルトからなる接着層を設ける接着層形成工程と、
(6)前記転写部となる前記ハードコート層、前記接着剤層、前記印刷層、前記反射層、前記ホログラム層、前記透明基材及び前記接着層からなる層構成部分のみを、所望の形状にハーフカット処理を施してパッチとするハーフカット処理工程と、
からなることを特徴とするパッチ転写媒体の製造方法。
【請求項2】
前記ホログラム層及び前記反射層を設けないことをを特徴とする請求項1に記載のパッチ転写媒体の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパッチ転写媒体の製造方法で製造されたパッチ転写媒体であって、
前記ハードコート層、前記接着剤層、前記印刷層、前記反射層、前記ホログラム層、前記透明基材及び前記接着層、又は
前記ハードコート層、前記接着剤層、前記印刷層、前記透明基材及び前記接着層、
から構成される転写部をハーフカット処理を施してパッチとし、該パッチが前記支持基材の前記離型層面へ剥離可能に積層されていることを特徴とするパッチ転写媒体。
【請求項4】
請求項3に記載のパッチ転写媒体の前記接着層面と繊維質素材からなる被転写体とを重ね合わせて、アイロンで加熱加圧した後に、前記支持基材及び離型層とを剥離し除去することで、前記パッチが前記被転写体へ転写されてなり、最表面がハードコート層となることを特徴とするパッチ転写繊維質素材。
【請求項5】
前記ハードコート層の厚さが3〜7μmで、前記接着剤層の厚さが3〜7μmで、前記透明基材の厚さが12〜25μmであることをを特徴とする請求項4に記載のパッチ転写繊維質素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−179778(P2012−179778A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43570(P2011−43570)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】